AX2017report

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Copyright (C)2017 CiP council All Rights Reserved. 2017年の「アニメエキスポ」(ANIME EXPO=通称「AX」)は 7月1日から4日の4日間、ロサンゼルス・コンベンションセンターと 周辺のホテル等の施設を使って開催された。 2017年の来場者は4日間で延べ357,178人(実数は115,726人)で、前年比 17%増。北米地区では最大級のアニメイベントである。 AX」は、1992年の初開催の後、毎年1度の開催を続け、今年26年目を迎えた 老舗海外イベントでもある。 下図に見られるように来場者は年々増加の一途を辿っている。 主催はSociety for the Promotion of Japanese Animation (SPJA))、NPO法人 である。巨大なイベントは30名余りのSPJAの職員と1600人のボランティアス タッフに支えられている。 「アニメエキスポ」レポート 2017.8.2 事務局:亀山泰夫

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2017年の「アニメエキスポ」(ANIME EXPO=通称「AX」)は7月1日から4日の4日間、ロサンゼルス・コンベンションセンターと周辺のホテル等の施設を使って開催された。

2017年の来場者は4日間で延べ35万7,178人(実数は11万5,726人)で、前年比17%増。北米地区では最大級のアニメイベントである。「AX」は、1992年の初開催の後、毎年1度の開催を続け、今年26年目を迎えた

老舗海外イベントでもある。下図に見られるように来場者は年々増加の一途を辿っている。主催はSociety for the Promotion of Japanese Animation (SPJA))、NPO法人

である。巨大なイベントは30名余りのSPJAの職員と1600人のボランティアスタッフに支えられている。

「アニメエキスポ」レポート 2017.8.2事務局:亀山泰夫

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「AX」の収入源は主に、入場料と出展料、協賛費。日本の「コミックマーケット」と違って、4日間通しのチケットを販売。企業の出展や、二次創作の販売ブースもそれぞれ料金が設定されている。今年のメインスポンサーは、北米に本社を持つ日本のアニメの海外向け配信プラットフォームのクランチ

ロールで、入場者全員に配布されるキットもクランチロールのリュックサックに入れられている。

プログラム等のキットが入ったリュックサック。 主催者にインダストリーパスを手配していただく。

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正面から会場に入ると、クランチロール、ファニメーションといった米国のアニメ配信プラットフォームや、東映アニメーション、KADOKAWA、バンダイ、ポニーキャニオンといった日本のコンテンツ企業が出展した展示スペース。グッドスマイルカンパニーや寿屋といったグッズメーカーの販売ブースも目立つ。このスペースにはこう

した企業以外の様々な販売業者によるアニメ関連グッズの販売ブースも並んでおり、グッズの購入機会が少ない現地のファンの人気を集めていた。また、地下の広大な駐車場には「アーティスト・アレイ」として二次創作やオリジナルのイラストやコ

ミックを販売するブースが並ぶ。人気作家も多く、行列ができるブースも。コミックマーケットのような日本のイベントに比べ、イラストが多いのが特徴。

「ドラゴンボール超」「セーラームーン・クリスタル」をプッシュする東映アニメ―ションのブース

「Fate Grand Order」をプッシュするKADOKAWAの隣にはクランチロールが。

広大なスペースにブースが立ち並ぶアーティスアレイ

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さらに、ゲームやパチンコ、VRを使ったスポーツ等が体験できるエンタテイメントの展示会場。コスプレイヤー向けのフォトスポットも用意されている。盾や槍を携えた本格的なものからごくごく簡単なものも含めてコスプレをしてやってくる入場者の数は、日本

の同種のイベントに比べてだいぶ多い。会場内にとどまらず、会場があるロサンゼルスのダウンタウン全体が「AX」のムードに包まれており、コスプレ姿でスーパーで買い物をする参加者にも違和感がない。本来は休日であまり人の動きがない独立記念日前後の時期に10万人以上を集める「AX」に対してはロサンゼルス市も積極的に協力する。

コスプレイヤー向けのフォトスポット。和室や神社、人気キャラクターの部屋の再現など5,6種類の

スペースで思い思いの写真を撮影。

日本の「アニメジャパン」や「コミックマーケット」に比較してコスプレをしている人の比率が高い。

長物の小道具はWeapon Checkを受けて持ち込まれる。

バレーボールを楽しむ「ハイキュー!」ファンたち

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新作の発表やスタジオや作品をテーマとしたパネル、学術関連のセッションといったイベントが、朝10時から深夜まで、コンベンションセンター内の会議室や近隣のホテルのボールルーム等10以上の会場を使って並行して行われている。また、作品の上映会は4つの会場を使ってほぼシームレスの状態。以下、

目に付いたイベントを表にまとめてみた。

近隣のマイクロソフトシアターでは、ランティス他の日本企業が主催する

Anisong World Matsuri が開催された。

海外で人気が高い日本のアニメ制作会社トリガーのパネル。

4000人収容の会場を埋めたファンに向けて3タイトルの新作制作が発表された。

カテゴリー タイトル 日程 会場

General Cardcaptor Sakura Clear Card Prologue World Premiere

Day1 4:00PM WESTHALL B

General In This Corner of the World Screening Q&A(*) Day2 5:00PM 411

General Welcome to the Ballroom Premiere(**) Day2 10:30AM WESTHALL B

General Love Live Sunshine!! Screening & Aqours Talk Show! Day1 1:30PM JW Diamond Ballroom

Panel Production IG Industry Panel Day1 11:30AM JW Platinum Ballroom

Panel Shonen Jump Presents:The Official JOJO’s BIZARRE ADVENTURE Panel

Day2 7:30PM PETREE HALL

Panel FULLMETAL ALCHEMIST Live Action Panel(***) Day3 11:00AM WESTHALL B

Academic Consuming Japan-Anime and the Globalizing of America

Day1 6:30PM 411

Academic Building Communities of Fans and Scholars Day3 6:30PM 411

Workshop Gundam Model Building for Adults(****) Day3 9:00PM 403 B

Workshop Subtitling Anime(*****) Day3 5:30PM 403 B

*「この世界の片隅に」、**国内でも7月放送開始の新作アニメ「ボールルームへようこそ」***「鋼の錬金術師」実写版、****「ガンプラのモデリング」ワークショップ、*****「アニメの字幕」のワークショップ

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同行したIOEA(国際オタクイベント協会)さんの手配で、「AX」を主催するSPJA(Society for the Promotion of Japanese Animation=日本アニメーション振興会)の幹部スタッフとミーティングを持ち、CiP協議会と「世界オタク研究所」プロジェクトを紹介、今後の連携の方向性を探った。また、日本のアニメにインスパイアされて米国人スタッフにより制作されて話題を呼ぶ美少女戦隊アニメ

「RWBY」を制作するRooster Teethのメインスタッフ(アニメーション部門長のハドックさん、監督/脚本のシャークロスさん、アートディレクターのロドリゲスさんら)やAX以外の海外イベントの主催者等との出会いもあり、実り多い出張だった。

左からSPJA 事業開発ディレクターの松田さん、経済産業省の境さん、CiP事務局長の高橋、筆者、SPJA COOのチェンさん、CEOのマナンサラさん、IOEAの兼光さんと佐藤代表

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「AX」のようなイベントに参加すると、日本のアニメが日本のファンだけでなく、世界中のファンに愛されていることを強く感じる。一方で国内においてもクールジャパン政策の柱としての期待も大きく、またアニメ産業の今後の

ためには海外での拡大が不可欠な状況だが、その人気のわりに展開は進んでいない。世界から求められ、こちらも海外に拡大したい気持ちを強く持っているのに、うまく擦り合って

いない。日本のアニメの海外展開は依然としてそういう状況を脱していない。

こうした状況の中、前述した「RWBY」やクランチロール原作のオリジナルアニメ「Urahara」(2018年放送開始予定)といった日本テイストの海外作品が制作されている。

CiP協議会では現在、オタク文化に関する国際的研究機関として「世界オタク研究所(仮称)」の設立に向けて準備を進めているが、この研究機関でもこうした課題に向け、研究する機能を持ちたいと考えている。