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0 オンラインゲーム時代における、 ゲーム内コミュニケーション設計の 基礎知識 株式会社DropWave 代表取締役 本城 嘉太郎 CEDEC2012

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オンラインゲーム時代における、 ゲーム内コミュニケーション設計の

基礎知識

株式会社DropWave 代表取締役本城 嘉太郎

CEDEC2012

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■講師経歴&株式会社DropWave概要

■株式会社DropWave会社概要

株式会社DropWave事業内容:オンライン・ソーシャルゲームの企画、開発、運営設立 2005年7月従業員 80名所在地:東京都新宿区(新宿御苑前駅徒歩5分)

■講師経歴

コンシューマのゲームプログラマを経て、オンラインゲーム制作&運営会社、株式会社DropWaveを2005年に設立。自社開発のオンラインゲームエンジンの設計などを担当。近年はスマートフォンで遊べるオンラインゲーム、ソーシャルゲームの開発、運営に注力。Cマガジン記事執筆、CEDEC2011、KGC2010、2011講演、スッキリ!!出演など。

■開発タイトル実績

『脱出ゲームDERO!』会員数100万人以上『リヴリーアイランドCOR』会員数100万人以上『わんこのお部屋forモバゲー』会員数45万人以上『激闘!ネコ騎士団』会員数20万人以上そのほか、いろんな有名タイトルの開発、運営を行っている会社です。

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■オンラインゲームエンジンを保有

■リアルタイム通信ができるオンラインゲームサーバエンジンを自社開発しており、本格的なオンラインゲーム開発が可能です。

■ソーシャルゲームを中心に、登録者数のべ数百万人を超えるゲームを開発、運営しています。

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■本講演の趣旨

<本公演の趣旨>コンシューマゲーム開発者にとって未経験となる、ゲーム内コミュニケーションの設計について、成功タイトルを例に解説します。

<本講演の対象者>何年も家庭用ゲームソフトを作ってきて、ゲーム作りには自信があるが、会社の命令でオンラインゲーム/ソーシャルゲームを作れと言われ、いやいやながらも作るハメになってしまった方。おもにゲーム全体を設計するプランナー、ディレクターの方。

また、「オンラインゲームなんて、チャットと掲示板とメッセージ機能と宅配システムとギルドシステムを入れておけば、適当にコミュニティが盛り上がるんじゃないの?」と思っているプランナーの方。

<もくじ>1、オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?2、成功タイトルのコミュニティ設計分析3、まとめ

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■1,オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?

1、オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の  最終目標とは?

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■1,オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?

■なぜオンラインゲームにはコミュニティが必要なのか?

それは、オンラインゲームが、数ヶ月〜数年という長期間プレイを前提としているゲームジャンルだからです。

1人用のゲームを10年間遊び続けることは不可能ですが、10年以上遊び続けられていて、商業的にも成立し続けているオンラインゲームは何本も実在します。

そのオンゲーとオフゲーの違いは3点あります。

1,ゲーム内容が定期的に更新されているかどうか2,ゲーム内に友達と呼べる存在がいるかどうか3,ゲーム内に資産と呼べる物を形成できるかどうか

このどれかが欠けても、長期間遊べるゲームは成立しません。今回は、この2番を成立させるための仕組みに焦点を絞ってお話します。

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■1,オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?

■ゲーム内に友達と呼べる存在がいるかどうか、とはどういう意味?

それは...

・あの人にお世話になったから、恩返ししなくっちゃ!・あのライバルプレイヤーには負けたくないから、今日も頑張るぞ!・みんなとの約束があるから、今日もログインしなくっちゃ。・ギルドの仲間と話している時が一番楽しいから、今日もお喋りしに行こう。・正直もうゲームには飽きたけど、ゲームを起動すれば仲間に会えるから、 やっぱりまだ続けよう。

あなたのゲームに対して、プレイヤーがこういう感情をもってもらえるかどうか、ということです。

過去、これに似た感情を、あなたはどこかで感じたことはないですか?

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■1,オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?

■それは『部活』!

そう、それは『部活』です!例えばバスケ部...

・達成すべき明確な目標がある  →インターハイ優勝!・共通の目標を共有している仲間がいる  →部員たちは同じ目標を持っている・目標達成するためには、仲間と協力!  →一緒に練習したり試合に出て協力しないと目標は達成できない・負けたくないライバルがいる  →他校のライバルチームや、負けたくないアイツの存在・仲間から必要とされている自分がいる  →3ポイントシュートなら誰にも負けない!・同じ境遇で、なんでも話せる友達がいる  →みんな同じ学校で同学年だし、部活が終わっても、いつまでも話をしていたい

こういう部活って、本当に楽しかったですよね!この楽しさは、人が大人になっても、部活がゲームになっても同様です。

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■1,オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?

■オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?

それは...

あなたのゲームを『大人の部活動』にしてしまうことです!

学校を卒業しても辞めなくていい、永遠に活動していられる、大人の部活です。

これが、プレイヤーが長期間あなたのゲームを遊んでくれる必要条件であり、コミュニティ設計の目標です。

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■1,オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?

■どうすればゲームを『大人の部活動』化できるのか?

ただ単に、ソロゲーにコミュニケーションツールを導入しただけではコミュニティは生まれません。ゲームシステムの中に、コミュニティが生まれやすい仕組みを丁寧に組み込んでいくことによって、はじめて深いコミュニティが形成されます。

今回の講演では、ゲームデザインの中に、非常に優れたコミュニティ設計が組み込まれている2本のタイトルをサンプルとして取り上げながら、アナタのゲームを『大人の部活動』化させるためのポイントを探っていきます。

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■1,オンラインゲームにおけるコミュニティ形成の最終目標とは?

■余談

ちなみに、先ほどのバスケ部の話は架空のリア充をモデルにした妄想です。「楽しかったですよね!」なんてリア充のフリをしてすいませんでした。

スポーツ音痴の僕は、中学時代に間違って運動部に入ってしまい、運動できるヤツなんて全員死ねばいいのにと毎日願う暗黒の青春時代を送っていました。

その教訓を活かして、高校では部活動とは距離を置き、放課後は毎日ゲーセンに通って対戦格闘ゲームにのめり込み、拳で語り合える本当の仲間たちと幸せな青春時代を送りました。

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■今回、分析対象となるゲーム

特に優れたコミュニティ設計を持つゲームとして、以下の2タイトルを例に解説します。

1,ファンタジーアース ゼロ(略称、FEZ)2,伝説のまもりびと(2も含む)

両タイトルとも、商業的に大成功し、今なお多くのプレイヤーに遊ばれ続けているタイトルです。

それではまず、FEZの方から見ていきましょう!

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■ファンタジーアース ゼロの概要

<wikipediaより抜粋>最大50人vs50人による対人戦闘を主眼に置いたオンラインアクションRPGである。一見、MMOタイプに見えるが、プレイの主体となる「戦場(マップ)」へ参加できるプレイヤーの上限は100名までとなっており、実質的にはMOタイプに近い。ゲーム内では5つの国家が恒常的に戦争状態にあり、プレイヤーはキャラクター作成時に所属国家を決定し、以後は自国の勝利のために大陸各地を転戦することとなる。戦争の舞台となる「戦場」は、戦闘の勝敗によって支配国家が変動するため、戦場で勝利を重ねることによって、自国の支配地域を広げていく事がゲームの目的となる。ただし現段階では支配地域を維持し続けることによる、大きなメリットは存在しない。また所属国家の滅亡もないため、エンドレスに戦争が行われる。戦争のルールには、建造物建築により支配領域を確保し合う「陣取り合戦」や、戦術ユニットである召喚獣(後述)の運用といった戦略要素も組み込まれており、ジャンルとしてはアクションRPGとストラテジゲームのハイブリッドタイプとなっている。日本国外では最近「ファーストパーソンストラテジー(FirstPersonStrategy) 」と呼ばれ始めているジャンルに該当する(ただしインターフェースはTPSである)。

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのエラいところ

『ゲームが非常に面白い!!』

やってもらえればわかりますが、ストラテジーゲームとしても、対戦アクションゲームとしても、非常にレベルが高いです。アバターもかわいく、ゲームも本格的で、やりごたえのあるゲームです。

いくらコミュニティ設計がうまく出来ていても、ゲームがクソゲーだと誰も継続してくれません。

深いコミュニティが形成される条件として、ゲームそのものが面白いことが大前提です。当たり前ですが、まずは面白いゲームを作って下さい。それでは次から、FEZのコミュニティ設計分析と、それを自分のゲームに活かすためのチェックポイントを解説していきます。

<おことわり>本講演は、制作者へインタビューしたものではなく、第三者の僕の勝手な分析ですので、ご了承ください。

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのコミュニティ設計分析:その1

<ゲームの最初からギルドが成立している>

ゲームの目的が国家間での領土争いとなっているため、キャラクター登録をした直後から、国家=ギルドに所属し、同じ目的を持った仲間がたくさんいる状況になります。

これは、学校で部活に入ると、先輩や同級生など同じ目標を持った仲間が一気に出来る状況に似ています。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・ゲームの最初からギルドのようなコミュニティにプレイヤーを加入させる事はできないか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのコミュニティ設計分析:その2

<ゲームの目的がギルドの目的と完全に一致している>

ギルドが作れるオンラインゲームは沢山ありますが、ほとんどのゲームは、ギルド機能はサイドメニューのようなもので、メインディッシュはストーリークエストの攻略となります。よって、ギルドを無視してもゲームが進められます。

FEZのすごいところは、ゲームの目的そのものが、国家間の戦争で勝利することであり、ギルドの目的=ゲームのメインディッシュとなっているところです。

これにより、ゲームを進める目標がギルドの目標と完全に一致し、ゲームを進めているだけで、ギルドに貢献し、仲間を助け、協力するというコミュ育成行動を自然と行うことになります。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・ギルドを作るのは良いが、とってつけたようになっていないか?・ギルドの目標と、ゲームの目標がちゃんと一致しているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのコミュニティ設計分析:その3

<リアルタイムでの協力プレイが大前提のゲーム性>

このゲームの目的は、敵国との戦争において勝利することですが、そのためには50人の味方プレイヤーとの協力プレイが必要になります。まるで11人で闘うサッカーの大規模版です。

そのため、ゲームの目的を達成するためには、事前に味方プレイヤー同士での意思疎通や作戦会議が必要となり、またゲーム中でも頻繁に会話を行いながら連携をとっていく必要がありあす。1回プレイするだけで、必ず複数の味方プレイヤーと会話して、連携して遊ぶシチュエーションが生まれます。

同じ目標に向かって、同じ時を共有した仲間同士には、かけがえのない連帯感が生まれ、関係性もより深化します。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・ゲームのメイン部分が、仲間達との協力プレイが前提になっているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのコミュニティ設計分析:その4

<上級者が新入りの面倒を見る動機が提供されている>

FEZの戦争は、国家に所属する全プレイヤーの総力戦となるため、ゲームの目的を達成するためには、新入部員の育成と定着が必要となります。

よって、本気でゲームの目的を達成したいと思っている上級者にとっては、目的達成のために初心者をサポートする動機が生まれます。

実際、上級者が独自で初心者向け講習会を開催したり、上級者が初心者に使わなくなった装備品をプレゼントしたり、ということが自然に行われる文化が形成されています。

初心者には、お世話になった先輩プレイヤーの恩に報いるために、もっと頑張ろうというモチベーションも生まれます。

ソーシャルゲームだと、自分よりレベルの低いプレイヤーにプレゼントを送ると「あしながおじかん」の称号が貰える『怪盗ロワイヤル』が同じような施策を行っています。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>・一人だけで目的達成出来てしまうゲームになっていないか?・初心者を助けることに対するインセンティブが用意されているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのコミュニティ設計分析:その5

<コミュニティに対して、共通の話題が常に提供されている>

ギルドの目標がシンプルに出来ており、なおかつゲーム本編の目的とも一致しているため、すべてのプレイヤーが「どうやったら戦争に勝てるか」という共通の話題を持っています。

そのため、掲示板でいろいろなレベルのプレイヤーが共通の話題で盛り上がることができます。この話題がゲーム内容によって提供されています。

部活で、先輩と後輩が部活動の内容について議論するのと同じです。その内容がシンプルであればあるほど、話題は共通になりやすくなります。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・ギルドの目標がシンプルに定義されているか?・上級者と初級者で教え合えるゲーム性になっているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのコミュニティ設計分析:その6

<初心者でも貢献できる仕組みがある>

FEZのアクションパートでは、前線に行かなくても、座っているだけで人の役に立てる「クリスタル掘り」と言う仕事があります。座ってクリスタルを掘って、ときどき人に渡すだけで、コミュニティに貢献することができます。

また、クリスタルが溜まると呼び出せる召喚獣は、強力だけど操作が簡単という特徴を持っており、操作に慣れていない初心者でも前線で闘うことが出来ます。

このように、初心者がゲームに慣れるまでの敷居を下げて、スムーズにコミュニティに参加できるようになっています。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・初心者救済の仕組みが組み込まれているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのコミュ設計分析:まとめ

<最初からギルドが成立している>・ゲームの最初からギルドのようなコミュニティにプレイヤーを加入させる事はできないか?

<ゲームの目的がギルドの目的と完全に一致している>・ギルドを作るのは良いが、とってつけたようになっていないか?・ギルドの目標と、ゲームの目標がちゃんと一致しているか?

<リアルタイムでの協力プレイが大前提のゲーム性>・ゲームのメイン部分が、仲間達との協力プレイが前提になっているか?

<上級者が新入りの面倒を見る動機が提供されている>・一人だけで目的達成出来てしまうゲームになっていないか?・初心者を助けることに対するインセンティブが用意されているか?

<コミュニティに対して、共通の話題が常に提供されている>・ギルドの目標がシンプルに定義されているか?・上級者と初級者で教え合えるゲーム性になっているか?

<初心者でも貢献できる仕組みがある>・初心者救済の仕組みが組み込まれているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■FEZのコミュ設計分析:まとめ(その2)

FEZは、サービスが開始されてから6年以上経過しているオンラインゲームですが、「WebMoney Award 2011」で「BestGames賞」を受賞するなど、まだまだ第一線のオンゲーとして人気を保っている大成功タイトルです。

長期におよぶ成功の秘訣は、ゲームの面白さもさることながら、プレイヤーにとってゲーム自体が『大人の部活動』化した結果だと思います。見事なゲームデザインと、スクエニ社、ゲームポット社の運営努力のたまものです。

コミュニティ設計において、大変参考になるタイトルですので、ぜひプレイして研究してみてください!

次は、『伝説のまもりびと』を分析します。

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■伝説のまもりびと 概要

<ニコニコ大百科(仮)より引用>伝説のまもりびととは、2010年8月にモバゲータウン(現mobage)で公開されたタワーディフェンス系RPGである。通常のTD系の流れをくみながら、自分のキャラクターを育てるというRPG的な要素と、友人とともに戦うことができるSNSの利点をうまくとりいれた作品。

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■伝説のまもりびとの概要(その2)

本タイトルは、全てのソーシャルゲームの中で、最高レベルの長期継続率を叩き出している(と思われる)ゲームです。

ギルドシステムはなく、ソーシャルゲームによくある、仲間同士が蜘蛛の巣状態で繋がるフレンドシステムを採用しています。

FEZは全プレイヤーの目標が完全に一致したギルドゲームでした。まもりびとは、FEZよりも緩い繋がりながらも、強固なコミュニティを生み出すゲームシステムの構築に成功しています。

このタイトルも、制作者に取材した訳ではなく、僕が勝手に分析しているだけですのでご了承ください。

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■『伝説のまもりびと』のコミュニティ設計分析:その1

<人の助けを借りると圧倒的に有利になるゲーム性>

このゲームは、自分のキャラ1人+仲間3人の、合計4人で敵の侵入を防衛するゲームです。仲間がいない場合は、仲間の代わりに3人のNPCを連れて行けますが、あまり強くありません。

フレンド登録した仲間がいれば、その仲間を連れて行くことが出来るようになります。圧倒的に強い仲間がいれば、自分一人では到底クリアできないクエストも、どんどんクリアできてしまうゲームになっています。

連れて行った人にとっては、強力なキャラクターを貸してもらえた感謝の気持ちが芽生え、連れて行かれた人には、鍛えたキャラを見て使ってもらえて、鍛えた甲斐があったなと思うことができます。

そして、感謝を伝える「アリガト」というコマンドがあり、これを連れて行った相手に送ることが出来ます。

このように、人に協力してもらうことが大前提のゲームバランスにして、感謝の応酬によってコミュニティが盛り上がる仕組みを構築しています。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・他のプレイヤーのキャラクターを借りるなど、他人のリソースを借りて、協力して遊べる要素がが入っているか?・リソースを借りた相手に、感謝の言葉をしっかり伝えられる仕組みが入っているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■『伝説のまもりびと』のコミュニティ設計分析:その2

<非同期だけど、ログイン時間が近いだけで絆を感じられるゲーム設計>

他のプレイヤー(仲間)を自分のクエストに連れて行くためには、そのプレイヤーのログインが一定時間以内に行われていなければならないシステムになっています。

要するに、相手プレイヤーがいつログインしているのかが、自分のゲーム進行に大きく影響する設計になっています。

これにより、仲間のキャラクターを連れて行きたいときは、事前にそのプレイヤーに、何時何分頃にログインしてほしい、とお願いしておかなければなりません。

そして、ちゃんとその時間にログインしてくれていたら、ただログインしてくれただけなのに、絆と感謝を感じることが出来きるようになっています。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・仲間のログイン時間によってゲーム進行が影響される遊びは入れられないか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■『伝説のまもりびと』のコミュニティ設計分析:その3

<ただログインするだけで人の役に立てるお手軽さ>

まもりびとは、用がなくても、ただログインしているだけで人の役に立ち、人からどんどんアリガトが送られてくる設計になっています。ただ携帯でゲームを起動する、という数秒しかかからない動作によって、他のプレイヤーを助け、相手から感謝される事になります。

アリガトをもらえる手段は、仲間が自分のキャラをクエストに連れて行ってくれた場合と、修行コマンドで誰かが自分のキャラと修行をした場合になりますが、どちらもログインするだけで、修行巡回リストの上位にリスティングされたり、仲間が自キャラを連れ出せるようになっています。

ゲームを起動するだけで仲間に貢献できるのは、お手軽さを追求して、プレイヤーに負担をかけないように設計されるソーシャルゲームの真骨頂と言えるでしょう。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・お手軽な手段で、人の役に立つことができる仕組みを入れられないか?・他人から援護要請があった場合、プレイヤーに負担を感じさせていないか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■『伝説のまもりびと』のコミュニティ設計分析:その4

<人の役に立てば立つほど、自分も有利になる>

まもりびとでは、1日にアリガトされた回数が集計されており、翌日のログインボーナスで、回数に連動したアイテムが貰えるようになっています。

ポイントとしては、自分だけでは翌日のログインボーナスを稼ぐことが出来ない(相手にアリガトをしてもらわなければならない)ので、相手を助ける(そしてアリガトをもらう)インセンティブが発生します。

また、アリガトによる報酬が支払われるタイミングを翌日にずらすことによって、翌日継続率を押し上げる効果も狙っている点がスバラシイです。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・人の役に立つことによってポイントを稼ぐ仕組みが実装されているか?・交流の報酬を、翌日のログインボーナスに転用して、継続率を稼げないか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■『伝説のまもりびと』のコミュニティ設計分析:その5

<ゲームのメインサイクルに、他のプレイヤーへの巡回が入っている>

このゲームでは、経験値を稼ぐ手段として、クエストをクリアする以外に、「修行」というコマンドが用意されています。修行では、他のプレイヤーのマイページを巡回して、その度に他プレイヤーと「修行」を行って経験値を稼ぐことが出来ます。(修行はボタンを押すだけで一瞬で終了する)

その際、そのプレイヤーに「アリガト」を残していくことが出来ます。また、他のプレイヤーのマイページには、そのプレイヤーのアバターと、一言コメントが表示されます。

このときに、気に入ったプレイヤーがいれば、仲間申請を出すことが出来ますし、そのプレイヤーのレベルや装備品をみて「自分もこうなりたいな」と思うことができます。このように、ゲームのメインサイクルに、他人との交流を促す導線が入っている点がポイントです。

ちなみに、一言コメントには、他のプレイヤーへの感謝の言葉や、自分がログインする時間帯などが大量に書かれており、コミュニティの盛り上がり具合がよくわります。

<あなたのゲームに活かせるチェックポイント>

・ゲームのメインサイクルとして、他人と交流する仕組みが入っているか?・交流する際に、交流された相手にもメリットがあるようになっているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■『伝説のまもりびと』のコミュニティ設計分析:まとめ

<人の助けを借りると圧倒的に有利になるゲーム性>・他のプレイヤーのキャラクターを借りるなど、他人のリソースを借りて 協力して遊べる要素がが入っているか?・リソースを借りた相手に感謝をしっかり伝えられる仕組みが入っているか?

<非同期だけど、ログイン時間が近いだけで絆を感じられるゲーム設計>・仲間のログイン時間がゲーム性に影響を与える遊びは入れられないか?

<ただログインするだけで人の役に立てるお手軽さ>・お手軽な手段で、人の役に立つことができる仕組みを入れられないか?・他人から援護要請があった場合、プレイヤーに負担を感じさせていないか?

<人の役に立てば立つほど、自分も有利になる>・人の役に立つことによってポイントを稼ぐ仕組みが実装されているか?・交流の報酬を、翌日のログインボーナスに転用して、継続率を稼げないか?

<ゲームのメインサイクルに、他のプレイヤーへの巡回が入っている>・ゲームのメインサイクルとして、他人と交流する仕組みが入っているか?・交流する際に、交流された相手にもメリットがあるようになっているか?

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■2、成功タイトルのコミュニティ設計分析

■『伝説のまもりびと』のコミュニティ設計分析:まとめ(その2)

まもりびとは、他のプレイヤーと交流や協力できる導線だけではなく、他のプレイヤーに感謝するシチュエーションが何度も発生するようにゲームがデザインされています。

そのため、強くなった自分のキャラを仲間に使って貰うために、自分のキャラをもっともっと鍛えたい、とまで思えるゲームとなっています。

ゲームのメインサイクルに、友達との協力要素をうまく組み込み、最終的には友達を助けることが目的化するまでコミュニティを昇華させるという、見事なゲームデザインが行われています。

まもりびとは、リリースされてからもうすぐ2年たちますが、今なお先進的なタイトルですので、ぜひプレイして研究してみてください。

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■3、本日の講演のまとめ

3、本日の講演のまとめ

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■3、本日の講演のまとめ

■本日の講演のまとめ

チャット、掲示板、メッセージ機能や宅配システムなど、ゲーム内で充実したコミュニケーション手段を提供するのは当然として、ゲームシステムとコミュニティ要素を融合させることによって、初めてオンラインゲームのコミュニティは活性化されます。

<まとめ>

1,ゲームシステムとコミュニティを同時に設計してこそオンラインゲームである!

2,あなたのゲームを上手に『大人の部活動』化して、一生遊び続けたいと思える  ゲームを作って下さい!

以上です。ありがとうございました。

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