研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集...

12
日本言語文化研究会論集 2011 年第 7 号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第 2 言語習得研究の観点からの考察 横山紀子、久保田美子、阿部洋子 要旨 中国などアジアを中心とする地域では、暗記暗唱を通した言語学習が伝統的に行われ、相 応の成果を上げてきた。本稿は、暗記暗唱が「なぜ」「どんな成果を」もたらしたのかについ て、第 2 言語習得研究の観点から考察した。暗記暗唱の過程では、高頻度のインプットとア ウトプットに加え、気づきや認知比較、モニタリングが頻繁に生じること、また、これらの ことがテキスト全文を対象に生じることから言語項目の「学び残し」がないことを理論面か ら指摘した。次に、学習者が実際に暗記暗唱をしている過程を発話思考法及び回想インタビ ューによって調査した結果を分析し、理論面で検討したことをある程度裏付ける現象を報告 した。 〔キーワード〕第 2 言語習得研究、暗記暗唱、認知プロセス、気づき、認知比較 1.はじめに 654 名(59 か国)のノンネイティブ日本語教師を対象に学習経験とビリーフの調査を行っ た久保田(2007)は、東アジア、東南アジア、東欧・ロシア地域の日本語学習者の中に「文 法・訳読・暗記型」の学習経験を強く持つ者が多いことを報告した 1 。また、そうした学習 経験の実態をインタビュー調査によって調べた久保田(2009)では、中国、ベトナムの日本 語教師が、新聞の社説全文を暗記して教室の前で一人ずつ暗唱する、教科書の本文や宿題な ど「勉強したことの 90 パーセント以上」暗記するなど、文章全体を暗記するような学習を行 っていたことを報告した。さらに、久保田・阿部・横山(2008, 2011)は、このような学習 経験がどのような学習成果を導いたのかを追究する目的から、「文法・訳読・暗記型」の強い ベトナム人教師 7 名と、「コミュニカティブな学習型」 2 の強いオーストラリア人日本語教師 7 名の OPI 発話サンプル 3 を比較した。同じ「中級の上」あるいは「中級の中」と判定された 両群の同じ課題発話 4 の質を分析した結果、オーストラリア人日本語教師は、限られた基礎 的な語彙や文型を駆使してスピーディ且つ流暢に話す傾向があるのに対し、ベトナム人日本 語教師は、流暢さの点では务るが、基礎的なものに限らない豊富な語彙や文型(例:複文) を用いていることを報告している。 本稿では、アジアの学習者を中心に暗記暗唱が盛んに行われ、ある程度の成果を挙げてき たことに注目し、暗記暗唱に重点を置いた学習が「なぜ」「どんな成果を」もたらしたのかに

Transcript of 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集...

Page 1: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

日本言語文化研究会論集 2011 年第 7号 【研究ノート】

暗記暗唱に働く認知プロセス:第 2言語習得研究の観点からの考察

横山紀子、久保田美子、阿部洋子

要旨

中国などアジアを中心とする地域では、暗記暗唱を通した言語学習が伝統的に行われ、相

応の成果を上げてきた。本稿は、暗記暗唱が「なぜ」「どんな成果を」もたらしたのかについ

て、第 2言語習得研究の観点から考察した。暗記暗唱の過程では、高頻度のインプットとア

ウトプットに加え、気づきや認知比較、モニタリングが頻繁に生じること、また、これらの

ことがテキスト全文を対象に生じることから言語項目の「学び残し」がないことを理論面か

ら指摘した。次に、学習者が実際に暗記暗唱をしている過程を発話思考法及び回想インタビ

ューによって調査した結果を分析し、理論面で検討したことをある程度裏付ける現象を報告

した。

〔キーワード〕第 2言語習得研究、暗記暗唱、認知プロセス、気づき、認知比較

1.はじめに

654名(59か国)のノンネイティブ日本語教師を対象に学習経験とビリーフの調査を行っ

た久保田(2007)は、東アジア、東南アジア、東欧・ロシア地域の日本語学習者の中に「文

法・訳読・暗記型」の学習経験を強く持つ者が多いことを報告した 1。また、そうした学習

経験の実態をインタビュー調査によって調べた久保田(2009)では、中国、ベトナムの日本

語教師が、新聞の社説全文を暗記して教室の前で一人ずつ暗唱する、教科書の本文や宿題な

ど「勉強したことの 90パーセント以上」暗記するなど、文章全体を暗記するような学習を行

っていたことを報告した。さらに、久保田・阿部・横山(2008, 2011)は、このような学習

経験がどのような学習成果を導いたのかを追究する目的から、「文法・訳読・暗記型」の強い

ベトナム人教師 7名と、「コミュニカティブな学習型」2の強いオーストラリア人日本語教師

7名の OPI発話サンプル 3を比較した。同じ「中級の上」あるいは「中級の中」と判定された

両群の同じ課題発話 4の質を分析した結果、オーストラリア人日本語教師は、限られた基礎

的な語彙や文型を駆使してスピーディ且つ流暢に話す傾向があるのに対し、ベトナム人日本

語教師は、流暢さの点では务るが、基礎的なものに限らない豊富な語彙や文型(例:複文)

を用いていることを報告している。

本稿では、アジアの学習者を中心に暗記暗唱が盛んに行われ、ある程度の成果を挙げてき

たことに注目し、暗記暗唱に重点を置いた学習が「なぜ」「どんな成果を」もたらしたのかに

Page 2: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

ついて、第 2言語習得(Second Language Acquisition 以下、SLA)研究の観点から考察して

いく。暗記暗唱が伝統的に行われてきた中国、ベトナム等では、曾ては教科書だけが唯一の

学習リソースであり、それを隈無く憶えこむことが学習を成功させる早道であったが、この

10数年のインターネットやメディアの普及で、時代は大きく転換しようとしている。暗記暗

唱によって学んだ教師とドラマやアニメを始めとする豊富なリソースから多くを吸収する若

い学習者との世代差は大きく開き、「曾て自分が学んだように教えても通用しない」ことに悩

む教師が多い。急速な社会変化を背景に、言語教育の進む方向が模索されているが、その際、

曾て多くの学習者を成功に導いた暗記暗唱という学習方法について、単に「時代遅れ」だと

して忘れ去るのではなく、SLA 研究の科学的知見によって分析し、客観的評価を行っておく

ことは、今後の学習方法選択の視野を広げることにつながるものと考える。

2.研究の背景

2.1 教授法の歴史における暗記暗唱の位置づけ

第 2言語教授法の歴史をふり返ってみると、1950年代に最盛期を迎えたオーディオリンガ

ル法においては、その学習理論の基盤であった行動主義の提唱により「刺激と反応」の繰り

返しが言語能力を発達させるとの考え方から、反復練習などのパターン練習と並んで暗記も

主要な位置を占めていた。しかし、60年代後半に始まったオーディオリンガル法への批判は、

人間の言語発達が単なる模倣と繰り返しではなく、もっと創造的な営みを通して養成される

べきことを指摘し、それとともに暗記も言語教育方法の選択肢からはずれていった(Richards

& Rodgers 1986; Nunan 1991: 228-248)。オーストラリアで 1980年代に提唱された LOTE政

策(Languages Other Than English:初等・中等教育に英語以外の第 2言語学習を積極的に

導入する政策)に基づいて開発された ALL(Australian Language Levels)ガイドラインも、

個人の意志や感情に基づいた主体的な言語活動を言語学習の中心とすることを提案し、暗記

のように言語形式の厳密な正確さを求める活動は、その提案の対象からはずれている(Vale,

Scarino & McKay 1991)。

2.2 中国等アジア 5の言語学習の文化的特徴

一方、中国、ベトナム等アジアの言語学習においては、近年も暗記暗唱が広く行われてお

り、コミュニカティブ・アプローチ等欧米で開発された教授法をアジアに導入しようとする

際に生じる摩擦が多くの文献によって報告されている(Li 1998; Ellis, G. 1996; Rao 2002

等)。特に中国に関しては報告が多く、たとえば、Hu(2002)、 Rao(2006)、 Jin & Cortazzi

(2006)は、いずれも、中国の「学習文化(culture of learning)」の特徴として、教師中

心、教科書重視、暗記暗唱などを挙げ、儒教の強い影響に言及している。Jin & Cortazzi(2006)

は、儒教の伝統に基づく学習文化を詳細に分析し、それが常に受身で一方向的なのではなく、

学習者自身による解釈や自問自答、熟考などの内省的行為を伴っていることを指摘する。ま

Page 3: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

た、Hu(2002)は、中国人学習者の重用する学習方法である暗記(memorization)は、いわ

ゆる機械的学習(rote learning)とは区別されるべきもので、テキスト内容の理解を必須と

し、自問自答や内省を伴う心的に活発な活動であること(mental activeness)を指摘し、Jin

& Cortazzi(2006)と同様の見解を示している。

ここで注目したいのは、暗記という行為が、上述の教授法の歴史の中では「単なる模倣と

繰り返し」だとして衰退したのに対し、中国の学習文化の中では「単なる機械的学習ではな

く、解釈や自問自答、熟考を伴う心的に活発な活動」とされている点である。両者の違いは、

同じ行為に対する異なる学習文化による解釈の違いである部分もあろうが、次に述べるよう

に、「暗記」という言葉が指す行為の実態の違いも関わっていると考えられる。暗記には、単

語の暗記に代表される脱文脈におけるものと、文脈のあるテキスト全体を暗記暗唱するもの

があるが、「自問自答、熟考を伴う」可能性が強いのは後者である。以下、暗記暗唱が第 2

言語の習得においてどのような役割を果たしうるかを考察する本稿では、文脈のあるテキス

ト全体の暗記暗唱のみを対象として分析していく。

2.3 言語学習に働く認知プロセス

Ellis, R.(2003)は、学習活動の有効性を表層ではなく深層の認知プロセスに見ようと

する。SLAの研究成果に基づいた指導方法として注目される Task-based language teaching

(以下、TBLT)に対する評価を論じる中で、Ellis は、自然で真正性の高いコミュニケーシ

ョンと習得に有効なコミュニケーションとは必ずしも一致しないことを指摘している。教室

で自然なコミュニケーション活動を行う場合、学習者は言語の(学び手ではなく)使い手に

徹することが期待されるが、そのコミュニケーション活動の合間には(言語の使い手から)

学び手に戻って言語形式に注意を払う瞬間があり、その瞬間こそが言語習得にとって不可欠

のプロセスだとする。また、TBLTの真髄は、教室外で生じるようなコミュニケーション活動

をそのまま教室で生じさせることなのではなく、教室外のコミュニケーションで起こる認知

プロセス、すなわちトップダウン処理やボトムアップ処理、気づきや意味交渉などをタスク

を通して経験させることであると述べている(Ellis 2003: 333-336)。このように学習の深

層における認知プロセスに注目する Ellis(2003)の視点に倣い、本稿では、暗記暗唱に働

く認知プロセスを SLA研究の知見に基づいて探っていく。

以下の第 3章では、暗記暗唱に働くと考えられる認知プロセスについて理論面から検討す

る。続く第 4章では、学習者が実際に暗記暗唱をしている過程を発話思考法及び回想インタ

ビューによって調査した結果を報告し、理論面で検討したことを裏付ける。

3.暗記暗唱に働く認知プロセス:理論的検討

3.1 第 2言語習得過程モデル

図 1 は、Ellis(1993, 1995)が示す第 2 言語習得過程のモデル図を本稿に関連のない部

Page 4: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

図 1:第 2言語習得過程モデル

インプット インテイク 暗示的知識 アウトプット

明示的知識

気づき 認知比較 モニタリング

インプット インテイク 暗示的知識 アウトプット

明示的知識

気づき 認知比較 モニタリング

分を省いて再生したもので 6、実線の矢印は習得にとって主要なプロセスを、破線の矢印は

派生的なプロセスを表す(日本語訳は本稿執筆者)。

図 1 は、学習者が目標言語に関して持っている知識を、①明示的知識(explicit

knowledge:意識的学習を通して得る明示的に説明可能な知識)と②暗示的知識(implicit

knowledge:言語運用を直接的に支える直感的な知識)に分けて考えることを前提として構成

されている。SLA 研究は、明示的知識と暗示的知識の関連(インターフェイス)を巡って多

くの議論を経てきたが、この図は

多くの実証研究によって支持され

る 弱 い イ ン タ ー フ ェ イ ス

(weak-interface model)の立場

を採り、習得過程を次のように説

明する。

学習者が受けるインプットの

中で、学習者にその意味が理解さ

れ、さらに「気づき」(言語形式と

意味の照合)を経た言語項目は、インテイクされて記憶に残り、やがて暗示的知識として貯

蔵される。その際、その言語項目に関する明示的知識を持っていることは、「気づき」を促進

する役割を果たす(言語習得における「気づき」の必要性については Schmidt 1990を参照)。

明示的知識が言語習得に貢献するもう一つのプロセスは「認知比較」(cognitive comparison)

である。「認知比較」とは、学習者自身のアウトプットを学習者が得るインプットと比べるこ

とで、学習者が「自分だったらこのように言う」という仮説としての言語形式を目標言語母

語話者によるインプットと比較することにより、その正確さ・適切さを検証するプロセスで

ある。さらに、明示的知識は、アウトプットの正確さ・適切さをチェックする「モニタリン

グ」を通してアウトプットの質を高める機能を担う。

3.2 暗記暗唱の過程

以下では、暗記暗唱の過程で働くと考えられる認知プロセスを上記の図に添って分析し、

習得に貢献すると考えられる点と習得にとって問題が生じると考えられる点に分けて、理論

的な考察を行う。

3.2.1 暗記暗唱が習得に貢献すると考えられる点

暗記暗唱が習得に貢献すると考えられる点を以下に列挙する。

① 高頻度のインプット:暗記暗唱ではテキストを読む行為が繰り返され、学習者は自ら自

分自身にテキスト内のインプットを与えることになる。音読を伴えば、文字によるイン

プットに音声によるインプットが加わる。

② 高頻度のアウトプット:暗記暗唱の過程では、記憶しようとするテキストを(声を出さ

Page 5: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

ない場合は頭の中で)産出する行為が繰り返され、学習者はアウトプットを高頻度で行

う。

③ 気づき:憶えにくい箇所に注意を払う際は、特定の言語項目への「気づき」が生じてい

ると考えられる。

④ 認知比較:同じテキストに関して①インプットと②アウトプットを繰り返す過程では、

学習者のアウトプットをテキストからのインプットと比べて検証する「認知比較」が頻

繁に生じる。

⑤ モニタリング:アウトプット(暗唱)の際には「モニタリング」が強く働くと想定され

る。

さらに、①~⑤の認知プロセスの集積の結果生じる効果として、「学び残し」がないこと

が挙げられる。自由なアウトプットでは、未習得の(あるいは自在に制御できる段階には至

っていない)言語項目が回避される可能性が高い。それに対し、一字一句を再生する暗記暗

唱では、放置しておけば回避される(あるいは化石化する)恐れのある言語項目に至るまで、

①~⑤のプロセスを繰り返すことによって習得を進める可能性がある。「学び残し」がないこ

とは、コミュニケーション中心の学習方法では得られない効果であることから、以下、Swain

(1995)のアウトプット仮説に言及しながら詳説する。

アウトプット仮説が主張するように、「聞く」「読む」などのインプット理解活動では意味

処理が中心で、意味理解に支障のない構文要素には注意が払われないのに対し、アウトプッ

ト活動では(インプットでは無視することも可能な)細かい構文要素に至るまでの統語処理

が必然的に求められる。暗記暗唱におけるアウトプットでは、テキストを何度か読むことに

よって学習者の心内に構築された意味を統語処理によって言語に移し替えていくことになり、

そこでは(与えられた意味の再構築を求められていることから)回避は起こりにくい。また、

仮に回避したとしても、直後にテキストで確認する際に、その言語項目の存在に気づかされ

る。Swain(1995)は、アウトプットの機能として、①自らの中間言語の不足に気づくこと、

②中間言語の仮説を検証すること、③中間言語の使い方について内省することを挙げている

が、暗記暗唱におけるアウトプットにおいては、自由なアウトプットでは回避してしまう恐

れのある言語項目についても、①~③の機能が十全に働くと考えられる。この点については、

第 4章で調査結果を述べる際に、再び言及する。

Kowal & Swain(1994)等アウトプット仮説の検証を試みる研究では、音声で与えられる 1

段落程度のテキストを 2-3回聞いて内容を理解した後テキストを再構築する「ディクトグロ

ス」と呼ぶタスクを用いることが多い。Kowal & Swain(1994)は、「ディクトグロス」が豊

かな内容を含んだ文脈のあるテキストを用いることから、文脈に即して言語形式を学ぶこと

ができると述べているが、暗記暗唱においても、テキストに出現する文法項目等が文脈を伴

った状態でインプットされ、且つアウトプットされる。従って、短文レベルの暗記や文法練

Page 6: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

習とは異なり、当該文法項目が文脈の中でどう使われるかという文脈情報と共に処理される。

「ディクトグロス」や暗記暗唱におけるテキストの再構築は、予めモデルが与えられている

点で、任意のコミュニケーションにおけるアウトプットとは異なり、再構築におけるアウト

プットをすなわち習得の達成とは認められないが、モデルが文脈情報を伴っている点は習得

にとって重要な条件だと考えられる。第 4章では、学習者が実際に暗記暗唱をしている過程

を観察するが、その際、文脈情報がどのような役割を果たしているかに注目したい。

3.2.2 暗記暗唱が習得にとって問題になると考えられる点

暗記暗唱が習得にとって問題を生じると考えられるのは、主に以下の 4点である。

① 発音の化石化:学習者が自らテキストを音読しながら暗記暗唱を進める場合、音声面で

誤ったインプット(学習者自身の発音)を与えてしまう可能性が尐なくない。

② 応用力の欠如:如何に高頻度のインプットとアウトプットを行っても、暗記によるアウ

トプットは自由なアウトプットと等価ではなく、現実の言語使用場面に求められる即興

的な産出力や出会ったことのない場面を制御する応用力の養成にはつながらないと考え

られる。

③ 過剰な正確さ志向:テキスト通りの産出を求められる暗記暗唱では、3.2.1で考察したよ

うに、正確な言語運用に貢献すると考えられる一方で、正確さ志向が過剰に働き、流暢

さの欠如に結びついたり、対人のコミュニケーションに臆病な学習者を育ててしまう可

能性がある。

④ 心理面の苦痛:暗記暗唱を継続的に行うことは、多くの学習者にとって苦痛である。

上記の中で、「①発音の化石化」は録音教材を用いることで回避することが可能だし、「④

心理面の苦痛」は強い精神力で乗り越える学習者も多い。しかし、インターアクションを伴

わない暗記暗唱学習が応用力の欠如、流暢さの欠如に結びつくことは否めず、「独話に強くて

も対話に弱い」学習者を生む可能性が高いと考えられる。

4.暗記暗唱に働く認知プロセス:実証的裏付け

初級学習の際に暗記暗唱を習慣的に行った中国人学習者 2名を対象に、短い文章を暗記暗

唱してもらう調査を行った。調査対象者は中国の大学で専攻科目として日本語を教える中国

人教師 2名で、ノンネイティブ日本語教師対象の研修受講のため来日中(約 2ヶ月)に調査

を実施した。背景は表 1の通りである。C1、C2には、事前に、学習経験調査(注 1参照)

を行い、さらにその中から「役に立った活動」上位 3位まで選ばせたところ、「3.教科書の

文や会話を暗記した」を 1番役に立った活動として挙げた。

Page 7: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

調査方法は、下に示す文章を発話思考しながら暗記暗唱してもらってプロトコル(発話を

録音したデータ)を収集した。また、暗記暗唱終了直後に発話思考時の録音を聞き返しなが

ら回想インタビューを行った。なお、調査時にはテキストにルビを付した。

以下、プロトコルおよびインタビューに基づいて、学習者 C1、C2 それぞれの暗記暗唱過

程の概要を記す。C1が暗記を完成するのにかかった時間は 12分、C2は 6分である。2人と

も初回は全文を通して、2回目以降は部分的に繰り返したり、言い直したりしながら、C1は

通算 14回、C2は通算 7回、小声で読んだ。以下、繰り返しや言い直しが生じた箇所に関し

て、回想インタビューの内容を記す。「難しかったので注意した」と述べた箇所および言い直

した箇所はゴシック体で示す。回想の内容は【 】内である。

(a)この話をする前に、「時間というものは作ることができない」という、あたり前のこと

を言っておきたい。1日が 24時間であることを変えることはできない。【最初の 2文は

意味のつながりが弱いので憶えにくかった。第 2段落の方が論理的な構成になっている

ので憶えやすかった。〔C1〕】【意味のつながりを確認するために2文目を2回繰り返した。

また、「1日が 24時間であることを変えることはできない」の部分は、自分だったら「1

日 24時間を変えることはできない」と言ってしまうだろう。〔C2〕】

(b)時間というものが→は作ることができない【自分ではつい「が」と言ってしまうので、

何度も繰り返した。〔C1〕】

(c)時間というものは作ることができません→できない【普通体は使い慣れない。〔C1〕】

(d)睡眠時間を削ればいいと言う人もいるだろう。【睡眠時間は「減らす」でなくて「削る」

だということに注意した。「削ればいい」と仮定形を使うことにも気をつけた。〔C1〕】【「削

る」は自分では使わない動詞だ。自分なら「取り消す」という言葉を使うだろう。〔C2〕】

表 1:調査対象者の背景

日本語学習歴 日本語習熟度 過去の滞日経験 日本語教授歴

学習者C11990年代 大学専攻課程(4年間)2000年代 大学院(3年間)

日本語能力試験*2級:98% 1級:88%

無 3年

学習者C21980年代 大学専攻課程(4年間)1980年代 大学院(2年間)

日本語能力試験*2級:80% 1級:58%

通訳等で数回通算1年近く

20年

*日本語能力試験(旧試験)は過去問題を使った模擬試験

この話をする前に、「時間というものは作ることができない」という、あたり前のこと

を言っておきたい。1日が 24時間であることを変えることはできない。

睡眠時間を削ればいいと言う人もいるだろう。必要な睡眠時間は個人差があるうえに、

無理をすると苦痛も大きい。楽しいことをするために睡眠時間を削るのはそれほど苦にな

らないものだけれども、勉強のために睡眠時間を削るなど、なかなかできるものではない。

『平成16年度日本語能力試験 試験問題と正解 1・2級』p.75

Page 8: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

(e)必要な睡眠時間は個人差があるうえに、無理をすると苦痛も大きい。【「うえに」や「苦

痛も大きい」は自分では使わない表現なので気をつけた。〔C1〕】【「苦痛も大きい」のと

ころは「苦しい」と言ってしまって、言い直した。〔C2〕】

(f)楽しいことをするために睡眠時間を削るのはそれほど苦にならないものだけれども【「こ

と」と「もの」、「こと」と「の」の違いに気をつけた。〔C1〕】【自分では「~ものだ」は

使えない。「~ということは~ものだ」という型で習ったことを思い起こした。〔C2〕】

(g)苦にならないものだけれども【自分は使わない表現なので何度も繰り返した。〔C1〕】

(h)勉強のために睡眠時間を削るなど【「など」を置く位置に注意した。〔C1〕】

(i)睡眠時間を削るなど、なかなかできないものではない→なかなかできるものではない【自

分だったら「なかなかできない」と言ってしまいそうで、何度も繰り返した。〔C1〕】

次に、「3.2.1 暗記暗唱が習得に貢献すると思われる点」に言及しながら、理論的に検討

した内容を実証面から考察する。まず、テキスト全体を通して C1が 14回、C2が 7回という

高頻度の「①インプット」および「②アウトプット」が生じていることが確認できた。部分

的にはさらに多くの繰り返しが生じており、繰り返しや言い直しの箇所は、「は/が」「もの

/こと/の」「睡眠時間を削る」「個人差があるうえに」「苦痛も大きい」「なかなかできるも

のではない」など、一般的に学習者にとって難度が高いと思われる言語項目である。注目す

べきは、これらの箇所に関する回想において、波形下線で示したように、「注意した」「気を

つけた」などの表現により「③気づき」や「⑤モニタリング」の現象が示唆されていること

である。

また、単下線で示したように、「自分では使わない」「自分だったら○○と言ってしまう」

ということが何度も述べられており、学習者のアウトプットをテキストからのインプットと

比べて検証する「④認知比較」が生じていることを示唆している。このテキストの暗記暗唱

を通して、学習者は、たとえば、自分だったら「睡眠時間を減らす」と言ってしまうところ「睡

眠時間を削る」の方が適切であること、自分だったら「なかなかできない」で済ませてしまう

ところ「なかなかできるものではない」の方が豊かな文章表現であることに気がついている。

同時に、回想の中で、C1は「注意した箇所を憶える時は、なぜそこでその項目が使われてい

るか理由を考える。つまり、習った知識を思い起こす。」と述べ、C2 は「(憶えにくかった)

「~ものだ」の部分を憶える時は習った文型を思い起こした。」と述べているが、図 1に沿っ

て言い換えれば、インプットを明示的知識(学習した知識)と照合し、「気づき」と「認知比

較」が起きていると解釈できる。すなわち、アウトプット仮説が挙げたアウトプットの役割、

①自らの中間言語の不足に気づくこと、②中間言語の仮説を検証すること、③中間言語の使

い方について内省することのいずれもが生起している。

さらには、暗記の過程で注意するのは「自分では使わない」表現だと述べていることから、

任意のアウトプットでは回避される可能性の高い言語項目への「気づき」や「認知比較」が

Page 9: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

起こっていること、すなわち「学び残し」がないことの傍証が得られたと考えられる。

C1も C2も、学生時代、教科書本文のテキストはすべて暗記暗唱したと述べている。この

ように暗記暗唱を集中的かつ継続的に行ったことについて、どんな効果があったと思うかと

いう質問に対し、C1は「もし文型だけを勉強して暗記暗唱しなかったら、実際に話したり書

いたりする時には文型から文を作らなければならないが、暗記暗唱していれば、必要な時に

表現がまるごと出てくる。」としている。C2も同様のコメントに加えて、「テストで文法の正

誤問題に解答する時も、(数多くのテキストを暗記した経験から)聞いたことがある/読んだ

ことがあるということが正誤判断の基準になる。」としている。すなわち、2人とも暗記暗唱

を通した学習が直感的な言語知識の獲得に役立ったとし、継続的な暗記学習が暗示的知識を

促進したことを裏付ける発言をしている。

最後に、第 3章で指摘したように、テキストの暗記暗唱が短文レベルの暗記や文法練習と

は異なり、文脈情報を伴っていることについて考察する。C1 によれば、暗記は、「はじめは

全体の意味を理解し、意味が理解できたら、見ないで言ってみて、詰まったらまたテキスト

を見る」という手順で進めるという。また、本調査においても、上述のとおり、「最初の 2

文は意味のつながりが弱いので憶えにくかった。第 2段落の方が論理的な構成になっている

ので憶えやすかった。〔C1〕」「意味のつながりを確認するために2文目を2回繰り返した。〔C2〕」

(以上、下線は本稿執筆者)という回想プロトコルを残している。これらの発言から、2 人

がテキスト文を鵜呑みにして「単なる模倣と繰り返し」をしているのではなく、テキスト理

解を経て心内に構築した意味をもとに、言語を再構築していることがわかる。与えられたモ

デルの再構築が習得の達成と異なる点には留保をつける必要があるが、前後関係や論理関係

等、複数の段落を通して初めて実現できる立体的な意味の言語化は、任意のコミュニケーシ

ョンで求められる心内の意味の言語化と通じるものがあり、実際の言語使用体験が得られに

くい環境における疑似体験として、相応の役割を果たしたものと考えられる。

5.まとめと今後の課題

曾て暗記暗唱が広く行われていた中国等では、その教育文化の特徴故に暗記暗唱が盛んで

あっただけではなく、教材等のリソースが不足する中で、限られた教材を隅々まで利用する

上でも、暗記暗唱は理に適った学習方法であり、数多くの学習者の言語習得を支えてきた。

しかし、教科書だけを学習リソースとする時代は急速に幕を引きつつあり、今後、暗記暗唱

の学習習慣も次第に薄れていくことが予想される。コミュニケーション中心の教授法が導入

され、教授法の選択肢が広がることは歓迎すべきことだが、同時に、曾て一定の成果をあげ

た学習方法について、科学的知見に基づいた分析と評価を行い、新時代の教授法の中に活か

していくことが重要である。具体的には、最近の学習者が好むドラマやアニメを活用して、

「ディクトグロス」に代表されるフォーカス・オン・フォームの指導テクニックを導入する

Page 10: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

など、豊かな文脈を持つテキストについて部分的な再構築を行う活動には、暗記暗唱に働く

認知プロセスと同様の役割が期待できるであろう。

本稿では、暗記暗唱にどんな認知活動が働いているかについて、理論面から考察した後、

学習者が実際に暗記暗唱を行う過程を観察し、理論的考察をある程度裏付けることができた。

しかし、本研究では、調査対象者が 2名と非常に尐ないこと、また、今回の調査では暗記暗

唱を高く評価する学習者のみを対象としていることなど、暗記暗唱の全貌を明らかにするに

は至っていない。第 1章で、「文法・訳読・暗記型」のベトナム人教師が複文などを多く使用

する一方で流暢さを欠く傾向に触れたが、今後、学習経験と学習成果の関連を探る調査を拡

大し、暗記暗唱のマイナス面が習得結果にどのように現れるのかについても探求していきた

い。

注 1 具体的には、以下の 14項目に対して 4段階の頻度(1.全然行わなかった、2.ときどき

行った、3.よく行った、4.いつも行った)を選択することを求めた。「1.教師の講義

や訳を聞いた、2.教科書を読んで訳した、3.教科書の文や会話を暗記した、4.文法の

練習をした、5.日本語の短文を書いた、6.日本語で作文をした、7.教師の質問に日本

語で答えた、8.テープやCDを聞いた、9.ビデオやDVDを見た、10.ペアワークを

した、11.ロールプレイをした、12.調査や研究をして報告や発表をした、13.日本語

でディスカッションやディベートをした、14.歌やゲームをした」。得られた結果に対し

て因子分析を行ったところ、「コミュニカティブな活動型」「文法・訳読・暗記型」「作文・

報告・ディベート型」の 3つの因子が抽出され、「文法・訳読・暗記型」因子の地域別因

子得点平均値は、東アジア(3.11)、東南アジア(3.02)、東欧・ロシア(3.06)、西欧(2.89)、

南アジア(2.78)、中近東・アフリカ(2.77)、中南米(2.57)、北米(2.56)、大洋州(2.55)

であった。 2 注(1)に記した調査の結果、オーストラリアは「コミュニカティブな活動型」が強かっ

た。 3 OPIは、ACTFL(全米外国語教育協会)が開発した口頭能力試験Oral Proficiency Interview

で、「初級の下」から「超級」まで 10段階の評定を行う。 4 30分の OPI発話サンプルの中から、自分の住む町について説明するなどの説明タスクを

行っている部分を抽出した。 5 日本国外務省の地域区分ではオーストラリアは大洋州に位置づけられている。 6 Ellis(1993, 1995)が示すモデル図には、図 1の内容に加え、指導(formal instruction)

の機能が示されているが、本稿には関連がないことから省いた。

Page 11: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

参考文献

(1) 久保田美子(2007)「ノンネイティブ日本語教師のビリーフの研究」明海大学大学院

博士学位論文

(2) 久保田美子・阿部洋子・横山紀子(2008)「ベトナム人日本語教師の日本語運用力の

特徴-初期学習経験・ビリーフとの関係から-」『ハノイ大学日本語教育開始 35周年

記念国際シンポジウム予稿集』

(3) 久保田美子(2009)「ノンネイティブ日本語教師のビリーフの要因-インタビュー調

査から共通要因を探る-」水谷信子(編)『日本語教育をめぐる研究と実践』凡人社

185-210.

(4) 久保田美子・阿部洋子・横山紀子(2011)「国際交流基金レポート 19 日本語運用力

の特徴と学習経験・ビリーフとの関係~ベトナム・オーストラリアのノンネイティブ

日本語教師の場合~」『日本語学』6月号、66-77.

(5) Ellis, G. (1996) How culturally appropriate is the communicative approach? ELT

Journal, 50(3), 213-218.

(6) Ellis, R. (1993) The structural syllabus and second language acquisition. TESOL

Quarterly, 27(1), 91-113.

(7) Ellis, R.(1995) Interpretation tasks for grammar teaching. TESOL Quarterly,

29(1), 87-105.

(8) Ellis, R.(2003) Task-based language learning and language teaching. Oxford:

Oxford University Press.

(9) Hu, G.(2002) Potential cultural resistance to pedagogical imports: The case of

communicative language teaching in China. Language, Culture and Curriculum,

15(2), 93-105.

(10) Jin, L. & Cortazzi, M. (2006) Changing practices in Chinese cultures of learning.

Language, Culture and Curriculum, 19(1), 5-20.

(11) Kowal, M. & Swain, M.(1994) Using collaborative language production tasks to

promote students' language awareness, Language Awareness, 3(2), 73-93.

(12) Li, D. (1998) It's always more difficult than you plan and imagine: Teachers'

perceived difficulties in introducing the communicative approach in South Korea.

TESOL Quarterly, 32(4), 677-703.

(13) Nunan, D. (1991) Language teaching methodology. New York: Prentice Hall.

(14) Rao, Z. (2002) Bridging the gap between teaching and learning styles in East

Asian contexts. TESOL Journal, 11(2), 5-11.

(15) Rao, Z. (2006) Understanding Chinese students' use of language learning

Page 12: 研究ノート or 研究論文jlc/jlc/ronshu/2011/yokoyama.pdf日本言語文化研究会論集 2011年第7号 【研究ノート】 暗記暗唱に働く認知プロセス:第2言語習得研究の観点からの考察

strategies from cultural and educational perspectives. Journal of Multilingual

and Multicultural Development, 27(6), 491-508.

(16) Richards, J. C. & Rodgers, T. S.(1986)Approaches and methods in language

teaching : A description and analysis. Cambridge: Cambridge University Press.

(17) Schmidt, R. W. (1990) The role of consciousness in second language learning.

Applied Linguistics,, 11(2), 129-158.

(18) Swain, M. (1995) Three functions of output in second language learning, In Cook,

G. & Seidlhofer, B. (Eds.), Principle and practice in applied linguistics.

Cambridge: Cambridge University Press, 125-144.

(19) Vale, D., Scarino, A. & McKay, P. (1991) Pocket ALL: A users' guide to the

teaching of languages and ESL. Carlton South: Curriculum Corporation.