第8回日本の「稼ぐ力」創出研究会 ビッグデータ・人工知能...

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第8回 日本の「稼ぐ力」創出研究会 ビッグデータ・人工知能がもたらす 変革を日本の稼ぐ力とするために 事務局説明資料 2014年12月22日 経済産業省 経済産業政策局 資料3-3

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第8回 日本の「稼ぐ力」創出研究会

ビッグデータ・人工知能がもたらす変革を日本の稼ぐ力とするために

事務局説明資料

2014年12月22日経済産業省

経済産業政策局

資料3-3

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目次

1

1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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2

AI・ビッグデータの活用が求められる重点分野

生産・販売 モビリティ ヘルスケア エネルギー行政

(インフラ)

real → digital

情報収集

センサ性能の進化

digital→ intelligence

情報の蓄積・データ解析メモリ、処理アルゴリ

ズム(統計的機械学習)の進化

intelligence → real

処理(制御)

プロセッサ等の性能の進化

振動発電 熱電発電

無線LANスマートフォン

現場データの収集

カメラ

センサスマートメーター

バイタルセンサ

情報の活用

車載センサ

水処理分野

ウィルスセンサ

モニタリングセンサ

需要者に合わせた効率的なインフラ運営の実現

需要者に合わせた移動の実現

需要者に合わせた効率的なエネルギー供給の実現

需要者に合わせた健康・介護の実現

需要に合わせた効率的な工場生産の実現

需要者に合わせた効率的な商品提供の実現

目的に応じた「最適な組合せ」 異なる分野の機器、システムの連携

データベース データベース データベース データベース データベース データベース

高度な判断サービスや自動制御の実現

モデル モデル モデル モデル モデル モデル

・・・

・・・

・・・

・・・

業種横断 個別分野

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目次

3

1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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生産・販売活動の将来像(イメージ)

①生産の主流が、「規格品」から「テーラーメード品」へ変化

個人向けテーラーメイドが主流となり、個別の顧客ニーズに応えていない規格品の大量生産方式では、稼ぐことが難しくなる。

②設計のリードタイムゼロ

顧客情報(過去の購買履歴、購入商品の利用状況など)から、顧客が商品を必要とするタイミングを予測し、顧客からの発注前に顧客の欲する商品をテーラーメードで設計。顧客情報から顧客自身も意識していなかった好みを発見し、それに合った思いもよらない商品・サービスの提供も可能に。

③在庫ゼロ

②の設計情報と顧客の購入予測時期に合わせた生産スケジュールを部品メーカー・ 終製品メーカーが共有し、部品を供給、製品を生産し、予測通りの顧客の発注に応じて出荷。

4

• AI・ビッグデータの活用により、①個々の顧客ニーズのきめ細かな把握、②確度の高い需要予測などが可能となることで、生産・販売活動には、以下のような将来像がもたらされる可能性がある。

実現に向けた取組みの方向性• こうした変革を実現するためには、従来とは異なる革新的な生産システムが不可欠。• ドイツで進められているIndustrie4.0は、これらの変革を可能とする生産システムを

構築していく取組み。

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※1 CAD/ CAM/CAE: Computer Aided Design /Manufacturing/Engineering※2 Supervisory Control And Data Acquisition

PLM (Product Lifecycle Management)

製品設計 生産設計生産・生産

管理販売・保守

デジタルマニュファクチャリング(3D-CAD/CAM/CAE※1)

生産監視制御(SCADA ※ 2)

データ分析サービス

• テーラーメード(ロットサイズ1)の生産とリードタイム・在庫の削減を実現するためには、①設計から生産まで(PLM:下図の横の流れ)をデジタル化するとともに、②デジタル上でマーケットと生産を直接つなぐ『変種変量生産』(ERP:下図の縦のタテの流れ)により、顧客の多様なニーズに迅速に対応することが必要。

• Industrie4.0は、PLMとERPを生産部分を核にデジタル上で統合し、これを可能とする。

製造実行(MES※)

機器制御(コントローラ、FA機器)

受発注受発注

生産管理

生産生産

※Manufacturing Execution System

ERP (Enterprise Resource Planning)

・設計から保守までをデジタル化して、共通プラットフォームを構築することによって一貫したシミュレーションが可能になり、手戻りを防ぎ、設計から製造までのリードタイムが短縮できる。

・日本企業もこの方向性を志向するが、工程(製品設計、生産設計、生産、販売・保守)間の連携は不十分。

・我が国では、受発注情報に基づき、一定数の範囲内での混流生産により対応。ラインを組み換えてどんな製品もカスタムメイドで一品ずつ作るものにはなっていない。

・ドイツのインダストリー4.0は、ラインの作り込みからデジタル化対応を進め、生産ラインの自律的な組み換えを行うための技術開発を実施中。

・これが完成すれば、究極的にはロットサイズ1からの生産がラインを超え、工場を超え、企業を超えて実現する可能性あり。

欧米の取組①(ドイツ): Industrie4.0が可能とする生産プロセス (1/2)

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PLMソフトウェア(エンジニアリングツール)

• 設計~生産~販売までの製品関連データと、受発注~製造実行の生産関連データをリアルタイムに解析し、相互にフィードバックすることによって一連のサイクルを 適化・効率化。

• これにより、消費者ニーズが多様化する未来を見据え、ロットサイズ1生産のリードタイム削減・在庫削減の実現を目指している。

製品設計 生産設計 生産・生産管理 販売・保守

製造実行(MES※2)

生産監視制御(SCADA※1)

データ分析サービス

※1 Supervisory Control And Data Acquisition ※2 Manufacturing Execution System

Supply Chain Management

製品設計・生産設計(+α)連携強化

情報連携強化

ERPソフトウェア(業務計画・生産管理)

機器制御(コントローラ、FA機器)

受発注受発注

IoT・ビックデータ分析連携強化

デジタルマニュファクチャリング(3D-CAD/CAM/CAE※)

欧米の取組①(ドイツ): Industrie4.0が可能とする生産プロセス (2/2)

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欧米の取組②(米国): GE・Industrial Internetによる保守等の高度化

• Industrial Internetの実現に必要な標準化(相互運用可能なシステムやソフトウェアの規格作り等)を行うため、2014年3月に、 GE、IBM、intel、AT&T、Ciscoの5社が、Industrial Internet Consortiumを設立(事務局:米国のソフトウェア関係の標準化団体であるOMG)。現在は、日立、東芝、富士通等の日本企業も含め、100社以上が参加。

○140万の医療機器、28000基の航空機エンジンに1000万のセンサーを取り付け、日々5000万件のデータを蓄積・分析を実施。機器を監視し、異常の検知、メンテナンスの時期を通知。<効果の例>

・エアアジア(マレーシア)では、1000万ドルの航空燃料費を節約。2017年には3000万ドルを節約できる見込み。

○クラウドコンピュータのOSとして「Predix」を発表し、他社が使用できるようオープン化する予定。石油・ガス、電力、水、輸送、航空、医療等の24の分野向けのアプリケーションを提供。

• GEは、ネットワークで接続されたセンサにより取得されたデータを分析し、分析結果を活用することにより、航空機エンジン、火力発電、医療、鉄道、石油・ガス等の機器・設備の高度な設計、操作・制御、保守を可能にする「産業機器とITの融合(Industrial Internet)」を提唱。

製品設計 生産設計 生産(操作・制御) 販売・保守

<主要分野の例> 航空、電力、医療、鉄道、石油・ガス

<GEの取組み>

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我が国の現状と課題①: 立ち遅れる我が国

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• Industrie4.0は、以下の4つの段階で進めることとしている。これと比較した我が国の現状は以下の通り。①IDタグによる自律生産方式→自動化による生産の効率化(混流生産)~我が国企業でも、取組みが進展

②生産ラインの自律的組替え→顧客ニーズに応じた柔軟な生産を迅速化~我が国企業では、人手に依存しているのが通常

③PLM (Product Lifecycle Management)サイクル全体のデジタル化→開発から提供までのリードタイム削減と製品への顧客ニーズの柔軟な反映

~我が国企業では、各工程間の連携は不十分であり、②との連携もなし④上記生産プロセスを工場・企業を超えてサプライチェーン全体で 適化

→工場・企業の枠を超え、 適な生産ライン・設備を選択して生産~我が国企業の一部では、企業の枠内で、受発注と生産管理についてのみ行うにとどまっている

製品設計 生産設計 ①生産・生産管理 販売・保守

製造実行(MES)

生産監視制御

(SCADA※1)データ分析サービス

機器制御(コントローラ、FA

機器)

受発注受発注

デジタルマニュファクチャリング(3D-CAD/CAM/CAE)

③PLM②ERP

完成品メーカー

製品ドイツ製設備

部品メーカー

B

部品

ドイツ製設備(稼働率高)

部品メーカー

A

部品

顧客

大量の需要発生!

需要を予測の上、予め生産された出来たての製品を

直ちに出荷

ドイツ製設備(稼働率低)

国際標準化された通信規格

稼働率に余裕のある工場で部品を増産

④工場・企業を超えてサプライチェーン全体で

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Industrie4.0仕様の工場の新興国への輸出<事例>• シーメンスは、BMWの組立工場を中国にフルターンキー(設計から機器・資材・役務の調達、建設

及び試運転までの全業務を一括して請け負う契約)で納入。• 現地作業員は、単純な制御を担うのみで、習熟が不要であるにもかかわらず、 ①BMWの全車

種の1本の生産ラインでの製造(変種変量生産)、②99%以上の高い稼働率と高品質の生産を実現。

我が国の現状と課題②: 我が国産業への2つの影響

• 現地作業員は単純な制御を担うのみ(複雑な制御等のノウハウはブラックボックス)であり、高い習熟を要しない

• 日本型の変種変量生産は、生産現場の作業員の習熟が必要とされる部分が大きく、ノウハウも漏洩しやすい

• Industry4.0型の生産システムが競争優位を持つ可能性

我が国のFA機器の競争力の低下

• インダストリー4.0仕様の標準化の進展

• インダストリー4.0仕様の工場内の産業機械等はドイツメーカーに競争力優位

• 我が国仕様のFA機器が海外市場において競争に敗れるおそれ

我が国企業の海外生産における競争劣位

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我が国としても、「ロットサイズ1、設計のリードタイム・在庫ゼロ」などAI・ビッグデータ時代を勝ち抜くことのできる生産・販売システムの実現に向け、「Industrie4.0」や「Industrial Internet」との連携の在り方を含め、将来構想を描き、

①標準化

②技術開発 等

についてアクションプランを策定・実行していく必要があるのではないか。

10

求められる取組み

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目次

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1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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①「操作性能」に加え「安全・快適な移動ツール」が自動車の価値に

「安全・快適な移動サービス」の提供には、運行データの収集・分析・活用が必要に。

②「移動時間」が「自由時間」へと変化

運転操作が楽になり、車中で娯楽を楽しんだり、勉強や仕事をすることも可能に。

③社会全体での自動車の共有化

一台の車を多人数で共有して利用することも可能となり、自動車の稼働率が向上。

④その他

交通事故の減少(交通事故の9割は人為的ミス)。渋滞の緩和(国内での渋滞による損失を貨幣換算すると年間約12兆円)。

モビリティの将来像(イメージ)

AI・ビッグデータの活用により、自動車の無人走行を含む自動走行が可能となることにより、交通には、以下のような変革がもたらされる可能性がある。

実現に向けた取組みの方向性我が国企業は、こうした社会システムの変革をリードし、無人走行を含む自動走行が利用される社会において、主要な役割を担い、競争優位を築くことにより、その稼ぐ力を高めていく必要があるのではないか。

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Daimler2015年頃に自動駐車、2020年頃に高速道路、2025年頃に一般道路も含めた高度な自動運転の実現を目指す。

BMW 2020年までに高速道路における自動運転の実現を目指す。

BOSCH2020年頃に高速道路におけるほぼ完全な自動運転の実現を目指す。2020年代半ば以降に高速道路における完全な自動運転の実現を目指す。

Continental 2020年代半ば以降に完全な自動運転の実現を目指す。

Google2017年に自動運転の実現を目指す。本年5月にはブレーキもアクセルもない試作車を公表。

GM2017年までに高速道路本線における自動運転の実現を目指す。2020年までに高度なシステムを搭載した自動運転車の生産を目指す。

欧米の取組①: 自動走行システムの欧米各社の実現目標

13

欧米の主要自動車会社は、今後の10年程度の目標を掲げ、自動走行システムの開発を進めている。

(出典)メルセデス・ベンツによる自動運転実験に関する説明会、平成25年度特許出願技術動向調査報告書、日経新聞、みずほ産業調査、産経ニュースより

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欧米の取組②: 欧州各国の取組みを受けた条約の改正の動き

ウィーン道路交通条約

第8条:運転者第8.1条:あらゆる走行中の車両か連結車両には、運転者がいなけれ

ばならない。第8.5条:あらゆる運転者は、常に、車両を制御するか、又は動物を誘

導しなければならない。

(b)車両の運転方法に影響する車両システム…(中略)…、そのシステムに対し運転者が操作介入又はスイッチオフできる場合は、本項及び第13条第1項に適合しているものとみなす。

第13条:車両の間の速度と距離第13.1条:車両のあらゆる運転者は、いかなる状況においても、当然

かつ適切な注意をして、運転者に必要であるすべての操作を実行する立場にいつもいることができるよう車両を制御下におかなければならない。

・ 道路交通に係る国際条約として、日本や米国も加入するジュネーブ道路交通条約(1949年)と、ジュネーブ条約を発展させる形で作成され、EU加盟国の大半が加入するウィーン道路交通条約(1968年、日本や米国は非加盟)がある。どちらの条約においても、自動車は、常に運転者の制御下になければならないこととされている。

・ ウィーン道路交通条約については、2014年3月、ドイツ・フランス・イタリア等の提案に基づき、運転者が操作介入又はスイッチオフできる場合には、自動運転システムによる走行も運転者の制御下にある旨を明確化する改正が行われた。

・ これを受け、ジュネーブ道路交通条約においても、2014年9月に同旨の改正が提案されており、改正に向けた議論が進められている。

ジュネーブ道路交通条約

第8.1条:一単位として運行されている車両又は連結車両には、それぞれ運転者がいなければならない。

第8.5条:運転者は、常に、車両を適正に操縦し、又は動物を誘導することができなければならない。運転者は、他の道路使用者に接近するときは、当該他の道路使用者の安全のために必要な注意を払わなければならない。

第10条:車両の運転者は 常に車両の速度を制御していなければならず、また、適切かつ慎重な方法で運転しなければならない。運転者は、状況により必要とされるとき、特に見とおしがきかないときは、徐行し、又は停止しなければならない。

道路交通法

第70条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

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我が国の現状と課題①: 社会の将来像を欠いた技術開発

<内閣府:SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)自動走行システム研究開発計画)>

「自動車は多様な価値観のお客様が、様々な環境でご使用いただく商品であるため、技術のみで決めることはできない」等の理由から「有人か無人か」は定義していない。

自動車の無人走行を始め、自動走行に対する社会的ニーズ、自動走行が利用される社会像を明らかにしていくことが、今後の技術開発を加速させ、その幅を拡げ、また、新たな事業活動を創出していくため、必要があるのではないか。 15

<内閣官房:官民ITS構想・ロードマップ>「これまでの世界的に理解されている“自動車”の概念とは異なるものになり、したがって、これまでの自動車とは全く異なった形態として利用がなされることとが考えられる。このため、「完全自動走行システム」の導入を検討するにあたっては、まずは、そのような自動車が道路を無人で走行する社会のあり方から検討し、社会受容面の検討を行い、そのような社会が国際的にも受け入れられた後、その上で、必要に応じ、制度面について検討していくことになる。」

我が国においては、官民ITS構想・ロードマップにおいて、以下の目標を掲げ、技術開発を進めている。

自動化レベル 概要 システム 市場化目標時期

レベル1 加速・操舵・制動のいずれかを自動車が行う状態 安全運転支援システム ー

レベル2 加速・操舵・制動のうち複数の操作を同時に自動車が行う状態 準自動走行システム 自動走行システム 2017年まで

レベル3 加速・操舵・制動を全て自動車が行い、緊急時のみドライバーが対応する状態

2020年代前半

レベル4 加速・操舵・制動を全てドライバー以外が行い、ドライバーが全く関与しない状態

完全自動走行システム 2020年代後半以降に試用がありうる

しかしながら、無人走行の社会的ニーズや利用される社会の将来像などが描かれていないため、技術開発のインセンティブが十分に機能していない面があるのではないか。

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我が国の現状と課題②: 物流(トラック運送)でのニーズ

物流においてニーズの高い隊列走行(ニーズの有無) (メリット)

出典:隊列走行技術に関する受容性調査(2013年、経済産業省)

16

トラックドライバーの高齢化

29歳以下3.8%

29歳以下15.1%

30~39歳24.8%

30~39歳26.2%

40~49歳36.7%

40~49歳36.1%

50歳以上34.7%

50歳以上22.5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2010

1993

出典:年齢階級別労働力人口(総務省統計局)、トラック運送事業の賞金実態(社団法人全日本トラック協会)

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物流倉庫

隊列走行を活用した物流(イメージ)

物流倉庫

集配所 集配所

集荷配送

高速道路

高速道路などの幹線輸送に隊列走行を活用

17

・幹線輸送は、集配所から集められた大量の荷物を毎日定刻に運送・複数のトラックが同時に荷物を運送する路線が存在

幹線輸送に大型トラックの隊列走行を活用することで、ドライバーの人材不足解消・勤務環境改善を実現

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(参考)国内外の隊列走行に関連する実証プロジェクト

SARTRE(Safe Road Trains for the Environment)プロジェクト(2009~2012年)

2012年1月、スウェーデンのテストコースにおいて、時速90km/h、車間距離6mで、トラックを先頭車両として3台の乗用車が追随する隊列走行の実証実験を実施。

2012年5月には、スペインの一般道(幹線)において、時速80km/h、車間距離6mで、トラックを先頭車両として、トラック1台と乗用車3台が追随する隊列走行の実証実験を実施。

2013年10月、筑波のテストコースにおいて、時速80km/h、車間距離4mで、3台のトラックによる隊列走行の実証実験を実施。

今後、開発した各要素技術のテストコース外での実用化を目指す。

エネルギーITS推進事業 (経産省・NEDO、2008~2012年)

FutureTruck2025(2014年)

ダイムラーは、高速道路で操舵/走行速度を自動制御するトラックの走行実験を実施。

18

欧州では日本に先んじて一般道における隊列走行実験を実施

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我が国の現状と課題③: 地方・高齢者のニーズ

19

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.7

 0

20 000

40 000

60 000

80 000

100 000

120 000

昭和45

55 平成2

6 8 10 12 14 16 18 20

バス運転手の人手不足

出典:交通関連統計資料集(国土交通省)

バス1台当たり運転者数(右軸)

バス運転者数(左軸)

高齢者が運転を続ける理由

出典:高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果(平成23年3月、内閣府)

0% 20% 40% 60% 80%

大都市中都市小都市町村

大都市中都市小都市町村

買い物や通院など、自分や家族の日常生活上、不可欠だから

バスや鉄道など他の交通機関が不自由だから

出典:警察庁資料平成22-23年

24歳以下

25-64歳

65歳以上

高齢者の割合

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公共交通インフラ(バスが1日4便)が不十分な沖縄県久米島で、久米島町が主体となって、オンデマンドの移動サービスを検討中

北九州市で、産官学が連携し、小型電気自動車を活用した移動支援サービス提供に向けて、自動運転・隊列走行の技術開発を開始

地方における高齢者向け移動支援サービス(イメージ)

(参考)国内の検討事例

20

スマホアプリで呼び出し

自動運転到着後、乗り捨て

隊列走行で回送

買い物・病院など

寄りの駐車場(給油or充電)

自宅

専用路のバス隊列・自動運行

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我が国の現状と課題④: 農業・建設現場でのニーズ

21出所:農業センサス

1.5

1.7

1.9

2.1

2.3

2.5

16 18 20 22 24 26

一経営体当たり経営耕地面積(ha)

平成 年

労働生産性の推移(全産業・製造業・建設業)

高齢化が進展

大規模化傾向

建設業の生産性は低迷

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自動走行の農業への活用(イメージ)

無人運転で必要な場所へ移動

障害物を自動回避

(参考)国内の実証事例

農機メーカーが、有人・無人協調走行での複数台同時作業が可能なトラクターを開発。2018年量産化を目指す。

建材メーカーが、世界に先駆けてダンプトラックの無人運行システムを導入。

22

自動走行の建設現場への活用(イメージ)

大規模農業を容易に

自動で設計図どおりに施工

生産性・安全性向上

夜間の作業も可能

無人運転による農作業

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1. 社会ニーズを踏まえた自動走行技術の活用ビジョンの策定

• 我が国が直面する諸課題を見据え、無人走行を含む自動車の自動走行について、社会においてどのようなニーズがあり、それに応えるためにどのように利用していくことができるかについて明らかにすることが必要ではないか。

求められる取組み

23

2. 制度的な環境整備の検討

• 上記で描き出した利用のあり方が可能となる制度環境整備(例えば、事故時のユーザーとメーカーの責任分担のあり方、安全を担保するための技術基準等)の必要性について検討するべきではないか。

3. 技術開発・実証の加速化

• 社会的ニーズが高いもの(例えば、幹線物流におけるトラック隊列走行、東京オリンピック・パラリンピックに向けた交通弱者移動支援等)については、それを実現するための技術開発の進展を踏まえつつ、実証実験を開始するべきではないか。

• また、上記で描き出した利用ニーズに則した技術(例えば、悪天候時も含め、常時、広い範囲を高精度に計測する技術、ベテランドライバーと同等以上の危険予測技術、外部からのサイバー攻撃を防止するセキュリティ技術等)の開発支援を加速化するべきではないか。

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目次

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1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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①医療の重点が「治療」から「予防」へと変化

遺伝子情報、リアルタイムの生体情報等による予防医療により、疾病が減少し、健康寿命が伸びる。この結果、医療費も削減される。

②「手遅れ」ゼロ

リアルタイムの生体情報をモニターすることで、病気の兆候をいち早く察知し、治療することで、「手遅れ」がなくなる。

③医療過誤の減少

医者の診療支援システム、遺伝子解析などにより、医療過誤が減少する。

ヘルスケアの将来像(イメージ)

AI・ビッグデータの活用により、既存の様々な医療情報に加え、リアルタムの生体情報や遺伝子情報等を利用することにより、健康・医療には、以下のような変革がもたらされる可能性がある

実現に向けた取組みの方向性我が国企業は、こうした変革をリードし、新たな健康・医療の取組みの中で、重要な役割を果たすことにより、その稼ぐ力を高めていく必要があるのではないか。

25

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我が国の現状と課題①: 健康・医療データ利活用の現状

患者データ・傷病名(レセプト)

処⽅・検査データ

診療データ

⼿術・治療データ

医療⾏政等 臨床研究コホート研究

医療サービス

デジタル基盤

︵医療デ

タの収

集・分析のル

ル・

仕組みの集合体︶

⽐較的容易

⽬的

情報利活⽤の

実⾏

医療機関におけ

るデジタル化

医療・介護・健康のデジタル基盤

新しい医療技術の創出 エビデンスベースのヘルスケア産業

医療⾏政等

臨床研究には、複雑な診療データや⼿術・治療データ等の利活⽤が必要

持続可能な質の⾼い保険医療(社会保障)

複雑利⽤状況と医療機関のデータ

リアルタイム⽣体情報、遺伝⼦情報

レセプトデータの標準化、収集・活用は進んでいるが、処方・検査データ、診療データ、手術・治療データ等については、デジタル化とその統合的な利用のための基盤が未整備。

26(出典)内閣官房 健康・医療戦略本部「次世代医療ICTタスクフォース 中間とりまとめ」を元に経済産業省作成

電⼦カルテデータ

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我が国の現状と課題②: 処方・検査データや診療データ等の活用

処方・検査データや診療データ等の収集・分析の促進

処方・検査データや診療データ等を活用した取組- 健診データや処方データを用いた個々人の状況に応じたサービス

処方データ

様々な新サービス等も期待

27

・メタボ健診に基づく生活習慣改善の指導や、企業の健康管理をクラウドを通じて行う(日立)

・個人に応じた健康管理の指導や保健師がいない職場でも 適な健康指導を個人に提供可能に

個人の健康指導・管理

・薬局で調剤された履歴データをクラウドサーバー上で管理(ソニー)

・医師や薬剤師が薬の重複や飲み合わせのチェックすることができ、また重複検査の回避にもつながるので、患者の負担軽減、医療費の効率化にも寄与

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我が国の現状と課題③: 遺伝子情報の活用

遺伝子情報等の収集・分析の促進

バイオバンクへの情報蓄積、ゲノムコホート研究の進展- バイオバンク・ジャパン(東京大学が主体)では20万人分のDNAを収集- 東北メディカル・メガバンク(東北大学が主体)で日本人1000人の全ゲノムを解読

診断支援システム 創薬支援

様々な新サービスが期待

・患者の症状や医療文献などの情報から病名や治療法を医者にアドバイス・簡便な血液検査によって、ガンを早期に発見・がんの形状、位置、悪性度を高精度に画像から自動検出

28

・唾液から得られる遺伝子情報を元に個人の疾病リスクや体質を分析(既にYahooやDeNAが国内でサービス開始)

・複数の治療法の中から個人に 適な治療法(薬剤)を提供

個別化医療・予防

・病変組織の遺伝子・タンパク質情報等から疾患メカニズムを解明し、新薬を開発

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我が国の現状と課題④: リアルタイム生体情報の活用

リアルタイム生体情報の収集・分析の促進(ウェアラブル端末の利活用促進)

リストバンド型(活動量、温度)

日立

ウェア型(心拍、心電波形等)

NTT、東レ

貼付型(心電位、活動量等)

NTT、東レ

マット型(体動、脈拍、呼吸)

タニタ

接触型(血圧等)

日本大学

生体情報等のライフログの見える化・早期改善指導

交通事故の未然防止(運転手の健康管理)

要介護者・介護者のQOL測定 高齢者の生活見守り(在宅医療・在宅介護が容易に)

様々な新サービスが期待

生体情報をリアルタイムに把握することで、レシピや運動プラン等の健康アドバイスを提供

バス・電車・トラック等の運転手の体調を把握することで、居眠り等による交通事故を未然に防止

体調・精神的ストレスを把握することで、要介護者・介護者双方にとって満足度の高いサービスを実現

常時、病院(介護施設)・家族に生体情報を送信

必要な時に医療・介護を提供

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我が国の現状と課題⑤: 医療情報とリアルタイム生体情報等の連携

医療情報に、リアルタイム生体情報や遺伝子情報を連携させ、統合的な利用のための基盤を整備すれば、さらに高度なサービスが実現可能

- 様々な健康情報や医療情報の有用性を高めるために複数のデータベースを連携・統合

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医療情報とリアルタイム生体情報等の連携イメージ

新たな健康・医療データ

(例)・ウェアラブル端末から得られるリアルタイム生体情報(心拍数、活動量等)・遺伝子情報 等

既存の医療・健康デジタル情報基盤

(例)・レセプト情報・健診情報・電子カルテ情報

連携・統合

以下のようなサービスを高度化

・病気の予兆をいち早く察知し、治療・効率的で適切な診療・効率的で満足度の高い介護・高齢者見守りサービス 等

さらに高度なサービス実現へ

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求められる取組み

1. 「医療情報のデジタル化と収集・分析のルール・仕組みの構築」の取組加速化

内閣官房健康・医療戦略推進本部等で推進している「医療情報のデジタル化と収集・分析のルール・仕組みの構築」の取組を、レセプト・電子カルテ情報だけでなく、遺伝子情報・リアルタイム生体情報も含めて加速化するべきではないか。

(具体的な取組例)- 政府・学会・民間企業の医療情報収集・分析事業で得られたデータベースを統合化- 病院内の高度なITシステム(部門・機器毎に細分化された情報システムの連携等)の普及- ウェアラブル端末などから得られる生体情報、遺伝子情報等のデータ構造や通信規格の標準化- 医療情報とリアルタイム生体情報等のデータ連携体制の構築

2. ビッグデータ活用による新サービス創出環境整備

既存の健康・医療情報に加え、リアルタイムの生体情報、遺伝子情報等の新たなビッグデータも活用した新サービスの姿を描き、 それがビジネスベースで普及・拡大するための仕組みの構築などを推進するべきではないか。

(具体的な取組例)- 大規模コホート研究による生活習慣、遺伝子情報、疾患リスクなどの相関分析- 健康管理・疾病予防サービスの費用対効果の見える化- 健康予防管理に対する個人の意識を高めるインセンティブ付与

(健康管理・疾病予防サービスを受けた場合に保険料を減額し、幅広い人に健康予防管理を求める等)

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目次

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1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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①安価で安定的にエネルギーが供給

需要家のニーズ(経済合理性、環境合理性、社会合理性)に応じたエネルギーが供給。また、蓄電池等を活用することで、余剰するエネルギーの融通が円滑化。

②どこでも自由にエネルギーにアクセス

非接触充電やエネルギーハーベスティング(例.振動、熱など)等を通じて、様々な場所で自由にエネルギーを利用。

③よりパーソナライズされたサービスが提供

人の行動に伴うエネルギーの利用に関する情報も踏まえて、よりパーソナライズされたサービスが提供。

エネルギーの将来像(イメージ)

AI・ビッグデータの活用により、エネルギーの需給状況や機器の稼働状況、ライフスタイル等に応じたエネルギー管理が可能になることにより、エネルギーには、以下のような変革がもたらされる可能性がある

実現に向けた取組の方向性我が国企業は、現在進行中の電力システム改革もテコに、こうした変革をリードし、新たなエネルギーの取組みの中で、重要な役割を果たすことにより、その稼ぐ力を高めていく必要があるのではないか。

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米国の取組: 海外企業によるエネルギーデータ活用

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○2014年2月、 Googleは家庭用室温制御装置(サーモスタット)等のメーカーのNestを32億ドルで買収。

○同年6月、Googleは開発プログラム”Works with Nest” を発表。NESTをハブとして様々な機器を制御するソフトを、OSを問わず作成可能に。

○Opowerは米国の電力情報提供企業。○米国エネルギー情報局の家庭用電力消費調査等

を活用し、企業や家庭へ使用電力量の詳細データや省エネアドバイスを提供。

○日本では、東京電力と連携しサービスを提供中。

○2001年に設立され、主に米国の業務・産業用需要家を対象とする世界 大手のディマンドリスポンスアグリゲーター。

○2013年に同社と丸紅が合弁会社のエナノック・ジャパンを設立し、今年度の東京電力管内におけるネガワット取引実証に参加中。

○米国の家庭用需要家を含めたディマンドリスポンスに30年以上取り組んでいるディマンドリスポンスアグリゲーターの先駆者的存在。

○2013年に日本における研究開発拠点としてComverge Japanを設立。

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我が国の現状と課題: エネルギーの現状、変化の兆し

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(1)東日本大震災を契機として、エネルギーに対する社会の意識が変化「無色透明のエネルギー」から「色とりどりのエネルギー」へ

(例) 「割安にエネルギーを使用したい」、「環境に配慮した再生可能エネルギーを使用したい」、「非常時にも安定的にエネルギーを使用したい」、「地元のエネルギーを使用したい」 等

(2)エネルギーを巡る環境が変化 「集中型一方向」から「分散型多方向」へ

①エネルギーの多様化・ 集中型大規模電源に加えて、再エネやコジェネ等の分散型小規模エネルギーが広がりつつある。・ モビリティ(燃料電池自動車、電気自動車等)からの電源供給など、供給源の多様化・自由化が広がり

つつある。

②余剰エネルギーの活用・融通・ 蓄電・蓄熱技術や新たなエネルギーキャリア技術(水素等)の発展によって、エネルギーの安価で効率

的な貯蔵が可能となりつつある。・ エリア内での再エネやコジェネの融通が行われつつある。

③細分化・ネットワーク化されたエネルギーマネジメントの広がり・ 従来集中的に行われてきたエネマネが、細分化されるとともに、需要家側にまで広がりつつある(例.

CEMS(Community Energy Management System)、BEMS(Building)、MEMS(Mansion)、HEMS(Home)等)。・ あらゆる創・蓄・省エネ機器にIPアドレスが割り当てられ、ネットワーク化する基盤的な技術等(例.自

動制御、ECHONET Lite(HEMSを中心とした家庭内機器の通信規格)等)が確立されつつある。・ 従来コントロールが困難と考えられていた需要をコントロールしようという取組(ディマンドリスポンス

等)が行われつつある。

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我が国の現状と課題: 電力データ等の活用により期待されるサービス①

エネルギーの需給状況等に応じた高度なエネマネが進展

• エネルギーの需給状況等に応じて電気料金変動やインセンティブ付与を行い、需要家がエネルギー消費を控えたり(ピークカット)、ずらしたり(ピークシフト)することで電力消費パターンを変化

電気料金型ディマンドリスポンス

自動制御

様々な新サービスが期待

・一律料金からTOU(時間帯別料金)やCPP(ピーク時料金)等のより柔軟な電気料金へ

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・電力会社等と需要家の契約に基づき、ピーク時間帯等に節電・電力会社等から需要家に対し報酬を支払い

ネガワット取引

・暮らしの快適性に悪影響を与えずに、電気料金や環境情報(気温、湿度等)に応じて機器を自動制御

夜間時間

ピーク時間

昼間時間

昼間時間

23:00

7:00

10:00

17:00

ピーク時は節電しよう!

設定温度で運転 多段階照度で運転

蓄放電を制御 電熱供給を制御

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電⼒データを⽣活判定アルゴリズムで分析し、異常を検知。

電力データ等の活用により期待されるサービス例②(生活関連)

エネルギーの利用データ等の収集・分析が進展• 国内四地域におけるスマートコミュニティ実証によって、CEMSをはじめとする高度なエネマネシス

テム等が開発• HEMSから得られる電力利用データの利活用に係る環境整備を推進• スマートメーターが、高圧部門は2016年度までに、低圧部門は2024年度まで(※電力会社に

よる)に、導入完了予定

ヘルスケア

様々な新サービスが期待

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・冷蔵庫の開け閉めや、トイレ照明の点け消しでトラブルを検知。・カメラ等で直接監視する必要性がなく、また高齢者が自ら操作する必要性がなく、プライバシーを保護しながら安心安全を提供。

見守りサービス

・電力利用データに加え、天候情報や健康情報を用いることで、家電を 適に制御。・例えば、猛暑が予定されている日に、エアコン等を自動制御することで、ご老人や子どもの熱中症を予防。

屋内環境コンシェルジュ

・電力データを分析することで、保守・修理サービスや更なる省エネ機器を提供。・創・蓄・省エネ機器導入の有効性やリフォームの必要性を診断し、 適なソリューションを提案。

ソリューション 保守・修理 省エネ機器紹介 リフォーム

分析

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電力システム改革を着実に進めるとともに、集中型エネルギーシステムと調和した分散型の創・蓄・省エネ機器の設置を進めた上で、電力利用データ等の利活用について、以下のような取組を進めるべきではないか。

① 通信仕様等の国際標準化エネルギーマネジメントシステム、スマートメーター、機器間でのデータのやり取り

に必要な通信仕様等について、効率的なエネルギーマネジメントや電力利用データを利活用した新サービスの創出に資する領域を中心に、国際標準化等の取組を推進

② ディマンドリスポンスの普及に向けた環境整備ディマンドリスポンスにより生み出された需要削減量の測定に用いる「ベースライ

ン」の定め方についてのガイドラインを策定するとともに、需要抑制の活用という観点も踏まえて既存の需給調整契約の見直しを進める。

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求められる取組

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目次

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1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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政府の業務(例:規制、政府統計、許認可・審査等業務)は、AI・ビッグデータの活用によって、大幅に効率化

(1)規制

被規制者の負担の軽減と、規制の目的の一層確実な達成

(2)政府統計

調査コストの削減と、統計の速報性、利便性の一層の向上

(3)許認可・審査等の制度執行業務

審査の効率化と、一層精確な許認可・審査等

行政の将来像(イメージ)

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- 塩ビモノマー製造施設(死者1名:平成23年)

- レゾルシン製造施設(死者1名、負傷者25名:平成24年)

- アクリル酸製造施設(死者1名、死傷者36名:平成24年)

- 高純度多結晶シリコン製造施設(死者5名、負傷者13名:平成26年)

- 経験不足、技能伝承不完全、制御システム高度化によるプラント運転容易化等により、正確なプラント全体状態の理解が不十分なままに、現場作業員が誤判断、誤操作、誤動作を行う 等

レゾルシン製造施設塩ビモノマー製造施設 アクリル酸製造施設

(1)規制: プラントの保安規制の現状

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1.近年死傷者を伴うプラント事故が発生

2.主な事故原因

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• データサイエンス技術(ビックデータ処理、機械学習等)を駆使し、事故の真の原因の解明等を行い、人間支援技術の導入など保安水準を向上させる。これは、生産性・収益性を改善させるものであり、経営の問題として重要。

ヒューマンエラー誘因の排除(設計不良、作業環境、生産計画等)

重大事故の先行指標提示やリスク・マネージメント支援をとおして、人間力を補完し現場力を向上

事故には至らない不具合等も未然に防ぐことで稼働率が向上し、収益が向上

(1)規制: プラントの保安規制の課題

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ブレークダウン対応:事故が起きてから対処

保安システムの技術発展の方向性

予防保全(計画):事前計画に従い、設備の定期更新や、定期的な検査など予防的なメンテナンス

予防保全(リアルタイム):センサ網等により、リアルタイムに設備等の運転状況を把握し、適時に対応

予知保全:設備のスペック、利用頻度、修繕履歴等のデータを蓄積・分析し、事前に事故を予測して保全

ほとんどの事業者は第②段階(規制の体系も②を前提)

• プラントの保安は、ビッグデータの活用により、人員不足を補いつつ、安全性と効率性が同時に高度化。• センサの低廉化、非構造化データの活用、通信環境の高度化等に加え、データ分析の技術が進展すること

で、今後、保安システムは以下の段階で発展する見込み。

IoTやビッグデータを活用することで実現可能

① ② ③ ④

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(1)規制: 規制に求められる取組み

1. 保安規制における取組• 従来は、設備の寿命前の定期更新、定期点検のための運転停止により、事業者・検

査側ともに負担が大きい。• 将来は、リアルタイムの予防保全(前述の第③段階)、予知保全(第④段階)を実施

している事業者には、点検の負担軽減措置を導入することも一案か。• さらに、データ解析によって、例えば、従来「○○という圧力での耐圧試験を○年に

○回実施」という統一的な保安検査基準について、よりトラブルと関係の深い配管を特定して、その残存肉厚を指標とすることが可能となるのではないか。

2. 他の規制への展開• 上記の同様のビッグデータ等を利用した規制の見直しが可能となる制度等の洗い

出しを行うべきではないか。• 保安規制で取り上げた取組を政府全体の規制にも展開するべく、政府全体でデー

タを活用した規制の在り方を検討するべきではないか。

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(2)政府統計の現状と課題

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速報性の改善

新指標の開発

コストの削減

データの精緻化

・POSデータ・SNSデータ等を用いた 景気動向把握

・詳細な属性(産業別、地域別)

ごとの動向把握

・データ収集速度の向上(ビッグデータによる統計データの補完)

・公表時期の早期化・公表頻度の向上(速速報としての公表など)

・調査客体の負担軽減・調査員調査の削減・集計コストの削減(ビッグデータによる調査の一部代替)

・調査項目の細分化・調査項目の拡大(ビッグデータによる統計データの補完)① ②

③④

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(2)政府統計に求められる取組

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• 政府統計へのビッグデータの活用に向けて、ビッグデータの活用により政府統計の信頼性や精度、既存統計との接続性等が損なわれることがないよう留意しつつ、データ保有企業等や分析する研究機関と連携しながら、統計データをビッグデータで代替する等の研究・検証を進めることが必要ではないか。

• また、ビッグデータ分析人材の確保・育成を図ることが必要ではないか。

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(3)許認可・審査等の制度執行業務に求められる取組

(3)許認可・審査等の制度執行業務の現状と課題

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• 現在、世界の特許文献の約6割が中国語又は韓国語でしか発行されていない。• 中国・韓国の特許公報等を自動翻訳し、日本語で全文検索できるシステムを開

発し、平成26年11月から特許審査官向け及び一般ユーザー向けに試行版を提供中。

【特許審査業務の取組】

• ビッグデータ等の解析技術の向上に応じた、政府の各種許認可・審査業務への活用(例:技術文献に対するより精緻・正確な自動分類付与等)。

• 省エネ法や省エネ補助金制度の執行を通じて得られた省エネに関する取組とその結果のデータを活用し、広く省エネに関する取組の促進に活用するなど、制度の執行によって得られたデータの活用。

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目次

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1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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技術開発の欧米の取組: 海外政府の取組

ビッグデータ・イニシアティブ

• アメリカ政府は、ビッグデータ利活用に向けて、2億ドル以上の研究開発投資を実施(2012年発表)

国防高等研究計画局(DARPA)

・軍隊の意思決定を支援するため、防衛システム上で得られる膨大かつ複雑なデータを整理・分析・可視化するソフトウェアを開発(1億ドル)

国立衛生研究所(NIH)

・遺伝子変異と疾患の相関調査などのため、多数の個人の遺伝子情報を収集し、データを公開(イギリス・中国と共同研究)

国立科学技術財団(NSF)

・データサイエンティストを養成するための大学院プログラムを開設・カリフォルニア大学を拠点とし、機械学習・クラウドコンピューティング・クラウドソーシングに関わる研究開発を実施(1000万ドル)

エネルギー省(DOE)

・スーパーコンピュータを活用したシミュレーション(気候モデリングや物質探求等)によって生成されるデータを効率的に利用するためのツールを開発するため、新たに研究所を設立(2500万ドル)

ヒューマン・ブレイン・プロジェクト

• EUは、人間の脳の構造解析と工学的応用(人工知能)に関わる技術開発プログラム(10年間で約12億ユーロ、80を超える研究機関が参加)を立ち上げ(2013年)。

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企業 国 取組Google 米 推定約6.5億ドルでDeepMind Technology社を買収。

ディープラーニングで高名なGeoffery Hinton教授(トロント大)を招聘

Facebook 米 人工知能研究所を設立し(2013年)、Yann LeCun教授(ニューヨーク大)を所長に招く。

人工知能のベンチャー企業Vicarious社に対し約4000万ドルを投資。

Baidu 中 人工知能を活用した検索エンジン等の研究開発を拡大($284M、昨年比85%増)。

今年5月から人工知能で高名なAndrew Ng教授(スタンフォード大)をチーフサイエンティストとして招聘。

IBM 米 自然言語による質疑応答を行う人工知能のWatsonの開発に2000人、10億ドルを投資。

脳の処理を模倣したチップ「TrueNorth」を開発。※その他、Yahoo(米)、Netflix (米)、Dropbox(米)なども人工知能を活用したアプリ等を開発。

• 海外の民間事業者は、産学連携を活用しつつ、人工知能開発に積極的に取り組んでいる。

技術開発の欧米の取組: 海外の民間事業者の取組

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AI・ビッグデータの技術の現状: 技術開発のアプローチの変化

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• インシリコ創薬(コンピュータを活用した創薬)

– 候補化合物の構造や作用の情報、疾患部位や病原体の情報などを元に、シミュレーションを行い、候補化合物の絞り込みや開発期間の短縮(3~3.5年が2.5年に)が可能。

• 自動車開発

– 空気力学設計(車体形状の設計)

– 衝突安全性試験[従来コスト(数十億円/車種)が大幅に低減]

– 操縦安定性解析[実車ができる前からテスト可能]

1.シミュレーションによる実証の効率化

2.人工知能が導き出す仮説

• AI・ビッグデータを活用することで、技術開発のアプローチも大きく変化していくことが見込まれる。

• 今後は、技術開発において、広く活用していくことが必要ではないか。

(例)

• 人工知能が18万件の論文を読み込み、抗がん剤の候補物質のリストを提示。これは専門家が10年かかって作業した結果とほぼ同じ。

• 350万件の論文から、偏頭痛の発生にはセロトニンの分泌レベルが関係しているということを提示

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• 日本の大型の科学技術プロジェクトの中で人工知能等を扱うテーマは、以下のように、限定的。

技術開発の我が国の現状と課題: 一層の政府支援と産官連携の必要性

• 全10テーマ中、1テーマ(25.35億円)の一部• 「自動走行システム」(渡邉浩之 トヨタ自動車顧問)

• 全30テーマ中、1テーマ(39.5億円)• 「超巨大データベース時代に向けた 高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを

核とする戦略的社会サービスの実証・評価」(喜連川教授)

• 全12テーマ中、2テーマ• 「量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現」(山本喜久教授)• 「脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現(意識しただけで制御可能な機器開

発や多言語入力などものづくりやサービス革新の基盤構築)」(山川義徳 (株)NTTデータ経営研究所代表取締役)

1. 先端研究開発支援プログラム(FIRST)平成21年度補正:1000億円

2.革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)平成25年補正:550億円

3.戦略的イノベーションプログラム(SIP)平成26年度:500億円

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技術開発に求められる取組み

1. ナショナルプロジェクトへの採択• 我が国の根幹となる科学技術プログラムにおいて、人工知能分野のテーマを取り上

げ、我が国の総力を結集して取り組むべきではないか。

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2. 人工知能研究センター• 国内外のトップ研究者を集結させ、基礎研究から事業化までを見据えた産学連携

の人工知能研究センターを創設するべきではないか。

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目次

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1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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①欧米の取組み産業構造の変化の帰趨を左右するオープンイノベーションとプラットフォーム

生産ラインの自律的組替え(Industrie4.0の第2段階)及びPLM統合(同第3段階)に必要な3DCADやMES(Manufacturing Execution System : 製造実行)等のソフトウェア企業を次々と買収(オープンイノベーション)し、ものづくりプラットフォームを提供するソフトウェア企業へと転換。

①シーメンスの動き

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ものづくりプラットフォーム

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・GEは、機器・設備に設置されたセンサから取得するデータの解析・利用により、機器・設備の高度な制御を行うためのクラウドコンピュータのOS(プラットフォーム)として「Predix」を発表。・自らで石油・ガス、電力、水、輸送、航空、医療等の24の分野向けのアプリケーションを提供。・今後は他社が使用できるようオープン化する予定。

②GEの動き

Predix (OS)<プラットフォーム>

・・・・・

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自社アプリケーション

石油ガス開発

事業者

フィードバック

探査機器の操業

データ取得

自社アプリケーション

電力事業者

フィードバック

発電設備の操業

データ取得

操業、保守等に利用

自社アプリケーション

鉄道事業者

フィードバック

車両の運行

データ取得

操業、保守等に利用

運行、保守等に利用

自社アプリケーション

航空会社

フィードバック

エンジンの稼働

データ取得

運行、保守等に利用

他社アプリケーション

ユーザー

フィードバック

データ取得

操業、運行、保守等に利用

データの取得・蓄積・分析、それを用いたアプリケーションの開発等で先行

→ アプリケーションについて競争優位

他社も利用可能に

→Predixの利用可能性高まる

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・英国の小売り大手TESCO社は、顧客データを活用したマーケティング会社であるdunnhumby社を買収。同社は、TESCOのポイントカードから得られる消費者情報・購買履歴等を分析。・これにより、小売業者が、流通プラットフォーマー的な存在に変容。

③TESCO社(英国大手小売り)

メーカー

dunnhumbyを買収→ 流通プラットフォーマーに

消費者

大まかな消費者属性(年齢・性別等)に基づくマーケティングや、市場調査ありきの商品開発ではなく、消費者一人一人の購買行動に基づいたマーケティング(例:700万通りにも及ぶ個別化されたクーポン券の配布)を実施

メーカー

TESCOの情報を商品メーカーと共有し、消費者の実行動にマッチする新商品の開発等を促進

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※FirstMark Capital(米VC)がビッグデータ関連

事業のエコシステムを一覧した以下のリストには、我が国企業は含まれていない。

我が国のAI・ビッグデータ産業は、グローバル・プレーヤーの一員となっていないのではないか。

我が国の現状と課題

今後、AI・ビッグデータの活用の成否が、産業の広範な分野において競争力を左右すると考えられる。AI・ビッグデータ産業自体にとどまらず、広く我が国の産業全体が、グローバルなプレーヤーから脱落してしまうことになりかねないのではないか。 57

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・例えば、今後、無人走行自動車の運行システム(プラットフォーム)が構築されれば、その構築・運営を行う者が、バリューチェーンにおいて枢要な地位を獲得することが想定される。

・このとき、我が国産業は、無人走行自動車の運行システムの構築・運営を行い、あるいは、欠くことのできない役割を担うことができているか。無人自動車産業のバリューチェーンの中で、高付加価値を生み出せず、関連産業も含め、我が国の産業構造は、高付加価値部門を失っていることとなっていないか。・今後は、他の様々な産業分野において、類似の構造変化が生じていくのではないか。

データの流れ

・自動車を保有しなくても、いつでもどこでも安価に移動できる無人タクシーサービスが普及。

・利用者・車の位置・動作データを掌握し、サービス向上に活用する無人走行システム運営プラットフォームを提供する者が、バリューチェーンにおいて枢要な地位を獲得。

・世界規模で自動車を保有するニーズが拡大。・生産技術・ノウハウを有する自動車メーカーが大きな収益を獲得。

・データ活用は、マーケティング等、限定的な範囲に留まる。

車メーカー

小売業者

消費者・利用者

タクシー業者 バス業者

車メーカー 車メーカー

利用者

無人走行システム運営プラットフォーム

車メーカー

<素材産業>・高張力鋼板(ハイテン)の需要減と代替材の利用 等

<自動車部品供給産業>・センサーが車体性能を決定する主要な部品に 等

<物流業>・(トラックの隊列走行による)幹線輸送の集約化 等

<保険業>・自動車損害保険や製造物責任保険等の枠組みの組替え等

【関連産業への影響の例】

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求められる取組み

• 今後、AI・ビッグデータ時代において稼いでいくためには、

① データを産業競争力の強化につなげるためのプラットフォームを、

② オープンイノベーションの推進によって、自らあるいは必須のパートナーとして、いち早く構築・進化させ、

③ グローバルなプレーヤーの一員となる

ことが鍵となるのではないか。

• 以上の点も踏まえ、AI・ビッグデータ時代の各産業の将来像を描き、我が国産業が如何にして稼いでいくかを検討する必要があるのではないか。

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目次

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1.AI・ビッグデータによる変革の重点分野

(1)生産・販売

(2)モビリティ

(3)ヘルスケア

(4)エネルギー

(5)行政

2.技術開発

3.AI・ビッグデータによる変革の拡がり

(1)産業構造の変化

(2)働き方と雇用

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将来像(イメージ)

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① 中流の仕事が激減し、雇用が二極化していく可能性がある。

• AI等に代替されうる仕事:

– (事務職)一般事務、データ収集、物流、単純な販売員等

– (技能職)それほど高度でない すりあわせ技能

• AI等に代替されにくい仕事:

– 創造する仕事、データを解析して活かす仕事

– 子育て介護等のヒューマンケア(一部)

– (動きが多様な)労働作業

② 創造的な仕事が、IT産業に限らずあらゆる産業において、新たに創出されると見込まれる。

③ 働き方や雇用のあり方が大きく変化する可能性が高い。

– 時間と場所にとらわれない成果重視の働き方、テレワークによる在宅勤務が普及。(女性・高齢者等の労働参画増加にも大きく寄与)

– 求人・求職のマッチングも高度に。

– 翻訳機能の向上により、日本語の壁が低下し、優秀な外国人材の採用・登用拡大の可能性も。(高度人材はもとより、例えば介護・看護等も、言語に限らず一定の資格知識・技能のみが障壁に。)

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(参考) これまでのITによる雇用への影響

• 2000年以降、IT関連ベンチャーによる雇用創出及び電子商取引の利用による雇用創出が確認されている。

• しかしながら、こうした日本における雇用創出実績は米国の競争力あるIT関連ベンチャーと比較すると限定的。産業競争力の強化は、雇用創出にも寄与。

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• 情報サービス業の雇用増:

– (2000年から2013年で)51万人→100万人に倍増

• IT関連ベンチャーによる雇用創出(連結ベース)

– ソフトバンク(1981年創業): 従業員数・約7万人(2000年以降、 従業員数は約6万人増)

– 楽天(1997年創業): 従業員数・約1万人

– サイバーエージェント(1998年創業):従業員数・約2800人

– DeNA(1999年創業): 従業員数・約2200人

• 電子商取引を利用する企業の雇用

– 「(2001-2006年に)雇用を約9万人増加させている」

• ITの影響を受けたと思われる雇用減少例

– 会計事務員:(2000-2010年に)37%減少(約96万人減)

<2000年以降の日本におけるITによる雇用創出>

(出所:各社IR情報)

(出所:RIETI権 赫旭「電子商取引は雇用を増加させるのか:『事業所企業統計調査』個票データに基づく実証分析」)

(出所:国勢調査「日本の人口・世帯」)

(出所:特定サービス産業実態調査(経産省))

<現在の日米の主要IT企業の売上高・雇用の比較>

(出所:産業構造審議会情報経済分科会)

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(参考) AI化等による雇用への影響(欧米での調査論文)

• オックスフォード大学のAI研究者は、米国の雇用の約47%がコンピュータによって代替される可能性を指摘。

– 米国の702の職業を、米国労働省のデータ(O*NET)に基づき、9つの観点(指の器用さ、創造性、交渉力等)で評価。

– ビッグデータ、機械学習、移動ロボットの技術革新が、機械による雇用代替を促進。

– 「交通・物流」と「バックオフィス業務」だけでなく、「サービス業」も脆弱。機械の代替可能性と、賃金・学歴は強い逆相関(低スキル低賃金業務ほど代替)。ただし、前提となる規制緩和及び代替に係る具体的な必要時間は分析対象外。

(出所:『THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?』(Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne)) 63(出所:2014年11月08日(土) 週刊現代)

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求められる取組み

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1. 雇用労働• 成果重視の柔軟な働き方によりマッチした制度(裁量労働、フレックス、テレワークなど)

等の環境整備を加速すべきではないか。• AI化等を牽引する天才的イノベーターが活躍しやすい環境を整備すべきではない

か。

2. 教育• 初中等から高等教育に至るまで、詰め込み型から創造的教育(構想力、データ解析

力、交渉力等)へのシフトを加速すべきではないか。• 語学教育は、機械化が容易な「読み書き」型から、機械化が難しい異文化理解のため

の「対話」型へ、シフトを加速すべきではないか。• 現在検討中の実学教育や職業訓練の内容についても、機械化が容易な知識・技能と

重なることが想定されるため、中長期的には見直しが必要になってくるのではないか。

3. その他中長期課題• 非熟練外国人労働者の受入の是非といった中長期課題は、AI化等による国内雇用の

変化の見通しを踏まえて検討すべきではないか。