50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7...

19
Instructions for use Title 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究:特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応原の比較に ついて Author(s) 池端, 隆 Citation 結核の研究, 4, 7-24 Issue Date 1956-03 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/26591 Type bulletin (article) File Information 4_P7-24.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

Transcript of 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7...

Page 1: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

Instructions for use

Title 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究:特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応原の比較について

Author(s) 池端, 隆

Citation 結核の研究, 4, 7-24

Issue Date 1956-03

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/26591

Type bulletin (article)

File Information 4_P7-24.pdf

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

Page 2: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

7

50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究

特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

原の比較について

池端隆

北海道大学結校研究所細菌部(主任:大原達教授)

(昭和 31olo 2月 20日受付)

補体結合反応は極めて高度の鋭敏さを持つ反応として

血清学的診断には欠くべからざるものであり,凝集反応,

沈降反応のようなl直接肉眼で見得る免疫反応が陰性の場合

にも陽性を呈する場合が屡々あって,その鋭敏度は他の反

応に比すぺくもないのであるが,一方この反応lζ参与する

因子は,他の反応の場合より遥かに多く,従って補体結

合反応の最終段階における溶血現象は極めて複雑な経過を

経て行われる O 一般にこの反応における溶血現象が影響を

受ける因子と・しては,被検血清と抗原とによって形成主れ

る抗原抗体複合物の量の多寡という因子を除いても. 1)

反応にあずかる赤血球の数 2)溶血素の力価 3)補体の

力価 4)全反応液の容量 5)感、作時間 6)使用稀釈液

の塩類濃度7)被検血清の抗補体性 8)抗原の溶血性及

び抗補体性,などが考えられる。ζれらの各因子については

それぞれの項において述べることにするが,かように幾多

の因子から構成されている補体結合反応を最も特異的に,

かつまた,最も感度の高い方法で行うためには,理論的

並びに実際的l乙考究すべき問題が色々と残されている。近

年欧米において盛んに研究されつつある 50%溶血単位法

は,これらの問題を解決すべく採り上げられた lつの方法

であるといい得ょう。すなわち補体結合反応を正確に定量

的に行わんとする傾向が結実してきたわけである O

結核の補体結合反応については. Bordet & Gengou

がその術式を発表した当時から,幾多の学者により色々な

抗原を用いて実lζ数多くの実験が行われてきたが,その殆

んどすべてが完全総血を end-point としたものであづ

た。しかしながら完全溶血は理論的に云って,成績判定の

指標としてはきわめて不正確であるため, ζ れに替って

Leschly (1914)1)が始めて部分溶血に着目し,続いて

Morse2J内および Brooks引等が補体結合反応の単位

として 50%溶血点を用いることを提唱した。 1その後 Wa-

dsworth5)-1~J 一派の人々によってこの新しい方法は最も

系統的に研究され,これらの実験が今日色々と発表されて

いる 50%溶血単位法の基礎となっている。 とれを始めて

結核血清反応の場合に応用したのも同じくかれらめ, 9), 12)

である。しかし当時の方法は,標準の1容血度を示した試料

を作っておいて,部分溶血を肉眼で判定するものであり,

今凪から見れば方法的にはまだ不正確なものといわなけれ

ばならない。最近l乙到って Spectrophotometerが用いら

れる様になり,この方法はその正確度が高められ.Mayer.

14) Kent1均等の実験によっても明かな如く,理論的lとも実

際的にも極めて正確な価が得られるようになってきたので

ある O

従来の完全溶血単位による方法が 50%溶血単位法lC

移行してきたのは,定性反応から定量反応l乙進んだものと

解してよい程の進歩であるが,この新しい方法と難もあく

までも colloidalの反応であるから,その条件を理論的lζ

決定づげることは未だ困難である。しかしながら乙の方法

は次のような理由から礁かに現段階においては最も優秀な

方法と云うべきであろう。

今補体量と溶血度の関係を実験的に調べてこれを

curve Iζ描くと.'von krogh1めの観察の如く第 1図の如

きS字状の曲線が得られるハ

乙の curveにおいて凡そ 30%溶血から 70%溶血位ま

での範囲では(厳密に云うともっと狭い).湾血度と補体量

との関係が略々 l直線的になっているのに反し,特l乙90%溶

血を越す郎分からは補体が著しく多く必要になってくる町

向。云い換えると,完全溶血に近いF付近においては,極め

て大量の補体量の変化も浴血度l乙対してはそれ程の変化

を示さない。従って indicatorとして用いられた溶血系

は,完全溶血を end-pointとする限り,補体量の変化lζ

対して甚だ鈍感なものとなづてしまう。Morse.8)Brooks4)

等も,補体の溶血作用を測定する場合においては,完全溶

血点を end-point として用いる方法は最も正確度の低い

Page 3: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

8

単位を用いたことになるといっており,また完全溶血単位

と 50%溶血単位を用いて補体単位を決定する場合には,

両若の聞に生ずる誤差の差ば少なくとも 10倍になると述

べているが,かかる観点から見ていずれも容易に肯けると

ころである。 50~ぢ溶血lζ必要な補体量は殆んど"点“で

第1図補体量と溶血度の関係

10() 1-・・・・・・・・・・・1・・・・7二品品晶-.

'1 0 ・一一一一一・~7o.!2 /勺--よー;A

U,

A

V

A

V

e-nr

,o

事同ケ及

>0 4ノ

/" "10

30

ぇ。

TO

o o 0.65" O.7l 1.2J

事前i辛(1;60)量2,'11

あるのに反して,完全溶血を指標とした場合の変動がある

程度の"幅“を持っていることは,致死量測定 l乙於ける

LDsuと MLDとの関係lこも比すべきものがある。補体結

合反応のように鋭敏な血清反応は,このように"点“とし

て表わされる補体の単位を用いることによってはじめてそ

の血清学的な感度を最高に発揮することができる筈であ

る。しかし補体の単位が 10倍の正確度で決定されたから

といって,最終的反応の結果においても 10倍の正確度を

保つかどうかは分らない。この点について蘭守的も,感作

"寺間および fixationの過程中における補体の崩壊などを

指摘している。先にも述べた如く,いずれにしても補体結

合反応は一つの穆質反応であり,まだ理論的にすべての条

件を決定つaけるには到っていない。 しかしながらラ0%溶

血単位法は次のような理由からも優秀な方法であることが

推論される。すなはち第 l図において.505'6溶血附近で

curveが最も強く傾斜している。とのことは溶血素によっ

て感作された血球の補体による実際の溶血量が,珂%附近

で最も多いこと,云t,かえれば補体l乙対して特lζ易溶性叉

は特i乙難溶性の感作血球は統計的にその数が少なく,中

等度の溶解性のものが大多数であることを示すものであ

る。吉田町の実験もこの事実を裏書きしている。 すなわ

ち彼は補体が等比級数的lζ変化する時,感作血球の溶解

量が正規確率分1討を示すととを観察した。従ってこのよう

に補体による感作血球の溶解性から考えてみても.50~ぢ溶

血単位は緩めて理論的な単位というべきであるむすなわち

常識的lこも容易に肯ける如く,赤血球中には溶血lζ対し特

l乙抵抗の強l'血球P'何パーセントか含まれているが,完全

溶血を指標とする限dJぞれは結局一番抵抗の強い赤血球

の溶血を円あてに測定していることになる、〉これが如何に

不合理であるかは多言を要しないであろう。

次にこの補体単位の求め方であるが, vonkrogh1刷は

補体量を xとし,これによって起きれる溶血度を yとし

た場合,吸着の公式を応用して両者の間K次の関係がある

ことを見出した。

X±K(fy)-n

従って 10gx=logK十」ー log(~~)\l~y I

この式において,溶血度が 50%の場合,即ち

y=o.ラならは、

log,ヱ一一=0 ,', x=K l~Y

となり, K は別刷同要な補体量を示すの士は恒

数で縦軸l乙10払棚lζlog137をとるとき,この式

が表わすl在線の傾斜を示すものである。

LD回の求め方K色々の方法がある如く 50%溶血単位

の求め方にも幾つかの方法が考えられるが,原理的にはす

べて乙の vonkroghの公式に則ってラ09ぢ溶血単位が求

められている。

しかし 50%溶血を指標として補体単位の測定を行っ

た場合,実際の補体使用量は非常lこ少量であり,一方高濃

度の血清,乙とに家兎血清などにおいては,それ単独でも

可なりの抗補体作用を有するため,斯様に少量の補体が用

いられた場合l乙はl直接溶血の足度に影響を与え,反応が

まぎらわしくなってくる。乙の被検血清の抗補体性は,完

全溶血を end-point とした従来の補体結合反応において

も屡々見られ,その本態についての研究も Friedemann動

始め, Sachs2¥!.上野ZZ) 吉岡町など,数多くの報告がみ

られるが,しかしいまだにその Mechariismは不明の域を

脱せず, 決定的な結論は得られていないようである o 50

%溶血単位法による定量的な補体結合反応の実施K際して・

は,このような点にも特に注怠が払われねばならない。し

かるに最近補体結合反応の反応系内IC.起るこのような矛盾

を巧みに除外して,しかも血清力価を詳しく求める定量的

な50%溶血単位法が.Stein & Ngu28) (1950)によって

発表された。ただし理論的な正確さを持った定量的な反応

は Osler24!,-27)一派の人々によってもすでに報告されてい

るが,この術式は極めて複雑であり,簡便さの点において

は遥かに Stein等の術式がまさっている。

そこで著者は先づ Steinの方法を主とし,現在まで

Page 4: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

に行われてきた色々な 50%溶血単位法を参考として,実

験問にこの術式を追求し,これに若干の変法を加味してd表

兎iζ於ける補体結合反応の実施を試みた。この方法lζ於い

て最も重要な補体の定量法iこ関してはすでに報告したので

仙,本論文i乙於いては特lζ溶血素の定量法について考察を

加え,更に進んで結核に於ける種々なる反応原について比

較検討を加えてみたいと恩う O

なお Steinand Nguの術式に関しては,すでに著者

等.32)が結核血清を用い我が国最初の追試を行ったほか中

村等による術式の紹介21h及び追試'めもあるので, ζ こで

は割愛することにする O

I 溶血素の至適濃度測定法について

補体結結合反応lと於いて被検血清の力価をi直接l乙表示

するものは溶血系であり,溶血素はとの溶血系の lつの構

成因子として各予備試験に先立ってその使用濃度が決めら

れるべきものである O 従来の完全溶血を指標とする場合の

使用熔血素濃度(単位)は,補体量及び血球浮滋液濃度を

常lこ一足にして決定されたものであり,術式の操作上から

みても比較的容易にこれを求めることができたが.509p溶

血単位法による場合は,用いられる補体は極めて少量であ

り,かつ反応ω鋭敏さを増す怠味からこの少量の補体をし

て溶血作用をlI!taxilli umlζ行わしめることが必要とされ

るO 補体と溶血素の血球溶解l乙対する相補性については,

すでに Dungernil.11. Morgenroth u. Sachs:¥4). Thiele

and Embleton:l5). Seelich:!・l) Heidelberger均等によっ

て詳しく報告され,その Mechanismについても色々と追

究されている O 即ち一定量の血球を完全溶出させる場合lこ

は,補体と溶血素の濃度の関係は逆比例するのである。つ

まり完全溶血のために用いられる補体量そ少芯くしようと

すれば溶血素の濃度を濃くすればよくまた補体量を多く

すれば溶血素は少量でよいことになる。著者の実験17)した

ところでは, ζ の関係は 5096溶血を end-poin.tとした場

合も完全溶血をがend-pointとした場合も大体同様であっ

た。しかしながらこの場合一方を極端に多量用いると(こ

とに溶血素の方).反応が正常に行われず,むしろ逆の結果

をきたす場合のあることは従来知れらているところであ

るO つまり溶血素の補体代償作用,補体の溶血素代償作用

及び高濃度の溶血素(抗体過剰)による阻止帯現象的,均

等が起ってくるからである。しかし理論的に考えてみても

当然この 2 つの rea~nt の聞には,溶血作用を起させる

に際し最適と思わ札る量的関係が存在する筈である。乙れ

を見出すことは,完全溶血の場合においても勿論であるが,

殊Ir50 %溶血単位を用いる場合lζは特lこ重要な問題と

なってくる。 Steinand Nguの術式における溶血素の測

9

定法的も確かに乙れを決定する Iつの方法ではあるが,こ

の方法では多くの主観が入る恐れがあり,彼等の行った術

式中での最大の欠点とも云い得る Q しかし現在までのとこ

ろ,血球lこ溶血素分子が付着する状態は依然として不明の

ままであり.Heidelberger37)等の報告をみても分る如く,

この両者は化学反応における分子のように数学的に割切れ

る関係にあるものとは到IlI;考えられない。しかし著者は出

来得る限り鋭敏なグしかも反応過程において反応成績を左

右するようなまぎらわしC)反応を起さないところの溶血系

を得んと色々苦心した結果,経験的に lつの新しい方法を

知り得たのでこれについて報告したいと思う O

なお理解lこ便ならしめるため,以下の記述中実験方法

ならびに術式lζ関しては特に項目を設けず,伺々の実験成

績の項においてその都度述べることlこする。

1. 実験材料

全実験を通じて大体前報i7l31) 32) 40)と同様なものを

使用した。

( i ) 溶血系: 牛血球と抗牛血球家兎溶血素血清を

使用した。

( ii) .稀釈液 Stein2S)の変法による Mayer の

Veronal-bu妊er食塩水を使用ず。

(iii) 血球浮滋液及び感作血球の作り方

血球浮世毒液はその濃度が濃くなると各 reagentの間

の作用が不規則になる傾向があり 41)• またエル"?N型の

Spectrophotometerの性能からみてOpticalDensity (以

下 O.D.と略記)が0.2から 0.4の間が貴重も鋭敏であるか

ら本実験においては前報と少しく異なり以下の如き血球浮

波液を用いた。とれは Kent等山が用いた例と同じであ

る。即ち大体2%前後の血球浮世寄液を作り,その 0.8cc Iζ

蒸溜水を 3.2cc加えて溶血を起させ,その O.D.が0.5に

なるように修正した一定濃度の血球浮世存を使用した。 ζ の

ものは I立方粍に約 30万個の赤血球を含有する血球浮瀞

液lこ相当する O 感作血球は斯くして作った血球浮波液に,

これと同量の各濃度の溶血素を混合して作った。混合後20

乃至30分程度の感作では,往々にして溶血度に不規則性が

あらわれるので,大体 1時間以上室温に置き,その間.I時

々振童ました。この術式においては,本試験の最終段階に加

えられる感作血球は一夜を経たものであり,従ってこの予

備試験の場合も出来るだけ感作時間を長くした感作血球を

用いるのが合理的と思われる。

2. 実験方法及び実験成績

( i ) 各種濃度の溶血素による感作血球が示す Ifnの

値の測定について

Krogh16)の式における I/ nなる恒数の求め方について

はすでに報告叫した如く,作図による方法と最小自乗法に

Page 5: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

10

よる方法とがあるが,本実験l乙於いてはこれを最小自乗

法よって求めた。なおとこで用いた溶血素は,次の章 E

において用いたものとは Lotが違うことを付記してお

/ 、Q

第 1表 各種度の溶血素による感作血球が示す士の値

1 : 2∞ lzlr|oJfHht:引。引:4∞l坦;九oJ2J4UFJi :8∞|;:l 。:。立。利引 1::( ! i

1 : 16∞(;:llli l oJ;tl 引 ::~I先づ第 I表の如く,溶血素を 200倍より 16∞倍まで

稀釈し,夫々に同量の血球浮瀞液を加えて前述の如く感作ー

する。次で 50倍の補体を 0.3ccより 0.9ccまで順次に

試験管に入れた後,これに稀釈液を加えて各試験管の内容

が2.4ccとなるようにし,更に上述の感作血球を夫々1.6

ccづっ加え全量を 4ccとする O この際 0.3ccとか 0.4cc

という量をピペットで入れるわけであるが,時として管壁

に残ったりするから,補体を入れた後l直ちに稀釈液を加え

るようにする。しかしそれでも,時に斯様な操作の結果と

思われる不規則な溶血をみる場合がある。著者はかかるこ

とを避ける怠味で, 50倍の補体 0.3ccを加える場合lこは,

予め 2.4ccをとればその中l乙50倍の補体が 0.3cc入っ

ているような補体の稀釈液を作っておいてこれを使用し

た。このよう lとするとほとんど不規則な溶血をみることは

ない。以下すべて補体の注入はとのようにして操作した。

なほ補体はできるだけ泡沫を生じないように扱はねばなら

ぬ姐)乙とは勿論である。補体lζ感作血球を加えた後は,恒

温槽lと入れて型の如く 37oc 30分感作した。感作後各試

験管を同時に 15∞ r.p.m.1O分間遠沈して,それぞれの上

清の O.D.を読み, 1∞ %1'容血の Standardからそれぞれ

の溶血度を求めて I/nを計算した。その結果は第 1表の如

くであった。との表から分るように, 8∞倍の溶血素で感

作した溶血系の例において I/nが最も小さい値を示した。

また ζれらの関係を前報~2) の如く縦軸に logx ,横軸

Klogf子を目盛った対数グラブ上に作図すると第2図

のような直線が得られる。これからも分るように,補体の

第2図各種濃度の溶血素による感

作血球の溶血の傾向

f: 50 complement ~ ~ !g ~ ~

e

相-g『需品

a

703oq巴ω

s

~

Page 6: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

ある一定量の変化に対じて起る溶I凪ノtーセントの変動は,

I/nの最小なるものに於pて最も大きい。いい換えると,

I/nの値が最小な治血系が最も鋭敏な溶血作用を示すこと

になる Q

( ii) 完全溶血域附;1]:1こ於ける溶血状態について

前の実験は 50;;ぢ溶血前後 Icðぞける 1~15分溶血の成績で

あるが,この場合に完全溶血域附近では如何なる溶血が起

っているかをみるために,更に補体を増量して次の実験を

行ってみた。

ιi::.g:P1.1 1.0 1.4 11.8 I 2.2 I Agg

l: 200 1zl:zl oJ1101|計十

1 : 4∞lzlt:1::103叫土lγlziJZ|!?217;;トペ~'I 割台:判明

即ち 20倍の補体1.0CC, 1.4 CC, 1.8 CC, 2.2 cc に

それぞれの感作血球を加えて,前回と同様に恒温槽で感作

してその溶血の程度を調べた。その成績は第2表IC示した

通りである。目IJち800倍の溶血素を用(,.た感作血球が,同

-量の補体lこよって最も良く溶血させられている。 と([{

場合, 16∞倍溶血素を用いた溶血系では同一量の補休lこ対

して溶血の程度が低くなる33)-37)のは当然と考えられる

が, 200倍及び4∞倍の提言血素による感作血球では逆 l乙

800倍のものより溶血し難くなっている ζ とは興味ある事

実である O 乙のJ1"iJと関する理論的な追求は考按の項で述べ

るζ とにする O

(iii) 溶血反応のl時間的推移について

溶血反応は時聞を追ってどのような反応を示すかと云

うζ とは Lourau41J,大川匂〉等によっても報告されている

が,著者も前項と同じ実験を時間の経過を追って調べてみ

たQ ただしこれは現象そのものについて調べただけであ

る。

即ち各 reagentを加えて恒温槽l乙入れた後, 10分,

20分及び 30分IC於ける溶血状態を完全不溶血から完全溶

血までに分類してζれを肉眼的に判定し,その程度を模式

11

第 3図溶血反応の時間的推移

図化したのが第3図である。やはり 800倍溶血素で感作し

た感作血球の場合は始めから最もよく溶血を起し,すでに

20分にしてほとんど完全溶血を呈している。しかるに同じ

時間に於いて,乙れより濃厚な溶血素ではまだ溶血が完了

しないことは興味深い。

(iv) 溶血反応に用いられた提言血素と補体の量的関係

について

次に著者は,とれらの溶血反応て於いて 50%溶血を

起すに必要な補体量と溶血素の原液量の和を調べてみたo

t;flち溶血反応に用いられた l本の試験管内の血清成分の和

を求めてみたと乙ろ,次のような興味ある結果を得たので

ある O

第3表溶血反応に用いられた溶血

素と補体のj量的関係

! ,,;,"'._ 150%採血j",,"'__ 1 溶凪L素|溶血素|に必要な|溶血素 I 1 1_ I顕微鏡的

I =''''~ I補体原液I~ + ,,_! I/n I血球凝集稀 釈|原液量|篭 i補体所 見

1 : 2∞1 0似 10∞981 0.01381 0矧 I11 : 400 1 0.002 1 O.∞1961 0.01161 0.2511 土

1 : 800 1 0.001 1 0.01041 0.011斗 0.2171 : 1600 1 0.0∞ラ10.01521 0.01571 0.411

即ち第3表の如く, I/nが最小なる怖を示した 800倍

溶血素による感作血球の場合にこの和(補体量十溶血素量)

が最小となった。ここには l例のみを掲げ花が, ζの実験

は十分に再現性がある。以下この方法を仮lζ"最小和法"

と呼ぶ乙とlとすれば,この持の溶血素が求むる至適濃度で

ある。

( v) 著者の"最小和法..1とよる諸家の成績の検討

前項で述べたとの最小和法は,すべて牛血球を用いた

場合の例であり,あるいは他の羊の血球を使用した場合に

は成立するかどうかが危ぶまれる。そとで著者は羊の血球

を用いて行った諸家の溶血反応の成績表から溶血素及び補

体の原液量を算出して最小和法を適用してみた。

Page 7: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

12

Kentによる 1&*責

第 4表 著者の"最小和法"による諸家成績の検討

Amboceptor (mlx10-") I 0.05: 0.075,

Cor叩 lement (rnlxIO-3) 1 29.41" 7.981

1/nω66 0.3日i

Ar比十CompL |2946i805|

E Stein and Nguによる成績

Arnboceptor (rnl X IO~2) I 0.01 I 0.015 I O.回 0.03 I 0.04 0.06 I 0.08

Complernent (rnlxIO~2) I 0.242 I 0.214 I 0.192 I 0.181 I 0.179 I 0.173 I 0.171

1/n I 0262 I 0.207 I 0山 o間 0.192I 0.197 I 0.205

竺と型ι~___~__I_0.竺=-1巳 :9J~ _~-'-:!と~1~_L~.2190.2?己竺

0.10

5.85

0.254

4.381 4.11 1

0.15

4.62

0.221

民ノny

• F内ノ

その結果は第4表lと示す如く, Kent州の実験結果も,

Stein and Ngu23)の成績も,共l乙50%溶血を起すに必要

な補体の量と,その時,血球の感作l乙使用された溶血素の

量の和が最小なる場合の感作血球に於いてやはり 1/nが

最小である。なほ,表l乙掲げた以外の諸家の成績に於いて

も総て同じ関係がみられた。乙の結果からみて,最小和法

は羊の血球を用いた場合にも成立するものと考えられる。

(vi) 補体の多寡による各種感作血球の溶血の傾向

前lこ掲げた第1.表,第2表,第 3表の最後の欄fC各感

作血球(5時間以上室温lζ放置したもの)の顕微鏡的凝集

所見を記載したが,これは溶血素濃度がある程度以上濃く

なると,反って感作血球が溶解し難くなる現象が,血球の

凝集K原因するのではなpかと考えたからである O 溶血反

応の阻止帯現象l乙関しては, Gay47>, SorrnanP町, Pandit

39ノ等を始めとして古くからその報告があり,現在まで色々

とその Mechanisrnについて議論されている。著者もその

原因の一端を探らんとして次IC第 l表と第2表のー却を抜

書きしてみた。

第百表各種感作血球の補体の多寡

による溶迎の傾向

A¥.rnb \d\il\ut1\珂Corn\:~ol 0.4 1084引o国|同l血頑殻球鏡凝的集見

1 : 200 |混! 34.1 94~7 i +H-

1 : 400 0.457 33.0 96.2

1 : 8∞ 99.6

:附|錯| 96.8

即ち 800倍溶血素による感作血球の方が,それよりも

濃い濃度の溶血素を用いた感作血球よりも溶血の程度が強

いという事実は,どのような補体量を用いてもみられるか

どうか,つまり如何なる程度の部分溶血域に於いても起り

得るかどうかを調べてみたのである。その結果は第 5表l乙

示す如く, 極く少量の補体を用いた 30%程度の捺血域附

近では,このような現象,削]ち溶血素濃度が800倍より濃

いと溶血が起り難くなるという傾向はみられなかった。民IJ

ちこの表からは,極く低い溶血域では溶血素濃度が濃くな

れば溶血の程度は次第に高くなるが,高度の部分溶I白域で

はある程度以上溶素濃度が濃〈なるとこの関係が逆になる

という傾向が窺われた。しかし七,とのことが溶血素濃度

を次第に増した場合,各種感、作血球から得られる 1/ n の

偵は順次小さくなっていくにもかかわらず,ある程度以上

高濃度の溶血素を用いた感作血球では逆l乙1/ nの11責が再

q大きくなるという第2図の成績の主な原因になっている

のではないかと考えられる。

3, 小括ならびに考按

完全溶血を指標とする従来の補体結合反応に於いて

は,反応の全過程を通じ比較的多量の補体会用いたが,こ

こに報告した 50銘溶血を end-pointとする方法は,比較

的小量の補体を用い,しかもより鋭敏な反応を行わんとす

るものであるから,前述の如く溶血素の濃度についても充

分に吟味をする必要か生じてくるo

Spectrophotometerが使用されるに到ってからは,

50%溶血単位による補休結合反応が急速に発展し,補体の

定量等は主観の入らない極めて正確な方法16),(0)で行われ

るようになってきた。しかしこの補体結合反応を行うに当

って最初に行われねばならない溶血素の最適濃度の測定に

ついては,現在までのところ主観の全く入らないよい方法

はないようである。

Page 8: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

先にも述べた如く,血球と溶血素の結合状態について

は Heidelberger37l等の詳細なる実験があり,わが国lこ於

いては吉田4ci)等の報告がある。 t!Pち Heidelbergerは羊

の赤血球が完全溶血を起すためには悩の赤血球に溶血

素分子が約 1500個結合Lて,血球の表面積の約 0.4乃至

1496が覆われれば足りると述べ,吉田は祷血素分子と血球

は単なる n:1の割合に結合するものではないように思わ

れると云っている。とのことからみると,結局最適比(熔

血のための)に両者が結合する点を見出すのはロIなり困難

なことと想、像される。

1939年に Wadsworth12lは種々の濃度の溶血素で感

作した感作血球をそれぞ?れ 50%だけ溶血せしめるに必要

な補体量を求め,縦軸1こ補体量,横軸l乙溶血素濃度をとっ

て,とれらの点を plot し,一本の curveを両いた。そして

ζの curveから溶血素の至適濃度を求める新しい方法を

発表している O その詳細は原著にゆずるが, ζ 乙にその図

を引用しておく。

第 4図 W<¥dsworth の方法による至適溶市1素濃

度の求め方。 (Standard11ethods of the

Divisiop of Laboratories and Research

of the New York State Department of

Health. 2 nd ed. Williams & Wilkins

Company. 1939. 226頁より引用)

内M

au・

内uw

・3

内,.‘.

《u'

内uw

n

v

n

M

崎、師、A

吋。ミ旬、、決。同生ULR

qhkh39hkhミ旬、司句回也、

suu吋ミ。

• • c刷 PLE時附附 1,(ELlS OF' SHt.EP ~O 47

ロ.・ ・2‘・・.$・o. ・ ・3,・・・・ 20

1'4000 UOOO 1'500 1'250

DILUTIDN OF AM80CEPTOR USEO TO SENSITIZE RED CELL SUSPENSION

悶lζ於いてl直線から曲線部分l乙移行する点の溶血素濃

度が使用さるべき溶血素の至適濃度であるというのであ

る。このような関係はすでに 11orgenrothu. Sachs:切に

よっても報告されている。即ち多量の溶血素を用いる場合

は械めて少量の補体でも血球を完全に溶かすζ とが出来,

しかも溶血素量を更に数倍より数百倍の聞に変化させて

も,この時血球を完全に溶血せしめるに必要な補体量ば僅

か 2乃至 3倍しか変らないと述べている。ただしこれは完

全溶血を指標とした場合の乙とで,これと同様な成績は;Jt同等叫によってもまた報告されている。ラO脅6溶血単位に

よってこのような関係を指摘した学者には Wadsworthの

他に Kent50),Stein and Ngu28)等がある。 ζ とに Stein

and Nguの方法に於いては溶血素稀釈を雪∞倍, 6SS倍,

13

1000倍・というように,実際の濃度 (0.002,0.0015, 0.0

01... )が等間隔になるように目盛られており,得られた

curveから轡曲の著しい点を見出し易いように作図してい

る点に於いて確かに良い方法であると思う。しかし実際に

はWadsworth等の云うように溶血素濃度がある一定に達

して.も,更に濃度を少しづっ増せば,乙れらの感作血球の50

%溶血に必要な補体はやはり少しづつ減少するのであるo

Kent耐 Jは Spectrophotometerを用いた実験で ζ の事実

を指摘し,また蘭守18)も斯様な事実のあることを認めてい

るO 従って実際的には,図に於いてかかる変曲点を求める

ことは吋なり困難でもあり同時にまた主観の混入する余地

も十分にあると云わなければならな~ )0 更にこの方法には

次のような欠点もある o tlpちこのグラブを作成するのに縦

軸と横軸のi=l盛の取り方p::.相関関係のないことである。従

って目援の取り方ーによってこの curveの型が少なからず

変化する。例えば縦軸の間隔を広くとり,横軸の間隔を狭

くC ると curveは急傾斜してくるし,縦軸を狭く,横縦

を広くとるとゆるやかな curveとなる。 しかして乙の様

なことによって変化する curveから轡曲点を決定する場

合には,当然実施する人によって異った値が得られるであ

ろう ζ とは想像に難くない。乙とに溶血素濃度を細かく刻

んで実験すればする程,斯様な困難に逢着する。著者もこ

の方法によって溶血素の至適濃度を決定するに際しては何

時もiIl二常な困難を感ぜずにはいられなかった。

このような,邑一味から本実験lこ於いては,先つ補体と溶

血素の相対関係を追求し, von krogh1耐の式lこ於ける lJn

という係数と,感、作血球の溶血状態を調べてみたのである

が 1Jnの値が小さくなればなる程,その溶血系の補体l亡依

る溶血の仕方が鋭敏であるという結論を得た。つまりこの

場合の溶血素濃度が至適i農度であるが, Wadsworth も溶

血素の至適濃度に於いて Kroghの式l乙於ける 1Jnの値

は最小となることを指摘している。 しかしてこの 1Jnの

値は一般に溶血素濃度が増すに従って小さくなってゆく

が,溶血素濃度がある限界以上になると再び大きくなって

来る。この事実は所謂阻止帯現象に関係があるのではない

かと思われる o Neisser 等~J)によって所謂 Neisser-We・

chsberg現象が発表されて以来,溶血反応IL於いてもかか

る現象があるととが分り,幾多の学者によってその原因が

追求され,また色々な説が報告されて来ている。今その主

なものを挙げてみると, Gay41)の沈降物による補体の同

定説, SormanP8)の特殊脆弱性説, Pandif~)) の補体解離

説, Hyde52)の補体成分の変動説,吉田町,三井・黒沢61)

城55) 須磨町),大川崎〉等の溶血素,補体及び血球の量的関

係によって起るという説等があり,また最近では羽虫等~7)

によってこの現象は抗体グロプリンとアノレプミン複合体で

Page 9: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

14

ある agglutinoidの作用によって起るものであるという

実験が報告されている(ただしとの実験は血球を用いた場

合ではなく,チフス閣について行われたものである)。また

一方 LourauHl ,由平:lj5~ノ等は,かかる現象は血球の凝集の

ために起るものであると説明している O またたとえこの現

象がl直接に血球の凝集のために起るものではないにして

も,溶血素と血球凝集素との聞には密接な関係があって,

常l乙両者の平行関係が成立すると大川4.))は報告している。

また常泉時は緬羊血球系を用いて 3次元的抗原抗体反応を

詳細に追求し,血球凝集反応と溶血反応の聞には何か密接

な関係があることを指摘している O 最近lこ於いては一般に

この両者の聞に平行関係があるという説が多く, Reploh

及び Botticherf)(J)等は,両者は同一物質であってそれがこ

の2つの作用をするのであると説明している。

斯様に溶Ifu反応の阻止,帯現象lこ関しては,現在までの

所定説はないようであるが,第5表の実験結果から,かか

る現象は恐らく血球の凝集のためか,もし〈は凝集に密接

な関係のある因子によって起るものであり,各種濃度の溶

血素による感作血球から得られる J/nの偵の変動も, ζれ

に原因を求め得るのではないかさ考えられる。t11lち第 5表

の如く, 30%程度の溶血lこ基準をおいてみると,同一補体

量に依る溶血度は濃い溶血素を用いた感作血球の方が強

く,逆l乙90%程度の捺血をみると高次稀釈即ちうすい溶

血素による感作血球の方が溶血度が強くなっている。

ζれは高濃度の溶血素で感作された場合は,感作血球

浮滋液中lζ於0'て一郎分の血球だけが補体の溶血作用を充

分に受け得るような状態p:.在るに過ぎず,他の大部分の血

球は凝集を起して補体が充分作用し得ない状態になってお

り,これを溶血させるにはより多くの補体が必要とされ,

従ってこの場合は l/nが大きくなってくるものと想像さ

れる。(第 2~j参鮒)。これと反対に最も鋭敏な溶血反応を

呈する感作血球の場合は,各個の血球が溶血のために必要

にして充分な溶血素と結合して凝集を起さない程度に浮

世存し,しかも補体の溶血作用を最も受け易い量的なバラン

スに置かれているのであろう。従ってとの場合 1/nの値

以最も小となる。溶血反応と同時に調べた血球凝集状態の

顕微鏡的所見からも,大体この考えを裏書きするような結

果が得られた。

次l乙50%溶血lζ必要な補体と溶血素の原液量の和 l乙

就pてであるが,第3表にみる如くこの和が最少の値を示し

た溶血系は確かに 1/n の値が最少であり,従って最も鋭

敏な溶血反応を呈した。 乙の 50第溶血を起すに必要な補

体の震と,その時用いた溶血系中の溶血素の原液量との和

を求める方法を著者は仮に"最小和i法"と名づけたが, ζ

れによって溶血素の至適濃度を求める方法は充分に再現性

があってしかも全く主観の入らない方法である。 Krogh

の式における lfnという係数の示す実際の値は,上述の如

く極めて小さな数字で表わされ,これから溶1ill素の至適濃

度を求めんとすれば相当精密な実験15),40)をしなければな

らない。しかし Steinand Nguの術式め,院によれば,

50 %溶血lこ必要な補体の量は,縦軸に logx,横軸l乙log

寸 Y-ーを目盛ったグラブを作っておくと容易に求めることj-Y

が出来,しかも実験操作上の誤差を生ずる機会も l/nを計

算によって求める場合より格段に少なく,またたとえ生じ

たとしてもそれは前後の関係から容易に判別し得るもので

ある O ただととで述べた実験は, Ifll球浮滋液の濃度を常に

一定にして行ったものであり,もしも血球浮世毒液の濃度が

変れば,あるいはこの方法に不合理が生ずるかもしれな

い。しかし普通に用いられ得る力価の溶血素と, 2乃至 3

9お前後の濃度の血球浮瀞液とによって反応が行われる場合

は,第4表の諸家の実験成績からみても,この"最小和法"

は充分に成立するものと考えられる。

しかしこの方法は実験中に経験的に知り得たもので,

特別な理論的根拠というものはないが,根本的l乙云えば,

Kent50)等の"それ以上溶血素の濃度を増すと補体の溶血

作用がむしろ逆に低下してくる点の濃度を溶血素の至適濃

度とする"方法と一致するものを持っている。また理論的

な興味の見地からみると,一定の 50%溶J寸lを起させるた

めに加えられた補体と溶血素の量の和が最小ということ

は,要するに一本の試験管にJJl1えられた血清成分が最も少

ないということであり,このように幾種もの試料が力IJえ

られた複雑な穆質反応の場合には, 加えられた reagent

が過剰となって反応がスムースに行われなくなる ξいうこ

とも考えられる。兎に角, 同じ血球の同じ量を 50~ぢだけ

溶I唱させるための補体と主主血素の加え方l乙は色々あるわけ

であるが,その和が最小の場合反応が最も鋭敏に行われる

というととは興味あるととであろう O

この"最小和法"に関しては,いまだ論究されるべき

余地も充分にあると思われるが,乙れは現在行われている

方法とは違って,全く主観を入れずに測定し得る点,現行

の 50%溶血単位法の lつの欠点を埋めるのに充分な方法

であると考える。

11 結核の補体結合反応における

各種抗原の比較

結核の補体結合反応は, Bordet & Gengou によっ

てその術式が発表されて以来現在に至るまで極めて多数の

/報告がなされており,それに用いられた抗原についてもま

た各種のものが報告されている。今その使用された抗原を

総指的l乙述べてみると,均等な結核I新手滋液を始めとし,

Page 10: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

閣の自然融解液,菌体の加熱抽出液,生食水抽出液,ヱチ

ノレアルコール抽出液,メチノレアルコーノレ抽出液,エーテル

あるいはベンゾーノレ抽出液,苛性ソーダ抽出液,ダリセリ

ン抽出液,またこのような方法を色々と組合せて得た抽出

液,脱脂雨体の上記のような燥作による各種抽出液,培

養液液,特殊培地の培養漉液,旧ツベノレク 9Y ,あるいは

とれらの抗原に他の脂質等(例えば卵レチチン等)を混合

した液,更には結核蘭乙直接関係のない物質,最近はまた

精製された医i体蛋白,脂質等,実l乙多種多様である O なお

文これらの抗原を使用した場合の反応成績が,病状あるい

はツベルクリンアレノレギーと平行するとか,特異性が強い

とか云う問題についてもその報告は実lこ区々であり,実際

臨床的IC本反応を応用し得るまでには至っていないよう

である。

斯様に他の疾患の場合に比してその特徴を追求するの

が困難なのは,要するに結核菌そのものが他の琵!と巽った

性状を持ち,それが体内l乙進入して起す変化もまた複雑と

なっているためι思Iはれる。斯くて結核の補体結合反応は

一時放置されたような状態となり,極く一郎の学者l乙ょっ

てのみζれが行われてきている現状である。

しかじながら近年 50%溶血単位法が採用され, 更に

Spectrophotometerが用いられるようになってからは,補

体結合反応は一段とその鋭敏さを増すに至り乙の反応の結

核研究における重要性は少くとも基礎医学の分野に関する

限り何人も否定し得ないところと思われる。殊l乙5096溶

血単位法は従来の不連続な力価lこ代り,連続的l乙血清力価

を表示し得る点におい、てこれまで不可能であった微細な力

価の比較も可能ならしめたものである。著者はこの術式を,

従来事j然とじなかった色々な基礎的な問題の研究に応用せ

んとし,先づ実験的l乙結核家兎血清を用いて Stein& Ngu

の術Zえによる補体結合反応の実施を試みたのである。

5096溶血単位法による結核の補体結合反応は Wads-

worth等5)によってすでに行われているが,当時は Spe-

ctrophotometerを用いなかったため,すべての点に正確

を期することは未だ困難であったと想像される。その後は

文献的にみても,この方法による結核の補体結合反応は見

当らないようである。

本報においては,一般の血清反応において見られる

Dean & Webbの最適比の関係または prozone等の問題

l乙関する混乱をできるだけ避ける意味で,抗原及び抗体濃

度の色々な組合せの下lこすべて反応の場を調べつっこれを

行った。

また抗原としては,従来用いられてきた抗原の中で比

較的優秀と思われる Boquet& NegreG川のメタノーノレ抽

出抗原及び!日ツベノレクリン等を主として使用した。勿論現

15

在の結核の基礎的研究がそうであるように,今後は精製

した抗原を用いてとれを行ってゆくつもりである。なお抗

原を作るに際して準備した菌株は,青山B株,イ中野株及び

B,C.G.であるが,これら各菌株の同じ量から同様な操

作によって得た抗原は,同ーの免疫血清に対してほとんど

同じような反応成積を示したので,閣体から得た抗原につ

いての実験は青山B株のみについて報告する。

1. 実験材料及び実験方法

,( i ) 反応lこ使用した器具,溶血系,補体及び稀釈液

はすべて前項と同様である。

(ii) 使用繭株はと記の理由から青山B株だけで,ソ

ートン培地iこ約4週間培養したものである。

(iii) I日ツベノレクリンは青山B株及び B.C.G.から常

法によって作ったものであるが,防腐剤等は一切加えずに

無菌的lζ氷室l己保存しておいたものである O

(iv) 免疫血清は,青山B死闘を 5mgつつ 10日間連

続皮下接種した家兎血清及び B.C.G.をそれぞれ0.01mg,

1 mg, 100 mgを先づ皮下接種し,約 1,カ月を経てから再

び同量の BιG.を皮下接種した 3群の家兎血清を,何れ

も 10倍,及び 100倍の 2種の濃度の!日ツベノレクリンで

Mantoux 反応陽性であることを確かめた後使用した。

実験lこ使用した群は各項目毎lこ記することにするが, 2種

の抗原を比較する場合は常に同一免疫血清を用いたことを

附記しておく。なお被験血清の非働化は型の如く 560C30

分間行った。

( v) 術式の概略

詳細な点に関しては前報a), 40)までに報告したので,

ここでは概略を述べることにし,主として Stein& Ngu

の報告と変っている点について記する。即ち全実験を通じ

て常に「反応の場の形」を作り,抗原の抗補体作用と被検

血清の抗補体作用を同時に調べ得るように工夫した。今第

6表を例l乙とると,まず横の列l乙各稀釈被検血清 (S.D.)

を0.8ccづつ順次に加え(ただし最後の IKの:71]1こは稀釈

液のみ 0.8cc加える),次に縦の各行に各稀釈抗原 (A.D.)

を同じく 0.8ccづつ加える(やはり最後の IKの行には稀

釈液のみ 0.8ccを加える)。次いで IKの列及び行には l

K (1単位即ち 50%溶血単位)の補体 0.8ccを注加し,

残りの試験管には 2K (2単位)の補体 0.8ccを加え,各

試験管内の容量がそれぞれ 2.4ccとなるようにする。 こ

れをよく振濯した後, 40C-60Cの氷室l乙一夜(15時間

位)放置し,翌日乙れを取りだして少くとも室温に lラ分

間位おいてから感作血球を 1.6cc宛各試験管IC追加して

全量を 4ccとし, 370C30分間感作後,その遠沈上清の

Optical Densityを読む。この時用いる blankIこは必ず

感作血球の上清を用いなければならないことは前報でも述

Page 11: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

16

べたが,感作血球が自然溶血を起した場合にはその実験は

捨てねばならない。また lKの補体を加えた各試験管は,

それぞれの濃度における抗原及び被検血清の抗補体作用を

みるためのものであり,表の右最下欄lζ相当する試験管

は,溶血系を加えて感作した後では理論上 50%溶血を起

す筈であるから, ζれが反応後l乙溶血していなかったり,

または非常に溶血の度が強い場合には,使用した補体単位

が不正確なものであったことを意味し,このような場合の

反応成積もとることはできなo'0なお各種抗原の特異性に

関しては毎回無処置の家兎血清をJIJいてこれを調べたが,

後述する如く今回の実験の範週では,陽性を示した例は l

例もなかった。また抗原の製法に関しては実験成績の項に

おいてその都度,説明することにする。

2. 実験成績

( i ) アセトン脱脂閣体のメタノーノレ抽出抗

原による反応

Boquet & Negre的の原法l乙従い,菌体を加熱滅菌

後蒸溜水で洗糠乾燥し,これに 100倍量のアセトシを加え

て 24時間脱脂する O ζの脱脂菌体l乙再び 100倍量のメタ

ノーノレを加えて約2週間370Cで抽出し産j体を鴻別したも

のを抗原とした。乙の抽出液は低温にすると雲禁状のもの

が析出してくるが,使用に際してはこれをあたためて雲索

状のものをよく溶解してからl直ちに稀釈して実験に供し

た。なおメタノール単独の抗補体性及び血球溶解性は 100

倍になると完全に消りたすることは別な実験によって確め

た。第6表は青山B死菌接種による家兎免疫血清を使用し

た場合の例である。

第 B表 アセトシ脱脂菌体のメタノーノレ

抽出抗原による反感

よとと1200I 4∞180o I16∞132∞ lK

100o I 0 I 0 I 0.10 , 0.18 I 0.04 200 0 I 0 I 0 I 0.09 i 0.24 i 0.07

400 I 0 1 0 1 0.04 1 0.14 0.32 0.10

8∞ 0.04 1 0.111'0.12 10.24 1 0.36 1 0.13

1600 1 0.18 i 0.19 I 0.24 I 0.26 ¥ 0.39 I 0.16

32∞ 0.37 I 0.37 I 0.38 I I 0.13

0.16

溶血の程度からも大体反応の場の形は想像することは

できるが,乙れを図にして示したのが第 5図 (A)である。

乙れは各濃度の抗原によって 50%溶血を示した血清稀釈

を正確に算出し(算出法は文献恥参照のこと).これ等の

点を結んで画いたものである。なお抗原及び被検血清の抗

補体作用の強い部分は表及び図から除外した。

さて第6表及びj第5図 (A)から分るようにアセトン

脱脂南体のメタノーノレ抽出液は 400倍からほとんどその抗

補体作用がみられずしかもかなりの優れた抗原性を有し,

(ζの実験の範囲では抗原価 1600倍)被検血清の最高力

価もこの表では 1600倍である O

(ii) アセトシ脱脂菌体のエタノーノレ抽出抗

原による反応

Boquet & Negre'りはアセトシ脱脂薗体から得られ

る抗原性物質はエチノレアルコーノレ可溶性の脂質よりもむし

ろメチルアルコーノレの方lこより易溶性の脂質に属すると云

うととを指摘しているので,果してエタノール抽出液とメ

タノール抽出液との聞には差があるかどうか,或いはまた

同じようなものだとすればメタノール抽出液の方により多

くの抗原性物質が抽出されるものかどうかという点を追求

する怠味で,メタノール抽出の場合と全く同じ条件でエタ

ノーノレをもって抽出してみた。その結果が第7表であり,

乙れを図lこして示したのが第 512(1(B)である。

~12~r~γ0116'JO 132∞ 1 K

第5図 アセトシ脱脂菌体のメタノーノレ

抽出液 (A) とエタノーノレ抽出

液 (B)の比較

#託1!1,、手-4まえー-?

♀Q.L "100 8Q() 160()

宇00

二ノ旭区

Z〆1日 800

本 fω。奴

~OO 400_800 1600

wol-

二ノJOQι

16001-

Page 12: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

表及び図から明かなように,このエタノーノレ抽出抗原

は,抗補体作用の程度も免疫血清との反応結果も全くメタ

ノーノレ抽出抗原l乙似ており,早急に結論するととは勿論出

来ないが,大体同じ性質の物質が抗原として働いているの

ではないかと思われる。乙のエタノール抽出液も低温にな

るとやはり雲索状のものが析出してくるが,その量はメタ

ノーノレの場合lζ比して多いようである。なおこの場合の被

検血清は,断固と全く同じ青山B死闘接種家兎免疫血清で

ある O

(iii) アセトン脱脂菌体の生理的食塩水抽出液

とメタノール抽出液との比較

次 l乙メタノーノレ抽出抗原は従来から強~)反応原性のあ

る物質とされているが,単なる生理的食塩水抽出液とどの

位差があるかをみるために,アセトシ脱脂菌体の同一量の

ものを2通り用意し,一方には 100倍量のメタノーノレを加

えて前と同じ操作で抽出し,一方lこは徐々に生理的食塩水

を加えながら乳鉢でよく磨枠し最後に 100倍量としてこれ

を Seitz措過器で綜別し,この両者を前と同じく死菌免疫

家兎血清を用いて比較してみた。表を省き図だけを掲げ

た。

第8図 アセトン脱脂菌体の生理的食塩

生L boo

音12ω格ゑ又 2W1o

30D・・bOO ..

12001-

2/10叫匙

水抽出j夜 (A)とメタノーノレ抽

出液 (B)の比較

〆すた8争.衿紘一一→

25・5"0 100 ~OO 400 8()O

¥ノ(Al

12, 20;0 5"00 10/)0 2()()O J;.OOO

t B) ノ

17

は比較出来ないが,抗原価に相当の差がある ζ とは別とし

てもメタノーノレ抽出液の方が同一血清に対して遥かに高度

の血清稀釈まで反応が陽性にあらわれた点においてよりす

ぐれた反応原と考えるのが妥当と思われる。

(iv) 生理的食塩水抽出液lこメタノーノレを添加

した場合の反応

E. Wheeler-Hill附の実験によると,補体結合反応の

場合IC抗原lこphenol等を加えるとその抗原としての能力

が増すと云われているが, (iii) の実験において見られた

差は果してこのような現象と同ーの範鴎に人るものかと、う

かを見るために更に次の如き実験を行った。被検血清は前

と同じである。

第r図 生理的食塩水抽出液にメタノー

ノレを添加した場合の反応

fえ4宇.i.t'"tぇ一一→100 200 400 800 11>(10

,00

ーノノl使令水抽出没司針J

100 zo.O 400 ~OO 1600

300

。。。 』 ノ1200

{メ'lJ→I.-:R.加 j

日[]ちメタノーノレ抽出液の優れた抗原性がメタノーノレ可

溶成分に在るのか,あるいは然らずして単にメタノーノレが

加わったことによる増強作用に過ぎないのかを検討するた

め生理的食塩水抽出液と,これにメタノーノレを前と同じよ

うな害l治に添加したものを比較してみた。その結果は第 7

図の如く,メタノールの添加だけでは反応成積には何も影

響がみられなかった。従ってこの場合は Wheeler-Hill

の実験の場合とは本質的に異ったものと想像される。

第6図から明らかな様l乙生食水抽出液は抗原価抗体価 ( v) アセトン脱脂菌体のメタノーノレ抽出液と

共l乙約8∞倍であるに対しメタノーノレ抽出液は抗原価4000, 未処置菌体のメタノーノレ抽出液の比較

抗体価 2400を示し,後者の方が反応原として遥かに優秀 アセトシによる脱脂という操作はメタノール抽出抗原

であった。しかし生食水抽出液の方は使用した菌量は同ー を作る上にどの程度の役割を演じているかを見るために,

でも,乳鉢で磨砕するのであるから抽出のされ方による相 一方,未処置菌休からもメタノーノレ抽出液を作ってこれを

違も考慮に入れる必要はあろう。従ってとの両者はl直接に 比較してみた。用いた免疫血清は前と同じ死菌免疫家兎血

Page 13: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

結果は第8図の如〈反応の湯の形において多少異った

ものが得られた。これは未処置の菌体から得た抽出液には

何か不純なものが入っているような感を抱かせるρ 事実後

述するように,旧ツベノレクリシを用いた場合l乙は 2つの反

応の場が得られたが,乙の場合の抗原中にはツベルタリン

因子の一部も同時に含まれていたのではないかということ

が推測される。しかし勿論ζ れだけの実験では決定的なこ

とは何もいい得ないであろう。

(vi) I日ツベノレクリンを抗原とした場合の反応

ツベノレクリンは古くから補体結結合反応のすぐれた抗

原として使用されてきてているが,日0%溶血単位を用いた

ならば如何なる成績が得られるかと考え次のように実験を

行ってみたO

(第 l例):用いた免疫血清は前と同じ死菌免疫'ぷ兎血

清であるが,前とは異った家兎の血清であり,用いたツベ

ルクリシは青IUB株の培養婦、液から作ったものである。そ

の反応結果は第8表及び第 9図に示した如く,非常に高度

に稀釈されたツベノレクソ :/1こも反応が陽性にあらわれ,し

かも 2つの反応の場がみられた。

第 8表 ツベノレクリンを抗原とした一場合の反応 (例 1)

18

清である。

第8図 アセトシ脱脂菌体のメタノーノレ抽出

液 (A)と未処置菌体のメタノーノレ

抽出液 (B)の比較

抗原持軍え一一→

100 200 900 800 1600

a

H

v

a

u,

.

5

3

0

fF

忽肴渇双lI↓

<A】J100 l∞ "00 800 161Ja

300 1 B)

6ω ---.-/ 12叫

一7

1

3

7

9

・伍一・14ιq&勺

ι

つゐ

I

o

o

l

-

-

訂バ川利引

2

一2

3

A

A

2

1a-nvnunununu

一062Jnuq4ny

l

0

2

4

4

2

TA

一円UlnunununU

7fauAT2JOD

0

ρ

0

3

4

2

一TA

一nvnunununu

一nudu

口ノ

q4qノ一

0

2

4

2

unununu

一nuqJqJ

つん只U

0

3

4

2

nununUAU

0

5

2

2

0

1

4

4

3

t

-

-

-

n

u

n

u

n

u

n

u

一円U

戸、ノ

oo--。。一

&qJA守

i

t

0

0

0

0

一n

↑つ4

ウゐ

QU

u

一戸hノ

nuqJqJA且つ

5

Ill11「tIlli--lli一D

1

0

0

3

9

一A

4

D

J

A

A

Z

一。OG

o

o

-

0

1

1

9

7

nuq,hqJqJh

一q

-

-

0

0

0

0

一0

1

8

3

0

nu'iAaqJ

;

:

O

G

O

O

-

一一0

3

4

7

1

nuqコA守

qコ一

二一

l

k

k

一n

1

1

1

1

¥

主¥一切印

mωK一

一¥一

1

3

6

1

¥

第9図 ツペノレクリシを抗原とした場合の反応

}

aA

d3

3

4

{

吠J.f.坊紙(2)λZ品 J→噌宮

-1 2-3 If 5 6 "1 8 '1 10 " /.2

280 鴻事え

160

3ZO

μ。ζ の成績は進藤等加が精製ツベノレクリシを用いた結

核感染家兎血清による反応(8例)中. 2例において見ら

れた反応の場と極めて良く類似している。

(第 2例):ツベノレク 9:/を抗原とした場合11:. 2つの

異った反応の場が見られるのは,ある特定な家兎の場合の

みかどうかを知るため,次lとB.C.G.100 mgを2回接種

した別な家兎血清を用いて同様に実験を行ってみた。

その結果はやはり前回と同じく 2つの異った反応の場

が得られた f第?表及び第 10図)。また第8表においては

抗原の抗補体作用を見る IKの列を除外したが,この場合

のツベノレクリンは 50倍では血球の溶解性がなく, また第

8表の如く抗補体作用もなかったからである。

なお著者はその後 B.C.G.の培養溶液から作ったツベ

ノレクリ yについても同様に実験してみたが,何れも上と同

じ結果が得られた。すなわち陽性血清は現在までに6例行

ったが,今までのと乙ろ6例共2つの異った反応の場を示

している。なおかかる「場の形」は完全溶血法によっては

見出し得ないものである。

Page 14: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

第 g表 ツペノレクリシを抗原とした場合の反応 (例 2)

19

iiJTIE27i 213|4いい I7 I 8 I 9 I 10 I 11 ¥ 12 ¥ 1 K

(vii) メタノーノレ処理ツベルクリンの上清分劃

を抗原とした場合の反応

脂脂菌体のメタノーノレ抽出液,すなわちメタノーノレ口J

溶成分κ補体結合反応の抗原性物質が存在することは前の

実験でも明らかであるが,ツベノレクリシ中の抗原性物質の

中にもあるいはメタノーノレ可溶成分と不溶成分の 2因子が

あるのではないか,若し存するとすればツベルクリンによ

って示された 2つの反応の場の形がメタノーノレで処理模作

する乙とに依り変化するのではないかとも考えられるので

本実験を行った。すなわちツベルクリシにラ倍量のメタノ

ールを加えて良く振渥し,遠沈して上清分劃と沈澱分劃lこ

分け,上清部分はアルコーノレを除き,両者とも稀釈液をも

って元のツベルクリシ量l乙修正し,これを原液として適当

に稀釈後反応を調べた。上清分劃による成績は第 10表及

び第 11図にとれを示した。 すなわち上清分劃はその高濃

第 10図 ツベノレクリンを抗原とした場合の反応

札房持奴 1(,5,, 2")ー

明., .4 3 4 5 6 7 8 'f 10 I! ,~

n

U

A

U

eo

,hu

担舟M押収-|↓

よlO

6'HJ

度の部分lζ於いて僅かに反応が陽性にあらわれただけで,

高次稀釈の部分ではすべて反応は陰性であった。

第 10表 メタノーノレ処理ツベノレクリンの上清分劃を抗原とした場合の反応

ι竺竺列J.n引7川1.\iυ~l三ご干l仁|イ7 I 工斗L土ι上十りI__.II.J_~プ土ιυ叫2\\ぺ1-日J十」l1l[[一

第 11衰 メタノーノレ処理ツベノレク Yンの沈澱分劃を抗原とした場合の反応

E

一0

4

6

8

9

E

2

2

2

2

2

'A

一nununununu

2

一3

・1一

ununununu

8

4

2

F

O

1一1

3

4

4

3

l

一0

0

0

0

0

一1

0

8

F

9

一nu一1

3

3

4

2

一1

一0

0

0

0

o

-

一mnM併

9

一・193q493ny

一0

2

4

4

2

nununununu

iaqiE

Oノ

nuqLA守必

4

nununununu

qLooqJ令官

JOO

i

l

1aqJ41A守つ

&

5

・nununununU

8

8

3

4

9

一コ

一,A

q

J

A

a

4・q4

0

4

m

u

h山

4

1

a

-

n

v

n

u

n

u

n

u

n

u

a

一川一

&

一n

D

l¥一

¥

D

¥&一

80 0.01 0.02 0.08

160 0.11 0.23 0.21

320 0.41 0.38 0.39

640 0.43 0.45 0.44

IK 0.30 0.31 0.29

Page 15: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

20

第 11図 ツベノレクリンのAメタノーノレ処理上

清分劃を抗原とした場合の反応

すえ早Í'.~.H_ (巧K2ik)_→

句 I 2. 3 ~ -' 6 7 d' '1 10 f/ IZ

彊L

;員 ~O

'キ車足 1品。

)<0

640

( viii) メタノーノレ処理ツベノレクリンの沈澱分

劃jを抗原とした場合の反応

メタノーノレ沈澱分劃を抗原とした場合は,第 11表及び

第 12図の如く, ツベノレクリンをそのまま用いた場合とほ

ぼ同様に 2つの異った反応の場を呈した。なお実験 (vii)

及び (viii)Iこ於いて用いた免疫血清は死菌接種の同一

家兎血清である。

第 12図 メタノーノレ処浬ヅベノレクリンの沈

澱分劃を抗原とした場合の反応

枕房持ff-(25'Z~)ー争

民 12 J • S 6 V 8 , M " a

o

n叩

s

u

'揮

JJ司奴

1+

320

6*0

(xi) メタノーノレ抽出抗原と,それに KOHを

加え加熱した抗原との比較

メタノーノレ抽出抗原が Boquet& N色greの云う如く

いわゆる脂質が主となっている抗原とすれば,あるいは鹸

化等によってその抗原性が消失するのではないかとも考え

られたので,先に青山Bアセトン脱脂菌体から作ったメタ

ノーノレ抽出抗原と,これに 15あの KOHを同量加えて800

C 30分間加熱したものの 2種について,死菌免疫による

同一家兎血清を用い比較を行った。なお加えた KOHは第

12表のように稀釈した場合, それ単独では溶血反応l乙何

等影響がないことをあ、らかじめ確めておいた。結果は第12

表IC示す如く.KOH処理の抗原は完全にその抗原能を消

失していることが分った。但し KOH処理という換作が歯車

化と云うことを,古味するかどうかは,化学的に調べていな

いので速断は出来ない。

第 12表 青山Bメタノーノレ抽出抗原 (A)とそれに

KOHを加え加熱した抗原(B)との比較

(A)

¥¥A瓦 500 ∞o 11( S.D.¥¥---1

100 0.02 j 0.03 1 0.11

200 0.0ラ 0.09 I 0.16

4∞ 0.13 i 0.14 I 0.18

蜘 0.17 I 0.21 I 0.18

(B)

¥¥ム.D.. 5OO 1000 1 1( S.D.¥¥¥_J

100

200

400

800

0.11

0.15

0.17

0.18

(x) ツベノレク1);/を KOHで加熱処理した

場合の反応

次l乙ツベルクリン自体を前と同様な KOHによる加熱

処理を行ったならば反応成績に差があらわれるかどうかを

知らべてみた所,前回とは逆に殆んどその抗原能力lこ変化

を来たさなかった。(図表は省略する)

乙の(ix)及び (x)の実験結果からみると,アセト

ン脱脂菌体のメ夕、ノ -)lノ抽出抗原とツベノレクリシとは,大

体において異った性質を持った抗原と考えられる。

(xi) 各種抗原の特異性について

以上用いて来た各種の抗原が,他の疾患における抗体

と如何なる反応を示すかと云うことに関しては,今回は実

験を行わなかったが,各抗原については常に正常家兎のI血

清を用いて同時に実験を行った。その結果は常に険性で,

疑陽性と思われるものも 1例もなかった。

3. 考按並びに小括

結核の補体結合反応の抗原lこ関しては,古くから数多

く報告されて来ていることは前述したところであるが,こ

の中で学問的にも興味が多く,また実際的にも現段階では

すぐれた抗原とされているものは.I日ツベルクリン及び

Boquet & N色gre慨によるメタノーノレ抽出液で、あろう。

Boquet等の報告によると,アセトン不溶性で,メチノレア

ルコーノレl乙可溶な菌体脂質は,試験管内で抗原として結伎

Page 16: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

血清と反応し,またこのものは生体l乙与えても抗体を産生

すると報告している。しかも彼等によれば乙のメタノーノレ

抽出液を予め動物l乙与えるか,若しくは感染後lこ定期的i乙

投与して行くと,結核の感染l乙対して防禦力を示すと云

う。かかる意味からすると,メタノール抽出抗原によって

抗体を見出すと云うことは何か怠味がある乙とのように思

われる。従って乙のような事実の一部を追求する目的も兼

ねて,著者は先づ 3種の Strainすなわち青山B株,仲野

株及び B.C.G.を準備して夫々のメタノール拍出抗原を作

ったのであるが,実験の最初にも述べた如く,同一条件下

で得たζの三者の聞には,同一免疫血清に対する反応上に

差を見出し得なかった。乙の菌株間の関係については,

Cooke71)等のように血清反応上菌株を分類することが

可能であるとする学者もあるが, Bordet & Gengou72),

Harris and Lanford73)のように,一般には血清学的な結

核菌の分類は困難であるとされている。最近柿下等74)も免

疫血清l乙対する交叉血球凝集反応及び吸収試験により,人

型,牛型及び B.C.G.は共通の抗原性を有することを認め

ている O 本実験においても,実験の性質上正確に各菌株に

ついての交叉反応を行ったわけではないが,少くとも今回

の実験に関する限り菌株間lこ抗原的な差違を認め得なかっ

たので,一応青d_IB株 l株lこ限って実験を進めたわけであ

る。

菌休から脂質を分離して,それについての試験管内及

び生体内における抗原性を検討した実験は, Boquet等以

前lこも Thieleand Embleton75lの報告に接し得るが,こ

の抗原抽出方法は化学的にも不正確で結果はあまり信頼出

来ないことを Wadsworth等76)は指摘している。 Boquet

& Negreの報告 (1923年)に次いで 1925年には Wads.

worth等16)が菌体脂質の試験管内抗原性について詳細に

その研究を報告している。これによると菌を脂肪溶剤に入

れた場合Lipoid機物質が抽出されるが,これは中性脂肪と

脂肪酸のエスアノレから成り(蛋白もいくらか含まれるとい

う),乙の中アセトシ不溶性でアノレコール可溶性の分割に高

度の試験管内抗原性を有する物質が含まれ,かっこれは耐

熱性のものであると云う。}またメチノレアノレコーノレ可溶性脂

質とエチノレアノレコーノレ可溶性脂質については,本実験の結

果と同様に,両者とも高度の抗原性を示したと云うことも

同時に報告している。 Boquet等はこの抗原性を有する脂

質の本態は多分 phosphatideであろうと述べているが,

その後 Pilmeri7), Doan7~) も追試の結果この考えを肯定

している。すなわち Pilmerによるとメタノーノレ抽出液を

更に窒素量を少なくなるように精製しでも抗原性は反づて

増加し, Aflderson等の精製した燐脂質分割は完全抗原と

しての性質を有すると云う。つまり I正常家兎に補体結合性

21

抗体を産生し,試験管内でも抗原となり得ると云うのであ

るO 然しこれに対して Mayerand Terroine79)はBoquet

等の抗原はなお不純で蛋白質を含んでいる可能性があり,

従って実際抗原となり得るものは,燐脂質と蛋白質の結合

物であると述べている。われわれも目下共同実験の一部と

して精製燐脂質分割の試験管内抗原性を追求中であるが,

精製が進むにつれて一般に抗原能力が消失してゆくような

傾向がみられるようである。

また生理的食糧水抽出液,蒸溜水抽出液等にも抗原性

が認められることは,過去にも多数の報告があり,また本

実験の(iii),(iv)及び前報32)からも明かであるが,メタ

ノーノレ抽出液lζ比して一般に弱(,)ょうである。

なおアセト y可溶性の脂質については,その実験結果

を省略したが,先人の結果と同様,全く抗原性は認められ

なかった。

次l乙ツベノレクリシについてであるが, Wadsworthは

その報告70)の中で一定の抗結核血清に対する抗原の能力

をその稀釈度であらわして,ツベノレクリンは 1: 1∞0-1

:2∞0,脂肪溶剤抽出液は 1: 500,蒸溜水抽出液は

50-2∞,グリセリン抽出液は 1: 30-50という様l己記

載している。本実験結果から見ても確かにツベノレクリンは

抗補体作用も少なしすぐれた抗原であることは明らかで

あるが,更に注目すべき点は常に 2つの反応の場を示した

ことである。とれは恐ら<2つの抗原抗体系による反応で

あろうと想像される。Seibert旬、は旧ツベノレクリンには 2

種の多糖体分劃と, 3種の蛋白分劃が有在すると報告して

いるが, Haurowitz and Schwerin仙の理論的な抗原抗体

系の実験事実と考え合わせて見ると学問的に興味のあるこ

とと思う O 進藤等可〉も実験的家兎の結核症に於いて,精製

ツベノレクリンを抗原として用い, 8伊J中2例lζζのような

現象が起ったことを報告しているが,本実験に於いては前

述の如く, 6例中 6例共2つの異った反応の場を示した。

これは著者が用いたツベルクリンにも原因するかも知れな

いが,前記の如く青山Bの培養溶液及び BιG.の培養滅

液から作ったツベルクリンはlif,i者とも同じような態度を示

しており,むしろ 50%溶血法の鋭敏性l乙原因を求むべき

ものではなかろうか。

また一方,同一抗原で動物を免疫しでも,動物の種属

が異なると免疫反応上に異った点があらわれる ζ ともある

時〉ので,家兎以外の動物においてもかかる現象が起るかど

うか検討してゆくつもりである。

以上記載して来た如く,旧ツベノレクリシもまたI宮休の

メタノール抽出液も優れた試験管内反応原性を有している

が,然らば旧ツベノレクリン中の抗原性物質と,メタノーノレ

抽出液中のそれとは同様な性質のものであるか,あるいは

Page 17: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

22

異なるものであると云う疑問が起って来る。この点につ

いて血清反応の土から検討しようと考&.先つや!日ツベノレク

リンが示した 2つの反応の場の中,何れか一方があるいは

メタノーノレ可溶性の分劃と関係があるのではないかと想定

してツベルクリンにメタノーノレを加えて良く振濯し,メタ

ノーノレ可溶成分と不溶成分I己分けて実験を行ってみたので

ある(実験 vii及び viii)。結果は不溶成分の方はツベノレ

クリシそのものを抗原とした場合と同様な成績を示し,白J

溶成分の方は高濃度の部分に於いて僅かに陽性反応、を呈し

たに過ぎなかった。

また一方実験 (x)の如く,メタノ}ノレ抽出液の KOH

加熱処理による抗原性の変化を調べた所,メタノーノレ抽出

液はこのような操作によりその抗原性を完全に消失するこ

とが分った。然しながらツベルクリンの場合にはこのよう

な操作をしても殆んどその抗原性に変化を釆7こさなかった

のである。かかる点から見るとやはり|何者は異った性状の

物質が反応原として働いているものと考えられる。

なお KOH による加熱処理は一応鹸化と云うことが

考えられるわけであるが.Wadsworth等71)) もf:ii体から

NaOHで抗原を抽出する場合は,その濃度が 1/50Nなら

ば抗原性物質が抽出されるが.I/IONあるいは 1/20Nの

ものを用いて拍出した場合には殆んど抗原性は認められ

ず,これは恐らく鹸化のためであろうと述吋ており,著者

の行ったこの操作もそれと軌をーにするものではなかろう

かと考えられる。

この他,一般の血清反応lこ於けると同様に,使用する

抗原を出来るだけ純化しなければ云々出米ない問題が多々

あり,今回報告した抗原もすべて従来報告されて来たもの

をそのまま用いたものであるから,当然純化した抗原によ

る反応か要求されて来る O メタノーノレ抽出液については前

述の如く共同実験の一部として実験中であり,またツベノレ

クリンについてもこれを精製分析して反応を行い 2つの

抗原抗体系によると思われる反応の解析を続けてゆきたい

と考えている。

なお,免疫及びアレノレギーの問題に関しても Chou-

cron町,叫.Raffel町,加).武田61)-63)等, これを保l体成

分の側から解かんとする研究が最近の趨勢となりつつある

がとれに対して大きな役割を演ずるものは補体結合反応で

ある。勿論各I椅体成分についての肌清反応は必ずしも補体

結合反応ばかりでなく,その目的によって,採用する血清

反応の種類が異なるべきであるが,鋭敏さに於いてはやは

り補体結合反応を第 11こ挙げねばならないであろう o この

反応を従来より更に正確度を増して行ったのが 50労溶血

単位による方法である。著者は以上の如く,現在報告され

ているとの方法の中で最も使用し易いと思われる Stein

and Ngu の方法を採り上げ, その術式の一郎を改良して

結核の場合に応用し. 2. 3の抗原についてここに報告し

た。抗原l乙関しては未だ研究の途上であるが,使用した抗

原の中. Boquet & Negre のメタノーノレ抽出抗原の成分

は確かに l種の脂質と考えられるものであり,現在色々と

問題になっている Choucron83)の PMKo.Bloch札)li.'))等

の云う Cordfactor.あるいはまた Anderson'均等によっ

て分離された各種の蝋及び脂質等との関連性も考えられ,

また一方ツペノレクリシアレルギーに関しても,武田知は,

ツベノレクソン蛋白を主成分とした武田・須賀弁到の抗原

による補体結合反応の結果は,ツベノレクリン反応の結果と

似た関係にあると述べており,従来に倍した正確度を持っ

この術式を用いてこれらの点を追求してゆくならば,ある

いはまた何か新しい知見を期待しでも良し〉かも知れないと

考えている。

111結 語

1.前報l乙引続いて 50%溶血単位法による補体結合

反応の術式につき検討し,従来主観的に測定されていた溶

血素の至適濃度を客観的に算出する lつの方法を知り得

た。

すなわち著者は仮にζれを"最小和法"と名付けたが,

各種濃度の溶血素による感作血球の 50%溶血lζ必要な補

体量を夫々求め,その時用いられた溶血素及び補体の原液

量の和が最小となった所の溶血素濃度が.505ち溶血単位法

の術式l乙於いて使用さるべき溶血素の至適濃度であること

を証明じた。

II. アセトン脱脂結核l者体のメタノーノレ抽出液及びl日

ヅベノレクソン等を抗原として.50勿溶血単位法により結核

免疫家兎血清について補体結合反応を行い,次のような結

果を得た。

( i ) メタノーノレ抽出波及びエタノーノレ抽出液は,同

一免疫血清に対しほほ同程度の反応を起した。

(ii) Boguet & N在gre による結核Iゐ体のメタノー

ル抽出液は補体結合反応の抗原として食温水抽出液より遥

かに優れている。但しζ れは単なるメタノーノレの添加によ

る増強作用ではなく明らかにメタノーノレ可溶性成分に帰せ

らるべきものであると考える。

(iii) 日ツベノレク Pンを抗原とした場合には. 2つの

・反応の場がみられた。

(iv) 旧ツベノレクリシのメタノーノレ不溶性分劃は,ツ

ベルクリンそのものを抗原とした場合と殆んど同じような

反応を呈した。

( v) メタノール抽出液は,乙れと同量の 1%KOH

を加えで加熱処理することによりその抗原性を失う。

Page 18: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

(vi) 然るにIHツベノレクリンは同様な KOH処理を行

っても,その抗原性lζは殆んど影響が見られなかった。

(終りに臨み終始御懇篤な御指導と御校閲を戴いた大

原教授に深謝致します)

引用 文 献

1) Leschly, W. : Aarhus, Trykt 1 Stiftsboktrykkeri'

et. 1914.

2) Morse, S. : Psychiatric Bull. Utica 1, 47, 1916.

3) Morse, S : Proc. Soc. Exper. Biol. & Med. 19, 17,

1921.

4) Brooks S.C. : J. Med. Research 41, 399, 1919-20. 5) Wadsworth, A., Maltaner, E. & Maltaner, F. : J.

Immunol. 21, 313, 1931.

6) Wadsworth, A., Maltaner, E. & Maltaner, F. : J.

Immunol. 26, 25, 1934.

7) Wadsworth, A., Maltaner, E. & Maltaner F. : J.

Immunol. 28, 183, 1935.

8) Wadsworth, A., Maltaner. E. & Maltaner, F. : J.

Immunol. 29, 135, 193ラ.

9) Wadsworth, A., Maltaner, F. & Maltane.r E. : J.

Immunol. 35, 93, 1938.

10) Wadsworth, A., Maltaner, F. & Maltaner E. : J.

Immunol. 35, 105, 1938.

11) Wadsworth, A., Ma1taner, F. & Maltaner, E. : J.

Immunol. 35, 217, 1938.

12) Wadsworth, A.B.: Standard Methods of the Divi.

sion of Laboratoies and Research, New York State

Department of Health. B<'Iltimore. The Williams

& Wilkins Company P. 213 -262 1939.

13) Thompson, R. and Maltaner, F. : J. Immunol. 38,

147, 1940.

14) Mayer, A.M., Eaton, B.B. and Heidelberger, M.:

J. Immunol. 53, 31, 1946.

Iラ)Kent, J.F. Bukantz, S.C., <'Ind Rein. C,R.: J.

Immunol. 53, 37, 1946.

16) vonkrogh.,: J. Infect. Dis. 19, 452, 1916.

20)池端隆,荻田友雄,谷野政次:日本細菌学雑誌 9.

(6), 470, 1954.

18)蘭守竜雄:日本細菌学雑誌, 10, (8), 677, 1955.

19)吉田起夫:医学と生物学, 27, (6), 232,昭和 28年.

20) Friedmann, U. : Zeitschr. f. Hgg. 67, 278, 1910.

21) Sachs, H. : Berl. Klin. Wschr. 58, 1075, 1921.

22)上野正吉,張樹棟:血清学免疫学雑誌, 2. 585,昭和

16年.

23)吉田赴夫:医学と生物学, 26, (2), 81,昭和 28年.

21) Mayer, M.M. Osler, A.G. Bier, O.G. and Heidel-

berger, M. : J. Immunol. 59, 195,1948.

2ラ)Osler, A.G. Mayer, M.M. and Heidelberger, M. :

23

J. Immunol. 60, 205, 1948.

26) Osler, A.G. and Heidelberger, M. : J. Immuol. 60,

317‘1948.

27) Osler. A.G. imd Heidelberger, M. : J. Immunol

60, 327, 1948 22) Stein, G.J and Ngu, D. V. : J. Immuol. 65, 17,

1950.

29)中村敬三,石坂公成:日本医事新報, No. 1616, 1767

頁, Iffl和 30イ1:4月.

30)中村敬三他4名:性病, 40, (4), 121,昭和 30年.

31)大原達,池端隆他:結核 29,(増刊号), 169, 1954.

(抄録)•

32)大原達,池端隆他:日本細菌学雑誌日, (1), 41,

1955.

33) Dungern : Miinch. Med. Wschr. Nr, 15, 387, 1902.

34) Morgenroth, J u. Sachs, H : Berl. Klin. Wschr. Nr.

3雪, 817, 1902.

35) Thiele F.H. and Embleton, D. : J. Path and Bact.

19, 372, 1914 - 1ラ.

36) Seelich, F. : Zellen Biochem. Z. 278, 9, 1936.

37) Heidelberger, M. : J. Exp. Med. 73, 681, 695,

1941.

38) Sormani, B.P.: Zschr. f. Immunitatsf. 24, 336,

1916.

39) Pandit, C.G. : J. Hyg. 21, 406, 1923.

40)池端降:日本細菌学雑誌, 10, 121, 1955,

41) Maslakowetz, P.P. u. Liebermann, Jふ Zschr.f.

Immunitatsf. Bd. 2,ラ54,1909.

42) Kent, J.F., Bukantz, S.C., and Rein, C.R. J.

Immunol. 53, 40, 1946.

43) Haurowitz, F.: Chemistry and Biology of Prote-

ins, New York, 129 pages, 1950.

44) Lourau, M. : Compt. Rend. Soc. Biol. 127, 133,

1938.

45)大川富雄・岡山医学会雑誌,第 53巻, 2018,昭和 16

年.

46) Kent, J. F. : Science. 105, 316, 1947.

47) Gay, F.P. : Ann. L'Inst. Past. 19, 593, 1905.

48J吉田魁夫:医学と生物学, 3D, 76.昭和 29年.

49)北岡正見,高野宏一:日本細菌学雑誌, 8, 53, 1953.

50) Kent, J.F.: J. Lab. and Clin. Med. 31, 1270, 1946.

ラ1)Neisser, M. u. Wechshberg, F. Miinch. Med.

Wschr, 48, 697,、 1901.

52) Hyde. R. R. : Am. J. Hyg. 8, 730, 1928.

53)吉田義雄:北海道医学雑誌,第 ?{j・, 6号, 810頁,昭

和4年,

54)三井孝夫,黒沢俊祐:北海道医学雑誌. 9, 532及び

973,昭和6年.

5ラ)城義彰:I司山医学会雑誌,第 44年, 2970, 3112, 昭

Page 19: 50%溶血を指標とする補体結合反應の實驗的研究: …...7 50%溶血を指標とする補体結合反癒の賓験的研究 特に溶血素の定量法と結核に於ける各種反応

24

和 7年.

56)須磨治海:岡山医学会雑誌,第48年.7号, 1ラ42頁,

昭和 11fjo.

57)羽里彦左衛門,風間新助,飯田毅:日本細菌学雑誌

8, 661. 1953.

ラ8)由利悦夫:日本微生物学会雑誌, 22,1415,昭和3年.

ラ9)常泉与惣治:アレノレギー, 3, 46, 1954.

60) Reploh, H. and Botticher, H. : Zeitschr. f. Immu-

nitatsf., 89, 107, 1936.

61)武田徳晴,太田達男,露湧泉:医学と生物学, 4, 88,

明和 1811'.

62)武田徳晴r1本細菌学雑誌, 7, 160, 1952.

63)武田徳晴他5名:日本細菌学雑誌, 10, 621, 1655.

64) Bloch, H.: J. Exp. Med. 91, 197, 1950.

65) NolI, H, and Bloch, H. : Am. Rev. Tbc. 67, 828,

1953.

66) Anderson, R.J.・J.Biol. Chem. 97, 639, 1932.

67) Takeda, Y and Sugai, T. : Jap. J. Exp. Med. 14,

371, 375, 1936.

68) Boquet, A. et Negre, L. : Ann. I'inst. Past. 37,

787, 1923.

69) Wheeler-HiII, E. : Zschr. Immunitatsf. 92, 270,

1938.

70)進藤宙二, 若倉和美,小峰績:アレノレギー, 1, 36,

1952.

71) Cooke: J. infect. Dis. 25. 452, 1919.

72) Bordet .and Gengou: C.R. L' Acad. Sciences, 137,

351, 1903.

73) Harris W.H. and Lanford. J.A. : J. Infect. Dis, 13,

301, 1913,

74)柿下正道他8名:日本車籾納H町1菌学雑pιバ14ムl75) Thi記ele,F.H. and Embleton, D. : J. Path. and Bact.

19, 349, 1914 - 15.

76) Wadsworth, A., Maltaner, F. and Maltaner, E. :

J. Immunol. 10, 241, 1925.

77) Pilmer, M.: Am. Rev. Tbc. n, 86, 1928,

78) Doan: Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 26, 627, 1929.

79) Mayer R.L: J. Bact. 48, 337, 1944.

80) Seibert, F.B.: Am. Rev. Tbc. 59, 86, 1949

81) Haurowitz, F. and Schwerin. P.: J. Immunol. 47, 111, 1943.

82) Horsfall, F.L.Jr.: J. Bact. 35.207,1938.

83) Choucron, N. : C.R. Acad. Sci. 224, 104, 194ι

84) Choucron, N.: Am. Rev. Tbc. 56.203, 1947.

8ラ)Raffel M.D. and Forney, J.E.: J. Exp. Med. 88.

48ラ, 1948.

86) Ra妊el.M.D. Arnaud, L.E. Dukes C.D. and H王uan

J.S.: J. .εExp Med. 90, 53, 1949.