よくわかるVV ECMOカニューレ関連合併症 8.4% 溶血 6.9% 他、機械関連合併症...
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よくわかるVV ECMO
藤田保健衛生大学医学部麻酔・侵襲制御医学講座
重症呼吸不全の管理
ECMOとは?ECMOの生理学ECMO管理の実際再循環
Awake ECMO
スライドの内容
重症呼吸不全の管理
呼吸不全の治療では・・・
侵襲度
重症度低~高流量酸素
NPPV
High Flow
人工呼吸
ECMO
人工呼吸器管理は…
さらに肺を痛めるO2
CO2
① Volutrauma② Barotrauma③ Atelectrauma④ Biotrauma⑤ Oxygen Toxity
人工呼吸器関連肺傷害
:過剰な換気量
:過剰な圧
:虚脱再開通
:炎症
:酸素毒性
VILI:Ventilator Induced Lung Injury
ECMOの目的
Lung Rest肺を休める
ECMOとは?
ECMOとは?
体外式膜型人工肺:ExtraCorporeal Membrane Oxygenation
かつては・・・
ECLS:Extracorporeal Life Support(体外生命維持)ECL(H)A:Extracorporeal Lung and Heart Assist
(体外式肺(心)補助)
ECMOは何をするの?
O2
CO2
適応
超重症呼吸不全
従来の治療では救命困難
可逆性の病態
適応外
出血性病変の存在
非可逆性の病態長期人工呼吸器管理(7日以上)間質性肺炎の急性増悪
血液疾患、骨髄移植後
ECMOの適応
ECMOの分類
分 類 導入理由 方 法
RespiratoryECMO
呼吸不全に対し
呼吸補助
V-V ECMO
V-VA ECMO Cardiac
ECMO循環不全に対し
呼吸・循環補助V-A
ECMOECPR 心肺蘇生時の
呼吸・循環補助
ECMOの方法
VV ECMO VA ECMO
CO2 O2 CO2 O2
(呼吸の補助のみ) (呼吸と循環の補助)
ECMO中の呼吸器条件
肺に負担がかからない条件
換気はほとんど入らなくてよい
むしろ「換気しない」もあり
1,970年代成功例報告あり、その後症例数増加
1,970~1,980年代2つのRCTで否定。欧米の一部の施設を除き、成人には施行されなくなった。(新生児領域では発展)
日本でも熊本大学をなどが研究が進めていたが、1980年代以降、ほとんど実施されなくなった。
2009年、CESAR trial成人重症呼吸不全症例に対し、ECMOセンターでの治療の有効性が示された。
2009年、H1N1インフルエンザ流行
VV ECMOの歴史
ECMO治療の成績
対照群 47.1%
ECMO群 63.3%
重症呼吸不全患者のうち6ヵ月後に重度の機能障害なく生存している患者
2009年 H1N1インフルエンザパンデミック
60~90% 36%
ECMO使用群の生存率
何がいけなかったのか?
合併症を起こさない長期管理ができなかった。
J Anesth 2012;26:650–7.
有害事象 92.9%
2012年発足
呼吸療法医学会と集中治療医学会が主体
活動内容
情報交換
啓蒙活動
データ集積
症例検討会
88施設参加 (2018年3月15日現在)
ECMOプロジェクト
日本のECMO治療の成績向上
海外ECMOセンター研修シミュレーションラボ開催等
ECMOプロジェクトの一環スウェーデンのカロリンスカ大学の研修
当院より3名が各一週間ずつ参加
海外ECMOセンター研修:カロリンスカ大学
ECMOシミュレーションラボ
インストラクター集合写真
ECMOシミュレーションラボの開催
広島大学
藤田保健衛生大学
千葉大学
年数回開催
ECMOの生理学
75
ECMO管理中のSpO2
大丈夫?
SpO2
外呼吸:肺に酸素を取り込む
循 環:全身の細胞まで酸素を送る
内呼吸:細胞が酸素を利用
酸素の流れ
ミトコンドリア
酸素瀑布
大気
150
100
50
0
吸入気
肺胞気
動脈血
混合静脈血
細胞内
PO2[mmHg]
ミトコンドリア
1~2mmHg
酸素運搬能
DO2 = CO×CaO2×10
=CO×(1.34×Hb×SaO2)×10
酸素需給に関する式
動脈血酸素含量
CaO2 = 1.34×Hb×SaO2+0.003×PaO2Hbに結合した
酸素の量
血液に直接溶け込んだ酸素の量
[mL/dL]
100mL中の酸素の量
[mL/分]
正常域
正常域
DO2とVO2の関係
DO2
VO2
0
200
250
400 1000
2 3 4 5
DO2 (mL/min)
VO2 (mL/min)
600
嫌気性代謝 ⇧乳酸値 ⇧
低いSaO2で大丈夫?
A) SaO2=98%, Hb 9.0g/dL, CO5L/分 の時
B) SaO2=75%, Hb12.0g/dL, CO5L/分 の時
DO2=5×(1.34×9×0.98)×10= 590.94 mL/分
DO2=5×(1.34×12×0.75)×10= 603 mL/分
酸素運搬量:DO2は A < B
SaO270%台でも大丈夫か?
重症度
SaO2
70%
負荷
ECMOあり
死亡
ECMOなし
ECMO管理の実際
人工肺
遠心���
脱血
送血
T社製:多孔質膜
血漿リーク:人工肺の肺水腫
気相
血液側
CO2
O2
膜
T社製:多孔質膜
血漿リーク
血球
血漿
多孔質膜
血液側
N社製:緻密膜
気相
膜
CO2
O2
血球
血漿
緻密膜(複合膜)
PMP;ポリメチルペンテン
溶血と異音の発生
回転軸に血栓形成あり
長期耐久型ポンプの選択
血栓なし
8 日間使用 41 日間使用
流速は最狭部位が規定する
V=π(P入口 — P出口)8
×r4×t
r
l
P出口 P入口
lη 太・短
ハーゲン・ポアズイユの式
カニューレの最も狭い部位
血管
カニューレサイズ
直径1.5cm の血管の場合
15mm×2/3 = 10mm 以下の直径のカニューレを選択
血管の直径の2/3を超えないカニューレを選択する
10mm ⇛ 10×3 Fr まで25~29Frのカニューレを選択
Fr=直径×3
AV
カニューレの選択
19cm
TERUMO社製 CAPIOXカニューレ GETINGE社製 HLSカニューレ
どのように脱血されているか?
水実験:脱血(両側から色素)
ECMO, 4000rpm, 7L/分脱血:東洋紡社製 NSHヘパリンカニューレ® 22Fr
水実験:脱血(先端は陰圧か?)
ECMO, 4000rpm, 7L/分脱血:東洋紡社製 NSHヘパリンカニューレ® 22Fr
どのように脱血されているか?の正解
水実験:脱血(両側から色素)
ECMO, 4000rpm, 7L/分脱血:東洋紡社製NSHヘパリンカニューレ® 22Fr
ダブルルーメンカニューレ
Avalon Elite® Bi-Caval Dual Lumen Catheter MAQUET
回路内圧モニタリング
コンソール
CO2
O2送血圧
肺前圧
脱血圧
送気圧
ポンプ
人工肺
ブレンダ
cSvO2
流量 送血圧人工肺入口圧
脱血圧 送気圧 原 因
送血不良(屈曲、カニューレサイズ・位置・血栓、血圧上昇)
人工肺の凝血
脱血不良(屈曲、カニューレサイズ・位置・血栓)
送血側からのリーク(回路亀裂・外れ、カテーテル抜去)
血漿リーク、wetlung、ガスライン屈曲
送気停止、ガスライン外れ・屈曲
※適正な回路内圧を保つことで血漿リークや溶血などの合併症の発生を抑える。
回路内圧モニタリングの変化
全身循環VV ECMO
再循環
再循環とは
IVC→SVC長所:再循環が少ない。
短所:脱血がやや不良。
SVC→IVC長所:脱血容易。血流多い。
短所:再循環が多い。
脱血→送血の方向
脱血管が過度の陰圧でへしゃげた症例
母体からの血流
右心系血流の自然な流れ:胎生期
卵円孔
胎生期
上半身からの血流
右心系血流の自然な流れ:出生後
下半身からの血流
出生後
上半身からの血流 閉鎖卵円孔
脱血
送血
送血は反転して右室に入る必要がある
しかし前方の脱血管に吸われる割合も多い
ECMO:上大静脈脱血時の再循環
ECMO:下大静脈脱血時の再循環
送血
脱血
送血は反転の必要がなく自然な流れで
右室に流入できる
患者要因
心拍出量
血管内容量
ECMO 要因脱血→送血の向きECMO流量カニューレ
構造
位置・位置関係
再循環に影響する要因
ポンプ流量を上げると再循環率が増える
ECMO流量(L/分)
再循環率(%)
有効流量(L/分)
5.0
50
2.5
ASAIO J. 2015; 61(3): 227-236.
有効流量
再循環率
VV ECMO中の右心系血流
ECMO血流 静脈灌流
脱血管
送血管
IVC
SVC
右房
右室
肺動脈(PA)
再循環 肺動脈血流= CO
VV ECMOの経大腿静脈脱血管三尖弁が閉じると再循環する。
心拍に同期して点滅しているように見える。
目で見る再循環
ECMOの合併症
ECMO回路側人工肺不全 17.5%
血栓人工肺内人工肺以外回路内
12.2%17.8%
カニューレ関連合併症 8.4%
溶血 6.9%
他、機械関連合併症 7.9%
患者側出血創部出血カニューレ刺入部出血気道・肺胞出血消化管出血頭蓋内出血
19.0%17.1%8.1%5.1%3.8%
DIC 3.7%
感染症(培養で確認) 21.3%
N Engl J Med 2011;365(20):1905-14.
徹底的な止血日々の入念な観察とケア
血小板・凝固因子の十分な補充と適切な抗凝固
Awake ECMO
ECMO装着下で覚醒しているだけ患者がAwakeさせられている
「単純に起こせばよい」というものではない
Awake ECMO?
ただ「Awakeすればよい」というものではない
第38回日本呼吸療法医学会学術集会 シンポジウム「Awake ECMO」より
※画像と動画の使用について、ご本人と大会長の承認を得ております
※患者様のご同意を得て目線なしとしています
突然の呼吸困難に陥り意識を失い、幻覚や記憶欠損を経て、目覚めると未知の機械に繋がれ身体も言うことを聞かなかった。
Awake ECMOの困難さ
多職種で傾聴と説明に取り組む
RNMD
PT
CE
RN
リハビリの様子
リーダー全体を見る
カニューレ・回路
カニューレ・回路
ECMO血流量、cSvO2など
MD
MD
RN PT
CE
患者生体情報モニタHR・BP・SpO2など RN
患者表情・呼吸パターンなど
カンファレンスでの情報共有
患者の情報を共有し、今できることを多職種で話し合う
治療中にはじめてアイスを食べた様子
B4 100枚のICUダイアリー
患者自身が記載するICUダイアリー
患者自身が記載するICUダイアリー
身体機能の改善
気切孔を閉鎖し<68病日目>独歩で退院した。
<35病日目>ECMOを離脱した。
<46病日目>ICUを退室した。
握力
10
15
20
25
30
鎮静薬漸減 ECMO離脱 ICU退室 退院
16
27
10
27
河合佑亮.患者自身が記載するICUダイアリーの効果:症例報告. 第13回日本クリティカルケア看護学会学術集会(宮城)
ECMO下にリハビリで立位
Respiratory ECMOについて説明した。特殊な体内環境となるECMO管理についてはその生理学的な理解が必須である。
PaO2, SaO2にとらわれることなく、DO2を意識した全身管理が重要である。
デバイスは進化しており、適切なものを使用する必要がある。
再循環は必須であり、カニューレの位置関係や、脱血の特徴などに注意が必要である。
今後、ECMOプロジェクトの下、日本のECMO治療の進化が期待されるが、Awake ECMOも行われるようになってきている。一方で、ECMO導入後救命困難になる症例も多く、倫理的な側面にも目を向けなければならない。
まとめ