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    目次

    2.5 臨床に関する概括評価 ....................................................................................... 1 2.5.1 製品開発の根拠 .............................................................................................................. 1

    2.5.1.1 申請医薬品の薬理学的分類 ...................................................................................... 1 2.5.1.2 申請医薬品の治療(予防)の目標となる疾患の臨床的/病態生理学的側面 ........... 1 2.5.1.3 現時点における治療(予防)法及びその問題点...................................................... 2 2.5.1.4 臨床試験実施に関する科学的背景・根拠 ................................................................ 3 2.5.1.5 臨床開発計画 ........................................................................................................... 4 2.5.1.6 規制当局によるガイダンス及び助言........................................................................ 6

    2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 ......................................................................................... 7 2.5.2.1 治験薬の組成 ........................................................................................................... 7

    2.5.3 臨床薬理学に関する概括評価 ......................................................................................... 9 2.5.3.1 薬物動態(PK)試験 ............................................................................................... 9 2.5.3.2 薬力学(PD)試験................................................................................................... 9 2.5.3.3 特別な試験 ............................................................................................................... 9

    2.5.4 有効性の概括評価......................................................................................................... 10 2.5.4.1 有効性(免疫原性)を評価した試験...................................................................... 10 2.5.4.2 試験デザイン、試験方法に関する説明 .................................................................. 13 2.5.4.3 対象となった被験者集団の特性............................................................................. 16 2.5.4.4 個々の試験成績の概括評価 .................................................................................... 16 2.5.4.5 有効性(免疫原性)に関する試験間の比較 ........................................................... 20 2.5.4.6 部分集団における有効性(免疫原性)の比較 ....................................................... 22 2.5.4.7 同種同効薬との比較............................................................................................... 25 2.5.4.8 観察された効果の大きさの臨床的意義 .................................................................. 26 2.5.4.9 用法・用量に関する考察 ....................................................................................... 28 2.5.4.10 有効性(免疫原性)の結論 .................................................................................. 30

    2.5.5 安全性の概括評価......................................................................................................... 31 2.5.5.1 安全性を評価した試験 ........................................................................................... 31 2.5.5.2 安全性評価、観察期間に関する説明...................................................................... 31 2.5.5.3 個々の試験成績に関する概括評価 ......................................................................... 33 2.5.5.4 安全性に関する試験間の比較 ................................................................................ 35 2.5.5.5 添付文書及び製造販売後に関連する概括評価 ....................................................... 36 2.5.5.6 安全性の結論 ......................................................................................................... 53

    2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論 ............................................................................ 54 2.5.7 参考文献 ....................................................................................................................... 56

    i

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    【略号一覧】 略号 省略しない表現

    A(H1N1) ワクチン製造株のうち A/H1N1 型の株。 KD-PEDFLU-1 試験の治験薬では、A/ブリスベン/59/2007(H1N1)ウイルス。 KD-PEDFLU-2 試験の治験薬では、使用されていない。

    新型 A(H1N1) ワクチン製造株のうち、2009 年 4 月頃から発生した A/H1N1 亜型のインフルエンザウイルスによるインフルエンザに対するワクチン株。 KD-PEDFLU-1 試験及び KD-PEDFLU-2 試験の治験薬では、ともに A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm ウイルス。

    A(H3N2) ワクチン製造株のうち A/H3N2 型の株。 KD-PEDFLU-1 試験の治験薬では、A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)ウイルス。KD-PEDFLU-2 試験の治験薬では、A/ビクトリア/210/2009(H3N2)ウイルス。

    B ワクチン製造株のうち B 型の株。 KD-PEDFLU-1 試験及び KD-PEDFLU-2 試験の治験薬では、ともに B/ブリスベン/60/2008 ウイルス。

    EMA European Medicines Agency(欧州医薬品庁) FAS Full Analysis Set(最大の解析対象集団) GMT Geometric Mean Titer(幾何平均抗体価) HA Hemagglutinin(赤血球凝集素(ヘムアグルチニン)) MedDRA Medical Dictionary for Regulatory Activities(日米 EU 医薬品規制調和国際会議

    国際医薬用語集) PT Preferred Term(基本語) RDE Receptor Destroying Enzyme(受容体破壊酵素) SOC System Organ Class(器官別大分類) 治験責任/分担医師 治験責任医師又は治験分担医師

    ii

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    iii

    【用語の説明】 用語 説明

    KD-FLU 一般財団法人化学及血清療法研究所が製造するインフルエンザ HA ワクチン。一般的名称は「インフルエンザ HA ワクチン」である。

    KD-FLU(H1) 一般財団法人化学及血清療法研究所が製造するインフルエンザ HA ワクチン(KD-FLU)のうち、一価のインフルエンザ HA ワクチン。 KD-PEDFLU-1 試験で使用した KD-FLU(H1)のワクチン株は、2009 年に国立感染症研究所から配布された A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm ウイルス。インフルエンザウイルスのヘムアグルチニンを 30 μg/mL 以上(相当値)含む澄明又はわずかに白濁した液剤。

    KD-FLU(TIV) 一般財団法人化学及血清療法研究所が製造するインフルエンザ HA ワクチン(KD-FLU)のうち、三価のインフルエンザ HA ワクチン。 KD-PEDFLU-1 試験で使用した KD-FLU(TIV)のワクチン株は、2009 年春に国立感染症研究所から配布された A/ブリスベン/59/2007(H1N1)、A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)、B/ブリスベン/60/2008 ウイルス。各インフルエンザウイルスのヘムアグルチニンをそれぞれ 30 μg/mL 以上(相当値)ずつ含む澄明又はわずかに白濁した液剤。 KD-PEDFLU-2 試験で使用した KD-FLU(TIV)のワクチン株は、2010 年に国立感染症研究所から配布された A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm、A/ビクトリア/210/2009(H3N2)、B/ブリスベン/60/2008 ウイルス。各インフルエンザウイルスのヘムアグルチニンをそれぞれ 30 μg/mL 以上(相当値)ずつ含む澄明又はわずかに白濁した液剤。

    HI 抗体価 赤血球凝集活性を持つウイルスの赤血球凝集反応を抑制する抗体濃度を示す測定値。なお、KD-PEDFLU-1 試験及び KD-PEDFLU-2 試験では、ニワトリ血球を使用した。

    MDCK 細胞 イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株。 幾何平均抗体価 抗体価の対数変換値(Log10)の平均値を指数変換した値。 幾何平均抗体価変化率 幾何平均抗体価の接種前値からの増加倍率。

    ワクチン接種後の幾何平均抗体価を 1 回目接種前の幾何平均抗体価で除した値。季節性インフルエンザ 毎年、流行を繰り返している A/H1N1(ソ連型亜系)、A/H3N2(香港型亜系)、B

    型のインフルエンザ。 抗体保有率 抗体価が 40 倍以上の被験者の割合。 抗体陽転率 抗体価が「接種前に 10 倍未満かつ接種後に 40 倍以上の被験者」又は「接種前

    に 10 倍以上かつ接種後の変化率が 4 倍以上増加した被験者」の割合。(KD-PEDFLU-1 試験では抗体陽転率②が該当)。

    抗体陽転率① 接種後抗体価が 20 倍以上かつ 1 回目接種前値からの変化率が 4 倍以上の被験者の割合。

    抗体陽転率② 接種後抗体価が 40 倍以上かつ 1 回目接種前値からの変化率が 4 倍以上の被験者の割合。

    全接種群 KD-PEDFLU-1 試験における単独接種群と同時接種群を合わせた群。 中和抗体価 インフルエンザウイルスの中和に関与する抗体濃度を示す測定値。 パンデミック 新たなインフルエンザウイルスがヒトの集団に広範かつ急速に広がり、世界的大

    流行を呈する状況。

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    2.5 臨床に関する概括評価

    2.5.1 製品開発の根拠

    2.5.1.1 申請医薬品の薬理学的分類

    KD-FLU(一般的名称「インフルエンザ HA ワクチン」)は、インフルエンザの予防を目的と

    した不活化インフルエンザワクチンであり、国立感染症研究所より交付される製造株を用いて

    製造される(以下、各シーズンのワクチン製造株のうち、A/H1N1 型の株を「A(H1N1)」、A/H3N2

    型の株を「A(H3N2)」、B 型の株を「B」という)。2009 年度に交付されたワクチン製造株は A/

    ブリスベン/59/2007(H1N1)、A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)、B/ブリスベン/60/2008 であった。2009

    年 4 月頃に発生した A/H1N1 亜型のインフルエンザに対するワクチン製造株(以下、「新型

    A(H1N1)」という)は A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm であった。また、2010 年度に交付さ

    れたワクチン製造株は A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm、A/ビクトリア/210/2009(H3N2)、B/

    ブリスベン/60/2008 であった。

    薬理学的分類は、ウイルスワクチン類(日本標準商品分類番号 876313)、生物由来製品、劇

    薬、処方せん医薬品、日本薬局方・生物学的製剤基準「インフルエンザ HA ワクチン」である。

    2.5.1.2 申請医薬品の治療(予防)の目標となる疾患の臨床的/病態生理学的側面

    インフルエンザは、オルソミクソウイルス科に属するインフルエンザウイルスの感染によっ

    て起こる急性呼吸器疾患である。一般的には、咳や咽頭痛などの呼吸器症状を伴い、頭痛、発

    熱、悪寒、筋肉痛、倦怠感などの全身症状の急激な出現が特徴である。このような急性症状は

    2–5 日で改善し、1 週間でほとんどの患者が回復するが、重症患者ではウイルスが肺に侵入して

    一次性ウイルス肺炎を起こしたり、細菌の二次感染による肺炎を併発したりすることもある。

    小児では脳炎・脳症を起こすことがある。

    インフルエンザウイルスは、核たん白質及びマトリックスたん白質の抗原性により、A、B 及

    び C 型に分類される。このうち、B 型と C 型のウイルスはヒトだけに感染するが、A 型のウイ

    ルスは、ヒトの他、家禽、ブタ、ウマ、その他の哺乳類など多種多様な動物に感染することが

    知られている。A 型のウイルスは更に、赤血球凝集素(以下、「HA」という)とノイラミニダ

    ーゼのアミノ酸配列もしくは抗原性の違いにより亜型(H1 から H16、及び N1 から N9)に分類

    される。A 型のウイルスはヒトの他、家禽、ブタ、ウマなど、多様な動物を宿主としており、

    すべての亜型が分類されている鳥類以外は、亜型により宿主となる動物種が異なる。例年、ヒ

    ト社会で流行を繰り返している A 型のウイルスは H1N1 型と H3N2 型である。同じ亜型の中で

    も抗原連続変異(抗原ドリフト)により抗原性が毎年少しずつ変化するために、ヒトが持って

    いるインフルエンザ特異的抗体によって完全に中和できず、流行を繰り返すとされている。ま

    た、抗原不連続変異(抗原シフト)により抗原性及び種特異性が異なる新たな亜型の A 型のウ

    イルスが出現すると、それまでヒトが獲得した中和抗体では感染防御ができなくなり、ウイル

    スが次々にヒトに感染して世界的な大流行(パンデミック)をもたらす。これは、A 型のウイ

    ルスのみに認められるものである。これまでのパンデミックには、1918 年のスペインインフル

    エンザ(H1N1)、1957 年のアジアインフルエンザ(H2N2)、1968 年の香港インフルエンザ(H3N2)

    があり、数十年に一度の割合で新たなインフルエンザウイルスがヒトの世界に出現して、パン

    デミックを起こしている。 1

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    2009 年 4 月、世界保健機関(以下、「WHO」という)はメキシコでの A/H1N1 亜型のインフ

    ルエンザウイルスによるインフルエンザの発生を発表した。A/H1N1 亜型のインフルエンザは全

    世界に感染が拡大し、WHO は 2009 年 6 月 12 日(日本時間)にフェーズ 6 を宣言した。

    2.5.1.3 現時点における治療(予防)法及びその問題点

    インフルエンザに対する治療には、オセルタミビル、ザナミビル及びペラミビルなどに代表

    されるノイラミニダーゼ阻害薬などの抗インフルエンザ薬が使用されている。オセルタミビル

    などはインフルエンザ発症後 2 日以内に投与を開始することで、症状、徴候の持続期間を 1–1.5

    日に短縮することができる。しかしながら、頻度は低いものの耐性ウイルス出現の可能性があ

    る[文献 1]。

    インフルエンザの予防の基本はワクチン接種である。オセルタミビルなどはインフルエンザ

    の予防としての適応もあるが、その使用にはインフルエンザを発症している患者の同居家族で

    あることなどの使用条件があり、限定的である。インフルエンザの伝播力は強く、そして速い

    ため、その感染予防にはワクチン接種が極めて重要である。

    現在、日本ではインフルエンザに対するワクチンとして、副反応を起こす原因であるウイル

    ス中の脂質分画をエーテル処理で除去し、精製度をあげ副反応の軽減化を図ったインフルエン

    ザ HA ワクチンが一般的に使用されている[文献 2]。2011 年時点で申請者を含め、国内では 4

    社が製造している。

    KD-FLU の用法・用量は、「0.5 mL を皮下に、1 回又はおよそ 1–4 週間の間隔をおいて 2 回注

    射する。ただし、6 歳から 13 歳未満のものには 0.3 mL、1 歳から 6 歳未満のものには 0.2 mL、

    1 歳未満のものには 0.1 mL ずつ 2 回注射する。」である。

    現在の日本のインフルエンザ HA ワクチンの小児に対する接種量は、全粒子ワクチンが使用

    されていた時期に設定されており、その後インフルエンザ HA ワクチンに変更された時に、エ

    ビデンスに基づいた用量設定がされておらず、全粒子インフルエンザワクチンの用量がそのま

    ま踏襲されている。

    インフルエンザHAワクチンの小児に対する接種量に関する問題は以前から指摘されており、

    公衆衛生審議会感染症部会のもとに設置された予防接種問題検討小委員会においてまとめられ

    た報告書「予防接種問題検討小委員会報告書」(平成 11 年 7 月 5 日)[文献 3]の中で、「小児

    等のインフルエンザについては、有効性等についての調査研究が不十分であることから、今後、

    厚生省において小児等のインフルエンザに関する有効性等に関する調査研究を行い、その結果

    に基づいて対応に関して早急に検討すること」が提言された。その後、平成 12 年度から平成

    14 年度にかけて厚生労働科学研究によって現行用量(既承認用量)での各種臨床研究がなされ、

    次のような結果が得られている。

    1) 1 歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかった。

    2) 1 歳以上 6 歳未満児については、発熱を指標とした有効率は 20%–30%となり、接種の意義

    は認められた。

    また、第 1 回から第 7 回までの「予防接種に関する検討会」での議論、検討がまとめられて

    いる「予防接種に関する検討会 中間報告書」(平成 17 年 3 月)[文献 4]で、小児へのインフ2

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    ルエンザ予防接種に関して、「① ワクチン接種後の抗体応答は、低年齢ほど低く、小児の年齢

    があがるほど改善すること、② 乳児では免疫機能が未熟であること、免疫学的プライミングが

    未成立であることなどが理由として指摘されていること、③ 現行の方法によって小児に接種し

    た場合の有効性には限界があることが示唆されていること」が報告されている。

    その他、Kumagai ら[文献 5]はインフルエンザ HA ワクチンを 1 歳未満の小児に使用するな

    らば接種量増加を考慮する必要があるとしている。また、田村ら[文献 6]は、1 歳児と 1 歳未

    満児での抗体反応の差は、年齢差ではなく、接種量の差と考えており、乳児に対する現行用量

    (既承認用量)では有効性に期待ができず、0.1 mL/回を 0.2 mL/回にする必要があるとしている。

    以上のように、インフルエンザ HA ワクチンの小児での有効性をより向上させるためには、

    現行用量(既承認用量)から接種量を増やす必要があるという議論が進められてきた。

    WHO は不活化インフルエンザワクチンの小児用量として、成人用量の半分量を推奨している

    [文献 7]。米国でも不活化インフルエンザワクチンの 1 回の用量は、3 歳未満は 0.25 mL、3 歳

    以上は 0.5 mL と設定されている[文献 8]。日本でのインフルエンザ HA ワクチンの現行用量(既

    承認用量)と WHO 推奨用量の接種対象年齢別の比較を表 2.5.1.3-1 に示す。1 歳未満及び 3 歳

    以上 6 歳未満での WHO 推奨用量はインフルエンザ HA ワクチンの現行用量(既承認用量)の

    2.5 倍である。

    表 2.5.1.3-1 不活化インフルエンザワクチンの用量

    接種対象年齢

    日本での インフルエンザ HA ワクチンの現行用量

    (既承認用量)

    WHO 推奨の 不活化インフルエンザ

    ワクチンの用量

    WHO 推奨用量/ 日本での現行用量

    (既承認用量)

    1 歳未満 0.1 mL 0.25 mL 2.5 1 歳から 3 歳未満 0.2 mL 0.25 mL 1.25 3 歳から 6 歳未満 0.2 mL 0.5 mL 2.5 6 歳から 13 歳未満 0.3 mL 0.5 mL 1.7 13 歳以上 0.5 mL 0.5 mL 1.0

    神谷ら[文献 9、10]及び廣田ら[文献 11]は小児での WHO 推奨用量による臨床研究を実

    施した。その結果、WHO 推奨用量は、現行用量(既承認用量)と比較して、特に低年齢層にお

    いて良好な免疫を獲得することが示唆された。

    以上のように、インフルエンザワクチンの小児に対する有効性については現行用量(既承認

    用量)から用量を増すことにより、より高い有効性が得られるとする日本の小児科医の意見が

    多いことから、小児用量の変更には臨床現場の強い期待がある。

    2.5.1.4 臨床試験実施に関する科学的背景・根拠

    独立行政法人国立病院機構は 2009 年 4 月頃から発生した A/H1N1 亜型のインフルエンザウイ

    ルスによるインフルエンザに対するインフルエンザ HA ワクチンの免疫原性の評価も含め、イ

    ンフルエンザ HA ワクチンの小児への用量が十分ではない可能性を考慮し、WHO 推奨用量を基

    3

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    本とし、A/H1N1 亜型のインフルエンザに対する一価の KD-FLU(以下、「KD-FLU(H1)」という)

    単独接種群と KD-FLU(H1)と季節性インフルエンザに対する三価の KD-FLU(以下、

    「KD-FLU(TIV)」という)を同時接種し、新型 A/H1N1、A/H1N1(ソ連型亜系)、A/H3N2(香

    港型亜系)、B の 4 種類の免疫原性の検討並びに単独接種及び同時接種群の安全性の検討を目的

    として、医師主導治験(治験実施計画書番号 KD-PEDFLU-1)を実施した。申請者は治験薬提供

    者として、KD-FLU(H1)及び KD-FLU(TIV)を独立行政法人国立病院機構に提供した。

    KD-PEDFLU-1 試験終了後、この結果に基づいて、インフルエンザ HA ワクチンの小児用量変

    更に関する製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。その承認審査の過程で、1 歳未満の

    接種用量が既承認用量の2.5倍に増量されるにもかかわらずKD-PEDFLU-1試験での被験者数が

    極めて限られており、申請用量について有効性、安全性を評価することが困難であるため、追

    加臨床試験を実施する必要性があること、KD-PEDFLU-1 試験と追加臨床試験実施時はワクチン

    株が異なることから 1 歳未満に加えて、1 歳以上 3 歳未満、3 歳以上 6 歳未満、6 歳以上 13 歳

    未満についても同時に、有効性、安全性の情報を収集する必要があるとの見解が審査当局から

    出された。この見解を受けて、WHO 推奨用量を基本とし、小児に KD-FLU(TIV)を接種し、新

    型 A/H1N1、A/H3N2、B の 3 種類の免疫原性の検討並びに安全性の検討を目的とした企業主導

    治験(治験実施計画書番号 KD-PEDFLU-2)を実施した。

    2.5.1.5 臨床開発計画

    KD-FLU の臨床試験一覧を表 2.5.1.5-1 に示す。KD-FLU は国内でのみ使用しており、海外で

    の臨床試験データはない。

    臨床データパッケージは KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験の 2 試験である。

    4

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.1.5-1 KD-FLU の臨床試験一覧 資料区分 評価資料 評価資料

    試験区分(試験番号) 第 II/III 相試験(KD-PEDFLU-2) 第 II/III 相試験(KD-PEDFLU-1) 試験の目的 免疫原性及び安全性の検討 免疫原性及び安全性の検討 試験デザイン 多施設共同オープンラベル試験 非盲検無作為割付群間比較試験 対象 生後 6 ヵ月以上 13 歳未満の健康小児(男女) 生後 6 ヵ月以上 13 歳未満の健康小児(男女)接種群及び治験薬 KD-FLU(TIV) 単独接種群:KD-FLU(H1)

    同時接種群:KD-FLU(H1)及び KD-FLU(TIV) 接種被験者数 66 名

    0.25 mL 接種(6 ヵ月以上 3 歳未満):38 名 0.5 mL 接種 (3 歳以上 13 歳未満) :28 名

    80 名 単独接種群:40 名(6 ヵ月以上 3 歳未満 20 名、

    3 歳以上 13 歳未満 20 名) 同時接種群:40 名(6 ヵ月以上 3 歳未満 20 名、

    3 歳以上 13 歳未満 20 名) 用法・用量 3 週間 ± 7 日間の間隔をおいて 2 回皮下接種す

    る。以下の年齢別接種量に従って上腕伸側に接

    種する。 6 ヵ月以上 3 歳未満 0.25 mL 3 歳以上 13 歳未満 0.5 mL

    3 週間 ± 7 日間の間隔をおいて 2 回皮下接種する。 単独接種群:KD-FLU(H1)を上腕伸側に接種 同時接種群:KD-FLU(H1)と KD-FLU(TIV)を両

    側上腕伸側に接種 接種量は両接種群とも 1 回 1 接種部位あたり 6ヵ月以上 3 歳未満は 0.25 mL、3 歳以上 13 歳未満は 0.5 mL

    評価項目 1) 免疫原性 主要評価項目: HI 抗体について以下の基準を 1 つ以上満

    たすこと ①抗体陽転率(>40%) ②幾何平均抗体価変化率(>2.5) ③抗体保有率(>70%) 副次評価項目: (1) 中和抗体の①抗体陽転率、②幾何平均

    抗体価変化率、③抗体保有率 (2) HI 抗体価及び中和抗体価の推移 2) 安全性 有害事象及び副反応の発現例数、発現率、発

    現件数など

    1) 免疫原性 主要評価項目:抗体陽転率①、② 副次評価項目:抗体価の推移 抗体価の変化率 抗体陽転率①:接種後抗体価が 20 倍以上か

    つ 1 回目接種前値からの変化率が 4 倍以上の被験者の割合。

    抗体陽転率②:接種後抗体価が 40 倍以上かつ 1 回目接種前値からの変化率が 4 倍以上の被験者の割合

    2) 安全性 有害事象及び副反応の発現例数、発現率、発

    現件数など 治験実施施設 3 施設 2 施設 治験実施期間 20 年 月–20 年 月 20 年 月–20 年 月 実施国 日本 日本 資料番号 5.3.5.1.2 5.3.5.1.1

    [表 2.7.3.1-2]

    KD-PEDFLU-2 試験の概要を以下に示す。

    KD-PEDFLU-2 試験は、6 ヵ月以上 13 歳未満の健康小児を対象に、KD-FLU を WHO 推奨用量

    で皮下接種した場合の免疫原性及び安全性を検討することを目的として、多施設共同オープン

    ラベル試験を国内 3 施設で企業主導治験により実施した。

    KD-PEDFLU-1 試験の概要を以下に示す。

    KD-PEDFLU-1試験は、6ヵ月以上 13歳未満の健康小児を対象に、WHO推奨用量を基本とし、

    KD-FLU(H1)を単独で接種した場合、及び KD-FLU(H1)と KD-FLU(TIV)を同時に接種した場合の

    免疫原性及び安全性を検討することを目的として、非盲検無作為割付群間比較試験を国内 2 施

    5

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    設で医師主導治験により実施した。

    2.5.1.6 規制当局によるガイダンス及び助言

    KD-PEDFLU-2試験及びKD-PEDFLU-1試験を実施するにあたり、対面助言は実施しなかった。

    6

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価

    2.5.2.1 治験薬の組成

    KD-FLU は、有効成分としてインフルエンザウイルスの(A 型・B 型)HA 画分(A 型又は B

    型の単型の場合もある)を、保存剤としてフェノキシエタノールを含有する注射剤である。

    KD-PEDFLU-1 試験及び KD-PEDFLU-2 試験で用いた KD-FLU の組成を表 2.5.2.1-1 に示す。

    2009 年度に交付されたワクチン製造株は A/ブリスベン/59/2007(H1N1)、A/ウルグアイ

    /716/2007(H3N2)、B/ブリスベン/60/2008 であった。これらの株を用いて、2009 年度の KD-FLU

    が製造され、KD-PEDFLU-1 試験の治験薬 KD-FLU(TIV)として使用された。また 2009 年は、4

    月頃からA/H1N1亜型のインフルエンザウイルスによるインフルエンザが世界的に大流行した。

    このインフルエンザに対するワクチンも製造され(ワクチン製造株:A/カリフォルニア

    /7/2009(H1N1)pdm)、KD-PEDFLU-1 試験の治験薬 KD-FLU(H1)として使用された。

    2010 年度に交付されたワクチン製造株は A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm、A/ビクトリア

    /210/2009(H3N2)、B/ブリスベン/60/2008 であった。これらの株を用いて、2010 年度の KD-FLU

    が製造され、KD-PEDFLU-2 試験の治験薬 KD-FLU(TIV)として使用された。

    表 2.5.2.1-1 KD-PEDFLU-1 試験及び KD-PEDFLU-2 試験に用いた KD-FLU の組成(1 mL

    中) 試験名 KD-PEDFLU-1 KD-PEDFLU-2 治験薬 KD-FLU(H1) KD-FLU(TIV) KD-FLU(TIV) 成分及び分量(1 mL 中) 有効成分 A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm HA[a]含量(相当値)

    は 30 μg 以上 - HA[a]含量(相当値)

    は 30 μg 以上 A/ブリスベン/59/2007(H1N1) - HA[a]含量(相当値)

    は 30 μg 以上 -

    A/ウルグアイ/716/2007(H3N2) - HA[a]含量(相当値)は 30 μg 以上

    A/ビクトリア/210/2009(H3N2) - - HA[a]含量(相当値)は 30 μg 以上

    B/ブリスベン/60/2008 - HA[a]含量(相当値)は 30 μg 以上

    HA[a]含量(相当値)は 30 μg 以上

    等張化剤 塩化ナトリウム 8.1 mg リン酸水素ナトリウム水和物 2.5 mg リン酸二水素カリウム 0.4 mg 不活化剤 ホルマリン(ホルムアルデヒドとして) 0.01 w/v%以下 保存剤 フェノキシエタノール 0.0045 mL

    [a] HA = 赤血球凝集素 [表 2.7.1.1-1]

    7

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    KD-PEDFLU-1 試験及び KD-PEDFLU-2 試験に用いた KD-FLU の試験成績を表 2.5.2.1-2 に示

    す。

    表 2.5.2.1-2 KD-PEDFLU-1 試験及び KD-PEDFLU-2 試験に使用した KD-FLU の試験成績 試験名 KD-PEDFLU-1 試験 KD-PEDFLU-2 試験 治験薬 KD-FLU(H1) KD-FLU(TIV) KD-FLU(TIV) 製造番号 製造年月 20 年 月 20 年 月 20 年 月

    pH 試験 分画試験 適合 適合 適合 エーテル否定試験 適合 適合 適合 たん白質含量試験 μg/mL μg/mL μg/mL ホルムアルデヒド

    含量試験 w/v% w/v% w/v%

    無菌試験 菌の発育を認めず 菌の発育を認めず 菌の発育を認めず

    異常毒性否定試験 いずれの動物も 異常を認めず

    いずれの動物も 異常を認めず

    いずれの動物も 異常を認めず

    マウス白血球数減

    少試験 U/mL U/mL U/mL

    A/CA/07/2009(X-179A)(H1N1)μgHA/0.5 mL

    A/BR/59/2007(IVR-148)(H1N1) μgHA/0.5 mL

    A/CA/07/2009(X-179A)(H1N1) μgHA/0.5 mL

    A/UR/716/2007(X-175C)(H3N2) μgHA/0.5 mL

    A/VC/210/2009(X-187)(H3N2) μgHA/0.5 mL

    力価試験

    B/BR/60/2008 μgHA/0.5 mL

    B/BR/60/2008 μgHA/0.5 mL

    不活化試験 陰性 陰性 陰性 マウス体重減少試

    験 適合 適合 適合

    表示確認試験 適合 適合 適合 充填量 mL/バイアル mL/バイアル mL/バイアル

    小分製品

    容器及び施栓系 ガラスバイアル

    塩素化ブチルゴム栓 フィリップキャップ

    ガラスバイアル 塩素化ブチルゴム栓 フィリップキャップ

    ガラスバイアル 塩素化ブチルゴム栓 フィリップキャップ

    [表 2.7.1.1-2]

    8

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    2.5.3 臨床薬理学に関する概括評価

    2.5.3.1 薬物動態(PK)試験

    該当する試験はない。

    2.5.3.2 薬力学(PD)試験

    該当する試験はない。

    2.5.3.3 特別な試験

    (1) 免疫原性試験

    KD-FLU は不活化ワクチンであるため、免疫原性試験は「2.5.4 有効性の概括評価」の項に

    記載した。

    (2) その他の試験

    KD-FLU は不活化ワクチンであるため、免疫原性試験以外の特別な試験は必要ないと判断し、

    実施しなかった。

    9

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    2.5.4 有効性の概括評価

    2.5.4.1 有効性(免疫原性)を評価した試験

    有効性(免疫原性)の臨床データパッケージは KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験

    の 2 試験である。KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験の有効性(免疫原性)評価の概要

    を表 2.5.4.1-1 及び表 2.5.4.1-2 に示す。

    10

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.1-1 KD-PEDFLU-2 試験の有効性(免疫原性)評価の概要 資料区分 評価資料

    試験区分(試験番号) 第 II/III 相試験(KD-PEDFLU-2) 試験の目的 免疫原性及び安全性の検討 試験デザイン 多施設共同オープンラベル試験 対象 生後 6 ヵ月以上 13 歳未満の健康小児(男女) 治験薬 KD-FLU(TIV) 接種被験者数 66 名

    0.25 mL 接種(6 ヵ月以上 3 歳未満):38 名 0.5 mL 接種 (3 歳以上 13 歳未満) :28 名

    用法・用量 3 週間 ± 7 日間の間隔をおいて 2 回皮下接種する。以下の年齢別接種量に従って上腕伸側に接種する。 6 ヵ月以上 3 歳未満 0.25 mL 3 歳以上 13 歳未満 0.5 mL

    免疫原性の評価項目 主要評価項目:HI 抗体について以下の基準を 1 つ以上満たすこと ①抗体陽転率(>40%) ②幾何平均抗体価変化率(>2.5) ③抗体保有率(>70%) 副次評価項目:中和抗体の①抗体陽転率、②幾何平均抗体価変化率、③抗体保有率 HI 抗体価及び中和抗体価の推移

    測定項目 A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdmHA 抗原に対する HI 抗体価 A/ビクトリア/210/2009(H3N2)HA 抗原に対する HI 抗体価 B/ブリスベン/60/2008 HA 抗原に対する HI 抗体価 A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm ウイルスに対する中和抗体価 A/ビクトリア/210/2009(H3N2)ウイルスに対する中和抗体価 B/ブリスベン/60/2008 ウイルスに対する中和抗体価

    主な結果 2 回接種後 HI 抗体 評価項目 判定基準 新型 A(H1N1) A(H3N2) B 全体 解析対象例数 66 66 66 抗体陽転率 >40% 68.2% * 78.8% * 34.8% GMT 変化率 >2.5 7.36 * 9.17 * 3.56 * 抗体保有率 >70% 72.7% * 83.3% * 40.9% 適合結果 ** ** ** 0.25 mL 解析対象 38 38 38 (6 ヵ月以上 抗体陽転率 >40% 60.5% * 78.9% * 31.6% 3 歳未満) GMT 変化率 >2.5 6.67 * 11.11 * 3.16 * 抗体保有率 >70% 60.5% 78.9% * 31.6% 適合結果 ** ** ** 0.5 mL 解析対象 28 28 28 (3 歳以上 抗体陽転率 >40% 78.6% * 78.6% * 39.3% 13 歳未満) GMT 変化率 >2.5 8.41 * 7.07 * 4.20 * 抗体保有率 >70% 89.3% * 89.3% * 53.6% 適合結果 ** ** ** *:判定基準を満たしていることを示す

    **:3 項目の判定基準のうち一つ以上満たすことを示す治験実施施設 3 施設 治験実施期間 20 年 月–20 年 月 実施国 日本 資料番号 5.3.5.1.2

    [表 2.7.3.2-1]

    11

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.1-2 KD-PEDFLU-1 試験の有効性(免疫原性)評価の概要 資料区分 評価資料

    試験区分(試験番号) 第 II/III 相試験(KD-PEDFLU-1) 試験の目的 免疫原性及び安全性の検討 試験デザイン 非盲検無作為割付群間比較試験 対象 生後 6 ヵ月以上 13 歳未満の健康小児(男女) 接種群及び治験薬 単独接種群:KD-FLU(H1)

    同時接種群:KD-FLU(H1)及び KD-FLU(TIV) 接種被験者数 80 名

    単独接種群:40 名(6 ヵ月以上 3 歳未満 20 名、3 歳以上 13 歳未満 20 名) 同時接種群:40 名(6 ヵ月以上 3 歳未満 20 名、3 歳以上 13 歳未満 20 名)

    用法・用量 3 週間 ± 7 日間の間隔をおいて 2 回皮下接種する。 単独接種群:KD-FLU(H1)を上腕伸側に接種 同時接種群:KD-FLU(H1)と KD-FLU(TIV)を両側上腕伸側に接種 接種量は両接種群とも 1 回 1 接種部位あたり 6 ヵ月以上 3 歳未満は 0.25 mL、3 歳以上 13 歳未満は 0.5 mL

    免疫原性の評価項目 主要評価項目:抗体陽転率①、② 副次評価項目:抗体価の推移 抗体価の変化率 抗体陽転率①:接種後抗体価が 20 倍以上かつ 1 回目接種前値からの変化率が 4 倍以

    上の被験者の割合。 抗体陽転率②:接種後抗体価が 40 倍以上かつ 1 回目接種前値からの変化率が 4 倍以

    上の被験者の割合 測定項目 A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm に対する中和抗体価

    A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdmHA 抗原に対する HI 抗体価 A/ブリスベン/59/2007(H1N1)HA 抗原に対する HI 抗体価 A/ウルグアイ/716/2007(H3N2)HA 抗原に対する HI 抗体価 B/ブリスベン/60/2008 HA 抗原に対する HI 抗体価

    主な結果

    2 回接種後

    全接種群 同時接種群

    KD-FLU(H1) KD-FLU(TIV)

    新型 A(H1N1) A(H1N1) A(H3N2) B

    価 項 目

    接種量 区分

    中和抗体 HI 抗体 HI 抗体

    0.25 mL 接種(6 ヵ月以上3 歳未満)

    100.0% (39/39)

    69.2% (27/39)

    80.0% (16/20)

    100.0%(20/20)

    35.0% (7/20)

    陽 転 率 ②

    0.5 mL 接種 (3 歳以上 13 歳未満)

    95.0% (38/40)

    77.5% (31/40)

    45.0% (9/20)

    75.0% (15/20)

    55.0% (11/20)

    0.25 mL 接種(6 ヵ月以上3 歳未満)

    100.0% (39/39)

    69.2% (27/39)

    90.0% (18/20)

    100.0%(20/20)

    35.0% (7/20)

    保 有 率 0.5 mL 接種

    (3 歳以上 13 歳未満)

    97.5% (39/40)

    80.0% (32/40)

    100.0%(20/20)

    90.0% (18/20)

    60.0% (12/20)

    治験実施施設 2 施設 治験実施期間 20 年 月–20 年 月 実施国 日本 資料番号 5.3.5.1.1

    [表 2.7.3.2-3]

    12

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    2.5.4.2 試験デザイン、試験方法に関する説明

    (1) 試験デザイン

    免疫原性の指標は抗体価であることから、非盲検下でも医師の偏りが発生しない客観的な評

    価が可能であると考え、KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験は非盲検試験で実施した。

    (2) 対象

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験の対象は、1 回目治験薬接種時の年齢が 6 ヵ月以

    上 13 歳未満の日本人健康小児とした。日本での定期/任意予防接種を開始する年齢を考慮し、

    6 ヵ月以上とした。13 歳以上の接種量は成人と同じであるため、WHO 推奨用量と違いのある

    13 歳未満を対象とした。

    KD-FLU の添付文書で規定されている接種不適当者は除外した。

    【接種不適当者】

    ・明らかな発熱を呈している者

    ・重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者

    ・本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者

    ・上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

    KD-FLU の添付文書で規定されている接種要注意者については、健康状態及び体質を勘案し、

    診察及び治験参加適否の判定を慎重に行い、治験の必要性、副反応、有用性について十分な説

    明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種した。

    【接種要注意者】

    ・心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者

    ・予防接種で接種後 2 日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状

    を呈したことがある者

    ・過去にけいれんの既往のある者

    ・過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者

    ・間質性肺炎、気管支喘息等の呼吸器系疾患を有する者

    ・本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈するおそれのあ

    る者

    (3) 用法・用量

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験では治験薬を上腕に、3 週間 ± 7 日間の間隔をお

    いて 2 回皮下接種した。

    KD-PEDFLU-2 試験では、KD-FLU(TIV)を以下の年齢別接種量に従って上腕伸側に接種した。

    なお、1 回目と 2 回目の接種部位は左右の上腕を変えた。

    6 ヵ月以上 3 歳未満 0.25 mL

    3 歳以上 13 歳未満 0.5 mL

    13

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    KD-PEDFLU-1 試験での年齢別接種量を表 2.5.4.2-1 に示す。

    単独接種群:KD-FLU(H1)を年齢別接種量に従って上腕伸側に接種した。1 回目と 2 回目の接

    種部位は左右の上腕を変えた。

    同時接種群:KD-FLU(H1)とKD-FLU(TIV)を年齢別接種量に従って両側上腕伸側に接種した。

    1 回目と 2 回目接種時に KD-FLU(H1)と KD-FLU(TIV)の接種部位を交代した。

    単独接種群ではいずれかの上腕に、同時接種群では左右の上腕それぞれに接種した。同時接

    種群には単独接種群の約 4 倍量の HA たん白質が接種された。

    表 2.5.4.2-1 KD-PEDFLU-1 試験の用法・用量 接種群 接種方法 接種回数 治験薬 接種量 HAたん白質量

    6 ヵ月以上 3 歳未満 単独接種群 上腕伸側片側

    に皮下接種 KD-FLU(H1) 0.25 mL/回 7.5 μg/回以上

    同時接種群 上腕伸側両側に皮下接種

    2 回 (3 週間 ± 7 日間の間隔) KD-FLU(H1)

    KD-FLU(TIV) 0.25 mL/回 × 2 (両側、1 回量は 0.5 mL)

    30 μg/回以上

    3 歳以上 13 歳未満 単独接種群 上腕伸側片側

    に皮下接種 KD-FLU(H1) 0.5 mL/回 15 μg/回以上

    同時接種群 上腕伸側両側に皮下接種

    2 回 (3 週間 ± 7 日間の間隔) KD-FLU(H1)

    KD-FLU(TIV) 0.5 mL/回 × 2 (両側、1 回量は 1.0 mL)

    60 μg/回以上

    (4) 免疫原性の測定項目及び評価項目

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験のいずれの試験でも、HI 抗体及び中和抗体を免

    疫原性の評価指標とした。

    季節性のインフルエンザ HA ワクチンの評価は HI 抗体価で行われている。今までのところ、

    A/H1N1 亜型のインフルエンザに対するインフルエンザ HA ワクチンの評価は従来からの HI 抗

    体価で可能と考えられている。また、中和抗体はインフルエンザウイルスに対する感染防御能

    を強く反映し、免疫原性を評価する上でも重要だと考えられる。したがって、HI 抗体、中和抗

    体でワクチンの免疫原性を評価した。

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験で用いた HI 抗体及び中和抗体の測定法は、国立

    感染症研究所において採用されている方法に準じた。

    HI 抗体測定用インフルエンザウイルス抗原液として、新型 A(H1N1)インフルエンザウイルス

    HA 抗原、A(H1N1)インフルエンザウイルス HA 抗原、A(H3N2)インフルエンザウイルス HA 抗

    原、B インフルエンザウイルス HA 抗原をそれぞれ使用した。被験者の血清を RDE 処理した後、

    ニワトリ赤血球を加え一定条件で反応させた。その後、遠心分離で上清を分取し、2 倍段階希

    釈をした。それに 4HAに調整したHI試験用インフルエンザウイルス抗原液を加え反応させた。

    反応後ニワトリ赤血球を加え反応させ、赤血球凝集の有無を確認した。赤血球凝集反応を完全

    に抑制した血清の最高希釈倍率を HI 抗体価とした。

    中和抗体測定には MDCK 細胞を使用した。被験者の血清検体を RDE 処理した後、10 倍に希

    釈した。適当な緩衝液で 2 倍段階希釈し、一定量に調整した攻撃ウイルス液を加え一定条件で

    反応させる。反応後、MDCK 細胞に加え一定条件で培養し、その後ホルマリンを加えて不活化

    14

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    する。染色液で細胞を染色し細胞変性効果の有無を吸光度で測定し、吸光度の低下が 50%以下

    である最大希釈倍数を中和抗体価とした。

    KD-PEDFLU-2 試験では、主要評価項目として、次のように設定した。

    HI 抗体について、以下の基準を 1 つ以上満たすこと

    ①抗体陽転率(>40%)

    ②幾何平均抗体価変化率(以下、「GMT 変化率」という)(>2.5)

    ③抗体保有率(>70%)

    なお、抗体陽転率及び抗体保有率を以下のとおり定義した。

    ・抗体陽転率:抗体価が「接種前に 10 倍未満かつ接種後に 40 倍以上の被験者」又は「接種

    前に 10 倍以上かつ接種後の変化率が 4 倍以上増加した被験者」の割合

    ・抗体保有率:抗体価が 40 倍以上の被験者の割合

    主要評価項目の設定根拠は次のとおりである。

    欧州医薬品庁(以下、「EMA」という)と米国食品医薬品庁(以下、「FDA」という)には、

    季節性インフルエンザワクチンを評価するガイダンス(以下、「EMA ガイダンス」[文献 12]

    又は「FDA ガイダンス」[文献 13]という)があるが、これらはともに成人や高齢者を対象と

    したガイダンスである。しかしながら、EMA は、A/H1N1 亜型のインフルエンザウイルスによ

    るインフルエンザに対するインフルエンザワクチンの小児に対する免疫原性を評価する際に、

    EMA ガイダンスを引用する文書[文献 14]を出している。よって、EMA ガイダンスの基準の

    うち、より厳しい基準である成人(18 歳以上 60 歳以下)の基準で KD-FLU(TIV)の免疫原性を

    評価することは可能と考え、設定した。

    EMA ガイダンスの基準は以下のとおりである。

    季節性インフルエンザワクチンの免疫原性を評価する際にトリ血球による HI 抗体を用いる

    場合には、表 2.5.4.2-2 に示す 3 つの評価基準のうち少なくとも 1 つの基準を満たすこと。

    表 2.5.4.2-2 欧州医薬品庁による季節性インフルエンザワクチンの評価基準 評価項目 定義 18 歳–60 歳 61 歳以上

    抗体陽転率 抗体価が「接種前に 10 倍未満かつ接種後に 40 倍以上の被験者」又は「接種前に 10 倍以上かつ接種後の変化率が 4 倍以上増加した被験者」の割合。

    >40% >30%

    幾何抗体価変化率 幾何平均抗体価の接種前値からの増加倍率。 ワクチン接種後の幾何平均抗体価を 1 回目接種前の幾何平均抗体価で除した値。

    >2.5 >2.0

    抗体保有率 抗体価が 40 倍以上の被験者の割合。 >70% >60%

    15

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    KD-PEDFLU-1 試験では、主要評価項目として中和抗体及び HI 抗体の抗体陽転率①、②を設

    定した。なお、抗体陽転判定基準を以下のとおり定義した。

    ・抗体陽転率①:接種後抗体価が 20 倍以上かつ 1 回目接種前値からの変化率が 4 倍以上の被

    験者の割合

    ・抗体陽転率②:接種後抗体価が 40 倍以上かつ 1 回目接種前値からの変化率が 4 倍以上の被

    験者の割合

    なお、KD-PEDFLU-2 試験での抗体陽転率と同じ意味である。

    また、KD-PEDFLU-2 試験と同様に、EMA ガイダンスに定める評価基準での評価も参考まで

    に行った。

    (5) 被験者数

    KD-PEDFLU-2 試験の目標被験者数は 40 名、KD-PEDFLU-1 試験の目標被験者数は 80 名とし

    た。いずれも治験実施予定期間が限定されている状況の中で、免疫原性及び安全性を評価する

    のに最低限必要であろうと想定される被験者数として設定した。そのため、免疫原性及び安全

    性の評価項目に関して十分な検出力を担保した上で統計的仮説検定を行うことを想定した被験

    者数設定にはなっていない。

    2.5.4.3 対象となった被験者集団の特性

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験で、KD-FLU が 1 回以上接種された被験者の総数

    は 146 名であった。

    KD-PEDFLU-2 試験、KD-PEDFLU-1 試験の両試験の人口統計学的特性(男女比、月齢など)

    は同様であった。

    KD-PEDFLU-1 試験において、単独接種群、同時接種群での人口統計学的特性(男女比、月齢

    など)は、いずれの項目でも比較的近似した値又は分布であり、群間に著しい不均衡は認めら

    れなかった。

    2.5.4.4 個々の試験成績の概括評価

    有効性(免疫原性)の臨床データパッケージは KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験

    である。各試験成績の概略を以下に示す。

    (1) KD-PEDFLU-2 試験成績の概括評価

    6 ヵ月以上 13 歳未満の健康小児を対象に、KD-FLU を WHO 推奨用量で皮下接種した場合の

    免疫原性及び安全性を検討することを目的として、多施設共同オープンラベル試験を国内 3 施

    設で実施した。健康小児 66 名(6 ヵ月以上 3 歳未満 38 名、3 歳以上 13 歳未満 28 名)に、3 週

    間 ± 7 日間隔で 2 回皮下接種した。ただし、6 ヵ月以上 3 歳未満には 0.25 mL、3 歳以上 13 歳未

    満には 0.5 mL 接種した。治験薬接種前、1 回目接種 21 ± 7 日後、2 回目接種 21 ± 7 日後に採血

    し、2010 年度のワクチン株に対する HI 抗体及び中和抗体を測定した。なお、測定限界値未満

    の抗体価(抗体価 10 倍未満)は、測定限界値の値を 2 で割った計算値「5」を解析に使用した。

    主要評価項目として HI 抗体の、①抗体陽転率(>40%)、②GMT 変化率(>2.5)、③抗体保有率

    (>70%)の 3 つの基準のうち 1 つ以上満たすか否かを評価した。最大の解析対象集団(以下、16

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    「FAS」という)を対象とした解析を免疫原性に関する主要な結果とした。FAS 対象は 66 名(6

    ヵ月以上 3 歳未満 38 名、3 歳以上 13 歳未満 28 名)であり、全員 2 回接種された。

    FAS を対象とした免疫原性の主要評価結果を表 2.5.4.4-1 に示す。

    免疫原性の主要評価項目である HI 抗体の①抗体陽転率(>40%)、②GMT 変化率(>2.5)、③

    抗体保有率(>70%)の 3 つの基準について、1 つ以上満たしているかを確認した。

    FAS 解析対象集団全体(以下、「年齢区分全体」という)では、1 回接種後(2 回目接種前)

    においては、新型 A(H1N1)及び A(H3N2)は基準①及び②を満たしていた。B は①、②及び③の

    いずれの基準も満たしていなかった。2 回接種後(事後観察)においては、新型 A(H1N1)及び

    A(H3N2)は基準①、②及び③のすべてを満たし、B は基準②を満たしていた。以上、年齢区分

    全体では、2 回接種後(事後観察)においてすべての株で 3 つの基準①、②及び③のうち少な

    くとも 1 つ以上を満たすことができた。

    6 ヵ月以上 3 歳未満では、1 回接種後(2 回目接種前)においては、A(H3N2)は基準②を満た

    していたが、新型 A(H1N1)及び B はいずれの基準も満たしていなかった。2 回接種後(事後観

    察)においては、新型 A(H1N1)は基準①及び②、A(H3N2)は基準①、②及び③のすべて、B は

    基準②を満たしていた。以上、6 ヵ月以上 3 歳未満でも、2 回接種後(事後観察)においてすべ

    ての株で 3 つの基準①、②及び③のうち少なくとも 1 つ以上を満たすことができた。

    3 歳以上 13 歳未満では、1 回接種後(2 回目接種前)及び 2 回接種後(事後観察)ともに、

    新型 A(H1N1)及び A(H3N2)は基準①、②及び③のすべてを満たし、B は基準②を満たしていた。

    以上、3 歳以上 13 歳未満でも、2 回接種後(事後観察)においてすべての株で 3 つの基準①、

    ②及び③のうち少なくとも 1 つ以上を満たすことができた。

    17

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.4-1 KD-PEDFLU-2 試験の免疫原性の主要評価結果

    *:判定基準を満たしていることを示す解析対象:FAS 測定項目:HI抗体価 **:3項目の判定基準のうち一つ以上を満たすことを示す用量 時期 評価項目 判定基準全体 2回目接種前 解析対象例数 66 66 66

    抗体陽転率 >40% 45.5% * 45.5% * 16.7%GMT変化率 >2.5 4.13 * 4.88 * 2.09抗体保有率 >70% 50.0% 50.0% 22.7%

    適合結果 ** **事後観察 解析対象例数 66 66 66

    抗体陽転率 >40% 68.2% * 78.8% * 34.8%GMT変化率 >2.5 7.36 * 9.17 * 3.56 *抗体保有率 >70% 72.7% * 83.3% * 40.9%

    適合結果 ** ** **0.25mL 2回目接種前 解析対象例数 38 38 38(6ヵ月以上3歳未満) 抗体陽転率 >40% 23.7% 34.2% 10.5%

    GMT変化率 >2.5 2.31 4.30 * 1.52抗体保有率 >70% 23.7% 34.2% 10.5%

    適合結果 **事後観察 解析対象例数 38 38 38

    抗体陽転率 >40% 60.5% * 78.9% * 31.6%GMT変化率 >2.5 6.67 * 11.11 * 3.16 *抗体保有率 >70% 60.5% 78.9% * 31.6%

    適合結果 ** ** **0.5mL 2回目接種前 解析対象例数 28 28 28(3歳以上13歳未満) 抗体陽転率 >40% 75.0% * 60.7% * 25.0%

    GMT変化率 >2.5 9.05 * 5.80 * 3.20 *抗体保有率 >70% 85.7% * 71.4% * 39.3%

    適合結果 ** ** **事後観察 解析対象例数 28 28 28

    抗体陽転率 >40% 78.6% * 78.6% * 39.3%GMT変化率 >2.5 8.41 * 7.07 * 4.20 *抗体保有率 >70% 89.3% * 89.3% * 53.6%

    適合結果 ** ** **

    新型A(H1N1) A(H3N2) B

    [表 2.7.3.2-2]

    (2) KD-PEDFLU-1 試験成績の概括評価

    6 ヵ月以上 13 歳未満の健康小児を対象に、WHO 推奨用量を基本として、KD-FLU(H1)を単独

    で接種した場合、及び KD-FLU(H1)と KD-FLU(TIV)を同時に接種した場合の免疫原性及び安全

    性を検討することを目的として、非盲検無作為割付群間比較試験を国内 2 施設で実施した。健

    康小児 80 名(単独接種群 40 名; 6 ヵ月以上 3 歳未満 20 名, 3 歳以上 13 歳未満 20 名: 同時接種

    群 40 名; 6 ヵ月以上 3 歳未満 20 名, 3 歳以上 13 歳未満 20 名)に、3 週間 ± 7 日間隔で 2 回皮下

    接種した。ただし、6 ヵ月以上 3 歳未満には 0.25 mL、3 歳以上 13 歳未満には 0.5 mL 接種した。

    治験薬接種前、1 回目接種 21 ± 7 日後、2 回目接種 21 ± 7 日後に採血し、KD-FLU(H1)のワクチ

    ン株に対する HI 抗体及び中和抗体並びに KD-FLU(TIV)のワクチン株に対する HI 抗体を測定し

    た。なお、測定限界値未満の抗体価(抗体価 10 倍未満)は、測定限界値の値を 2 で割った計算

    値「5」を解析に使用した。主要評価項目として中和抗体及び HI 抗体の抗体陽転率①、②を評

    価した。FAS を対象とした解析を免疫原性に関する主要な結果とした。FAS 対象は 79 名(単独

    接種群 39 名; 6 ヵ月以上 3 歳未満 19 名, 3 歳以上 13 歳未満 20 名: 同時接種群 40 名; 6 ヵ月以上

    3 歳未満 20 名, 3 歳以上 13 歳未満 20 名)であり、全員 2 回接種された。

    1) 新型 A (H1N1)に対する抗体陽転率①、②

    2 回接種後(事後観察)における新型 A(H1N1)ウイルスに対する中和抗体陽転率①、②及び

    18

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    新型 A(H1N1)HA 抗原に対する HI 抗体陽転率①、②を表 2.5.4.4-2 に示す。中和抗体陽転率①、

    ②はいずれの接種群、いずれの年齢区分でも 90%以上の値を示した。HI 抗体では、同時接種群

    の 6 ヵ月以上 3 歳未満の抗体陽転率②で 65.0%(13/20 名)、単独接種群と同時接種群を合わせ

    た群(以下、「全接種群」という)の 6 ヵ月以上 3 歳未満の抗体陽転率②で 69.2%(27/39 名)

    であったが、その他の接種群、いずれの年齢区分でも、抗体陽転率①、②は 70%以上であった。

    表 2.5.4.4-2 KD-PEDFLU-1 試験の 2 回接種後の新型 A(H1N1)ウイルスに対する中和抗体陽

    転率①、②及び新型 A(H1N1)HA 抗原に対する HI 抗体陽転率①、②

    抗体陽転率①[a] 抗体陽転率②[b]

    接種群 年齢区分 陽転 陽転率 95%CI[c] 陽転 陽転率 95%CI者数 (%) LL UL 者数 (%) LL UL

    新型A(H1N1) 単独接種[d] 全体 39 39 100.0 91.0 100.0 39 100.0 91.0 100.0中和抗体 6ヵ月-3歳未満 19 19 100.0 82.4 100.0 19 100.0 82.4 100.0

    3歳-13歳未満 20 20 100.0 83.2 100.0 20 100.0 83.2 100.0同時接種[e] 全体 40 39 97.5 86.8 99.9 38 95.0 83.1 99.4

    6ヵ月-3歳未満 20 20 100.0 83.2 100.0 20 100.0 83.2 100.03歳-13歳未満 20 19 95.0 75.1 99.9 18 90.0 68.3 98.8

    単独接種 全体 79 78 98.7 93.1 100.0 77 97.5 91.2 99.7  + 6ヵ月-3歳未満 39 39 100.0 91.0 100.0 39 100.0 91.0 100.0同時接種 3歳-13歳未満 40 39 97.5 86.8 99.9 38 95.0 83.1 99.4

    新型A(H1N1) 単独接種 全体 39 35 89.7 75.8 97.1 28 71.8 55.1 85.0HI抗体 6ヵ月-3歳未満 19 17 89.5 66.9 98.7 14 73.7 48.8 90.9

    3歳-13歳未満 20 18 90.0 68.3 98.8 14 70.0 45.7 88.1同時接種 全体 40 36 90.0 76.3 97.2 30 75.0 58.8 87.3

    6ヵ月-3歳未満 20 18 90.0 68.3 98.8 13 65.0 40.8 84.63歳-13歳未満 20 18 90.0 68.3 98.8 17 85.0 62.1 96.8

    単独接種 全体 79 71 89.9 81.0 95.5 58 73.4 62.3 82.7  + 6ヵ月-3歳未満 39 35 89.7 75.8 97.1 27 69.2 52.4 83.0同時接種 3歳-13歳未満 40 36 90.0 76.3 97.2 31 77.5 61.5 89.2[a] 接種後抗体価が20倍以上かつ1回目接種前値からの変化率が4倍以上の被験者の割合[b] 接種後抗体価が40倍以上かつ1回目接種前値からの変化率が4倍以上の被験者の割合[c] 95%CI = 95%信頼区間, LL = 下限値, UL = 上限値[d] KD-FLU(H1)単独接種[e] KD-FLU(H1)とKD-FLU(TIV)の同時接種

    抗体の種類被験者数

    [表 2.7.3.2-4]

    2) A(H1N1)HA 抗原、A(H3N2)HA 抗原、B HA 抗原に対する HI 抗体陽転率①、②

    2 回接種後(事後観察)の A(H1N1)HA 抗原、A(H3N2)HA 抗原、B HA 抗原に対する HI 抗体

    陽転率①、②を表 2.5.4.4-3 に示す。6 ヵ月以上 3 歳未満の A(H1N1)HA 抗原に対する HI 抗体陽

    転率①、②はともに、80.0%以上の値を示した。3 歳以上 13 歳未満では、HI 抗体陽転率①、②

    ともに 45.0%と低い値であったが、これは接種前抗体保有率が 80.0%と高い(「2.7.6 個々の試

    験のまとめ」表 2.7.6.2.8-9 参照)ために接種後抗体陽転率①、②が低くなったと考える。6 ヵ月

    以上 3 歳未満及び 3 歳以上 13 歳未満の A(H3N2)HA 抗原に対する HI 抗体陽転率①、②はとも

    に、75.0%以上の値を示した。6 ヵ月以上 3 歳未満及び 3 歳以上 13 歳未満の B HA 抗原に対する

    HI 抗体陽転率①は 75.0%以上の値を示したが、HI 抗体陽転率②は 6 ヵ月以上 3 歳未満 35.0%、

    3 歳以上 13 歳未満 55.0%であった。

    19

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.4-3 KD-PEDFLU-1 試験の 2 回接種後の A(H1N1)HA 抗原、A(H3N2)HA 抗原、B HA

    抗原に対する HI 抗体陽転率①、②

    抗体陽転率①[a] 抗体陽転率②[b]

    接種群 年齢区分 陽転 陽転率 95%CI[c] 陽転 陽転率 95%CI者数 (%) LL UL 者数 (%) LL UL

    A(H1N1) 同時接種[d] 全体 40 26 65.0 48.3 79.4 25 62.5 45.8 77.3HI抗体 6ヵ月-3歳未満 20 17 85.0 62.1 96.8 16 80.0 56.3 94.3

    3歳-13歳未満 20 9 45.0 23.1 68.5 9 45.0 23.1 68.5A(H3N2) 同時接種 全体 40 37 92.5 79.6 98.4 35 87.5 73.2 95.8HI抗体 6ヵ月-3歳未満 20 20 100.0 83.2 100.0 20 100.0 83.2 100.0

    3歳-13歳未満 20 17 85.0 62.1 96.8 15 75.0 50.9 91.3B 同時接種 全体 40 33 82.5 67.2 92.7 18 45.0 29.3 61.5HI抗体 6ヵ月-3歳未満 20 15 75.0 50.9 91.3 7 35.0 15.4 59.2

    3歳-13歳未満 20 18 90.0 68.3 98.8 11 55.0 31.5 76.9[a] 接種後抗体価が20倍以上かつ1回目接種前値からの変化率が4倍以上の被験者の割合[b] 接種後抗体価が40倍以上かつ1回目接種前値からの変化率が4倍以上の被験者の割合[c] 95%CI = 95%信頼区間, LL = 下限値, UL = 上限値[d] KD-FLU(H1)とKD-FLU(TIV)の同時接種

    抗体の種類被験者数

    [表 2.7.3.2-5]

    2.5.4.5 有効性(免疫原性)に関する試験間の比較

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験において、HI 抗体の①抗体陽転率(>40%)、②

    GMT 変化率(>2.5)、③抗体保有率(>70%)の 3 つの基準のうち 1 つ以上満たすことについて

    及び中和抗体の抗体陽転率について比較した。その結果を表 2.5.4.5-1–表 2.5.4.5-6 に示す。

    両試験ともに、6 ヵ月以上 3 歳未満及び 3 歳以上 13 歳未満の 2 回接種後において、すべての

    株で 3 つの基準のうち少なくとも 1 つ以上を満たすことができた。

    新型 A(H1N1)、A(H3N2)、B それぞれの HA 抗原に対する HI 抗体価の抗体陽転率、GMT 変

    化率、抗体保有率及び中和抗体の抗体陽転率は両試験で同様の成績であった。

    表 2.5.4.5-1 KD-PEDFLU-2 試験の年齢区分全体の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗体価変

    化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率 解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*

    評価項目 解析対象例数 66 66 66HI抗体価 判定基準 採血時期 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 45.5% * 45.5% * 16.7%GMT変化率 >2.5 1回接種後 4.13 * 4.88 * 2.09抗体保有率 >70% 1回接種後 50.0% 50.0% 22.7%抗体陽転率 >40% 2回接種後 68.2% * 78.8% * 34.8%GMT変化率 >2.5 2回接種後 7.36 * 9.17 * 3.56 *抗体保有率 >70% 2回接種後 72.7% * 83.3% * 40.9%

    評価項目 解析対象例数 66 66 66中和抗体価 判定基準

    抗体陽転率 - 1回接種後 57.6% - 59.1% - 27.3% -2回接種後 87.9% - 84.8% - 43.9% -

    全体 新型A(H1N1) A(H3N2) B

    [表 2.7.3.3.2.1-1]

    20

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.5-2 KD-PEDFLU-2 試験の 6 ヵ月以上 3 歳未満の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗

    体価変化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率 解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*

    評価項目 解析対象例数 38 38 38HI抗体価 判定基準 採血時期 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 23.7% 34.2% 10.5%GMT変化率 >2.5 1回接種後 2.31 4.30 * 1.52抗体保有率 >70% 1回接種後 23.7% 34.2% 10.5%抗体陽転率 >40% 2回接種後 60.5% * 78.9% * 31.6%GMT変化率 >2.5 2回接種後 6.67 * 11.11 * 3.16 *抗体保有率 >70% 2回接種後 60.5% 78.9% * 31.6%

    評価項目 解析対象例数 38 38 38中和抗体価 判定基準

    抗体陽転率 - 1回接種後 36.8% - 47.4% - 18.4% -2回接種後 81.6% - 86.8% - 47.4% -

    0.25mL(6ヵ月以上3歳未満) 新型A(H1N1) A(H3N2) B

    [表 2.7.3.3.2.1-2]

    表 2.5.4.5-3 KD-PEDFLU-2 試験の 3 歳以上 13 歳未満の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗

    体価変化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率 解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*

    評価項目 解析対象例数 28 28 28HI抗体価 判定基準 採血時期 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 75.0% * 60.7% * 25.0%GMT変化率 >2.5 1回接種後 9.05 * 5.80 * 3.20 *抗体保有率 >70% 1回接種後 85.7% * 71.4% * 39.3%抗体陽転率 >40% 2回接種後 78.6% * 78.6% * 39.3%GMT変化率 >2.5 2回接種後 8.41 * 7.07 * 4.20 *抗体保有率 >70% 2回接種後 89.3% * 89.3% * 53.6%

    評価項目 解析対象例数 28 28 28中和抗体価 判定基準

    抗体陽転率 - 1回接種後 85.7% - 75.0% - 39.3% -2回接種後 96.4% - 82.1% - 39.3% -

    0.5mL(3歳以上13歳未満) 新型A(H1N1) A(H3N2) B

    [表 2.7.3.3.2.1-3]

    表 2.5.4.5-4 KD-PEDFLU-1 試験の年齢区分全体の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗体価変

    化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率

    解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*KD-FLU(H1)単独接種群

    KD-FLU(H1)+KD-FLU(TIV)同時接種群

    KD-FLU(H1) KD-FLU(H1) KD-FLU(TIV)

    評価項目 解析対象例数 39 40 40 40 40HI抗体価 判定基準 採血時期 1) 1) 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 30.8% 37.5% 45.0% * 52.5% * 17.5%GMT変化率 >2.5 1回接種後 3.70 * 4.98 * 3.74 * 5.39 * 2.00抗体保有率 >70% 1回接種後 30.8% 40.0% 72.5% * 62.5% 20.0%抗体陽転率 >40% 2回接種後 71.8% * 75.0% * 62.5% * 87.5% * 45.0% *GMT変化率 >2.5 2回接種後 14.56 * 16.45 * 5.97 * 10.24 * 4.51 *抗体保有率 >70% 2回接種後 71.8% * 77.5% * 95.0% * 95.0% * 47.5%

    評価項目 解析対象例数 39 40中和抗体価 判定基準

    抗体陽転率 - 1回接種後 61.5% - 65.0% -2回接種後 100.0% - 95.0% -

    A(H3N2) BA(H1N1)新型A(H1N1)全体

    新型A(H1N1)

    [表 2.7.3.3.2.1-4]

    21

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.5-5 KD-PEDFLU-1 試験の 6 ヵ月以上 3 歳未満の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗

    体価変化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率

    解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*KD-FLU(H1)単独接種群

    KD-FLU(H1)+KD-FLU(TIV)同時接種群

    KD-FLU(H1) KD-FLU(H1) KD-FLU(TIV)

    評価項目 解析対象例数 19 20 20 20 20HI抗体価 判定基準 採血時期 1) 1) 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 10.5% 5.0% 35.0% 50.0% * 0.0%GMT変化率 >2.5 1回接種後 2.08 2.00 3.87 * 5.69 * 1.56抗体保有率 >70% 1回接種後 10.5% 5.0% 45.0% 50.0% 0.0%抗体陽転率 >40% 2回接種後 73.7% * 65.0% * 80.0% * 100.0% * 35.0%GMT変化率 >2.5 2回接種後 12.40 * 8.58 * 10.94 * 14.01 * 4.28 *抗体保有率 >70% 2回接種後 73.7% * 65.0% 90.0% * 100.0% * 35.0%

    評価項目 解析対象例数 19 20中和抗体価 判定基準

    抗体陽転率 - 1回接種後 47.4% - 40.0% -2回接種後 100.0% - 100.0% -

    A(H1N1) A(H3N2) B0.25mL(6ヵ月以上3歳未満)

    新型A(H1N1) 新型A(H1N1)

    [表 2.7.3.3.2.1-5]

    表 2.5.4.5-6 体陽転率、幾何平均抗

    体価変化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率

    KD-PEDFLU-1 試験の 3 歳以上 13 歳未満の HI 抗体の抗

    解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*KD-FLU(H1)単独接種群

    KD-FLU(H1)+KD-FLU(TIV)同時接種群

    KD-FLU(H1) KD-FLU(H1) KD-FLU(TIV)

    評価項目 解析対象例数 20 20 20 20 20HI抗体価 判定基準 採血時期 1) 1) 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 50.0% * 70.0% * 55.0% * 55.0% * 35.0%GMT変化率 >2.5 1回接種後 6.54 * 12.65 * 3.61 * 5.10 * 2.55 *抗体保有率 >70% 1回接種後 50.0% 75.0% * 100.0% * 75.0% * 40.0%抗体陽転率 >40% 2回接種後 70.0% * 85.0% * 45.0% * 75.0% * 55.0% *GMT変化率 >2.5 2回接種後 17.28 * 32.27 * 3.25 * 7.46 * 4.76 *抗体保有率 >70% 2回接種後 70.0% 90.0% * 100.0% * 90.0% * 60.0%

    評価項目 解析対象例数 20 20中和抗体価 判定基準

    抗体陽転率 - 1回接種後 75.0% - 90.0% -2回接種後 100.0% - 90.0% -

    0.5mL(3歳以上13歳未満)新型A(H1N1) 新型A(H1N1) A(H3N2) BA(H1N1)

    [表 2.7.3.3.2.1-6]

    2.5.

    (1

    いて、年齢を「6 ヵ月以上 1 歳未満」、

    H3N2)では 2 回接種後で基準①、

    4.6 部分集団における有効性(免疫原性)の比較

    ) 年齢区分別の比較

    年齢の免疫原性への影響を調べるために、KD-PEDFLU-2 試験において、主要評価項目である

    HI 抗体の①抗体陽転率(>40%)、②GMT 変化率(>2.5)、③抗体保有率(>70%)の 3 つの基準

    のうち 1 つ以上満たすこと及び中和抗体の抗体陽転率につ

    1 歳以上 3 歳未満」、「3 歳以上 6 歳未満」、「6 歳以上 13 歳未満」に 4 区分して部分集団解析

    を実施した。その結果を表 2.5.4.6-1–表 2.5.4.6-4 に示す。

    年齢を検討した結果、「1 歳以上 3 歳未満」、「3 歳以上 6 歳未満」、「6 歳以上 13 歳未満」に関

    しては、1 回接種後においてすべての株で基準①、②及び③のうち 1 つ以上満たすことが示さ

    れた。「6 ヵ月以上 1 歳未満」に関しては、新型 A(H1N1)及び A(

    22

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    ②及び③の 3 つの基準のうち 1 つ以上満たすことが示されたものの、B において 2 回接種後で

    表 2.5.4.6-1 KD-PEDFLU-2 試験の 6 ヵ月以上 1 歳未満の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗

    体価変化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率

    基準①、②及び③のいずれも満たすことができなかった。

    解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*

    評価項目 解析対象例数 23 23 23HI抗体価 判定基準 採血時期 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 0.0% 30.4% 0.0%GMT変化率 >2.5 1回接種後 1.23 4.12 * 1.00抗体保有率 >70% 1回接種後 0.0% 30.4% 0.0%抗体陽転率 >40% 2回接種後 47.8% * 91.3% * 17.4%GMT変化率 >2.5 2回接種後 5.25 * 13.76 * 2.26抗体保有率 >70% 2回接種後 47.8% 91.3% * 17.4%

    評価項目 解析対象例数 23 23 23中和抗体価 判定基準 採血時期

    抗体陽転率 - 1回接種後 13.0% - 43.5% - 0.0% -2回接種後 73.9% - 91.3% - 26.1% -

    6ヵ月以上1歳未満 新型A(H1N1) A(H3N2) B

    [表 2.7.3.3.3.1-1]

    表 2.5.4.6-2 KD-PEDFLU-2 試験の 1 歳以上 3 歳未満の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗体

    価変化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率 解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*

    評価項目 解析対象例数 15 15 15HI抗体価 判定基準 採血時期 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 60.0% * 40.0% 26.7%GMT変化率 >2.5 1回接種後 6.06 * 4.59 * 2.89 *抗体保有率 >70% 1回接種後 60.0% 40.0% 26.7%抗体陽転率 >40% 2回接種後 80.0% * 60.0% * 53.3% *GMT変化率 >2.5 2回接種後 9.62 * 8.00 * 5.28 *抗体保有率 >70% 2回接種後 80.0% * 60.0% 53.3%

    評価項目 解析対象例数 15 15 15中和抗体価 判定基準 採血時期

    抗体陽転率 - 1回接種後 73.3% - 53.3% - 46.7% -2回接種後 93.3% - 80.0% - 80.0% -

    1歳以上3歳未満 新型A(H1N1) A(H3N2) B

    [表 2.7.3.3.3.1-2]

    表 2.5.4.6-3 KD-PEDFLU-2 試験の 3 歳以上 6 歳未満の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗体

    価変化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率 解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*

    評価項目 解析対象例数 18 18 18HI抗体価 判定基準 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 72.2% * 55.6% * 22.2%GMT変化率 >2.5 1回接種後 10.08 * 5.66 * 3.56 *抗体保有率 >70% 1回接種後 83.3% * 61.1% 22.2%抗体陽転率 >40% 2回接種後 77.8% * 77.8% * 44.4% *GMT変化率 >2.5 2回接種後 10.08 * 7.41 * 5.24 *抗体保有率 >70% 2回接種後 88.9% * 83.3% * 44.4%

    評価項目 解析対象例数 18 18 18中和抗体価 判定基準

    抗体陽転率 - 1回接種後 83.3% - 72.2% - 33.3% -2回接種後 94.4% - 83.3% - 38.9% -

    3歳以上6歳未満 新型A(H1N1) A(H3N2) B

    [表 2.7.3.3.3.1-3]

    23

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.6-4 KD-PEDFLU-2 試験の 6 歳以上 13 歳未満の HI 抗体の抗体陽転率、幾何平均抗

    体価変化率、抗体保有率並びに中和抗体の抗体陽転率 解析対象:FAS 1)判定基準に適合した数値に*

    評価項目 解析対象例数 10 10 10HI抗体価 判定基準 1) 1) 1)

    抗体陽転率 >40% 1回接種後 80.0% * 70.0% * 30.0%GMT変化率 >2.5 1回接種後 7.46 * 6.06 * 2.64 *抗体保有率 >70% 1回接種後 90.0% * 90.0% * 70.0%抗体陽転率 >40% 2回接種後 80.0% * 80.0% * 30.0%GMT変化率 >2.5 2回接種後 6.06 * 6.50 * 2.83 *抗体保有率 >70% 2回接種後 90.0% * 100.0% * 70.0%

    評価項目 解析対象例数 10 10 10中和抗体価 判定基準

    抗体陽転率 - 1回接種後 90.0% - 80.0% - 50.0% -2回接種後 100.0% - 80.0% - 40.0% -

    6歳以上13歳未満 新型A(H1N1) A(H3N2) B

    [表 2.7.3.3.3.1-4]

    (2) 治験期間中の解熱・鎮痛剤使用の有無別の比較

    KD-PEDFLU-2 試験における治験期間中の解熱・鎮痛剤使用の有無別 HI 抗体の抗体陽転率、

    GMT 変化率、抗体保有率の結果を表 2.5.4.6-5 に示す。

    治験期間中の解熱・鎮痛剤の使用の有無で免疫原性を比較した結果、すべての株において HI

    抗体の抗体陽転率、GMT 変化率及び抗体保有率のいずれの点推定値も解熱・鎮痛剤使用「あり」

    の方が「なし」に比べて高値になる傾向であったが、95%信頼区間を考慮すると、解熱・鎮痛

    剤の使用が免疫原性に影響を与える可能性は見出せなかった。

    24

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.6-5 KD-PEDFLU-2 試験での解熱・鎮痛剤使用の有無別 HI 抗体の抗体陽転率、幾何

    平均抗体価変化率、抗体保有率(年齢区分全体)

    1)1回目接種日から事後観察日まで2)「接種前10未満かつ接種後40以上」又は「接種前10以上かつ変化率4倍以上」

    3)各時点の幾何平均抗体価/1回目接種前の幾何平均抗体価解析対象:FAS 全体 4)「抗体価40以上」

    項目治験期間中1)の解熱剤使用

    時期 解析対象例数

    抗体

    陽転2)率%(95%信頼区間)

    GMT

    変化率3)

    (95%信頼区間)

    抗体

    保有4)率%(95%信頼区間)

    新型A(H1N1) なし 2回目接種前 5743.9

    (30.7~57.6)3.9

    (2.3~6.7)47.4

    (34.0~61.0)

    HI 事後観察 5764.9

    (51.1~77.1)6.7

    (4.2~10.5)68.4

    (54.8~80.1)

    あり 2回目接種前 955.6

    (21.2~86.3)5.9

    (1.2~29.2)66.7

    (29.9~92.5)

    事後観察 988.9

    (51.8~99.7)13.7

    (4.1~45.7)100.0

    (66.4~100.0)

    A(H3N2) なし 2回目接種前 5740.4

    (27.6~54.2)4.7

    (3.1~7.1)42.1

    (29.1~55.9)

    HI 事後観察 5778.9

    (66.1~88.6)8.8

    (6.2~12.6)80.7

    (68.1~90.0)

    あり 2回目接種前 977.8

    (40.0~97.2)6.3

    (1.8~22.6)100.0

    (66.4~100.0)

    事後観察 977.8

    (40.0~97.2)11.8

    (3.4~40.6)100.0

    (66.4~100.0)

    B なし 2回目接種前 5715.8

    (7.5~27.9)2.0

    (1.4~2.8)21.1

    (11.4~33.9)

    HI 事後観察 5733.3

    (21.4~47.1)3.3

    (2.4~4.5)38.6

    (26.0~52.4)

    あり 2回目接種前 922.2

    (2.8~60.0)2.7

    (1.2~6.1)33.3

    (7.5~70.1)

    事後観察 944.4

    (13.7~78.8)6.3

    (3.1~12.8)55.6

    (21.2~86.3)

    [表 2.7.3.3.3.2-1]

    2.5.4.7 同種同効薬との比較

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験で得られた各ワクチン株に対する HI 抗体保有率

    (抗体価が 40 倍以上の被験者の割合)と公表されている WHO 推奨用量を接種した際の各ワク

    チン株に対する HI 抗体保有率の比較を表 2.5.4.7-1 に示す。

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験の各ワクチン株に対する HI 抗体保有率を公表さ

    れている結果[文献 10、11]と比較した結果、同等以上の成績であった。

    25

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.7-1 WHO 推奨用量を接種した際の HI 抗体保有率の比較(2 回接種後)

    試験及び報告 ワクチン 年齢区分

    新型A(H1N1) A(H1N1) A(H3N2) B0.25mLKD-PEDFLU-2 KD-FLU 6ヵ月以上3歳未満 60.5%(23/38) - 78.9%(30/38) 31.6%(12/38)KD-PEDFLU-1 KD-FLU 6ヵ月以上3歳未満 69.2%(27/39) 90.0%(18/20) 100.0%(20/20) 35.0%(7/20)廣田ら[文献11] 阪大微生物病研究会製 6ヵ月以上3歳未満 - 77.7%(157/202) 62.9%(127/202) 29.2%(59/202)神谷ら[文献10] 阪大微生物病研究会製 6ヵ月以上3歳未満 - 59.4%(60/101) 20.4%(22/108) 16.1%(20/124)神谷ら[文献10] Sanofi Pasteur製 6ヵ月以上3歳未満 - 77.4%(82/106) 76.8%(76/99) 10.5%(13/124)0.5mLKD-PEDFLU-2 KD-FLU 3歳以上13歳未満 89.3%(25/28) - 89.3%(25/28) 53.6%(15/28)KD-PEDFLU-1 KD-FLU 3歳以上13歳未満 80.0%(32/40) 100.0%(20/20) 90.0%(18/20) 60.0%(12/20)廣田ら[文献11] 阪大微生物病研究会製 3歳以上4歳未満 - 98.5%(64/65) 86.2%(56/65) 53.8%(35/65)神谷ら[文献10] 阪大微生物病研究会製 3歳以上13歳未満 - 66.7%(64/96) 22.2%(14/63) 17.2%(22/128)神谷ら[文献10] Sanofi Pasteur製 3歳以上13歳未満 - 68.1%(62/91) 50.0%(13/26) 13.9%(17/122)

    ワクチン2回接種後のHI抗体保有率[a][b]

    [a] 抗体価が 40 倍以上の被験者の割合 [b] KD-PEDFLU-1 試験では、新型 A(H1N1)HA 抗原に対する HI 抗体保有率は単独接種群と同時接種群を合わせた群の保

    有率、その他の HA 抗原に対する HI 抗体保有率は同時接種群の保有率

    2.5.4.8 観察された効果の大きさの臨床的意義

    健康小児(6 ヵ月以上 13 歳未満)を対象として、KD-FLU を 6 ヵ月以上 3 歳未満の健康小児

    には 0.25 mL、3歳以上 13歳未満の健康小児には 0.5 mLで 2回接種したところ、新型 A(H1N1)HA

    抗原、A(H1N1)HA 抗原、A(H3N2)HA 抗原、B HA 抗原に対するそれぞれの HI 抗体がいずれも、

    3 つの基準(抗体陽転率(>40%)、GMT 変化率(>2.5)、抗体保有率(>70%))のうち少なくと

    も 1 つ以上を満たした。このことから、KD-FLU を WHO 推奨用量で健康小児に接種した場合、

    ワクチン株に対する抗体産生が認められると考える。

    各ワクチン株に対する HI 抗体保有率について、KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験

    の成績と、季節性インフルエンザワクチンを小児に対して現行用量(既承認用量)で接種した

    成績[文献 6、15、16、17]との比較を表 2.5.4.8-1 に示す。

    公表文献と比較が可能であった 6 ヵ月以上 6 歳未満(又は 5 歳未満)では、新型 A(H1N1)HA

    抗原を除く 3 つの抗原 A(H1N1)HA 抗原、A(H3N2)HA 抗原及び B HA 抗原に対する HI 抗体保

    有率は、いずれの株も KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験の成績は、公表文献での成

    績よりも高値であった。

    Vaccines 第 5 版[文献 18]でも、「インフルエンザウイルスに対する HI 抗体価が 40 倍である

    ことは、感染防御可能な抗体価として多くのインフルエンザに関する試験で用いられている。

    これは 40 倍の抗体価を持つ集団の約 50%において感染防御が可能であるという指標であり、感

    染防御を保証する抗体価は存在しない。しかしながら、一般的に、抗体価のレベルと感染防御

    能は相関しており、抗体価のレベルが上がればインフルエンザ感染防御能も上がり、その一方

    抗体レベルが下がればインフルエンザ感染の危険性が増加する。」とされており、より高いレベ

    ルの抗体を獲得することの重要性が述べられている。

    このことから、現行用量(既承認用量)より WHO 推奨用量(申請用量)に変更することに

    よって、6 ヵ月以上 13 歳未満の小児はより高いレベルの抗体を獲得することが期待され、その

    結果として、インフルエンザウイルスに対してより高い感染防御が期待できると考える。

    26

  • 2.5 臨床に関する概括評価

    表 2.5.4.8-1 WHO 推奨用量と現行用量(既承認用量)での HI 抗体保有率の比較(2 回接

    種後)

    接種量 年齢区分 試験及び報告新型A(H1N1) A(H1N1) A(H3N2) B

    0.5 mL 6歳以上13歳未満 KD-PEDFLU-2 90.0% - 100.0% 70.0%KD-PEDFLU-1 71.4% 100.0% 100.0% 66.7%

    3歳以上6歳未満 KD-PEDFLU-2 88.9% - 83.3% 44.4%KD-PEDFLU-1 89.5% 100.0% 81.8% 54.5%

    0.25 mL 1歳以上3歳未満 KD-PEDFLU-2 80.0% - 60.0% 53.3%0.2 mL 1歳以上5歳未満 高橋ら[文献15] - 約60% 54% 10%

    大熊ら[文献16] - 72.6% 65.2% 66.7%大熊ら[文献17] - 75% 78% 71%田村ら[文献6][c] - 73.9% 69.6% 30.4%

    WHO 0.25 mL 6ヵ月以上1歳未満 KD-PEDFLU-2 47.8% - 91.3% 17.4%推奨用量 KD-PEDFLU-1 0.0% 50.0% 100.0% 0.0%現行用量 0.1 mL 0歳児 田村ら[文献6] - 23.1% 38.5% 0.0%

    現行用量

    WHO推奨用量

    ワクチン2回接種後のHI抗体保有率[a][b]

    [a] 抗体価が 40 倍以上の被験者の割合 [b] KD-PEDFLU-1 試験では、新型 A(H1N1)HA 抗原に対する HI 抗体保有率は単独接種群と同時接種群を合わせた群の保

    有率、その他の HA 抗原に対する HI 抗体保有率は同時接種群の保有率

    [c] 1 歳児のデータ

    KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験におけるワクチン 2 回接種後の A(H1N1)HA 抗原

    及び A(H3N2)HA 抗原に対する HI 抗体保有率は、6 ヵ月以上 3 歳未満(0.25 mL/回接種)、3

    歳以上 13 歳未満(0.5 mL/回接種)のいずれでも 70%以上を示し良好な成績であった。B HA

    抗原に対する HI 抗体保有率は、表 2.5.4.7-1 に示すとおり、KD-PEDFLU-2 試験の 6 ヵ月以上 3

    歳未満で31.6%、3歳以上13歳未満で53.6%、KD-PEDFLU-1試験の6ヵ月以上3歳未満で35.0%、

    3 歳以上 13 歳未満で 60.0%であり、A(H1N1)HA 抗原及び A(H3N2)HA 抗原に対する HI 抗体保

    有率と比較して低い値であった。

    B HA 抗原に対する HI 抗体保有率は、公表されている結果[文献 10、11]でも低く、海外で

    も同様の報告がある[文献 19、20]。KD-PEDFLU-2 試験及び KD-PEDFLU-1 試験に限らず一般

    的に、インフルエンザ HA ワクチンの B HA 抗原に対する HI 抗体価は高くないものと考える。

    B 型の抗体価が A(H1N1)型及び A(H3N2)型に比べて低い傾向にある理由として、ウイルスそ

    のものの免疫原性が低い可能性も考えられるが、HI 試験における A 型インフルエンザウイルス

    と B 型インフ�