アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 第2部 CTDの概要...

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 第2部 CTDの概要 (サマリー) 2.4 非臨床試験の概括評価

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤)

第2部 CTDの概要 (サマリー)

2.4 非臨床試験の概括評価

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

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略語一覧

5-ALA 5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid)

5-ALA HCl 5-アミノレブリン酸塩酸塩(5-aminolevulinic acid hydrochloride)

5-ALAP 5-アミノレブリン酸リン酸塩(5-aminolevulinic acid phosphate)

ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ(GTP)

AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(GOT)

AUC0-24h 投与後 0~24時間の血漿(血液)中薬物濃度―時間曲線下面積

AUC0-∞ 投与後 0~無限大時間の血漿(血液)中薬物濃度―時間曲線下面積

Cmax 最高血漿及び血中濃度 14C-5-ALA HCl 14C 標識 5-アミノレブリン酸塩酸塩

CHL チャイニーズハムスター肺細胞

CL 血漿クリアランス

CO 一酸化炭素

CoA 補酵素 A(Coenzyme A)

GLP 医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令(Good

laboratory practice)

HPLC 高速液体クロマトグラフィー

LD50 50%致死量

LDH 乳酸脱水素酵素

PBG ポルホビリノーゲン

PPIX プロトポルフィリン IX

Tmax 最高血漿中薬物濃度到達時間

T1/2 薬物濃度消失半減期

URO ウロポルフィリノーゲン

UV 紫外線(Ultraviolet)

Vd 分布容積

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

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目次

2.4.1 非臨床試験計画概略.....................................................................................................3 2.4.2 薬理試験 .......................................................................................................................4

2.4.2.1 効力を裏付ける試験 ..............................................................................................4 2.4.2.2 副次的薬理試験......................................................................................................6 2.4.2.3 安全性薬理試験......................................................................................................6 2.4.2.4 薬力学的薬物相互作用試験 ...................................................................................6

2.4.3 薬物動態試験................................................................................................................6 2.4.3.1 吸収........................................................................................................................6 2.4.3.2 分布........................................................................................................................8 2.4.3.3 代謝......................................................................................................................10 2.4.3.4 排泄......................................................................................................................11 2.4.3.5 薬物相互作用 .......................................................................................................12

2.4.4 毒性試験 .....................................................................................................................12 2.4.4.1 単回投与毒性試験................................................................................................12 2.4.4.2 反復投与毒性試験................................................................................................12 2.4.4.3 遺伝毒性試験 .......................................................................................................13 2.4.4.4 がん原性試験 .......................................................................................................13 2.4.4.5 生殖発生毒性試験................................................................................................13 2.4.4.6 局所刺激性試験....................................................................................................14 2.4.4.7 その他の毒性試験................................................................................................14

2.4.5 考察及び結論..............................................................................................................14 2.4.6 参考文献 .....................................................................................................................20

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2.4.1 非臨床試験計画概略

アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid=5-ALA)は、各種の生物(植物、動物)に広く

存在しており、細胞内ミトコンドリアにおいてスクシニルCoAとグリシンを用いて生合成される

1-3)。図2.4-1に示したように、2分子の5-ALAがALA デヒドラターゼにより脱水縮合され、ポル

ホビリノーゲン(PBG)になる。その後、細胞質内で数段階の酵素反応でコプロポルフィリノー

ゲンⅢとなり、再びミトコンドリア内膜で蛍光物質であるプロトポルフィリンIX(PPIX)が合

成され、第一鉄イオンをキレートしてヘムになる。細胞や動物に対して、外因性に5-ALAを投与

しても同様の生成過程をたどると考えられる。PPIXは腫瘍細胞と上皮細胞に選択的に蓄積する。

蛍光診断原理はPPIXの前駆物質であるプロトポルフィリノーゲンIXは無色の物質であるが、

プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼの触媒作用でメチレン橋(-CH2-)がメチン橋(-CH=)

に酸化されると赤紫色を発生するPPIXとなり、400 nm付近の励起光の照射により、強い赤紫色

の蛍光(600 nm付近)を発する2)。この現象は腫瘍の外科的除去手術の際、悪性細胞を視覚化

できるため、腫瘍の正確な除去に役立つと考えられる。

薬理試験については、薬効を裏付ける試験はメダック株式会社の欧州承認申請に用いられた

資料、及び新たに検索して得られた公表論文から診断薬として適切な資料を選択して編集し、

安全性薬理試験はメダック社の欧州承認申請時の資料を用いてCTDとして編集した。

薬物動態試験については、メダック株式会社より提供を受けた欧州における申請資料、

が実施した薬物動態試験と、文献検索により収集した論文の中から試験方法、

使用された実験動物種などを考慮し選定したものを CTD 様式に編集した。

毒性試験については、5-ALAの安全性を評価するため、マウス及びラットを用いる単回投与毒

性試験、ラット及びイヌを用いる反復投与毒性試験、細菌、培養細胞及びマウスを用いる遺伝

毒性試験、ラット及びウサギを用いる生殖発生毒性試験、マウスを用いる光毒性試験を、いず

れもGLPに則って実施した。がん原性試験については本剤の臨床での使用が単回適用であること

から実施しなかった。

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Succinyl CoA + Glycine

↓ ALA synthase

5-ALA

↓ ALA dehydratase

Porphobilinogen(PBG)

↓ Porphobilinogen deaminase

UroporphyrinogenⅢ cosynthase

UroporphyrinogenⅢ

↓ Uroporphyrinogen decarboxylase

CoproporphyrinogenⅢ

↓ Coproporphyrinogen oxidase

Protoporphyrinogen IX

↓ Protoporphyrinogen oxidase

Protoporphyrin IX (PPIX)

↓ Ferrochelatase、Fe2+

Heme

図 2.4-1 PPIX、Hemeの生成経路

2.4.2 薬理試験

2.4.2.1 効力を裏付ける試験

(1) In vitro における 5-ALA の PPIX生成に対する作用

(添付資料 4.2.1.1-1 参)

5種類の悪性腫瘍細胞(NBT-Ⅱ:rat bladder carcinoma cell line、PAM :murine squamous cell

carcinoma、B16:murine melanoma cell line、A431:human epidermoid carcinoma及び EJ :

human transitional cell bladder carcinoma)及び2種類の正常細胞(FHs738BL:human fetal

normal bladder及びHSF:human skin fibroblast cell line)を用いて5-ALA添加時のPPIX生成

を討した。1 mM5-ALA添加1~4時間後では、A431細胞を除いたすべての腫瘍細胞においてPPIX

の顕著な増加が認められた。PPIXからヘムへの変換を阻害するdesferalを添加して、その24時

間後のPPIXの生成量を検討したところ、A431細胞を含めたすべての腫瘍細胞では30~140%の細

胞内の有意(p<0.05)な増加が認められた。一方、正常細胞では10~15%の増加に止まった。

(2) 担癌動物での 5-ALA 投与による光感受性物質の脳内分布

(添付資料 4.2.1.1-2 参)

担癌ウサギに 5-ALA 塩酸塩(5-ALA HCl)又は Photofrin®(ポルフィマーナトリウム:光線力

学的療法剤)を投与したときの光感受性物質の脳内分布では、5-ALA HCl(20及び 100 mg/kg)

静脈内投与により細胞内で生成した PPIX が白質、灰白質より腫瘍部で多く認められた。

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Photofrin®(2.5~10 mg/kg)の静脈内投与では腫瘍部と他の組織との間には差は少なかった。

(3) 担癌動物での 5-ALA 投与による脳腫瘍摘出率

(添付資料 4.2.1.1-3 参)

担癌ウサギに 20 mg/kg5-ALA HCl を静脈内投与したときの脳腫瘍摘出率は、白色光下のみで

の摘出率は 67.9%であったが、白色光下摘出後に蛍光下で腫瘍細胞を視覚化することで、さら

に 30.1%が摘出され、最終的に全腫瘍の 98%が除去できた。

(4) 光感受性物質に光照射したときの正常脳及び浮腫脳に与える影響

(添付資料 4.2.1.1-4 参)

5-ALA HCl(100 mg/kg)又は Photofrin®の静脈内投与後にレーザー照射した時のラット正常

脳に与える組織障害性において、5-ALAの投与による障害のさらなる進展は認められなかった。

レーザーと浮腫を重ねた細胞障害に対して、5-ALAの投与により約2倍の進展が認められたが、

レーザー照射のみによる細胞障害が、Photofrin®投与により約 4倍の深度にわたり進展が認め

られた。したがって、5-ALA HCl は Photofrin®に比べ組織障害性は低いと推察される。

(5) 作用機序

(添付資料 4.2.1.1-5~6 参)

5-ALAを用いた術中腫瘍蛍光診断、5-ALAを開頭腫瘍摘出に先立ち患者に経口投与すると、体

内に吸収された5-ALAが選択的に悪性神経膠腫に取り込まれ、ヘムの代謝系酵素によりPPIXが生

成され、これに半導体レーザー光を照射すると赤紫色の蛍光を発するのでこの原理を利用した

ものである。肉眼的に正常細胞と腫瘍細胞を識別できる。PPIXの前駆物質であるプロトポルフ

ィリノーゲンIXは無色の物質であるが、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼの触媒作用で

メチレン橋(-CH2-)がメチン橋(-CH=)に酸化されると赤紫色を発生するPPIXとなる。400 nm

付近の励起光の照射により、強い赤紫色の蛍光(600 nm付近)を発する。

PPIXの腫瘍細胞における蓄積の機序に関し、腫瘍細胞と正常細胞のPPIX生成酵素及び代謝酵

素の活性を比較検討した。悪性腫瘍と診断された乳がん患者の外科手術後の組織から腫瘍細胞

を、同じ患者の正常な乳房組織から細胞を摘出し、両細胞のALA デヒドラターゼ、PBGデアミナ

ーゼ及びウロポルフィリノーゲン(URO)デカルボキシラーゼ活性を測定した。その結果、ALA

デヒドラターゼ活性は腫瘍細胞の方が正常細胞より1.6倍から17.6倍、平均値で約2.5倍活性が

高かった。PBGデアミナーゼ(ポルホビリノゲナーゼ)活性については腫瘍細胞の方が正常細胞

より2.5倍から67倍、平均値で約8倍活性が高かった。UROデカルボキシラーゼ活性は腫瘍細胞の

方が正常細胞より2.2から32.5倍、平均値で3.5倍活性は高かった。以上の結果から、ヒト悪性

腫瘍細胞では正常細胞に比べ、PPIX産生酵素活性は高く、細胞内にPPIXが蓄積し易いと推察さ

れる。

次に、ラット正常肝細胞(JAR-2 系統)由来セルライン及びヘパトーマ細胞(吉田腹水肝癌)

由来セルラインよりそれぞれ 5種類のセルラインを用いて、PBGから URO に変換する PBGデア

ミナーゼ活性及び PPIX からヘムへの生成を触媒するフェロケラターゼ活性につき検討した。

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PBG デアミナーゼ活性は 5種類のへパトーマ由来細胞(JTC-1 、JTC-2、JTC-15、JTC-16 及び

JTC-27)では JTC-27 を除いて正常細胞(RL)よりも高い酵素活性を示した。しかし、RL由来

ではあるが、自然発症により形質転換した細胞(RCL-10 及び RCL-24)及び薬剤により形質転換

を誘導した細胞(M及び Culb-TC)の PBGデアミナーゼ活性は RCL-24 を除いて RLの PBG デアミ

ナーゼ活性とほとんど同程度の活性を示した。一方、フェロケラターゼ活性に関しては、5種

類のヘパトーマ細胞及び正常細胞由来ではあるが形質転換した 4種類の細胞でのフェロケラタ

ーゼ活性は RL のフェロケラターゼ活性よりも低かった。

以上の結果より、ラット肝細胞での 5-ALA から PPIXの生成に至る PBG デアミナーゼ活性は細

胞の種類や由来セルラインの違いにより、腫瘍細胞での一貫した活性増加は認められないもの

のヘパトーマ細胞では相対的に高い傾向が認められた。一方、PPIX からヘムを生成させるフェ

ロケラターゼ活性についてはヘパトーマ細胞及び形質転換誘導細胞では正常細胞に比べてフェ

ロケラターゼ活性は低いことから、結果的に腫瘍細胞では正常細胞に比べて細胞内の PPIX濃度

が高まると推察される。

2.4.2.2 副次的薬理試験

該当する試験を実施しなかった。

2.4.2.3 安全性薬理試験

(添付資料 4.2.1.3-1~5)

安全性薬理試験において、中枢系、呼吸・循環器系、尿排泄及び尿中電解質排泄に対して 5-ALA

は変化を与えず、平滑筋収縮に対して単独では作用せず、収縮物質による収縮に対しては、5000

μg/mL の高用量で抑制作用を示したが、特異性がなく作用は弱いものと考えられた。

2.4.2.4 薬力学的薬物相互作用試験

該当する試験を実施しなかった。

2.4.3 薬物動態試験

2.4.3.1 吸収

(1) 単回投与

(添付資料 4.2.2.2-1~2、4.2.2.2-5)

雌雄ラットに 5-ALA HCl 30 mg/kg 及び 300 mg/kg を経口投与したときの血漿中 5-ALA 濃度を

測定した。30 mg/kg 及び 300 mg/kg のいずれの投与量においても、投与後 20 分(最初の測定

時間)に最高血漿中 5-ALA 濃度(Cmax)を示し、その濃度は、それぞれ、雄ラットでは 7.1 μ

g/mL 及び 69.8 μg/mL、雌ラットでは 13.7 μg/mL 及び 68.6 μg/mL であった。血漿中 5-ALA

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濃度は、投与後 24 時間には、いずれの投与量においても定量下限以下まで減少し、30 mg/kg

及び 300 mg/kg 投与時の血漿中 5-ALA の消失半減期(T1/2)は、それぞれ、雄ラットでは 70.8

及び 108.5 分、雌ラットでは 63.3 分及び 143.4 分であった。5-ALA HCl の経口吸収は速やかで、

30~300 mg/kg の投与量範囲では、血漿中 5-ALA 濃度は、ほぼ投与量比で増加し、雌雄ラット

における 5-ALA の薬物動態は類似するものと推察された。また、雌雄ラットに 5-ALA リン酸塩

(5-ALAP)15~250 mg/kg(5-ALA 換算:8.6~142.3 mg/kg、5-ALA HCl 換算:11.0~182.9 mg/kg

に相当)を単回経口投与したとき、いずれの投与量においても投与後 0.5時間(最初の測定時

間)が最高濃度であり、5-ALAの経口吸収は速やかであると推察された。血漿中 5-ALA 濃度は、

投与後 24 時間では内因性の 5-ALA とほぼ同レベル(0.0109~0.0226 μg/mL)まで低下した。

Cmax及び AUC0-24hは、投与量の増加とともに、ほぼ投与量比で増加した。これらの結果は、5-ALA

HCl と 5-ALAP の薬物動態に差異がないことを示唆した。

イヌに 5-ALA HCl 20 mg/kg を静脈内投与及び経口投与したときの血漿中 5-ALA 濃度及び主要

代謝物である PPIX 濃度を測定した。静脈内投与後の血漿中 5-ALA 濃度は、投与後 0.058 時間に

Cmax(平均)40.9 μg/mL を示し、T1/2、AUC0-∞、血漿クリアランス(CL)及び分布容積(Vd)は、

それぞれ 0.652 時間、25.9 μg・h/mL、0.799 L/kg・h 及び 0.751 L/kg であった。経口投与後

の血漿中 5-ALA 濃度は、投与後 0.625 時間(Tmax)に Cmax(平均)14.72 μg/mL を示し、T1/2、

AUC0-∞、CL 及び Vdは、それぞれ 0.623 時間、22.3 μg・h/mL、0.940 L/kg・h及び 0.826 L/kg

であった。5-ALA HCl 経口投与後の生物学的利用率は平均 86%であり、5-ALA の経口吸収は速

やかで、良好であることが示された。

血漿中 PPIX濃度は、多くの測定試料において定量限界の 0.005 μg/mL以下であり、測定さ

れた最高濃度は、静脈内投与で 0.035 μg/L、経口投与で 0.033 μg/mLであった。

(2) 反復投与

(添付資料4.2.2.2-1、4.2.2.2-3~4、4.2.2.2-6)

ラットに5-ALA HCl 30及び300 mg/kgを14日間反復経口投与したときの血漿中5-ALA濃度は、

いずれの投与量においても、単回投与時と同様に、投与後20分(最初の測定時間)が最高濃度

であった。その後の消失は、単回投与時と同様に速やかで[T1/2:1.06~2.39時間(単回投与)

及び0.72~1.47時間(反復投与)]、投与後24時間には、定量限界以下まで減少した。また、ラ

ットに5-ALAP 60及び250 mg/kgを28日間反復経口投与したときの血漿中5-ALA濃度も、単回投与

した時と同様に、いずれの投与量においても最初の測定時点である投与後0.5時間がCmaxであり、

また、Cmax及びAUC0-24hは単回投与時の値と大きな差異はなかった。さらに、ラットに5-ALA HCl 125

及び500 mg/kgを14日間反復静脈内投与したときの血漿中5-ALA濃度は、単回投与時と同様に、

投与後速やかに減少した[T1/2:0.59~0.76時間(単回)及び0.63~0.68時間(反復)]。以上の

結果から、検討した投与経路、投与量及び投与回数では、5-ALAの薬物動態は、5-ALA HCl及び

5-ALAPの反復投与によっても、大きく変動しないものと考えられた。

また、雌雄ラットに5-ALA HCl 125又は500 mg/kgを1日1回14日間反復静脈内投与したときの

血漿中PPIX濃度は、125 mg/kgでは 投与後2時間に、500 mg/kgでは投与後2~8時間にそれぞれ

最高濃度平均100.8 μg/L及び145.8 μg/Lを示し、その後消失半減期1.84~3.18時間で減少し

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

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た。血漿中PPIX濃度には、単回及び反復投与間で、また雌雄間でも大きな差異はなく、主要代

謝物であるPPIXの蓄積性は少ないものと推察された。

雌雄のイヌに 5-ALA HCl 1、3 及び 10 mg/kg を 28 日間反復経口投与(1日 1回)したときの

血漿中5-ALA濃度のCmax及びAUC0-24hは、ほぼ投与量比で増加し、雌雄イヌ間において近似した。

また、Tmax は、大部分のイヌで 0.5 時間であった。これらのことから、イヌにおいても 5-ALA

の薬物動態は、反復投与によって大きく変動しないものと推察された。

(3) In vitro

(添付資料 4.2.2.2-7~8 参)

5-ALA HCl(0.8~4.0 mM)をラット大脳皮質パーティクルとインキュベートしたとき、脳細

胞中に高濃度(21.04±1.05 nmol/mg たん白質)で取り込まれることが示された。

14C-5-ALA HCl(0.1 mM又は0.6 mM)をマウス乳腺腺癌細胞(LM3細胞系)とインキュベート

したとき、5-ALAの細胞への取り込み速度は、0.6 mM 5-ALA HCl(2.26 pmol 105細胞-1・分)の

方が、0.1 mM 5-ALA HCl(0.35 pmol 105細胞-1・分)よりも速かった。0.1 mM 5-ALAでは、60

分間インキュベーション後に、取り込まれた5-ALAの15%以下が、また、0.6 mM 5-ALAでは40%

が、それぞれポルフィリンに変換された。

2.4.3.2 分布

(1) 正常動物における分布

(添付資料4.2.2.3-1~2参)

雄ラットに5-ALA 200 mg/kgを経口投与又は静脈内投与し、5-ALA及びポルフィリンの組織内

分布について検討した。最高5-ALA濃度は、胃(p=0.004)、十二指腸吸引物(p=0.007)、空腸

(p<0.001)及び腎臓(p=0.02)においては有意に、また、肝臓及び血漿においては傾向的に、

静脈内投与よりも経口投与で高値であった。食道、結腸、脾臓、膀胱、心臓、肺、筋肉、脂肪、

脳及び神経中の5-ALA濃度は両投与経路で同程度であった。組織中の5-ALA濃度は、静脈内投与

後3~6時間では検出下限以下まで急速に減少し、経口投与ではやや遅れた。脳中5-ALA濃度は、

投与後、わずかに上昇した。血漿中5-ALA濃度は、投与後1時間で、既に、静脈内投与よりも経

口投与で高値を示した(p<0.001)。両投与経路における血漿中5-ALA濃度は、半減期約50分(0.83

時間)で急激に減少した。5-ALAを経口投与及び静脈内投与したときの、すべての組織における

ポルフィリンの最高濃度は、両投与で類似した(p>0.05)。組織中総ポルフィリン量は、十二指

腸吸引物で最も高く(100 nmol/g組織以上)、次いで空腸、肝臓及び腎臓(10 nmol/g組織以上)、

結腸、胃、心臓、肺、食道、脾臓、膀胱、神経(2~10 nmol/g組織)、血漿、筋肉、脂肪、皮膚

及び脳(2 nmol/g組織以下)の順であった。腎臓を除いたすべての組織におけるポルフィリン

濃度は、5-ALA投与後急速に上昇し、最高濃度は、経口投与では、投与後2~4時間、静脈内投与

では、1~3時間に到達した。5-ALA投与後12時間で、腎臓を除いたすべての組織及び血漿中ポル

フィリン濃度は、バックグランドレベルに低下した。腎臓中総ポルフィリン濃度は、投与後24

時間においても上昇した。血漿中ポルフィリン濃度は、静脈内投与では2時間及び経口投与では

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

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3時間後に、それぞれ最高値を示した。

経口及び静脈内投与後の5-ALAの体内分布の差異の有無を明確にするため、組織中の5-ALA、

PPIX(8 分子の 5-ALA 分子で形成)及びポルホビリノーゲン(2 分子の 5-ALA 分子で形成)を

測定し、各組織中総 5-ALA 量の全組織中総 5-ALA 量に対する割合を求めた。経口投与時の経路

にあたる小腸と肝臓を除く組織中総 5-ALA 量の分布パターンは、経口投与時と静脈内投与時で

よく一致し、5-ALA投与後の分布には、両投与経路で差異がないことが示唆された。

経口投与時の血漿及び脳内5-ALA濃度は、いずれも投与後1時間で最高値に達し、その濃度は、

約316 nmol/g及び約9 nmol/gであり、脳/血漿比は0.03であった。血漿及び脳内PPIX濃度は、い

ずれも投与後3時間に最高値約1.2及び0.6 nmol/gを示し、脳/血漿比は0.50であった。これらの

脳/血漿比の差は、5-ALAの標的臓器である脳への蓄積に関して、蛍光成分であるPPIXが5-ALA

のそれより約16.7倍高いことを示しており、効果発現との関連が示唆された。

雄イヌに5-ALA HCl 100 mg/kgを単回静脈内投与し、組織、血漿及び尿中ポルフィリン濃度及

びポルフィリン化合物を測定した。血漿中ポルフィリン濃度は、投与後1時間まで急速に増加し、

その後、徐々に減少したが、投与後8時間においても、まだ、高濃度のポルフィリンが検出され

た。最高血漿中ポルフィリン濃度は、バックグランドレベルの約50倍(60~70 μg/dL血漿)を

示した。投与後2時間の血漿中ポルフィリン化合物は、コプロポルフィリン及びPPIXであった。

組織中ポルフィリン濃度は、投与後6~10時間までゆっくりと増加し、肝臓で最も高値を示し

た。肝臓中ポルフィリン化合物は、主としてPPIXであった。皮膚へのポルフィリンの分布はわ

ずかであった。肝臓、膵臓、前立腺、膀胱及び筋肉中ポルフィリン濃度は、投与後1~4時間に

かけて有意に増加した(16、17、7、3及び4倍、p=0.02~0.04)。

(2) 担癌モデル動物における分布

(添付資料4.2.2.3-3~8参)

種々の担癌モデル動物において、5-ALA投与後、ポルフィリン又はPPIXは、腫瘍組織に分布及

び集積することが示された。紫外線下、腫瘍組織中ポルフィリン又はPPIXの蛍光強度は、周辺

正常組織に比べて高く、正常組織との間で明瞭なコントラストが観察された。また、in vitro

でC6グリオーマ細胞を5-ALAとインキュベートしたとき、C6グリオーマ細胞中にPPIXが集積した。

ヒト結腸の管状乳頭腺癌(grade Ⅱ、UICC Staging Ⅱa)を側腹部に移植した担癌モデルマ

ウスに、5-ALA HCl 50 mg/kgを静脈内投与し、臓器中ポルフィリン濃度を、蛍光スペクトルの

強度により測定した。すべての組織にポルフィリンの蛍光が認められ、最も強い蛍光は、投与

後6時間の腫瘍において認められた。

マウス乳腺腺癌M2を皮下に移植した担癌モデルマウスに、5-ALA HCL 2.5~10 mgを腹腔内投

与し、組織中ポルフィリン濃度を蛍光分光計で測定した。腹腔内投与後3時間では、腫瘍組織中

ポルフィリン濃度は、7.5 mg以上の投与において5.23±0.62 μg/g 組織のほぼ一定値を示した。

5 mg腹腔内投与後の組織内ポルフィリン濃度は、腫瘍、腫瘍をおおう皮膚及び脳では、投与後3

~5時間に、また、正常皮膚、肝臓及び腎臓では、投与後3時間に最高値を示した。

乳腺腺癌(R3230AC)を腹部に移植した担癌モデルラットに、5-ALA 又は14C-5-ALA 40~600

mg/kg又は300 mg/kgを静脈内投与し、組織内ポルフィリン濃度及び組織内放射能濃度を測定し

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

10

た。投与後3時間における腫瘍中ポルフィリン濃度は、300 mg/kgの投与量まで用量依存的に増

加した。5-ALA投与後3時間では、腫瘍中ポルフィリン濃度が最も高値を示し、腫瘍へのポルフ

ィリンの集積が示唆された。次いで腸管、肝臓、動脈、食道の順で高かったが、皮膚、筋肉及

び血清中のポルフィリン濃度は腫瘍中濃度の10%以下であった。腫瘍中のポルフィリンは、主

にPPIXであった。肝臓では、検出されたポルフィリンの18%がPPIXであり、また筋肉では、PPIX

は検出されなかった。14C-5-ALA 300 mg/kgを静脈内投与したときの組織内放射能分布は、組織

中ポルフィリンとは異なる分布傾向を示し、投与後3時間の放射能濃度は、肝臓で、腫瘍中放

射能より数倍高い値を示した。

C6グリオーマ細胞を右前頭葉に移植後14日目のラットに、14C-5-ALA 120 mg/kgを静脈内投与

し、放射能の脳内分布について検討した。放射能は、投与後5分の腫瘍中にすでに認められ、投

与後15分で、高い腫瘍対脳比を示し、投与後60分で最も高かった(5:1)。

C6グリオーマ細胞を5-ALAに暴露したときのポルフィリンの生成についてin vitro及びin

vivoで検討した。C6グリオーマ細胞を5-ALAとインキュベートしたとき、C6グリオーマ細胞中に

PPIXが集積した。C6グリオーマ細胞中PPIXは、インキュベート開始後85分までは直線的に増加

した(r=0.999)。また、C6グリオーマ細胞を脳に移植後9日のラットに、5-ALA 100 mg/kgを静

脈内投与したとき、腫瘍中に、PPIXの顕著な蛍光が観察された。蛍光強度の腫瘍対正常脳比は

高く、紫外線下に、腫瘍組織を視覚認識できる明確なコントラストが得られた。

VX2腫瘍を脳に移植した担癌モデルウサギ及び正常ウサギに、5-ALA HCl 100 mg/kgを静脈内

投与し、腫瘍及び脳におけるPPIXの生成及び分布について共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡を用

いて検討した。5-ALAは、血液―脳関門を通過し、視床下部を除く脳部位においてPPIXに代謝さ

れた。また、PPIXは、腫瘍組織に正常脳組織に比べてより多く集積した。

(3)胎児移行、乳汁移行、たん白結合

(添付資料4.2.2.3-9参、4.2.2.3-10)

5-ALAは、動物において胎児毒性が報告されており、5-ALAの胎児への移行は明らかであり、

また5-ALAは中性アミノ酸類縁化合物であることから、5-ALAの乳汁移行性はアミノ酸のそれに

準ずると考えられた。

ヒト血漿と5-ALAの結合を限外ろ過法で検討したときの、5-ALAの平均たん白結合率は、5-ALA

濃度500~5000 μg/Lの範囲において12%であった。

2.4.3.3 代謝

(添付資料 4.2.2.4-1~7参)

イヌに、5-ALA HCl 100 mg/kgを静脈内投与し、血漿、肝臓及び尿中代謝物をHPLCによって検

討した。血漿中には、コプロポルフィリンⅢ及びPPIXが、肝臓中には、主にPPIXがそれぞれ同

定された。また、尿中にはコプロポルフィリンⅢが最も多いポルフィリンとして認められた。

ラットに、5-ALA HCl 30及び300 mg/kgを経口投与で、125及び500 mg/kgを静脈内投与で、単

回及び14日間反復投与したとき、血漿中にPPIXが検出された。

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

11

ラットに、5-ALAP 15、60及び250 mg/kgを91日間反復経口投与したとき、血漿中にウロポル

フィリンI、ウロポルフィリンⅢ、ペンタカルボキシ、ペンタカルボキシポルフィリン、ヘプタ

カルボキシポルフィリン、コプロポルフィリンI及びコプロポルフィリンⅢが検出され、これら

はほぼ投与量の増加とともに増大し、投与終了後0.5~4時間にCmaxを示した。

14C-5-ALA HCl及び5-ALA HClをマウス乳腺腺癌細胞とインキュベートし、生成した代謝物(ポ

ルフィリン化合物)を測定した。0.1~0.6 mMの5-ALAを用いたとき、5-ALAの15~40%がポルフ

ィリン化合物に代謝された。

14C-5-ALA HCl(0.5 μCi/mL)をラット肝ミトコンドリアとインキュベートしたとき、約0.2%

が14C-CO2に代謝され、Krebs cycleによる5-ALAの脱炭酸代謝は、マイナー代謝経路と考えられ

た。

S-字結腸の腺癌細胞(WiDr株細胞)を2 mMの5-ALAとインキュベートしたとき、細胞内に集積

したポルフィリン化合物の91%がPPIXであった。また、細胞中にコプロポルフィリン (3.8%)、

ヘキサカルボキシルポルフィリン(0.2%)、ヘプタカルボキシルポルフィリン(3.7%)、及びウ

ロポルフィリン(1.5%)が検出された。

内因性の 5-ALA は、細胞質又はミトコンドリアにおいて、ALA 脱水酵素、ポルホビリノーゲ

ン脱アミノ酵素、ウロポルフォビリノーゲン(URO)Ⅲシンターゼ、URO デカルボキシラーゼ、

コプロフォビリノーゲンオキシダーゼ及びプロトポリフォビリノーゲンオキシダーゼが関与し

て PPIX に変換される。生成した PPIX はフェロケラターゼによって二価鉄が挿入されてヘムに

変換される。投与した 5-ALA も、これらのポルフィリンを経由してヘム合成に関わるものと推

察される。

2.4.3.4 排泄

(添付資料 4.2.2.5-1~2 参、4.2.2.5-3)

ラットに、5-ALA 200 mg/kgを経口又は静脈内単回投与したとき、両投与群において、投与後

1時間の尿中に、5-ALAが検出された。なお、5-ALA非投与のラット尿中5-ALA及び総ポルフィリ

ン濃度を、投与群と同様に測定し、バックグランド値とした。尿中最高5-ALA濃度は、投与後2

時間に認められ、投与後4時間の尿中には少量の5-ALAのみが検出された。バックグランド値以

上の総ポルフィリン濃度が、投与後4時間の尿で認められた。投与後24時間には、尿中ポルフィ

リン濃度は、バックグランド値を示した。また、ラットに、5-ALA HCl 30、100及び300 mg/kg

を13日間経口投与し、最終投与後の尿中5-ALA濃度を測定した。5-ALAの尿中濃度は、投与量に

依存して増加した。100 mg/kg及び300 mg/kg投与群の5-ALA濃度は、バックグランド値に比べて

著しく高値であった。

イヌに、5-ALA HCl 100 mg/kgを単回静脈内投与し、尿中5-ALA、総ポルフィリン及びポルフ

ィリン化合物濃度を測定した。尿中への5-ALAの排泄は、投与後速やかに増加し、投与後2~4

時間で最も高かった。尿中ポルホビリノーゲンはゆっくりと増加し、投与後4~8時間で最高値

に達した。尿中総ポルフィリンは、投与後に増加し、投与後4~8時間で最高値に達した。尿中

の主要ポルフィリン化合物はコプロポルフィリンⅢであった。ただし、相対的には、尿中ヘプ

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

12

タカルボキシルポルフィリン、ヘキサカルボキルポルフィリン及びペンタカルボキシルポルフ

ィリンの増加が認められた。

2.4.3.5 薬物相互作用

(添付資料 4.2.2.6-1、4.2.2.6-2 参)

5-ALAのヒト血漿たん白質との平均結合率は、5-ALA濃度500~5000 μg/Lの範囲において12%

と低値であり、たん白結合を介した5-ALAと他薬物との薬物相互作用はないと推察された。

5-ALAは細胞質及びミトコンドリアにおけるヘム生合成酵素によりポルフィリン及びヘムに代

謝されると考えられた。また5-ALAの代謝へのP450の関与は報告されていないため、薬物代謝酵

素を介した他薬物との薬物相互作用はないと推察された。

2.4.4 毒性試験

2.4.4.1 単回投与毒性試験

(添付資料 4.2.3.1-1~3)

5-ALA HClの単回投与毒性試験はマウス(250、500、1000mg/kgの静脈内投与)及びラット(625、

1250、2500の経口投与及び 125、250、500、1000 の静脈内投与)を用いて検討した。

マウス及びラットの静脈内投与で 500 mg/kg 以上の高用量において投与直後の中等度の運動

失調、呼吸困難、重度の筋緊張低下などが認められた以外に、特記すべき異常はみられなかっ

た。静脈内投与による LD50はマウス及びラットとも 1000 mg/kg 付近、また経口投与による LD50

はラットで 2500 mg/kg 以上であった。

2.4.4.2 反復投与毒性試験

(添付資料 4.2.3.2-2~3 、4.2.3.2-5)

5-ALA Pを用いた反復投与毒性では、ラット4週間経口投与(0、44、183、366、731 mg/kg/day、

塩酸塩換算)において366 mg/kg/day以上で耳又は尾の潮紅、表皮の剥離がみられ、これらの症

状はPPIXの光毒性による影響と考えられた。また、尿素窒素の高値が認められた。183 mg/kg/day

以上では貧血のほか、AST、ALT、LDH、総コレステロール等の肝臓障害マーカーの高値、肝臓及

び腎臓重量の高値がみられた。病理組織学的所見として肝臓の巣状又は単細胞壊死、胆管増生、

近位尿細管上皮の空胞化などが認められ、本薬の標的器官は主に肝臓及び腎臓であると考えら

れた。無毒性量は44 mg/kg/dayであった。また、ラット13週間経口投与(0、11、44、183 mg/kg/day、

塩酸塩換算)においても、4週間経口投与とほぼ同様な変化が観察され、特に貧血傾向、肝細胞

の壊死及び胆管増生が44 mg/kg/day以上で認められ、無毒性量は11 mg/kg/dayであった。一方、

5-ALA HClを用いたイヌ4週間経口投与(0、1、3、10 mg/kg/day)においては、投与後に嘔吐が

見られ、10 mg/kg/dayでAST及びALTの軽度な上昇、毛細胆管、クッパー細胞及び肝細胞に黄褐

色色素の沈着が認められた。これらの所見は休薬4週間で回復傾向が認められ、本薬の肝臓に対

する影響は可逆的なものと考えられた。無毒性量は3 mg/kg/dayであった。

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

13

2.4.4.3 遺伝毒性試験

(添付資料 4.2.3.3.1-1~4、4.2.3.3.2-1)

遺伝毒性については、5-ALA HClを用いた遮光条件下で実施した復帰突然変異試験、遺伝子突

然変異試験、ヒトリンパ球細胞を用いる染色体異常試験及びマウス小核試験では、いずれも遺

伝毒性は認められなかった。しかし、5-ALAPを用いた非遮光条件下で実施したCHL細胞を用いる

染色体異常試験においては、S9非存在下の連続処理で染色体異常を有する細胞が増加する傾向

が認められた。また、5-ALAを処理した細胞にUV又は可視光を照射すると、DNAの酸化的損傷が

認められ、その原因としてポルフィンが関与していることが報告されている。

2.4.4.4 がん原性試験

本剤は、臨床での使用が単回であること、遮光 条件下では遺伝毒性がないこと及び患者の遮

光管理を行うことから、臨床使用における発がんの可能性は低いと判断し、がん原性試験は実

施しなかった。

2.4.4.5 生殖発生毒性試験

(添付資料 4.2.3.5.1-1、4.2.3.5.2-1、4.2.3.5.2-3、4.2.3.5.3-1)

生殖発生毒性については、ラット受胎能及び着床までの初期胚の発生に関する試験において、

5-ALAP 132 mg/kg/day(塩酸塩換算)以上の親動物で体重増加の抑制、腎の暗褐色化、赤褐色

尿がみられ、366 mg/kg/dayでは雄の交尾率の低下、肝の暗褐色化及び雌雄での摂餌量の低値が

みられた。親動物の一般毒性に対する無毒性量は雌雄とも44 mg/kg/day、雄の生殖機能に対す

る無毒性量は132 mg/kg/day、雌の生殖機能及び初期胚発生に対する無毒性量は366 mg/kg/day

であった。ラット出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験において、5-ALAP 132

mg/kg/day(塩酸塩換算)以上の母動物で腎の暗褐色化及び赤褐色尿がみられ、366 mg/kg/day

の母動物で体重増加の抑制及び摂餌量の低値が、出生児では体重及び4日生存率の低値がみられ

た。母動物の一般毒性に対する無毒性量は44 mg/kg/day、生殖機能及び次世代に対する無毒性

量はいずれも132 mg/kg/dayであった。ラット胚・胎児発生に関する試験において、366 mg/kg/day

の母動物で体重増加の抑制、摂餌量の低値、腎の暗褐色化及び赤褐色尿がみられ、胎児では体

重の低値及び仙・尾椎の骨化遅延がみられた。母動物の一般毒性に対する無毒性量は132

mg/kg/day、生殖機能に対する無毒性量は366 mg/kg/day、胚・胎児に対する無毒性量は132

mg/kg/dayであった。ウサギ胚・胎児発生に関する試験において、5-ALA HCl 150 mg/kg/dayの

母動物で体重増加抑制及び摂餌量の低値がみられたが、胎児への影響は認められなかった。母

動物の一般毒性に対する無毒性量は50 mg/kg/day、生殖機能及び胚・胎児に対する無毒性量は

いずれも150 mg/kg/dayであった。

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

14

2.4.4.6 局所刺激性試験

本剤の臨床適用経路は経口であり、反復経口投与毒性試験の投与時における舌、胃、消化器

などへの局所刺激性は確認されなかったことから、局所刺激性試験は実施しなかった。

2.4.4.7 その他の毒性試験

2.4.4.7.1 マウス静脈内投与による光毒性試験

(添付資料:4.2.3.7-1)

4週齢のNMRI系マウス(雌各5匹/群)に、5-ALA HClの0(生理食塩液)、250、750 mg/kgを単回

静脈内投与し、投与後4及び24時間にそれぞれ紫外線(UV)を1時間照射した。照射後24、48及び

72時間に皮膚の肉眼検査を、試験終了時に眼及び皮膚の病理組織学的検査を実施した。

その結果、死亡が、250 mg/kgの投与後4時間時のUV照射で2例(照射後48及び72時間に各1例)、

750 mg/kgの投与後4時間時のUV照射で5例(照射後24時間)にみられた。

皮膚の肉眼検査では、250 mg/kgの投与後4時間時のUV照射で全例に軽度の浮腫がみられたが、

投与後24時間時のUV照射では異常はなかった。750 mg/kgの投与後4時間時のUV照射では途中死

亡のため観察できなかったが、投与後24時間時のUV照射では5例全例に極軽度から軽度の紅斑が

観察された。

試験終了時の眼及び皮膚の病理組織学的所見として、250 mg/kgの投与後4時間時のUV照射で

皮膚(肩部)の炎症反応及び眼瞼の皮膚炎、潰瘍形成及び上皮壊死が数例に認められたが、投与

後24時間時のUV照射では出血以外の異常はなかった。750 mg/kgの投与後4時間時のUV照射では

皮膚炎及び上皮壊死がそれぞれ1例みられたのみであったが、投与後24時間時のUV照射では皮膚

(肩部)の炎症反応、潰瘍形成、上皮壊死及び出血が数例に認められた。なお、投与後4時間の

所見は全例、途中死亡した標本によるものであり、他の用量及び照射時間と同列に比較できな

かった。

以上、5-ALA HClの静脈内投与後のUV照射において、投与後24時間に比べ投与後4時間では光

毒性による反応(死亡、皮膚の紅斑及び炎症反応)が強く発現し、時間依存性が示された。これ

らの反応はPPIXの産生動態と関連していると思われる。

2.4.5 考察及び結論

5-ALA(分子量131.13)は、各種の生物に広く存在している生体内物質である。細胞内で数段

階の酵素反応を経てヘモグロビン、シトクローム、薬物代謝酵素P450などの補欠分子族である

ヘムに生合成されるが、途中の段階で蛍光物質のPPIXを生成する。PPIXは400 nm付近の励起光

の照射により、強い赤紫色の蛍光(600 nm付近)を発する。5-ALAを生体外から投与すると、腫

瘍細胞と上皮細胞にPPIXが選択的に蓄積される。In vitro において、PPIXは各種腫瘍細胞に選

択的に蓄積されることを示した。In vivo でも腫瘍細胞に選択的に蓄積されることを示した。

この理由としては悪性腫瘍細胞では正常細胞に比べてPPIX生成までの酵素(PBGデアミナーゼ)

活性が高く、逆にPPIXからヘムを触媒する酵素(フェロケラターゼ)活性が低いため、結果とし

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

15

て腫瘍細胞にPPIXが多く蓄積すると考えられる。従って、5-ALAを用いた術中腫瘍蛍光診断法は

正常細胞と腫瘍細胞との識別が可能となると考えられた。悪性腫瘍に罹患した患者に対して、

外科的に腫瘍摘出術を施行する時、あらかじめ5-ALAを投与しておき、細胞内で生成され蓄積し

たPPIXに励起光を照射することにより腫瘍細胞の視覚化が可能になる。ウサギ脳腫瘍モデルを

用いた試験で、白色光下では腫瘍細胞の67.9%が除去されたが、励起光下で腫瘍細胞を視覚化

することにより、さらに30.1%の腫瘍細胞が除去され、最終的に全腫瘍細胞の98%が除去可能

であった。このことから、脳腫瘍摘出術の際、腫瘍細胞の可能な限りの摘出と、正常細胞に対

する誤摘出の予防が可能になると考えられた。正常動物の脳を用いた試験であるが、レーザー

による細胞障害に対して、5-ALAの投与による障害のさらなる進展は認められなかった。レーザ

ーと浮腫を重ねた細胞障害に対して、5-ALAの投与により約2倍の深度にわたる進展が認められ

た。一方、レーザー照射のみによる細胞障害が、臨床において使用されている光線力学的療法

剤のPhotofrin®投与により約4倍の深度にわたり進展が認められた。したがって、5-ALA投与で

はレーザー照射時の組織学的な損傷は少ないかもしれない。

5-ALAは、生体内にある化合物であり、そのものの副作用や毒性は低いものと推察される。事

実、安全性薬理試験において5-ALAは中枢系、呼吸・循環器系、尿排泄及び尿中電解質に対して

影響を与えなかった。平滑筋収縮に対して5-ALA単独では影響せず、収縮物質による収縮に対し

ては、5000 μg/mLの高用量で抑制作用を示したが、特異性が認められず、その作用は弱いもの

と考えられた。さらに、5-ALA投与により組織に蓄積されたPPIXの半減期は短く、腫瘍摘出術後、

速やかに消失すると考えられた。このことは、光感受性物質であるPhotofrin®(半減期250時間)、

Laserphyrin®(タラポルフィンナトリウム、半減期138時間)に比べて半減期が短く、これら2

剤を使用した場合に発現する術後の光線過敏症の副作用を回避できるものと考えられた。

以上のことから、5-ALAは生体内物質であり、副作用・毒性も低く、腫瘍摘出術の前に服用す

ることにより、悪性腫瘍細胞と正常細胞の識別を可能にし、的確な腫瘍摘出を導くことができ

る化合物であると考えられた。

薬物動態試験において、ラットに 5-ALA 200 mg/kg を単回経口又は静脈内投与したとき、経

口投与時の血漿中 5-ALA 濃度は、最初の測定時点である投与後 1時間においてすでに最高濃度

を示し、その濃度及び推移(T1/2:約 0.83 時間)は、静脈内投与時(T1/2:約 0.83 時間)と類

似したことから、5-ALA の経口吸収は速やかで、かつ良好であると考えられた。また、血漿中

ポルフィリン濃度は、経口及び静脈内投与で類似した。これらのことから、5-ALA の薬物動態

は投与経路によって変動しないものと推察された。また、イヌに 5-ALA HCl を 20 mg/kg 単回経

口及び静脈内投与したときの薬物動態パラメーターは、両投与経路で近似し、また生物学的利

用率が 86%と高値であったことから、イヌにおいても、ラットと同様に、5-ALA は速やかに、

かつ良好に経口吸収され、その薬物動態は投与経路によって変動しないものと推察された。

ラットに 5-ALA HCl(30 及び 300 mg/kg)を 14 日間反復経口投与した時の血漿中 5-ALA 濃度

は、いずれの投与量においても、単回投与時と同様に、投与後 20 分(最初の測定時間)が最

高濃度であった。その後の消失は、単回投与時と同様に速やかであり[T1/2:1.06~2.39 時間(単

回投与)及び 0.72~1.47 時間(反復投与)]、投与後 24 時間には、定量限界以下まで減少し

た。また、5-ALA HCl を 125 及び 500 mg/kg 14 日間反復静脈内投与したときの血漿中 5-ALA 濃

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

16

度は、単回投与時と同様に、投与後速やかに減少した[T1/2:0.59~0.76 時間(単回投与)及び

0.63~0.68時間(反復投与)]。さらに、雌雄のイヌに 5-ALA HCl の 1、3 及び 10 mg/kg を 28

日間反復経口投与したときの血漿中 5-ALA 濃度の Cmax及び AUC0-24hは、ほぼ投与量比で増加し、

雌雄イヌ間において近似し、Tmax は、大部分のイヌで単回投与時と同様にいずれも 0.5 時間で

あった。以上より、5-ALA の薬物動態は、ラット及びイヌのいずれにおいても、反復投与によ

って大きく変動しないものと推察された。

また、雌雄ラットに 5-ALA HCl 125 又は 500 mg/kg を 14 日間反復静脈内投与したときの血漿

中 PPIX 濃度は、単回及び反復投与間で、また雌雄間でも大きな差異はなく、主要代謝物である

PPIX の蓄積性は低いものと推察された。

ラットに 5-ALA 200 mg/kg を単回経口又は静脈内投与したとき、組織中最高 5-ALA 濃度は、

胃、十二指腸吸引物、空腸及び腎臓において静脈内投与よりも経口投与で高値を示したが、そ

の他の組織中 5-ALA濃度は、両投与経路で同程度であった。一方、組織中ポルフィリン濃度は、

経口及び静脈内投与で類似した。経口及び静脈内投与後の 5-ALA の体内分布の差異の有無を明

確にするため、組織中の 5-ALA、PPIX(8 分子の 5-ALA 分子で形成)及びポルホビリノーゲン

(2 分子の 5-ALA 分子で形成)を測定し、各組織中総 5-ALA 量の全組織中総 5-ALA 量に対する

割合を求めた。経口投与時の経路にあたる小腸と肝臓を除く組織中総 5-ALA 量の分布パターン

は、経口投与時と静脈内投与時でよく一致し、5-ALA 投与後の分布には、両投与経路で差異が

ないことが示唆された。

経口投与時の血漿及び脳内5-ALA濃度は、いずれも投与後1時間で最高値に達し、その濃度は、

約316 nmol/g及び約9 nmol/gであり、脳/血漿比は0.03であった。血漿及び脳内PPIX濃度は、い

ずれも投与後3時間に最高値約1.2及び0.6 nmol/gを示し、脳/血漿比は0.50であった。これらの

脳/血漿比の差は、5-ALAの標的臓器である脳への蓄積に関して、蛍光成分であるPPIXが5-ALA

のそれより約16.7倍高いことを示しており、効果発現との関連が示唆された。

一方、種々の担癌モデル動物において、ポルフィリン又はPPIXは、腫瘍組織に分布及び集積

することが示された。紫外線下、腫瘍組織中ポルフィリン又はPPIXの蛍光強度は、周辺正常組

織に比べて高く、正常組織との間で明瞭なコントラストが観察された。PPIXが腫瘍細胞に蓄積

する機序については、薬効薬理試験でも述べたように、悪性腫瘍細胞と正常細胞とのPPIX生成

までの酵素(ALA シンターゼ、PBG デアミナーゼ、UROデカルボキシラーゼ)活性やPPIXからヘ

ムを触媒する酵素(フェロケラターゼ)活性の違いに起因していると考えられる。

ラットに 5-ALA 200 mg/kg を単回静脈内投与後の十二指腸吸引物中に 5-ALA が認められた。

十二指腸吸引物中には、胆汁が含まれること、また、静脈内投与後の空腸中 5-ALA濃度の最高

濃度到達時間(Tmax:2 時間)が、他組織中のそれ(Tmax:1時間)よりもより遅延したことから、

5-ALA の一部は、胆汁を介して腸管中に排出されるものと推察された。また、経口投与後の血

漿中 5-ALA 濃度は、5-ALA の消化管吸収が速やかで良好であることを示していることから、胆

汁中に排泄された 5-ALA は、腸管において再吸収されるものと推察され、ラットにおける 5-ALA

の薬物動態への腸管循環の関与が示唆された。また、ラットに 5-ALA を経口投与した時の 5-ALA

の経口吸収は速やかで、かつ良好であると考えられたこと、血漿中 5-ALA の T1/2は、経口投与

時及び静脈内投与時で差異はなく、両投与経路における薬物動態の差異は小さいと考えられた

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

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こと、経口及び静脈内投与後の主要代謝物ポルフィリンの血漿中濃度は、両投与経路で近似し、

初回通過時の代謝には、投与経路による差異は小さいと考えられたこと、及び小腸中総 5-ALA

の組織中総 5-ALA に占める割合は、経口投与時で高かったが、経口投与時と静脈内投与時の差

は約 10%であり、腸肝循環に関わる 5-ALA は、多くても投与量の 10%程度と推察されたこと(表

2.6.4.4.1-1)から、経口投与時における 5-ALA の薬物動態への初回通過効果の関与は、小さい

と推察される。

ミトコンドリアで生成された内因性の5-ALAは、細胞質において、ALAデヒドラターゼ、PBG

デアミナーゼ、UROⅢシンターゼ、UROデカルボキシラーゼの作用を受け、再びミトコンドリア

に戻りコプロポルフィリノーゲンオキシダーゼ及びプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼが

関与してPPIXに変換される。生成したPPIXはフェロケラターゼによって二価鉄が挿入されてヘ

ムに変換される。5-ALA HCl又は5-ALAPを投与したラット及びイヌの血漿、臓器又は尿中にPPIX、

ウロポルフィリンI、ウロポルフィリンⅢ、コプロポルフィリンⅠ、コプロポルフィリンⅢ、ヘ

プタカルボキシルポルフィリン、ヘキサカルボキシルポルフィリン及びペンタカルボキシルポ

ルフィリンがそれぞれ同定され、また、尿中には2分子の5-ALAが縮合したポルホビリノーゲン

が認められた。これらの代謝物はいずれも内因性の5-ALAから生成するポルフィリン化合物及び

その前駆体であることから、投与した5-ALAの多くは内因性の5-ALAと同様の生体内運命をたど

り代謝されるものと推察される。

ラットに 5-ALA 200 mg/kg を単回経口又は静脈内投与したとき、両投与経路において、投与

後 1時間の尿中に、5-ALAが検出され、排泄パターンは、両投与経路で類似した。尿中最高 5-ALA

濃度は、いずれの投与においても投与後 2 時間に認められ、投与後 4 時間の尿中には少量の

5-ALA のみが検出された。また、尿中へのポルフィリンの排泄は、経口投与時と静脈内投与で

時間差はあるが排泄パターンは類似し、5-ALA 投与後の排泄及び代謝には、経口投与と静脈内

投与で差異がないものと推察された。雌雄ラットに 5-ALA 100 mg/kg 及び 300 mg/kg を 13 日

間反復経口投与したとき、5-ALA の尿中濃度は、投与量に依存して増加し、反復投与による影

響及び性差は認められなかった。

また、イヌに、5-ALA HCl 100 mg/kg を単回静脈内投与したとき、尿中への 5-ALA の排泄は

投与後速やかに増加し、投与後 2~4時間で最も高かった。尿中へのポルホビリノーゲンの排泄

はゆっくりと増加し、投与後 4~8時間で最高値に達した。尿中へのポルフィリンの排泄は、投

与後 4~8時間で最高値に達した。尿中の主要ポルフィリン化合物はコプロポルフィリンⅢであ

り、相対的には尿中に、ヘプタカルボキシルポルフィリン、ヘキサカルボキシルポルフィリン

及びペンタカルボキシリポルフィリンの増加が認められた。

5-ALAのヒト血漿たん白質との平均たん白結合率は、5-ALA濃度500~5000 μg/Lの範囲におい

て12%と低値であり、たん白結合を介した5-ALAと他薬物との薬物相互作用はないと推察された。

また、5-ALAは細胞質及びミトコンドリアにおけるヘム生合成酵素によりポルフィリン及びヘム

に代謝されると考えられ、また5-ALAの代謝へのP450の関与は報告されていないため、代謝酵素

を介した他薬物との薬物相互作用はないと推察される。

毒性試験では、5-ALAのラット及びイヌの反復投与毒性試験における主な毒性所見として、AST、

ALT及び総ビリルビンの高値、肝臓への褐色色素の沈着が認められ、さらにラットでは耳又は尾

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

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の潮紅、表皮の剥離、脱毛、軽度の貧血、肝細胞の壊死、胆管増生、胆管周囲の細胞浸潤、赤

褐色尿、腎臓への褐色色素の沈着、近位尿細管上皮の空胞化が認められた。5-ALAは生体内にお

いて代謝されてPPIXになることから4)、肝臓及び腎臓に沈着した褐色色素はポルフィリンと考

えられ、上記の所見の多くはこのポルフィリンの沈着による変化と考えられた。また、ラット

にみられた耳又は尾の潮紅、表皮の剥離、脱毛等の皮膚所見は、PPIXの光毒性による影響と考

えられ、尿検査でみられたpH低下、ケトン体陽性反応及び尿の赤褐色化は、ポルフィリンの排

出による影響が推察された。無毒性量は、4週間投与においてラットで44 mg/kg/day、イヌでは

3 mg/kg/dayであった。また、ラットの13週間投与における無毒性量は11 mg/kg/dayであり、投

与が長期になると無毒性量は低下した。ラットとイヌの無毒性量に差がみられる理由は、5-ALA

の薬物動態が関与しているものと推察される。

ポルフィリンの血漿中濃度は、ラット及びイヌともに5-ALAの経口投与後2時間に最高濃度を

示し、投与後8時間まで徐々に減少した5,6)。ラットの組織中濃度は、腎臓を除くすべての器官

で投与後12時間にはバックグランドレベルに戻ったが、イヌでは投与後6~10時間まで徐々に増

加し、特に肝臓では高値を示し、腸肝循環の影響が考えられた(CTD2.6.4.4)。

ラットとイヌの肝障害の発生閾値の差を検討するため、5-ALA をラットに500 mg/kg、イヌに

30 mg/kgを単回経口投与し、投与後24時間における血清AST・ALT及び肝臓PPIXを測定した。そ

の結果、肝臓PPIX量は、ラットでは対照群の約10倍の高値を示したのに対し、イヌでは約200

倍の高値を示し、また血清ALT値も増加した7)。このように、イヌではポルフィリンの肝臓への

蓄積が顕著であったことから、肝臓障害が強く現れたものと考えられる。

一方、ヒトにおいては、本剤(20 mg/kg)を患者(7例)へ単回服用した場合、γ-GTP、ALT、AST

の高値が認められることから(CTD5.3.5-1-1)、肝臓への影響が懸念される。そのため、肝機能

又は腎機能障害のある患者に対しては、肝臓・胆道系に対する影響に留意する必要がある。

毒性所見の回復性について、イヌの4週間反復投与毒性試験の10 mg/kg/dayでみられた異常所

見(AST・ALTの高値及び肝臓の褐色色素沈着)は休薬後4週には回復傾向を示した。ラットの13

週間反復投与毒性試験の183 mg/kg/dayでみられた異常所見も、貧血傾向及び肝臓・腎臓の褐色

色素沈着を除き、AST、ALT及び肝臓重量の高値並びに肝臓及び腎臓の褐色色素の沈着、肝細胞

の壊死及び胆管増生などは回復又は回復傾向を示した。このように5-ALAの主要変化である肝臓

での異常所見は、休薬により回復することが示唆された。

染色体の構造異常の増加について、遺伝毒性試験のうち、遮光条件下で細胞培養又は動物飼

育を実施した復帰突然変異試験、遺伝子突然変異試験、染色体異常試験(ヒトリンパ球)及びマ

ウス小核試験では、いずれも遺伝毒性は認められなかった。しかし、非遮光条件下で実施した

染色体異常試験(CHL細胞)の1463 ㎍/mL以上で染色体異常細胞数の軽度増加が認められた。この

点に関しては、5-ALAを処理した細胞にUV又は可視光を照射すると、プロトポルフィリンの関与

によるDNAの酸化的損傷が生じることが報告されており8)、また、5-ALA (10-3 M)又はPPIX(10-8 M)

を曝露したチャイニーズハムスターV79細胞への光照射により小核細胞数の増加が認められて

いる9)。今回実施した染色体異常試験のうち、遮光下で実施したヒトリンパ球を用いた試験で

は異常がなかったのに対し、遮光しなかったCHL細胞を用いた試験では染色体異常細胞数の増加

がみられたことから、代謝物PPIXによる光毒性が試験成績に影響した可能性が考えられる。し

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

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かしながら、CHL細胞に対して染色体異常の誘発された用量が1463 μg/mL以上と高濃度である

こと、それらの用量では細胞毒性(分裂指数が50%以下)が強いこと、及びヒトリンパ球細胞

やマウスを用いた遺伝毒性試験ではいずれも陰性であったことから、本薬の投与によって、生

体内で染色体異常が誘発される可能性はないものと考えられる。

ラットの受胎能及び着床までの初期胚の発生に関する試験、胚・胎児発生に関する試験及び

出生前及び出生後の発生並びに母体の機能に関する試験における親動物への毒性所見としては、

反復投与毒性試験と同様に、体重増加の抑制、摂餌量の低値、肝及び腎の暗褐色化、赤褐色尿

がみられた。胎児への影響としては、胎児体重の低値及び仙・尾椎の骨化遅延がみられ、出生

児では体重増加の抑制及び生存率の低値がみられた。一方、ウサギの胚・胎児に関する試験で

は、母動物の毒性用量においても胎児の異常はみられなかった。

5-ALA投与と光照射の組み合わせによる胚・胎児発生への影響としては、ラットの妊娠10日に

5-ALAを静脈内投与し、妊娠子宮に直接光を照射(630 nm)すると、胎児の生存率が低下するとの

報告がある10)。また、マウス11)及びニワトリ12)を用いた同様の報告もある。そのため、本薬を

投与後、直接的に光照射した場合には、胎児毒性を生ずる可能性が考えられるため、本薬は妊

婦又は妊娠している可能性のある婦人には使用しないことが望ましい。

マウスに5-ALAを静脈内投与し、4時間後に紫外線照射すると死亡がみられたが、24時間後の

照射では死亡はなかった。また、紫外線照射による炎症性皮膚反応も、投与後4時間の照射の方

が投与後24時間より強く発現した。このように5-ALAの静脈内投与による光毒性反応は、時間依

存性を示し、PPIXの産生動態と関連していると考えられる。また、ラットの反復投与毒性試験

(照明;12時間明暗サイクル)においても耳又は尾の潮紅、表皮の剥離、脱毛等のポルフィリ

ンの光毒性によると考えられる変化が認められた(CTD2.6.6.3.1)。PPIXは、光増感作用により

活性酸素を生じ、これが細胞の脂質やたん白質に過酸化障害を起こすことが知られている。本

薬の適用に際し、光線過敏反応が起こることが考えられるので、少なくとも投与後24時間は眼

及び皮膚に対する遮光対策を行う必要がある。動物とヒトにおける曝露量を比較すると、動物

の無毒性量での曝露量は、ヒト臨床用量の1倍未満であった。本剤投与後の副作用を最小限に抑

えるためには、臨床症状、臨床検査などをモニタリングすることが望ましい。

以上、5-ALAの反復投与毒性試験における主な毒性所見として、AST、ALT及び総ビリルビンの

高値、肝臓への褐色色素の沈着が認められた。さらにラットでは軽度の貧血、肝細胞の壊死、

胆管増生、胆管周囲の細胞浸潤、赤褐色尿、腎への赤褐色色素の沈着、近位尿細管上皮の空胞

化が認められた。これは本薬の代謝物であるPPIXの肝臓又は腎臓への蓄積によるものと考えら

れた。イヌでは腸肝循環によりPPIXの肝臓への蓄積が、ラットに比べ顕著であったことから、

肝臓の障害が強く現れた。5-ALAの代謝物であるPPIXは、光増感作用が知られており、ラットの

4週及び13週反復投与毒性試験では、耳あるいは尾の潮紅、表皮の剥離、脱毛等、本薬の表皮に

対する光毒性作用がみられた。

5-ALAの曝露と光照射の影響は遺伝毒性試験においても示され、遮光下で実施した各種の遺伝

毒性試験ではいずれも陰性結果であったのに対し、遮光せずに実施した染色体異常試験では染

色体異常細胞数の軽度増加がみられた。また、妊娠ラットの子宮に直接光照射した場合におい

ては胎児死亡が惹起されたとの報告7)もある。このように、本薬は代謝物であるPPIXの蓄積又

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アミノレブリン酸塩酸塩(製剤) 2.4 非臨床試験の概括評価

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はその光毒性作用により、種々の組織や器官に対し、障害を起こす可能性がある。本薬の適用

に際しては、光毒性に十分注意する必要がある。

2.4.6 参考文献

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2) 今堀和友、山川民夫 監修 生化学辞典 第4版. 東京:東京化学同人;2007;1190

3) 今堀和友、山川民夫 監修 生化学辞典 第4版. 東京:東京化学同人;2007;1228

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12)Peterka M,et al. Light irradiation increases embryotoxicity of photodynamic therapy

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