ザノサー点滴静注用1g 第2部 CTDの概要(サマリー) 2.5 臨...

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ザノサー点滴静注用1g 第 2 部 CTD の概要(サマリー) 2.5 臨床に関する概括評価(臨床概括評価)

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ザノサー点滴静注用1g

第 2 部 CTD の概要(サマリー)

2.5 臨床に関する概括評価(臨床概括評価)

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5 臨床に関する概括評価

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略語一覧

内容 略語

英語 日本語

5-FU Fluorouracil フルオロウラシル

ALT(GPT) Alanine Aminotransferase

(Glutamic Pyruvic

Transaminase)

アラニン・アミノトランスフェラ

ーゼ

AST(GOT) Aspartate Aminotransferase

(Glutamic-oxaloacetic

Transaminase)

アスパラギン酸アミノトランス

フェラーゼ

AUC0-t Area Under the

Concentration-time curve from

time zero to the time of the last

measurable drug concentration

投与終了後t時間までの血漿中濃

度-時間曲線下面積

AUC0-∞ Area Under the

Concentration-time curve up to

infinite time

投与終了後無限大時間までの血

漿中濃度-時間曲線下面積

Cmax Maximum Blood Concentration 最高血漿中濃度

Cmin Minimum Blood Concentration 各時点の投与前の血漿中濃度

CR Complete Response 完全奏効

CT Computed Tomography コンピュータ断層撮影

CTCAE Common Terminology Criteria for

Adverse Events

有害事象共通用語規準

DOX Doxorubicin

(Adriamycin) ドキソルビシン (アドリアマイシン)

ECOG Eastern Cooperative Oncology

Group

米国東海岸がん臨床試験グルー

ENETS The European Neuroendocrine

Tumor Society

欧州神経内分泌腫瘍学会

FAS Full Analysis Set 最大の解析対象集団

G1 Grade 1 G2 Grade 2 γ-GTP γ-glutamyltranspeptidase、

γ-glutamyltransferase

γ-グルタミルトランスペプチダ

ーゼ、γ-グルタミルトランスフ

ェラーゼ GLUT Glucose transporter グルコーストランスポーター

Hb Hemoglobin ヘモグロビン

Ht Hematocrit ヘマトクリット

JCOG Japan Clinical Oncology Group 日本臨床腫瘍研究グループ

LDH Lactate Dehydrogenase 乳酸脱水素酵素

LLT Lowest Level Term 下層語

MedDRA/J Medical Dictionary for

Regulatory Activities

ICH 国際医薬用語集日本語版

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5 臨床に関する概括評価

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内容 略語

英語 日本語

terminology/J

MRI Magnetic Resonance Imaging 磁気共鳴画像法

NANETS The North American

Neuroendocrine Tumor Society

北米神経内分泌腫瘍学会

NCCN National Comprehensive Cancer

Network

全米総合癌情報ネットワーク

NCI National Cancer Institute 米国国立がん研究所

NE Not Evaluable 評価不能

NET Neuroendocrine Tumor 神経内分泌腫瘍

PD Progression Disease 進行

PDQ Physician Data Query 米国国立がん研究所-がん情報

サイト

PK Pharmacokinetics 薬物動態

PR Partial Response 部分奏効

PS Performance Score, Performance

Status

活動度

PT Preferred Term 基本語

RECIST Response Evaluation Criteria In

Solid Tumors

固形がんの効果判定規準

SD Stable Disease 安定

SOC System Organ Class 器官別大分類

STZ Streptozocin ストレプトゾシン

WHO World Health Organization 世界保健機関

膵・消化管神経内分泌腫瘍の疾患名と本項における記載について

疾患名の新旧対比表

外国 日本

膵臓膵内分泌腫瘍、膵島細胞癌

膵内分泌腫瘍、膵島細胞癌

PancreaticNeuroEndocrine

Tumor(P NET)

膵神経内分泌腫瘍(膵NET) 膵・消化管

神経内分泌腫瘍

(膵・消化管NET)

GastroEnteroPancreatic

NeuroEndocrineTumor

(GEP NET)

外国 日本

消化管カルチノイド

腫瘍

消化管神経内分泌腫瘍

(消化管NET)

その他のカルチノイド腫瘍

その他の神経内分泌腫瘍

その他その他の

カルチノイド腫瘍

原発部位旧疾患名 新疾患名

消化管カルチノイド

腫瘍

GastroIntestinal

NeuroEndocrineTumor

(GI NET)

注:本項における疾患名の記載について、疾患名は原則として新疾患名の表記としたが、表 2.5.1.4-1 及び表

2.5.4.3-4 については旧疾患名も採用した。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5 臨床に関する概括評価

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目 次

2.5 臨床に関する概括評価(臨床概括評価) .......................................... 1 2.5.1 製品開発の根拠 .............................................................. 3 2.5.1.1 本剤の薬理学的分類 ........................................................ 3 2.5.1.2 本剤の目標とする適応症の臨床的/病態生理学的側面 .......................... 3 2.5.1.2.1 膵・消化管神経内分泌腫瘍の病態生理学 .................................... 3 2.5.1.2.2 膵・消化管神経内分泌腫瘍の患者数 ........................................ 5 2.5.1.2.3 神経内分泌腫瘍の分類とその診断 .......................................... 5 2.5.1.2.4 膵・消化管神経内分泌腫瘍の治療 .......................................... 7 2.5.1.3 本剤の開発を行った科学的背景 .............................................. 8 2.5.1.4 臨床開発の経緯及び臨床データパッケージ .................................... 9 2.5.1.5 対面助言 ................................................................. 11 2.5.2 生物薬剤学の概括評価 ....................................................... 14 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 ................................................... 15 2.5.3.1 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における薬物動態 ........................................ 15 2.5.3.2 進行癌患者を対象とした Adolphe 1975 試験における薬物動態 .................. 16 2.5.3.3 結論 ..................................................................... 16 2.5.4 有効性の概括評価 ........................................................... 17 2.5.4.1 試験方法 ................................................................. 17 2.5.4.2 教科書、ガイドライン ..................................................... 17 2.5.4.3 ストレプトゾシンの膵・消化管神経内分泌腫瘍に対する有効性について ......... 17 2.5.4.3.1 膵・消化管神経内分泌腫瘍に対して有効性を示す根拠 ....................... 17 2.5.4.3.2 国内外における膵・消化管神経内分泌腫瘍の診断と治療 ..................... 17 2.5.4.3.3 国内外の臨床試験成績 ................................................... 18 2.5.4.3.4 教科書及びガイドライン ................................................. 21 2.5.4.4 まとめ ................................................................... 24 2.5.5 安全性の概括評価 ........................................................... 25 2.5.5.1 薬理学的分類に特徴的な有害作用 ........................................... 25 2.5.5.2 特定の有害事象をモニターするための特別な方法 ............................. 25 2.5.5.3 動物における毒性学的情報及び製品の品質に関する情報 ....................... 25 2.5.5.3.1 動物における毒性学的情報 ............................................... 25 2.5.5.3.2 製品の品質に関する情報 ................................................. 25 2.5.5.4 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における安全性の概括評価 ................................ 26 2.5.5.4.1 対象となった患者集団の特徴及び曝露の程度 ............................... 26 2.5.5.4.2 比較的よくみられる有害事象 ............................................. 26 2.5.5.4.3 死亡、重篤な有害事象及び重要な有害事象 ................................. 28 2.5.5.5 各試験結果の類似性及び相違点及びそれらが安全性の評価結果に及ぼす影響 ..... 31 2.5.5.5.1 ストレプトゾシン投与で発現が予測される有害事象.......................... 31 2.5.5.5.2 投与方法の違いによる有害事象 ........................................... 32 2.5.5.5.3 安全性の評価に及ぼす影響 ............................................... 33 2.5.5.6 有害事象(副作用)の予防、軽減、管理方法 ................................. 33 2.5.5.6.1 悪心、嘔吐 ............................................................. 33 2.5.5.6.2 腎毒性 ................................................................. 34

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5 臨床に関する概括評価

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2.5.5.6.3 血液毒性 ............................................................... 35 2.5.5.6.4 耐糖能異常(糖尿病誘発性) ............................................. 35 2.5.5.6.5 肝機能障害 ............................................................. 35 2.5.5.6.6 血管外への漏出 ......................................................... 36 2.5.5.6.7 小児 ................................................................... 36 2.5.5.6.8 妊婦及び授乳婦 ......................................................... 36 2.5.5.6.9 自動車の運転又は重機器類の操作能に対し予測される影響 ................... 36 2.5.5.7 過量投与、反跳現象、離脱症状、依存性、乱用を誘発する可能性 ............... 36 2.5.5.7.1 過量投与 ............................................................... 36 2.5.5.7.2 反跳現象、離脱症状、依存性、乱用を誘発する可能性 ....................... 37 2.5.5.8 世界における市販後使用経験 ............................................... 37 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論 ........................................... 38 2.5.6.1 ベネフィット ............................................................. 38 2.5.6.2 リスク ................................................................... 40 2.5.6.3 結論 ..................................................................... 40 2.5.7 引用文献 ................................................................... 42

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5 臨床に関する概括評価

- 1 -

2.5 臨床に関する概括評価(臨床概括評価)

神経内分泌腫瘍(以下、「NET」)は、体内の広範な部位に存在するびまん性神経内分泌細胞

から発生する腫瘍であり、ペプチドやアミンを産生する神経内分泌細胞への分化を示す腫瘍の

一群である(添付資料 5.3.5.5-2 参)。発生臓器は消化器(消化管、膵臓など)が多く、膵臓原

発の腫瘍は膵島細胞癌、胃や腸原発の腫瘍はカルチノイド腫瘍(消化管カルチノイド)と呼ば

れていたが、近年、膵島細胞癌は膵神経内分泌腫瘍(以下、「膵 NET」)、カルチノイド腫瘍(消

化管カルチノイド)は消化管神経内分泌腫瘍(以下、「消化管 NET」)とされ、これらを総称し

て膵・消化管 NET とされている。

本薬は、1956 年に米国の Upjohn Research Laboratories(以下、「Upjohn 社」)において、

非運動性、好気性グラム陽性菌である Streptomyces achromogenes が産生する抗生物質として

発見されたストレプトゾシン(以下、「STZ」)であり、Upjohn 社及び米国国立がん研究所が実

施した一連のがん化学療法剤のスクリーニングでは、ニトロソウレア剤の中でも、強力な抗が

ん作用を有する化合物として注目された。1982 年に米国にて「症候性又は進行性の転移性膵島

細胞癌」、1985 年には仏国で「転移性膵島細胞癌及びカルチノイド腫瘍」を効能・効果として

それぞれ承認されて以来、欧米では当該腫瘍に対する標準治療薬とされている。本剤は、膵・

消化管 NET の治療剤として唯一承認された薬剤であったが、2010 年代に入り、一部の分子標的

薬及びソマトスタチンアナログ製剤が当該腫瘍の治療剤として承認されている。 国際的教科書(添付資料 5.3.5.5-1 参、5.3.5.5-2 参)、国際的な診療ガイドライン(添付資

料 5.3.5.5-3 参、5.3.5.5-4 参)及び欧米の NET 専門学会の治療ガイドライン(添付資料

5.3.5.5-5~10 参)でも、転移性で切除不可能な膵 NET 及び消化管 NET に対し、本剤単独又は

本剤+ドキソルビシン(以下、「DOX」)及び/又は 5-フルオロウラシル(以下、「5-FU」)等と

の併用療法が標準治療として、その使用が推奨されている(2.5.4 項)。

一方、国内では、2005 年当時、膵 NET 及び消化管 NET を効能・効果として承認されている薬

剤はなく、本剤は医師の個人輸入で使用されていた。その後、エベロリムス(2011 年)、スニ

チニブ(2012 年)、オクトレオチド(2011 年)が当該腫瘍の治療剤として承認され、最近公開

された膵・消化管 NET 診療ガイドライン第 1版・2013 年 11 月(添付資料 5.3.5.5-10 参)では、

膵 NET には、エベロリムス、スニチニブが、消化管 NET には、オクトレオチドがそれぞれ標準

治療薬としてその使用が推奨され、未承認の本剤は参照されるにとどまっているが、本剤がし

かるべく承認された後には、欧米でのガイドライン同様に本剤も標準治療薬としてその使用が

推奨されると推察される。

このような背景から第 5 回未承認薬使用問題検討会議(開催日:2005 年 7 月 22 日)におい

て、ワーキンググループ検討結果に基づき本剤の必要性について議論され、早期の治験開始が

必要であると結論された。また、第 3回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議(開

催日:2010 年 4 月 27 日)の結果を受けて、ノーベルファーマ株式会社(申請者)は、2010 年

5 月 21 日(医政研発 0521 第一号/薬食審査発 0521 第一号)に、厚生労働省から開発要請を受

けたことから国内開発に着手し、進行性(切除不能又は転移性)の膵・消化管 NET 患者を対象と

した本剤の臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験を計画し、実施した。今回、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験結果とともに、

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5 臨床に関する概括評価

- 2 -

国内外の公表論文をまとめて臨床データパッケージとし、以下の内容で承認申請を行うに至っ

た。

申請区分 (1) 新有効成分含有医薬品

販売名 ザノサー点滴静注用1g

含量 1バイアル中ストレプトゾシン1.0 g

効能・効果 膵・消化管神経内分泌腫瘍

用法・用量 患者の状態に合わせて、下記用法・用量のいずれかを選択する。

(1) 通常、成人にはストレプトゾシンとして 1日 500 mg/m2(体表面積)

を 1日 1回 30 分~2時間かけて 5日間連日点滴静脈内投与し、37日

間休薬する。この 6週間を 1コースとして繰り返す。

(2) 通常、成人にはストレプトゾシンとして 1日 1,000 mg/m2(体表面

積)を 1週間ごとに 1日 1回 30 分~2時間かけて点滴静脈内投与す

る。なお、年齢、症状により適宜増減し、1回の投与量は 1,500 mg/m2

(体表面積)を超えないこととする。

薬効分類 87421(アルキル化剤)

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 3 -

2.5.1 製品開発の根拠

2.5.1.1 本剤の薬理学的分類

本剤はニトロソウレア系の薬剤でありアルキル化剤に分類される。DNA 鎖をクロロエチル基

により架橋させることが可能な二価アルキル化剤ではなく、メチルジアゾニウムイオンを生成

させ、DNA にメチル基を付加する一価アルキル化剤である。核酸のグアニンの O-6 位などをア

ルキル化してDNA合成を阻害して細胞毒性を発現する(添付資料4.2.1.1-2参、4.2.1.1-5参)。

すなわち、DNA がアルキル化されると腫瘍細胞はそれを修復しようとして O6‐メチルグアニン

からメチル基を受け取る DNA メチル転移酵素(O6-メチルグアニン‐DNA メチルトランスフェラ

ーゼ)が活性化される。また、DNA の修復に働くポリ ADP リボシル化酵素も活性化され、これ

らの酵素によりニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド(以下、「NAD」)が大量に消費されて、

エネルギーが枯渇し細胞死をもたらすと考えられている。本剤による NAD の減少は、in vitro

及び in vivo で認められるが、ニコチンアミドを補うことで予防でき、膵β細胞の破壊も生じ

ない(添付資料 4.2.1.1-1 参)。

2.5.1.2 本剤の目標とする適応症の臨床的/病態生理学的側面

2.5.1.2.1 膵・消化管神経内分泌腫瘍の病態生理学

神経内分泌腫瘍(以下、NET という)は、体内の広範な部位に存在するびまん性神経内分泌

細胞から発生し、ペプチドやアミンを産生する神経内分泌細胞への分化を示す腫瘍の一群であ

る(添付資料 5.3.5.5-2 参)。

発生頻度は消化管(膵臓、消化管等)に高いが、他の内分泌組織(下垂体、副甲状腺等)や

呼吸器等、多くの臓器から発生する。原発臓器の腫瘍から分泌されるホルモンにより異常な症

状が出る機能性 NET と、症状のない非機能性 NET に分けられている。

膵臓原発の腫瘍は膵島細胞癌又は膵内分泌腫瘍、胃や腸原発の腫瘍はカルチノイド腫瘍(消

化管カルチノイド)と呼ばれていた。また、一般的に進行が遅く、予後も良好であるといわれ

ていたため、NET 全体をカルチノイド(癌もどき:Carcinoma-like)と総称し、良性腫瘍に属

すると考えられていたが、臨床病理学的研究が進むにつれて悪性度の多様性が認識され、近年

では悪性腫瘍(転移能を有する)と位置付けられている。現在、カルチノイドという名称は使

われなくなり、膵・消化管神経内分泌腫瘍(以下、「膵・消化管 NET」)と総称され、膵島細胞

癌、膵内分泌腫瘍は膵神経内分泌腫瘍(以下、「膵 NET」)、カルチノイド腫瘍(消化管カルチノ

イド)は消化管神経内分泌腫瘍(以下、「消化管 NET」)とされている 1)。

(1) 膵神経内分泌腫瘍

膵 NET は、ホルモンを過剰に分泌する機能性膵 NET と、ほとんどホルモンを分泌しない非機

能性膵 NET に分けられる。前者はそのホルモン作用に応じた症状が発現することから、症候性

膵 NET と呼ばれ、症状の発現しない非機能性 NET は非症候性膵 NET と呼ばれることがある。稀

に、複数の内分泌組織に腫瘍が発生する多発性内分泌腫瘍症 1型(MEN-1)と呼ばれる家族性に

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 4 -

多発する疾患があり、悪性度が高いといわれている。主な機能性膵 NET の症状と徴候を表

2.5.1.2-1 に示した 2)。

病理組織学的に膵 NET の良性・悪性を診断することは困難であり、現時点では、肝転移やリ

ンパ節転移が認められる場合や、膵周囲の臓器、血管に腫瘍が拡がっている場合に悪性と診断

される。腫瘍自体の性状からは、腫瘍サイズが大きい場合、特に 5 cm を超える腫瘍、腫瘍の中

に石灰化や中心部の壊死を認める場合には、悪性を疑うほうがよいといわれている。膵外分泌

機能を示す領域から発生する膵がんと比較すると、膵 NET は進行が遅く悪性度は低いといわれ

ているが、低分化型のものには非常に増殖速度が速く、悪性度の高いものもある。腫瘍径とホ

ルモン過剰症状とは相関しないが、腫瘍径の大きいものに悪性が多い。

表 2.5.1.2-1 主な機能性膵神経内分泌腫瘍の症状と徴候

病名 ホルモン 腫瘍部位 症状と徴候

インスリノーマ インスリン 膵臓 空腹時低血糖

ガストリノーマ ガストリン 膵臓(60%)、十二指腸(30%)、

その他(10%)

腹痛、消化性潰瘍、下痢

グルカゴノーマ グルカゴン 膵臓 グルコース不耐性、発疹、

体重減少、貧血

ソマトスタチノーマ ソマトスタチン 膵臓(56%)、十二指腸/空腸(44%) グルコース不耐性、下痢、

胆石

VIPoma 血管作動性小腸ペプチド 膵臓(90%)、その他(10%) 重度の水様性下痢、低カリウム

血症、紅潮

VIPoma:vasoactive intestinal polypeptide oma ( ):発現頻度

(2) 消化管神経内分泌腫瘍

消化管 NET は非がん性(良性)あるいはがん性(悪性)の腫瘤で、通常、小腸やその他の消

化管のホルモン産生細胞に発生する。消化管 NET の発生部位と臨床所見を表 2.5.1.2-2 に示し

た 1)。最近の国内における疫学調査によれば、消化管NETの発生部位別の割合は、直腸(55.7%)、

十二指腸(16.7%)、胃(15.1%)、結腸(2.1%)、空腸(1.6%)、回腸(0.6%)であった 3)。

消化管 NET はセロトニン、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジンなどのホルモン様

物質を産生し、これらのホルモン様物質が血液中に放出され、直接門脈に入り、肝臓の酵素に

よって破壊さる。そのため一般的には、腫瘍が肝臓に広がらなければ症状は発現しないが、腫

瘍が肝臓に転移すると、肝臓はこれらのホルモン様物質が全身を循環しはじめる前に処理でき

なくなり、ときにカルチノイド症候群と呼ばれ、顔や頸部に出る不快な紅潮、下痢及び心不全

などの典型的な症状を引き起こす。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 5 -

表 2.5.1.2-2 消化管神経内分泌腫瘍の発生部位と臨床所見

前腸 中腸 後腸

局在部位 胃、十二指腸

空腸、回腸、虫垂、

上行結腸

横行結腸、下行結腸、

S 状結腸、直腸

組織学所見 Trabecular Solid mass of cells Mixed

銀染色 好銀性 銀親和性 Variable

分泌物

5-ヒドロキシトリプトファン

ヒスタミン

Multiple polypeptides

セロトニン

プロスタグランジン

ポリペプチド

Variable

肝転移 胃:20~25%

小腸:35%

上行結腸:60%

虫垂:2%

直腸:腫瘍径

>2 cm では<10%

(実践マニュアル 高野幸路、改変)1)

2.5.1.2.2 膵・消化管神経内分泌腫瘍の患者数

Neuroendcrine Tumor Workshop Japan(以下、「NET Work Japan」)により消化器外科・内科、

内分泌代謝内科の専門施設において、2005 年の 1年間に受療した NET 患者を対象として層化無

作為抽出法による全国疫学調査が行われた 4)。この結果から推定された膵 NET 及び消化管 NET

の患者数は計 7,251 人(膵 NET:2,845 人、消化管 NET:4,406 人)であり、人口 10 万人あたり

5.68 人(膵 NET:2.23 人、消化管 NET:3.45 人)と報告されている。2010 年 10 月現在の人口

128,056 千人(総務省国勢調査速報)をもとに、日本における膵・消化管 NET の患者数を算出

すると、7,299 人(膵 NET:2,817 人、消化管 NET:4,482 人)と推定された。このうち、本剤

の投与対象となる患者は、膵 NET の悪性(転移)例及び消化管 NET の遠隔転移例で、これらの

患者のうち根治切除不可能又は切除不可能な患者である。NET Work Japan の報告 4)によれば、

膵 NET の悪性率は 35.0%、消化管 NET の遠隔転移率は 5.6%であり、この悪性率及び遠隔転移

率を上述の患者数に乗ずると、悪性の膵 NET 患者は 986 人、消化管 NET の遠隔転移患者は 251

人の計 1,237 人となる。本剤の投与対象となるのは、これらの患者のうち根治切除不可能又は

切除不可能な患者であることから、その数はさらに少なくなる。

2.5.1.2.3 神経内分泌腫瘍の分類とその診断

(1) 神経内分泌腫瘍の病理組織学的分類

NET の分類については、従来各々の原発臓器別に記載されていて、必ずしも統一性はなかっ

た。2010 年の WHO 分類 5)では、増殖能(核分裂像数と Ki67 指数)に基づき、膵・消化管 NET

が統一して分類されることになった。すなわち、核分裂像数及び Ki67 指数により NET と神経内

分泌癌(neuroendocrine carcinoma:以下、「NEC」)に大別され、NET はさらに G1(Grade 1)

と G2(Grade 2)に分類されている。この分類の特徴は膵臓と消化管に発生する NET 全体を総

称する点にある 1)。WHO 2000 分類からの変遷を表 2.5.1.2-3 に示した。

一方、国内では膵・消化管 NET 診療ガイドライン作成委員会による「膵・消化管神経内分泌

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 6 -

腫瘍診療ガイドライン第 1版(2013 年 11 月)」が公開されている。本ガイドライン(5.3.5.5-10

参)においても、病理組織は WHO 分類と同様に分類されており、この病理組織学的分類に基づ

いて治療することは極めて重要であるとされ、日本においても 2010 年の WHO 分類が定着してい

くものと思われる。

表 2.5.1.2-3 WHO 分類の変遷と新規 Grading

2000 年 WHO 分類 2010 年 WHO 分類

1. Well-differentiated endocrine tumor (WDET)a

高分化型内分泌腫瘍

2. Well-differentiated endocrine carcinomaa

(WDEC) 高分化型内分泌腫瘍

3. Poorly differentiated endocrine carcinoma

/small cell carcinoma (PDEC)

1. Neuroendocrine tumor:NET G1 (Carcinoid)b

神経内分泌腫瘍 G1

2. Neuroendocrine tumor:NET G2

神経内分泌腫瘍 G2

3. Neuroendocrine carcinoma:NEC (large cell or

small cell type)b,c

神経内分泌癌(大細胞癌あるいは小細胞癌)

Grading 2010 年 WHO 分類

Grade 核分裂像数(/10 HPFd) Ki67 指数 e(%)

NET G1 G1 <2 ≦2

NET G2 G2 2~20 3~20

NEC G3 >20 >20

a:WDET と WDEC の相違は WHO 2000 分類に従い定義された。G2 NET は WHO 2000 の WDEC に必ずしも一致しない。

b:カッコ内は International Classification of Disease for Oncology(ICD-O)のコード

c:NETは高分化型と定義されるため、このカテゴリーで使用されてきた“NET G3”という表現は推奨されない。

d:核分裂数:少なくとも高倍視野(2 mm2)を 50 視野以上検討し、10 視野当りの核分裂像数を計測

e:Ki67 指数:最も核の標識率が高い領域で 500~2,000 個の腫瘍細胞中に占める MIB-1 抗体の陽性率(%)

(実践マニュアル 佐野壽昭、改変)1)

(2) 膵・消化管神経内分泌腫瘍の診断

膵・消化管NETは、腫瘍から分泌されるホルモンによって特異的臨床症状、徴候を呈する。

それらの症状、徴候と画像検査及び病理組織学的検査等に基づき、膵・消化管NETの診断が行わ

れる1)(表2.5.1.2-4)。

表 2.5.1.2-4 膵・消化管神経内分泌腫瘍の診断法一覧

膵 NET 消化管 NET

問診、症状、理学的所見、一般臨床検査所見、

産生ホルモンの分泌過剰を証明するための血中

ホルモン測定などから本腫瘍に特有の臨床徴

候、病態生理の有無を検索し診断する。また、

超音波検査、造影 CT、MRI、血管造影などの画像

診断などにより局在診断を行う。

病理組織学的には、良性・悪性の診断は困難

であり、現時点では肝転移、リンパ節転移の認

められる場合や、膵周囲の臓器、血管に腫瘍が

臨床症状からカルチノイド腫瘍が疑われる場

合は、尿中の 5‐ヒドロキシインドール酢酸

(5-HIAA)の量から診断が確定される。カルチノ

イド腫瘍の部位を特定するには、CT(コンピュー

タ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、

動脈造影が行われる。腫瘍部位の診査手術が必要

な場合もある。放射性核種走査も有効な検査であ

る。カルチノイド腫瘍の多くはソマトスタチン受

容体を有し、放射性ソマトスタチンを注射する放

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 7 -

浸潤している場合に悪性と診断される。

インスリノーマでは 80~90%が良性であり、

その他の腫瘍では 50~90%が悪性とされる。腫

瘍径とホルモン過剰症状とは相関しないが、腫

瘍径の大きいものに悪性が多い。

射性核種走査により、カルチノイド腫瘍の位置や

転移の有無が確認できる。この方法で約 90%の

腫瘍の部位が特定できる。MRI 検査や CT 検査は、

腫瘍が肝臓への転移を確認するのにも役立つ。

(実践マニュアル 高野幸路他、抜粋)1)

2.5.1.2.4 膵・消化管神経内分泌腫瘍の治療

膵・消化管 NET の治療は、症状の改善による QOL(生活の質)の向上、生命予後の改善を目的

としている。治療には手術(切除術)を含む局所療法、薬物療法などがある(表 2.5.1.2-5)。

治療においては、腫瘍の機能性、進達度、転移性の有無を正確に評価し、腫瘍の分化度、悪性

度など病理組織学的な分類に基づいた治療が必要である。膵・消化管 NET の WHO 分類は表

2.5.1.2-3 に記したが、これらの病型の中でも最も悪性度が高く、予後が悪いのは NEC であり、

他の病型(NET G1、G2)とは治療方針が大きく異なる。膵・消化管 NET G1 及び G2 では、外科

的切除による治癒を目指すのが標準であるが、切除不能例では、化学療法を中心とした治療が

行われる。化学療法には、ストレプトゾシン、ドキソルビシン、ダカルバシン、カペシタビン、

5-FU 及びデモゾロミドなどが使用されている。この中でストレプトゾシンが唯一、膵・消化管

NET の治療剤として承認された薬剤であったが、2010 年代に入り、一部の分子標的薬及びソマ

トスタチンアナログ製剤が当該腫瘍の治療剤として相次いで承認されており、本剤、一部の分

子標的薬、オクトレオチドが当該腫瘍の治療薬として承認されている欧米では、これらの薬剤

の使用が推奨されている。我が国ではこれらのうち本剤だけが承認されていないので、現段階

では分子標的薬、オクトレオチドがその使用を推奨され、本剤は参照されるにとどまっている

が、本剤がしかるべく承認された後には、欧米でのガイドライン同様に本剤もその使用が推奨

されると推察される。なお、肝臓に転移がある場合には、肝臓の腫瘍に対する肝動脈塞栓術な

どを行うこともある。

膵・消化管 NET G1 及び G2の生物学的悪性度は類似しており、治療法はおおむね重複する 1)。

表 2.5.1.2-5 神経内分泌腫瘍の集学的治療(切除不能局所進行、遠隔転移、術後再発)

全身療法 局所療法

・化学療法(ストレプトゾシン、ダカルバジンなど)

・オクトレオチド

・Peptide Receptor Radionuclide Therapy(PRRT)

・分子標的治療(エベロリムスなど)

・ビスホスホネート(骨転移)

・Best Supportive Care(緩和治療)

・切除術(根治的、姑息的)、バイパス術

・肝動脈塞栓術、肝動注化学療法

・ラジオ波焼灼術(RFA)、肝移植

・放射線照射(骨転移など)

(実践マニュアル 大塚隆生、改変)1)

(1) 外国における治療指針

国際的教科書(添付資料5.3.5.5-1、2参)及び国際的診療ガイドライン(添付資料5.3.5.5-3、

4参)では、転移性で切除不可能な膵NETに対し、本剤単独又は本剤+DOX、5-FU等との併用療法

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 8 -

が推奨されている。また、消化管NETに対しては、本剤、DOX 又は5-FUの単独又はこれらを組み

合わせた併用療法が推奨又は紹介されている。

また、欧米のNET専門学会における治療ガイドライン(添付資料5.3.5.5-5~9参)において

も、本剤は膵・消化管NETに対する標準治療薬として推奨又は治療の選択肢として紹介されてい

る。

なお、膵NET及び消化管NETの適応で近年承認されたスニチニブ、エベロリムス及びオクトレオ

チドが最近発表されたガイドライン(添付資料5.3.5.5-6参、5.3.5.5-10参)では、標準治療薬

としてその使用が推奨されている。

(2) 国内における治療指針

国内では、膵・消化管 NET 診療ガイドライン作成委員会による「膵・消化管神経内分泌腫瘍

診療ガイドライン第 1版(2013 年 11 月)」が公開されている。

本ガイドライン(添付資料 5.3.5.5-10 参)では、膵 NET(病理組織学的分類の NET G1/G2)

に対し本剤+DOX の試験成績が、消化管 NET(病理組織学的分類の NET G1/G2)に対し本剤+5-FU

の試験成績がそれぞれ紹介されているのみで、膵 NET 及び消化管 NET の効能・効果でそれぞれ

承認されたエベロリムス、スニチニブ及びオクトレオチドでは外国と同様に標準治療薬として

その使用が推奨されている。

2.5.1.3 本剤の開発を行った科学的背景

(1) 膵・消化管神経内分泌腫瘍治療における化学療法

膵・消化管 NET に対する治療の第一選択は外科的切除である。腫瘍が切除不可能な部位にあ

るか又は根治切除が困難な場合に化学療法が適応される。また、化学療法により腫瘍サイズを

ある程度縮小させた後に切除術を行う、術前化学療法(Neo-adjuvant Chemotherapy)も試みら

れている 6)。本剤はニトロソウレア系のアルキル化剤に分類される細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤

であり、膵・消化管 NET に対する有効性が報告されている。また、国際的教科書及び欧米の各

種ガイドラインにおいて、本剤は膵 NET に対する標準治療薬、及び消化管 NET に対する選択肢

として記載されその使用が推奨されている。

(2) 本剤の有効性

本剤はグルコース残基を有しており、グルコーストランスポーター2(以下、「GLUT2」)を介

して膵ランゲルハンス島細胞等に取り込まれ、殺細胞効果を発揮すると考えられる。GLUT2 は

ヒトのランゲルハンス島β細胞以外では小腸、肝臓及び腎臓に多く発現している 7)こと及び消

化管 NET に対する本剤+5-FU 投与前後の生検により、本剤の小腸に対する抗腫瘍効果が示唆さ

れた 8)ことから、膵 NET に限らず消化管 NET に対する有効性も期待できる。

また、上述したように、国際的教科書及び欧米の各種ガイドラインにおいて、本剤は膵・消

化管 NET の標準治療薬として記載されており、外国における複数の無作為化試験でも本剤の腫

瘍縮小効果、腫瘍増殖抑制効果及び延命効果が示されている。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 9 -

(3) 本剤の外国における販売承認

1976 年に Upjohn 社が最初に米国で承認申請を行い、1982 年に承認を受けている。その後、

1984 年にカナダ、1985 年に仏国、1994 年にイスラエル、さらに 2006 年にスイスで販売承認さ

れている。

なお、Upjohn 社は 1996 年に Pharmacia 社と合併、Pharmacia & Upjohn 社と社名を変更し、

2003 年に Pfizer 社により吸収併合されている。さらに、Pfizer 社は本剤におけるすべての権

利を米国では 20 年 Teva 社に、米国以外では 20 年 Keocyt 社(仏国)にそれぞれ譲渡して

いる。

(4) 国内の使用実態

NET 化学療法調査研究グループにより、2010 年に実施された本剤の国内使用実態調査(添付

資料 5.3.5.2-6 参)によると、おおむね外国の添付文書に記載の用法・用量の範囲内で使用さ

れ、膵・消化管 NET に対し、本剤の単独療法又は他剤との併用療法により、外国と同様の有効

性が示された。また、副作用についても外国と同様であった。

2.5.1.4 臨床開発の経緯及び臨床データパッケージ

(1) 臨床開発の経緯

本剤は、国際的教科書及び欧米の各種ガイドラインにおいて、膵・消化管NETの標準治療薬

として記載されているが、国内では医薬品として承認されておらず、医師の個人輸入で使用さ

れていたことから、本剤の臨床現場への早期導入が専門医師から強く望まれていた。第5回未承

認薬使用問題検討会議(開催日:2005年7月22日)において、ワーキンググループ検討結果に基

づき本剤の必要性について議論され、早期の治験開始が必要であると結論された。また、第3

回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議(開催日:2010年4月27日)の結果を受け

て、申請者は2010年5月21日に医療上の必要性の高い未承認薬のひとつとして、厚生労働省から

開発要請を受けた。

本剤の開発にあたり、 及び について、「医薬品

相談」を行い医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」)から助言を受け(受付番

号: 、20 年 月 日)、進行性(切除不能又は転移性)の膵・消化管 NET を対象とした、

第Ⅰ/Ⅱ相試験を計画、実施した。

(2) 臨床データパッケージ

臨床データパッケージは、国内で実施した第Ⅰ/Ⅱ相試験を評価資料とし、米国、仏国の承

認申請時に添付された公表論文(参考資料)及び承認申請後の公表論文(参考資料)並びに本

剤の国内使用実態調査結果(レトロスペクティブ試験)の学会報告(参考資料)で構成した(表

2.5.1.4-1)。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 10 -

表 2.5.1.4-1 臨床データパッケージ 資料

区分

試験番号

(添付資料番号)

試験

デザイン 目的 用法・用量

被験

者数 対象疾患※5 備考

評価資料

国内

NPC-10-1

(5.3.5.2-1)

臨床薬理

非盲検、

非対照

有効性

安全性

PK

Daily 投与※1

STZ 500 g/m2/日

Weekly 投与※2

STZ 1,000 mg/m2/週で開始

し、最大 1,500 mg/m2/週ま

で増量

15

7

進行性(切除

不能又は転移

性)膵・消化

管 NET

Adolphe 1975

(5.3.3.2-2 参)

臨床薬理

非盲検、

非対照

PK STZ の[14C], [3H]標識体及び

非標識体 15 進行固形癌

申請時添付資料

として使用

Sadoff 1970

(5.3.5.2-2 参)

非盲検、

非対照 腎毒性

Weekly 投与※2

STZ 2,000 mg/m2/週等 18 進行固形癌

申請時添付資料

として使用

Moertel 1971

(5.3.5.4-1 参)

非盲検、

無作為化

有効性

安全性

糖尿病

誘発

Daily 投与※1

STZ 500、750、1,000 又は

1,500 mg/m2/日

Weekly 投与※2

STZ 1,000 mg/m2週

22

16

進行消化器癌

申請時添付資料

として使用

Stolinsky

1972

(5.3.5.2-3 参)

非盲検、

非対照

有効性

安全性

Weekly 投与※2

STZ 1,000 又は 2,000

mg/m2/週

53 進行固形癌

申請時添付資料

として使用

Broder 1973

(5.3.5.2-4 参)

(5.3.5.2-5 参)

レトロスペ

クティブ

有効性

安全性

STZ 600~1,000 mg/m2 静脈内

又は動脈内投与、主に Weekly

投与※2

52 転移性

膵島細胞癌

申請時添付資料

として使用

Moertel 1980

(5.3.5.1-1 参)

非盲検、

無作為化

有効性

安全性

STZ※3

STZ※3+5-FU 400 mg/m2/日

43

41

進行性

膵島細胞癌 -

Moertel 1992

(5.3.5.1-2 参)

非盲検、

無作為化

有効性

安全性

STZ※3+DOX 50 mg/m2

STZ※3+5-FU 400 mg/m2/日

クロロゾトシン 150 mg/m2

38

34

(33)

進行性

膵島細胞癌 -

Moertel 1979

(5.3.5.1-3 参)

非盲検、

無作為化

有効性

安全性

STZ※3+CPA 1,000 mg/m2

STZ※3+5-FU 400 mg/m2/日

47

42

転移性カルチ

ノイド腫瘍

申請時添付資料

として使用

Engstrom 1984

(5.3.5.1-4 参)

非盲検、

無作為化

有効性

安全性

STZ※3+5-FU 400 mg/m2/日

DOX 60 mg/m2

104

(91)

転移性カルチ

ノイド腫瘍 -

Bukowski

1987

(5.3.5.2-7 参)

非盲検、

非対照

有効性

安全性

心疾患の既往あり

STZ 400 又は 600 mg/m2を 1

及び 8日目に静脈内投与

心疾患の既往なし

STZ 200 又は 400 mg/m2を 1

及び 8日目に静脈内投与

65 転移性カルチ

ノイド腫瘍

申請時添付資料

として使用

Sun 2005

(5.3.5.1-5 参)

非盲検、

無作為化

有効性

安全性

STZ※3+5-FU 400 mg/m2/日

DOX 40 mg/m2+5-FU 400

mg/m2/日

78

(85)

進行性カルチ

ノイド腫瘍 -

Dahan 2009

(5.3.5.1-6 参)

非盲検、

無作為化

有効性

安全性

STZ※3+5-FU 400 mg/m2/日

IFN

32

(32)

進行性カルチ

ノイド腫瘍 -

参考資料

青木 2011

(5.3.5.2-6 参)

レトロス

ペクティ

有効性

安全性

Daily 投与※1又は Weekly

投与※4(おおむね外国の添付

文書に記載の用法・用量)

54 転移性

膵・消化管 NET -

STZ:ストレプトゾシン、5-FU:フルオロウラシル、DOX:ドキソルビシン、CPA:シクロホスファミド、

IFN:インターフェロンα

※1:各コースの Day1~5 に 5日間連日静脈内投与

※2:週 1回静脈内投与

※3:Daily 投与、本剤 500 mg/m2/日投与(1コース 6週間、ただし、Engstrom 1984 試験及び Sun 2005 試験は 1コース 10

週間)

※4:主に 1,000 mg/body/週、又は 1,000 mg/body/2 週投与

※5:一部旧疾患名での記載あり

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 11 -

2.5.1.5 対面助言

本剤の国内治験実施にあたり、PMDA と「医薬品 相談」を行い、

及び について助言を受けた(受付番号:第 号、20 年

月 日)。議事録(写)は CTD 1.13.1 に添付した。PMDA からの主な助言及び申請者の対応を表

2.5.1.5-1 に示した。

表 2.5.1.5-1 医薬品 相談時の PMDA からの主な助言及び申請者の対応

PMDA の助言 申請者の対応

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 12 -

PMDA の助言 申請者の対応

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.1 製品開発の根拠

- 13 -

PMDA の助言 申請者の対応

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ザノサー静注用 1.0 g 2.5.2 生物薬学剤の概括評価

- 14 -

2.5.2 生物薬剤学の概括評価

該当する試験は実施していない。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価

- 15 -

2.5.3 臨床薬理に関する概括評価

本剤の薬物動態に関するデータは、米国及び仏国の承認申請資料として添付された、進行癌

患者を対象とした Adolphe 1975 試験(添付資料 5.3.3.2-2 参)の論文 1報のみであり、本剤の

ヒトを対象とした薬物動態に関する成績は極めて少ない。本剤の国内開発では、日本人を対象

とした薬物動態に関するデータ収集が必要であると判断し、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験の実施にあたっ

ては、膵・消化管 NET を対象に本剤の有効性、安全性を検討することに加え本剤の薬物動態も

検討することにした。

2.5.3.1 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における薬物動態

(添付資料 5.3.3.2-1)

日本人の進行性(切除不能又は転移性)の膵・消化管 NET 患者を対象に、本剤の薬物動態が

検討された。Daily 投与 15 例、Weekly 投与 7例において、血漿中 STZ 濃度の測定を行った。

(1) ストレプトゾシンの血漿中濃度推移

Daily 投与(本剤 1日 1回 500 mg/m2を 5日間連続投与)及び Weekly 投与(本剤 1,000、1,250

及び 1,500 mg/m2を週 1 回投与)したときの STZ の血漿中濃度は、いずれの投与方法において

も、投与終了直前が最も高くなり、投与終了後 1.5 時間までに急激に減少し、投与終了後 3時

間以降は一定に推移していた。Weekly 投与では投与終了直前の最高血漿中 STZ 濃度は、投与量

の増量に伴い増加が認められた。

(2) 薬物動態パラメータ

STZ の血漿中からの消失半減期(t1/2)は、0.546~0.665 hr(32~40 分)であった。

Daily 投与は、1 日 1 回 500 mg/m2を 5 日間連続投与したことから本剤反復投与時の、また

Weekly 投与では 1,000 mg/m2~1,500 mg/m2まで増量が可能であったことから本剤増量時の、そ

れぞれ薬物動態パラメータへの影響が検討された。

本剤の反復投与では、投与 5 日目の PK パラメータは、投与 1 日目と同程度であり、一方、

増量により Cmaxに僅かな増加がみられたが、AUC0-t、AUC0-∞は同程度であったことから、反復投

与、増量による薬物動態パラメータへの影響はみられなかった。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価

- 16 -

2.5.3.2 進行癌患者を対象とした Adolphe 1975 試験における薬物動態

(添付資料 5.3.3.2-2 参)

外国人進行癌患者を対象に、本剤の薬物動態が検討された。15 例中 8 例に[3H]-STZ を投与、

6例([3H]-STZ が投与された 5例を含む)に[14C]-STZ を投与、残りの 6例には非標識体 STZ の

み投与された。

(1) 分布

STZ の未変化体は速やかに血漿中から消失し(初期相半減期:5 分、終末相半減期:35 分)、

投与後 3時間で血漿中に認めなかった。

脳脊髄液中[14C]濃度は 3 例で測定され、投与後 1 時間で血漿中濃度のほぼ 1/3、投与後 2 時

間では血漿中濃度と同程度であった。一方、脳脊髄液中[3H]は投与後 2 時間まで検出されなか

った。

(2) 排泄

標識 STZ を投与した 9 例の[14C]及び[3H]の投与終了後 4 時間までの累積尿中排泄率は、総投

与量の 20%~30%であったが、未変化体の排泄率は 10%未満であった。総投与量のごくわずか

(1%未満)の[14C]及び[3H]が糞中に排泄され、約 5%の[14C]が呼気中に排泄された。

2.5.3.3 結論

本剤の薬物動態に関する成績は、十分とは言えないが、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における本剤の

薬物動態の検討結果及び外国人における薬物動態試験の報告において、消失半減期は日本人で

32~40 分、外国人で 35分であり、日本人及び外国人に差はなかった。

日本人における薬物動態試験により、以下の点が確認された。

(1) いずれの投与方法においても、STZ 血漿中濃度の推移は、投与終了直前に最も高くなり、

投与終了後 1.5 時間までに急激に減少し、投与終了後 3時間以降は一定に推移していた。

(2) 本剤の反復投与あるいは増量による、STZ の薬物動態パラメータへの影響はなかった。

(3) いずれの投与方法においても、STZ の蓄積性は認めなかった。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.4 有効性の概括評価

- 17 -

2.5.4 有効性の概括評価

本剤の有効性評価については、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験成績を評価資料、米国、仏国の申請時に

添付された公表論文 報及び承認申請後の公表論文5報の外国公表論文10報並びに国内の使用

実態調査結果(レトロスペクティブ試験)の学会報告 1報をそれぞれ参考資料として、臨床的

有効性のデータパッケージを構成した(表 2.5.1.4-1)。また、この臨床データパッケージに加

え、国際的な教科書、外国の各種ガイドライン及び国内ガイドラインも引用し評価した。

2.5.4.1 試験方法

評価資料とした国内第Ⅰ/Ⅱ相試験及び参考資料とした国内外文献の臨床試験の試験方法の

概略を表 2.5.1.4.-1 に示した。

試験方法の詳細は、2.7.6 項に示した。

2.5.4.2 教科書、ガイドライン

有効性評価に使用した教科書、ガイドラインの一覧を 2.7.3 項の表 2.7.3.1-3 に示した。

2.5.4.3 ストレプトゾシンの膵・消化管神経内分泌腫瘍に対する有効性について

2.5.4.3.1 膵・消化管神経内分泌腫瘍に対して有効性を示す根拠

本剤はニトロソウレア系のアルキル化剤であり、GLUT2 を介して細胞内に取り込まれ、殺細

胞効果を発揮する。GLUT2 はヒトのランゲルハンス島β細胞以外では小腸、肝臓及び腎臓に多

く発現している 7)こと及び消化管 NET に対する本剤+5-FU 投与前後の生検により、本剤の小腸

における抗腫瘍効果が示唆された 8)ことから、膵 NET に限らず消化管 NET に対する有効性も期

待できる。

2.5.4.3.2 国内外における膵・消化管神経内分泌腫瘍の診断と治療

国内外における膵・消化管 NET の疫学、診断及び治療についての概略を表 2.5.4.3-1 に示す。

疫学では国内外で若干差はみられるものの、診断と治療については国内外で差はなかった。ま

た、国内の「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン第 1 版(2013 年 11 月)」

(5.3.5.5-10 参)では 2010 年の WHO 分類と同様の病理組織学的分類がされており、この分類

に基づいて治療することは極めて重要であると強調されており、今後国内においても 2010 年

WHO 分類が定着していくものと考えられる。さらに、近年、分子標的薬やソマトスタチンアナ

ログ製剤は、日本を含む国際共同試験成績や外国臨床試験成績が評価され、国内において膵 NET

あるいは消化管 NET の効能・効果を取得している。

このように膵・消化管 NET の診断と治療については国内外で差はなく、また、今回実施した

国内第 I/Ⅱ相試験においても、外国人患者と同様に本剤投与により日本人患者で腫瘍縮小効果

が認められており、さらに、STZ の血漿中からの消失半減期も国内外の患者で差がないなど外

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.4 有効性の概括評価

- 18 -

国臨床試験論文の成績を参考にすることは可能と考えた。

表 2.5.4.3-1 国内外における膵・消化管神経内分泌腫瘍の疫学、診断及び治療の比較

項目 膵 NET 消化管 NET

疫学 2005年の国内人口10万人あたりの年間有病者数は

約 2.23 人であり、欧米に比較し人口あたり約 2倍

の症例が存在すると考えられる。同様に新規発症

率は 1.01 人であり、米国の 3倍と日本の方が高い。

この理由は人種差よりも、日本における診断精度

の向上により腹部超音波検査がルーチンで施行さ

れるようになったこと、容易に高度の画像診断

(CT、MRI など)が施行できることなどが推察され

る。

2005 年の国内人口 10 万人あたりの年間有病者数

は約 3.45 人であり、欧米での報告の約 1.4 倍と多

かった。同様に新規発症率数は 2.10 人と推定され

る。また、部位別頻度、機能性頻度及び遠隔転移

率が欧米との差を認めた。これらの違いについて

のエビデンスはないが、人種差が最も考えられる。

また、欧米と異なりわが国では容易に消化管内視

鏡検査が施行できるため、小さな消化管 NET が発

見されやすく早期に処置されることも考えられ

る。

診断 国内外いずれも、問診、症状、理学的所見、一般臨

床検査所見、産生ホルモンの分泌過剰を証明するた

めの血中ホルモン測定などから本腫瘍に特有の臨

床徴候、病態生理の有無を検索し診断する。なお、

国内では未承認であるが、外国では主にクロモグラ

ニンAが非機能性NETの腫瘍マーカーとして用いら

れる。

膵・消化管 NET の分類は国内、外国いずれも WHO

の病理組織学的分類 2010 により行われる。

国内外いずれも、カルチノイド症候群を呈する患

者では、尿中の 5‐ヒドロキシインドール酢酸

(5-HIAA)の量から診断が確定される。なお、国

内では未承認であるが、外国では主にクロモグラ

ニン Aが非機能性 NET の腫瘍マーカーとして用い

られる。

膵・消化管 NET の分類は国内、外国いずれも WHO

の病理組織学的分類 2010 により行われる。

治療 国内外いずれも、第一選択は外科切除、転移巣な

どの切除できない場合に化学療法を行う。外国で

使用できる化学療法剤の一部は国内で使用できな

いものもある。

国内外いずれも、第一選択は外科切除、転移巣な

どの切除できない場合に化学療法を行う。外国で

使用できる化学療法剤の一部は国内で使用できな

いものもある。

(実践マニュアル 伊藤鉄英他、抜粋)1)

2.5.4.3.3 国内外の臨床試験成績

(1) 腫瘍縮小効果及び腫瘍増殖抑制効果

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験の客観的腫瘍縮小効果は、固形がんの薬効評価として広く認知されてい

る RECIST ガイドライン(ver 1.1)9)による腫瘍縮小効果を用いて判定した。一方、今回引用

した国内外の公表論文では奏効の判定にホルモン、腫瘍マーカー等の生化学的所見を加味した

評価あるいは腫瘍縮小効果のみの評価が混在していたことから、RECIST とは同一の判定規準で

はないが、奏効判定を腫瘍縮小効果のみで行っている論文における、国内外の膵・消化管 NET

に対する本剤の有効性を表 2.5.4.3-2 に示す。

本剤単独投与による国内第Ⅰ/Ⅱ相試験では、膵・消化管 NET に対する奏効率が 9.5%(95%

信頼区間 1.2~30.4%)、病勢コントロール率は 100%(95%信頼区間 86.7~100.0%)と腫瘍

縮小効果及び腫瘍増殖抑制効果が確認された。一方、国内外の臨床試験論文における膵・消化

管 NET に対する奏効率は、本剤単独又は他の抗悪性腫瘍剤との併用療法で 26.1%、病勢コント

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.4 有効性の概括評価

- 19 -

ロール率は 45.7%であり(添付資料 5.3.5.2-6 参)、疾患別に報告されている論文では、本剤

単独投与での奏効率は膵 NET が 50~63%、本剤+他の抗悪性腫瘍剤の併用療法(本剤との併用

療法)での奏功率は消化管 NET が 3~24%であった。

公表論文間で奏効率に大きな差異がある点について、国際的教科書(添付資料 5.3.5.5-1 参)

で、これは試験の実施時期により腫瘍縮小効果の判定基準に差異があることが要因の一つと考

えられると記載されている。奏効率の差異について大きな議論となっていたことから、

Kouvaraki ら 10)は大規模なレトロスペクティブ研究を行ない、進行性、転移性の膵 NET 患者 84

例を対象に本剤+5-FU+DOX 投与の腫瘍縮小効果を RECIST により評価した結果、奏効率は 39%

であったと記載している。

公表論文での比較は上述のとおりであるが、少なくとも、本剤投与によって、国内外ともに

CR 及び PR の症例がみられるなど、膵・消化管 NET 患者に対し腫瘍縮小効果及び腫瘍増殖抑制

効果が得られており、本剤は当該腫瘍治療の選択肢の一つとして位置付けられる薬剤であると

考える。

最近、国内で膵 NET の効能・効果を取得した 2剤(エベロリムス、スニチニブリンゴ酸塩)

の国際共同試験(二重盲検比較試験)における RECIST 基準による奏効率は、エベロリムスが

4.8%(10/207 例、95%信頼区間 2.3~8.7%)11)、スニチニブリンゴ酸塩が 9.3%(8/86 例、

95%信頼区間 4.1~17.5%)12)であった。また、同様に、消化管 NET の効能・効果を取得した

オクトレオチド酢酸塩では奏効率の具体的な記載はなく、プラセボ群を含む全 85 例のうち 1

例に PR を認めたと報告 13)されている。文献上の比較であるが、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験で得られた

本剤の腫瘍縮小効果は、これら 3剤に遜色ないと考えた。

表 2.5.4.3-2 膵・消化管神経内分泌腫瘍に対する腫瘍縮小効果

効果判定(例数) 対象

試験名

試験デザイン

(添付資料番号)

投与薬剤 CR PR SD

奏効率※1

(%)

病勢コントロール率※2

(%) 備考

NPC-10-1 試験

非盲検、非対照

(5.3.5.2-1)

NPC-10(STZ)

単独 0 2 13※3

9.5 (2/21 例)

95% CI:

1.2~30.4

100 (21/21 例)

95% CI:

86.7~100.0

- 膵・

消化管

NET 青木 2011

レトロスペクティブ

(5.3.5.2-6 参)

STZ 単独投与又

は他の抗腫瘍剤

との併用

- - - 26.1 45.7 -

機能性腫瘍

5 10 -

50

(15/30 例) -

非機能性腫瘍 膵 NET

Broder 1973

非盲検、非対照

(5.3.5.2-4 参)

(5.3.5.2-5 参)

STZ 単独

1 4 -

63

(5/8 例)

STZ+CPA 3 7 14 24

(10/42 例)

57

(24/42 例) Moertel 1979※4

非盲検、無作為化

(5.3.5.1-3 参) STZ+5-FU 3 5 17 21

(8/38 例)

66

(25/38 例)

奏効率:NS

STZ+5-FU 0 12 12 15

(12/78 例)

31

(24/78 例)

消化管

NET

Sun 2005※4

非盲検、無作為化

(5.3.5.1-5 参) DOX+5-FU 2 9 13 13

(11/85 例)

28

(24/85 例)

奏効率:NS

Dahan 2009※4

非盲検、無作為化 STZ+5-FU 0 1 18

3

(1/32 例)

59

(19/32 例) 奏効率:NS

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.4 有効性の概括評価

- 20 -

効果判定(例数) 対象

試験名

試験デザイン

(添付資料番号)

投与薬剤 CR PR SD

奏効率※1

(%)

病勢コントロール率※2

(%) 備考

(5.3.5.1-6 参)

IFN 単独 0 3 20 9

(3/32 例)

72

(23/32 例)

CR : 完全奏効、PR : 部分奏効、SD:安定

STZ:ストレプトゾシン、5-FU:フルオロウラシル、DOX:ドキソルビンシン、CPA:シクロホスファミド、IFN:インターフ

ェロンα

※1:CR+PR

※2:CR+PR+SD

※3:Non-CR/Non-PD を含む

※4:一部消化管以外の原発例を含む

(2) 無増悪生存期間、全生存期間

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験では、無増悪生存期間(以下、「PFS」)及び全生存期間(以下、「OS」)の

検討は行っていないが、参考までに国内外公表論文の PFS 及び OS の中央値を表 2.5.4.3-3 に示

す。

1992 年以前に報告された論文では、PFS としての記載はなく、進行までの期間又は奏効期間

としており、これらも PFS として扱った。

膵 NET を対象にした無作為化試験(添付資料 5.3.5.1-2 参)による本剤+DOX 併用群、本剤

+5-FU 併用群、CLZ 単独群の比較では、PFS がそれぞれ 18 ヵ月、14 ヵ月及び 17 ヵ月であった。

OS の評価では、本剤+DOX 併用群が他の 2 群に比べ有意に長かった。また、同様に消化管 NET

を対象に、本剤+5-FU 併用群と DOX+5-FU 併用群の比較では PFS は両群間に差はなかったが、

OS は本剤+5-FU 併用群 24.3 ヵ月、DOX+5-FU 併用群 15.7 ヵ月と本剤+5-FU 併用群で有意に長

かった(添付資料 5.3.5.1-5 参)。

このように国内外の公表論文では本剤投与により OS の延長が認められている。

なお、国内で膵 NET を効能・効果とする、エベロリムス及びスニチニブリンゴ酸塩の国際共

同試験における PFS において、エベロリムスは 19.5 ヵ月 11)、スニチニブリンゴ酸塩は 11.4 ヵ

月 12)であった。国内で消化管 NET を効能・効果とするオクトレオチド酢酸塩の外国臨床試験 13)

における PFS は 14.3 ヵ月であった。

上述の教科書(添付資料 5.3.5.5-1 参)では Kouvaraki ら 10)の論文を引用し、進行性、転移

性膵 NET 患者 84 例に対し、本剤+5-FU 投与による PFS 中央値は 18 ヵ月、OSの中央値は 37 ヵ

月であったとしている。膵 NET における本剤の単独又は他剤との併用による PFS は、エベロリ

ムスやスニチニブリンゴ酸塩に遜色ないと考えた。

一方、消化管 NET における本剤単独又は本剤+他剤併用による PFS は、オクトレオチド酢酸

塩に比し短期間であった。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.4 有効性の概括評価

- 21 -

表 2.5.4.3-3 膵・消化管神経内分泌腫瘍における生存期間中央値

疾患

試験名

試験デザイン

(添付資料番号)

投与薬剤 PFS

(月)

OS

(月) 備考

膵・

消化管

NET

青木 2011

レトロスペクティブ

(5.3.5.2-6 参)

STZ 単独又は他の抗腫瘍剤との

併用 10.7 38.7 -

機能性 - 25.0

(751 日) Broder 1973

レトロスペクティブ

(5.3.5.2-4・5 参)

STZ 単独

非機能性 - 34.4

(1033 日)

STZ 単独 17※1 16.5

(1.4 年) Moertel 1980

非盲検、無作為化

(5.3.5.1-1 参) STZ+5-FU 17※1 26.0

(2.2 年)

PFS:NS

OS:NS

① STZ+DOX 18※2 26.4

(2.2 年)

② STZ+5-FU 14※2 16.8

(1.4 年)

膵 NET

Moertel 1992

非盲検、無作為化

(5.3.5.1-2 参)

③ CLZ 単独 17※2 18.0

(1.5 年)

OS:

①vs②:P<0.03

①vs③:P<0.004

STZ+CPA - 12.5 Moertel 1979※4

非盲検、無作為化

(5.3.5.1-3 参) STZ+5-FU - 11.2

OS:NS

STZ+5-FU 7.8

(31 週)

16.0

(64 週) Engstrom 1984※4

非盲検、無作為化

(5.3.5.1-4 参) DOX 単独 6.5

(26 週)

12.0

(48 週)

OS:

P<0.25

心疾患の既往あり

FC-S:STZ+5-FU+CPA - 7.6 Bukowski 1987※4

非盲検、非無作為化

(5.3.5.2-7 参) 心疾患の既往なし

FAC-S:STZ+5-FU+DOX+CPA - 12.9

STZ+5-FU 5.3 24.3 Sun 2005※4

非盲検、無作為化

(5.3.5.1-5 参) DOX+5-FU 4.5 15.7

OS:

P=0.0267

PFS:

NS

STZ+5-FU 5.5 30.4

消化管

NET

Dahan 2009※4

非盲検、無作為化

(5.3.5.1-6 参) IFN 単独 14.1 44.3

OS:NS

STZ:ストレプトゾシン、5-FU:フルオロウラシル、DOX:ドキソルビシン、CPA:シクロホスファミド、IFN:インターフェ

ロンα

PFS:無増悪生存期間、OS:全生存期間

NS:有意差なし

※1:Time to progression

※2:Duration of regression

※3:Response duration

※4:一部消化管以外の原発例を含む

2.5.4.3.4 教科書及びガイドライン

膵・消化管 NET の診療における教科書及び各種ガイドラインの記載内容を表 2.5.4.3-4 に示

す。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.4 有効性の概括評価

- 22 -

表 2.5.4.3-4 教科書及び各種ガイドラインの一覧

資料名 (添付資料番号)

対象疾患※1 有効性又は臨床的位置付け 出版年

転移性又は切除

不可能な膵 NET

STZ を基本とする化学療法が標準治療である。

細胞傷害性化学療法剤は、膵 NET の治療におい

て、重要な役割を果たしている。 教科書

Cancer

Principles &

Practice of

Oncology 9th

Edition

(5.3.5.5-1 参)

(5.3.5.5-2 参)

悪性カルチノイ

ド腫瘍

STZ、5-FU、DOX などの単独又は STZ を基本とす

る併用による有効性の報告はあるが、一般に化

学療法剤は種々の治療を試みた後に選択する、

予備的な位置付けである。

2011 年

切除不能の膵 NET STZ、DOX、5-FU、chlorozotocin、dacarbazine、

temozolomide などの単独又は併用による化学

療法が推奨される。

2012 年 NCI PDQ:

National Cancer

Institute

Physician Data

Query

(5.3.5.5-3 参)

転移性消化管カ

ルチノイド

化学療法剤の効果は少ない。単独投与又は併用

療法のいずれにおいても奏効率が 15%を超え

ることはない。

2012 年

臨床的に明らか

な進行を認める

症候性膵内分泌

腫瘍

STZ、DOX、5-FU、temozolomide、dacarbazine、

everolimus、sunitinib、capecitabine の効果

は確立している(カテゴリー2A:低レベルの臨

床的エビデンスに基づき、介入が適切であると

の統一されたコンセンサス)。

NCCN:

Clinical

Practice

Guidelines in

Oncology

(5.3.5.5-4 参) 進行性の高分化

型カルチノイド

腫瘍

細胞傷害性化学療法剤に反応することは稀であ

る(カテゴリー3:介入は適切ではない)。

2013 年※2

低~中等度の増

殖能を有し、悪性

で切除不可能な

膵 NET

STZ+5-FU 又は STZ+DOX の併用療法を標準治療

として推奨。20~35%の患者に客観的奏効が得ら

れる。プレメディケーションとして制吐剤の投

与及びハイドレーションを推奨。

2009 年 ENETS:

The European

Neuroendocrine

Tumor Society

(5.3.5.5-5 参)

(5.3.5.5-6 参)

肝及び遠隔転移

の前腸、中腸、後

腸 NET G1/G2

進行転移性の高分化型(NET G1/G2)前腸 NET に

対し、全身化学療法を第一選択として、STZ+

5-FU/DOX の併用療法を推奨。高分化型中腸 NET

に対する全身化学療法は、奏効率が 15%以下で

あり、先行する治療が無効で進行を認める場合

の最終選択とすべきである。また、後腸 NET G2

の肝転移に対し、全身化学療法のエビデンスは

少ないが、進行例において試みることができる。

2012 年

ガイドライン

NANETS:

The North

American

Neuroendocrine

Tumor Society

(5.3.5.5-7 参)

(5.3.5.5-8 参)

高分化型の前腸

(胃・膵)NET

膵 NET に対し、最も効果が期待できる化学療法

は STZ+5-FU、STZ+DOX 又は STZ+5-FU+DOX

の併用療法である。

悪性の胃 NET に対し、STZ、5-FU 又は DOX の単

独投与により、中等度の奏効率が得られる。こ

れらの単独投与に比し、併用療法が優れるとい

うエビデンスはない。

2010 年

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.4 有効性の概括評価

- 23 -

資料名 (添付資料番号)

対象疾患※1 有効性又は臨床的位置付け 出版年

高分化型の中腸

(空腸、回腸、虫

垂、盲腸)NET

細胞傷害性化学療法剤は、他の治療を試みた後

に考慮すべきである。 2010 年

高分化型の後腸

(結腸、直腸)NET

データが不十分である。進行性で浸潤性の腫瘍

に対し、他治療で十分な効果が得られなかった

場合のみ、細胞傷害性化学療法剤の使用を考慮

すべきである。

2010 年

膵 NET 膵 NET(G1/G2)に対し、エベロリムス、スニチ

ニブが推奨される。STZ+DOX(当該腫瘍未承認)

も他の治療レジメンに比べて有意な生存期間を

示している。

JNETS:日本

膵・消化管神経

内分泌腫瘍

(NET)診療ガイ

ドライン 第 1

(5.3.5.5-10 参)

消化管 NET 消化管 NET(G1/G2)に対し、オクトレオチドが

推奨される。全身化学療法は、奏効率が低いが

「増悪を示し、かつ、他の治療選択肢がない場

合」には選択肢の一つとして検討する必要があ

る。海外ではフッ化ピリミジン製剤、STZ、ダ

カルバジン、テモゾロミドなどが用いられる。

5-FU は古くから STZ と併用され、比較的高い 20

~30%前後の奏効割合が報告されている。

2013 年※2

STZ:ストレプトゾシン、5-FU:フルオロウラシル、DOX:ドキソルビシン

※1:一部旧疾患名の記載あり

※2:エベロリムス、スニチニブ及びオクトレオチド承認以降のガイドライン

膵 NET については、腫瘍学の国際的な教科書の一つである Cancer : Principle & Practice of

Oncology 9th Edition(添付資料 5.3.5.5-1 参)において、転移性又は切除不能な膵 NET(膵内

分泌腫瘍又は膵島細胞癌)に対し、本剤単独又は本剤+DOX、5-FU 等との併用療法が標準治療

となっている。また、NCI-PDQ(添付資料 5.3.5.5-3 参)、NCCN(添付資料 5.3.5.5-4 参)、ENETS

(添付資料 5.3.5.5-5 参)及び NANETS(添付資料 5.3.5.5-7 参)などの国際的なガイドライン

では、最も効果が期待できる化学療法として、本剤の単独投与あるいは本剤+DOX、5-FU など

との併用療法が標準治療とされている。

一方、消化管 NET については、上記教科書、各種ガイドラインにおいて、膵 NET に比し奏効

率は低いものの、治療選択肢の一つとして、本剤、5-FU 又は DOX の単独又はこれらの併用療法

が紹介されている。

国内の膵・消化管NET診療ガイドライン(5.3.5.5-10参)では、膵NETの腫瘍増大が明らかな

例や、腫瘍が広範に存在し腫瘍増大がおこると臓器機能や生命に関わるおそれのある例が化学

療法の適応となり、膵NET(G1、G2)に対する全身化学療法として、本剤+DOXの試験成績が紹

介されている。また、消化管NETに対する治療法を選択する際には、組織学的Grade、肝転移の

程度、内分泌症状の有無、患者の全身状態、使用可能な治療法からみた総合的な判断が必要で

あり、増悪を示し、かつ、他の治療選択肢がない消化管NET(G1、G2)に対する全身化学療法と

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.4 有効性の概括評価

- 24 -

して、本剤+5-FUの試験成績が紹介されている。

外国では2010年以降エベロリムス、スニチニブ及びオクトレオチドが膵NET又は消化管NETの

効能・効果を取得して以来、2013年以降に発表された外国ガイドラインでは、膵NETに対し本剤

に加えエベロリムス及びスニチニブが、消化管NETに対しオクトレオチドが当該腫瘍の標準治療

薬となっている。従って、国内においても本剤が承認を得ることができれば、国内のガイドラ

イン(添付資料5.3.5.5-10参)においても、国内既承認の上記3剤と同様に本剤も膵NETの標準治

療薬及び消化管NETの選択肢となるものと考えられる。

2.5.4.4 まとめ

本剤は、欧米において膵・消化管 NET に対し複数の無作為化比較試験で有効性、安全性が確

認され、欧米の教科書、各種ガイドラインでは、膵 NET に対する標準治療薬として、消化管 NET

に対するオクトレオチドに次ぐ治療選択肢として位置付けられている。また、本剤は米国、仏

国などで発売され、30 数年来の使用実績があり本剤の有用性は確立されている。

一方、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験においても日本人膵・消化管 NET 患者に対して、外国と同様に本

剤投与により腫瘍縮小効果及び腫瘍増殖抑制効果が認められた。国内においても本剤が承認を

得ることができれば、国内のガイドライン(添付資料 5.3.5.5-10 参)においても、既承認の上

記 3剤と同様に本剤も膵 NET の標準治療薬及び消化管 NET のオクトレオチドに次ぐ治療選択肢

となるものと考えられる。

以上、本剤は国内における進行性(切除不能又は転移性)の膵・消化管 NET 患者に対する治

療の新たな選択肢となるとともに、欧米の標準治療を国内においても提供可能となり、当該腫

瘍に対する治療の幅を拡げる有用な細胞傷害性抗悪性腫瘍剤となるものと考えられた。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 25 -

2.5.5 安全性の概括評価

2.5.5.1 薬理学的分類に特徴的な有害作用

本剤はニトロソウレア系の細胞傷害性抗悪性腫瘍剤であることから、骨髄抑制及び悪心・嘔

吐が懸念される。

2.5.5.2 特定の有害事象をモニターするための特別な方法

特定の有害事象をモニターするための特別な方法は設定していない。本剤においても、他の

化学療法剤の投与前後に日常的に行われている、臨床検査、尿検査、バイタルサイン及び身体

症状のモニターにより、臨床症状、徴候を注意深く管理することが必要である。

2.5.5.3 動物における毒性学的情報及び製品の品質に関する情報

2.5.5.3.1 動物における毒性学的情報

(1) ラット及びウサギの胚・胎児発生に関する試験(4.2.3.5.2-1 参)

・ SD 系ラットにおいて着床数、黄体数、吸収胚数、同腹児数、性比などに異常はなかったが、

胎児体重の低値、胎児の化骨遅延(脊椎、中手骨)、胸骨分節の欠損などが認められた。そ

の他、肋骨の欠損、水腎症、水尿管が観察された。また、Dutch-Belted 系ウサギでは、着

床数、黄体数、吸収胚数、同腹児数、胎児体重、性比などに異常はなかったが、吸収胚数

の増加傾向及び同腹児数の減少傾向がみられた。胎児の内臓及び骨格検査において異常は

なかった。

生殖発生毒性に関しては、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験では被験者が女性の場合、妊娠の可能性を確

認し、該当する場合は妊娠検査を実施した。また、妊娠する可能性のある被験者、男性被験者

及びそのパートナーには、治験期間中及び治験終了後少なくとも 3ヵ月間は適切な避妊をする

ことを同意取得時に指導した。なお、試験期間中、妊娠又は妊娠を希望する例はなかった。

2.5.5.3.2 製品の品質に関する情報

本剤の原薬及び製剤において、多数の類縁物質の存在が確認されている。本薬の強制劣化品

(原薬を光照射及び加熱分解して得られた類縁物質配合品)及び非劣化品を用いて、ラット 2

週間反復静脈内投与毒性試験及び復帰突然変異試験を実施した。その結果、類縁物質配合品の

ラット 2 週間静脈内投与毒性試験及び復帰突然変異試験とも新規な毒性は発現せず、類縁物質

の影響は低いものと考えられた。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 26 -

2.5.5.4 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における安全性の概括評価

2.5.5.4.1 対象となった患者集団の特徴及び曝露の程度

(1) 患者集団の特徴

平均年齢は 56.8 歳で、性別では男性 10 例(45.5%)、女性 12 例(54.5%)であった(2.7.3

項、表 2.7.3.4-1)。

(2) 曝露の程度

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における、累積投与量では Weekly 投与(平均値:26,292.3 mg)が Daily

投与(平均値:14,270.5 mg)の約 2倍の曝露量(2.7.4 項、表 2.7.4.1-5)であったが、発現

した有害事象の種類、重症度に特段の差は認めなかった。また、懸念された腎毒性の症状、徴

候はいずれの投与方法においても認めなかった。

2.5.5.4.2 比較的よくみられる有害事象

有害事象及び副作用の発現状況を表 2.5.5.4-1 に示す。

有害事象は、有害事象評価対象例 22例全例に発現し、重篤な有害事象は 2例(9.1%)に発

現した。また、副作用(有害事象のうち治験薬との因果関係が否定されなかった事象)も 22

例全例に発現し、重篤な副作用は 1例(4.5%)に発現した。有害事象により治験薬の投与を中

止した症例は 2例(9.1%)であった。

表 2.5.5.4-1 有害事象及び副作用の発現状況

安全性評価例数(例) 22

有害事象発現例数(例) 22

有害事象発現率(%) 100.0

有害事象発現件数(件) 396

重篤な有害事象発現例数(例) 2

重篤な有害事象発現率(%) 9.1

副作用発現例数(例) 22

副作用発現率(%) 100.0

副作用発現件数(件) 323

重篤な副作用発現例数(例) 1

重篤な副作用発現率(%) 4.5

(1) 有害事象及び副作用

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験において、各投与方法のいずれかで発現率が 20%以上の有害事象及び副

作用をそれぞれ表 2.5.5.4-2、2.5.5.4-3 に示す。なお、Weekly 投与の場合 1/7 例に発現する

と 10%を超え、全体集計と変わらないことから、本項では 20%以上の事象を抽出した。

両投与方法ともに 20%以上の発現率を示した有害事象は、鼻咽頭炎、血管障害(血管痛)、

便秘、悪心、倦怠感、γ-GTP 増加、尿中ブドウ糖陽性で、副作用は、血管障害(血管痛)、悪

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 27 -

心、倦怠感、γ-GTP 増加、尿中ブドウ糖陽性であった。

なお、有害事象及び副作用の一覧表は、2.7.6 項の表 2.7.6-10 及び表 2.7.6-11 にそれぞれ

示した。

表 2.5.5.4-2 各投与方法で発現率が 20%以上の有害事象

Daily 投与(n=15) Weekly 投与(n=7) 全体(n=22) 事象名

発現例数(%) 発現例数(%) 発現例数(%)

鼻咽頭炎 6(40.0) 2(28.6) 8(36.4)

高血糖 3(20.0) 1(14.3) 4(18.2)

食欲減退 2(13.3) 2(28.6) 4(18.2)

味覚異常 2(13.3) 3(42.9) 5(22.7)

血管障害(血管痛) 10(66.7) 3(42.9) 13(59.1)

便秘 10(66.7) 2(28.6) 12(54.5)

下痢 3(20.0) 1(14.3) 4(18.2)

悪心 7(46.7) 5(71.4) 12(54.5)

口内炎 1( 6.7) 3(42.9) 4(18.2)

嘔吐 5(33.3) 0 5(22.7)

蛋白尿 0 2(28.6) 2( 9.1)

倦怠感 3(20.0) 3(42.9) 6(27.3)

ALT 増加 1( 6.7) 3(42.9) 4(18.2)

AST 増加 0 5(71.4) 5(22.7)

γ-GTP 増加 5(33.3) 3(42.9) 8(36.4)

尿中ブドウ糖陽性 4(26.7) 3(42.9) 7(31.8)

好中球数減少 2(13.3) 2(28.6) 4(18.2)

白血球数減少 0 2(28.6) 2( 9.1)

表 2.5.5.4-3 各投与方法で発現率が 20%以上の副作用

Daily 投与(n=15) Weekly 投与(n=7) 全体(n=22) 事象名

発現例数(%) 発現例数(%) 発現例数(%)

食欲減退 1( 6.7) 2(28.6) 3(13.6)

味覚異常 2(13.3) 3(42.9) 5(22.7)

血管障害(血管痛) 10(66.7) 3(42.9) 13(59.1)

便秘 9(60.0) 1(14.3) 10(45.5)

悪心 5(33.3) 5(71.4) 10(45.5)

口内炎 1( 6.7) 3(42.9) 4(18.2)

嘔吐 4(26.7) 0 4(18.2)

蛋白尿 0 2(28.6) 2( 9.1)

倦怠感 3(20.0) 2(28.6) 5(22.7)

ALT 増加 1( 6.7) 3(42.9) 4(18.2)

AST 増加 0 4(57.1) 4(18.2)

γ-GTP 増加 5(33.3) 2(28.6) 7(31.8)

尿中ブドウ糖陽性 3(20.0) 2(28.6) 5(22.7)

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 28 -

2.5.5.4.3 死亡、重篤な有害事象及び重要な有害事象

(1) 死亡

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験において治験中の死亡例はなかった。

(2) 重篤な有害事象

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における重篤な有害事象は、22例中 2例(9.1%)に発現した。これらの

事象を(2.7.4 項、表 2.7.4.2-5)に示した。

急性胆管炎(Daily 投与)による入院 1例及び十二指腸潰瘍(Weekly 投与)による入院 1例

が認められた。急性胆管炎は治験薬投与開始前から繰り返し発現していた事象として、治験薬

との因果関係は否定されたが、十二指腸潰瘍は否定されなかった。なお、これらの事象につい

て本試験の効果安全性評価委員会への報告を行った。それぞれの事象に対し、全委員から、治

験責任医師の判断を支持し、「治験をこのまま継続することに問題ない」との回答を得た。

(3) 重要な有害事象

1) 投与中止に至った有害事象

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験において、治験薬投与中止に至った有害事象として、糖尿病(Daily 投与、

事象名:糖尿病の悪化)が 1例、好中球数減少(Weekly 投与)が 1例に認められた。糖尿病及

び好中球数減少ともに治験薬との因果関係は「関連なし」と判断された。

糖尿病は被験者の合併症であり、治験前から治療を受けていたが、医師の指示が守れず糖尿

病の悪化が発現した。本例は薬剤治療などにより軽快した。

また、好中球数減少を認めた被験者は未回復だが、治験開始時より好中球数減少があり、治

験薬投与は 1回しか行われず、それと関係なく低値が持続したため、治験責任医師により追跡

調査は不要と判断された。

2) Grade 3 の有害事象

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験では、Grade 4、5 の有害事象は認められなかった。Grade 3 の有害事象

を表 2.5.5.4-4 に示す。

いずれかの投与方法で 2例以上にみられた Grade 3 の有害事象は、γ-GTP 増加とリンパ球数

減少であった。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 29 -

表 2.5.5.4-4 投与方法別 Grade 3 の有害事象

Daily 投与(n=15) Weekly 投与(n=7) 全体(n=22) 事象名

発現例数(%) 発現例数(%) 発現例数(%)

歯肉感染 1( 6.7) 0 1( 4.5)

糖尿病 1( 6.7) 0 1( 4.5)

高血糖 1( 6.7) 0 1( 4.5)

高血圧 1( 6.7) 0 1( 4.5)

十二指腸潰瘍 0 1(14.3) 1( 4.5)

悪心 1( 6.7) 0 1( 4.5)

急性胆管炎 1( 6.7) 0 1( 4.5)

関節滲出液 1( 6.7) 0 1( 4.5)

ALT 増加 0 1(14.3) 1( 4.5)

AST 増加 0 1(14.3) 1( 4.5)

γ-GTP 増加 2(13.3) 2(28.6) 4(18.2)

リンパ球数減少 2(13.3) 0 2( 9.1)

白血球数減少 0 1(14.3) 1( 4.5)

3) ストレプトゾシン投与で発現が予測される有害事象

外国臨床試験などから、本剤投与により発現が予測される有害事象として、悪心、嘔吐、腎

毒性(高窒素血症、無尿、低リン酸血症及び腎尿細管性アシドーシスなど)、骨髄抑制による好

中球減少症及び白血球減少症などの血液毒性、耐糖能異常関連の糖尿病、高血糖、尿中ブドウ

糖陽性などが報告されている。国内第Ⅰ/Ⅱ相試験におけるこれらの有害事象を表 2.5.5.4-6

に示す。

表 2.5.5.4-6 ストレプトゾシン投与で発現が予測される有害事象

Daily 投与(n=15) Weekly 投与(n=7) 全体(n=22) 事象名

全 Grade Grade 3 全 Grade Grade 3 全 Grade Grade 3

悪心 7

(46.1)

1

(6.7)

5

(71.4) 0

12

(54.5)

1

(4.5)

嘔吐 5

(33.3) 0 0 0

5

(22.7) 0

好中球数減少 2

(13.3) 0

2

(28.6) 0

4

(18.2) 0

白血球数減少 0 0 2

(28.6)

1

(14.3)

2

( 9.1)

1

(4.5)

糖尿病 2

(13.3)

1

(6.7) 0 0

2

( 9.1)

1

(4.5)

高血糖 3

(20.0)

1

(6.7)

1

(14.3) 0

4

(18.2)

1

(4.5)

尿中ブドウ糖陽性 4

(26.7) 0

3

(42.9) 0

7

(31.8) 0

Grade 4・5 として報告された有害事象はなかった。 例数(%)

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 30 -

a) 悪心、嘔吐

悪心は予測される有害事象のうち最も高い発現率を示したが、Grade 3 と報告されたのは 1

例のみであった。一方、嘔吐の Grade 3 はなかった。

b) 腎毒性

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験においては、腎毒性を示唆する症状、徴候は認められなかった。

c) 血液毒性

Grade 3 の有害事象は、白血球数減少の 1 例に認めた。本事象と治験薬との因果関係は、治

験責任医師より否定されている。

d) 耐糖能異常

耐糖能異常に関連する有害事象で Grade 3 と判定されたものは、糖尿病、高血糖の各 1例で

あったが、糖尿病の 1例の治験薬との因果関係は、治験責任医師により否定されている。また、

高血糖を示した 1例は、本剤投与開始時に既に糖尿病を有しており、一過性に血糖値の上昇を

認めたが、治験薬の減量、中止やその他の処置を必要とせずに回復した。

4) 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験で発現率が高かった有害事象

本剤投与で発現が予測される有害事象以外に、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験で発現率が高かった有害

事象を表 2.5.5.4-9 に示す。

血管障害(血管痛)59.1%(13/22 例)と便秘 54.5%(12/22 例)であり、いずれも Grade 1

又は 2の事象であった。

表 2.5.5.4-9 発現率が高かったその他の有害事象

Daily 投与(n=15) Weekly 投与(n=7) 全体(n=22) 事象名

全 Grade Grade 3 全 Grade Grade 3 全 Grade Grade 3

血管障害(血管痛) 10

(66.7) 0

3

(42.9) 0

13

(59.1) 0

便秘 10

(66.7) 0

2

(28.6) 0

12

(54.5) 0

Grade 4・5 として報告された有害事象はなかった。 例数(%)

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 31 -

2.5.5.5 各試験結果の類似性及び相違点及びそれらが安全性の評価結果に及ぼす

影響

2.5.5.5.1 ストレプトゾシン投与で発現が予測される有害事象

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験及び本剤の安全性評価に引用した国内外の公表論文において、本剤投与

で発現が予測される有害事象の発現状況を以下にまとめた。

なお、上記公表論文の内訳は、有効性評価に使用した 11 報に、本剤の腎毒性が検討された

論文 1報(添付資料 5.3.5.2-2 参)を加えた 12 報である。

(1) 悪心、嘔吐

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験ではプレメディケーションとして、悪心、嘔吐に対し、5HT3受容体拮抗剤、

NK1(ニューロキニン 1)受容体拮抗剤などの制吐剤又はデキサメタゾン投与を行った。その結

果、悪心が全体で 54.5%(12/22 例)、嘔吐は 22.7%(5/22 例)に認めたものの、その程度は

大部分が Grade 1 であり、投与中止に至った被験者は認めなかった。

外国での本剤の開発初期の試験における悪心、嘔吐の発現率はおおむね 80~90%と報告され

ており、フェノチアジン系の制吐剤が用いられたものの、十分な効果は得られなかった。国内

第Ⅰ/Ⅱ相試験と同様の制吐剤を使用した Dahan 2009 試験(添付資料 5.3.5.1-6 参)では悪心、

嘔吐の発現率はそれぞれ 50%、28%であった。このように本剤投与時に上述の制吐剤の予防投

与を義務付けた国内第Ⅰ/Ⅱ相試験と、Dahan 2009 試験(添付資料 5.3.5.1-6 参)における悪

心及び嘔吐の発現率は同様であった。

(2) 腎毒性

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験ではプレメディケーションとして、腎毒性の発現を予防するために十分

な量の輸液によるハイドレーションを行った。その結果、軽度又は中等度の尿蛋白、血中クレ

アチニン増加を認めたが、腎毒性の発現は認めなかった。

国内外の公表論文における全般的な概観では、腎機能障害の発現率は年代とともに徐々に減

少し、とりわけ急性及び重症の腎毒性の報告は激減している。これらの理由として、以下の点

が考えられる。

・ 外国開発初期の試験では至適投与方法が確立されておらず、臨床医は時に非常に高用量を

含む種々の用法・用量で投与していた。最近の治療では腎毒性のリスクを最小化するため

の投与方法が以下 2.5.5.6.2 に示すように標準化されている。

・ 外国開発初期の試験では、時に本剤は大腿動脈カテーテルを介し大動脈内又は腹腔動脈内

への投与が行われた。本投与ルートは腎動脈へ非常に高濃度の STZ が到達する可能性があ

る。致命的な腎障害を招来した患者の多くは本剤の動脈内投与であった。

・ 多くの患者において軽度の異常は可逆的であることが示され、腎毒性の徴候を認めた場合

は、用量の調整、休薬、中止などの対応により、重篤な腎毒性の発現は回避可能となった。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 32 -

(3) 血液毒性

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験及び国内外の公表論文ともに血液毒性の発現率は低い。

細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤とりわけニトロソウレア系の抗悪性腫瘍剤に共通してみられる

有害事象であるが、本剤はその構造にグルコース残基を有し、骨髄抑制が減弱されるものと考

えられている。

(4) 耐糖能異常

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験では、高血糖、尿中ブドウ糖陽性などの副作用を認めたが、Grade 3 と判

断されたのは高血糖の 1例であった。外国における本剤の開発初期では軽度~中等度の耐糖能

異常の発現がみられるが、Moertel 1979 試験(添付資料 5.3.5.1-3 参)以降の公表論文では耐

糖能異常に関する記載がなく、憂慮すべき耐糖能異常関連の副作用の発現は認められていない

と推測される。

(5) 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験で発現率が高かった有害事象

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験では、血管障害(血管痛)及び便秘が高頻度にみられた。外国の公表論

文には注射部位の疼痛は散見されるが便秘は見当たらない。便秘の発現については、プレメデ

ィケーションとして投与された制吐剤との関連が示唆されるが明確ではない。

2.5.5.5.2 投与方法の違いによる有害事象

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における投与方法別有害事象及び副作用の発現状況を表 2.5.5.5-1 に示

す。

投与方法の違いによる有害事象の発現率、発現件数に特段の差異は認めなかった。

表 2.5.5.5-1 投与方法別有害事象及び副作用の発現状況

Daily 投与 Weekly 投与

安全性評価例数(例) 15 7

有害事象発現例数(例) 15 7

有害事象発現率(%) 100.0 100.0

有害事象発現件数(件) 209 187

重篤な有害事象発現例数(例) 1 1

重篤な有害事象発現率(%) 6.7 14.3

副作用発現例数(例) 15 7

副作用発現率(%) 100.0 100.0

副作用発現件数(件) 158 165

重篤な副作用発現例数(例) 0 1

重篤な副作用発現率(%) 0.0 14.3

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 33 -

2.5.5.5.3 安全性の評価に及ぼす影響

本剤投与により特に配慮が必要な有害事象として、腎毒性及び悪心、嘔吐があげられる。

腎毒性については、外国の開発初期の高用量投与により重篤な症状・徴候を発現したが、米

国での本剤承認時の用法・用量が標準化されることにより、その発現率及び重症度は軽減され

た。さらに、近年では、本剤投与時に十分な量の輸液によるハイドレーションを実施すること

により、腎毒性の発現率及び重症度はより軽減されている。

また、悪心、嘔吐は本剤投与による最も発現率の高い有害事象であり、1980 年代に推奨され

たフェノチアジン系の制吐剤では不十分であった。その後、5HT3受容体拮抗剤、NK1受容体拮抗

剤などの新しく開発された強力な制吐剤の出現により、本剤投与による悪心、嘔吐の発現率及

び重症度が低下している。

以上のことから、本剤投与による腎毒性及び悪心、嘔吐については、試験が実施された時期

やこれら有害事象の予防・治療の方法を十分考慮して安全性を評価する必要がある。

2.5.5.6 有害事象(副作用)の予防、軽減、管理方法

本剤は細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤であり、がん化学療法に十分な知識と経験を有する医師に

よって、有害事象の観察や管理、状況により、減量・休薬・中止等の適切な対応がなされるべ

きである。

2.5.5.6.1 悪心、嘔吐

悪心、嘔吐は患者にとって煩わしい副作用である。

その発現メカニズムは、図 2.5.5.6-1 に示すように延髄の嘔吐中枢が刺激されて起こるとさ

れ、第 4 脳室に存在する Chemoreceptor trigger zone(CTZ)を介する経路と、消化管に存在

する 5HT3受容体を介する経路が存在する(日本癌治療学会のがん診療ガイドライン 制吐療法)

14)。本剤の静脈内投与後、2 種以上のニトロソウレア系代謝物が脳脊髄液中に確認されている

(添付資料 5.3.3.2-2 参)ことから、脳脊髄液中に移行した STZ の代謝物が延髄の嘔吐中枢を

刺激することが考えられる。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 34 -

図 2.5.5.6-1 抗がん剤による悪心・嘔吐のメカニズム 14)

日本癌治療学会のがん診療ガイドライン 制吐療法 14)において、本剤は嘔吐の発現が「高度

(催吐性)リスク」の薬剤に分類されている。本剤を含むこれらの薬剤による急性又は遅延性

の嘔吐の予防及び治療薬として、NK1受容体拮抗剤、5HT3受容体拮抗剤及びコルチコステロイド

剤の 3剤併用療法が推奨されている。

本剤投与による悪心、嘔吐の発現は、適切な制吐剤(NK1受容体拮抗剤、5HT3受容体拮抗剤な

ど)の併用投与により、その発現率及び重症度を軽減できる。これらの処置にもかかわらず、

悪心、嘔吐を認めた場合は他の制吐剤を使用又は本剤の減量、休薬などの適切な処置を行う必

要がある。

2.5.5.6.2 腎毒性

腎毒性は、本剤の用量制限毒性(dose limiting toxicity)とされている。

動物試験では、サルに本剤を 5 日間連続投与後、15 mg/kg/日以上の群で腎臓尿細管上皮の

肥大を認めた。サルにおける本剤の 3 コース投与毒性試験において、5 mg/kg 以上の投与群に

腎毒性を認めた(添付資料 4.2.3.2-2・3 参、4.2.3.2-4)。

ヒト薬物動態試験において STZ 及びその代謝物は主に腎排泄であることを確認した(添付資

料 5.3.3.2-2 参)。また、これまでの臨床報告から、腎毒性の発現機序は近位尿細管における本

剤の濃度が、直接尿細管上皮細胞に対する毒性作用を引き起こすことが示唆された 15,16)。臨床

的には、本剤による腎毒性の発現は糸球体及び尿細管の機能障害として出現する。

以下の対策及び処置により、腎毒性の発現率及び重症化を最小化することが期待できる。

(1) 本剤は用法・用量の範囲内で使用し、必要な場合は、患者個々の腎機能に合わせた用量を

調節すること

(2) 適切なハイドレーションを行うこと(参考として、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における投与方法

の例を以下に示す。)

<投与方法の例>

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 35 -

・ 本剤投与前、600 mL の電解質輸液を 2時間 30分かけて点滴静脈内投与する。

・ 本剤投与時、本剤の溶解液を 100 mL の電解質輸液に混和し、30 分かけて点滴静脈内投

与する。

・ 本剤投与終了後、250 mL の電解質輸液を 1時間かけて点滴静脈内投与する。

・ 本剤投与中は、尿量確保に注意し、必要に応じてマンニトール及びフロセミドなどの

利尿剤を投与する。

(3) 既に腎疾患を併発している患者に対する本剤の使用は慎重に行うこと

期待される効果とリスクを勘案して判断し、有益性が重篤な腎障害というリスクを上回る

と医師が判断した場合のみ、投与すること

(4) 腎毒性が知られている薬剤との併用は慎重に行うこと

(5) 本剤投与期間中は尿検査、血中尿素窒素、血中クレアチニン、血清電解質及びクレアチニ

ンクリアランス等、腎機能の注意深いモニタリングを行い、腎機能障害の早期徴候を認め

た場合は本剤の減量、休薬又は中止するなど適切な処置を行うこと

2.5.5.6.3 血液毒性

細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤、とりわけニトロソウレア系の抗悪性腫瘍剤に共通してみられる

有害事象であるが、本剤はその構造にグルコース残基を有し、骨髄抑制が減弱されるものと考

えられている。 本剤の血液毒性の発現率は低く、そのほとんどは軽度~中等度で可逆性である。本剤単独投

与では 5~20%程度の発現率であり、白血球数や血小板数の最下点は通常、本剤投与の 1~2週

間後に認められる。他の抗がん剤との併用では、発現率が上昇する傾向がある。血液毒性は蓄

積性であり、他の化学療法又は放射線療法の治療歴がある患者に本剤を投与すると重症化する

ことがある。また、本剤の高用量を投与した場合、重篤となる可能性がある。 これらのことから、本剤投与期間中は定期的な血液学的検査を行い、血液毒性の徴候を認め

た場合は、適切な処置が必要である。

2.5.5.6.4 耐糖能異常(糖尿病誘発性)

本剤は膵ランゲルハンス島のβ細胞の脱顆粒により、糖尿病誘発性であることは公知である

が、本剤の糖尿病誘発には種差があり、動物で発現する用量に相当する量をヒトに投与しても、

発現しないか、発現してもおおむね軽度又は中等度で可逆性である。

ヒトにおいて、本剤は軽度の耐糖能異常を発現する可能性があるが、これまでに国内外にお

いて憂慮すべき報告はみられていない。しかしながら、本剤投与期間中は定期的な血清中グル

コースのモニタリングを行い、耐糖能異常を認めた場合は適切な処置が必要である。

2.5.5.6.5 肝機能障害

重度及び致命的な肝毒性の発現率は低い。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 36 -

動物試験ではある程度の肝毒性を認めているが、Weiss 17)は臨床における肝機能障害の発現

は軽度、一過性で発現率は約 25%であったとしている。また、肝転移例における肝機能障害の

発現と本剤との因果関係を言及するのは困難である。

本剤の投与期間中は定期的な肝機能検査を行い、異常を認めた場合には、適切な処置が必要

である。

2.5.5.6.6 血管外への漏出

化学療法剤は細胞毒性を示すので、組織障害を起こすひとつの薬物群となっている。水疱性

血管外漏出に対し、推奨される薬物を使用しない対処法は以下のとおりである。

(1) 注射を速やかに中止する。

(2) 浸潤した薬物の吸引を試みる。

(3) 溜っている血管外漏出液の吸引・排液を容易にするために部位を持ちあげる。

(4) 疼痛が持続する場合は、3日間、1日 4回、15 分以上の冷却圧迫を行う。

(5) 漏出部位の疼痛、紅斑、腫脹、硬化、壊死の有無を綿密に確認する。

(6) 3~4 日後に部位の疼痛が持続していたり、皮膚の変化が進展したりしている場合には、外

科医の診察を受ける。

2.5.5.6.7 小児

小児に対する本剤の安全性及び有効性は確立していない。

2.5.5.6.8 妊婦及び授乳婦

本剤は、外国では妊娠カテゴリーD に分類 18)されており、妊娠中に本剤を使用すべきではな

い。また、本剤のヒト母乳中への移行は明らかになっていないが、一般的に抗悪性腫瘍剤は容

易に乳汁中に移行するとされており、本剤の投与を受けている女性に対し、授乳は中止させる

こと。

2.5.5.6.9 自動車の運転又は重機器類の操作能に対し予測される影響

これまでの公表論文では、本剤を 1日 1回 5日間連続投与した患者の一部に錯乱、嗜眠及び

うつ病が発現したとの報告がある 19)。本剤投与中の患者には自動車の運転など危険を伴う機械

の操作に従事させないよう注意すること。

2.5.5.7 過量投与、反跳現象、離脱症状、依存性、乱用を誘発する可能性

2.5.5.7.1 過量投与

本剤に対する特異的な解毒剤は知られていない。初期(1970~80 年代)の公表文献では高用

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.5 安全性の概括評価

- 37 -

量の投与が行われており、とりわけ、悪性インスリノーマの患者に 1 回最大 7.5 g/m2/週を投

与した Schein ら 20)の報告がある。症例数は不明であるが、一部の例では 1回 7.5 g/m2の Weekly

投与が行われ、このうち 1例は本剤の 7.5 g/m2投与後、腎不全及び心不全により死亡した。

従って、下記のように過量投与を避けるためにあらゆる可能な手段を講じること。 (1) 過量投与の持つ危険性を十分に認識すること

(2) 投与量を注意して計算すること

(3) 応急処置が可能な設備を整えること

2.5.5.7.2 反跳現象、離脱症状、依存性、乱用を誘発する可能性

反跳現象、離脱症状、依存性、乱用を誘発する可能性に関する情報は得られていない。

2.5.5.8 世界における市販後使用経験

PSUR は第 5部に添付した。初版(添付資料 5.3.6-1 参)は 2001 年 6月 日~20 年 月

日の 5年間をカバーしている。25 件(17 例)が未知又は重篤な有害事象として報告された。第

二版(添付資料 5.3.6-2 参)は 20 年 月 日~20 年 月 日の 3年間をカバーしている。

17 件(11 例)の重篤な有害事象報告があり、ほとんどは腎及び泌尿器系の障害であった。死亡

例はなかった。第三版(添付資料 5.3.6-3 参)は 20 年 月 日~2012 年 5 月 日の 3年間

をカバーしている。重篤な有害事象として 5件(3例)の報告があり、このうち 2件(2例)は

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験における重篤な有害事象(急性胆管炎、十二指腸潰瘍)であった。その他の

事象として、蜂巣炎、敗血症、静脈血栓症の 3件(1例)であった。死亡例の報告はなかった。

20 年 月 日~20 年 月 日の 年間における Zanosar®の販売状況は、総バイアル数

が バイアルで、1 人あたり 1 コースで平均 mg を コース使用するとして、投与

患者数は 人と推定される(添付資料 5.3.6-3 参)。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

- 38 -

2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

本剤(ストレプトゾシン)は、米国 Upjohn 社によって Streptomyces achromogenes が産生

する抗生物質として発見された。本剤は、ニトロソウレア系の細胞傷害性抗悪性腫瘍作用を有

し、国際的な膵・消化管 NET 診療ガイドラインのアルゴリズムに常に記載され、外国では膵 NET

に対する標準治療薬及び消化管 NET に対する選択肢として位置づけられている。

一方、国内における膵・消化管 NET の一般的治療の第一選択は、外国に準じ外科手術である

が、転移性、切除不可能又は根治切除不可能な場合は、未承認でありながら本剤を中心とした

全身化学療法が適応されている。

このような背景から、未承認薬使用問題検討会議及び未承認薬・適応外薬検討会議の結果、

申請者は厚生労働省からの開発要請を受け国内開発に着手した。なお、本剤は 2011 年 11 月 16

日、希少疾病用医薬品に指定された。

現在、国内ではソマトスタチンアナログのオクトレオチド酢酸塩が消化管 NET の効能・効果

で、さらに分子標的薬のエベロリムス、スニチニブリンゴ酸塩が膵 NET の効能・効果でそれぞれ

承認された。しかし、エベロリムスでは間質性肺疾患、肝炎ウイルスキャリアの患者における

肝炎ウイルスの再活性化など、スニチニブリンゴ酸塩では心不全、可逆性後白室脳症候群など、

重篤な副作用が報告されて 21,22)おり、本剤の承認が要望されている。

2.5.6.1 ベネフィット

(1) 外国では膵・消化管 NET に対する標準治療薬として推奨又は治療の選択肢とされている。

本剤は、外国で 30 年来の使用実績があり、外国の各種ガイドラインや教科書などで膵 NET

の標準治療薬として推奨され、消化管 NET 治療のオクトレオチドに次ぐ治療選択肢として紹介

されている(表 2.5.4.3-4)。

(2) 国内においても、膵・消化管 NET に対する腫瘍縮小効果及び腫瘍増殖抑制効果が確認され、

当該腫瘍患者に対する治療選択肢の一つとして必要な薬剤である。

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験において、進行性(切除不能又は転移性)の膵・消化管 NET に対し、本

剤の単独投与による腫瘍の縮小効果及び腫瘍増殖抑制効果が確認された。なお、国内第Ⅰ/Ⅱ相

試験(n=22)終了後も本剤の投与を希望した被験者 9例のうち、約 2年経過した 2013 年 11 月

の時点で 4例に本剤の投与を継続中である。

本剤は当該腫瘍において唯一の細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤となることから、術前化学療法剤

としての選択も可能である。

最近公開された国内の膵・消化管 NET 診療ガイドラインで本剤が紹介されているが、エベロ

リムス、スニチニブ及びオクトレオチドは、国内で承認されたことにより最近発表された外国

ガイドラインと同様当該腫瘍の標準治療薬となっている。従って本剤も国内おいて承認を得る

ことができれば、本剤は、外国と同様にこれら 3剤に加え当該腫瘍の標準治療薬となるものと

考えられ、進行性(切除不能又は転移性)の膵・消化管 NET 患者に対する治療選択肢の一つと

して必要であると考える。以下に本剤の臨床的位置づけを示す。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

- 39 -

本剤の臨床的位置づけ

膵 NET 標準治療薬 本剤、エベロリムス、スニチニブ

標準治療薬 オクトレオチド 消化管 NET

オクトレオチドに次ぐ治療の選択肢 本剤

(3) 治療ターゲットである膵、小腸 NET などに対し特異的に薬効を発揮する。

本剤はグルコーストランスポーター2(以下、「GLUT2」)を介して細胞内に取り込まれ、殺細

胞効果を発揮する。ヒトにおいて、GLUT2 は膵臓以外では小腸、肝臓及び腎臓に多く発現して

いる。膵 NET に限らず、消化管 NET 患者の生検により、小腸における本剤の抗腫瘍効果が示唆

されている。また、多くの臨床試験で、膵 NET 及び消化管 NET に対する有効性が確認されてい

る。

(4) 重篤な副作用の発現率が低い。

30 年来の使用実績から、本剤投与により発現が予測される副作用が特定されている。そのた

め、その予防、対処方法が確立されており重症化を抑制できることから、重篤な副作用の発現

が少ない抗悪性腫瘍剤と位置付けられる。近年、国内で膵 NET 又は消化管 NET の効能・効果で

承認された薬剤では、予測される重篤な副作用のために適用できない症例があり、このような

観点からも本剤は標準治療薬として試みられるべき抗悪性腫瘍剤といえる。

(5) 細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤に共通の骨髄抑制による血液毒性の発現率が低く重症化しない。

細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤、とりわけニトロソウレア系では骨髄抑制が強いとされているが、

本剤の血液毒性の発現率は低く、そのほとんどは軽度又は中等度で可逆性である。本剤はその

構造にグルコース残基を有し、骨髄抑制が減弱されるものと考えられている。

(6) Daily 投与及び Weekly 投与の二通りの投与方法があり、患者のライフパターンに応じて投

与方法が選択できることは、患者にとって有益といえる。

国内第Ⅰ/Ⅱ相試験において、Daily 投与、Weekly 投与のいずれの投与方法でも、本剤の腫

瘍縮小効果及び腫瘍増殖抑制効果が確認された。

国内に膵・消化管 NET を専門とする医師及び医療機関は少なく、患者は遠方からでも専門医

のいる医療機関で治療を受けざるを得ない状況にある。また、当該腫瘍では就労しながら治療

を継続する患者も多いとされている。遠方から通院する患者にとって、Weekly 投与(週 1回投

与)では通院は困難であり Daily 投与(6 週間に 1 回、5 日間毎日投与し、37 日間休薬)が選

択できる。また、専門の医療機関の近隣から通院できる患者にとっては、外来通院での Weekly

投与が選択できる。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

- 40 -

2.5.6.2 リスク

(1) 悪心、嘔吐

本剤投与による悪心、嘔吐は最も高率に発生する副作用であるが、これらの症状に対しては

新しく開発された強力な制吐剤である NK1 受容体拮抗剤、5HT3 受容体拮抗剤などの前投与ある

いは併用により、発現率と重症度の軽減が期待できる。

本剤の海外開発当初の悪心、嘔吐の発現率は 80~90%であったが、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験及び

Dahan 2009 試験(添付資料 5.3.5.1-6 参)では、これらの制吐剤の併用を義務付け、悪心がそ

れぞれ 54.5%、50%、嘔吐が 22.7%、28%の発現率で、重症度はおおむね軽度又は中等度であ

った。

なお、日本癌治療学会の「がん診療ガイドライン 制吐療法」20)において、本剤は「高度(催

吐性)リスク」の催吐性抗がん剤に分類され、嘔吐に対し、NK1受容体拮抗剤、5HT3受容体拮抗

剤及びコルチコステロイド剤の 3剤併用が推奨されている。

(2) 腎毒性

本剤による腎毒性の発現は、臨床的には糸球体及び尿細管の機能障害として出現する。

腎毒性の発現及び重症化の予防として、指示用法・用量に従った投与、本剤投与前の十分な

量の補液によるハイドレーション及び定期的な臨床検査を施行することにより、腎毒性の発現

率及び重症化を最小化することが可能である。

本剤の外国の開発初期の論文では投与方法が明確にされていなかったこともあり、死亡例を

含む重篤な腎不全が報告され、本剤の投与を制限する有害事象とされていた。しかしながら、

米国の承認投与方法が標準化されるに従い腎毒性の発現率が低下しており、近年では重篤例の

報告はない。今回の国内第Ⅰ/Ⅱ相試験においても、投与方法を厳守し、本剤投与前に十分な量

の補液によるハイドレーションを義務付けた結果、腎毒性に関連する有害事象(高窒素血症、

無尿、低リン酸血症及び腎尿細管性アシドーシスなど)は認めなかった。

(3) 耐糖能異常

本剤は動物において糖尿病モデル作成用化合物として広く使用されてきた。

一方、ヒトにおいて、本剤は軽度の耐糖能異常を発現する可能性があるが、国内の第Ⅰ/Ⅱ

相試験やこれまでの公表論文で憂慮すべき有害事象の報告は確認されていない。

国内の第Ⅰ/Ⅱ相試験では、糖尿病、高血糖、尿中ブドウ糖陽性の有害事象を認めたが、Grade

3 以上の副作用は高血糖の 1 例のみに認めた。この症例は本剤投与開始時に既に糖尿病を有し

ており、一過性の高血糖を認めたが、本剤の減量、中止やその他の処置を必要とせずに回復し

た。

2.5.6.3 結論

本剤は、欧米の各種ガイドラインや教科書などで膵 NET に対する標準治療薬として、消化管

NET に対する選択肢として記載され、その使用が推奨されている。また、米国、仏国などで 30

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論

- 41 -

年来の使用実績があり、本剤の有用性と重篤な副作用発現が低率であることが確立されている。

一方、国内ガイドラインにおいても本剤が紹介されており、また、今回実施した国内第Ⅰ/Ⅱ相

試験においても、日本人膵・消化管 NET 患者に対して、外国と同様に本剤の腫瘍縮小効果及び

腫瘍増殖抑制効果が確認された。

最近、国内ではソマトスタチンアナログ製剤が消化管 NET の、分子標的薬が膵 NET の効能・

効果でそれぞれ承認されたが、本剤は、腫瘍縮小効果及び腫瘍増殖抑制効果と重篤な副作用の

発現率が低いことから、国内においても膵 NET に対する薬物治療の標準治療及び消化管 NET に

対する選択肢になりうると考えられる。

以上、本剤は、膵・消化管神経内分泌腫瘍に対する新たな治療薬として、医療に貢献する有

用な抗悪性腫瘍剤と考える。

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.7 参考文献

- 42 -

2.5.7 引用文献

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ザノサー点滴静注用 1g 2.5.7 参考文献

- 43 -

Placebo-controlled, double-blind, prospective, randomized study on the effect of

octreotide LAR in the control of tumor growth in patients with metastatic

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21) 添付文書:アフィニトール®錠 2.5 mg、5 mg

22) 添付文書:スーテント®カプセル 12.5 mg