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Copyright © 2004 Tatsuhiko Inoue All Rights Reserved 組織文化論(その1) 早稲田大学 商学学術院 商学部 井上達彦

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組織文化論(その1)

早稲田大学 商学学術院 商学部

井上達彦

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講義内容

組織文化とは

強い組織文化論

事例:ホンダ技研工業

強い文化論の展開セオリーZエクセレントカンパニー

シンボリックマネージャー

シャインのモデル

それぞれの強い組織文化論の相違性と共通性

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1.組織文化とは

【目的】

文化、ならびに組織文化を直感的に理解する。

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社会生活を営むために、私たちは

実に多くのルールに従って行動しなくてはならない

守りましょう

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ルールを破ると、それなりの社会的

制裁が加えられることが多い。

STOP

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「もののけ姫」の海外展開

米国ハリウッド フランス

娯楽 芸術

動画 絵の積み重なり

宮崎作品輸入に当たって

・ハリウッド流マーケティング

・編集あり(時間制限)

・有名声優

・アクションを全面に

・オリジナル重視

・編集なし

・無名声優

・思想を全面に

映画に対する基本スタンス

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企業組織の中でも同じ。

会社によって「これが正しい」と考えられているルールがある。

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社風社風

会社名 社風を表す言葉

日立

東芝

三菱

松下

ソニー モルモット

商人

殿様

紳士

野武士(のぶし)

(河野豊弘,『変革の企業文化』,講談社.)

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企業などの組織に独特な文化

組織文化組織文化

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企業文化の定義企業文化の定義

ひとことで言えば、

「共有化された価値観・規範・信念」

(伊丹・加護野『ゼミナール経営学入門』日本経済新聞社.)

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2.強い組織文化

【目的】

強い組織文化とは何かを具体例とともに理解した上で、強い文化論の理論展開を追っていく。

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ホンダ・ウェイ

【目的】

強い組織文化とは何か。具体例とともに理解する。

エアバッグ開発の父 本田技研工業(株)経営企画室長

小林三郎氏の講演より

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INDY JAPAN 3000mileレースをするということの意味祭り、熱気、人間の本質的な何か

歴代の社長が集まる社交場

INDYとF-1の文化の違い

ツインリングもてぎ久米社長の一声

「何か、社会に役立つものを}

300億(推定)もの公共事業つくるテーマパーク

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ホンダ文化(しきたり)A00=基本要件・目的・夢軍事任務指令書の用語

本質的コンセプト・哲学

「ビジネスの中心の収益やコストダウンは目的ではない。顧客満足、人々の幸福の方が目的に近い」

本田宗一郎語録「研究所は技術の研究をするところでなく、人間の研究をするところだ。」

「理念なき行動(技術)は凶器であり、行動(技術)なき理念は無価値である。」

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より

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ホンダ文化(しきたり)

自分の思い・志

「あんたはどう思うんだ?」

原体験の重視

ひと言で言ってなんだ?

状況・相手に合わせて、一言でいわなければ馬鹿にされる。

素人にもわかりやすく

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より

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ホンダ文化絶対価値の追求ベンチマーキング嫌悪

あるAV機器メーカーの事例学歴無用役員の学歴わからない

7:3の論理異端変人の許容、長所重視。

「成績の悪いやつ3割とれ!」

「無駄なやつは一人もいない。皆に得手をやらせれば苦労を厭わず向上心が出て頑張り、本人は幸せなんだ。

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より

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ホンダ文化

熱い環境

あちらこちらで熱い議論

大部屋、無窓・無時計

ワーカホリック

高い目標・志CivicでBenzを超えろ世界一の安全性

コスト2分の1(10%減ではなく)

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より

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Y-GAYA3日3晩(朝9時~夜遅くまで×3)

1日目に氷解(場合によっては、2~3時間)

前回の資料はなし

ホンダ

人間

動物 人間

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より

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エアバッグからの知恵1. 10人のうち、9人が賛成したらtoo lateで、研究意義がない。

多数決・合議・ロジックからはクリエーションは生まれない

駄目な理由を考える暇があったら、どうしたら解決できるか考える

100の欠点よりも1つの長所を探し出すことの貴重さ若い人が訳のわからないコトを、真剣に3回言ってきたら、聞いてあげる度量の大切さ

2. 将来の価値を予測していないと開発が無駄になる多くの反対の中で、エアバッグが商品化されたのは、安全が不変の価値だったから。

技術コンセプト・手段は合議で決めると創造性を失うが、目的の将来価値は十分議論して定めないと、研究開発が無駄になる。

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より一部抜粋

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決断時の関心事項

・利益

・リスク

・顧客満足

・従業員喜び

・在りたい姿

・最初に

×

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より一部抜粋

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本田宗一郎

‘75年アメリカ研究所・アメリカ顧客を知る為に、LA研究センター設立。・設立メンバー6人を本田宗一郎が激励、『日本のホンダのことは考えるな。日本のホンダが潰れても米で生き残れ。』

『アメリカの為に働け。ビザが要らなくなる様に。』

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より一部抜粋

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1978年オハイオ工場着工式で、新聞記者に『なぜオハイオ州を選んだのですか?』と本田宗一郎は質問され、

*関係者は一瞬青ざめた。

*賃金・組合・人種のことを言うと大変な問題になる。

『God Guided!』と答え、追加質問はゼロ

小林三郎氏(本田技研工業)2003年組織科学講演資料より一部抜粋

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強い文化論【目的】

強い組織文化の理論的展開を学ぶ。

【主要参考文献】

Hatch, M. J. Organization Theory, Oxfrod University Press.北居 明「分布としての組織文化」『神戸大学博士論文』

佐藤郁哉・山田真茂留『制度と文化』日本経済新聞社.

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セオリーZ日本企業(タイプJ)終身雇用

遅い人事考課と昇進

非専門的な昇進コース

非明示的な管理機構

集団による意思決定

集団責任

人に対する全面的関わり

米国企業(タイプA)短期雇用

早い人事考課と昇進

専門化された昇進コース

明示的な管理機構

個人による意思決定

個人責任

人に対する部分的関わり

IBM、HP、コダック、P&Gなどは、タイプAよりもタイプJの特性を持っている。

背後にある経営理念、経営理論=セオリーZ

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エクセレントカンパニーどのような環境でも「優良企業」となりうる基本的な特質

優良企業43社は8つの基本的な特質を有する1. 行動の重視

2. 顧客に密着した情報収集

3. 自主性と企業家精神

4. ヒトを通じての生産性向上

5. 価値観に基づく実践

6. 基軸から離れない関連型の多角化

7. 単純な組織と小さな本社

8. 集権と分権の使い分け

経営のお手本は、日本企業ではなくアメリカのエクセレントカンパニーにある。

独自のやり方でエクセレンスを実現している企業ある

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シンボリックマネージャー「強い文化」を形作る構成要素

①「理念」明示された経営理念や価値観のこと

②「英雄」お手本となる役割モデルのこと

③「儀式と儀礼」価値観や規範を具体的な形で示すセレモニーのこと

④「文化のネットワーク」価値観を伝え強化する情報チャネルのこと

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ディール&ケネディによる4類型ー企業環境に応じて適した組織文化は異なるー

結果を知るまでの期間(フィードバック)遅い 早い

逞しい、男っぽい文化化粧品、経営コンサルティング広告、テレビ、映画、出版、スポーツ

よく働き、よく遊ぶ文化不動産業者、訪問販売業者、自動車販売業者、コンピュータ会社

会社を賭ける文化石油会社、採鉱および精錬業の会社、飛行機製造会社、投資銀行

手続きの文化銀行、保険会社、政府、電力会社

高い

リスク

低い

ディール&ケネディ・城山三郎訳(1982;1997)『シンボリックマネージャー』,岩波書店より作成

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シンボリックマネージャー「強い文化」を形作る構成要素

①「理念」明示された経営理念や価値観のこと

②「英雄」お手本となる役割モデルのこと

③「儀式と儀礼」価値観や規範を具体的な形で示すセレモニーのこと

④「文化のネットワーク」価値観を伝え強化する情報チャネルのこと

「アップルパイのようにアメリカ本来のものがある」という主張

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シャインの組織文化論(例:ホンダ)内部世界の住人の言葉でいいかえる必要がある。

Y-GayaA00

大部屋、無窓、無時計学歴を示した内部資料不在ユニークな製品、革新的な技術

人工物と創造されたもの・技術・芸術・視聴可能な行動パタ-ン

基本的仮定・環境に対する関係・現実、時間、空間の本質・人間性の本質・人間行動の本質・人間関係の本質

価値・物理的環境でテスト可能・社会的合意のみによってテスト可能

本質重視

異端変人の許容、長所の重視

学歴無用主義

「セコハン・請け売り」は価値がない

無制限

性善説

原体験

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強い文化『エクセレントカンパニー』財務指標(収益性と成長性)と革新性においてエクセレントな業績を上げている43社から共通する属性を導き出した。

『シンボリックマネージャー』約80社をランダムに選び、文化強度と業績の関係を調査。文化的な信念をもつ18社はすべて高い業績を上げていた。

『組織文化とリーダーシップ』組織文化を均一的かつ一元的にみている。

その後の「下位文化」についての研究以降は佐藤・山田『制度と文化』日本経済新聞社

環境との適合を意識

価値より深い意味のレベル

オールマイティな文化

文化強度に注目

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企業文化論の基本的なストーリー

個人(従業員)

組織(企業組織)

同調・信奉

企業文化の同化圧力

企業組織の一枚岩的結束

良好な経営成果

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次回予告

Ⅱ.強い組織文化論の問題

早稲田大学

井上達彦

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考えてみよう

強い文化とは何か(論点1)ご自身の実務体験をもとに、以下の設問について考察してください。当日に考えを聞かせていただきます。

1. 強い組織文化とは何か、考えてみてください。

2. 価値観・規範・信念の共有は可能か考えてみてください。

文化の変革(論点2)組織文化を変えることは可能でしょうか。

1. 意図的に変える(操作する)ことができるのか。

2. 全体を変えることができるのか。

目的私たちが暗黙のうちに受け入れている前提を疑い、より適切な組織文化のマネジメントのあり方を考える。

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強い文化論業績につながる高い成果をもたらす組織文化

優良企業の文化業績との関連

同質な方がいい価値観、行動規範、信念の同質性

文化強度(cultural strength)、一元性

成員が組織のコア価値を共有している程度

頑強であればいい頑強な文化

精神安定自信を回復させた

ビジネスマンへの元気づけ

組織文化への注目実務的関心の喚起

組織構造(ハード)

組織文化(ソフト)

後の学術的貢献への機会

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2つの論点

①同質性と業績の関係(論点1)強い組織文化とは何か

1. 価値観・規範・信念の共有は可能か。

2. 強い組織文化が高い業績をもたらすのか。

②頑強性と操作性(論点2)組織文化を変えることは可能でしょうか。

1. 組織文化は変わるのか。

2. 全体を意図的に変える(操作する)ことができるのか。