Spleniccordcapillaryhemangiomaと最終診断しえた...

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症例報告 Splenic cord capillary hemangioma と最終診断しえた脾臓腫瘍の 1 例 苫小牧消化器科外科,道都病院外科 ,札幌医科大学第 1 外科 (株)GLab 病理解析センター 宮本 茂樹 高杉 憲三 史壮 池田慎一郎 齋藤 慶太 伊東 竜哉 平田 公一 高木 芳武 症例は 35 歳の女性で,2007 年 9 月中旬頃から 38℃ 前後の発熱,筋肉痛,関節痛を繰り返す ため,同年10 月上旬当院内科を受診した.血液生化学的検査で軽度の肝機能異常を認めたため CT を施行したところ,最大径約 3cm 大の脾臓腫瘍を認めた.入院後,全身精査で他臓器に悪 性腫瘍を指摘しえず,原発性脾臓腫瘍を疑い,同年 11 月腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.手術 時間は 80 分,出血量は 20ml であった.脾臓摘出のための創部を最小限に収めるために,Endo- catch II TM に収納したうえで 3 分割後体外に摘出した.肉眼検査所見では被膜を有さない比較的 境界明瞭な 3×2.5cm の結節性病変であった.病理組織学的検査において,腫瘍は赤脾髄の脾索 性毛細血管の増殖からなり,その形態学的特徴と免疫組織学的検索での特徴としてCD34 陽性, CD8 陰性,第 VIII 因子関連抗原(以下,Factor VIII)陰性の増殖内皮細胞の性状であったこと から,過誤腫に包括されている splenic cord capillary hemangioma と診断した.本症は過誤腫の 中でも非常にまれと推察され,自験例が本邦 1 例目であり報告する. はじめに 脾臓腫瘍は画像上特異的所見に乏しく,画像の みでは確定診断,とくに脾臓悪性腫瘍と鑑別の困 難なことが多い.今回,術前に確定診断には至ら ない脾臓腫瘍に対し,診断的治療行為として腹腔 鏡下脾臓摘出術を施行し,病理組織学的検査所見 と し て 興 味 深 い splenic cord capillary heman- gioma の本邦 1 例目を経験したので報告する 患者:35 歳,女性 主訴:発熱,筋肉痛,関節痛 既往歴:特記すべきことなし. 家族歴:特記すべきことなし. 現病歴:2007 年 9 月中旬頃から消退を繰り返 す 38℃ 前後の発熱,筋肉痛,関節痛を生じていた ため,同年10 月上旬当院内科受診.血液生化学的 検査で軽度の肝機能異常を認めたため CT を施行 したところ最大径約 3cm 大の脾臓腫瘍を認めた. 精査,加療目的で入院となった. 入院時現症:身長 150.5cm,体重 38.8kg.血圧 118! 68mmHg,脈拍 66 回! 分,整.体温 36.3℃. 腹部平坦軟で圧痛なく,肝脾を触知せず.貧血, 黄疸はなく,表在リンパ節を触知しなかった. 入院時血液生化学的検査所見:T-Bil:1.2mg! dl,γ-GTP:107U! l と軽度の肝機能異常と可溶性 IL-2レセプターの軽度上昇(759U! ml)という異常 を認める以外に所見はなかった. 腹部 CT:単純 CT では脾臓腹側実質内に脾実 質よりやや低吸収域の腫瘤を認めた.造影 CT で は早期造影を認めず,晩期相で脾臓とほぼ同程度 に造影される充実性腫瘤であった(Fig. 1). 腹部超音波検査:最大径約 3cm 大の境界不明 瞭,辺縁やや不整,内部エコー不均一の充実性腫 瘤を認めた(Fig. 2). 腹部 MRI:腫瘤は T1 強調画像で脾臓実質と等 信号,T2 強調画像で低信号を呈した(Fig. 3). 67 Ga シンチグラフィー:明らかな異常集積を認 めなかった. 転移性脾臓腫瘍も否定できないため,上下部消 日消外会誌 42 (12):1819~1825,2009年 2009年 5 月 27 日受理>別刷請求先:宮本 茂樹 〒0591304 苫小牧市北栄町 3―5 苫小牧消化器科 外科

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症例報告

Splenic cord capillary hemangioma と最終診断しえた脾臓腫瘍の 1例

苫小牧消化器科外科,道都病院外科1),札幌医科大学第 1外科2),(株)GLab 病理解析センター3)

宮本 茂樹 高杉 憲三 秦 史壮1) 池田慎一郎1)

齋藤 慶太2) 伊東 竜哉2) 平田 公一2) 高木 芳武3)

症例は 35 歳の女性で,2007 年 9 月中旬頃から 38℃前後の発熱,筋肉痛,関節痛を繰り返すため,同年 10 月上旬当院内科を受診した.血液生化学的検査で軽度の肝機能異常を認めたためCTを施行したところ,最大径約 3cm大の脾臓腫瘍を認めた.入院後,全身精査で他臓器に悪性腫瘍を指摘しえず,原発性脾臓腫瘍を疑い,同年 11 月腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.手術時間は 80 分,出血量は 20ml であった.脾臓摘出のための創部を最小限に収めるために,Endo-catch IITMに収納したうえで 3分割後体外に摘出した.肉眼検査所見では被膜を有さない比較的境界明瞭な 3×2.5cmの結節性病変であった.病理組織学的検査において,腫瘍は赤脾髄の脾索性毛細血管の増殖からなり,その形態学的特徴と免疫組織学的検索での特徴としてCD34 陽性,CD8 陰性,第VIII 因子関連抗原(以下,Factor VIII)陰性の増殖内皮細胞の性状であったことから,過誤腫に包括されている splenic cord capillary hemangioma と診断した.本症は過誤腫の中でも非常にまれと推察され,自験例が本邦 1例目であり報告する.

はじめに脾臓腫瘍は画像上特異的所見に乏しく,画像の

みでは確定診断,とくに脾臓悪性腫瘍と鑑別の困難なことが多い.今回,術前に確定診断には至らない脾臓腫瘍に対し,診断的治療行為として腹腔鏡下脾臓摘出術を施行し,病理組織学的検査所見とし て 興 味 深 い splenic cord capillary heman-gioma の本邦 1例目を経験したので報告する1)2).

症 例患者:35 歳,女性主訴:発熱,筋肉痛,関節痛既往歴:特記すべきことなし.家族歴:特記すべきことなし.現病歴:2007 年 9 月中旬頃から消退を繰り返

す 38℃前後の発熱,筋肉痛,関節痛を生じていたため,同年 10 月上旬当院内科受診.血液生化学的検査で軽度の肝機能異常を認めたためCTを施行したところ最大径約 3cm大の脾臓腫瘍を認めた.

精査,加療目的で入院となった.入院時現症:身長 150.5cm,体重 38.8kg.血圧

118�68mmHg,脈拍 66 回�分,整.体温 36.3℃.腹部平坦軟で圧痛なく,肝脾を触知せず.貧血,黄疸はなく,表在リンパ節を触知しなかった.入院時血液生化学的検査所見:T-Bil:1.2mg�

dl,γ-GTP:107U�lと軽度の肝機能異常と可溶性IL-2 レセプターの軽度上昇(759U�ml)という異常を認める以外に所見はなかった.腹部CT:単純CTでは脾臓腹側実質内に脾実

質よりやや低吸収域の腫瘤を認めた.造影CTでは早期造影を認めず,晩期相で脾臓とほぼ同程度に造影される充実性腫瘤であった(Fig. 1).腹部超音波検査:最大径約 3cm大の境界不明

瞭,辺縁やや不整,内部エコー不均一の充実性腫瘤を認めた(Fig. 2).腹部MRI:腫瘤はT1強調画像で脾臓実質と等

信号,T2強調画像で低信号を呈した(Fig. 3).67Ga シンチグラフィー:明らかな異常集積を認

めなかった.転移性脾臓腫瘍も否定できないため,上下部消

日消外会誌 42(12):1819~1825,2009年

<2009年 5月 27 日受理>別刷請求先:宮本 茂樹〒059―1304 苫小牧市北栄町 3―5 苫小牧消化器科外科

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66(1820) 日消外会誌 42巻 12号Splenic Cord Capillary Hemangioma

Fig. 1 a:Contrast-enhanced CT in the early phase showed a solitary tumor formation,3 cm in diame-ter,in the spleen.b:In the delayed phase,that le-sion becomes isoattenuating relative to the sur-rounding spleen tissue except for the central area.

Fig. 2 US revealed a solitary,heterogenous and hypoechoic nodule with an unclear margin in a lower pole of the spleen(arrowhead).

Fig. 3 MRI revealed an iso intensity mass on T1 weighted image(a)and a circumscribed low intensity on T2 weighted image(b)in the spleen.

化管精査,婦人科的精査を行ったが異常所見を認めなかった.以上より,脾臓原発の腫瘍と診断したが,悪性

腫瘍を完全に否定できないため,同年 11 月腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.手術所見:体位は右半側臥位とし,臍部より腹

腔鏡を挿入し腹腔内を観察後,左肋骨弓下に 2ポートを留置した.脾臓には周囲臓器との癒着や浸潤の所見を認めなかった.体位を頭高位とし脾結腸間膜,脾腎間膜,横隔膜脾間膜を切離し,脾を授動した.次に,仰臥位とし,胃脾間膜,短胃動静脈を超音波凝固切開装置で処理した.脾門部脈管は自動縫合器で一括処理した.臍部のポートサイトを約 4cmに延長し,Endocatch IITM(Tyco社)に脾臓を収納し,その中で 3分割して摘出し

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2009年12月 67(1821)

Fig. 4 Macroscopically,the spleen was 12×10×6 cm.The cut surface of the resected tumor showed a whitish solid pattern 3×2.5 cm in diameter with a relatively clear margin in a lower pole of the spleen.

Fig. 5 Histologic cross section of the excised speci-men revealed relatively well-demarcated,uncov-ered nodular lesions(a).Microscopic section at high power showed lymphocytes,plasma cells and macrophages focally infiltrated into the lob-ules;however,spindle-cells proliferation were not showen(b:×20,H&E).

た.脾臓の授動は脾臓自体の自重に任せつつ,EN-DOPATH Cherry DissectorTM(ETHICON社)で愛護的操作を行い摘出した.手術時間は 80 分,出血量は 20ml であった.摘出標本検査所見:脾臓の重量は 138g,大きさ

は 12×10×6cm.脾臓下極に 3.0×2.5cmの結節性病変を認めた.割面では豊富な線維成分をうかがわせる白色調であった(Fig. 4).病理組織学的検査所見:腫瘍に明らかな被膜形

成を認めなかったが,正常脾との境界は比較的明瞭であった.腫瘍内に不規則な大小の結節を認め,その一部にリンパ球,形質細胞,マクロファージ浸潤を認めた(Fig. 5).また,結節内の小葉周囲には線維性結合織の増生を認め,とくに小葉辺縁でフィブリン沈着が豊富であった(Fig. 6).さらに,免疫組織化学的染色検査において小葉内にはCD34 陽性,CD8 陰性,Factor VIII 陰性で,赤脾

髄の脾索性毛細血管が増殖していた(Fig. 7).病理組織学的における形態学的特徴と免疫組織化学的検 査 所 見 よ り splenic cord capillary heman-

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68(1822) 日消外会誌 42巻 12号Splenic Cord Capillary Hemangioma

Fig. 6 Fibrin deposits were abundant,especially at the periphery of the lobules(×4,Phosphotung-stic acid-hematoxylin(PTAH)staining).

Fig. 7 Immunohistochemistry revealed that each lobule was CD34 positive(a,×4),but CD8 negative(b,×4)and factor V I I I-antigen negative(c, ×4).

gioma と診断した.考 察

Splenic cord capillary hemangioma は今日において脾過誤腫に包括されて述べられていることが多い1)~3).脾臓原発の過誤腫はまれな疾患で,剖検例では 0.024%から 0.13%とされている4)5).脾過誤腫に特有な症状・徴候はなく,他疾患の検査の際に偶然発見されることが多い.有症状としては腹痛,腫瘤などによる圧迫症状などが多く,まれに貧血や血小板減少など脾機能亢進による症状・徴候6)や自然破裂に由来する機会としての治療から診断に至ったとの報告もある7)8).1983 年から2009 年の期間で医学中央雑誌を用いて「脾臓」,「過誤腫」を索引用語として検索したところ,本邦における脾過誤腫の文献的報告例数は,現在までに 90 例であった.しかし,免疫組織化学的検査な

どの詳細な検討を行った報告はなく,cord capil-lary hemangioma に関する記述も見られない.脾過誤腫はBerge9)による 1965 年に発表された病理組織学的分類により論じられることが多い.その分類では増殖する主な組織成分により,主に脾洞

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2009年12月 69(1823)

Table 1 A proposed classification of splenic hamar-toma by Krishnan et al19)

Obvious CD8+ sinuses, disorganized(cord)stromaClassical hamartoma

Predominant cord capillaries,disorganized stroma, fibrousCord capillary hemangioma

Predominant myoid cells,cord capillaries

Myoid hamartoma (myoid angioendothelioma)

Predominant histiocytes,cord capillariesHistiocyte-rich hamartoma

が増殖する赤脾髄型,リンパ濾胞が増殖する白脾髄型,両者の混合型,線維型に分類されている.脾過誤腫内の脾洞組織の有無や線維成分の量的差異により脾過誤腫は多彩な画像所見を呈するといわれている.過誤腫に関するカラードップラー法を含む超音波検査,CTおよびMRI において一定の傾向,特徴的な所見を論ずることは困難であるとされている10)~12).安藤ら13)は Berge9)のいう病理組織型と画像診断所見との相関性に関して検討したが,組織型による特徴的な差はなかったとしている.他報告例の大部分において術前診断が困難で,診断と治療を兼ねた手術を施行しているのがほぼ 100%であるというのが現状である.脾臓腫瘍に対する手術は悪性腫瘍も視野に入れ

た術式を選択すべきである.腹腔鏡下脾臓摘出術を施行する場合,腫瘍播種の懸念や術後病理学的検査の重要性の観点から,術中の愛護的操作や小切開創から安全に脾臓摘出を可能にするための工夫が必要である14)~16).1951 年から 2009 年までの期間で「cord capil-

lary hemangioma」,「spleen」を索引用語としてPubMed で検索したところ文献的報告は 1例のみであった17).1983 年から 2009 年の期間で医学中央雑誌を用いて「脾臓」,「脾索毛細血管腫」,また「脾臓」,「cord capillary hemangioma」を索引用語として検索したところ,本邦においての文献的報告例はなかった.正常脾臓は組織学的に被膜・脾柱系と脾髄とに

大きく分けられる.脾髄は肉眼的,組織学的特徴から白脾髄と赤脾髄とに区別される.白脾髄は主にリンパ組織から構成され,赤脾髄は静脈性血管

腔である脾洞とその間隙を埋める細網組織である脾索からなる.赤脾髄内の脾索には,CD31,CD34陽性の小動脈性血管内皮がある.一方,静脈性血管の特徴を有する脾洞の内皮細胞(littoral cell)は通常の血管内皮のマーカーであるFactorVIII やCD31 が陽性で,とくにCD8 陽性であることが特徴的である.しかし,動脈性血管内皮と異なりCD34 は陰性である.また,脾索にはCD68 陽性のマクロファージを多数認めるが,脾洞ではCD68 陽性細胞数は個体間でまちまちである.脾洞はそのような血管内皮細胞と貪食細胞を混在させているとされる.自験例では,組織学的な形態学的特徴と免疫組織化学的にCD34 陽性,CD8 陰性,Fac-torVIII 陰性であることより splenic cord capil-lary hemangioma と診断した.Splenic cord capillary hemangioma は以下の特

徴を有する疾患として定義されている1)~3)18)~20).赤脾髄の脾索性毛細血管が結節状に増殖し,肉眼的には被膜を有さず比較的境界明瞭な結節を認める.病理組織学的な形態学的特徴として,線維束で分離された小葉構造を主体とし,とくに小葉辺縁には豊富なフィブリン沈着を認め,形質細胞浸潤や鉄の沈着もみられる.免疫組織化学的特徴としてCD34 陽性,CD8 陰性,FactorVIII 陰性である脾索性毛細血管の増生が強く,従来の過誤腫に発現するCD8 陽性の髄洞構造はほとんど存在しない.しかし,現段階において splenic cord capillary

hemangioma の病理学的分類の位置づけはあいまいである.外科病理学[第 4版]1),AFIP[4th Se-ries]2)では,過誤腫の項に記載され,Surgical Pa-thology[9th ed]3)では,multinodular hemangiomaの項に記載されるなど分類が定まっていない.近年,脾過誤腫に関する病理組織学的分類に対しての新たなる提唱が散見されている18)~20).Krishnanら19)は,これまでの通常型の過誤腫を classical ha-martoma とし過誤腫の多彩性を認め,cord capil-lary hemangioma を過誤腫の variant と位置づける考えを提唱している(Table 1).Martel ら20)は25 例の良性脾腫瘍について検討し,肉眼的,免疫組織化学的また電子顕微鏡による超微形態学的な

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70(1824) 日消外会誌 42巻 12号Splenic Cord Capillary Hemangioma

特 徴 か ら splenic cord capillary hemangioma をsclerosing angiomatoid nodular transformation(SANT)と名付けるのが妥当であろうと提唱している.現段階において脾臓腫瘍に遭遇した際に悪性腫

瘍を否定することは非常に困難であり,診断的治療として腹腔鏡下脾臓摘出術の行われる機会が多い.病理組織学的分類が明確化されることによって術前診断がより精度を増し,手術をせずに経過観察可能な症例が増加することが期待される.

文 献1)向井 清,真鍋俊明,深山正久:外科病理学[第4版].文光堂,東京,2006,p1350―1358

2)Chan JKC:Tumors of the lymph nodes andspleen. Atlas of tumor pathology 4 th series.Armed Forces Institute of Pathology(AFIP),Washington DC, 2006, p492―507

3)Rosai J:Rosai and Ackerman’s surgical pathol-ogy. Ninth edition. Mosby, Edinburgh, 2004, p2035

4)Lam KY, Yip KH, Peh WC:Splenic vascular le-sions:unusual features and a review of the lit-erature. Aust N Z J Surg 69:422―425, 1999

5)Silverman ML, LiVolsi VA:Splenic hamartoma.Am J Clin Pathol 70:224―229, 1978

6)乳原善文,守永真一,山口 潜ほか:プレドニゾロンの投与,さらに腫瘤摘出により血小板の正常化を見た血小板減少を伴った脾過誤腫の 1例.臨血 29:1083―1087, 1988

7)Morgenstein L, McCafferty L, Rosenberg J et al:Hamartoma of the spleen. Arch Surg 119:1291―1293, 1984

8)Ferguson ER, Sardi A, Beckman EN et al:Spon-taneous rupture of splenic hamartoma. J La StateMed Soc 145:48―52, 1993

9)Berge TM:Splenoma. Acta Pathol MicrobiolScand 63:333―339, 1965

10)香田 渉,蒲田敏文,南麻紀子ほか:脾の非腫瘍性腫瘤・良性腫瘍の鑑別診断.画像診断 26:874―884, 2006

11)Abbot RM, Levy AD, Aguilera NS et al:Primaryvascular neoplasms of the spleen: radiologic-pathologic correlation. Radiographics 24:1137―1163, 2004

12)Yu RS, Zhang SZ, Hua JM:Imaging findings ofsplenic hamartoma. World J Gastroenterol 10:2613―2615, 2004

13)安藤拓也,榊原堅式,辻 秀樹ほか:脾過誤腫の1例.日消外会誌 34:619―623, 2001

14)Tatekawa Y, Kanehiro H, Nakajima Y:Laparo-scopic extirpation of splenic hamartoma. PediatrSurg Int 23:911―914, 2007

15)Trells N, Gagner M, Pomp A et al:Laparoscopicsplenectomy for massive splenomegaly:techni-cal aspects of initial ligation of splenic artery andextraction without hand-assisted technique. J La-paroendosc Adv Surg Tech A 18:391―395,2008

16)Telem D, Chin EH, Colon M et al:Minimally in-vasive surgery for splenic malignancies. MinervaChir 63:529―540, 2008

17)Kato M, Lubitz C, Finley D et al:Splenic cordcapillary hemangioma and anemia:resolution af-ter splenectomy. Am J Hematol 81:538―542,2006

18)Kaw YT, Duwaji MS, Knisley RE et al:Heman-gioendothelioma of the spleen. Arch Pathol LabMed 116:1079―1082, 1992

19)Krishnan J, Frizzera G:Two splenic lesions inneed of clarification. Semin Diagn Pathol 20:94―104, 2003

20)Martel M, Cheuk W, Lombardi L et al:Sclerosingangiomatoid nodular transformation(SANT):re-port of 25 cases of a distinctive benign splenic le-sion. Am J Surg Pathol 28:1268―1279, 2004

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2009年12月 71(1825)

A Case of Splenic Cord Capillary Hemangioma

Shigeki Miyamoto, Kenzo Takasugi, Fumitake Hata1), Shinichiro Ikeda1),Keita Saito2), Tatsuya Ito2), Koichi Hirata2)and Yoshitake Takagi3)

Tomakomai Clinic of Gastroenterology and SurgeryDepartment of Surgery, Doto Hospital1)

First Department of Surgery, Sapporo Medical University2)

Glab Pathology Center Co., Ltd3)

We report a very rare case of splenic hamartoma. A 35-year-old woman with a 38℃ fever, myalgia, and ar-thralgia since September 2007 was seen in October 2007, at which time she underwent computed tomography(CT)to clarify slight liver-function abnormalities. She was found to have a 3cm splenic tumor, but detailed sys-temic postadmission examinations indicated no malignancy of other organs. We conducted laparoscopic sple-nectomy in November for a suspected primary splenic tumor. The operation took 80 minutes and blood losswas 20 mL. To minimize the spleen removal incision, we placed the spleen in an Endo CatchIITM, where it wasdivided into three segments prior to extraction. The excised specimen showed relatively well-demarcated, un-covered 3×2.5cm nodular lesions that were found in histopathological examination to be proliferated spleniccord capillaries in the red pulp. Immunostaining was positive for CD34 and negative for CD8 and factor VIII.Morphology and immunophenotypic studies yielded a diagnosis of splenic cord capillary hemangioma classi-fied as splenic hamartoma.Key words:spleen, cord capillary hemangioma

〔Jpn J Gastroenterol Surg 42:1819―1825, 2009〕

Reprint requests:Shigeki Miyamoto Tomakomai Clinic of Gastroenterology and Surgery3―5 Hokuei-cho, Tomakomai, 059―1304 JAPAN

Accepted:May 27, 2009

�2009 The Japanese Society of Gastroenterological Surgery Journal Web Site:http :��www.jsgs.or.jp�journal�