東洋医学概論 - kuroki/2nen/3gnote/toigai.pdf · 奇経の( 任脈 )や( 督脈...

27
1 2 ( ) ( ) ( ) ( )

Transcript of 東洋医学概論 - kuroki/2nen/3gnote/toigai.pdf · 奇経の( 任脈 )や( 督脈...

1

蔵象のまとめ 2

五行 木 火 土 金 水

五臓 肝 心 脾 肺 腎

五腑 胆 小腸 胃 大腸 膀胱

五主 筋 血脈 肌肉 皮毛 骨髄

五官 目 舌 口 鼻 耳

人体

五志 怒 喜(笑) 思(考) 憂(悲) 恐(驚)

五神 魂 神 意智 魄気 精志

五液 涙 汗 涎 涕 唾 生理

病理 五華 爪 面色 唇 毛 髪

五臓:肝 は( 将軍 )の官、( 謀慮ぼうりょ

)これより出づ。 心 は( 君主 )の官、( 神明 )これより出づ。 脾胃は( 倉廩

そうりん

)の官、( 五味 )これより出づ。 肺 は( 相傅

そ う ふ

)の官、( 治節 )これより出づ。 腎 は( 作強 )の官、( 伎巧

ぎ こ う

)これより出づ。 六腑:胆 は( 中正 )の官、( 決断 )これより出づ。 小腸は( 受盛 )の官、( 化物 )これより出づ。 大腸は( 伝導 )の官、( 変化 )これより出づ。 膀胱は( 州都 )の官 三焦は( 決涜

けっとく

)の官、( 水道 )これより出づ。 心包:膻中は( 臣使

し ん し

)の官、( 喜楽 )これより出づ。

東洋医学概論

2

1 年 東洋医学概論 蔵象:まとめ虫食い 【 蔵 象 】 五

臓 ( 実質 )性臓器。( 精気(神気) )を蔵する。

腑 ( 中空 )性臓器。( 伝化(消化吸収) )を主る。

奇 恒

の腑 形態は( 腑 )に似ているが、機能は( 臓 )に似る。 種類:( 骨 )( 髄 )( 脳 )( 脈 )( 女子胞 )( 胆 )

【五臓】

1.心 ( 生 )の本:神がなくなれば死ぬと考える。 (五臓六腑)の大主:(五臓六腑)を統括する中心的存在。 ※心包:別名( 心包絡 )( 膻中 )とも云われる

2.肝

( 罷極ひきょく

)の本:円滑な活動、休息をさせること ( 血 )を蔵す:( 活動 )時には適所へ血を分配する (安静・睡眠)時には肝に血を戻し、( 貯蔵 )しておく

( 疏泄そ せ つ

)作用を主る:中医学で、気血を円滑に伸びやかに運行させる → 2 つの意味合いを含む ・( 舒展

じょてん

):隅々まで行き渡らせる ・( 通暢

つうちょう

):円滑で淀みがない

3.脾

( 後天 )の本:水穀を消化吸収し、( 後天 )の精を取り出す。 (営(営気))を蔵す:後天の精から( 営気(営血) )は造られる。 ( 統血 )を主る:営気の固摂作用により、血が脈外に漏らさない ( 運化 )作用を主る:中医学で飲食物の消化・吸収・輸送の働きのこと ( 昇清 )を主る:水穀の精微や津液を( 肺 )へ送る作用。 下垂などが起きないように上に引っ張り上げる作用

4.肺

( 気 )を主る。( 気 )の本。:天気は肺に通じ、諸気は皆、肺に属す ( 宣発

せんぱつ

)・( 粛降しゅくこう

)作用を主る。 ( 宣発

せんぱつ

):呼気で濁気を吐き出し、( 津液 )や( 衛気 )を全身に散布 ( 粛降

しゅくこう

):吸気で清気を吸い込み、津液を(臍下丹田(腎))の辺りまで降ろす ( 気道 )を清潔に保つ ( 水の上源 ):肺が臓腑の最も高い位置から、津液を全身散布する

5.腎

( 精 )を蔵し、化生させ( 元気(原気) )をもたらす ( 封蔵

ふうぞう

)の本:大切な精(生命の根源)を貯えておく ( 津液 )を主る:水分代謝を調節するおおもと (納気)を主る:中医学では清気を(臍下丹田)まで降ろし原気とし納める ※命門:難経では、腎の働きのうち(元気(原気))と( 生殖 )の働きを

特に命門という ・難経八難では、特に( 右腎 )を命門と位置付けている

3

1 年 東洋医学概論 蔵象:まとめ虫食い

付 ※難経では、肺は( 第 3 )椎、心は( 第 5 )椎、肝は( 第 9 )椎、 脾は( 第 11 )椎、腎は( 第 14 )椎につくとされる

【六腑】

1.胆 ( 精汁 )を蔵す →( 中精 )の腑とも呼ばれる。:胆汁を蔵する (奇恒の府 )に含まれる:( 精汁 )を蔵すので、機能は臓の様である

2.胃

( 水穀 )の海、( 五臓六腑 )の海、六腑の( 大源 )とも呼ばれる。 → 胃は水穀を受納し、腐熟させる ( 降濁

こうだく

)作用を主る:脾は水穀の精微を上昇させ、胃は糟粕を降ろす 胃の入り口を(上脘(噴門))、中央を( 中脘 )、出口を(下脘(幽門))という

3.小腸 胃から降りてきた( 糟粕 )を( 清 )・( 濁 )に分ける →( 清 )は水分。( 濁 )は固形分

4.大腸 小腸から降りてきた糟粕の固形物を糞便として排泄 ※大腸の入り口を( 闌門

らんもん

)、出口を( 魄門はくもん

)という 5・膀胱 ( 腎 )の気化作用を受けて、尿として排泄を行う

6・三焦

名はあるが実体はなく、一連の( 機能のみ )を指す 上焦:(膈(横隔膜))より上部の機能:上焦は( 霧 )の如し。 肺の( 宣発 )作用を助け、( 衛気 )を全身に巡らす 中焦:(膈(横隔膜))~( 臍 )の間の機能:中焦は( 漚

おう

)の如し。 飲食物から( 水穀の精微 )を取り出し、全身に巡らす 下焦:( 臍 )より下の機能:下焦は( 涜

とく

)の如し。 不要な水分を膀胱へしみ出させる

【奇恒の腑】 胆 前述:( 六腑 )にも、奇恒の府にも含まれる 骨 人体を支持し、骨格を形成。( 最深 )部にある 髄 ( 骨 )中にあり、( 骨 )を栄養する 脳 ( 髄 )の海。( 髄 )の大きなもの 付:骨・髄・脳は、( 腎 )が主り、影響を受ける

女子胞 女性生殖器の( 子宮 )を指す 奇経の( 任脈 )や( 督脈 )や( 衝脈 )は女子胞から始まる 受胎したときは、( 胎児 )を栄養する。 五臓の( 腎(肝) )と関係が深い

4

6)代表的な疾病 A.熱病 ○「陽が勝てば身熱す」 → 陰陽の失調による ① 外感性の発熱疾患(傷寒 ) 広義 ・傷寒(狭義)- 冬の寒邪に傷られて発病 ・温病 冬の寒邪に傷られて伏病となり、春に発病 ・暑病 夏の暑邪に傷られて発病 ② 臓腑によるもの ○肺・脾・肝・胃・小腸などによるもの B.風病 ○「風は百病の長なり」 ・風気:軽い症状 → 悪寒、発熱、頭痛、項背強、etc. ・賊

ぞく

風:重篤な症状 → 癘れい

風(ハンセン氏病)、偏風へんぷう

(脳卒中),五臓の風-(肝風など) 肝風:肝うつ→肝火上炎から起こりやすい (症状は強い) C.痛 ○ 不通則痛:通じざれば則ち痛む ○ 特に 寒邪 が経絡を侵し、経絡が通じないと痛む。 凝滞性、収引性 (収斂性) D.厥 ○ 気が逆行して生じる病の総称。 ( 重病 = 人事不省(意識不明)) 原因:寒邪・大怒・飲酒 症状:痛み、満(脹満)、冷え、熱感など 厥病: ・熱厥:熱が経絡に入り起こる。→ 頭痛、こめかみ、目のひきつれ、充満感 ・寒厥:陽虚陰盛により起こる。→ 厥冷(下肢(膝まで)の冷え、悪寒、 水様性の下痢 etc. E.痹

(痺ではない)・・・知覚過敏 ○ 風・寒・湿の邪気により、営衛の気が失調した状態 原因:風・寒・湿の3つの邪気が混じり合い、同時に侵襲 症状:痛み、しびれ、腫れ、、重い感じ etc. ※ 痹病は3つの邪の偏りにより、症状が変わる。 ・行痹

こ う ひ

(風痹):痛い部位が変化する ・痛痹

つ う ひ

(寒痹):痛みが激しい ・著痹

ち ょ ひ

(湿痹):痛みが固定的、経過が長い(下方を侵す。停滞性) (着痹) 痹病には麻痺(:しびれ)は出てこない その他:部位により筋痹、骨痹、脈痹 etc. 五臓の痹:心痹 etc.

5

F.痿い

○ 原因:湿邪や発熱時の熱邪、臓熱により生じる病 ○ 症状:手足の萎

え(運動麻痺、知覚鈍麻) → 筋、肉を損ない萎える。 その他:下肢の浮腫、重だるさ、腰膝の麻痺、皮膚の光沢失調 G.咳嗽 原因:外感(寒・暑・湿・燥邪)、臓腑の病 咳:乾性 - 音はあるが痰がないもの 嗽:湿気 - 痰はあるが音はないもの H.瘧

ぎゃく

:おこり ○ 間欠性の悪寒戦慄と高熱、発汗を特徴とするもの (激しい悪寒と発熱を繰り返すもの) 現代:マラリア・・・間欠熱:日内変動が1℃以上で低い時には正常体温まで下がる熱

I.積聚しゃくじゅ

原因:主として寒邪による 病態:腹中に気血が滞って、聚

あつま

り、積もって、塊を形成するもの 症状:痛みや脹満を起こす (難経の五十六難) 分類:肝積:肥気

ひ き

:左脇下にある痞塊。杯を覆せたようで頭足がある (西洋医学と異なり、肝が左にある) 心積:伏梁

ふくりょう

:臍上に起こり、大きさ臂のごとし。上は心下に至る。 脾積:痞

気:胃脘部に覆盆のような腫塊突起を現す。 肺積:息賁

そくふん

:右脇下に杯を伏せたような塊。 (肺が右) 腎積:奔豚

ほんとん

:少腹より腹や咽喉に気が上衝し発作的に苦痛が激しく、 腹痛や往来寒熱を発するもの J.疝

せん

○ 原因:寒邪(寒湿の邪)による 症状:陰器から小腹にかけての引きつるような痛み 男性に多い ○ 足厥陰経・任脈証で、出やすい 癲狂

てんきょう

→ 精神錯乱 癲:陰(うつ:鬱)、狂:陽(そう:躁) 瘡瘍

そうよう

:癰(よう) できもの 泄瀉 ⇒ 下痢 五更泄瀉

ごこうせっしゃ

(夜明けの下痢) 第4章 診断論 1.四診 1)診断の一般 (1)診断の目標 ○西洋医学:診断=「病名の決定」 ( 病態(病因)の把握) ○東洋医学:診断=「証の決定」 ( 治療法に直結(=治療方針)の決定) 肝血虚証 → 血を補う(肝の)

学内試験に良く出る

6

※ 東洋医学は、先に治療法が確立され、その治療法に適する病証を研究したため 診断は証の決定であり、治療法に直結する。 (2)診断の心得 自分一人 ○東洋医学の診察 → 五感が重要 → 精神統一、細心の注意(意識すること) (3)診断の種類 見ただけで解る 1.望診 - 神技 : 視覚(視診) 2.聞診 - 聖技 : 聴覚(聴診)+ 嗅覚 3.問診 - 工技 : 問いかけ(問診) 4.切診- 巧技 : 触覚(触診) ※ 四診合参

がっさん

:偏らずに、全体的に統合して診ること(基本) 2)望診 ○視診により神気、色艶

つや

、形態・動態、色の変化などを診る。 特に顔・皮膚・舌の状態など重要 (1)神気を診る(生命活動・・生命の気) ○神気:五臓の中に収まり、生命活動を支配し、統制している気。 → 目つき、表情、顔の色・艶、動作、姿勢などから得失を判断 ex. ・目の輝き、表情がある → 神気がある ・皮膚の色・艶が良い → 気血充実 (2)色を診る ① 五色を診る:色の偏り(特に顔色)を診る → 病のある五臓の色が反映される ② 光沢を診る:予後の判定

肝 心 脾 肺 腎 青 赤 黄 白 黒 光沢がある

(予後良好) 翠羽す い う

の青 (かわせみ)

鶏冠けいかん

の赤 (とさか)

蟹腹かいふく

の黄 (かにの腹)

豚脂と ん し

の白

烏羽う う

の黒 (からす)

光沢がない (予後不良)

草茲そ う じ

の青 (草むしろ)

瘀血の赤 (腐血)

枳実き じ つ

の黄 (からたち)

枯骨の白 (死んだ人の骨)

すすの黒

(3)形体を診る ○五臓六腑の大小位置などを診る ○五主・五官・五華の変化を診ることで、関連臓腑の機能状態を診る

肝 心 脾 肺 腎 五主 筋 血脈 肌肉 皮毛 骨・髄 五官 目 舌 口 鼻 耳 五華 爪 面色 唇 毛 髮

ex.骨の大・小・太・細 → 腎の虚実 皮膚の精・理・薄・厚 → 肺の性情

四診法

予後不良

7

(4)動態を診る ○患者の動作・姿勢などを診る ○ 頭は精明の府 ○ 背は胸中の府 ○ 腰は腎の府 ○ 膝は筋の府 ○ 骨は髄の府 (5)皮膚の色の変化を診る ○顔や一部の皮膚(病所。尺膚)の色の変化により病態を把握する (前腕前面上部):尺沢 ◎ ◎ ◎ わかりやすい

色の変化 青 赤・黄 白 黒 病状 痛 熱 寒 痹

(6)経脈流注上の変化を診る ○流注上の皮膚の色の変化・シミ、できもの、粗密(ザラツキ)、陥凹、膨隆などを診る → 経路の営衛の虚実を判断 (7)顔面の部分診 ○顔面の部分と五臓との対応 ○ 肝 の熱病は 左頬 先ず赤し 心 ○ 心 の熱病は 顔(額) 先ず赤し ○ 脾 の熱病は 鼻 先ず赤し 右 左 ○ 肺 の熱病は 右頬 先ず赤し 肺 肝 ○ 腎 の熱病は 頤

おとがい

先ず赤し 脾 腎 (8)舌を診る(舌診) ○舌診で、気血の盛衰、病邪の性質(寒熱)、病位の深さ(表・裏) 病状の進展度が判る。 ○舌体(舌質):舌の本体で、肌肉や脈絡組織 → 舌の形・大小・色・性状 ○舌苔

ぜったい

:舌の上に乗る苔こけ

状のもの 糸状乳頭 → 色・厚・薄・性状 ※ 一般に形状を診るとき → 舌体、色を診るとき → 舌質を使う。 A.健康人の舌 ○舌体 : 特別な形態変化はない ○舌質 : 淡紅色で潤いがある ○舌苔 : 薄白苔で潤いがある(薄く白い) B.病的な舌の状態 ① 舌体の形態(大小・形・動き) a.舌体(形・大小) ○ 胖舌

はんぜつ

: 腫れて大きいもの ――― 陽虚(胖嫩はんどん

淡白)、熱感(腫脹、絳舌こうぜつ

しびれ

冷えで湿っていて むくんでいる

赤い色より 強い色

8

○痩舌そうぜつ

: 痩せて小さく薄いもの―― 気陰両虚(栄養不良)、陰虚(乾燥、紅舌) ○裂紋舌

れつもんぜつ

: 表面に亀裂があるもの― 陰虚(絳舌)、血虚(淡舌) ○歯痕舌

し こ ん ぜ つ

: 辺縁に歯の痕があるもの-気虚、脾虚(特に脾気虚)、痰飲(胖大による) ○芒刺舌

ぼ う し ぜ つ

: 棘状の隆起があるもの― 熱邪(棘が多いほど熱盛、部位で臓腑の熱判定) 陰液:精、津液、血 陰虚 → 虚熱が必ず出る → 赤くなる b.舌体の性状 ○栄 : 潤いと艶がある → 津液充満 ○枯 : 潤いと艶がない → 津液損傷 ○老 : 紋理が粗く悪い → 熱証・実証(絳舌

こうぜつ

、乾燥 ) 伴う ○嫩

どん

: 紋理が細かく柔らかい → 寒証・虚証(淡舌、湿潤 ) 伴う c.舌態(動き) ○硬舌 : 強直し、運動が円滑にできず、発後が明瞭でない → 中風の前兆、高熱、痰濁 ○軟舌 : 軟弱で伸縮無力で、円滑に動かせない → 気血両虚 強い陰虚 (淡舌) (絳舌) ○顫動

せんどう

舌 : 震えがとまらないもの → 気血両虚 陽虚 ○歪

わい

斜しゃ

舌 : 伸ばした時に、左右一方に歪むもの → 中風、中風の前兆 ② 舌質の色 ○淡紅舌(淡紅色): 正常な血色 - 正常、表証、軽い熱証 ○淡舌(淡白色):正常より薄い色 - 血虚、陽虚、寒証、気虚 - 気虚から陽虚になる ○紅舌(鮮紅色): 正常より赤い色 -熱証(実熱・虚熱 ) 陰虚 ○絳舌(深紅色): 紅舌より赤が深い-熱極・陰虚火旺(虚火) ○紫舌 : 紫色があるもの- 熱毒(赤紫、濃い青紫、乾燥) 津液が無くなる 寒証:淡い青紫色、湿濁 血瘀:瘀斑、瘀点も生じる。 寒 正常 熱 紫 淡白 (淡紅) 紅舌 絳舌 紫 (青紫) (浅紅色) (鮮紅色)(深紅色)(赤紫) ③ 舌体の部位別 五臓配当 ・舌根 - 腎 下焦 根 ・舌中 - 脾胃 ・舌辺 - 肝胆 肝・胆のう ・舌尖 - 心(肺) 上焦

(気血)

(浅紅色) 進行したもの

中焦

心(肺)

9

④ 舌苔 a.苔色(舌苔の色) ○ 白苔 : 白い苔 - 正常 、表証、寒証 ○ 黄苔 : 黄色い苔 - 熱証 、裏証(外邪が裏に入り、熱化) ○ 灰苔 : 浅黒い苔 - 裏熱証(乾燥、熱盛津傷)、寒湿証(湿潤:痰飲内停) ○ 黒苔 : 黒い苔 - 灰苔 、焦黄苔からの進行(重症な段階) 進行 裏証、熱極(乾燥、裂紋、芒刺)、寒盛(潤滑:陽虚寒盛) 悪くなる ※ 剥落

はくらく

苔たい

: 一部または全部の舌苔が剥落しているもの。 ○ 剥落 : 胃気・胃陰の衰弱 ○ 鏡面苔 : 全体に剥離し、鏡状化 ―― 胃気大傷、胃陰枯渇 ○ 花剥苔 : 一部が剥離しているもの - 胃気虚弱、胃陰不足 b.舌苔の厚さ ○ 病邪の程度、病状の進退の程度を知る ○ 薄苔 : 見底できる(舌苔を透して、ぼんやり舌体が見える)- 正常 、 表証、虚証、邪気が弱い(軽い実証) ○ 厚苔 : 見底できない 裏証、実証、邪気が強い 悪 化 薄 苔 厚 苔 軽 症 重 症 表証 裏証 c.舌苔の性質 ○ 潤苔 : 潤いがある(適度な)――――― 正常 、湿邪 ○ 滑

かっ

苔たい

: 水分過多 ―――――――――― 水湿内停 ○ 燥苔 : 乾いている―――――――――― 津液損傷 、陰液損傷、燥邪 ○ 膩苔 : ねっとりして剥離しにくいもの ― 痰飲湿濁(湿っている) ○ 腐苔 : おから状で剥離しやすいもの ― 食積、痰濁(乾燥) ○ 舌診の際には ― ・ 自然光で見る ・ 舌は自然に外へ出してもらう → 素速くみる:長いとうっ血して紫色になる (無理に出すと血流が変化する) ・ 舌苔の着色(タバコ、ジュース etc )に注意 ・ 舌苔と舌質を総合的に見る 付)虎口三関の脈 ○ 小児望診法の1つ(3才以下が基本) 重 症 ○ 小児は気口(寸口)の部が短かく、安静にしていないので、正確な 脈診ができない。 手の示指掌面(橈側)の皮膚・血脈で診断する。 (肺経の支脈が流れ、気口部の診断と同等の意義をもつ) 軽 症

好 転

命関

気関

風関

この血脈が上に いく程重症

10

・ 方法 : 指先からつけ根に向かい2、3度適度な力でこすり観察する。 ・ 注意 : 男児は左手、女児は右手で診る。 診断 : 健康 → 淡紅色(黄色味あり)、特に紋様なし 病的 → 色の変調、紋様の出現 ○ 濃紅色 : 寒に障害 ○ 紫(紅)色 : 深部に熱 ○ 白 色 : 神経症 ○ 黒 色 黄 色 (紫黒色 ) 血瘀閉うつ(重症) 3)聞 診 ○ 聴 覚と嗅 覚で呼吸音、発声、発語、口臭、体息をみる 正邪の盛衰・邪気の消長を診断する (1)呼吸と声音を聞く ○ 健康人の呼吸 : ゆったりとして深く、雑音がない(16回/分) ○ 病的 ① 短気 : 「息切れ」のこと、呼吸数が多く、途切れる。 ・急性 → 実証 ・慢性 → 虚証 ※心肺の病証でみられる。 ② 少気 : 呼吸が静かで浅く微弱なもの。 虚証(慢性病)でみられやすい ③ 喘

ぜん

: 「呼吸困難」のこと。口を開けて、肩で息をする。 ○ 実喘 : 呼吸が荒く、音が高い、呼出時に気持ちいい。(肺実) ○ 虚喘 : 呼吸が弱く、音が低い、吸気時に気持ちいい。(肺気虚、腎気虚) 腎の納気作用 ↓ 肺気 (吸った息を腎まで下ろす) ④ 咳嗽 : 痰を伴う咳(肺気上逆 ) 口へ出たもの ○ 咳 : 声のみで、痰がない ○ 嗽 : 痰のみで、声がない ⑤ 嘔吐: 声とともに吐物を吐くもの(胃気上逆 ) 悪心も胃気上逆 ○ 嘔 : 声のみで、吐物がない 胃の降濁の失調 ○ 吐 : 吐物のみで、声がない ⑥ 噯気

あ い き

(噫あい

気き

)「げっぷ(おくび)」のこと。 (胃気上逆) ○ 満腹時に見られる ○ 食積(宿食)・消化不良 → 酸腐臭あり 血虚、気虚 ○ 胃気虚逆 - 胃部のつかえ感、食欲減退、舌淡、脈細 etc. ○ 肝胃不和 -胃部のつかえ感、食欲減退、胸脇部脹満、脈弦 etc. 少陽・半表半裏 → 肝胆 ※弦 : 肝・胆の実証:弓を張ったような

重症

11

⑦ 吃きつ

逆ぎゃく

(呃逆あくぎゃく

・噦えつ

):「しゃっくり」のこと(一過性の胃気上逆) ○高音で響き、短く力がある 実熱(胃実) ○低音で弱く、無力なもの 虚寒(久病による異気衰弱)→危証(要注意) ⑧ 太息(嘆息)・「ため息」のこと(深い呼吸) ○情志の鬱積による → 肝気鬱結でみられやすい 疏泄作用の失調(すみずみまで気血をいきわたらせる作用) ⑨ 欠(呵欠):「あくび」のこと ○寒邪に冒されたとき。 → よく試験に出る ○労倦による腎虚のとき。 ⑩ 噴嚔

ふんてい

(嚔てい

):「くしゃみ」のこと。(肺気上逆 → 鼻へ) → 口(咳嗽) ・寒邪などにより、肺気の上衝したもの(上に突き上げる) ⑪ 鼾声

かんせい

(鼾かん

):「いびき」のこと。 ○脳卒中混迷時、熱盛 (2)発声と発語を聞く ○健康人:発声が自然で滑らか。音調も艶があり伸びやかである。 A.発声 ① 実証:声大きく、重く、濁る ② 虚証:声小さく、軽く、清

む B.言語 ① 譫

せん

語ご

:実証のうわごと。(言語錯乱) → 声高く、有力だが、筋が通らない 高熱時・狂病:(神明を擾

みだ

して起こる) 心神 熱 上衝 → 神明をみだす 心神 ② 鄭声

ていせい

:虚証のうわごと。 → 声低く無力で、同じことを繰り返す。又は途切れる。 疾病の末期:(心気内損により、精神錯乱し起こる) ③ 独語

ど く ご

:「ひとりごと」のこと(くどくど、ひとりごとをいう) ○虚証:多くは心気が虚し、精が神を養えずに起こる。 (老人性精神疾患) ④ 錯語:話が錯乱し、後に気づく。 ○心が虚し、精や神が不足して起こる。 ⑤ 呻吟

しんぎん

:苦しみ、呻うめ

くもの 通常は痛みによる ⑥ 驚風証:小児が発作的に驚いたように叫ぶもの (夜驚証) 発声は鋭く、驚き恐れる。(疳の虫) (参考)小児の治療 身柱(灸)

危篤状態

12

(3)異常音を聞く ピチャピチャ ① 振水音:胃内停水、胃部の叩打、動揺により生じる音 ② 腹中雷鳴(腹鳴):小腸の虚寒証。腹部がゴロゴロ鳴るもの 精濁の分別失調 水分 固形分 (4)臭いを聞く(嗅ぐ) ○病人の体臭・口臭・腋臭など、大小便、滞下、痰などの臭いにより 診断する。 ○実証:熱証:臭いが強い(悪臭) ○虚証:寒証:臭いが弱い(なまぐさい) 五臭

肝 羶(臊):あぶらくさい 心 焦 :こげくさい 脾 香 :かんばしくさい 肺 腥 :なまぐさい 腎 腐 :くされくさい

(5)五声 ○病人の発する声の特徴から診断する。

肝 呼 心 笑・言 脾 歌 肺 哭 腎 呻

(6)五音 ○病人の発する声の特徴から、診断する。

肝 角 (ミ) 心 徴 (ソ) 脾 宮 (ド) 肺 商 (レ) 腎 羽 (ラ)

付)中国の音階にはファ、シがない(4,7(ヨナ)抜き) ファ、シ→ 不快にさせる。 西洋でも悪魔の音程

:よく人を呼び、怒り出す :多弁になる :鼻歌:歌を口ずさむようになる。歌うように話しかける :よく泣く。泣き言をいう :うめき声を出す

:強く鋭い音 :胸から出る発声 歯を合わせて出る激しい音 :五音の中では、中庸の音階 :清くさえて悲衰な発音 :弱々しく力のこもらない発音

13

第4章 診断論 1.四診 4)問 診 ・患者の訴えを聞き、術者が問い尋ねる診察法 ・主訴と主訴に関する事項 ・主訴と関連しない事項 → 病人を把握するために必要 「十問歌」張 景岳 一に 寒熱 、 六に 胸 二に 汗 、 七に 聾

ろう

(難聴) 三に 頭身 、 八に 渇 四に 便 、 九に 脈 色 五に 飲食 、 十に 気味(臭い) (1)寒熱を問う おそれる ・寒 - 悪寒(畏寒)- 温たかくしても寒気

さ む け

が治らない 悪風

お ふ う

(畏風)- 温たかくすると寒気が治る。外気に当たりたがらない。

- 普通にしていれば寒気を感じない

・熱 - 発熱 - ・体温が正常よりも高い状態 ・全身や一部における患者の自覚症状としての熱感(ほてり)。 外邪:経絡 A.悪寒発熱(外感発熱):悪寒と発熱が共にあるもの 外感病初期(表証)、太陽病 ・外感発熱:外邪と正気が、争っている状態 衛気 ・風寒 → 悪寒が重く、発熱が軽度なもの ・風熱 → 発熱が重く、悪寒が軽度なもの 正気 風寒を対象 真気 正 気 :衛気 強 弱 強 邪 気 弱 生気(抵抗力)が強い → 高熱 邪気(風寒)が強い → 悪寒が強い

(発病しない) 外感せず

発熱 強い(重い) 悪寒 強い(重い)

発熱 弱い 悪寒 弱い

発熱 弱い 悪寒 強い

参)〔中医学的には〕 悪寒:寒気を感じ、温かくしても寒気が治らない 畏寒:寒気はあるが、温かくすると寒気が治る 悪風:極度の悪寒(外気に当たり、寒気を感じるもの)

14

第4章 診断論 1.四診 寒 実寒:外邪(寒邪) - 瀉法 虚寒:陽虚 ← 気虚 補法 温煦作用 ↓ (灸) 実熱:外邪、飲食 虚熱:陰虚(ほてり、のぼせ) B.但寒不熱:悪寒はあるが、発熱がないもの 【原因病態】・ 陽虚証(虚寒証)→ 肌表の温煦低下 → 寒気はあるが温ためると治る → 随伴症状:顔面蒼白、四肢の冷え、就寝時の寒気 etc. ・寒邪の直中(いきなり裏に入ること) → 温ためても、寒気がとれない (冷たい物などの過食 etc. → 冷えと痛み(症状が強い)・・・実寒証 C.但熱不寒:発熱はあるが悪寒がなく悪熱があるもの 【原因病態】裏熱証:胃腸の熱、肺胃の熱、肝胆鬱

うつ

熱 →熱は、壮熱、潮熱、長期微熱など D.寒熱往来(往来寒熱):悪寒と発熱が交互にくるもの 【原因病態】 少陽病 ( 半表半裏証)の特徴的症状・・・口苦、胸脇苦満 → 正気と邪気 が半表半裏の病位で争っている(悪寒と壮熱の交替に出現) 周期性で重症 → 瘧 証

ぎゃくしょう

(マラリア) E.その他:発熱の型などによる分類 ① 壮熱:高熱の続くもの(悪寒なく、悪熱するもの) 【原因病態】裏熱証( 風寒 の化火・ 風熱 の邪が裏に侵入 発汗で水分が減るため (裏熱証の随伴症状:多汗、口渇、煩躁

はんそう

、舌質紅・黄苔、小便短赤 etc.) ※正気も邪気も強い → 高熱 となる 熱の症状 ② 潮熱: 毎日一定時刻に熱が出現するもの(多くは午後) a.日晡潮熱(陽明潮熱):日晡(午后3~5時)頃より熱が著明になるもの(陽明の時刻) 【原因病態】 胃腸の燥熱 が多い → 随伴症状:腹満、腹痛、便秘 b.夜間潮熱:夜に熱が出現するもの 【原因病態】陰虚証に多い → 五心煩熱、骨蒸発熱 4、随伴症状:盗汗、口乾 etc. ※陰虚証の潮熱は午後にも出やすい。 虚熱 ほてり等 強くない熱 口が乾く(口渇までいかない) ③ 長期微熱:高熱ではないが長期に及ぶもの。患者の自覚症状としての熱感。 【原因病態】・気虚証(気虚発熱):脾気虚損により、清陽が上昇せず鬱結し起こる →随伴症状:自汗、息切れ、懶

らん

言げん

(話したがらない)、食欲減退、無力、倦怠 ・陰虚証(虚熱によるほてり・のぼせ → 潮熱参照) ・瘀血停滞 その他: ・身熱:全身性の熱(汗を伴わない) ・大熱:身体的の表面に現れる熱(大は体表のこと、裏熱に対するもの) 4 骨蒸発熱:熱が体の深部から湧き出すような感覚

15

第4章 診断論 1.四診 (2)汗を問う ・汗と関係するもの:心(心の液)、肺(皮毛を主る)、衛気(溱理の開闔

かいごう

) ① 表証の汗 ・無汗:表実証 - 寒邪の侵襲(収斂作用により、溱理の汗孔が閉じる) ・有汗:表虚証 - 気虚・陽虚 の風邪の侵襲(風邪が一層衛気を冒し発汗) ② 自汗:常時汗が出やすい。少しの活動で発汗 【原因病態】気虚証 :特に 心気症・肺気虚 に多い〔 陽虚証 でもでる〕 → 衛気 の 固摂 作用の低下による ③ 盗汗:寝汗のこと 【原因病態】陰虚証:前述 陰で押さえているものが、陰虚により、汗として出る ④ 大汗:汗が多量に出ること 【原因病態】・実熱証 - 随伴症状:煩渇、冷水を飲みたがる ・生命が途絶えそうな危篤の時の大汗を特に、絶汗または脱汗という。 →元気虚脱の状態で、気と津が外へ漏れる ⑤ 頭汗:頭部にだけ汗をかくもの 【原因病態】・上焦の邪熱 - 随伴症状:煩渇、黄苔、脈浮数 etc. ・中焦の湿熱 - 随伴症状:体が重い、怠い、舌苔 黄 膩 (3)飲食を問う A.食 欲 ① 食欲不振 顔色が悪い(気がいってなくて) 【原因病態】虚証: 脾胃気虚 → 随伴症状: 顔面萎黄、倦怠、痩身 実証: 脾湿不運 (湿により運化機能停滞) →随伴症状: 腹脹、胸悶、四肢・身体の重だるさ、厚膩苔 ② 厭食

えんしょく

: 食べ物の臭いを嗅ぐのも嫌がる 悪食: 食べ物をみるのも嫌がる 【原因病態】傷食 → 随伴症状:(食積)胃部のつかえ感、腹脹、腐酸臭の上逆、噯気(げっぷ) 妊娠 → 随伴症状: 悪心、嘔吐、酸っぱいものを欲しがる 脾胃湿熱、肝胆湿熱 →随伴症状:油っこい物を嫌う ③ 消穀善飢

しょうこくぜんき

: 食欲旺盛で、すぐに空腹となる 【原因病態】 胃熱(胃火) :胃の腐熟作用の亢進による。体重は減少する。 実 ※ 消渇

しょうかち

病によく見られる・・・多くは糖尿病

16

第4章 診断論 1.四診 納気作用 ④ 空腹感はあるが食欲がないもの・・・・足少陰腎経(呼吸が苦しく咳き込む) 腎・・・陰中の陰 【原因病態】 陰虚 証(特に 胃陰不足 ):虚熱により起こる → 随伴症状: 口乾、舌質紅、舌苔少 その他:除中:死の直前に一時的に症状が軽くなったような状態 久病・重病患者が、突如として暴飲暴食をするとき → 脾胃の気が絶えようとする徴候 B.口 味(味覚)

症 状 原因病態 ① 口苦(口が苦い) 肝胆実熱 ② 口淡(味がしない) 脾胃虚熱、胃寒(脾虚不運) ③ 口が甘く粘る 脾胃湿熱 ④ 口が塩辛い 腎熱 ⑤ 口が酸っぱい(酸腐臭・呑酸) 食滞、食積

C.五 味

肝 心 脾 肺 腎

五 味 酸 苦 甘 辛 鹹 → 五味の過不足により五臓に影響 (臓が病むと、対応味覚に異常)

五 色 青 赤 黄 白 黒 →各色の食物が対応五臓に入る ( ex.黒ごま → 腎)

腎虚の人は黒っぽいものを好む D.口 渇 口渇の有無は、津液の盛衰、輸送の状況を反映 ・口渇なし:津液損傷なし → 健常者、寒証、湿証 ・口渇あり:津液損傷あり、 津液輸送異常(痰や瘀血の停滞) でも生じる

症 状 熱証 強い口渇、多飲(冷水を好む)-(実熱)

痰飲内停 口渇し飲みたいと思うが、口に含むと吐き出す 痰飲により水津が昇らない 瘀血 口渇するが口を潤す程度で、飲みたがらない

口渇し、多飲する。多尿、消穀善飢を伴う ・上消(肺消) :口渇多飲が主症状 ・中消(胃消、脾消) :消穀善飢が主症状 ・下消(腎消) :多尿 が主症状

糖尿病 と考えられる

肝火→胆経→胆汁→口 (陽)

五味とは少し違う

17

第4章 診断論 1.四診 (5)二便を問う ・二便(大便と小便)の性状、回数、量などにより診断する。 A.大便の異常 ① 秘 結(便秘): 実証、熱証 に多い ・病態:腸内の津液不足、気虚(推動低下)、気滞→大腸の伝導失調により起こる。 脾胃(昇清・降濁)、肝(疏泄)、肺(粛降)などとも関与。

症 状 原因病態 a.便秘、潮熱(日晡潮熱)、口渇、舌苔黄燥 ○ 熱証、実証(熱による乾燥) b.便意はあるが排便無力。便は硬または軟 ○虚証(気血津液の不足の程度により便の性状は変化) c.便秘、四肢の冷え、夜間頻尿、脈沈遅、喜温 ○ 腎陽虚証 腎→二陰に開竅 d.便は硬く兎糞状 ○ 血虚証

②泄 瀉(下 痢):虚証、寒証に多い 脾虚証・・・下痢

・病態:脾胃の異常など → 小腸の清濁分別の失調 → 水湿が大腸に停滞 ・泄:大便稀薄で、出たり止まったりするもの ・瀉:水様性の下痢

症 状 原因病態 a.急性下痢、腹部膨満感、腹痛 実証(外邪が入った) b.慢性下痢、喜按 虚証(脾胃虚弱:始め硬く、後に軟便) c.水様便、悪臭はなし 寒証 d.黄褐色の水様便、悪臭あり 熱証(実)(大腸湿熱・食積) ※五更泄瀉(鶏鳴下痢)→明け方の下痢 脾腎陽虚証(腎陽虚がメイン)

B.小便の異常 水の上限 ・肺・脾・腎・膀胱の異常→水液代謝異常により起こる

色は清(無色又は薄い) 寒証(虚寒証が多い) a.尿量の増加

口渇、多飲を伴う 消渇(下消) b.尿量の減少 発汗、下痢などを伴う 実証、熱証

尿量少ない・色濃い、急迫するのもの 下焦の湿熱 c.頻尿(回数が多い)

尿量多い・色清 腎陽虚証 d.小便自利 回数多く、量も多い:10 回/日以上 消渇(腎陽虚証) e.小便不利 回数少なく、量も少ない:2・3 回/日 瘀血、痰濁、腎虚

小便が出にくいもの。排尿困難 瘀血、湿熱、脾肺気虚、腎陽虚 f.小便閉(尿閉)

下腹脹満感を伴う → 「癃閉りゅうへい

」 前立腺肥大 g.遺尿(尿弱、尿床) 夜尿症、尿失禁 腎虚

18

第4章 診断論 1.四診 (6)疼痛を問う ・部位、性質などから診断する。 ※ 不通則痛(通ぜざれば則ち痛む)→ 気血の渋滞(瘀血、痰飲、気滞、食積、寒邪、気虚) A.痛みの部位 (凝滞) ① 頭 痛 ・ 実証:痛みが強い → 六淫、痰飲、瘀血、肝陽亢進(陽の上衝) ・ 虚証:痛みは弱い → 気・血・精の不足、腎虚(脳の栄養不良) 経絡流注から

a.太陽経頭痛(膀胱経) 後頭部~項背部 偏頭痛 b.少陽経頭痛(三焦経・胆経) 側頭部(一側又は両側) c.陽明経頭痛(胃経・大腸経) 前額部~眉間(みけん) d.厥陰経頭痛(肝経) 頭頂部(気の上逆の自覚、嘔吐) e.少陰経頭痛(腎経) 頭の中(脳、(歯))・・・虚証による f.太陰経頭痛(脾経) 頭重感、腹満、自汗

② 胸 痛

・心肺の病変の際に起こりやすい。 胸悶、咳嗽 痰濁 胸悶、心悸 瘀血 胸痛+ 四肢の冷え、自汗、顔面蒼白 陽虚

③ 脇 痛(胸部外側面)

・肝胆の病(肝気鬱結、肝胆湿熱、瘀血気滞、懸飲)により起こりやすい。

④ 腹 痛 大 腹 臍より上部 脾・胃 小 腹 臍より下部 腎・膀胱・小陽・大腸・子宮 少 腹 小腹の両側 瘀血、肝経の病変

実証 気滞、瘀血、食滞 虚証 気虚、血虚、陽虚

⑤ 腰 痛 ・「腰は腎の府」:腎や膀胱経の病変により起こりやい。

実 証 風・寒・湿の邪 瘀血が経絡を阻滞 虚 証 腎虚(慢性腰痛)

→ 強い → 弱い(だるい)

19

第4章 診断論 1.四診 ⑥ 四肢痛

実 証 風・寒・湿の邪、湿熱、瘀血 →(経絡や関節、肌肉の気血を阻滞) 虚 証 脾胃虚損 → 四肢の栄養不良

※踵の痛み → 腎虚 B.痛みの性質

分 類 病 態 原 因 脹 痛 脹った感じ。 膨満感を伴う 気 滞 刺 痛 錐で刺したような痛み 血 瘀(固定性の刺痛) 絞 痛 絞扼痛、疝痛 寒 証、血 瘀、結 石 重 痛 重い感じで痛む 湿 証 酸 痛 だるい痛み 虚 証、湿 証 隠 痛 我慢できる程度の持続性の痛み 虚 証(気虚が多い) 空 痛 空虚感を伴う痛み 気血精髄の不足

掣せい

痛つう

引っ張られるような痛み 肝の病証 冷 痛 冷えを伴う痛み 寒 証(実寒、虚寒) 灼 痛 灼熱感を伴う痛み 熱証(実熱、虚熱)

C.痛みの喜悪

分 類 症 状 原因病態 拒 按 疼痛部位に、触る・按圧すると症状増悪 実 証 喜 按 疼痛部位を按圧すると、疼痛軽減または消失 虚 証 喜 温 温めると疼痛が軽減 寒 証 喜 冷 冷やすと疼痛が軽減 熱 証

(7)月経を問う ・女性の場合は、結婚の有無、出産経験の有無、妊娠の有無、月経、帯下についても聞く ・月経は、周期、日数、経血の量と性状などから、診断する。 ・女子胞、腎、肝、脾、任脈、衝脈が関連する ※月経異常

周 期 期 間 血 量 頻発月経 過長月経 過多月経 稀発月経 過短月経 過少月経 無月経

20

第4章 診断論 1.四診 A.月経周期(経期)の異常

分 類 病 態 原 因 月経先期( 経早 ) 周期が早まる(頻発月経) 熱証(血熱)、気虚(固摂作用 ↓ ) 月経後期( 経遅 ) 周期が遅れる(稀発月経) 寒証、気滞、血瘀 → 血の渋滞 前後不定期( 経乱 ) 周期が乱れ、不定期(月経不順) 肝鬱(疏泄異常)、脾胃両虚、血瘀

B.月経血量(経量)の異常 重血(出血)

分 類 病 態 原 因 経量過多 経血量が多い 血 熱、気虚(固摂作用 ↓) 経量減少 経血量が少ない 血虚、寒証、血瘀 閉経 月経停止から3ヶ月、妊娠していないもの ◎気血両虚、血寒凝滞

無月経 体力がかなり衰えている C.月経血の色と性状

※正常:経色は紅色、経質は薄くも濃くもなく、血塊ないもの。 経 色 経 質 原因病態

淡 紅 色 稀 薄 虚証、気虚 深 紅 色 濃 い 血熱、実証

暗紫色又は暗赤色 血塊あり 寒証、血瘀

D.月経痛 ・腰部・腹部の痛み。痛みの程度や周期性などから診断する。 ※特に、小腹部(下腹部)の痛みにより診断

小腹部痛みの性質 原因病態 脹痛 気 滞 (気滞血瘀) 隠痛・腰がだるい 腎 虚 (気血両虚) 冷痛、喜温 寒 証

E.帯下

・帯下(こしけ・おりもの) ・分泌物の存在が自覚され、不快感がみられる程度になったもの。 →生理的に、排卵期や妊娠時にみられる。

症 状 原因病態 白色・稀薄で臭わないもの 虚証、寒証 黄色・赤色、濃く臭う 実証、熱証

21

第4章 診断論 1.四診 (8)睡眠を問う 神がやられると不眠

不眠:入眠障害、熟眠障害などがある ※ の変調 → 神を損ねる → 不眠 心、心包 心痺両虚

心労、思慮過度 → 心脾損傷 → 神を損ねる 脾虚 → 気血生成不足 → 神を栄養できない

不眠、心悸、健忘、倦怠感 食欲不振 etc.

心腎陰虚 (心腎不交)

久病 etc. → 腎陰損傷 → 火の抑制低下 五志過度 → 心火亢進 → 神を損ねる

不眠、すぐ目覚める 心煩、多夢、健忘 etc.

食滞、痰熱 食滞、痰湿 → 心神に影響 熟睡できない、つかえ感

不眠

肝火 抑鬱・怒る → 肝火 → 炎上し心神を損ねる 入眠困難、頭痛、口苦 嗜眠:ひどい眠気があり、場所を選ばず入眠してしまうもの 陽虚(脾気虚弱) 食後の眠気、無気力、食欲減退、全身衰弱 etc. 嗜眠

し み ん

痰湿(痰湿困脾) 全身重く、疲れて眠くなる、膩苔、濡脈

(9)五臓の状況について問う 木 火 土 金 水 五官 目 舌 口 鼻 耳 五液 涙 汗 涎 涕 唾 五華 爪 面色 唇 毛 髪

五臓 五主 五主の実際の部位 病 態 肝 筋 スジ、靭帯、腱、筋肉の運動 関節の運動障害 心 血脈 血管 血液循環障害 脾 肌肉 体重維持、機械的刺激から守る(脂肪) 体が重い、肉離れ、痩せる 肺 皮毛 皮膚、汗腺などの付属器 肌荒れ、 腎 骨髄 骨・髄(歯、脳とも関連) 骨粗鬆(歯の動揺、健忘)

(10)過労の原因を問う 過労は、臓腑の機能を損ねる。また、臓腑が弱ると関係部位の機能異常が生じる。

五労 直接傷害されるもの 傷害される蔵 久行 筋 を傷る 肝 を傷る 久視 血 を傷る 心 を傷る 久坐 肉 を傷る 脾 を傷る 久臥 気 を傷る 肺 を傷る 久立 骨 を傷る 腎 を傷る

(11)その他 問診に関わる事項

五臓 肝 心 脾 肺 腎 五気 春 夏 長夏 秋 冬 五悪 風 暑・熱 湿 燥・寒 寒・燥 五情 怒 喜・笑 思・考 悲・憂 恐・驚 五邪 風 暑 飲食労倦 寒 湿

臨床的に重要(国家試験では出題されたことはない)

←※ 難経の五邪(五因)

22

第4章 診断論 1.四診 5)切 診 (巧技) 切診:触診 → 脈診、腹診、切経 がある。 (1)脈 診 ・脈に触れて 臓腑経絡 の異常を診断する A.脈状診 脈の状態 を主に診る B.比較脈診 場所の違い で比較する。 六部定位脈診、人迎脈口診、三部九候脈診がある A.脈状診 ・脈の状態から、病因の推測、寒熱の度合い、予後の判定 などを診る 重要。

①方法:寸口(橈骨茎状突起の内側で、橈骨動脈拍動部 で脈の状態を診る ※寸口は、気口・脈口ともいう 教 p119 参照 ※ 1分あける

寸口 ・ 寸口 (寸) - 6分:示指 で診る (2寸) ・ 関上 (関) - 6分:中指 で診る ・ 尺中 (尺) - 7分:薬指 で診る ※ 母指を陽池穴に添えると安定する

② 位置:患者の 心臓 の高さに合わせる ③ 圧力:指の力を3段階に分けて脈象を診る。

浮取 軽く皮膚上を按圧して診る 浮の部の脈 中取 中等度の力量で 肌肉 まで按じて診る

〔一番、脈が強く触れるところ〕 中の部の脈 = 中脈

沈取 力を入れ 筋骨 まで按じて診る 沈の部の脈 ※ 中脈(胃気の脈) 活力 ・ 胃の気 の反映する脈 → 生命力 が反映

④ 平脈: 健康人の正常な脈 ・一息(一呼一吸)に 4~5 拍動 (術者の呼吸で判定) ・リズムが一定(不整脈でない) ・太くも細くもない。硬くも柔らかくもない。浮いても沈んでもいない。 ・季節の脈を少し呈している

春 夏 長夏 秋 冬 脈状 弦 洪・鉤 代・緩 毛・濇

しょく

石・滑

〔参〕援和で有力、リズムがあり速くも遅くもない。〔鍼灸学:基礎編〕 Point:1.有 神:緩和で有力。 2.有胃気:脈の去来に余裕があり平均している。 3.有 根:尺部を沈取した時にも一定の力がある。

23

第4章 診断論 1.四診 ⑤ 祖脈:最も基本となる脈状 a.一般的に祖脈というと、 四祖脈(四脈)を指す。

四祖脈 浮・沈・遅・数 六祖脈 浮・沈・遅・数・虚・実 八祖脈 浮・沈・遅・数・虚・実・滑・濇

⑥ 八要の脈(脈法手引草)

浮・沈 表 裏 を分かつ 遅・数 寒 熱 を分かつ 滑・濇 気血の虚実 を察す 大・緩 病の安危 を察す

⑦ 七表八裏九動の脈:基本脈状の二十四脈(脈論口訣)

七表の脈 陰 脈 浮・芤・滑・実・弦・緊・洪 八裏の脈 陽 脈 微・沈・緩・濇・遅・伏・濡

なん

・弱 九動の脈 陰陽のどちら

ともいえない 長・短・虚・促・結・代・牢・動・細

七表:質屋の不幸確実現金庫 八裏:パリの美人の感触は乳房軟弱 九動:苦労の頂点 姑息な決定労働 ※頻度の高い脈 ※ 頻度の高い脈 有力

浮脈 軽く按ずれば、大きく満ちて感じるが、重く按ずるとなくなる 表証、虚証(無力) 沈脈 軽く按じても感じられず、重く按ずれば得られる 裏症(裏実・裏虚) 遅脈 一息に三拍以下。緩慢な脈 寒証(実寒、虚寒) 数脈 一息に六拍以上。速い脈 熱証(実熱、虚熱) 虚脈 浮・中・沈共に拍動弱く、無力 虚証(気虚、血虚 etc) 実脈 浮・中・沈共に拍動大きく、有力 実証 外邪が入って食滞

滑脈 流れが滑らかで、玉を転がすように丸く滑らかに触れる 痰飲、食滞(妊娠) 濇脈 ザラザラとした渋滞した脈(ナイフで竹を削る時の手応え) 血瘀(有力)、血虚(無力) 弦脈 琴の弦を按じるような脈 (長くてまっすぐ) 肝胆病、痛証、痰飲 緊脈 緊張し張りつめたワラを按じるような脈(弦脈の一層緊張) 実証、痛証/寒証 濡脈 浮にして細軟の脈 湿証、虚証 細脈 糸状に細く無力。指にははっきりと触れる。 血虚、陰虚/気血両虚 結脈 不規則に1つ止まる。緩慢な脈 血瘀、積聚、寒証 代脈 規則的に1つ止まる。間歇時間が比較的長い脈 臓器の衰退、痛証

陰虚 - 細・数 風寒 → 浮・緊 冷え (虚 熱) 肝火 → 弦 数 外感病

陽虚

陰虚

寒邪侵入

(渋)

湿(実)

24

第4章 診断論 1.四診 ⑧ 七死脈(怪脈):死期の近い脈 七死脈:七羽の雀が改札で 石を弾いて蝦

えび

と遊んでフフッと笑って魚を贈ろう 雀啄脈 雀がエサをついばむよう。頻数で、不規則。止まったり動いたりする。 解索脈 脈が疎になったかと思うと密になり、索がとけるような状態。脾の絶脈 弾石脈 沈実で石を弾くような感じ。腎肺の絶脈

蝦遊か ゆ う

脈 細く静かにぼんやりとした脈の中に一瞬飛び跳ねるように打っては消える

釜沸ふ ふ つ

脈 浮数が極まり、釜の中で水が沸騰しているよう躁さわ

がしく、根は絶えてない 魚ぎょ

翔しょう

脈 脈はあるかないか判らないような物で、魚が水中を揺らいでいるような状態

屋漏脈 極めて長い間隔を置いて拍動があり、しかも間歇時間は不規則。 水滴が連なり落ちては止むような打ち方の脈状

B.比較脈診(部位脈) ・拍動部の違う処を比較して、 臓腑経絡 の異常を診る方法 ・脈状診 :病の基本的状態(八綱、気血,痰飲などの病態)を候う ・比較脈診:臓腑・経絡の病態を候う ① 三部九侯診:素問〔三部九候論篇〕 教 p118 参照 ・人体を上・中・下の三部に分け、また、それを天・地・人に分けて脈を比較する方法 (※現在ではほとんど用いられない。) 今まで国家試験に出たことはない ② 人迎脈口診:霊枢〔終始篇・禁服篇 教 p118 参照 ・人迎(頚動脈拍動部)と寸口(橈骨動脈拍動部)の脈幅を比較する方法。両手で同時に診る。 ex・人迎一盛:人迎が脈口の一倍大きい(やや大きい) 旺盛のこと ・病在少陽 病は足少陽にある。 ・脈躁病在手 → 脈が躁(80 拍/分以上)の時は、病は手少陽にある。 ③ 六部定位脈診:素間〔脈要精微論篇〕→ 難経で確立 ・寸口(気口・脈口)部を3部(寸・関・尺)に分け、それぞれの浮・沈の脈の強さの差を診る。

左 部 位 右 小腸 浮 浮 大腸 心 沈

寸口 〔寸〕 沈 肺

胆 浮 浮 胃 肝 沈

関上 〔関〕 沈 脾

膀胱 浮 浮 三焦 腎 沈

尺中 〔尺〕 沈 心包

※ 実際には、脈状診と合わせて用いられることが多い。 ※ 反関の脈 :脈が橈骨茎上突起の内側にはなく、手陽明経付近に沿って存在するもの。 (陽谿)

※浮 - 腑(陽)、陽経の異常 ※沈 - 臓(陰)、陰経の異常 ※圧は一定ではない 教 p120 表 参照

25

第4章 診断論 1.四診 (2)腹 診(按腹) ・腹部(胸部)の触診 臓府の病変を診る ① 方 法 ・仰臥位で、 膝 を伸ばしてみる。・・・西洋医学は伸ばさない ・触診は、手掌・指腹(押し手側)を用いて行う。 ・部位は、上方(胸部)から下方(腹部)へと診る ② 診察するポイント ・まず、望診 → 腹部の 形態・乾湿・色艶・膨隆・緊張度などを診る ・触診(切診)→ 皮膚温・乾湿・ザラツキ感・緊張・無力・硬結・圧痛・動悸などを診る ・問診として、自覚痛、膨満感、圧迫感、瘙痒感、知覚異常(過敏・鈍麻)なども適時 ③ 触診に当たっての注意事項 ・術者の手は、温めておく。爪は切る。 ・手掌面が当たるように、指は立て過ぎない(特に最初) ・力加減は、患者の腹圧と均衡が取れる深さが適当 ・患者の力が抜けない時は、息を吐かせると脱力できる。 A.平人無病の腹 ・温かく適度の潤いがある ・つきたての餅のよう(硬くも柔らかくもない) ・上腹部が 平ら、臍下部が ふっくらとして手応え がある B.五臓の腹診」(難経十六難) ・肝病は、臍の 左 に動悸あり、これを按せば牢

かた

く、もしくは痛む。 ・心病は、臍の 上 に動悸あり、 〃 ・脾病は、臍に 当り て動悸あり、 〃 ・肺病は、臍の 右 に動悸あり、 〃 ・腎病は、臍の 下 に動悸あり、 〃 C.募穴診 ・募穴の異常反応を診る → 臓腑・経絡の異常を探る ex.期門に異常 → 肝の異常、足厥陰経の異常を疑う

26

第4章 診断論 1.四診 D.特定腹証 ( 湯液の腹証 ) ・江戸時代の古方派により発展の腹証 → 鍼灸に応用 ① 心下痞鞕

ひ こ う

・心下痞 :心下部の 自覚 的な つかえ 感のあるもの ・心下鞕 :心下部の 他覚 的な 硬い抵抗 感のあるもの

・心下痞鞕:上記2つが、両方存在するもの 心・心包の病変 ・心下痞満:心下部の自覚的なつかえ感 + 張った 感じのあるもの ・心下軟 :心下部が 無力 なもの ・結 胸 :心下部が 硬く、圧痛 のあるもの ② 胸脇苦満 ・季肋下部の 充満感。季肋部への押圧による 苦満感・圧痛 → 肝・胆の病変・少陽病・半表半裏証 ③ 小腹不仁(臍下不仁) ・下腹部に力無く、フワフワして知覚鈍麻があるもの → 腎虚(腎精の虚、原気不足) ④ 小腹急結(少腹急結)

・下腹部、ことに 左下腹部 の抵抗感・硬結のあるもの → 瘀血:腎・肝・脾の病変 ⑤ 腹裏拘急(裏急) ・腹裏の 引きつれ 。腹直筋 の異常なつっぱり → 虚労(過労ととらえる) ⑥ 虚里の動(虚里:胃の大路の別名) ・左乳下 の動悸 → 心尖拍動 をさす ・正常 → 日で見て、あるが如き、無きが如き。按じて静かに拍動 ・異常 → 動なきは死。動亢

たか

ぶるものは注意 ⑦ 動 悸

・腎間の動悸:臍傍または臍下の雛→ 腎虚 ・臍中の動悸:臍部の動悸 → 脾胃の虚、腎虚 (3)切 経

・経脈にそって擦過ぎる・按圧 して切診する方法 → 臓腑・経絡の異常を診る ・経絡の異常反応 → 治療 穴を選択できる。 ※一般に、肘や膝 から末梢の部(要穴部など)で診る

27

第4章 診断論 1.四診 ① 撮 診(擦診) ・経絡上の皮膚をつまみ、知覚過敏 や 皮膚緊張 を診る → 痛みや抵抗が強いと異常 ② 圧 痛 ・押圧時の痛み・知覚鈍麻・心地よさなどを診る ・痛い 拒 按: 実 痛 ・心地よい→ 啓 按: 虚 痛 ※「痛を似って輸となす」(痛い処を治療点とする) 圧痛点:臓腑経絡の異常反応点 → 診断 点であり、 治療 点となりうる。 ③ 硬 結 ・皮下、筋中の固まり様なもの → 経穴の異常反応 ・多くは圧痛を伴う ④ 陥下 - 虚(普通よりも強い) ・経脈上を押圧すると 力なく、落ちこむところ ※「 陥下なければ之に灸す 」(窪んだ処には灸が適する) ⑤ 細 絡 (実際には、望診で診る) ・皮下静脈の膨れたもの。細静脈がボーフラ状に変化 ・ 血絡・瘀血 として捉える → 刺鍼・ 刺絡 の対象となる(適する) (4)背 診(候背) ・腹診と並んで、古くから「按腹・候背」と呼ばれている。 ・背部には内臓の病変が現れやすい ① 方 法 ・望 診 → 皮膚の色艶・産毛・ほくろ・発疹、筋の膨隆などを診る 臓腑経絡の異常を ・切 診 → 皮膚の状態、筋肉の緊張・隆起・陥下・硬結などを診る 診る

※背部輸穴を診る → 臓腑の診断をする方法もある