動脈硬化症 動脈硬化の病理 粥状硬化 …...1 動脈硬化の病理...

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動脈硬化の病理 三重大学医学部病理1 吉田 利通 動脈硬化症 粥状硬化症(Atherosclerosis) 大動脈、冠状動脈、脳動脈 • Mönckeberg中膜石灰化硬化 (Mönckeberg medial calcific sclerosis) 中等大の動脈内の筋層の石灰化を伴う 細動脈硬化症 細血管の硬化病変 糖尿病、高血圧 粥状硬化症 Athera (Greek) = 粥(オートミール) 病変部が粘稠な脂質に富む粒状な内容をも つ。 冠状動脈 心筋梗塞 脳動脈 脳梗塞 大動脈 大動脈瘤 大動脈硬化 大動脈硬化(中等度) 大動脈硬化(高度)

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動脈硬化の病理

三重大学医学部病理1

吉田 利通

動脈硬化症

• 粥状硬化症(Atherosclerosis)大動脈、冠状動脈、脳動脈

• Mönckeberg中膜石灰化硬化

(Mönckeberg medial calcific sclerosis)中等大の動脈内の筋層の石灰化を伴う

• 細動脈硬化症

細血管の硬化病変 ← 糖尿病、高血圧

粥状硬化症

Athera (Greek) = 粥(オートミール)

病変部が粘稠な脂質に富む粒状な内容をもつ。

冠状動脈 → 心筋梗塞

脳動脈 → 脳梗塞

大動脈 → 大動脈瘤

大動脈硬化

大動脈硬化(中等度) 大動脈硬化(高度)

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大動脈粥状硬化(脂質線条、初期) 大動脈粥状硬化(脂質線条)

大動脈粥状硬化(粥状腫)

粥状腫

粥状腫

大動脈粥状硬化(複合病変)

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腹部大動脈瘤

脳梗塞

内頚動脈血栓 脳動脈硬化

脳梗塞(急性)

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脳梗塞(亜急性)

心筋梗塞

心臓(正常)

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心筋梗塞

動脈硬化の進行

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損傷ー反応説

動脈硬化の予防

危険因子

• 年齢

• 性差 男性>女性 閉経後は同じ

• 家族性の集積

遺伝性高脂血症

後天的な危険因子(Major Risk Factor)1)後天性高脂血症 2)高血圧症

3)喫煙 4)糖尿病

粥状硬化の他の危険因子• 規則的な身体運動の不足

• 競争的でストレスの多い生活スタイル

• 肥満

• 経口避妊薬の使用

• 高尿酸血症

• 炭水化物の過剰摂取

• 高ホモシステイン血症

心筋梗塞は危険因子が、3つで7倍、

2つで4倍。→ 相乗的作用

一次予防と二次予防

一次予防:

粥腫斑の形成の予防や遅延動脈硬化からの急性病変の予防

二次予防 :急性病変の再発の防止

一次予防

数多くの予防法が提唱されている。

禁煙

高血圧症の治療(予防)

適度な運動+カロリー調節によ る体重減少

適度な量のアルコール摂取

血中コレステロール値の低下

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血中コレステロール値の低下• HDLを増加させ、LDL、VLDLを減少させる。

VLDL:肝臓から分泌され、中性脂肪を全身に供給。

LDL:中性脂肪を組織にわたしたあとで、コレステロールを肝臓に回収する。

HDL:遊離コレステロールを組織から回収し、エステル化する。

血漿リポタンパク

血漿リポタンパク質の一般構造 組織間のコレステロール輸送

血中コレステロール値の低下

• 中性脂肪摂取をへらす。→ 血中VLDLの減少。→ LDLの減少。

• 飽和脂肪食品(動物脂肪、バター、卵)を不飽和脂肪食品(植物油、魚油)に置き換える。→ これらの不飽和脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸)はコレステロールをLCATによりエステル化する。→ HDLを増やす。

粥状硬化の危険因子

Major Risk Factors : 後天性高脂血症、高血圧症、喫煙、糖尿病

Minor Risk Factors• 規則的な身体運動の不足

• 競争的でストレスの多い生活スタイル

• 肥満

• 経口避妊薬の使用

• 高尿酸血症

• 炭水化物の過剰摂取

• 高ホモシステイン血症