大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン...Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV,...

78
班 長 高 本 眞 一 東京大学心臓外科・呼吸器外科 班 員 石 丸   新 戸田中央総合病院 上 田 裕 一 名古屋大学胸部外科 大 北   裕 神戸大学呼吸循環器外科 荻 野   均 国立循環器病センター心臓血管外科 数 井 暉 久 浜松医科大学第一外科 加 藤 雅 明 森之宮病院心臓血管外科 栗 林 幸 夫 慶應義塾大学放射線診断科 田 林 晄 一 東北大学心臓血管外科 中 島   豊 福岡赤十字病院病理部 松 尾   汎 松尾循環器科クリニック 宮 田 哲 郎 東京大学血管外科 吉 田   清 川崎医科大学循環器内科 協力員 青 鹿 佳 和 東京女子医科大学心臓病センター循環器内科 圷   宏 一 国立循環器病センター心臓血管内科 阿 部 知 伸 名古屋第一赤十字病院心臓血管外科 協力員 石 塚 尚 子 東京女子医科大学心臓病センター循環器内科 大 平 篤 志 おおひら内科・循環器科クリニック 加 地 修一郎 神戸市立中央市民病院循環器内科 北 村 哲 也 三重大学第一内科 齋 木 佳 克 東北大学心臓血管外科 柴 田   講 聖マリアンナ医科大学心臓血管外科 下 野 高 嗣 三重大学胸部外科 中 野   赳 三重大学第一内科 縄 田   寛 東京大学心臓外科・呼吸器外科 新 沼 廣 幸 岩手医科大学附属循環器医療センターCCU 西 上 和 宏 熊本病院心臓血管センター 林   宏 光 日本医科大学附属病院放射線科学 師 田 哲 郎 東京大学心臓外科・呼吸器外科 吉 岡 邦 浩 岩手医科大学放射線医学 鷲 山 直 己 浜松医科大学第一外科 Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1569 合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本医学放射線学会,日本胸部外科学会,日本血管外科学会, 日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,日本脈管学会 Ⅰ 改訂にあたって Ⅱ 定義と名称 1 大動脈解離の定義 2 大動脈瘤の定義 3 用 語 Ⅲ 分類と病態 1 大動脈解離 1.分 類 2.病 態 1)拡 張 ①大動脈弁閉鎖不全 ②瘤形成 2)破 裂 ①心タンポナーデ ②胸腔内や他の部位への出血 3)分枝動脈の狭窄・閉塞による末梢循環障害 ①狭心症,心筋梗塞 ②脳虚血 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(20042005年度合同研究班報告) 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン (2006年改訂版) Guidelines for Diagnosis and Treatment of Aortic Aneurysm and Aortic Dissection (JCS 2006) 外部評価委員 安 藤 太 三 藤田保健衛生大学胸部外科 伊 藤   翼 佐賀大学胸部外科 北 村 惣一郎 国立循環器病センター 末 田 泰二郎 広島大学外科学第一 本 田   喬 済生会熊本病院循環器科 安 田 慶 秀 NTT 東日本札幌病院心臓血管外科 (構成員の所属は 2006 11 月現在)

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班 長 高 本 眞 一 東京大学心臓外科・呼吸器外科

班 員 石 丸   新 戸田中央総合病院

上 田 裕 一 名古屋大学胸部外科

大 北   裕 神戸大学呼吸循環器外科

荻 野   均 国立循環器病センター心臓血管外科

数 井 暉 久 浜松医科大学第一外科

加 藤 雅 明 森之宮病院心臓血管外科

栗 林 幸 夫 慶應義塾大学放射線診断科

田 林 晄 一 東北大学心臓血管外科

中 島   豊 福岡赤十字病院病理部

松 尾   汎 松尾循環器科クリニック

宮 田 哲 郎 東京大学血管外科

吉 田   清 川崎医科大学循環器内科

協力員 青 鹿 佳 和 東京女子医科大学心臓病センター循環器内科

圷   宏 一 国立循環器病センター心臓血管内科

阿 部 知 伸 名古屋第一赤十字病院心臓血管外科

協力員 石 塚 尚 子 東京女子医科大学心臓病センター循環器内科

大 平 篤 志 おおひら内科・循環器科クリニック

加 地 修一郎 神戸市立中央市民病院循環器内科

北 村 哲 也 三重大学第一内科

齋 木 佳 克 東北大学心臓血管外科

柴 田   講 聖マリアンナ医科大学心臓血管外科

下 野 高 嗣 三重大学胸部外科

中 野   赳 三重大学第一内科

縄 田   寛 東京大学心臓外科・呼吸器外科

新 沼 廣 幸 岩手医科大学附属循環器医療センターCCU

西 上 和 宏 熊本病院心臓血管センター

林   宏 光 日本医科大学附属病院放射線科学

師 田 哲 郎 東京大学心臓外科・呼吸器外科

吉 岡 邦 浩 岩手医科大学放射線医学

鷲 山 直 己 浜松医科大学第一外科

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1569

合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本医学放射線学会,日本胸部外科学会,日本血管外科学会,

日本心臓血管外科学会,日本心臓病学会,日本脈管学会

Ⅰ 改訂にあたってⅡ 定義と名称

1 大動脈解離の定義2 大動脈瘤の定義3 用 語

Ⅲ 分類と病態1 大動脈解離

1.分 類2.病 態

1)拡 張①大動脈弁閉鎖不全②瘤形成

2)破 裂①心タンポナーデ②胸腔内や他の部位への出血

3)分枝動脈の狭窄・閉塞による末梢循環障害①狭心症,心筋梗塞②脳虚血

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)Guidelines for Diagnosis and Treatment of Aortic Aneurysm and Aortic Dissection(JCS 2006)

目 次

外部評価委員

安 藤 太 三 藤田保健衛生大学胸部外科

伊 藤   翼 佐賀大学胸部外科

北 村 惣一郎 国立循環器病センター

末 田 泰二郎 広島大学外科学第一

本 田   喬 済生会熊本病院循環器科

安 田 慶 秀 NTT 東日本札幌病院心臓血管外科

(構成員の所属は 2006年 11月現在)

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③上肢虚血④対麻痺⑤腸管虚血⑥腎不全⑦下肢虚血

4)その他の病態Intramural hematoma

2 大動脈瘤(Aortic aneurysm)1.分 類

1)瘤壁の形態2)瘤の存在部位3)原 因4)瘤の形

2.病態1)疼 痛2)瘤周囲の圧迫症状3)分枝血管の阻血症状

Ⅳ 統計,疫学1 年間発症頻度

1.厚生労働省の統計2.地域における統計3.日本病理学会の報告である日本病理剖検輯報による剖検数

4.手術件数からの推定2 年齢による発症頻度の変化3 季節,時間,曜日による発症頻度の変化4 突然死例にみる大動脈解離

Ⅴ 診 断1 総 論

1.急性大動脈症候群1)急性大動脈解離①はじめに②診断の進め方

2)大動脈瘤破裂・切迫破裂2.慢性大動脈解離,真性大動脈瘤

1)慢性大動脈解離2)真性大動脈瘤①胸部大動脈瘤②腹部大動脈瘤

2 X 線診断:単純 X 線写真,CT,血管造影1.単純 X 線写真

1)大動脈瘤2)大動脈解離

2.CT

1)検査の方法2)大動脈瘤の CT

3)大動脈瘤破裂の CT

4)大動脈解離の CT

①単純 CT

②造影 CT

③合併症の診断3.血管造影

3 超音波診断1.大動脈瘤2.大動脈解離

4 MRI(magnetic resonance imaging)1.撮像法

1)MRI

2)シネMRI

3)MRA(magnetic resonance angiography)2.臨床応用

1)大動脈瘤のMRI

2)大動脈解離のMRI

3.体内埋め込み装置や金属等の安全性について1)ペースメーカー,埋め込み型除細動器2)ペーシングワイヤ3)人工弁4)ステント,フィルター,コイルなど5)止血クリップ6)胸骨ワイヤ7)心電図,脈波同期等のケーブル

5 Adamkiewicz 動脈の同定1.CT

2.MRI

3.臨床的意義Ⅵ 治療-胸部大動脈

1 治療効果概括(内科治療と外科治療の比較)1.大動脈解離

1)急性期の治療①Stanford A 型急性大動脈解離②Stanford B 型急性大動脈解離③特殊な解離に対する治療

a.Stanford A 偽腔閉塞型急性大動脈解離b.Ⅲ型逆行解離(Stanford A 偽腔開存型)c.Stanford B 偽腔閉塞型急性大動脈解離

2)慢性期の治療①慢性期手術成績②慢性期ステント挿入の成績③慢性期内科成績

a.Stanford A 偽腔開存型b.Stanford A 偽腔閉塞型c.Stanford B 偽腔開存型d.Stanford B 偽腔閉塞型④年齢による手術リスクの上昇について⑤手術適応

2.胸部大動脈瘤1)はじめに2)胸部・胸腹部大動脈瘤の内科治療3)胸部・胸腹部大動脈瘤の外科治療

2 内科治療1.大動脈解離

1)急性期管理2)慢性期管理①血圧管理②安静度,運動③画像によるフォローアップ④内科治療の限界の見極め⑤手術例の慢性期管理における注意点

a.術後遠隔期合併症についてb.残存解離による瘤形成についてc.再手術の頻度(初回手術は慢性期,急性期の両方を含む)

2.胸部大動脈瘤1)はじめに

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061570

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

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2)内科治療における基本的な注意事項①動脈硬化性危険因子の管理②動脈硬化性合併疾患の管理

3)非手術例における内科治療①症状と徴候②経過観察中での血圧管理③経過観察中での運動制限④経過観察中での画像検査による評価

4)手術例における内科治療①臨床症状と徴候②血圧管理③運動制限④画像評価

3 外科治療1.はじめに2.胸部大動脈の基本的な術式と補助手段

①基部・上行大動脈a.標準的な手術法b.大動脈弁温存基部置換術②弓部大動脈

a.標準的な手術法b.脳保護法

¡)SCP

™)RCP

③胸部下行~胸腹部大動脈a.標準的な手術法b.補助手段c.脊髄保護法d.腹部臓器保護法

3.大動脈解離1)急性大動脈解離①手術の原則②上行大動脈置換③弓部全置換④大動脈弁逆流への対処法

a.大動脈弁吊り上げb.大動脈基部置換⑤断端形成術⑥急性大動脈解離の分枝灌流異常

2)慢性大動脈解離①A 型解離

a.大動脈逆流の修復¡)大動脈弁置換術™)弁付き人工血管による大動脈基部置換術£)自己大動脈弁温存術式(aortic valve

sparing operation)b.人工血管による大動脈再建

¡)上行大動脈置換術™)上行・部分弓部置換術(h e m i a r c h

replacement)£)上行・弓部大動脈置換術(total arch

replacement)¢)大動脈基部を伴う上行・弓部大動脈置換術

②B 型解離¡)下行大動脈置換術™)open distal anastomosis による部分弓

部・下行大動脈置換術£)胸腹部大動脈置換術

4.大動脈解離,真性大動脈瘤の外科治療の成績1)大動脈解離の外科治療の現況と成績2)真性胸部・胸腹部大動脈瘤の手術治療の成績

Ⅶ 治療-腹部大動脈瘤1 治療効果概括

1.内科治療と外科治療2.腹部大動脈瘤のリスク評価

1)動脈瘤の破裂リスク①動脈瘤径・拡張速度②動脈瘤形状③疫学的因子

2)動脈瘤による末梢塞栓のリスク3)動脈瘤による凝固障害のリスク

3.内科治療1)禁煙(Class Ⅱa,Level B)2)β遮断薬(Class Ⅲ,Level B)3)抗生剤治療(Class Ⅱb,Level C)4)降圧治療・高脂血症治療5)その他

2 外科治療1.非破裂性腹部大動脈瘤

1)手術適応①最大横径②拡張速度,症状③特 殊

2)手 術① 術前評価

a.大動脈瘤・合併する動脈瘤の評価b.手術リスクの評価c.虚血性心疾患の評価

2.破裂性腹部大動脈瘤1)診 断2)治 療3)治療成績

3.腹部大動脈瘤外科治療後遠隔期生存率Ⅷ カテーテル・インターベンション療法

1 大動脈解離1.はじめに2.経カテーテル的開窓術,狭窄または閉塞真腔,分枝血管に対するステント留置術1)適 応2)方 法①経カテーテル的開窓術②ステント留置術

3)治療成績3.ステントグラフト内挿術によるエントリー閉鎖術

1)適 応2)方 法3)成 績4)おわりに

2 (真性)大動脈瘤1.はじめに2.適 応

1)腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の解剖学的適応

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1571

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

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初版:大動脈解離診療ガイドラインが出版されて 6年

余が経過した.医学の日進月歩は大動脈診療領域におい

ては特に著しく,この歳月の間に診断・治療とも大きく

変化している.診断においては,CT の多列化および経

食道心エコー法の普及に伴い,病態生理の解釈にも変化

が認められる.詳細は「分類と病態」の項に譲るが,例

えば IMH:intramural hematoma や PAU:penetrating

atherosclerotic ulcer の定義と解釈は混乱しており,実際

欧米における IMH の頻度および死亡率は本邦に比し極

めて高い.これらは本来精密な画像診断と病理診断との

突き合わせによってのみ真相が解明されるもので,この

分野における本邦の研究は世界をリードしていると思わ

れ,情報の発信により早急に解決への道をつけなければ

ならない.一方,外科治療の進歩も著しく,胸部外科学

会調査による 2004 年の胸部大動脈瘤手術症例総数は

8,000 例を越え 10 年前の約 3 倍,在院死亡率は overall

で 11 % と激減している.また血管内治療(stent graft)

の普及とデバイス改良も進み,治療の選択肢が増加する

とともに適応にも変化が見られる.

以上の情勢を鑑み,真性瘤をも新たに含めた,今回の

ガイドライン全面改訂に至った.本ガイドライン作成班

①適 応②除 外

2)胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の解剖学的適応①適 応②除 外

3)ステントグラフト治療が望ましいと考えられる病態①臓器障害を伴う症例②緊急症例

4)ステントグラフト治療と外科手術の選択について3.施行施設,術者の条件4.ステントグラフト治療の方法

1)代表的な方法①到達経路②ステントグラフトの内挿

2)ステントグラフト治療における工夫①開窓(fenestration)②枝付きステントグラフト③非解剖学的バイパス+ステントグラフト内挿④open stent-graft 法

5.エンドリーク(endoleak)について6.成 績

1)初期治療成績2)遠隔期成績

7.問題点と将来展望1)使用機器2)施設・術者基準3)適 応

8.まとめⅨ リハビリテーション(急性大動脈解離)

1 はじめに2 PhaseⅠリハビリプログラム

1.循環動態2.初期安静時間3.排 泄4.リハビリテーションの手順

5.清潔,その他3 PhaseⅡリハビリプログラム4 PhaseⅢリハビリプログラム

Ⅹ 特殊な病態1 マルファン症候群

1.概念・病理・病因2.病 態

1)心血管病変2)筋骨格異常3)眼病変4)遺伝性5)腰仙骨部硬膜

3.診断法4.治療法

2 炎症性腹部大動脈瘤1.概念・病理・病因2.頻 度3.臨床症状4.診 断5.治 療6.転帰・予後

3 感染性大動脈瘤1.概 念2.疫 学3.診 断4.治 療

1)抗生物質治療2)手術治療①術式に関して②グラフトの選択③大網充填④術後抗生物質

3)ステントグラフトによる治療5.まとめ

(無断転載を禁ずる)

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061572

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

改訂にあたってⅠ

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1573

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

は 2004 年 7 月に第 1 回班会議がもたれ,以後諸分野の

第一人者が集い 2年間に渡り検討を重ねてきた.将来に

もまた診断・治療の発達とエビデンスの蓄積により版を

改めてゆくことになろう.本ガイドラインが,得てして

専門家不在となりがちな大動脈診療の標準として,医師

ならびに患者の公益に供されることを願う.

なお,診断・治療法の推奨基準とエビデンスレベルは

ACC/AHA ガイドラインに準じて以下の分類を用いた

(http:// circ.ahajournals.org/manual/manual_IIstep6.shtml).

Classification of Recommendations

ClassⅠ:Conditions for which there is evidence and/or

general agreement that a given procedure or

treatment is useful and effective.

ClassⅡ:Conditions for which there is conflicting evidence

and/or a divergence of opinion about the

usefulness/efficacy of a procedure or treatment.

Ⅱa. Weight of evidence/opinion is in favor of

usefulness/efficacy

Ⅱb. Usefulness/efficacy is less well established by

evidence/opinion.

ClassⅢ:Conditions for which there is evidence and/or

general agreement that the procedure/treatment is

not useful/effective, and in some cases may be

harmful.

Level of Evidence

Level of Evidence A

Data derived from multiple randomized clinical trials

Level of Evidence B

Data derived from a single randomized trial, or non-

randomized studies

Level of Evidence C

Consensus opinion of experts

大動脈解離(aortic dissection)とは「大動脈壁が中膜

のレベルで二層に剥離し,動脈走行に沿ってある長さを

持ち二腔になった状態」で,大動脈壁内に血流もしくは

血腫(血流が有るものがほとんどであるが,血流の無い

もの,血栓化したものも一部含まれる)が存在する動的

な病態である1,2).剥離の長さについては 1 cm 以上ある

ものとしている論文もあるが3),明確な定義は無い.臨

床的には,画像診断で明確に描出できる長さは少なくと

も 1~2 cm 以上なければならない.

大動脈解離は本来の動脈内腔(真腔,true lumen)と

新たに生じた壁内腔(偽腔,false lumen)からなり,両

者は剥離したフラップ(flap:内膜と中膜の一部からな

る隔壁)により隔てられる.フラップは,通常 1~数個

の内膜亀裂(tear:裂口,裂孔,亀裂,皹裂,内膜裂口)

を持ち,これにより真腔と偽腔が交通するが,内膜亀裂

が不明で真腔と偽腔の交通が見られない例も一部に存在

する.前者を偽腔開存型大動脈解離(communicating

aortic dissection2))と言い,後者を偽腔閉塞型大動脈解

離(non-communicating aortic dissection2),従来の

thrombosed type と同義)と言う.内膜亀裂の中で,真腔

から偽腔へ血液が流入する主な内膜亀裂(initial tear,

primary tear)を入口部(エントリー:entry)と称し,再

流入する内膜亀裂を再入口部(リエントリー:re-entry)

と称している.しかし形態学上の亀裂は程度や方向の差

はあれ,「血流の出入がある孔(entry)」も意味する事

から交通孔とも称することができる.

偽腔の再開通(re-canalization)とは,閉塞していた

(血流が無い)偽腔が再び開通して偽腔に血流が認めら

れる状態となった場合を言う.再解離(re-dissection)

という言葉は,従来の偽腔とは別の部位に,新たに解離

が生じた場合に用いる.

本症は特に瘤形成を認めないことも多く,通常は「大

動脈解離」と称する.「解離性大動脈瘤(dissecting

aneurysm of the aorta)」という名称は,径が拡大して瘤

形成を認めた場合にのみ使用される.

近年の画像診断の進歩により大動脈中膜が血腫により

剥離しているが,内膜亀裂が見られない病態が見出され

るようになった.この病態は壁内血腫( in t ramural

hematoma: IMH),または壁内出血( intramural

hemorrhage)と称されるが,自然消退をするものがある

一方,明らかな大動脈解離や大動脈瘤へと進展するもの

が認められている4-7).また,破裂をする危険性がある

との報告もあり8),大動脈解離の variant もしくは一部と

して扱う1,2).そのため内膜亀裂やフラップの明瞭な大

動脈解離を古典的大動脈解離(classic aortic dissection)

と称して区別する場合もある.この壁内血腫は,病理学

的には「内膜亀裂の無い大動脈解離」という明瞭な概念

として捉えることができるが9),臨床的には内膜亀裂を

定義と名称Ⅱ

大動脈解離の定義11

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061574

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

有するが偽腔に血流がない大動脈解離(つまり偽腔閉塞

型大動脈解離)と区別することは困難な場合が多い.そ

のため,臨床的には急性大動脈解離に準じた対応が必要

であるとして,「偽腔閉塞型大動脈解離」として解離の

分類に入れる10).

一方,Stanson らは大動脈の粥状硬化性病巣が潰瘍化

して中膜以下にまで達することがあることを指摘し,こ

れを penetrating atherosclerotic ulcer(PAU)とした11).こ

の考えでは潰瘍の penetration が中膜に達した場合には大

動脈解離になる可能性がある12).しかし,penetration は

中膜を超えて外膜へと進展する場合が多く大動脈解離に

なるものは稀とする報告もあり13),PAU と大動脈解離の

関連にはまだ不明な点が多い.

欧米の論文の中には IMH の定義を誤解しているもの

や,画像での確認が不十分なまま安易に IMH と診断し

ているものがある.また,偽腔閉塞型解離の動脈造影で

見られる潰瘍様突出像(ulcer-like projection: ULP)を

PAU と混同しているものも多数認められる.このよう

に IMH や PAU をめぐっては未だ問題点が多く,その語

句の使用にあたっては細心の注意が必要である.

大動脈瘤は「大動脈壁一部の全周,又は局所が拡張し

た状態」とする.従って,大動脈が全体に渡って拡張し

たものは,大動脈拡張症(aortomegaly)と称する.また,

上行大動脈根部が拡張したものは大動脈弁輪拡張症

(annulo-aortic ectasia)とも称される.

大動脈の正常径としては,一般に胸部で 3 cm,腹部

で 2 cm とされており,壁の一部が局所的に拡張して

(こぶ状に突出して,嚢状に拡大して)瘤を形成する場

合,または直径が正常径の 1.5 倍(胸部で 4.5 cm,腹部

で 3 cm)を越えた(紡錘状に拡大した)場合に「瘤

(aneurysm)」と称しているが,それ以下では瘤状拡張

(aneurysmal dilatation)と称する事も出来る14,15).

大動脈瘤は限局的な大動脈壁の拡張であり,その形状

が紡錘状であれば紡錘状大動脈瘤(fusiform type aortic

aneurysm,図 1),嚢状であれば嚢状大動脈瘤(saccular

type aortic aneurysm,図 2)と称される.また,瘤の発

生部位により,胸部大動脈では胸部大動脈瘤(thoracic

aortic aneurysm: TAA),胸部と腹部に連続する胸腹部大

動脈瘤(thoraco-abdominal aortic aneurysm),腹部では腹

部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm: AAA)と称して

いる.胸部大動脈瘤は嚢状のものが多く,胸腹部と腹部

大動脈瘤は紡錘状のものが多い.非拡張部の大動脈壁か

ら瘤部の壁へは滑らかな移行を示し,また病理組織学的

にはその壁に本来の大動脈壁の構造,特に中膜の弾性線

維が残っていることが多い(図 3a).そのため,本来の

大動脈壁が拡張したということを理解するのは多くの場

合容易である.しかし,瘤壁の破壊が進むと中膜が破壊

消失し,線維性構造物しか残らない部分が出現してくる

(図 3b).ただしこのような場合にも非拡張部からの移

行は滑らかであり,また詳しく瘤壁を観察することによ

り他の部位に中膜の弾性線維の一部を確認できることが

多い.このような点が次に述べる仮性大動脈瘤と異なる

点であり,明確に区別をするために真性大動脈瘤(true

aneurysm of the aorta)と称する場合もある.一方,仮性

大動脈瘤(pseudoaneurysm of the aorta)は大動脈壁が破

綻した(出血した)ために血管外にできた血腫

(hematoma)による瘤状構造物である(図 4).大動脈

壁からその線維性被膜へは突然の移行を示す.また,血

腫を被覆するものは大動脈壁の外の線維性構造物であ

り,その線維性被膜のどの部分を見ても中膜の弾性線維

は認められない.

大動脈瘤の発生には大動脈壁の脆弱化が大きく関与し

ており,その脆弱化は炎症(ベーチェット病16,17),高安

動脈炎18,19)など),先天性結合織異常(マルファン症候

群20,21)など),粥状硬化22,23)などによる壁の構造異常や

破壊によってもたらされる.腹部大動脈瘤の場合,通常,

内腔側には強い動脈硬化性変化があり,この場合,瘤の

発生に動脈硬化が強く関連していることは疑いようがな

い.しかし,閉塞性動脈硬化症との関連は乏しいこと24),

家族内発生があること25,26),糖尿病が危険因子でないと

いう報告や逆相関を示す報告もあること27,28)など動脈硬

化のみでは説明できない点もあり,他の要因,特に遺伝

的要因や高血圧の関与も考えられている15,29).分子レベ

ルでは interleukin などの炎症性 cytokine や,matrix

metalloproteinase(MMP)などの細胞外マトリックスの

分解に関与する酵素の関与が強く示唆されている15,29).

大脈解離 aortic dissection

解離性大動脈瘤 dissecting aneurysm of the aorta:瘤形成

をした大動脈解離

古典的大動脈解離 classic aortic dissection:内膜亀裂や

フラップを持つ解離.壁内血腫との対比で用いられる

真腔 true lumen:本来の動脈腔

偽腔 false lumen:壁内に新たに生じた腔(解離腔は不

可)

用 語33

大動脈瘤の定義22

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大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

フラップ flap:(内中膜)隔壁.剥離内膜とも言われ

るが,実際は「内膜と中膜の一部」によって構成され

る.

内膜亀裂(亀裂,裂孔,内膜裂口,裂口)tear:解離で

みられる,内膜・中膜の亀裂部位で,真腔と偽腔が交通

する部位.

入口(孔)部 entry:真腔から偽腔へ血流が入り込む

部位

再入口(孔)部 re-entry:偽腔から真腔へ血流が流れ

込む部位

(入口・再入口部を兼ねる用語として,「交通口(交通孔)」

も用いる)

偽腔開存型大動脈解離 ヨーロッパの分類の

communicating aortic dissection と同義.

偽腔閉塞型大動脈解離 ヨーロッパの分類の non-

communicating aortic dissection と同義.

血栓閉塞型大動脈解離  thrombosed type aortic

dissection:偽腔閉塞型大動脈解離と同義.

壁内血腫 intramural hematoma:病理学的には内膜亀裂

の無い解離.臨床的には偽腔閉塞型解離とほぼ同義的に

図 1 紡錘状大動脈瘤 図 2 嚢状大動脈瘤

図 3 真性大動脈瘤

中膜が消失し 線維組織のみが 残存する

内膜中膜

外膜

(a) (b)

滑らかな移行

図 4 仮性大動脈瘤

血腫

大動脈壁外の 線維組織から 構成される被膜

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

用いられる.

壁内出血 intramural hemorrhage:壁内血腫と同義.

潰瘍様突出像 ulcer-like projection(ULP):偽腔閉塞

型解離の動脈造影などの画像診断で見られる小突出所見

(protrusion).

破裂 rupture

再解離 re-dissection:元来の解離の部分とは別の部分

に新たに解離が発生したもの.

再開通 re-canalization:偽腔閉塞型解離,または偽腔開

存型解離が偽腔閉塞した場合で,血流が無く閉塞してい

た偽腔に再び血流が生じた状態を言う.

解離の進展 extension:解離が動脈のおもに長軸方向に

拡がること.いったん終了した解離がある時間をおいて

再び進展すれば再解離の範疇に入れてよい

解離(偽腔)の拡大 enlargement:偽腔がおもに短軸方

向に拡がること

大動脈瘤 aortic aneurysm

紡錘状大動脈瘤 fusiform type aortic aneurysm

嚢状大動脈瘤 saccular type aortic aneurysm

胸部大動脈瘤 thoracic aortic aneurysm:TAA

胸腹部大動脈瘤 thoraco-abdominal aortic aneurysm:

TAAA

腹部大動脈瘤 abdominal aortic aneurysm:AAA

炎症性腹部大動脈瘤 inflammatory abdominal aortic

aneurysm:IAAA

真性大動脈瘤 true aneurysm of the aorta:一般に言う大

動脈瘤と同義.仮性動脈瘤と明確に区別する時に用いる

仮性(偽性)大動脈瘤 pseudo(false)aneurysm of the

aorta

大動脈解離の臨床的病型は,3 つの視点から分類され

ている.すなわち,1)解離の範囲からみた分類,2)偽

腔の血流状態による分類,3)病期による分類である

(表 1).病態を把握し,治療方針を決定するためには,こ

れら 3つの要素を組み込んで病型を表現する必要がある.

解離の範囲からみた分類には,Stanford 分類と

DeBakey 分類がある.前者は入口部(内膜亀裂)の位置

に関わらず解離が上行大動脈に及んでいるか否かで A

型と B 型に分けている30).後者は解離の範囲と入口部の

位置によりⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型(a, b)と分類している31).

いずれの分類を使う場合でもどちらを使用したかを明記

したほうがよい.

偽腔の血流状態からみた分類として,偽腔開存型と偽

腔閉塞型がある10,32,33).偽腔閉塞型は画像診断上,偽腔

に血流が認められないもので早期血栓閉塞型とも称さ

れ,欧米で言う intramural hematoma(IMH)にほぼ相当

すると思われる34-37).IMH は dissecting aneurysm without

intimal rupture とも称され,発症機序として壁の栄養血

管(vasa vasorum)の破綻も推定されているが38),IMH

の中には偽腔開存型で発症し時間経過とともに血行動態

が変化し,偽腔とその入口部が閉塞したと考えられる症

例もあることから,解離として取り扱うべきという意見

分類と病態Ⅲ

大動脈解離11

表 1

1.解離範囲による分類

Stanford 分類

A 型:上行大動脈に解離があるもの

B 型:上行大動脈に解離がないもの

DeBakey 分類

Ⅰ型:上行大動脈に内膜亀裂があり弓部大動脈より末梢に解離が及ぶもの

Ⅱ型:上行大動脈に解離が限局するもの

Ⅲ型:下行大動脈に内膜亀裂があるもの

Ⅲ a 型:腹部大動脈に解離がおよばないもの

Ⅲ b 型:腹部大動脈に解離が及ぶもの

DeBakey 分類に際しては以下の亜型分類を追加できる

逆行性Ⅲ型解離:内膜亀裂が下行大動脈にあり逆行性に解離が弓部から近位に及ぶもの

弓部型:弓部に内膜亀裂があるもの

弓部限局型:解離が弓部に限局するもの

弓部広範型:解離が上行または下行大動脈に及ぶもの

腹部型:腹部に内膜亀裂があるもの

腹部限局型:腹部大動脈のみに解離があるもの

腹部広範型:解離が胸部大動脈に及ぶもの

2.偽腔の血流状態による分類

偽腔開存型:偽腔に血流があるもの. 部分的な血栓の存在はこの中に入れる

偽腔血栓閉塞型:偽腔が血栓で閉塞しているもの

3.病期による分類

急性期:発症 2 週間以内. この中で発症 48 時間以内を超急性期とする

亜急性期:発症後 3 週目(15 日目)から 2 ヶ月まで

慢性期:発症後 2 ヶ月を経過したもの

分 類1

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もある39).いずれにしても解離の病態解明には未だ不明

の点や曖昧な点も多くあるのが現状である40).

病期による分類では,発症 2週間以内を急性期,以後

2ヶ月までを亜急性期,2ヶ月以降を慢性期としている.

最近では,2 週間を過ぎれば慢性期として一括している

報告もある.さらに救急医療の立場からは,発症 48 時

間以内を超急性期と称する場合もある41-44).

大動脈壁の解離とそこへの血液流入を本態とする大動

脈解離は,発症直後から経時的な変化を起こすために,

動的な病態を呈する.また,広範囲の血管に病変が伸展

するため種々の病態を示す(図 5).血管の状態を,

1)拡張,2)破裂,3)狭窄または閉塞と分け,さらに

解離の生じている部位との組み合わせでとらえると,こ

の多様な病態を理解しやすい.

1)拡 張

①大動脈弁閉鎖不全

解離によって発生する大動脈弁閉鎖不全は上行大動脈

に病変が存在する場合に比較的よく見られる.発生頻度

は Stanford A 型の大動脈解離の 60~70 % にものぼるが,

弁に何らかの手術操作を加える必要が生じるのは約半数

の症例であると報告されている45).解離が大動脈弁輪部

に及んだ場合に弁交連部および弁輪が大動脈壁から剥れ

て内下方へ押しやられ,弁尖が左心室内に下垂した状態

となって逆流をきたす.特に無冠尖とその周囲に解離が

波及することが多く,同部位の弁尖は支持を失い下垂し

やすい.急激な解離発症に伴って生じる弁の逆流のため

に呼吸困難などの急性左心不全をきたすこともある.

②瘤形成

大動脈解離は慢性期になると,しばしば解離腔の外壁

が拡張し瘤を形成する.しかし,急性期にも稀に大動脈

径の拡大が急速に進行することがある.瘤が形成される

部位によって上行大動脈瘤,弓部大動脈瘤,下行大動脈

瘤,腹部大動脈瘤に伴う他臓器圧迫症状としての病態,

すなわち,上大静脈症候群,嗄声,嚥下障害などが稀で

はあるが発生することがある.また,瘤径の拡大により

次に述べる破裂の可能性が高くなることに留意する必要

がある.

2)破 裂

①心タンポナーデ

急性期における大動脈解離の死因として最も頻度が高

く重篤なものであり,剖検例の報告では死因の 70 % が

心膜腔への出血によるものであったとされている38).特

に心膜が覆っている上行大動脈に解離が波及した場合に

は,心タンポナーデを発症する可能性が常にある.この

点が,入口部の位置に関わらず解離が上行大動脈に及ん

でいるか否かで分類した Stanford 分類と関連すると考え

られる.心タンポナーデは解離した大動脈の心嚢内破裂

もしくは切迫破裂に伴う血性滲出液貯留によって生じる

が,その量と貯留速度によってこの病態発症までの時間

的経過は異なる.

②胸腔内や他の部位への出血

破裂による出血は胸部,腹部のいずれの大動脈でも起

こりうる.剖検例からの検索では,死因となるような大

量出血が見られた部位のうち最も頻度の高い部位は左胸

腔で,次に縦隔,後腹膜腔が多かったとされている46).

3)分枝動脈の狭窄・閉塞による末梢循環障害

解離により図 6 に示すような機序で大動脈分枝に狭

窄や閉塞が発生した場合には,その分枝から血液供給を

受けている臓器の循環障害が生じる.慢性例まで含めれ

ばこのための四肢虚血や臓器虚血は約 3割の症例に発生

すると報告されている47,48).血流障害をきたしやすい血

管として,総腸骨動脈,腕頭動脈,左総頚動脈,腎動脈,

左鎖骨下動脈,腹腔動脈,上腸間膜動脈,冠動脈が挙げ

られる.

病 態2

図 5 大動脈解離の病態

下肢虚血

脳虚血

縦隔血腫 上大静脈症候群

狭心症 心筋梗塞

心タンポナーデ

腹腔出血 腸管出血 麻痺性イレウス

嗄声・嚥下障害

上肢虚血

胸腔内出血

対麻痺

後腹膜血腫

腎不全

大動脈弁逆流

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①狭心症,心筋梗塞

冠動脈への解離の波及に関しては,剖検例の報告から

大動脈解離全体の 3~7 % とされている46,49).臨床上は

ショック例を除く冠動脈虚血は Stanford A 型の 3~9 %

であり49,50),胸痛,房室ブロック,呼吸困難などの虚血

性心疾患に見られる種々の臨床症状を呈す.解離は大動

脈基部では右側に沿って生じることが多いため,右冠動

脈が左冠動脈よりも冒されやすい.

②脳虚血

大動脈解離に伴って生じる脳神経症状は,意識障害と

局所的神経障害に分けることができるが,その症状と程

度は様々である.いずれも弓部分枝の異常によって起こ

るが,意識障害に関しては心筋虚血や大量出血による全

身の循環不全によっても生じることがある.脳虚血の合

併頻度は大動脈解離症例の 3~7 % である.脳梗塞は殆

どの場合,腕頭動脈や左総頚動脈の狭窄や閉塞により生

じるが,特に右側の動脈の閉塞によるものが多いとされ

ている.

③上肢虚血

腕頭動脈や鎖骨下動脈の狭窄や閉塞による上肢の脈拍

消失や虚血は 2~15 % の症例で見られる47,48).さらに,

臨床症状の有無に関わらず左右の上肢に血圧差(20

mmHg 以上)があるものまで含めると,約半数近くの

例にのぼるとされている49).左右では右上肢の方が冒さ

れやすい傾向がある.

④対麻痺

下肢対麻痺は急性大動脈解離の約 4 % の症例に発症

すると報告されている51,52).脊髄の上部は主に椎骨動脈

の分枝の血流によって栄養されており,この部が大動脈

解離によって障害されることはあまりない.一方,脊髄

下部への主な血流は大動脈からの直接分枝である肋間動

脈や腰動脈の分枝によって保持されている.そのうち特

に胸椎下部から腰椎上部において前脊髄動脈に結合する

分枝は比較的太く,Adamkiewicz 動脈と呼ばれる.下行

大動脈の解離によって肋間動脈や腰動脈の狭窄や真腔か

らの離断,あるいは偽腔の血栓閉塞により Adamkiewicz

動脈に血流障害をきたせば,脊髄上部と下部の頒水領域

である胸髄中部の虚血が生じる.脊髄横断症状をきたす

こともあるが,脊髄前方の傷害,すなわち,運動神経領

域が冒されやすく下肢の対麻痺をきたす.この麻痺の症

状も様々で不可逆的で重篤な場合もあれば一過性で消失

する場合もある.

⑤腸管虚血

腹腔動脈や上腸間膜動脈の狭窄や閉塞などにより消化

管の虚血をきたすことがある.その頻度は 2~7 % であ

るが38,47,48,50),その病態は把握しにくく,症状が手術後

に急激に出現する場合もある.Stanford A 型,B 型のい

ずれにも合併しうるが,B 型に発生率が高いという報告

もある50).

⑥腎不全

腎動脈の狭窄や閉塞による腎血流障害は急性解離の約

7 % に発症すると報告されており47),臨床的には乏尿や

血尿を呈す.また,腎動脈に有意狭窄が形成されると高

血圧を合併する可能性もある.左右差については左腎の

方が障害されやすいとする報告もあれば,左右差がない

とするものもあり一定していない.一方,腎動脈自体に

異常がなくても心筋梗塞や破裂による大量出血などの腎

前性因子により腎不全が生じることにも留意する必要が

ある.

⑦下肢虚血

腸骨動脈の狭窄,時に大動脈の狭窄や血栓閉塞による,

下肢の脈拍の消失や虚血は 7~18 % の症例に合併す

図 6 解離による分岐閉塞

分岐部の内膜離断損傷部の内膜フラップによる 血流減少と血栓形成.あるいは,損傷部治癒過程での組織の退縮

A

B

C

偽腔

偽腔

偽腔

偽腔拡大による真腔,または,分岐入口部の閉塞

大動脈解離による分岐入口部閉塞

分岐部

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大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

すなわち壁肥厚部位と内腔のあいだに交通を認

めない.

診断には CT や経食道心エコー図が用いられるが,亀

裂(内膜破綻)の存在を画像上診断することは困難であ

るので,実際には壁肥厚部位(血腫あるいは偽腔)と真

腔の間に交通を認めないことが重要である.従って,造

影 CT で壁肥厚部位(血腫あるいは偽腔)が造影されな

いことと経食道心エコー図で交通のないことを確認する

ことが診断上不可欠である.わずかでも血流があれば,

一般的な大動脈解離すなわち偽腔開存型として扱われる

べきである.特に下行大動脈や腹部大動脈に生じた内膜

破綻からの逆行解離で解離した偽腔が血栓化している場

合などは非常によく似た画像を呈するので注意が必要で

ある.また intramural hematoma における壁肥厚部位

(血腫あるいは偽腔)は大動脈にそって縦方向の広がり

を持つのが特徴である.

図 7に intramural hematoma(偽腔閉塞型あるいは血栓

閉塞型)と Classic aortic dissection(偽腔開存型)の違い

をまとめた.

Intramural hematoma は,壁肥厚部位(血腫あるいは偽

腔)が消失する症例も存在する一方で,経過中に壁肥厚

部位(血腫あるいは偽腔)と真腔の間に交通が生じ,そ

こから壁肥厚部位(血腫あるいは偽腔)が拡大する例も

あり,注意が必要である56-59).Intramural hematoma には,

従来の概念通りに真腔との交通がまったく存在しないも

のもある一方,ごく小さな交通が画像診断上確認できな

いだけのものも存在すると考えられる.現在の画像診断

能力では,小交通の有無を発症時に全て把握することは

困難であり,厳重な経過観察により初めて判明するもの

もある.

瘤(aneurysm)の分類は,1)瘤壁の形態,2)存在部位,

3)原因,4)瘤の形により分類されている(表 2)60).

1)瘤壁の形態

瘤壁の形態によって,①真性,②仮性,③解離性に分

類(図 8)される.

①真性(true aneurysm of the aorta)

大動脈の瘤壁が動脈壁成分(内膜・中膜・外膜の三層

構造)から成るもの.但し,瘤壁の一部で三層構造の全

る47,50).DeBakeyⅠ型のような広範囲解離に合併するこ

とが多く,他臓器の虚血も合併している場合が多い.虚

血によりまず末梢神経が障害されるため下肢の疼痛や冷

感があり,また循環障害としてのチアノーゼが見られる.

高度の虚血がある場合には,myonephropathic metabolic

syndrome を合併する危険性もある.

4)その他の病態

解離の部位に関わらず DIC を発症する場合がある.

DIC は破裂による大量出血や偽腔内で大量の血栓が形成

された場合に生じることが多いが,急性期だけでなく慢

性大動脈解離の症例でも,pre-DIC とも呼べる血液凝固

能異常の状態が遷延化している症例もある.

また,破裂の有無とは無関係に,胸水が貯留すること

は比較的多く,漿液性である場合もあれば後に血性にな

る場合もある.

急性大動脈解離発症後には,血管の炎症,凝固線溶系

の活性化から全身の炎症反応(SIRS)が引き起こされ

ることもある.その徴候の一つとして,発熱が 38 ℃を

超えるものが約 30 % と報告されている3).また,肺に

おける酸素化の低下が随伴する場合も見られる.

Intramural hematoma

壁内血腫:Intramural hematoma(壁内出血:intramural

hemorrhage とも称される)35,53,54)は大動脈解離の一亜型

として認識されており,本邦では偽腔閉塞型(血栓閉塞

型:thrombosed type あるいは早期血栓閉塞型ともいう)

と称されている.もともと病理学的には「内膜亀裂の無

い大動脈解離」という明瞭な概念として捉えることがで

きるが9),臨床的には内膜亀裂のない解離と内膜亀裂を

有するが偽腔に血流がない解離とを鑑別することは困難

なため,臨床的には「偽腔閉塞型大動脈解離」と定義し

ている.

本症の特徴は,①胸痛および背部痛を主訴に発症し,

②画像診断上,三日月型の壁肥厚を認め且つ壁肥厚部分

が造影 CT で造影されず55),③経食道心エコー図では同

部分に血流を認めないことである54).この病態を,大動

脈を栄養する血管の破裂による大動脈壁内の血腫すなわ

ち intramural hematoma としてとらえ,上記の命名とな

っているが10),現時点では,intramural hematoma の病因

については,明らかな確証はなく,推測に過ぎないこと

を明記したい.

Intramural hematoma の定義は以下のようになる.

1.三日月型の大動脈壁肥厚.

2.内膜破綻とそこからの血流の流入を認めない.

大動脈瘤(Aortic aneurysm)22

分 類1

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(状態)は,「血腫(hematoma)」と称される.

③解離性(dissecting aneurysm of the aorta)

大動脈壁が中膜のレベルで二層に剥離して,本来の大

動脈腔(真腔:true lumen)以外に,壁内に生じた新た

な腔=“偽腔:false lumen”を持つものを,「大動脈解

離:aortic dissection」と称している.その状態で径が拡

張して突出(嚢状拡張=限局型解離)や全周の拡張(紡

錘状拡張=広汎型解離)を来した場合,「解離性大動脈

瘤」と呼んでいる.多くは,新たに壁内に生じた偽腔が

拡張する.

2)瘤の存在部位

瘤がある部位により,胸部( t h o r a c i c),胸腹部

(thoraco-abdominal),腹部(abdominal)に分類される

(表 2).

胸部は,上行(ascending),弓部(arch),下行

(descending)に分かれる.胸腹部は主に瘤が何処に在る

かによって,Crawford の分類が用いられる(図 9).腹

てがみられない部分があってもよい.

②仮性(pseudo aneurysm of the aorta)

瘤の壁には動脈壁成分が無く(外膜の一部が含まれる

ことがあっても,中膜は見られない),本来の動脈腔外

にできた「新たな腔」を仮性瘤と呼ぶ.大動脈内腔とは

交通(瘤孔を介して)しており,血流がある状態である.

血流が無くなって,大動脈腔外に血液がたまった場合

表 2 大動脈瘤の分類

存在部位:胸部 thoracic

胸腹部 thoraco-abdominal

腹部 abdominal

瘤 の 形:嚢状 saccular type

紡錘状 fusiform type

壁の形態:真性 true

解離性 dissecting

仮性 pseudo

原  因:動脈硬化性 atherosclerotic

感染性 infected

外傷性 traumatic

炎症性 inflammatory

先天性 congenital

その他

図 8 瘤壁の性状からみた分類

真性 :true aneurysm解離性:dissecting aneurysm仮性 :pseudo aneurysm

図 7

Flap なし

Classic Aortic Dissection (偽腔開存型)

Intramural Hematoma (偽腔閉塞型)

Entry

Flap

偽腔

真腔

Entry なし

血腫(偽腔)

真腔

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部は腎動脈より上部(suprarenal),下部(infrarenal)に

分けられるが,多くは腎下部に生じる.

3)原 因

瘤ができた原因によって,動脈硬化性(atherosclerotic),

外傷性(traumatic),炎症性(inflammatory),感染性

(infected),先天性(congenital)などがある.現在は,

動脈硬化性大動脈瘤(atherosclerotic aneurysm of the aorta)

が最も多い.

4)瘤の形

瘤の形は,その形状から「紡錘状(fusiform type)」,

「嚢状(saccular type)」に分類する.紡錘状は大動脈全

周での拡張であり,嚢状は局所(偏側性に一部)が拡張

して嚢(ふくろ)状または球状をしているものとする

(球状を示すものも嚢状に含める).

大動脈瘤による症候を,1)解離発症や瘤破裂によっ

て生じる「疼痛」,2)瘤が周囲臓器へ及ぼす「圧迫症状」,

及び 3)分枝血管の循環障害による「臓器虚血症状」に

分けられる61)(表 3).

1)疼 痛

最も注意すべき症候であり,解離では急性期は疼痛が

主症状であり,殆どの例で発症時に,胸部・背部の激痛

を訴える.一方,真性瘤の殆どは無症候であり,胸部瘤

(64 % が無症候)では胸部 X 線写真(97 %)で,腹部

瘤(60 % が無症候)では腹部触診(66 %)で偶然に発

見される.

真性瘤でみられる臨床症状としては,胸部(47 例中

有症状 36 %)では嗄声が 21 %,腹部(102 例中有症状

19 %)では腹痛が 12 % 認められている.

注意すべき症状としては腹痛,腰痛で,瘤破裂や解離

の兆候のこともある.また急激に臨床症状が発現しショ

ックに陥る場合もあるが,数時間から数日に渡って持続

図 9  Crawford の分類

Ⅳ型 Ⅰ型 Ⅱ型 Ⅲ型

病 態2

表 3 大動脈瘤の臨床徴候

①疼痛      解離,破裂

②圧迫症状 胸部:嗄声,嚥下障害,顔面浮腫

腹部:腹部膨満,

③臓器虚血症状  弓部分枝(脳),脊髄動脈

腹部分枝(腸管など),腎動脈,

下肢動脈

灌流する臓器により症状は多様である

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厚生労働省の概算による統計65)では大動脈解離,非解

離性大動脈瘤ともにあきらかな増加を認めていない(表

4a).

数少ない地域調査が報告されている66)(表 4b).10 万

人あたりの年間発症人数はおよそ 3人前後と思われるが

報告が少なく不詳である.

剖検件数は,大動脈解離は増加の傾向が認められるが,

直接発症の件数の増加を意味するかどうかは不明である

(表 4c).

する頑固な腰腹部痛がみられる場合もある.中等度以下

の疼痛が持続する場合には,他の原因(胸部疾患や消化

器疾患など)との鑑別に苦慮することもある.この場合,

瘤の破裂を念頭に置き,外科医とも連絡をとりながら臨

床経過,身体所見及び X 線検査や超音波所見等の画像

診断を参考に原因の究明に努める.救急の現場では,常

に大動脈瘤・大動脈解離を念頭に置くことが必要であ

る.さらに,もし瘤や解離との関連を疑ったら,いたず

らに時間を浪費する事なく,超音波検査などの何らかの

画像診断で速やかに診断をつけ,緊急手術も考慮するこ

とが必要である.

なお,特殊型の‘inflammatory’abdominal aortic

aneurysm(IAAA)ではしばしば腹痛を訴える62).

また,解離が疼痛無く発症し,偶然に発見される頻度は

約 10 %(対象 450 例)との報告10)があり,解離慢性期

では真性瘤と同様に,症状は殆どない.

2)瘤周囲の圧迫症状

瘤の存在部位によって,発生する症状が異なる.前述

の様に,胸部では時に嗄声(反回神経麻痺),血痰

(肺・気管支圧迫)及び嚥下障害(食道圧迫)等がみら

れる.しかし,腹部では周囲臓器への影響は殆どなく,

無症状のことが多い.しかし,IAAA では瘤周囲の尿管

や消化管を巻き込んで通過障害を来す事があり,稀に腹

部瘤でも下大静脈(下肢腫脹など)や消化管(下血など)

との瘻孔形成などをみる.なお,大動脈瘤の拡大率に関

しては,胸部では年間 1~2 mm,腹部では年間 3~4

mm であり,形や元のサイズによってもその率は異なる

(サイズが大きい程,拡大率も高い)63,64).

3)分枝血管の阻血症状

「分枝血管が解離に巻き込まれた場合」と「動脈壁在

の血栓が末梢へ流れた場合」がある.関連した動脈分枝

の末梢領域の臓器によって起こる症状は異なるが,虚血

症状としては意識障害(脳・頚動脈),胸痛(冠動脈),

四肢疼痛(四肢動脈)及び腹痛(上腸間膜動脈)等が起

こりうる.

本邦における大動脈解離および大動脈瘤に関する全国

統計は未だない.その正確な発症頻度は不明である.以

下に数少ないデータベースからの統計を示す.

統計,疫学Ⅳ

年間発症頻度11

厚生労働省の統計1

表 4a

平成 8 年  総患者数   9千人 解離/15 千人 瘤

平成 11 年  総患者数  10千人 解離/21 千人 瘤

平成 14 年  総患者数   9千人 解離/16 千人 瘤

(傷病基本分類別)

地域における統計2

日本病理学会の報告である日本病理剖検輯報による剖検数3

表 4b 地域における急性大動脈解離の発症率調査

1997 大阪府北中部 600 万人 3.12

1998 三重県 160 万人 3.7

1999 阪神地区 1000 万人 2.67

1991~2000 大阪府高槻市 37 万人 2.62

1997~2005 岩手県首都圏 100 万人 5.2

年 対象地域 対象人口 発生数/10万人/年

文献 66)より改変

表 4c 日本病理剖検輯報による剖検数

大動脈解離:

1973~84 剖検数 152.2 例/年46)

1993~96.1 剖検数 315.5 例/年 総剖検数の1.07%男:女=59:4167)

1998~02 剖検数 388.8 例/年 総剖検数の1.47%男:女=61:3968)

非解離性大動脈瘤:

1998~02 剖検数 722.8 例/年 総剖検数の2.73%男:女=75:2568)

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1583

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

日本胸部外科学会の年次報告69-73)によると,大動脈解

離,非解離性大動脈瘤ともに増加の傾向が認められる

(表 5).

図 10 に示すように大動脈解離の発症のピークは男女

とも 70代68).図 11は非解離性大動脈瘤の発症のピーク

を示し,男性 70 代,女性 80 代である68).非解離性大動

脈瘤は極端に高齢にかたよっているのは動脈硬化との関

連によるものと思われる.

大動脈解離の発症は冬場に多く夏場に少ない傾向があ

る74-76).また,時間的には活動時間帯である日中が多く,

特に 6~12時に多いと報告されている.逆に深夜から早

朝は少ない74,75,77).曜日による有意差はないようであ

る74).

手術件数からの推定4

表 5 年間発症件数の推移

1998 2222 380 2383 695

1999 10000 2518 373 21000 2649 736

2000 2849 403 3069 718

2001 2966 405 3252 738

2002 9000 3319 383 16000 3717 727

急性大動脈解離 非解離性大動脈瘤

患者数 手術件数 剖検数/年 患者数 手術件数 剖検数/年

患者数は厚生労働省の傷病基本分類統計による報告による

手術件数は日本胸部外科学会の年次報告による

剖検数は日本病理学会発表の日本病理剖検輯報による

年齢による発症頻度の変化22

図 10 大動脈解離剖検件数の年齢別頻度(1998 ~ 2002 年度)

60~69

450

400

350

300

250

200

150

100

50

0

剖 検 数

0~9 10~19 20~29 30~39 40~49 50~59 90~ 80~8970~79

年   齢

男性

女性

季節,時間,曜日による発症頻度の変化33

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061584

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

村井らによる東京都監察医務院における報告76)は,発

病後短時間で死亡,あるいは予期しない死亡のケースの

解剖がほとんどであることより突然死の剖検報告と考え

てよい.

病院着前死亡は 61.4 % に及ぶ.発症から死亡まで 1

時間以内 7.3 %,1~6時間は 12.4 %,6~24時間は 11.7

% であり,病院着前死亡とあわせると,93 % が 24時間

以内に死亡したことになる.解離の発症時期としては,

急性期が 94.5 %.このうち解離型(DeBakey 分類)で

はⅡ型が最も多く 38.1 % をしめ,一般の解剖でⅠ型が

最も多いこととは異なる.直接死因は 98.5 % が大動脈

破裂である.上行大動脈破裂の結果として心タンポナー

デとなるものが 86.6 %,ついで左右胸腔への破裂は 8.1

% であった.わずか 1.5 % が破裂以外を死因としており,

それは解離の冠動脈への進展による心筋虚血であると推

定された.一般には右冠動脈が関与することが多いとさ

れているが,突然死例は左冠動脈に解離が及んだケース

が多かった.

大動脈疾患を急性疾患または慢性疾患としてとらえ,

診断や治療を進めることは実際の診療の実態に合うと考

えられる.特に急性に発症する大動脈解離や拡大した真

性瘤の切迫破裂は生命の危機がせまっており,迅速な診

断と適切な治療がその予後を規定する.従ってこの急性

期の病態を急性大動脈症候群1)という疾患群と定義し診

断を進めていくことにする.

大動脈解離は非侵襲的な画像診断法や外科的治療法が

進歩した現在においても,いまだに急性期の死亡率は高

くその予後は不良な疾患である.発症後の死亡率は 1~

2 %/時間と言われており78),発症から治療開始までの時

間をいかに短縮できるかがポイントとなる.超急性期の

救命率を上げるためには迅速かつ正しい診断と各分野の

チームワークが最も重要となる.

突然死例にみる大動脈解離44診 断Ⅴ

総 論11

図 11 非解離性大動脈瘤剖検件数の年齢別頻度(1998 ~ 2002 年度)

60~69

1400

1200

1000

800

600

400

200

0

剖 検 数

0~9 10~19 20~29 30~39 40~49 50~59 90~ 80~8970~79

年   齢

男性

女性

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1585

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

1)急性大動脈解離

①はじめに

急性大動脈解離を診断するには,まず疑いを持つこと

が何よりも重要である.発症から診断までの時間につい

て検討されているが,疑いを持った例の方が,そうでな

い例に比べ診断までの時間が有意に短いことは明らかで

ある79).また初期診断が他の疾患と誤認されていること

はよくあることで,後に大動脈解離と診断された全症例

の約三分の一では,初めの診断が急性冠症候群や急性心

膜炎,肺梗塞,胆のう炎などと診断されていたという報

告もある78).急性冠症候群に比し大動脈解離の診断が難

しい点は,a.臨床症状が多岐にわたること,b.心電図

変化が非特異的,c.血清学的な特異的マーカーが確立

されていない,d.解離の存在を確認するための検査を

行う前で診断プロセスが終わってしまう,などの要因が

あげられる.

解離の典型的な特徴は,大動脈が裂ける際の突然の急

激な胸背部痛である.この痛みは背中から腰部へと移動

することが多い.このような典型的な症状の場合は診断

を進めやすい.約 70~80 % の症例でこの胸背部痛は認

められるが,症状のない例(painless dissection)も存在

する52).その他の臨床症状としては,解離に関連した分

枝の循環障害に基づく.急性解離の 9 %~20 % では典

型的な痛みや神経学的異常がなくても失神を起すと言わ

れている78,80).心タンポナーデの他,激しい痛みや脳血

管の閉塞,大動脈の baroreceptor 反射にても失神は起こ

りうる.

胸痛の後に心不全症状が出現することがあり,それは

急性に生じた大動脈弁逆流によって生じる.急性解離

(Stanford A)では約 44 % に大動脈弁逆流雑音を聴取す

ると報告されている.急性心筋梗塞は約 5 %,脳血管障

害は 5~15 % の頻度で合併する78).脳血管障害や四肢の

虚血は解離が血管の分枝に及んだため,または偽腔の拡

大により真腔が閉塞することにより生じる.急性解離の

約 25 % には末梢血管の循環障害が生じると言われてい

る47,81).対麻痺は肋間動脈が多数対で障害されると発生

する.身体所見上の脈拍欠損や血圧の左右差は重要な手

がかりとなるが,実際はその頻度はそれほど高くなく

20 % 以下と報告されている82).これらの所見があれば

大動脈解離を疑わせるが,ないからと言って否定するこ

とはできない.

明らかな結合織異常のない大動脈解離の多くの例で

は,慢性的な高血圧症の既往がある.繰り返す腹痛,

CRP や LDH の上昇は腹腔動脈や腸間膜動脈の障害を意

味する.両側腎動脈が障害されると尿量減少,無尿とな

る.外傷や弁置換後,医原性の場合は通常明らかである

が,大動脈弁置換術後の解離では頻度は少なく見過ごさ

れることがある.D-dimer の高値は,急性解離の際に上

昇しており,特異度 54 %,感度 100 % と報告されてお

り,疑わしい例における採血項目として重要である83).

②診断の進め方(図 12)

全くの初診の例か,または以前のレントゲンや心電図,

血圧値などの情報のある例かでも診断の進め方が異な

る.まず始めに,年齢,体型(マルファン体型?),血

圧値(左右差や上下肢差は?),痛みの程度が冷汗を伴

うほど強かったかどうか,痛みが移動したかどうか,四

肢の脈が触知可能かどうか,聴診では心雑音やラ音はな

いか,呼吸音はどうかなど,ここまで病歴や身体所見に

て振り分けを行う.40 歳以下の若年の場合は,何らか

の大動脈壁に脆弱性を有することが多く,体型的にマル

ファンがないか注意する.IRAD による若年者大動脈解

離の特徴としては,約半数がマルファンであり84),また

大動脈二尖弁の例,大動脈の手術既往がある例で,高血

圧の既往は関係がないとされている.

次に心電図と胸部レントゲン写真,経胸壁心エコー検

査を行う.急性大動脈解離の際の心電図所見としては,

正常の割合が約 31.3 %78)と言われており,何らかの非

特異的な異常所見を呈することが多い.急性心筋梗塞を

合併した場合の鑑別は困難となる.心電図上急性冠症候

群が疑われた場合は採血と同時に経胸壁心エコーにて壁

運動異常,心嚢液,大動脈弁逆流の有無を観察し,また

上行大動脈の径や剥離内膜の有無を,さらに頚動脈や腹

部大動脈に剥離内膜がないかを確認する.ここまでで緊

急カテの必要な急性冠症候群か,大動脈解離かまたはそ

のどちらでもない疾患が疑われるかの大まかな鑑別を行

うことができる.我が国ではスクリーニングとしてのハ

ンディな経胸壁心エコー検査がベッドサイドで施行され

る頻度は高く,初期診断ツールとして非常に有用であ

る.

CT 検査は検査室への移動が必要であり,血行動態が

安定していることを確認し行うべき検査である.血圧値

が高ければ直ちに降圧薬の投与を行いながら,また痛み

に対しては鎮痛薬を投与し検査室へ移送する.造影剤を

使用するかどうか迷うところだが,造影 CT の情報量は

多く,可能な限りは造影 CT を施行する.以前より腎機

能障害があることが既知の例や全くの無尿状態の例では

急性大動脈症候群1

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061586

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

単純 CT を施行するリスクとメリットを考慮し判断す

る.本人からのインフォームド・コンセント(informed

consent: IC)が取れないこともあり,家族の代理にて IC

をとるようにする.

CT にて解離の存在が診断されたとして,大動脈解離

の型診断(Stanford A or B),瘤径,血管外の血腫の有無,

胸水や心嚢液について評価を行う.次のステップとして,

緊急の外科的治療の適応があるかどうかの判断をする.

適応と術式の選択については,別項(Ⅵ 1)を参照され

たい.

一方,Stanford B 型と診断された場合は,瘤径が大き

くない場合は原則的に保存的管理を行う.B 型で緊急手

術の対象となるのは,瘤径が 5 cm を越える例で切迫破

裂の危険性が高いと判断される例である.Stanford B 型

において瘤径の拡大がないにも関わらず胸水貯留を認め

る例があるが,この所見を切迫破裂と判断するかどうか

は難しいところであるが,経過をみると自然に吸収され

る例も多く,検査を短期間で再検しつつ,緊急手術も念

頭におきながら厳重な経過観察とする.経食道心エコー

検査の位置づけとしては,ベッドサイドで行なうことが

可能で,十分な鎮静下に施行すれば多くの情報を得るこ

とができる有用な検査法である.検査を安全に施行でき

る専門医のいる施設では行うべき検査法である.特に腎

機能障害があり造影 CT が施行できない例や,手術治療

の適応が問題となる例などでは経食道心エコー法により

重要な情報を得ることができる.

心臓血管外科医がいない施設では,どういう基準をも

って外科的治療の可能な施設に送るべきかを判断する必

要がある.基本的には Stanford A 型,大動脈径の拡大し

た Stanford B 型,心タンポナーデ,急性大動脈弁閉鎖不

全症,主要分枝の循環障害を来たした場合などでは緊急

手術になる可能性が高い85)ため,可能であれば外科治療

の可能な施設に送るべきである.

救急医療施設においては,a.CT スキャン検査を施行

できる,b.専門の放射線診断医が対応可能,c.経胸壁

心エコー検査を施行し診断できる医師がいる,d.経食

道心エコー検査を施行できる医師がいるなどの諸条件が

それぞれ異なる.しかも 24 時間何時でも対応可能かど

図 12

病歴

激しい胸背部痛その他の症状

四肢の血圧,大動脈弁 閉鎖不全の雑音,奇脈, 心不全徴候, WBC, CRP, Hb, D-dimer

ACS の所見は?心嚢液貯留?大動脈弁逆流の有無?剥離内膜の有無?

大動脈解離 s/o

身体所見・採血

心電図, X-P ,エコー

yes suspect

followStanford BStanford A

保存的治療 緊急手術

no

follow

CT スキャン,(経食道心エコー)

急性解離疑いあり

急性解離

救急外来

集中  治療室

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1587

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

うかも大きく影響してくる.これらの要因により診断が

確定するまでの時間が規定される.各施設はこれらの諸

条件をよく認識し,診断に迷う場合は専門医へのコンサ

ルトなどの手順を決めておく必要がある.

急性大動脈解離は,急性冠症候群に比しその発生頻度

は低いが,迅速かつ正しい診断ができなければ,その死

亡率は非常に高い.IRAD のような多施設研究におい

て78),三次救急病院へ搬送されてくる割合が約三分の二

ということは,多くの例の初期診断はもよりの救急病院

においてなされていることを示しており,救急診療科,

一般内科医,脳神経専門医,消化器専門医,循環器専門

医など各自が疑いを持って診断にあたることがなにより

重要である.

2)大動脈瘤破裂・切迫破裂

大動脈瘤が破裂すれば,ほとんどの例は病院にたどり

着く前に死亡する.救急室へ収容できたとしても診断が

ついてから緊急手術まで『分』のオーダーが生死を分け

ると言ってよい.いまだに大動脈瘤の切迫破裂は急性期

死亡率の非常に高い重篤な病態である.予め大動脈瘤の

存在がわかっている場合と,わからない場合では診断が

つくまでが多少異なる(図 13,図 14).胸部大動脈瘤

の切迫破裂では激しい胸痛やショックで来院し,レント

ゲン写真による縦隔拡大,血胸などで切迫破裂が強く疑

われる.瘤壁が周辺臓器と癒着している場合は,食道や

肺(左が多い)への出血,すなわち吐血や喀血を来たす

こともある.心膜腔への破裂では心タンポナーデを来た

す.血行動態は非常に不安定であり,CT 検査室に運ぶ

こともリスクは高いが,緊急手術の可能性を考慮するな

らば CT の情報は必須である.

腹部大動脈瘤破裂もその死亡率は 90 % と高く,手術

室にたどり着いたとしても,50~70 % の例では死亡す

ると言われている86-88).腹部大動脈瘤の切迫破裂は,激

しい腹痛や腰部痛を自覚し前ショック状態で来院する.

80 % 以上は後腹膜腔へ破裂するため,後腹膜内血腫に

より一時的に止血されるが,腹腔内への破裂では大量出

血のためショック死する.診断法としては腹部のエコー

にて拡大した大動脈瘤や血管周囲の血腫を確認する89,90).

この段階でショック状態であれば,直ちに手術室へ搬送

し緊急手術を行う.血行動態が安定している場合は CT

検査を行う.CT スキャンは血管周囲の状況やエコーで

は見えにくい部位まで全体を把握することができる.

CT スキャンによる大動脈瘤破裂または切迫破裂の診断

の感度は 50~94 %,特異度は 77~100 % である91).

MRI や大動脈造影検査は状況からみて切迫破裂の際に

は原則として適応とならない.採血データでは,著明な

貧血やショックに伴うアシドーシスが緊急時に認められ

ることがある.特にヘマトクリットの急激な低下は動脈

瘤破裂を強く示唆する.また時間が経過すると,多臓器

灌流不全による多臓器障害の所見などが認められること

がある.救急室での補液量,補液速度は,収縮期血圧が

90 mmHg を維持する程度とする.過度の昇圧は破裂の

危険性が増大する.

1)慢性大動脈解離

慢性解離の診断に関しては,多くの場合症状を有する

急性期を経ているため,あらかじめついていることがほ

とんどである.まれに無痛または非典型的症状であった

ため,発症時期が不明の例がある.胸部レントゲン写真

による大動脈の拡大所見から CT スキャン検査を行い大

動脈解離と診断される.慢性大動脈解離であっても,瘤

径の増大とともに,周辺臓器への圧排により症状が出現

することがある.

大動脈解離の急性期に内科的管理を行った例か,また

は外科的治療後に残存解離のある例かにより多少みるべ

きポイントが異なる.慢性大動脈解離においては,CT

スキャンにて解離の範囲,瘤径,真腔と偽腔の関係,偽

腔内の血流の有無,ulcer-like projection(ULP)の有無,

主要分枝の状態などを評価する.Stanford A 型に対する

術後の慢性期下行大動脈の瘤化に関する危険因子として

は,偽腔内に血流が残っている場合,大動脈径の大きさ

があげられている92).

急性期から半年目を目安に CT スキャンを行い大動脈

のリモデリングの状態により手術適応の有無を定期的に

診断していく.腎機能低下例では造影せずに評価する.

急性期に比し大動脈径の拡大がない場合は 1年後の検査

とする.とくにマルファン症候群のような大動脈壁の脆

弱性がある例では,非マルファン症候群より径増大スピ

ードが速いため,より注意深い評価が必要である93).

Stanford A 型の大動脈解離に対し,大動脈弁形成術を

施行した例では大動脈弁逆流の程度を心エコー検査にて

定期的に評価する.人工弁付きグラフト置換(Bentall

type の手術)術を施行した例では,人工弁機能,心機能

の評価に加え,冠動脈再建術を施行しているため,定期

的な心電図検査も必要である.Stanford B 型では急性期

より内科的管理を行うことが多いが,大動脈径の拡大し

た例では,慢性期に手術が必要になることがあり,CT

検査は退院後半年目に行い急性期と比較する.瘤径の拡

慢性大動脈解離,真性大動脈瘤2

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061588

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

図 13

急激な発症の胸・背部痛(+ショック)

全身状態および 多臓器合併症の評価

緊急手術 ステントグラフト?

胸部大動脈瘤破裂または 急性大動脈解離 疑い

指摘されていない

急性冠症候群などの鑑別

指摘されている

急性症候性大動脈瘤

CT スキャン

破裂 非破裂

手術可能 手術困難

保存的治療

もともと胸部大動脈瘤を…

●心電図● X-P●エコー●採血 など

図 14

急激な発症の腹痛・腰痛

腹痛,腰痛の 原因精査

指摘されていない 指摘されている

急性症候性大動脈瘤

採血・腹部エコー

血行動態?

ショック バイタル安定

CT スキャン

破裂 非破裂

拡手術困難

保存的治療 緊急手術 緊急手術

治療

もともと腹部大動脈瘤を…

●圧痛のある動脈瘤の触知 ●腹部エコーにて動脈瘤(+)

他に原因あり

他に原因なし

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1589

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

大がない場合は 1 年に 1 回のフォローとする.MRI,

MRA も定期的に施行し大動脈解離の全体像を把握す

る.経食道心エコー検査は半侵襲的ではあるが,冠動脈

再建部やエントリー,リエントリーなどの血流情報,さ

らにステントグラフト治療後のエンドリークの評価に向

いている.大動脈造影検査は手術を前提として行う.

2)真性大動脈瘤

①胸部大動脈瘤

真性大動脈瘤の多くは無症候性であり,偶然,検診や

他の疾患の精査中などに発見される.自覚症状としては

相当大きくなった場合,胸部大動脈瘤では嗄声,飲み込

みにくいと言った症状,漠然とした背部痛などがみられ

る.胸部 CT をまず施行する(図 15).その結果の大動

脈径の大きさにより,5 cm 未満であれば半年後に CT を

再検する.半年間で拡大がなければ次からは 1年に一回

の頻度で径のチェックを行う.また初回の CT にて 5 cm

以上であった場合は,手術リスクを考慮しながら手術適

応を検討する.経過観察となった症例では半年後の CT

再検を行い,大動脈径の増大スピードに応じてその後の

検査間隔を考慮する.瘤径増大スピードは,胸部大動脈

瘤で通常 0.5 cm/年94,95)未満であるが,小径では遅く瘤

径の拡大とともに速くなるため,検査間隔は瘤のサイズ

により判断する.1年で 0.5 cm 以上径が増大する場合は

拡大スピードが速いと判断し,破裂の危険性が高いため,

全体の径よりも優先し手術治療の方針とする.嚢状の大

動脈瘤では,径が大きくなくても破裂の危険性が高いの

で,形態にも留意する必要がある.

②腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤では,腹満感,便秘,非特異的な腰痛な

どの症状がみられる.他覚所見としては腹部の拍動性腫

瘤で気づかれることもある.初回診断法として腹部の超

音波検査が最も簡便かつ非侵襲的に評価することができ

る検査法である(図 16).MASS87)によれば,腹部大動

脈瘤は通常女性に比べて男性においてその頻度が高い.

男性だけのスクリーニング検査において,径 3 cm 以上

の腹部大動脈瘤の頻度は 4.9 % であったと言う報告があ

る.一方で女性の場合は,年齢を 65歳以上に限っても,

その頻度は 1.6 % でしかない.スクリーニングを行うこ

とで,瘤関連死亡についてはコントロールに比し 42 %

のリスクの低減が可能となった.リスクファクターのあ

図 15

胸部大動脈瘤の診断(慢性期)

胸部 X-P大動脈陰影の拡大

胸部 CT にて他の胸部疾患 精査中に偶然発見

胸部 CT スキャン

5 cm 未満

嗄声・嚥下困難など

心臓エコーにて他の 心疾患検査中に発見

5~6 cm

拡大なし

1 年後CT 再検(*)

0.5 cm/年未満の拡大

それ以外 半年後に CT 再検

マルファン症候群 先天性大動脈二尖弁

半年後CT 再検(*)

0.5 cm/年以上の拡大

6 cm 以上 嚢状瘤・仮性瘤

全身状態評価

手術困難 手術可能

降圧治療注意深く経過観察

待期的手術

最大短径(外径)

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

る高齢の男性,冠動脈疾患を有する例などは積極的なス

クリーニングを施行する.腹部大動脈瘤は診断時の瘤径

により,年間破裂率は 4 cm 未満で 0.3 %,4.0~4.9 cm

で 1.5 %,5.0~5.9 cm で 6.5 %,6.0 cm 以上では急激に

リスクが増大する.腹部エコー検査は内部の壁在血栓の

状態,潰瘍,可動性プラークなどの観察も可能である.

CT スキャンも必須の検査法である.3DCT では立体的

な動脈瘤の全体像を把握することができ,術式のプラン

ニングに非常に有用である.腹部大動脈瘤の増大スピー

ドは約 0.3~0.5 cm/年と言われているが,始めは遅く,

瘤径の拡大とともに速くなるため97),観察期間は瘤のサ

イズにより判断する.胸部大動脈瘤と同様に初回 CT に

おける瘤径のサイズによって 5.0 cm を越えていれば,

手術治療について検討する.4.0 cm 未満の大きさであれ

ば,まず半年後に CT の再検を行い,増大スピードを評

価する.4.0~5.0 cm の場合は年齢,体重,合併症など

を考慮し,早めの手術治療を選ぶか,または半年後の

CT 再検とする.最近では 80 歳以上の高齢者において

も腹部大動脈瘤がみつかることがあり,耐術性について

検討の上治療法を選択する.腹部大動脈瘤では冠状動脈

病変を有する例が多く,術前に心筋シンチグラムにて虚

血の評価を行い,有意狭窄が疑われる場合は冠状動脈造

影検査を行う.施設によっては,スクリーニングとして

冠状動脈造影検査を全例に行うところもある.

大動脈瘤・解離を評価するには,胸部では立位胸部正

面写真(PA 像),腹部では仰臥位腹部正面写真(AP 像)

が基本となる.

1)大動脈瘤

胸部大動脈瘤は,しばしば無症状で検診等の胸部単純

X 線写真で発見されることがある.上行大動脈の動脈瘤

図 16

(*);腹部エコー

腹部大動脈瘤の診断(慢性期)

リスクファクター男性,加齢,喫煙,高血圧

スクリーニング腹部触診(感度 68 %,特異度 75 %)腹部エコー(感度 98 %,特異度 100 %)

腹部の拍動性腫瘤

腹部 CT スキャン

4 cm 未満

半年後に CT 再検(*)

腹部エコーまたは CT にて他の疾患の精査中に偶然発見

4 ~ 5 cm

拡大なし

1 年後CT 再検(*)

0.5 cm/年未満の拡大

半年後CT 再検(*)

0.5 cm/年以上の拡大

5 cm 以上

早期手術考慮

手術ハイリスク例

6 cm まで半年~ 1 年に 一度の CT フォロー

全身状態評価 6 cm 以上

手術困難 手術可能

降圧治療注意深く経過観察

待期的手術

最大短径(外径)

X 線診断:単純 X 線写真,CT,血管造影22

単純 X 線写真1

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大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

の多くは右前方に突出する傾向があり,正面像で上行大

動脈の輪郭に連続して右方に突出する陰影として認めら

れる.弓部に発生した瘤は,正面像で左第 1弓の部分に

腫瘤状の陰影を呈することが多く診断は容易であるが,

時に肺門の方へ向い下方へ突出することがあるので注意

を要する.下行大動脈では,大動脈の輪郭に連続する紡

錘形ないしは円形の陰影として認められる.腹部大動脈

瘤における単純エックス線写真の意義は高くないが,時

に動脈瘤壁の石灰化が認識でき,瘤の存在を指摘できる

ことがある.

2)大動脈解離

急性大動脈解離においては,胸部単純 X 線写真上で

縦隔陰影の拡大が見られるが,この所見は非特異的であ

り,また仰臥位前後方向で撮影された写真では正常でも

縦隔の幅が拡大して見えることがあるので,この所見の

意義については議論の分れるところである.大動脈壁の

内膜石灰化の内側偏位は,解離を示唆する所見であり,

特に発症前の写真と比較して変化があればより信頼度は

高い.大動脈壁外縁と内膜石灰化との距離は正常では 2

~3 mm までであり,この距離が 6 mm 以上あれば解離

の存在を疑わせる98).解離があるにもかかわらず,単純

写真上で異常所見を呈さない症例も約 20 % あると言わ

れており99),胸部単純写真で縦隔拡大などの所見が認め

られなくても,臨床症状からその存在が疑われる場合は,

積極的に次の画像検査を進めて行く必要がある.単純写

真は,胸水や心不全などの大動脈解離に合併する二次的

所見を評価するに有用である100).

1)検査の方法

大動脈瘤や大動脈解離の CT では,単純 CT,造影早

期相の撮像を必須とし,症例に応じて造影後期相を追加

する.単純 CT では,壁の石灰化の程度,内側偏位の有

無に加えて,偽腔閉塞型解離における壁内血腫の認識,

大動脈瘤の切迫破裂を疑わせる壁在血栓内の高濃度域101)

などの評価に有用である.

造影 CT では,ヘリカル CT や MDCT(multidetector-

row CT,マルチスライス CT とも呼称する)を用い,肘

静脈から非イオン性造影剤(300 mgI/ml)を自動注入器

を用いて 3 ml/秒前後の注入速度で注入しながら全大動

脈の良好な造影早期相の撮像を行うことを原則とする.

造影剤の総量は 100ml 以内で十分であり,撮像時間に

よって加減する.MDCT は近年急速に発達し普及して

いるが,1 mm 以下の薄いスライス厚で高速かつ広範囲

の撮像が可能であり,大動脈瘤,解離の診断に有力な検

査法となっている.CT の横断像に加えて,ヘリカル

CT や MDCT で得られたボリュームデータから VR

(volume rendering),MPR(multi-planar reconstruction)

などの画像を再構成することにより,三次元的な情報が

得られ,より精密な診断が可能となる.

2)大動脈瘤の CT

CT では,瘤の存在診断のほか,大きさと進展範囲,

瘤壁の石灰化や瘤壁の状況(炎症性大動脈瘤など),壁

在血栓の量やその状態,瘤と周辺臓器との関係さらに瘤

と主要大動脈分枝との位置関係などを知ることができ

る.瘤径は手術適応を決める重要な因子であり,一般的

に胸部大動脈瘤で径 6 cm,腹部大動脈瘤で径 5 cm が手

術適応とされるが102),計測には正確さと客観性が要求さ

れる.CT は横断像であるため,大動脈が蛇行している

場合や大動脈弓部などスライス面に対して大動脈が斜走

する場合には瘤径を過大評価してしまうことがあるの

で,評価の際には“最大短径”を用いることを原則とす

る95).これは,瘤を含む数スライスで瘤の短径を計り,

そのうち最も大きなものを最大短径とするものであり,

客観性に優れる.また,弓部あるいは遠位弓部の動脈瘤

では,任意方向の MPR 画像がより正確な瘤径を反映す

ることがある.

主要分枝との関係では,胸部大動脈瘤においては,弓

部 3分枝との距離を含めた位置関係,腹部大動脈瘤では

腎動脈および腸骨動脈との関係の把握が重要である.こ

れらの評価には,造影早期相の CT データから再構成し

た VR や MPR などの三次元画像が有用であり,これら

の情報を含めて,術前に必要とされる情報のほとんどが

CT で評価可能である103-106).

腹部大動脈瘤の特殊な病態に炎症性腹部大動脈瘤があ

り,腹部大動脈瘤の 3~10 % に生じる62).CT は特徴的

な所見を示し,単純 CT で瘤の前方から前側方にかけて

瘤周囲に厚い軟部陰影を認め,造影 CT の後期相で同部

が濃染する107).約 1/3 の症例に水腎症や腸管との癒着,

瘻形成などの合併症を生じる.

3)大動脈瘤破裂の CT

大動脈瘤の破裂が疑われる場合,患者の状態から多少

の時間的余裕がある場合は CT が有用であり,瘤の存在,

破裂を確診できるばかりでなく,血腫の広がりや周囲臓

器との関係などが明らかになる.胸部大動脈瘤破裂では,

血腫は縦隔内あるいは胸腔内へ,腹部大動脈瘤では後腹

CT2

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

膜腔へ広がる.造影 CT の意義に関しては議論のあると

ころであり,瘤の破裂部位が推定できることもあるが,

緊急手術に際しては,必ずしも必要な情報ではない.

4)大動脈解離の CT

CT は解離の診断に関して信頼度の高い非侵襲的検査

法であり,客観的に全大動脈を評価できること,さらに

緊急に対応して短時間で検査可能なことから,大動脈解

離の診断に必要不可欠な検査法と言える.CT では,解

離の存在診断,解離形態および進展範囲,エントリー/

リエントリーの同定,さらに破裂や臓器虚血などの合併

症の有無を診断することが重要である.検査では,単純

CT,造影 CT 早期相および後期相を撮ることを基本と

する.

①単純 CT

単純 CT では,内膜の石灰化の偏位が重要な診断のポ

イントとなる.また偽腔閉塞型解離の急性期には,凝血

塊あるいは血腫によって満たされた偽腔が,大動脈壁に

沿って長軸方向に広範囲に存在する三日月状の高濃度域

として認められる55).

②造影 CT

造影 CT 早期相では,造影剤のファーストパスの状態

で全大動脈をスキャンする.偽腔開存型では二腔構造を,

偽腔閉塞型では造影されない偽腔を証明することにより

診断が確定する.偽腔開存型解離の造影 CT における真

腔と偽腔の判別は,次の一般的な原則に留意するとよい.

1)通常,内腔の拡大した方の腔が偽腔であり,真腔は

一般に狭小化している.2)壁の石灰化を有する方の腔

が真腔である(例外として,慢性解離例で偽腔壁に石灰

化を来すことがある).3)壁在血栓を有する腔が偽腔で

ある(偽腔内は血流が遅いため血栓が形成されやすくな

る).4)dynamic study では先に造影される腔が真腔で

あり,偽腔は遅れて造影される.5)aortic cobweb の所

見(大動脈中膜が解離するときに不完全にはがれた中膜

の一部が索状の構造として偽腔内に認識される)が認め

られれば偽腔である108).偽腔開存型解離の中には偽腔の

血流が非常に遅い場合があり,造影早期相で偽腔が造影

されず後期相で造影剤の流入を認める症例があるので,

造影後期相まで撮像する必要がある.

エントリーは,剥離内膜の断裂像として認識される.

上行大動脈では,剥離内膜が撮像面と垂直に走行するた

めエントリーをとらえやすく,電子ビーム CT で 93 %

の症例で認識可能であったとの報告があるが109),大動脈

弓部に存在するものは,撮像面が剥離内膜と平行になる

ため認識しにくい.MDCT では,1 mm 以下の薄いスラ

イス厚で撮像可能なことから,検出率の向上が期待され

る.また,急性解離で上行大動脈内の剥離内膜の動きが

激しい場合,MDCT で剥離内膜が二重に見えてエント

リーの認識が困難なことがあるが,このような場合は心

電図同期下での撮像が有効である.

偽腔閉塞型解離において閉塞した解離腔内への局所的

な内腔の突出部として認識される ulcer-like projection

(ULP)は,大動脈のいずれの部位にも生じ,複数存在

することや発症時にはなかったものが経過観察中に生じ

ることもある.経時的な拡大を認め,最終的に大動脈瘤

を呈するものや,これを起点として偽腔開存型へ変化す

るものもあり,特に上行大動脈ならびに左鎖骨下動脈分

岐直後や横隔膜近傍の下行大動脈に認めた場合は注意深

い経過観察が必要である44).

③合併症の診断

大動脈解離の合併症には,破裂,心タンポナーデ,臓

器や四肢の虚血など重篤なものが多い.CT では,心周

囲の液体貯留の有無や,分枝動脈と解離腔との関係や分

枝動脈への解離進展の有無を評価することも大切であ

る.分枝に虚血が生じる機序には分枝自体へ解離が進展

して狭窄,閉塞を来す場合(静的閉塞:static obstruction)

と,偽腔の圧が高く真腔を圧排して分枝の虚血を来す場

合(動的閉塞:dynamic obstruction)とがある110).

最近では MDCT の普及によって,全大動脈を一度の呼

吸停止下に十数秒で撮像することが可能となってきてい

るが,施設によって装置の性能に差があることから,そ

れぞれの施設での装置の性能を十分に把握して,CT 検

査を施行することが重要である.

CT や MRI などの非侵襲的診断法の発達で,大動脈瘤

や大動脈解離の診断に十分な情報が得られるようにな

り,DSA を含めた血管造影の診断的役割は少なくなっ

てきている.しかしながら,これらの非侵襲的検査で十

分な情報が得られない場合には,依然重要な役割を果た

している.大動脈解離の急性期では CT で臨床的に必要

な情報の多くが得られ,また血管造影では,血管へのア

クセスの問題,造影時の血管内圧の上昇による解離の進

展の可能性,造影剤の量が増えることによる腎機能への

負荷などもあり,積極的な適応とはならない.しかし,

冠動脈と解離の関係や,分枝虚血の例においては,それ

らの詳細を明らかにするために,血管造影が必要となる

血管造影3

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1593

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

ことがある.

DSA の精度の向上から,細径カテーテルを用いた経

動脈性 DSA が行われる.カテーテルには通常 4~5 Fr

のピッグテールカテーテルあるいはその類似型のものを

用いて,肘部の上腕動脈あるいは鼠径部から経皮的に挿

入し,カテーテル先端を上行大動脈あるいは下行~腹部

大動脈に置いて造影する.撮影方向は,胸部では左前斜

位 50~60度と右前斜位 20~30度の 2方向撮影が,腹部

では正面像が基本となる.

大動脈の描出には低侵襲で情報量の多い体表エコー図

および経食道心エコー図検査が有用である.体表エコー

図で胸部大動脈の観察を行なう場合,様々な部位(左右

傍胸骨・胸骨上窩・鎖骨上窩)からアプローチすること

によって大動脈基部,上行大動脈,弓部大動脈および腕

頭動脈,左総頚動脈,左鎖骨下動脈などの分枝を観察す

ることが可能である.また腹部大動脈の分枝する腹腔動

脈,上腸間膜動脈,腎動脈,総腸骨動脈の観察が可能で

ある.経食道心エコー図は大動脈基部から上行大動脈,

弓部大動脈,下行大動脈を鮮明に描出することができる.

しかし気管支分岐部付近の上行大動脈中間部は気管がプ

ローブとの間にあるため描出不良である.このような場

合は両者を相補的に用いることが重要である.

大動脈瘤の描出にはまず体表心エコー図で大動脈の長

軸像および短軸像を描出し,大動脈径,瘤の形状,分枝

血管との位置関係,内腔や壁の正常を観察する必要があ

る.大動脈が屈曲,偏位している可能性があるため短軸

像からの計測では必ず最大短径を計測する.胸部大動脈

瘤では 6 cm 以上,腹部大動脈瘤では 5 cm 以上,総腸骨

動脈では 3 cm 以上になった場合は手術を考慮しなけれ

ばならない.大動脈瘤で経食道心エコー図が必要となる

場合は,脳梗塞や原因不明の腎機能障害,下肢の blue

toe 症候群などの塞栓症が疑われたときで,左鎖骨下動

脈の動脈硬化性病変や可動性の動脈硬化巣(mobile

plaque)や壁在血栓の有無を評価する必要がある.

上行大動脈瘤の一つとしてバルサルバ洞動脈瘤がある

がこれは経胸壁心エコー図でカラードプラ法を用いて動

脈瘤破裂の部位診断を行なうことが可能である.同時に

左室機能を評価することも可能である.また大動脈基部

に拡大をきたした大動脈弁輪拡張症でも左右傍胸骨アプ

ローチで描出可能である.経胸壁心エコー図は上行大動

脈瘤患者に対し繰り返し評価することが可能で動脈瘤径

の推移を経時的に観察できる.下行大動脈瘤の描出は胸

骨上窩からのアプローチで観察できるが描出困難な場合

があるため経食道心エコー図を併用すべきである.

大動脈解離は生命を脅かす緊急疾患で早期に迅速な診

断および適切な治療が必要である.大動脈解離の迅速な

診断を行なううえで体表エコー図および経食道心エコー

図検査は非常に有用である.特に体表エコー図は非侵襲

的に簡便に解離の診断を行なうだけではなく,分枝解離

や解離に伴う合併症の評価を行なうこともできる.緊急

手術の適応である Stanford A 型解離の合併症である心タ

ンポナーデ・大動脈弁逆流の有無や程度および大動脈分

枝や冠動脈への進行,局所壁運動異常や胸水貯留の評価

をしておくことは非常に重要である.大動脈解離の経胸

壁心エコー図による感度は 59~83 %,特異度 63~83

%111,115)である.一方,経胸壁心エコー図と比較して経

食道心エコー図による診断の感度は高く 97~98 %111,115)

である.ただしアーチファクトなどによる誤認のため特

異度は 66~98 %111,115)である.経食道心エコー図は得ら

れる画像が鮮明であり大動脈基部,弓部大動脈,下行大

動脈の腹腔レベルまで観察可能である.体表エコー図と

比べ下行大動脈の評価もでき,エントリーの部位や剥離

内膜の検出を正確に描出できる.また腎機能障害や造影

剤アレルギーなどで造影剤が使用困難な場合にも施行で

きる.経胸壁心エコー図と同様に心タンポナーデ,大動

脈弁逆流の有無,大動脈弁輪拡大,頚動脈や冠動脈入口

部への解離の進行を確認できる.大動脈解離を評価する

うえで肺動脈の多重反射が上行大動脈の剥離内膜と混同

されやすい.また偽腔閉塞型大動脈解離では,粥状硬化

や壁在血栓との鑑別に注意が必要である.

1)MRI

大動脈の検査ではスピンエコー法あるいは高速スピン

エコー法を用いるのが基本である.胸部大動脈では心電

図あるいは脈波同期下に検査をおこなう.特徴として,

造影剤を用いることなく任意の断面で,血管壁ならびに

内腔を評価することが可能である.一方,撮像時間は長

く,乱流や遅延血流によるアーチファクト,あるいは呼

超音波診断33

大動脈瘤1

大動脈解離2

MRI(magnetic resonance imaging)44

撮像法117-120)1

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

い,より高度の腎機能障害例でも造影検査が可能,高度

の石灰化病変においても内腔の評価が可能,などが挙げ

られる.一方,欠点としては空間分解能に劣る,石灰化

情報が得られず骨構造は描出できない,検査時間が長く

救急対応が困難,などがある.

2)大動脈解離のMRI

全身状態が不良な急性期大動脈解離の診断において,

検査時間が長く患者モニタリングに制約のある MRI は

推奨できない.しかし慢性期における画像評価に MRI

は有用である.

一般に大動脈解離の画像診断の要点は存在診断,病型

分類,合併症診断に集約されるが,慢性期では形態変化

の評価を含めた病型分類,ならびに合併症診断が重要で

ある.偽腔開存型大動脈解離においては,大動脈径の拡

大,偽腔血栓化,臓器虚血の評価が大切であり,大動脈

径が 6 cm 以上に拡大したり,拡大速度画が 5 mm/6 ヶ

月を越える場合,臓器虚血を生ずる際などでは手術適応

となる.偽腔閉塞型においては大動脈径の拡大の有無に

加え,解離腔内への局所的な内腔の突出部である

ulcerlike projection(ULP)の評価が大切である.ULP は経

過中に瘤化したり,これを基点として偽腔開存型に変化

することや破裂に至る場合もあり,注意が必要である.

MRI 検査法として,大動脈解離が腎動脈に波及し腎

機能が著しく低下している場合には,SSFP 法などを用

いて非造影 MRA を撮像することもあるが,一般には造

影 MRA を行う.MIP 法を用いることで全体像の把握が

可能であるが,撮像タイミングが早く偽腔の造影効果が

不十分な場合には,偽腔内血栓化との鑑別が困難な場合

がある.その際には,再度撮像することで両者の鑑別は

可能となる.主要大動脈分枝への解離波及の診断には,

元画像あるいは multiplanar reconstruction(MPR)法が有

用である.

1)ペースメーカー,埋め込み型除細動器

ペースメーカー埋め込み後の MRI 検査は禁忌であり,

現在までに 10例を越える死亡例が報告されている.5~

7 ガウスほどの磁場であっても,ペースメーカーに影響

があることが知られており,装着者は 5ガウス線内に近

づかぬようにせねばならない.一方,200 例以上のペー

スメーカー装着者で安全に MR 検査がなされた報告も

あり,適応基準も将来,見直される可能性はある.埋め

込み型除細動器を有する場合も,同様に禁忌である.

吸に伴うアーチファクトを認める場合がある.

2)シネMRI

心電図あるいは脈波同期下にグラディエントエコー法

を用いて同一断面での多時相画像を取得する手法であ

り,造影剤を使用せずに血流動態の評価が可能である.

しかし撮像時間が長く,基本的に単一断面の情報しか得

られない.近年では短時間で高コントラストの血流情報

が得られる SSFP(steady-state free-procession)法(true

FISP,FIESTA,balanced TFE,true SSFP など)を利用

することも多い.

3)MRA(magnetic resonance angiography)

MRA には造影剤を使用しない time-of-flight(TOF)

法,phase-contrast(PC)法,fresh blood imaging(FBI)

法,ならびに造影剤を使用する造影 MRA に大別するこ

とができる.この中で最も一般的な大動脈の検査法は造

影 MRA である.これは造影剤による血液の T1 短縮効

果を利用し,血流腔を高信号域として描出する方法であ

り,屈曲部や乱流部位の評価においても良好に血流腔を

画像化することができる.また TOF 法や PC 法に比較

し,撮像時間が短い,空間分解能が高い,任意の撮像面

の設定が可能,などの利点もある.

1)大動脈瘤のMRI

大動脈瘤に対する MRI 診断の要点としては,①瘤の

存在部位,②形態,③大きさ,④主要大動脈分枝との関

係,⑤合併症の評価,があげられる.①については胸部,

胸腹部,腹部に大別でき,胸部では上行大動脈,大動脈

弓部,下行大動脈に,また腹部では腎動脈分岐下と腎動

脈にかかる juxtarenal aneurysm に分けることが多い.②

では形態により紡錘状あるいは嚢状に分ける.瘤の大き

さは,血管走行に平行ならびに垂直にこれを計測する.

この際に至適な断面で大動脈瘤を評価できる MRI は有

用である.⑤合併症(並存疾患)としては閉塞性動脈硬

化症が多く認められる.

造影 MRA にて得られた複数の薄層断像をもとに

maximum intensity projection(MIP)法などにより画像処

理することで,カテーテルによる血管造影像に近似した

高コントラストの血管樹を得ることが可能である.また

この元画像を詳細に評価することで,壁在血栓などの情

報を得ることもできる.

CT と比較した際の利点としては,X 線被曝を伴わな

臨床応用100,118,119,121-123)2

体内埋め込み装置や金属等の安全性について119,124,125)3

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大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

2)ペーシングワイヤ

心臓手術後にペーシングワイヤや電極が単独で体内に

埋め込まれている場合がある.この場合にも理論的に電

磁誘導作用により電流を生じたり皮下や心組織に温熱外

傷を惹起したりする可能性があるため,原則的に MRI

は禁忌とされてきた.近年,心外膜にペーシングワイヤ

が留置されている症例に対して MRI を行っても不整脈

などの発生は認められなかったとの報告もなされている

が,その適応には慎重を期す必要がある.

3)人工弁

人工弁は生体弁と機械弁に大別される.機械弁も最近

では非磁性体のカーボンを主体とするものが多く,MRI

の実施に支障はないと考えられている.また磁性体の人

工弁についても弁の破壊や異常動作を生ずるほどの影響

はなく,安全と考えられている.個々の人工弁の安全情

報は,参考文献124)ならびにインターネット上で確認さ

れたい(www.mrisafty.com).

4)ステント,フィルター,コイルなど

血管内治療の発達に伴い,体内に金属が留置された状

態で MRI 検査を施行する頻度が増えている.磁性体の

器具による血管内治療後では,生体内で安定するまでの

期間(留置後 6~8週)は MRI を行うべきではないと考

えられる.一方,非磁性体のものでは安定期間を待つ必

要はないとされる.殊に血管内治療器具の開発は日進月

歩であり,個々の器具の安全性については参考文献124),

インターネット(www.mrisafty.com)での確認に加え,

製造企業にも確かめることが望まれる.

5)止血クリップ

生体内で安定した状態であれば,安全性に問題はない.

6)胸骨ワイヤ

安全性に問題はない.

7)心電図,脈波同期等のケーブル

パルスオキシメータのケーブルがループを形成したた

めに局所的な火傷が起きた事例が報告されている.心電

図や脈波同期ケーブルでも同様のことが発生する可能性

があり,注意が必要である.

これまでの MR の安全性に関する情報は,主に 1.5T

以下の MRI 装置において検討されたものが大部分を占

める.3T をはじめとする超高磁場 MR 装置における

個々の器具の安全性に関しては,今後の改訂版を含めた

参考文献124),インターネット(www.mrisafty.com),あ

るいは製造企業に確認した後,検査する必要がある.

胸(腹)部大動脈瘤の手術の最も重篤な合併症の一つ

に脊髄虚血に起因する対麻痺がある.これを回避するた

めに欧米を中心に選択的肋間(腰)動脈造影が行われ,

60~86 % の確率で Adamkiewicz 動脈の同定が可能で,

手術にも有用であることが報告されている126,127).しか

し,検査手技自体による瘤の破裂や対麻痺等の重篤な合

併症が無視できない確率で発生することから127),本邦で

は一般的な術前検査とはならなかった.

一方,近年の MRI や MDCT のめざましい進歩によっ

て Adamkiewicz 動脈の低侵襲的な同定が可能となった.

薄いスライス厚で広範囲の撮影が可能な MDCT を用

いる.造影剤を急速注入しながら 2 mm 以下の薄いスラ

イス厚で撮影を行い,造影早期相の画像から

Adamkiewicz 動脈の抽出を行う96,128,129).具体的には,

画像処理装置(ワークステーション)上で,MPR 法を

用いて描出する.Adamkiewicz 動脈は前脊髄動脈と合流

する際に特徴的な「ヘアピンカーブ」を形成するので,

これを目安に同定を行う.この際に問題となるのは前根

髄質静脈との鑑別である.この静脈は Adamkiewicz 動

脈と非常に近似した形態を呈するためである.最も確実

な鑑別方法は Adamkiewicz 動脈とそれを分岐する肋間

(腰)動脈との連続性を証明することである96,129).これに

は CPR(curved planar reformation)法を用いた画像表示

が最も適しているが,VR 法を用いる場合もある130).

現在報告されている成績は 4 列の MDCT 装置を用い

た検討のみであるが,Adamkiewicz 動脈の診断率は以下

のごとくである.ヘアピンカーブの形態による診断では

スライス厚が 2 mm の場合 68~90 %96,128),同じく 1 mm

では 80 % で129),連続性の証明による診断ではスライス

厚が 2 mm では 29 %96),同じく 1 mm では 50 %129)と報

告されている.より薄いスライス厚で撮影が可能な 16

列以上の装置では診断率の向上が期待される.

1.5 テスラ装置で,造影剤を用いた MRA の pulse

sequence で撮像を行う.MRA でも CT と同様に画像処

理装置を用いて,Adamkiewicz 動脈の描出を行う.

Adamkiewicz 動脈の同定55

CT1

MRI2

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061596

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

MRA には,十秒程度の短い撮像時間の撮像を繰り返す

時間分解能を優先した方法と131,132),5分程度の時間をか

けて CT と同程度の高い空間分解能を持つ画像を得る方

法とがある129).前者では造影剤の初回通過の状態を観察

することで動静脈の鑑別ができる利点があり,後者では

CT と同様に大動脈から前脊髄動脈に至る経路を連続的

に表示できる利点がある.

Adamkiewicz 動脈の描出率は,ヘアピンターンの検出

による診断で 67~83 %,連続性の証明による診断では

57 % と報告されている129,131,132).CT と比較した場合の

MRA の利点として肋間(腰)動脈の閉塞に伴う側副血行

路の描出が可能な点が挙げられる129,131,133).MRI 装置も

年々進歩しており描出率のさらなる向上が期待できる.

術前に Adamkiewicz 動脈を分岐する肋間(腰)動脈

を診断し得た場合,術式の選択や肋間(腰)動脈再建レ

ベルを含めた手術計画に有用である.具体的には,

Adamkiewicz 動脈を分岐する肋間(腰)動脈が人工血管

置換範囲外であれば肋間動脈の再建を省略したり134),

Adamkiewicz 動脈を分岐している肋間(腰)動脈に選択

的灌流を行う等の工夫が報告されており135),さらには非

選択的な肋間動脈再建法と比較して手術時間も短いとさ

れる136).最近では,Adamkiewicz 動脈を術前に同定し得

た例では非同定例と比較して術後対麻痺の発生が有意に

少なかったとする報告も見られる 132).その一方で,

Adamkiewicz 動脈の術前診断は術後対麻痺の回避に貢献

しないとする報告もある137).これは,術後対麻痺の発生

には Adamkiewicz 動脈の血行再建のみならず,術中の

血流遮断時間や灌流方法,脊髄の血流支配の個人差など

の複数の要因が関与しているためと推察される.

大動脈解離の治療において,内科療法と外科療法のど

ちらを選択するかは予後を左右する最も重要な判断であ

る.急性期か慢性期か,解離の部位,解離の形態などに

より異なるが,現在までのエビデンスに基づいた内科療

法と外科療法の治療効果について概説する.

1)急性期の治療

①Stanford A 型急性大動脈解離

上行大動脈に解離が及ぶ Stanford A 型は極めて予後不

良な疾患で,症状の発症から 1 時間あたり 1~2 % の致

死率があると報告されている78).破裂,心タンポナーデ,

循環不全,脳梗塞,腸管虚血などが主な死因である138,139).

一般に内科療法の予後は極めて不良で,外科療法すなわ

ち緊急手術の適応であるとされる.Masuda らは何らか

の理由で手術が出来なかった例で 2 週間の生存率が 43

% と報告している.急性大動脈解離の国際多施設共同

登録試験(IRAD)のデータでは,内科治療における死

亡率は症状から 24 時間で 20 %,48 時間で 30 %,7 日

間で 40 %,1 ヶ月で 50 % と報告されている78).一方,

外科治療の成績は症状から 24 時間で 10 %,48 時間で

30 %,7日間で 13 %,1ヶ月で 20 % であった.従って,

外科治療の方が内科治療よりも成績が良い結果であっ

た.以上のことから,Stanford A 型の急性大動脈解離は

緊急の外科治療の適応とするのが一般的な考え方であ

る.現在における外科治療は内膜破綻のある上行大動脈

置換術および必要に応じて弁輪部の修復術が行われる.

したがって遠位の偽腔の血流を止めるわけではなく,偽

腔は残存し将来瘤化する可能性がある.遠位部の偽腔が

閉塞するのは 10 % 以下であると報告されている140).

②Stanford B 型急性大動脈解離

Stanford B 型急性大動脈解離は A 型解離よりも予後が

良い.合併症のない Stanford B 型解離の場合,30 日間

の死亡率は 10 % と報告されている78).逆に外科治療の

リスクは高く,合併症のない Stanford B 型解離の場合,

内科治療も外科治療も同等の結果であると報告されてい

る141).ただし,破裂や切迫破裂,下肢虚血および臓器虚

血,治療抵抗性の疼痛をきたした症例では外科治療が必

要とされ,30日間の死亡率は 25 % と報告されている1).

また急性期に上行大動脈に逆行解離をきたした例も手術

の適応となる.治療抵抗性の高血圧については,従来は

早期手術の適応と考えられていたが,最近の検討では高

血圧が破裂等の合併症の危険を増加させるわけではな

く,必ずしも手術の適応とは考えられていない142).以上

のことから,Stanford B 型急性大動脈解離の治療におい

ては,合併症のない例では内科療法を選択し,合併症の

ある症例では手術を考慮する必要がある.

Stanford B 型急性大動脈解離の内科治療においては,

慢性期に大動脈径の拡大を呈することがあり,外科治療

治療-胸部大動脈Ⅵ

治療効果概括(内科治療と外科治療の比較)11

大動脈解離1

臨床的意義3

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1597

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

の対象となる.急性期の下行大動脈の最大径が 40 mm

を越える例や,偽腔に血栓化がみられない例が慢性期の

大動脈径の拡大の危険因子と報告されている143).最近は

これらの径の拡大が予測される例では亜急性期にステン

トグラフト等で治療することが検討されている.

③特殊な解離に対する治療

a.Stanford A 偽腔閉塞型急性大動脈解離

Stanford A 型の偽腔閉塞型解離に対する治療指針は欧

米と日本や韓国で意見の違いが見られ,また国内におい

ても外科医と内科医で意見が異なることが多い.

Song らは偽腔閉塞型は偽腔開存型とは臨床上いくつ

かの点で異なると報告している58).すなわち,患者背景

としてより高齢者が多く,また大動脈弁閉鎖不全症や脳

梗塞等の合併症が少なかった.彼らは内科治療で良好な

成績を報告しており,合併症のない例では初期内科治療

を薦めている144).本邦でも多くの施設が,初期には内科

治療を施行している10,145,146).Kaji らは偽腔閉塞型解離

に対しては原則内科治療を施行し,血栓化した偽腔が増

大した例と偽腔開存型へ移行した例に対しては緊急(24

時間以内)あるいは準緊急手術(2~3 日以内)を施行

した結果,院内死亡率は 7 % と低く 5 年生存率も 90 %

と長期予後も良好であったと報告している57).これに対

して,欧米では Stanford A 偽腔閉塞型急性大動脈解離は,

内科治療の成績は不良で緊急手術を施行する方が良いと

いう意見が強い6,53,54,147,148).表 6 に過去の報告による

治療成績をまとめた.この成績の差異が,人種間の違い

も含めた患者背景の差によるのか,診断法や内科治療法

の違いによるのかは明らかでなく,さらなる検討が必要

と考えられる.

ここで注意するべきは,初期に内科治療を選択したと

しても,厳重な降圧治療および画像診断による経過観察

が必要なことである.前述の Kaji の報告では,約 43 %

の症例で,解離の進行が見られ,手術を施行している57).

一方で,大動脈径が 50 mm 以上149)あるいは血栓化した

偽腔の径が 11 mm を越える例150)は内科治療中に解離が

進行する率が高く高危険群と報告されている.

現時点での Stanford A 偽腔閉塞型急性大動脈解離の治

療方針については,以下のように考えられる.まず,大

動脈弁閉鎖不全症や心タンポナーデ合併例では緊急手術

を考慮する.また,大動脈径が 50 mm 以上あるいは血

腫の径が 11 mm を越える例では高危険群と考えられ,

場合によっては手術を考慮する.このような高危険群に

対して,すぐに手術をする方が良いかあるいは 2~3 日

経過観察して血栓化した偽腔の退縮が認められなかった

時点で手術にする方が良いかどうかは未だ結論が出てい

ない.上記以外の症例では初期に内科治療が可能と思わ

れる.ただし,内科治療にあたっては,画像診断を頻回

に施行して,経過を追うことが重要である.経過中,血

栓化した偽腔の増大や偽腔開存型へ移行したと考えられ

る例はすみやかに手術をする方が良いと考える.したが

って手術がいつでも可能である状況が望ましい.また早

期に手術を行う方がよいとする議論があることも常に考

慮に入れて,治療の同意を得ることが望ましい.

表 6 Stanford A型偽腔閉塞型急性大動脈解離における内科治療の成績

Mohr-Kahaly54) 1994 3 72 2/3 NA

Nienaber53) 1995 12 52 4/5 NA

Sueyoshi153) 1997 13 70 1/8 4/8

Kaji149) 1999 22 65 1/22 12/22

Shimizu156) 2000 13 NA 3/11 NA

Hagan78) 2000 17 NA 4/8 NA

Nishigami5) 2000 8 72 1/8 2/8

Song58) 2001 24 67 1/18 7/13

Sohn154) 2001 13 NA 0/13 NA

Kaji57) 2002 30 67 1/30 17/30

Song144) 2002 41 65 3/41 24/36

Evangelista155) 2003 12 NA 1/5 2/5

von Kodolitsch6) 2003 38 NA 6/11 NA

Moizumi156) 2004 41 67 3/30 NA

Evangelista4) 2005 23 NA 3/9 NA

筆頭著者 年 症例数 平均年齢 内科治療による死亡 内科治療で偽腔が消失

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

b.Ⅲ型逆行解離(Stanford A 偽腔開存型)

一般に A 型の解離は上行大動脈内に内膜破綻が存在

し,そこから順行性に解離が進行すると考えられている.

しかしながら,上行大動脈内に内膜破綻がなく,下行大

動脈あるいは腹部大動脈内の内膜破綻から逆行性に解離

が進行する例が一部存在する.このような逆行解離例は

従来は通常の順行性解離と同様に扱われてきたが,これ

ら逆行性解離の中でも上行大動脈の血栓化が認められる

ような症例では内科治療により血栓化した偽腔の退縮が

期待できる.von Segesser らは Stanford A 偽腔開存型逆

行性解離には解離が上行大動脈優位なものと下行大動脈

優位なものがあると報告し,下行大動脈優位で上行大動

脈の解離が小さく,血栓化している場合は内科治療が可

能であると報告している(図 17).Kaji らは,14 例の

上行大動脈の偽腔が完全に血栓化した逆行解離例を内科

治療し,5 年生存率 93 % と良好な長期予後を報告して

いる151).従って,このような症例はたとえ A 型偽腔開

存型であっても,画像診断を頻回に施行して血栓化した

偽腔の増大や偽腔開存型への移行がないか注意しながら

経過を追うことによって,内科的に治療することが可能

である.

c.Stanford B 偽腔閉塞型急性大動脈解離

Stanford B 偽腔閉塞型急性大動脈解離は A 型の偽腔閉

塞型急性大動脈解離に比して予後良好と報告されてい

る53).また Stanford B 偽腔開存型と比較しても予後良好

と報告されている56).内科治療の成績は,院内死亡率が

0 % で,5 年の生存率も 97 % と良好である.また同時

に破裂,腸管虚血,および下肢虚血といった合併症の発

生が偽腔開存型に比して有意に少ないと報告されてい

る.これら合併症が少ないことが予後が良好な原因であ

ると考えられる.以上のことから,外科療法よりも内科

療法が選択されることが妥当であるが,破裂を含めた合

併症の危険性はゼロではなく注意が必要であり,その場

合適切な外科治療を行うことも必要である.

以上のことを踏まえて,現時点での急性期の大動脈解

離の内科治療と外科治療の適応について表 7,表 8にま

とめた.

図 17 Stanford A 型偽腔開存型逆行性解離における 2 つの型

上行大動脈優位な型(左)と下行大動脈優位な型(右).下行大動脈優位で,上行大動脈の偽腔が血栓化し大動脈弁閉鎖不全症や心タンポナーデなどの合併症がない場合には内科治療も可能である.

表 7 Stanford A 型大動脈解離における急性期治療の適応

Class Ⅰ

1.偽腔開存型A型解離に対する外科治療(緊急手術)(Level C)

2.解離に直接関係のある,重症合併症*を持ち,手術によりそれが軽快するか,または,その進行が抑えられると考えられる大動脈解離に対する外科治療

*偽腔の破裂,再解離,心タンポナーデ,脳循環障害,大動脈弁閉鎖不全,心筋梗塞,腸管虚血,四肢血栓塞栓症など (Level C)

Class Ⅱa

1.血圧コントロール,疼痛に対する薬物治療に抵抗性の大動脈解離に対する外科治療 (Level C)

Class Ⅱb

1.偽腔閉塞型A型解離に対する外科治療 (Level C)

2.偽腔閉塞型A型解離に対する内科治療 (Level C)

3.上行大動脈の偽腔が血栓閉塞したDeBakeyⅢ型の逆行性解離に対する内科治療 (Level C)

表 8 Stanford B 型大動脈解離における急性期治療の適応

Class Ⅰ

1.合併症のない偽腔開存型および偽腔閉塞型B型解離に対する内科治療 (Level C)

2.解離に直接関係のある重症合併症*を持ち,手術によりそれが軽快するか,または,その進行が抑えられると考えられる大動脈解離に対する外科治療

*偽腔の破裂,再解離,心タンポナーデ,脳循環障害,大動脈弁閉鎖不全,心筋梗塞,腸管虚血,四肢血栓塞栓症など (Level C)

Class Ⅱa

1.血圧コントロール,疼痛に対する薬物治療に抵抗性の大動脈解離に対する外科治療 (Level C)

2・血圧コントロールに対する薬物治療に抵抗性の大動脈解離に対する内科治療 (Level C)

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1599

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

2)慢性期の治療

発症から 2週間以上経過した慢性期の大動脈解離例の

予後は良好で,状態が安定している場合は,Stanford A

型であっても B 型であっても,内科治療がすすめられ

る.しかしながら,破裂や切迫破裂例,大動脈径の拡大

を認める例,大動脈弁閉鎖不全症を認める例,分枝閉塞

を認める例,解離の進展,再発を認める例などは侵襲的

治療を考慮するべきである.しかしながら,侵襲的治療

にはリスクが伴う.以下に手術成績と合併症の頻度,ス

テント挿入の成績と合併症の頻度,手術を施行せず内科

治療のみで経過観察をした場合の成績,年齢のリスクな

どを列挙した.

①慢性期手術成績

日本胸部外科学会の 2003 年度における在院死亡率は

慢性 A 型で 6.6 %(36/544),慢性 B 型で 9.4 %(45/

478,下行置換 5.9 %,胸腹部置換 12 %)と報告されて

いる157).合併症は手技,施設,術者による差が大きく一

概に発症率を推定することは難しい.また成績は近年向

上している.問題となるのは脳合併症と胸腹部置換を施

行した際の対麻痺であるが,詳細は他項に譲る.

②慢性期ステント挿入の成績

日本胸部外科学会の 2003 年度における経皮的ステン

ト挿入の在院死亡率は慢性 A 型で 12.5 %(1/8),慢性

B 型では 6.5 %(5/77)とされている157).現時点ではス

テント内挿術の保険適応はあるが,デバイスに保険認可

がなく,多くが手作りのステントを挿入しているのが現

状である.主たる合併症は,対麻痺および脳梗塞,エン

ドリーク,migration などである.エビデンスの集積が

不足しており,施設,術者,デバイスの差などによって

もその発生頻度は異なる.慢性期大動脈解離に対するス

テント留置の合併症発症率は,明らかに急性期における

それより少ない.

③慢性期内科成績

内科治療による長期予後は Kaplan-Meier 法による検

討いくつかの報告がある67,152,158,159)(表 9).慢性期管理

を始める時点で,急性期における慢性期予後の不良因子

が知られている.特に外来診察を始めるにあたり下記を

念頭におくことは意義があるものと思われる.タイプ別

の急性期に知られる慢性期予後不良因子を列挙した.

a.Stanford A 偽腔開存型

一般的には手術がなされているはずである.全身状態

による適応の再検討となる.

b.Stanford A 偽腔閉塞型

発症 48 時間以内の血腫の厚さ>11 mm150),発症 2 週

間における血腫の厚さ>12 mm160),上行大動脈における

ULP161),最大動脈径>50 mm149).最大動脈径とは無関係

に偽腔開存型へ移行あるいは破裂するリスクが大きい6)

とする立場もある.(Ⅲ型逆行解離・上行大動脈部分の

偽腔血栓化症例は,内科治療の適応とする報告151)があ

るが未確定.)

c.Stanford B 偽腔開存型

急性期最大動脈径>40 mm143,158),急性期動脈径最大

部位が弓部遠位にある162),COPD の存在152).

d.Stanford B 偽腔閉塞型

新たに出現した ULP,年齢 70 才以上56),急性期最大

動脈径>53 mm,発症 2~4 週における偽腔の厚さ>16

mm156),ULP が遠位弓部あるいは横隔膜周辺にある44).

偽腔が拡大して瘤形成をしていた場合は,60 mm の

表 9 各タイプにおける Kaplan-Meir 法による全死亡回避率

Stanford A 開存型 34 % 23 % 23 % Kozai et al 2001 159)

Stanford A 偽腔閉塞型 83 % 78 % 73 % 日循 2000 67)

86 % 86 % 31 % Kozai et al 2001 159)

Stanford B開存型 83 % 79 % 79 % Kaji et al 2003 56)

87 % 74 % 48 % Akutsu et al 2004 162)

84 % 64 % 48 % Kozai et al 2001 159)

Stanford B偽腔閉塞型 100 % 97 % 97 % Kaji et al 2003 56)

95 % 74 % 56 % Akutsu et al 2004 162)

97 % 90 % 63 % Kozai et al 2001 159)

1 年 2 年 3 年 5 年 10 年 報告者 報告年 文献

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061600

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

胸部大動脈瘤が 1年以内に致死的状況に陥る可能性 14.1

~15.6 %,50~60 mm のそれは 6.5~11.8 % と報告され

ている163,164).

④年齢による手術リスクの上昇について

一般には高齢であるほど手術のリスクが上昇すること

は言うまでもないが,これまでの ADL も重要である.70

才以上の胸部大動脈瘤は院内死亡が 1.25 倍(p=0.03)165)

と報告されている.

⑤手術適応

大動脈解離における亜急性期および慢性期の外科的治

療法の適応についてまとめた(表 10).

1)はじめに

胸部大動脈瘤は多くが無症状であるため,その正確な

実態は知られていない.剖検報告では,スウェーデンで

の報告166,167)によると,剖検 10 万人あたり男性 489 人,

女性 437人とされている.この中で,胸腹部大動脈瘤は

5 % 強となっている166).内科治療に関しても,発見され

た時点で,一般に破裂の危険性から手術治療が選択され

るため,内科治療に関する報告は少なく,手術困難また

は拒否例の自然歴,破裂例の後ろ向き調査に関するもの

がほとんどである.さらに,胸部・胸腹部大動脈瘤を対

象とした内科治療と外科治療の二重盲検比較試験は未だ

無く,両治療を比較することはできない.ここでは,内

科治療として,自然歴を中心に,大動脈径別に破裂の頻

度,大動脈解離の発生頻度,1 年生存率,5 年生存率を

review した.外科治療では,治療手技,早期死亡率,遠

隔期死亡率,合併症について review をおこなった.た

だし,多くが 1施設の成績であり,技術的要素,治療器

具の発達など様々な要因が含まれており,単純に比較す

ることはできない.

2)胸部・胸腹部大動脈瘤の内科治療

破裂に関与する因子として,Juvonen らの報告168)では,

年齢が Odds 比 2.6,痛みが Odds 比 2.3,慢性閉塞性肺

疾患が Odds 比 3.6,大動脈径が Odds 比 1.5としている.

特に大動脈径に関しては,Coady ら169)及び Davies ら163)

の報告によれば,破裂を 1 年間に起こす頻度は,4 cm

未満で 0 %,4~4.9 cm では 0~1.4 %,5.0~5.9 cm では

4.3~16 %,6 cm 以上では 10~19 % とされている.さ

らに,Perko らの報告170)によれば,大動脈径 6 cm 以

上の例では,6 cm 未満の例に比し,5年間に破裂する頻

度は 5倍高いとされている.また,大動脈解離を起こす

頻度は,4 cm 未満では 0 %,4~4.9 cm では 3~8.5 %,

5.0~5.9 cm では 7.7~8.5 %,6cm 以上では 13~28.6 %

と報告されている.1 年生存率と 5 年生存率は,初期大

動脈径 5.2 cm(3.5~10 cm)で,それぞれ 85 % と 64 %

と報告されている.

3)胸部・胸腹部大動脈瘤の外科治療(表 11)

大動脈基部の外科治療に関して,David らが大動脈弁

形成術を含めた大動脈再建術 151例の検討で,初期死亡

率 1.3 %,8 年の遠隔生存率 83 %,大動脈弁逆流の再発

率 2 % と極めて良好な成績を発表している171).

大動脈弓部の外科治療に関して,術中の脳保護と脳合併

症が大きな問題となり,様々な手法が取り入れられてき

た.治療成績は徐々に向上し,Kazui ら172)の全弓部置換

術 50例の検討では,初期死亡率 2 %,2年生存率 92 %,

脳合併症 4 % と良好な成績が報告されている172).

しかしながら,Okita らの胸部大動脈瘤手術 648 例の

検討では,70 歳未満の早期死亡率が 8.6 %,70 歳以上

が 15.6 % であった.緊急手術が含まれているため,待

機手術のみの死亡率を論じることはできないが,患者が

高齢化している現在においては,少なくとも 5 % 以上

の早期死亡率は考慮すべきと思われる173).

仮に胸部大動脈瘤の外科手術での死亡リスクを 5 %

と仮定した場合,上記の内科治療における破裂および大

動脈解離のリスクとの比較では,大動脈径 5.0~5.9 cm

表 10 大動脈解離における亜急性期および慢性期治療の適応

Class Ⅰ

1.大動脈の破裂,大動脈径の急速な拡大(> 5 mm/6 ヶ月)に対する外科治療 (Level C)

2.大動脈径の拡大(≧ 60 mm)を持つ大動脈解離例に対する外科治療 (Level C)

3.大動脈最大径 50 mm 未満で合併症や急速な拡大のない大動脈解離に対する内科治療 (Level C)

Class Ⅱa

1.薬物によりコントロールできない高血圧をもつ偽腔開存型大動脈解離に対する外科治療 (Level C)

2.大動脈最大径 55~60 mm の大動脈解離に対する外科治療 (Level C)

3.大動脈最大径 50 mm 以上のマルファン症候群に合併した大動脈解離に対する外科治療 (Level C)

Class Ⅱb

1.大動脈最大径 50~55 mm の大動脈解離に対する外科治療 (Level C)

胸部大動脈瘤2

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1601

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

が手術適応として妥当な基準と判断される.

下行大動脈瘤および胸腹部大動脈瘤では,下肢対麻痺

の予防対策が課題となっている.脳脊髄液ドレナージ,

肋間動脈の再建,術中の somatosensory-evoked potential

のモニタリング,術中の大腿動脈からの送血などが試み

られ,下肢対麻痺を合併する頻度は 5 % 程度まで低下

している174-178).初期死亡率は 5~10 %,5 年生存率は

62~74 % と報告されている174-178).胸腹部大動脈瘤の手

術適応としては,内科治療における破裂および大動脈解

離のリスクとの比較により,大動脈径 6.0 cm 前後が比

較的妥当な基準と思われる.

1)急性期管理

超急性期における治療でもっとも重要なことは,降圧

と鎮静および安静である.降圧の目標は 100~120

mmHg とされているが67,179,180),エビデンスはない.解

離の進展によると考えられる痛みが消失するまで血圧を

下げることが重要と考えられる.超急性期はやはり 100

~120 mmHg をひとつの基準とすることが一般的であろ

う.可能であれば橈骨動脈にラインを確保して連続的な

血圧モニタリングをすることが望ましい.使用薬剤に関

するエビデンスも乏しい.早い降圧の得られる

Nicardipine,Nitrogricerine,Diltiazem などの持続静注と

β遮断薬の静注の組み合わせが頻用されており67),超急

性期は静注による血圧のコントロールが調節性に優れて

いるため推奨されるが,経口剤を開始,併用してもよい.

持続する痛みに対しては鎮痛,鎮静を図るべきである.

Morphine または Buprenorphine などが用いられる.安静

度は,破裂の可能性の高いとされる 48 時間以内は,絶

対安静が必要である.また,この時期には頻回のエコー

検査にて,心嚢液の貯留量の変化,解離の主要分岐への

進展の変化などを注意深く観察することが望まれる.

超急性期を乗り切った急性期における問題は,血圧管

理,安静度をどのようにあげていくか,譫妄,呼吸不全

への対応などである.血圧管理は,100~120 mmHg を

基準として若干の上下は許容せざるを得ない場合もあ

る.解離の安定度と尿量などを慎重に観察しながら,あ

る程度柔軟に対応するべきであると考える.降圧剤の静

注から経口への切り替えに関してのエビデンスはない.

安静に関しての詳細はリハビリの項に譲る.しばしば問

題となる高齢者に見られる不穏,譫妄も過度の安静に関

与している可能性もあり,解離の型に応じて対応すべき

である.呼吸不全は胸水と臥床による無気肺などに関与

すると考えられているが原因は不詳である.ある程度の

呼吸不全は必発であると考え,早めの酸素投与で低酸素

血症による不穏を惹起しないよう注意が必要である.

2)慢性期管理(表 12)

慢性期における患者管理の最大の目標は,再解離と破

裂の予防であり,(再)手術のタイミングと術式を決定

することである.

①血圧管理

最も大切なことは血圧の管理である.良好な血圧のコ

ントロールは再解離の発症を約 1/3に減らすと報告され

ている181).降圧剤の選択は,確実な降圧が得られること

内科治療22

大動脈解離1

表 11 胸部・胸腹部大動脈瘤における治療の適応(マルファン症候群,嚢状瘤を除く)

Class Ⅰ

1.最大短径 6 cm 以上に対する外科治療 (Level C)

Class Ⅱa

1.最大短径 5~6 cm で,痛みのある胸部・胸腹部大動脈瘤に対する外科治療 (Level C)

2.最大短径 5 cm 未満(症状なし,慢性閉塞性肺疾患なし,マルファン症候群を除く)の胸部・胸腹部大動脈瘤に対する内科治療 (Level C)

Class Ⅱb

1.最大短径 5~6 cm で,痛みのない胸部・胸腹部大動脈瘤に対する外科治療 (Level C)

.最大短径 5 cm 未満で,痛みのある胸部・胸腹部大動脈瘤に対する外科治療 (Level C)

Class Ⅲ

1.最大短径 5 cm 未満で,痛みのない胸部・胸腹部大動脈瘤に対する外科治療 (Level C)

表 12 大動脈解離における慢性期治療のエビデンス

Class Ⅱa

1.許容される運動は,自転車,ランニングなどで血圧が180 mmHg を越えない強度に設定するべきである

(Level C)

2.外来における CT 撮影は発症 1,3,6,(9),12月後に行うことが好ましいとされる (Level C)

Class Ⅱb

1.慢性期における血圧の管理は主としてβ遮断薬を用いて行う (Level C)

2.収縮期血圧の管理目標は 130~135 mmHg である(Level C)

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061602

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

が肝要であるが,β遮断薬のみが,入院などの解離関連

事故を減らし6,182),また瘤径の拡大を抑える183)などのエ

ビデンスがある.しかし一方で 3~5 cm の腹部大動脈瘤

症例に対して,propranolol は placebo と比較して瘤拡大

速度を有意に遅延させることはなかったとする報告184),

あるいは 35 mm 以上(中間値 43 mm)の胸部動脈瘤の

拡張に対してβ遮断薬の投与は影響しなかった185)との

報告もあり,β遮断薬の効果はマルファン症候群以外に

対しては明らかであるとはいえない.管理の目標収縮期

血圧は,130 mmHg としているもの186),135/80 mmHg

以下としているもの2)などがあるが明らかなエビデンス

はない.灌流圧の低下による臓器障害が生じる場合は,

目標血圧を上げざるを得ないことがある.

②安静度,運動

通常の日常生活に関しての制限はほとんどないと考え

てよい.運動に関するエビデンスは少ない.ランニング

や自転車などの等長性,好気性運動が推奨され,その運

動強度は,トレッドミル運動負荷テストで血圧が 180

mmHg をこえることがないような強度とするべきであ

り,胸腔内圧を上昇させるような重量挙げなどは避ける

べきであるとの記載がある187).

③画像によるフォローアップ

外来においては大動脈径の変化を経時的に観察するた

めに,解離関連事故の多い 2 年までは,CT,MRI など

を一定間隔で撮影する必要がある.CT のフォローアッ

プの間隔に関して,発症後 3 月目,6 月目,その後発症

2 年まで 6 月ごと186),あるいは 1,3,6,9,12 月目に

撮影すべきと報告されている2).動脈径が手術適応に近

くなれば CT を撮影する間隔を短くすることもあり,ま

た動脈径が小さく偽腔が血栓閉塞して ULP もない,な

どのときは若干 CT の撮影間隔もやや長くするなどの対

応も,放射線被爆および造影剤の腎障害を考えれば必要

かもしれない.胸部単純 X 線も瘤径拡大のおおまかな

評価について有効と思われる.

④内科治療の限界の見極め

さらに,その CT,MRI の結果で(再)手術をするか,

降圧のみで経過をみることができるかを決定しなくては

ならない.

⑤手術例の慢性期管理における注意点

Stanford A 型,B 型にかかわりなく,残存解離と術後

遠隔期合併症が問題になる.

a.術後遠隔期合併症について

大動脈基部における手術を施行した場合には大動脈弁

閉鎖不全,上行あるいは弓部置換術を含む術後の場合に

は縫合不全と再解離が問題となる.

b.残存解離による瘤形成について

Ⅰ型解離の場合には,上行弓部置換術を施行しても,

遠位部に解離腔を残すこととなる.残存解離の進展,拡

大,血栓化の程度,真腔と偽腔の関係に注意をする.A

型解離術後症例における遠位部残存偽腔のうち,46~78

% で開存の持続が認められ188-191),術後生存かつ瘤径拡

大を認めないものは 3,5,8年で 75 %,59 %,43 % と

報告されている92).ステント留置を含めた再手術の適応

を検討する必要がある.

c.再手術の頻度(初回手術は慢性期,急性期の両方を含む)

日本胸部外科学会の 2002~2003 年度における年次報

告によれば再手術後の在院死亡率は 17~21 % である173,157).

また,近年の諸家の報告では再手術率は 8~10 % 程度

である192,193).再手術の原因の 80 % 以上が破裂,再解離,

瘤の拡大などによる192-194).初回手術後 5,10,15 年に

おいて再手術回避率は 94 %,64 %,35 % との報告あ

り194).

1)はじめに

胸部大動脈瘤における手術例と非手術例での内科治療

について記述する.本邦では,この領域に関しての大規

模な臨床試験などはほとんど行われておらず,主に欧米

から報告されている成績を参考にした(表 13).

2)内科治療における基本的な注意事項

①動脈硬化性危険因子の管理

胸部大動脈瘤の手術例・非手術例に関わらず,高血圧

症,高脂血症(特に高コレステロール血症),糖尿病,

高尿酸血症,肥満ならびに喫煙などの動脈硬化性危険因

子を有していることが多く,動脈硬化の促進予防および

生命予後の改善を図るために,これらの危険因子につい

て十分に患者に指導しつつ,治療および管理することが

重要である.

胸部大動脈瘤非手術例での降圧目標は,収縮期血圧で

105~120 mmHg と通常の高血圧症患者に比較して低値

にすべきとされている195).腹部大動脈瘤非手術例の場合

も高血圧症ガイドラインで奨励されている正常血圧値以

胸部大動脈瘤2

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1603

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

下に管理することが望ましい.この際の血圧値には,家

庭内での血圧測定値による観察が有用とされる.

マルファン症候群の胸部大動脈瘤非手術例を対象にβ

遮断薬(プロプラノロール)を用いたランダム試験で,

同薬が瘤の拡大や大動脈イベントならびに死亡率を有意

に抑制し,また,腹部大動脈瘤非手術例を対象とした試

験でも同様に良好な成績が得られていることから,β遮

断薬が第一選択薬と考えられている197).最大投与量のβ

遮断薬を用いても降圧が不十分である場合,他の降圧薬

(カルシウム拮抗薬,α遮断薬,アンジオテンシン変換

酵素阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬,利尿薬,

中枢性交感神経抑制薬など)を適宜に追加投与し,目標

の血圧まで降圧を図る必要がある.

②動脈硬化性合併疾患の管理

胸部大動脈瘤および腹部大動脈瘤の手術例・非手術例

に関わらず,大動脈瘤症例では,脳血管障害,頚部動脈

疾患,冠動脈疾患,腎(動脈)硬化症,下肢動脈疾患お

よび他部位の大動脈瘤などの動脈硬化性疾患を有してい

ることも多い.特に,冠動脈疾患の合併は高率であり,

胸部大動脈瘤症例では約 25 %,腹部大動脈瘤症例では

50 % にみられる.したがって,全身の主な動脈病変の

合併についての検索を行うことが重要である.有意な動

脈病変が認められた際には,その治療法についても検討

する必要がある.

3)非手術例における内科治療

①症状と徴候

胸部大動脈瘤症例の大部分は,基本的に「無症状」で

ある.検診や他疾患で受診した際に胸部 X 線写真や CT

検査や心エコー図検査で偶然に発見されることが多い.

また,胸部大動脈瘤では他の大動脈疾患との合併も多く,

特に約 4分の 1かそれ以上に腹部大動脈瘤がみられるこ

とから,最初に胸部大動脈瘤と診断された際には,少な

くとも全症例で CT 検査や MRI を行い,胸腹部大動脈

の全体の評価をしておくことが重要である195).

瘤径の拡大に伴い,胸腔内の他臓器が圧排されること

によって,1)大動脈基部や上行大動脈の拡大による大

動脈弁閉鎖不全症,2)気管や主気管支の圧排による咳,

息切れ,喘鳴,反復性の肺炎,3)食道の圧排による嚥

下障害,4)反回神経の圧迫による嗄声,5)胸腔内の周

囲臓器の圧迫や肋骨への浸蝕による胸痛や背部痛などの

様々な症状を呈することもある.

症状発現時には,瘤径の拡大進行が示唆されるため,

CT 検査や MRI(MR angiography)などによる画像検査

を早急に行う.また,重篤な状態を示唆する大動脈解離

や破裂の徴候として,胸部や背部や頚部または腹部に突

然の激痛やショック状態をきたすことがあり,緊急 CT

検査を行い,他疾患との鑑別または以後の対応を決定す

る必要がある.CT 検査が行えない場合には,経食道心

エコー図検査またはMRI を用いて対応する195).

②経過観察中での血圧管理

β遮断薬を主体とした各種降圧薬により,厳重な血圧

管理を必要とする.降圧目標は収縮期血圧で 105~120

mmHg にすべきである195).

③経過観察中での運動制限

喫煙,暴飲暴食,過労,睡眠不足,精神的ストレスな

どを避けるよう指導する.また,急激な血圧上昇や動脈

内圧上昇をきたすような重量物の挙上や牽引などによる

急激な血圧や動脈内圧上昇を生じるような急な等張性運

動は避けるべきである.

胸部大動脈瘤の非手術例では大動脈解離を合併するこ

とがあり,その多くは通常の運動強度で労作や安静と無

関係に発症するとされるものの,少数例では等張性運動

時に発症することが知られている198).他にも,排便時で

のいきみ,持続する咳き込みなども急に血圧を上昇させ

ることから,注意を払うよう指導する.

しかし,十分な降圧薬の治療下で,トレッドミルなど

の運動負荷時に収縮期血圧 180 mm Hg を越えないと確

認し得た場合には,軽度のランニングやエアロバイクな

どの有酸素運動は許容される195).

表 13 胸部大動脈瘤における内科治療のエビデンス

Class Ⅱa

1.非手術例における降圧目標:収縮期血圧で 105~120mmHg (Level C)

2.手術例における降圧目標:収縮期血圧で 130 mmHg以下 (Level C)

3.非手術例における降圧薬の第一選択薬:β遮断薬

(Level C)

4.等張性運動の制限 (Level C)

5.軽度の有酸素運動は可能である (Level C)

6.非手術例における画像検査(CT 検査または MRI)による経過観察

瘤径の拡大(-)の場合は年に 1 回 (Level C)

瘤径の拡大(+)の場合は 3~6 ヶ月に1回(Level C)

7.画像検査(CT 検査またはMRI)による経過観察

術後 3 ~ 6 ヶ月後の評価 (Level C)

術後 1 年毎の評価 (Level C)

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061604

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

④経過観察中での画像検査による評価

胸部大動脈瘤の破裂時期や瘤径の拡大速度を予測する

ことは困難である.胸部大動脈瘤での破裂の危険因子は,

1)下行・腹部大動脈径,2)高齢,3)疼痛,4)慢性閉

塞性肺疾患とされている.また,胸部大動脈の瘤径が 5

~6 cm での心血管事故率は年間 6.5 %,6 cm 以上で年

間 15.6 % とされる95).マルファン症候群や他の大動脈

炎などを合併しない胸部大動脈瘤患者では,瘤径の拡大

速度は 0.4 cm/年と報告されている95).

このために,定期的に CT 検査または MRI を用いて,

瘤径(最大短径)や形態の変化を評価する必要がある.

胸部大動脈瘤と診断された時点から 6ヶ月後に画像検査

を行い,瘤径などに変化がみられない場合には,年に 1

回の定期的観察が必要である.しかし,次回検査時に瘤

径の拡大が認められた場合には,3~6 ヶ月後に画像検

査を行う必要がある195).

また,日本胸部外科学会の 2003 年度調査報告による

死亡率は非破裂性胸部大動脈瘤 2585 例中 117 例(4.5

%),胸腹部大動脈瘤 276 例中 37 例(13.4 %),破裂性

胸部大動脈瘤 392 例中 108 例(27.5 %),胸腹部大動脈

瘤 64 例中 21 例(33 %)であったことから,経過中に

瘤拡大を認めた場合,早期の外科治療が望ましい.

4)手術例における内科治療

①臨床症状と徴候

手術例でも臨床症状発現時には非置換部位での大動脈

の拡大や人工血管吻合部の仮性瘤または破裂が疑われる

ため,非手術例と同様の対応が必要である.

②血圧管理

手術例でも,降圧目標は収縮期血圧で 130 mmHg 以

下が望ましい.

③運動制限

人工血管置換部位の強度は十分であると考えられるも

のの,非置換部位大動脈や吻合部の瘤化を回避するため

には,非手術例にほぼ準じた軽度の運動制限も必要と考

えられる.

④画像評価

術後 3~6 ヶ月に CT 検査や MRI で術後の状態を評価

し,以後 1年毎に経過観察することが望ましい.しかし,

人工血管置換術後の症例に不明熱を伴う場合には,グラ

フト感染が疑われるために早急に造影 CT 検査を行う必

要がある.

また,日本胸部外科学会の 2003 年度調査報告による

再手術例での死亡率は上行,弓部,下行大動脈置換術後

132 例中 21 例(15.7 %),胸腹部大動脈置換術後 19 例

中 4 例(21.1 %)と高率であるが,画像診断上異常が認

められた場合には早期手術が望ましい.

外科的な胸部大動脈の切除,置換術の歴史は DeBakey

がホモグラフトによる胸部下行大動脈置換を行った

1950年代まで遡り207),今日の胸部大動脈瘤及び Stanford

A 型大動脈解離の治療のゴールドスタンダードである.

胸部大動脈手術のほとんどを占める対象疾患は大動脈

解離および真性大動脈瘤である.両者の手術には疾患に

特異的な点もあるが,解剖学的には同部位の手術であり,

共通するところも多い.

以下の項では,まず部位別の基本的な手術及び補助手

段について真性瘤の手術を中心に「2.胸部大動脈の基

本的な術式と補助手段」で述べ,「3.大動脈解離」では,

急性,慢性大動脈解離の外科的管理の特異的な点を加え

た.「4.大動脈解離,真性大動脈瘤の外科治療の成績」

で,近年の外科治療の成績について概観した.

①基部・上行大動脈

a.標準的な手術法

基部,上行大動脈瘤に対する手術術式は,瘤化の範囲,

大動脈弁の状態,Valsalva 洞の状態,瘤の病理(結合織

疾患,炎症性疾患,解離の有無)などを考慮して,代表

的な手術としては,弁付グラフトによる基部置換術,大

動脈弁置換と上行大動脈置換術,チューブグラフトによ

る上行大動脈置換術などが選択される208).解離による急

性大動脈弁閉鎖不全に対する交連部吊り上げについては

大動脈解離の項で述べ,比較的新しい術式である大動脈

弁温存手術については下に別に言及する.ハイリスクの

真性上行大動脈瘤患者に対する上行大動脈ラッピングは

選択肢ではあるが,長期のフォローアップのデータは比

較的少ない209,210).基部・上行大動脈置換術では開心術

に準じた心停止が必要となる.遠位側吻合については,

大動脈解離の場合,多くの外科医がクランプを用いない

open distal anastomosis211)を推奨しており,真性瘤におい

てはそれは腕頭動脈より近位での大動脈遮断が危険ない

しは不可能と考えられる場合のオプションとなる.

胸部大動脈の基本的な術式と補助手段2

外科治療33

はじめに…胸部大動脈の外科治療の概観1

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1605

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

冠状動脈の再建法については,冠状動脈周囲の大動脈

壁を直接人工血管に吻合する Bentall 原法,冠状動脈口

を Carrel patch にして人工血管に縫い付ける button

Bentall 法,小口径の人工血管を介在させて両冠状動脈

を再建する Cabrol 法,短い人工血管を介在させる

Piehler 法などがある212,213).術者の好み,経験が強く影

響すると考えられるが,Bentall 原法は出血した場合の

コントロールが難しく,Cabrol 法では閉塞のリスクがあ

るとして,Button Bentall を好む外科医が多いようであ

る212).ただし再手術,炎症などで冠状動脈の授動が危険

ないし不可能な場合に人工血管を介在させるのは有効な

術式である.Valsalva 洞に拡大が無く,かつ大動脈弁を

置換する必要がある場合,弁置換と上行大動脈置換をそ

れぞれ行う手術は弁付グラフトによる基部置換と遠隔成

績に差は無い214).基部置換術,大動脈弁置換術の場合の

人工弁の選択については弁膜症のガイドラインに譲る.

b.大動脈弁温存基部置換術

1990 年代から脚光を浴びている大動脈弁温存手

術215,216)の Bentall 型の手術に対する理論的な利点は,人

工弁関連合併症が減ると期待されることであり,理論的

な危惧は,温存された大動脈弁の長期の耐久性と,手術

の複雑さによる operative mortality,morbidity の増加であ

る.Bentall 型の手術と大動脈弁温存型の手術のランダ

ム化比較試験はまだ出版されていない.レトロスペクテ

ィヴな比較では,David がマルファン症候群の患者にお

いて大動脈弁温存手術で弁関連合併症が減る可能性を示

唆した217).その他のレトロスペクティヴな研究では概ね

臨床的に重要な転帰で差は出ていない218,219).現在まで

のところ Bentall 型の手術か,大動脈弁温存手術かいず

れかの手術を強く薦めるエビデンスは乏しいといえる.

②弓部大動脈

a.標準的な手術法

弓部,遠位弓部大動脈瘤への到達法は体外循環(CPB)

確立が容易,確実な脳および心臓の保護,同時心臓手術

が可能,開胸の回避,などの利点により胸骨正中切開法

が一般的である.一方,末梢側へ進展した遠位弓部大動

脈瘤には左開胸法を用いる.変法として,胸骨正中切

開+左開胸,胸骨正中+横切開+左開胸(ドアオープン),

両側開胸+胸骨横切開,などがある.大動脈再建範囲は

hemiarch 置換,弓部分枝を一部含む弓部部分置換,弓部

分枝を全て含む弓部全置換に分けられる.Hemiarch 置

換では,超低体温循環停止法(HCA)ないしは逆行性

脳灌流法(RCP)下に末梢側から吻合する.弓部全置換

において,弓部分枝再建は個別再建法220)あるいは島状

再建法による.弓部分枝分岐部に動脈硬化性病変が多く,

かつ止血の容易さから前者が一般的である.選択的順行

性脳灌流法(SCP)下では,最初に末梢側吻合を行い,

中枢側吻合,弓部分枝の順に再建する220).RCP の場合

は,後述のごとく,先に弓部分枝を再建し,末梢,中枢の

順に吻合する221,222)脳保護法については下に別に述べる.

b.脳保護法

弓部再建中の補助手段は HCA223)を基本とするが,時間

的制約がある227).特に弓部全置換においては長時間の脳

保護を必要とするため,より安全な方法として SCP220,224)

ないしは RCP225,226)が追加され成績も向上した227).

¡)SCP

18~22℃程度の HCA 下にバルーン付きカニューラを

右腕頭動脈+左総頚動脈±左鎖骨下動脈に挿入し,10

ml/kg/分を目安に順行性に脳を灌流する.

™)RCP

18 ℃の HCA 下に CPB のシャント回路を利用し,上

大静脈(SVC)経由で中心静脈圧(CVP)15~20 mmHg

を目安に逆行性に脳を灌流する.

SCP,RCP の長短は,SCP:順行性のため生理的,時

間的安全限界が長い,必ずしも超低体温の必要がない,

RCP:逆行性のため非生理的,時間的安全限界が短い,

超低体温が必要,カニュレーションの必要がなく,塞栓

症を回避できる,である.時間的制限のないことから

SCP を用いる施設が多い.RCP の場合には,脳虚血時

間の短縮をめざし“arch first technique”221,222)を用いる.

左開胸法の場合は,HCA ないしは HCA+RCP268)を用い,

proximal open technique 下に弓部を再建する.

③胸部下行~胸腹部大動脈

a.標準的な手術法

到達法は通常は第 5~6 肋間左開胸下に下行大動脈瘤

に到達するが,近位下行大動脈瘤に対しては第 4~5 肋

間開胸,横隔膜近傍の遠位下行瘤の場合には第 7~8 肋

間開胸を用いる.胸腹部大動脈瘤の場合には,第 5~6

肋間開胸から腹部に至る spiral incision 下に到達する.

横隔神経の温存目的に横隔膜を弧状に切離し,腹部大動

脈へは後腹膜腔か,経腹膜的に到達する.大動脈再建法

は末梢側から再建する報告228)も見られるが,通常は脊

髄虚血時間を短縮するため分節遮断法229)を用い,中枢

側から再建する.肋間動脈や腹部分枝は 8 mm の小口径

人工血管を用い個別に再建するか,島状に一括再建する.

マルファン症候群においては遠隔期に島状再建部の瘤形

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061606

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

成を認めることが多く,個別再建を原則とする230).以下,

特に重要な問題である補助手段,脊髄保護,腹部臓器保

護についてそれぞれ述べる.

b.補助手段

単純遮断下の再建も可能であるが231),一般的には脊髄

および腹部臓器保護のため部分体外循環(F-F バイパ

ス)229)ないしは部分左心バイパス232,233)による遠位側灌

流(distal perfusion)を用いる.不測の大出血や低酸素

血症への対応の点で前者の利用率が高い.両者の違いは

人工肺の有無にありヘパリン使用量が異なるが,後者に

おいても heparin-coating circuit が開発され,閉鎖回路で

あれば同程度の heparin 量ですむ.一方,弓部近傍の中

枢側遮断困難例や再手術による剥離困難例に対しては,

超低体温循環停止法を用いる場合もある234,235).

c.脊髄保護法

可能であれば術前に MR や CT などの非侵襲的血管造

影により Adamkiewicz 動脈を同定し,術中の肋間動脈

再建,温存の手掛かりとする236).広範囲胸腹部大動脈瘤

の場合には,前日ないしは術当日に脳脊髄液ドレナージ

を行い術後 3日間継続する237).術中は先の遠位側灌流を

行うと同時に,運動性脊髄誘発電位(MEP)や体性知

覚電位(SSEP)により脊髄虚血をモニタリングする238-240).

再建は脊髄虚血の短縮のため分節遮断法を用いる.また,

術前検査や術中モニタリングを参考にしながら,第 8胸

椎~第 1腰椎の肋間(腰)動脈を積極的に再建する.こ

れに硬膜外冷却を追加する方法241)もある.一方,超低

体温による脊髄保護法もある234,235).その他,明かなエ

ビデンスはないが,ナロキソン242),バルビツレート,マ

ニトール,副腎皮質ホルモン,パパベリン,テトラカイ

ン,カルシウム拮抗剤,アデノシンなどの脊髄保護効果

が報告されている.

d.腹部臓器保護法

胸腹部大動脈瘤においては,部分体外循環回路の側枝

からバルーン付きカニューラを用いて各腹部分枝の選択

的持続灌流を行う.腎保護に関しては,冷却リンゲル液

灌流の有用性が報告されている243,244).

1)急性大動脈解離

①手術の原則

内膜亀裂を含んだ大動脈人工血管置換術を行う.すな

わち,上行大動脈に内膜亀裂が存在するならば上行大動

脈置換,弓部に内膜亀裂が存在すれば,近位弓部置換術,

弓部全置換術,近位下行大動脈に存在するならば,弓部

全置換術+真腔内に elephant trunk 留置245),あるいは下

行大動脈置換術を行う.急性大動脈解離において内膜亀

裂直接閉鎖術で対応できる症例はほとんど存在しない.

近年,手術成績の向上に伴って,A 型解離のうち内膜亀

裂が弓部あるいは弓部分枝,下行大動脈に存在する場合

やマルファン症候群に伴う A 型大動脈解離には弓部全

置換に elephant trunk 法を併用した拡大再建術が施行さ

れるようになり,その成績は概ね良好である.以下に各

術式を述べる.

②上行大動脈置換

胸骨正中切開にて上・下大静脈脱血,大腿動脈あるい

は腋窩動脈送血による体外循環を補助手段として用い

る.送血部位は大腿動脈を選択する場合が多いが,脳,

腹部臓器などの malperfusion を合併している場合には送

血路を複数にして,腋窩動脈および大腿動脈送血を併用

することがある.また,左室心尖部より送血を行う報告

もある.上行大動脈に内膜亀裂が存在する場合,軽度低

体温,大動脈遮断下に上行大動脈置換を行うことも可能

であるが,脆弱な解離大動脈に遮断鉗子を置くと,大動

脈損傷をきたすため,極力控えるべきである.現在の標

準的な補助手段は中枢温を 20 ℃以下に冷却する超低体

温循環停止法246)である.このとき上大静脈送血を追加

する逆行性脳灌流法を併用することもある.手術は超低

体温循環停止としたところで上行大動脈を切開し,内膜

亀裂の位置を確認し,これを切除する.置換範囲を決定

して人工血管置換を行うが,末梢側吻合には大動脈遮断

を行わず,超低体温循環停止下に open distal anastomosis

法を用いる.また,内膜亀裂が上行大動脈遠位側あるい

は弓部近位側に存在する場合には,内膜亀裂を切除して,

腕頭動脈より左総頚動脈起始部付近まで大動脈弓小弯側

に切開を延長し bevel した人工血管に置換する hemiarch

置換を行う.中枢側の偽腔が残存する際には外膜側を

Teflon felt で補強して断端形成を行い,人工血管を縫着

する.末梢側も偽腔が残存する場合には,偽腔を閉鎖す

るように中枢側同様に断端形成を行って,真腔にのみ血

流が流入するように人工血管を吻合する.

③弓部全置換

内膜亀裂が弓部に存在する場合には,以前は内膜亀裂

切除を行わずに上行大動脈置換(hemiarch 置換を含む)

にとどめる報告もあったが,内膜亀裂切除を原則とする

大動脈解離3

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1607

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

大動脈解離の治療という観点からはできる限り上行~弓

部全置換が望ましい247-249).また弓部の解離が複雑で,

弓部の修復が必要な場合,malperfusion で弓部分枝の血

流維持が困難な場合,また,弓部分枝自体に内膜亀裂が

存在する場合も弓部全置換の適応となる.マルファン症

候群に発生した A 型大動脈解離においては内膜亀裂が

上行大動脈に存在していても,hemiarch 置換を行った場

合,残存する弓部大動脈の拡大が認められることがある

ため,弓部全置換を積極的に考慮する250).近年,内膜側

からの補強,吻合部のリーク予防,末梢解離腔の閉鎖目

的に下行大動脈の真腔へ径 18~22 mm の人工血管を 5

~10 cm 内挿して吹き流し様にする elephant trunk 法245)

を併用することで良好な成績を得たとの報告がある.ま

た,A 型大動脈解離の中には,内膜亀裂が下行大動脈に

存在する例251)もあり,それに対する術式は左開胸で内

膜亀裂を切除して遠位弓部,下行大動脈置換を行うより

も,胸骨正中切開による弓部全置換+elephant trunk 法を

行うことで,末梢側偽腔の血栓閉鎖化が可能である252).

弓部全置換の手術手技は,最初に末梢側の残存解離腔を

閉鎖するよう断端形成を行い(大多数の症例は elephant

trunk 法でこれを達成する),4 分枝付き人工血管を縫着

する.ついで,中枢側吻合を行って,弓部 3分枝を順次

再建する.この際の補助手段として,最近では循環停止

法よりも選択的脳灌流法246,253)を用いる施設が多くなっ

てきた.

④大動脈弁逆流への対処法

a.大動脈弁吊り上げ

解離の進展により,大動脈弁交連部が離開し,弁尖が

左室方向に下垂し,弁逆流が発生する.マルファン症候

群などに合併する大動脈弁輪拡張症や,器質的大動脈弁

病変を有する症例以外では,大動脈交連部を吊り上げ,

冠動脈遠位側で人工血管と吻合,近位側の遺残解離腔は

生体接着材料で閉鎖する術式が可能である 254).最近

GRF glue の formalin 過剰使用による吻合部大動脈組織

の壊死に起因する仮性瘤の報告があり,適正な使用方法

が望まれる.諸家の報告でも大動脈弁吊り上げ術の遠隔

成績は Bentall 手術と比較しても遜色なく,術後 QOL を

鑑みると先ず試みられるべき術式かと考えられる255,256).

b.大動脈基部置換

内膜亀裂が Valsalva 洞深く侵入している症例,既に大

動脈弁輪拡張(annulo-aortic ectasia: AAE)を伴っていた

症例などでは,従来から Bentall 手術が適応とされ,現

在も標準術式である255)が,最近は自己弁温存基部置換

術(remodeling: Yacoub257),reimplantation: David258))が試

みられる様になった.

⑤断端形成術

急性解離において人工血管との吻合部の剥離内膜,お

よび外膜は極めて脆弱なため,外膜の破綻による出血,

剥離内膜の内膜亀裂による新たなエントリーの発生を予

防するため,周到な断端形成を行う必要がある.解離腔

に生体糊(GRF: Gelatine resorcine formalin,Bioglue:

albumin-glutaraldehyde)を注入し,剥離内膜,外膜を補

強する方法が一世を風靡した259)が,その組織毒性が原

因の仮性動脈瘤発生の報告が相次ぎ,その使用方法,適

応については反省期に入っている260).断端補強には通常

テフロンフェルトを外膜上,あるいは内膜,解離腔にも

置く方法,大動脈外膜を断端で折り返す advential

inversion 法等,種々の方法が報告されている.人工血管

との吻合に際しては,通常はポリプロピレン糸の連続縫

合で人工血管と吻合するが,結節マットレス縫合,連続

縫合に結節マットレス縫合を追加する方法なども報告さ

れている.

⑥急性大動脈解離の分枝灌流異常

急性大動脈解離の病態を複雑化,重症化させている主

要原因であり,20~40 % の症例で,大動脈あるいは,

分枝の真腔が圧迫されたり,分枝口の閉塞などにより,

様々な症状で発現する47,261,262).これらのうち,冠動脈

異常は 5~10 %,弓部分枝は 30~40 %,腹部分枝は 30

% 前後,下肢領域は 30 % を占めると報告されている.

治療の原則は大動脈解離が不安定な挙動を示せば,大

動脈修復が先決で,末梢血管病変への介入は 2次的に行

う47).分枝灌流異常を合併した症例に対する大動脈解離

修復術の成績は不良で,早期死亡 30~50 % と報告され

ている.また,虚血に陥った主要分枝数が,早期及び遠

隔成績に悪影響を及ぼしたという報告が多い.

冠動脈血流異常は右冠動脈に多く発生するが,重症度

は勿論のこと左冠動脈で高い.

弓部分枝灌流異常は解離発症時の TIA, stroke で顕ら

かとなるが,A 型急性解離の大部分は弓部分枝そのもの

まで解離が及び,3 分枝すべて解離無しという症例の方

が少ない.解離発症時に一時的に意識消失を伴うのが

40 % 程度と言われるが,大部分の症例で弓部分枝末梢

にリエントリーが発生するために,永続する神経学的傷

害を残すことは 20 % に満たない.問題となるのは,意

識障害,片麻痺などの神経学的兆候が持続し,かつ,解

離そのものが非常に不安定な症例で,手術適応に悩むこ

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061608

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

とが多い.かかる症例の在院死亡率は 36.2 %~55.9 %

に達し263),特に頚動脈の血流消失は予後不良の徴候であ

り,生存率は 10 % を越えない264).

腹部分枝も 4本とも正常という症例の方が珍しく,何

らかの灌流異常は常に発生している.小腸,大腸は腹腔

動脈,上腸間膜動脈の二重支配を受け,かつ豊富な側副

血行路を有することから,腸管壊死を来すことは比較的

稀であるが,重篤な malperfusion が 5 % 前後に発生し,

壊死腸管の切除が必要となる.しかし,その治療成績は

きわめて不良で死亡率は 60 % 以上である.腸管虚血が

体外循環によって増悪するため,かかる症例においては

例外的に壊死した腸管に対する処置を優先すべきで,冠

動脈虚血,心タンポナーデ,破裂など,近位側大動脈解

離の挙動が不安定な場合にのみ,近位側の大動脈直達手

術を先行するべきであるという見解261)もある.また,

左右腎動脈も片側が閉塞することは稀ではないが,腎機

能不全を来すことは多くない.

患者の高齢化に伴い,不十分な側副血行や,腎機能不

全を合併する症例などが増加するに従い,血管造影によ

る早期診断の重要性は増してきた.治療にあたり,従来

までは腹部大動脈瘤開窓術,あるいは腹部分枝へのバイ

パス術が行われてきたが,昨今,この領域における

interventional radiology の進歩は瞠目すべきもので,バル

ーンカテーテル開窓術,stenting などの成績は日進月歩

で,IVR の成功率 90 % 以上,早期死亡率 30 % 以下と

の報告265,266)もある.

下肢灌流異常についても,catheter intervention による

開窓術が主流となりつつあるが,外科的に fenestration

を作成したり,大腿-大腿動脈,腋窩-大腿動脈バイパ

ス術などの非解剖学的バイパスを作成する方法も行われ

ている.

2)慢性大動脈解離

慢性解離例に対する手術手技は原則的に急性解離例に

対するのと同一である.しかしながら,大部分の症例が

待期的手術を施行されることに加えて,急性例に比較し

て大動脈壁がより強固で大動脈吻合がより容易であり,

かつ広範囲に偽腔が拡大瘤化しているため,大動脈の置

換範囲を拡大する拡大再建術,すなわち上行,弓部大動

脈置換術あるいは,胸部大動脈置換術を施行する傾向に

ある.以下,病型に応じた手術手技について述べる.

①A 型解離

遮断鉗子による脆弱な大動脈壁の損傷の予防,より病的

大動脈壁の切除のため,循環停止下に,末梢側吻合を行

う“open distal anastomosis”が一般的に用いられる.

a.大動脈逆流の修復

¡)大動脈弁置換術

急性解離では約 80 % の症例に大動脈弁尖吊り上げ術

により AR が修復されるが慢性例で弁輪拡大を呈してい

る症例には通常の大動脈弁置換術が必要である.

™)弁付き人工血管による大動脈基部置換術

バルサルバ洞が拡大した annuloaortic ectasia(AAE)

に解離が合併した症例では,冠動脈の再建を伴う弁付き

人工血管による大動脈基部置換術を行う必要がある.こ

の際,button technique が一般的に用いられている.

£)自己大動脈弁温存術式( aortic valve sparing

operation)

バルサルバ洞が拡大しているか,解離が大動脈基部に

進展し,大動脈基部置換を必要とする症例のうち,大動

脈弁尖が正常な症例では,最近,自己大動脈弁の温存術

も行われている.

b.人工血管による大動脈再建

大動脈病変の置換範囲により以下の大動脈再建の術式

が選択される.

¡)上行大動脈置換術

内膜亀裂が大動脈弁直上の上行大動脈に存在する症例

が適応となる.テフロンフェルト補強による中枢側偽腔

の閉鎖後,超低体温下循環停止法(deep hypothermic

circulatory arrest: DHCA)±逆行性脳灌流法(retrograde

cerebral perfusion: RCP)下に循環停止とし,open distal

anastomosis を行う.グラフト側枝より順行性送血,加

温を行いつつ,中枢側吻合を行い,上行大動脈を置換する.

™)上行・部分弓部置換術(hemiarch replacement)

内膜亀裂が腕頭動脈(IA)付近の弓部大動脈の小弯

側に存在する症例が適応となる.前述の如く open distal

anastomosis を行うが,内膜亀裂を含む弓部大動脈を斜

めに切除し,偽腔を閉鎖し,弓部大動脈の小弯側を部分

的に置換する.

£)上行・弓部大動脈置換術(total arch replacement)

内膜亀裂が弓部大動脈に存在する弓部大動脈解離例,

弓部大動脈の破裂あるいは巨大な偽腔例,弓分枝動脈の

閉塞例,内膜亀裂が下行大動脈中枢側にあるⅢ型逆行解

離例,重篤な合併症を有しない若年者のマルファン症候

群が適応となる.一般的に 60 分以上の脳保護を必要と

する弓部大動脈全置換術の症例には選択的脳灌流法

(selective cerebral perfusion: SCP)を用いるのが安全であ

る.直腸温 22 ℃前後で体循環を停止した後,IA および

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1609

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

左総頚動脈(LCCA)に SCP を開始する.下行大動脈の

真腔と偽腔の隔壁を切除した後,人工血管を挿入し

elephant trunk とし,四分枝付き人工血管と大動脈断端を

吻合,左鎖骨下動脈(LSA)を再建,側枝より順行性送

血および加温を開始し,中枢側を吻合後,IA および

LCCA を各々の側枝に吻合する.

¢)大動脈基部を伴う上行・弓部大動脈置換術

マルファン症候群の AAE に伴う DeBakey Ⅰ型解離が

適応となる.弁付き人工血管による大動脈基部置換を行

い,次いで SCP 使用下に前述の如く elephant trunk を伴

う弓部大動脈全置換術を行う.後述する如く,二期的に

左開胸下に下行大動脈置換あるいは胸腹部大動脈全置換

術を行う.

②B 型解離

片側挿管麻酔下に左開胸下に大腿動静脈部分体外循環

(F-F バイパス)を補助手段として下行大動脈を置換する.

¡)下行大動脈置換術

内膜亀裂部が LSA 末梢側の下行大動脈に存在する多

くの B 型解離例が適応となる.内膜亀裂を含む下行大

動脈を部分的に切除し,偽腔を閉鎖した後,人工血管に

て下行大動脈を置換する.

™)open distal anastomosis による部分弓部・下行大動脈

置換術

内膜亀裂が弓部大動脈に存在する症例,あるいは中枢

側遮断が不可能な症例が適応となる.F-F バイパス法に

て 20 ℃前後に冷却した後,循環停止とする.弓部大動

脈を開放下に LSA の中枢側の弓部大動脈を離断した後,

人工血管と吻合する.吻合終了後,グラフト側枝より脳

灌流および加温を再開する.グラフト末梢側を吻合後,

LSA と人工血管側枝とを吻合する.

£)胸腹部大動脈置換術

前述の如くマルファン症候群の DeBakey Ⅰ型解離例

で elephant trunk technique を伴う上行,弓部大動脈置換

術後に LSA 直下の下行大動脈より腹部大動脈分岐部直

上まで偽腔がびまん性に瘤化した症例が適応となる.

Crawford Ⅱ型の広範囲胸腹部大動脈全置換術を必要と

するが,手術死亡率および対麻痺の合併が高率であるこ

とから,周到な外科治療の strategy が必要である.F-F

バイパスによる遠位側大動脈灌流,脳脊髄液ドレナージ,

腹部主要分枝動脈(腹腔動脈,上腸間膜動脈,および左

右腎動脈)の選択的灌流による臓器灌流下に分枝付き人

工血管を用い,分節的に大動脈を遮断し,Th8~Th12肋

間動脈の可及的再建に加え,腹部主要分枝動脈の再建を

行う.なお,中枢側大動脈遮断が困難な症例,あるいは

分節的大動脈遮断が困難な症例では,DHCA 補助下に

大動脈再建を行う.

1)大動脈解離の外科治療の現況と成績

画像診断法の進歩による大動脈解離発症直後の早期診

断が可能となり,補助手段の改良による弓部置換,さら

に最近では GRF 生体糊やステントグラフトの導入によ

り,治療成績も向上している181,267,268).最近 6 年間の国

内施設における外科治療成績を文献から検索した.施設

により成績に差があり,また,Stanford A/B の病型,急

性期手術か慢性期手術かによっても異なるが,最近では

急性 A 型解離手術の hospital mortality は 10 % 前後に向

上している.急性 A 型解離に対する諸家の手術成績は

院内死亡 5~32.5 % と報告され,2002 年度の日本胸部

外科学会の集計でも,2247 例中 348 例,15.5 % の死亡

率を数える.また,急性 B 型解離の早期死亡は 26~50

% に昇り,2002年の本邦でも 118例中 32例,27.1 % と

不良である.急性 A 型大動脈解離における手術死亡の

危険因子として,術前ショック,malperfusion,術前の

脳障害,術中の大量出血等が挙げられる.また 80 歳以

上の高齢269)は手術死亡の危険因子となり,その在院死

亡は 80 % を越える報告もある.今後,かかる症例に対

する成績の向上が急務であると考えられる270,271,272).

2)真性胸部・胸腹部大動脈瘤の手術治療の成績

部位別の手術成績を,近年の主な真性瘤の待機手術を

主とした英文のシリーズ172,176,212,217,251,273-291)からと,

2003 年の本邦の胸部外科学科の集計292)から非解離の待

機手術の成績を表にして別に記す(表 14).2003 年の

胸部外科学会の集計は日本で実際に行われた胸部大血管

手術の殆どをカバーしていると思われ,信頼性の高いデ

ータである.

上行,基部大動脈瘤に対する待機的な人工血管置換術,

Bentall 型の手術,大動脈弁温存基部置換術の周術期の

成績は一般的に良好である212,217,273-275,293).急性大動脈解

離を除いた上行大動脈瘤,基部大動脈瘤の死亡率の報告

は 0~8 %,平均 3 % 程である212,217, 273-275, 293).2002 年の

本邦の集計では死亡率 3.3 % であった292).

弓部大動脈瘤については,死亡に加えて脳合併症が臨

床的に重要な転帰である.手術成績は近年の成績では死

亡率 2~19 %,平均 6 % 程,脳合併症は永続する脳梗塞

の報告が 3 %~18 % である276-278, 280, 282, 285).本邦集計では

死亡率 8.9 % であった292).

大動脈解離,真性大動脈瘤の外科治療の成績4

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061610

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

胸部下行,胸腹部大動脈瘤の手術に関しては,置換領

域の肋間動脈の血流が一時的または永続的に途絶えるこ

とによる脊髄の虚血のための対麻痺が,臨床的に重要な

転帰となる.胸部下行については英文文献で手術死亡

率は 3~12 %,平均 6 % ほど251,283,284,286,287),本邦集計で

は 5.4 %,胸腹部大動脈瘤では死亡率 7~11 %,平均 9

% ほどである176,285,288-291).本邦集計では 15.6 % であっ

た292).対麻痺の危険は瘤の範囲により大きく異なり,

Crawford Ⅱ型で特に危険であるが,臨床的な胸腹部の

シリーズでの発生の報告は 2~27 %,平均 10 % ほどで

ある176,285,288-291).

早期死亡のリスクファクターとなる術前因子として,

緊急手術,年齢,腎不全,脳血管障害などが多くの報告で

ほぼ一致して同定されるものである172,176,212,217,251,273-291).

非破裂性腹部大動脈瘤は原則として無症状であるの

で,検診などで偶然指摘されることが多い.一方,破裂

すると救命できるのは僅かに 10~15 % でしかないた

め294),無症状の状態での診断・治療が重要な疾患のひと

つである.

腹部大動脈瘤の治療目的は①動脈瘤の破裂,②動脈瘤

由来の末梢塞栓,③動脈瘤による凝固障害といった三つ

のリスクを予防することである.なかでも,破裂を予防

し生命予後を伸ばすことは最も重要である.腹部大動脈

瘤の破裂がさし迫っていない場合は,破裂リスクを回避

するための内科治療を行い,破裂の可能性が増大した瘤

では,外科治療を優先することが原則となる.

1)動脈瘤の破裂リスク

腹部大動脈瘤の破裂リスクの評価は,動脈瘤径・拡張

速度,動脈瘤形状,疫学的因子で評価する.

①動脈瘤径・拡張速度

動脈瘤の最大横径が大きくなるほど壁張力が増加し,

5.088,197,295)あるいは 5.5 cm を超えると破裂する可能性が

増大する294,296)(表 15,図 18).

拡張速度も動脈瘤径に影響され,表に示した拡張速

度 295)より著しく速く拡張する瘤は破裂の危険が高い

(表 16).

②動脈瘤形状

大動脈瘤の形状では紡錘形の動脈瘤よりも嚢状の動脈

瘤の方が破裂の危険が高い297).また,瘤の一部が突出し

ている形状も破裂し易い298,299).最近は,局所の壁張力

の計算値で瘤破裂の危険をさらに詳細に予測する研究が

行われている300,301).

表 14

上行 811 27( 3.3)

上行 + 弓部 1055 89( 8.4)

弓部 + 下行 274 29(10.6)

下行 445 24( 5.4)

胸腹部 276 43(15.6)

バイパス 12 1( 8.3)

ステントグラフト 358 25( 7.0)

1)経カテーテル 262 15( 5.7)

2)open stent a)弓部置換を伴う 37 4(10.8)

b)弓部置換を伴わない 58 6(10.3)

不明 1 0( 0.0)

合計 3231 238( 7.4)

置換範囲 症例数 在院死亡

治療-腹部大動脈瘤Ⅶ

治療効果概括11

内科治療と外科治療1

腹部大動脈瘤のリスク評価2

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1611

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

③疫学的因子

欧米で行われている疫学調査では女性が男性より 3倍

動脈瘤破裂頻度が高く88,302,303),高血圧,喫煙,慢性閉

塞性肺疾患合併が破裂を助長するとされている304-306).

特に喫煙に関しては,タバコで 6.5 倍,葉巻で 6.7 倍,

手巻きタバコで 25.0 倍大動脈瘤破裂による死亡の危険

が増加する307).腹部大動脈瘤の家族歴がある場合は破裂

の危険が増加する29).

2)動脈瘤による末梢塞栓のリスク

腹部大動脈瘤の 3~29 % に末梢動脈塞栓症が合併す

ると報告されている308-310).小さい径の大動脈瘤は膝窩

動脈瘤同様塞栓症や閉塞が問題となる310,311).しかし,

腹部大動脈瘤が末梢の塞栓源となるかどうかの予測は困

難である.

3)動脈瘤による凝固障害のリスク

腹部大動脈瘤により血液凝固因子が消費され消費性凝

固障害が発生することがある312).動脈瘤のサイズが大き

いほうが凝固因子の異常を示す傾向が高いが,異常値を

示しても出血傾向を示すとは限らない312,313).臨床的に

出血傾向が生じている場合は,肝疾患や血液疾患などの

血液凝固障害を示す疾患を除外した後,動脈瘤による消

費性凝固障害を疑う.

大動脈瘤はひとたび発生すると拡張を続ける傾向があ

る(図 19)302,314).しかし,大動脈瘤が発生しても,破

表 15 推定破裂率(年)

< 4 0

4 ~ 5 0.5 ~ 5

5 ~ 6 3 ~ 15

6 ~ 7 10 ~ 20

7 ~ 8 20 ~ 40

> 8 30 ~ 50

腹部大動脈瘤径(cm) 破裂率(%/年)

J Vasc Surg, 37; 1106-17, 2003. より引用

図 18

60

非破裂生存率(%)

3.0 - 3.9 cm

4.0 - 5.5 cm

> 5.5 cm

初回瘤径計測よりの時間(月) N Engl J Med, 348; 1895-901, 2003. より引用

100

75

50

25

00 12 24 36 48

表 16 動脈瘤推定拡張率

3 ~ 3.9 2.0

4 ~ 4.9 3.4

5 ~ 5.9 6.4

大動脈瘤径(cm) 拡張率(mm/年)

Br J Surg, 85; 1674-80, 1998. より引用

内科治療3

図 19 腹部大動脈瘤手術治療の割合

経過観察期間8

Lancet, 352;1649-55, 1998.より引用 N Engl J Med, 346; 1437-44, 2002. より引用

1.00

0.75

0.50

0.25

0

Early surgery

Surveillance

0 1 2 3 4 5 6経過観察期間

Off-protocol

Surveillance group

Immediate-repair group

100

90

80

70

60

50

40

30

20

10

00 1 2 3 4 5 6 7

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

裂の危険があるサイズに拡張しなければ,本来症状がな

い疾患だけに,患者の QOL に与える影響は少ない.5

cm 以上のサイズになった動脈瘤は破裂の危険があり,

手術リスクが高い患者以外は外科的治療が優先する.内

科的治療では径が 3~5 cm の大動脈瘤の拡張をいかに抑

えるかという点で治療効果を評価することになるが,明

らかに有効な治療薬はまだ開発されていない(表 17).

1)禁煙(ClassⅡa,Level B)

喫煙は瘤の拡張速度を 20~25 % 増加させるとも言わ

れており,禁煙で動脈瘤拡大のリスクは低下する295,315-317).

喫煙者の腹部大動脈瘤破裂あるいは破裂による死亡は,

非喫煙者や禁煙者より高いことが確認されている88,307).

2)β遮断薬(ClassⅢ,Level B)

β遮断薬で大動脈瘤の拡張を抑えることができるとの

報告がなされた197).その後,大規模な研究が行われたが

Propranolol は大動脈瘤の拡張速度を落とすことができな

かった上に,患者の QOL も低下させた184).

3)抗生剤治療(ClassⅡ ,Level C)

動脈硬化の発生メカニズムに感染が関連するとの報告

があるため,現在 Chlamydia pneumoniae に有効な抗生

物 質 で あ り , metalloprotease の 抑 制 剤 で あ る

Deoxycycline が大動脈瘤拡大の抑制に効果があるかどう

かの試験が行われている318).マクロライド系抗生物質の

Roxithromycin 投与が 12 ヶ月後の大動脈瘤拡張を抑えた

との報告がある319)が,まだ大規模試験となっていない.

4)降圧治療・高脂血症治療

高血圧は腹部大動脈瘤と関連あるとの報告がある一

方,関連ないとの報告も見られる306,320,321).降圧剤や抗

高脂血症薬が動脈瘤の拡大を抑えたという RCT 試験の

報告はない.

5)その他

抗酸化ビタミン類(α-tocopherol(vitamin E)やβ-

carotene)は動脈硬化の促進を抑え,大動脈瘤の進展も

抑えられる可能性があるとの仮説で,その効果が検討

されたが,喫煙者の大動脈瘤の破裂を抑制できなかっ

た322).

1)手術適応(表 18)

腹部大動脈瘤の外科治療は,疾患の手術適応に加えて,

患者の手術リスクや生命予後を考慮して決定する.

表 17 腹部大動脈瘤に対する内科的治療

Class Ⅱa

1.禁煙 (Level B)

Class Ⅱb

1.Deoxycyclin (Level C)

2.Roxithromycin (Level C)

3.降圧治療 (Level C)

Class Ⅲ

1.Propranorol (Level B)

外科治療22

非破裂性腹部大動脈瘤1

表 18 非破裂腹部大動脈瘤手術適応

男性最大横径> 5.5 cm(Level B)ClassⅠ

女性最大横径> 5 cm(Level B)

拡張速度> 5 mm/6ヶ月 腹痛・腰痛・背部痛などのClassⅡa 最大横径> 5 cm(Level C)(Level C)有症状(Level C) 感染性動脈瘤(Level C)

最大横径 4~5 cm(手術危 塞栓源となっている動脈瘤険度が少なく生命予後が見 (Level C)ClassⅡb込める患者,経過観察ので 出血傾向を示す動脈瘤きない患者)(Level C) (Level C)

ClassⅢ 最大横径< 4 cm(Level C)

最大横径 拡張速度 症状 その他

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1613

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

①最大横径

5.5 cm 以下の動脈瘤に対する治療方針を決定するため

の RCT が二つ報告されたが302,314),いずれも経過観察群

と早期手術群との間に遠隔期生存率の差はなかった.一

方,経過観察群の 60 % 以上が試験期間中に手術となり,

多くの動脈瘤は拡大することも確認できた323).このため,

手術リスクの少ない患者,あるいは,十分な経過観察を

行うことが不可能な患者では,4~5 cm のサイズでも手

術適応とする場合がある.また,女性の破裂率が男性の

3 倍もあったことより,女性の場合は手術適応となる瘤

径を男性より小さく設定する.

②拡張速度,症状

拡張速度は瘤径により異なる(表 16).RCT はないが,

拡張率 5 mm/6 ヶ月以上で手術とする意見が多い324,325).

有症状の動脈瘤は破裂の危険があり手術適応と考えられ

る326,327).

③特 殊

末梢への塞栓源となっている瘤は横径が小さい瘤に多

く見られる310,311).頻回に塞栓症が認められる場合は手

術を考える.感染性瘤は破裂の可能性が高いため,手術

治療を行う.凝固異常の原因となっている瘤は手術適応

となる312).

2)手 術

①術前評価

a.大動脈瘤・合併する動脈瘤の評価

95 % の腹部大動脈瘤は腎動脈分岐以下に生じるが328),

腎動脈直下より拡大する瘤があり腎動脈分岐上部での大

動脈遮断を必要とする.その他,12 % に合併する胸部

大動脈瘤329),腎動脈下極枝の存在,約 1/4に合併する内

腸骨動脈瘤328),3.5 % に合併する末梢動脈瘤(大腿動脈,

膝窩動脈)330)を CT で確認する.

b.手術リスクの評価

腹部大動脈瘤の手術死亡率に影響する因子として,患

者の心機能,肺機能,腎機能,年齢,瘤の腎動脈との位

置関係,内腸骨動脈瘤合併の有無,大動脈壁の石灰化の

程度,炎症性動脈瘤,術者の経験がある88,331-336).多数

の手術を行っている専門施設で腹部大動脈瘤の待機手術

治療を行う場合は,成績は良好で,手術死亡率は 1~5

% と報告されており,本邦では 1 % 以下との報告も多

い337).専門施設に限定しない場合は,手術死亡率は 4~

8 % と高くなる333,335,338-343).

c.虚血性心疾患の評価

腹部大動脈瘤患者は高頻度に虚血性心疾患を合併する

ため344),ACC/AHA の非心臓手術患者の周術期心臓評価

のガイドラインでは高リスク群に分類されている.心筋

梗塞の既往・発症からの期間,狭心症の頻度・程度,心

不全の程度,不整脈,腎不全の有無,糖尿病の有無,高

血圧の程度,心電図上の Q 波・ST 変化,高齢といった

因子で,臨床的重症度を低リスク群,中間リスク群,高

リスク群に分け,さらに,日常生活における活動性で 3

群に分けることで,リスクの高い症例に負荷心筋シンチ

グラムや負荷心エコー検査を経て,あるいは直ちに冠動

脈造影を行う345).

高リスク群に周術期β遮断薬346,347)や statin348)を投与

することで,術後の心筋梗塞の発生を押さえることがで

きると報告されている.冠動脈狭窄例に術前に冠血行再

建を行うかどうかは議論がある.負荷心筋シンチで中~

高度の心筋虚血がある症例では,冠血行再建を行うこと

で,遠隔期の生存率が伸びるとの報告されている349).一

方,LMT が 50 % 以上の狭窄,EF が 20 % 以下の左室不

全,高度の大動脈弁狭窄を除外した,安定した冠動脈病

変の患者では術前に冠動脈血行再建を行っても,周術期

の急性心筋梗塞,あるいは遠隔期死亡は減少しなかっ

た350).「安定した冠動脈病変」の診断基準や,β遮断薬,

statin,抗血小板剤などの効果の評価に関しては今後の

検討課題である.

1)診 断

腹痛・背部痛があり,ショック状態で腹部に拍動性腫

瘤を認めた場合は,腹部大動脈瘤の破裂を疑う.30 %

は誤診されているとのデータもある351).超音波検査は動

脈瘤の存在診断には必須であるが,破裂の診断感度は落

ちる.CT は確定診断に有用であるが,高速 CT であっ

ても手術までの時間のロスとなるので,診断が確定しな

い場合に限るとの意見もある.CT で後腹膜血腫が証明

できなくても,腹部大動脈瘤患者で原因不明の腹痛・背

部痛がある場合は救急手術を考慮する.

2)治 療

大動脈瘤破裂の診断がついたならば,可能な限り早く

手術室に搬送し,大動脈を遮断して出血をコントロール

することが最も重要なポイントである.大動脈遮断前に

輸血・補液で血圧を上昇し過ぎることは一旦被覆された

破裂性腹部大動脈瘤2

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061614

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

破裂孔からの再出血につながるため,80 mmHg 程度に

抑える352,353).

通常は開腹し,血腫の状況で腹腔動脈上部の大動脈あ

るいは腎動脈下部の大動脈を遮断し,出血をコントロー

ルする.後腹膜アプローチを推奨する意見もある354).動

脈瘤破裂の手術ではヘパリンは原則として使用しない.

閉腹は一次的に行うこと多いが,腹腔内圧が上昇し腹部

コンパートメント症候群となる可能性が強い場合は,

delayed closure を行う355).

3)治療成績

血管外科の手技や病態生理の理解に伴う術後管理が進

歩したにもかかわらず,腹部大動脈瘤が破裂した場合の

治療成績の向上はみられていない.病院へ到着した患者

でも死亡率は 40~70 % である356-358).循環不全に伴う多

臓器不全,呼吸不全,腎不全を合併するうえ,破裂例で

は結腸の虚血が生じる場合が 3~13 % に見られ359,360),

高率に致命的な合併症となる.

腹部大動脈瘤の術後の遠隔生存率は 5 年で約 70 % と

年齢,性で補正した,腹部大動脈瘤のない一般人口の生

存率約 80 % より低くなっている341,361-365).10 年生存率

は約 40 % である.腹部大動脈瘤の患者は術前より心

疾患,COPD,高血圧,高脂血症,脳血管障害,癌など

の合併が多く,これらが術後の生命予後も規定してお

り302,366),術後の遠隔死因の 2/3 は心・脳・血管疾患で

ある.生存率に影響を与える因子は,年齢,心疾患(心

不全,狭心症,心電図上の虚血,陳旧性梗塞,左室肥大,

不整脈),高血圧,COPD,腎機能,継続する喫煙であ

り341,364),術後これらの管理が必要となる.

大動脈解離に対するカテーテル・インターベンション

は,急性解離に伴う malperfusion syndrome に対しての経

カテーテル的開窓術(fenestration)や狭窄した真腔や分

枝血管へのベアステント留置から開始され,当初は外科

治療の補助療法として行われていた266,367).

一方 1991 年に腹部大動脈瘤に対するステントグラフ

ト(stent-graft)留置術が報告され368),1994 年には胸部

大動脈に対する経験が報告された369)が,大動脈解離に

対しては積極的には施行されていなかった370).しかし

1999 年に,エントリー(entry)閉鎖目的のステントグ

ラフト内挿術と外科治療の成績の比較371)や,急性大動

脈解離に対する本治療の初期成績272)が報告され,その

低侵襲性と従来の外科治療に劣らない初期成績により注

目を集めた.

腹部大動脈瘤外科治療後遠隔期生存率3

カテーテル・インターベンション療法Ⅷ

大動脈解離(表 19)11

はじめに1

表 19 大動脈解離に対するカテーテルインターベンション療法

Class Ⅰ

1.カテーテルインターベンション療法後慢性期の経過観察(画像診断を含む) (Level C)

2.外科手術チームのバックアップ (Level C)

Class Ⅱ a

1.大動脈解離により真腔が圧迫され虚血に陥った分枝血管に対するステント留置 (Level B)

*急性期例では発症早期での治療が重要

2.急性 B 大動脈解離真腔閉鎖例に対する発症早期でのカテーテル的開窓術 (Level B)

3.外科手術適応を有する Stanford B 型慢性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖

(Level B)

4.解離に伴う合併症を有する Stanford B 型急性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖

(Level B)

5.逆行性解離による Stanford A 型急性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖 (Level B)

Class Ⅱ b

1.Stanford B 型慢性大動脈解離の外科治療ハイリスク症例に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖

(Level B)

2.急性大動脈解離真腔狭窄部に対するステント留置(Level C)

3.将来の瘤化防止を目的とした Stanford B 型急性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖

(Level C)

Class Ⅲ

1.解剖学的適応条件を満たさない例への使用 (Level B)

2.分枝血管が明らかに static compression により虚血に陥っている Stanford B 型急性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖 (Level C)

3.主要分枝が偽腔から灌流されている Stanford B 型慢性大動脈解離に対するステントグラフトによるエントリー閉鎖 (Level C)

*カテーテル的開窓術を同時または先行させて施行する場合はClass Ⅱ b Level C

*以上はカテーテルインターベンション療法に習熟している施設であることが前提となる.

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本邦ではステントグラフト留置術は,胸部大動脈に対

し早期より比較的多くの施設で臨床応用がなされてきた

が,主に真性瘤に対して行われ,大動脈解離に対しては

慢性期の瘤化した症例や ULP をもつ限局解離症例など

に行われることが多く,欧米で破裂・切迫破裂例や臓器

虚血例など緊急例に対し積極的に留置されているのと対

照的である372-374).

現在のカテーテル・インターベンションにおいては,

ステントグラフト留置によるエントリー閉鎖が主流とな

っているが,その適応,使用デバイス,留置手技等は施

設により未だ一定していない.しかし欧米では胸部大動

脈に対する業者製のステントグラフトが認可され,本格

的な大規模臨床研究が既に開始されており,早期,中期

成績の報告が増えつつある.

本稿では最近の動向を取り入れた大動脈解離に対する

適応,治療手技を示したい.

1)適 応

主に急性解離に伴う malperfusion syndrome に対して行

われる.

リエントリー(re-entry)がないか,または小さいと

偽腔の内圧が真腔より上昇し偽腔により真腔が圧排さ

れ,閉塞や狭窄が起こる.経カテーテル的開窓術は,偽

腔から真腔への血流口を作成または拡張し,真腔に対す

る偽腔内圧を相対的に低下させることにより真腔閉塞や

狭窄を解除することを目的としている.また解離が及ん

だためおこる分枝血管の閉塞,狭窄のうち偽腔の圧によ

り血管内腔が圧迫されて起こるもの(dynamic narrowing)

についても偽腔の減圧により改善する可能性がある110).

分枝動脈の狭窄に対しては,開窓術やステントグラフ

ト留置によるエントリー閉鎖に併用して分枝動脈にステ

ントを留置することがある.または単独に急性期または

慢性期に留置する場合もある.

一方真腔の狭窄に対しては,開窓術後の補強として,

または単独にステントやステントグラフトが留置されて

いたが,現在はエントリー閉鎖が優先され,エントリー

閉鎖が不可能な特殊な場合にのみ施行されている.

2)方 法

①経カテーテル的開窓術

閉塞または狭窄している分枝動脈近傍の剥離内膜を狭

窄した腔(通常は真腔)から拡張した腔(通常は偽腔)

へガイドワイヤーの硬い先端部または穿刺針

(Brockenborough, Colopinto など)を貫通させ,これをガ

イドに直径 12~15 mm,長さ 20~40 mm のバルーンカ

テーテルを挿入しバルーンの拡張により剥離内膜を裂い

てリエントリーを作成する.

②ステント留置術

虚血に陥った分枝動脈の内腔へ通常の PTA の手法に

準じて挿入・留置する.分枝動脈の内腔への留置は,拡

張力や程度が調節しやすいバルーン拡張型が用いられる

ことが多いが,狭小化した大動脈にステントを留置する

場合は,真腔の拡大が持続する可能性があり,自己拡張

型が選択される.

3)治療成績

Slonim らは臓器虚血(腸管,腎,下肢等)を伴った

急性大動脈解離 40例に対し,ステント留置のみを 24例

に,ステント留置とバルーン開窓術の同時施行を 14 例

に,バルーン開窓術のみを 2例に施行し成績を報告して

いる265).虚血領域の改善は 37 例 93 % で成功している

ものの,10例 25 % が腸管虚血や偽腔の破裂などにより

30 日以内に死亡しており,早期成績に影響する有意な

因子は 3臓器の虚血の合併と発症からインターベンショ

ンまでの時間であったと述べている.

1)適 応

本法の大動脈解離,解離性大動脈瘤に対する適応は未

だ意見の一致を見ていないが,基本的には外科手術が必

要であるが従来の開胸手術ではハイリスクと考えられる

慢性期例を最も良い適応とする施設が多い372,375).

一方急性大動脈解離では,挿入手技による脆弱な剥離

内膜(intimal flap)の新たな内膜亀裂の発生376,377)や血

管損傷が危惧されるが,狭窄した真腔や分枝動脈の拡大

が容易に得られるという利点がある180,272,378).現在のと

ころ有症状の大動脈解離に対し緊急でステントグラフト

を挿入している施設は,本邦では限られているが欧米で

は積極的に行われ始め,最近の欧州よりの 131例の報告

では,破裂,拡大,分枝動脈閉塞などの有症状例が 57

% を占め,46 % が緊急留置であった374).破裂例,臓器

虚血合併例や,エントリーが下行大動脈に存在し解離が

逆行性に上行大動脈まで及んでいる逆行性解離による

Stanford A 型症例では手術成績が不良なことより症例

によっては急性期でも本治療の適応と考えられてきてい

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1615

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

経カテーテル的開窓術,狭窄または閉塞真腔,分枝血管に対するステント留置術

2

ステントグラフト内挿術によるエントリー閉鎖術3

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る180,379).

本法では閉鎖すべきエントリーの前後でステントグラ

フトが大動脈壁と十分に圧着固定される部分(landing

zone)が必要で,圧着固定が不十分であれば,血液がす

きまを通りエントリーに流入してしまう(エンドリー

ク:endoleak).このため十分な landing zone を得ること

が必要で閉鎖可能なエントリーの部位は限定される.一

般には,中枢側はエントリーが左鎖骨下動脈分枝部より

1~1.5 cm 以上末梢にあるものが適応とされ,末梢側は

脊髄虚血の予防のため,腹腔動脈直上までの留置は控え

る施設が多い.

また慢性期には真腔が変形,狭小化し内膜が肥厚硬化

しているためステントグラフトの留置直後は真腔の十分

な拡大が得られないこと380)や分枝動脈が偽腔より灌流

されている場合はエントリーの閉鎖により虚血に陥るこ

とも問題点として挙げられ180),症例によってはカテーテ

ルによる分枝動脈部での開窓術の作成を行っている381).

2)方 法

詳細は真性大動脈瘤に対する治療の項に譲るが,本邦

では胸部大動脈に留置するステントグラフトは,現在業

者製のものは使用できず,各施設で自作されている.

ステントグラフトに用いるステントは形状が変化する

真腔に留置するため,恒久的に拡張力が得られる自己拡

張型が主流で Z-ステントが用いられることが多い.材

質は自作例ではステンレスが用いられることが多いが,

業者製のステントグラフトでは形状記憶合金の nitinol

が主流となっている.被覆材料は thin wall の Dacron

graft が用いられているが,一部の施設では内膜亀裂へ

のフィットの良さから e-PTFE graft も用いられている.

ステントグラフトの delivery system には 18~24 Fr サ

イズの Teflon sheath が用いられ,最近はあらかじめカテ

ーテルの先端にステントグラフトを pre-load しておき留

置目的部位にカテーテルを進め放出する system が広ま

っている375,382).

放出時には胸部大動脈内の強い血流によりステントグ

ラフトが末梢側に流されること(distal migration)が最

大の問題点となる.真性大動脈瘤に対する治療で詳記す

るが,ATP 投与による一時的心停止法383),バルーンに

より上,下大静脈を閉塞し心拍出量を軽減する方法384),

ステントグラフトを deployment 終了後に離脱させる

(stabilizer)方法385)等の工夫が行われている.

3)成 績

最近の治療成績373,374,377)を見てみると,初期成功率は

70.8~94.4 %,エンドリーク発生率は 2.8~19 %,早期

死亡率は 2.7~13 % と報告されている.これらの報告で

は,急性例が 43~67 % を占めているが,急性期治療の

率が高くなるほど成績が不良な傾向を示したが,差がな

いとの報告も認めた374).また合併症の発生率は 10.8~33

% と報告されているが,脳梗塞,対麻痺などの発生頻

度は真性瘤にくらべ低率で,対麻痺の発生は 0~0.8 %,

脳梗塞の発生は 0~4.2 % と報告されている.

治療後の偽腔の状態の報告は少ないが,Shimono ら377)

は 6ヶ月以上,平均 21.5ヶ月の観察期間で 36例中胸部

偽腔の縮小を 88.9 % に,消失を 59.3 % に認めたと報告

している.

遠隔成績の報告は未だ少なく,2 年程度の中期成績が

報告されつつある.Shimono らは 37 例,平均 24.5 ヶ月

の観察期間で,2 年後の実測生存率は 97.3 %,心血管事

故回避率は 78.3 % と報告し,Hansen ら373)は 24 例の治

療例における 2年間の遠隔死亡率は 17 % で,4例に追加

手技が,2例に外科手術が必要であったと報告している.

4)おわりに

大動脈解離に対するカテーテル・インターベンション

は,ステントグラフトによりエントリー閉鎖が可能とな

り,適応が広がり治療成績が進歩した.しかし適応や成

績は施設ごとに異なり,施設ごとの経験に依存している

のが現状である.今後は業者製のデバイスの導入により

施行施設が拡大すると考えられるが,施行医の研修・認

定システムの整備等が必要となると思われる.また未だ

遠隔成績の報告は少なく遠隔期の問題点は不明である.

遠隔成績の詳細な分析が待たれる.

多くの胸部・腹部大動脈瘤に対する経カテーテル的血

管内治療(ステントグラフト治療)の報告が術後初期の

安全性とその効果を証明している374,386-398).加えて出血

量が少なく合併症の頻度が低いことから ICU 滞在や入

院の期間が短縮され,早期回復が得られる等も報告され

ている.腹部大動脈瘤に関しては, p r o s p e c t i v e

randomized trial399,400)の成績が 2004年に報告されている.

これらの trial はステントグラフト治療と外科手術の初

期治療成績を比べたものであるが,いずれもステントグ

ラフト治療の優位性を示している.胸部大動脈瘤に関し

ては,いまだ prospective randomized study の結果は報告

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061616

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

(真性)大動脈瘤22

はじめに1

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されていないが,腹部大動脈瘤に比べ外科手術の成績が

不良であることを考えると,カテーテル治療と外科手術

のいずれも可能な症例を対象とする場合,腹部大動脈瘤

と同様の結果が予測できる.

中期予後(3~6 年)についても外科手術と変わりな

いとする報告も多いが391,392,396,398,401-404),エンドリーク,

再治療,外科手術への変更,瘤破裂などの報告も絶えず,

決して経過観察を怠るべきでない405-412).それゆえ,初

期成績の優位性をもってステントグラフト治療を第一選

択とする理由にはならず,遠隔期を含めた randomized

study が待たれる.

現段階では,従来治療である外科手術の適応を基本と

し(別項参照),これにステントグラフト治療が可能な

解剖学的条件が付加される.以下にステントグラフト治

療に必要な解剖学的条件と,本治療が外科手術より望ま

しいと考えられる病態を列記する.

1)腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の解剖学的適応

①適 応

a.20~22 Fr のカテーテルシースの挿入が可能であるこ

と,

b.腎動脈下腹部大動脈(中枢側 landing zone)の径が

19~26 mm であり,かつ 15 mm 以上の長さが存在す

ること,

c.同部位の屈曲が 60度以下であること,

d.総腸骨動脈(末梢側 landing zone)の径が 8~16 mm

で,長さが 10 mm 以上であること.(図 20)

②除 外

両側総腸骨動脈瘤の合併

2)胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の解剖学的適応

①適 応

a.20~24 Fr カテーテルシースの挿入が可能であること,

b.landing zone の長さが 20 mm 以上で,径は 38 mm 以

下であること,

c.landing zone は,ほぼ直線的であること.(図 21)

②除 外

動脈瘤による圧迫症状をともなう大動脈瘤(嗄声を除

く,気管・気管支,食道の圧迫等).

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1617

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

図 20 腹部大動脈瘤・ステントグラフト治療に関する decision tree

腹部大動脈瘤  ・φ≧ 50 mm        ・急速拡大≧ 10 mm/年

・腎動脈下腹部大動脈瘤・腎動脈下大動脈に Landing zone ≧ 15 mm (Landing zone 直下に)Angulation ≦ 60°・総腸骨動脈の拡大なし≦φ 15 mm     Landing zone ≧ 10 mm

合併症あり

ステントグラフト内挿術

合併症なし 手術困難 手術可能

保存療法 手術治療

あり なし

解剖学的適応

ステントグラフト治療に対する患者の希望

Extra-anatomicalbypass

弱い・なし あり なし 強い

図 21 胸部大動脈瘤・ステントグラフト治療に関する decision tree

・動脈瘤中枢・末梢にφ 20 mm 以上の Landing zone  (左鎖骨下動脈分枝部は Landing zone に加える) ・Landing zone の angulation ≦ 30° ・Landing zone のφ≦ 36 mm

合併症あり

ステントグラフト内挿術

合併症なし 手術困難 手術可能

保存療法 手術治療

あり なし

解剖学的適応

ステントグラフト治療 の患者希望

Extra-anatomicalbypass

弱い・なし あり なし 強い

下行大動脈瘤   ・φ≧ 60 mm 胸腹部大動脈瘤  ・急速拡大≧ 10 mm/年          ・≧ 50 mm +有症状

適 応2

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3)ステントグラフト治療が望ましいと考えられる病態

①臓器障害を伴う症例

術前より脳血管疾患,心疾患(低心機能,重症冠動脈

疾患,重症不整脈等),低肺機能ならびに肝・腎障

害(肝硬変,慢性腎不全,透析症例等)を併存する症

例,あるいは再手術症例では外科的治療のリスクが高

い283,284,286,418-421).これらの臓器障害併存例に対しては特

にステントグラフト治療の初期成績は外科手術に比べて

明らかに良好であるという報告が多い374,391-398,422-427).

②緊急症例

破裂あるいは切迫破裂はステントグラフト治療のよい

適応と考えられる.腹部大動脈瘤のみならず428-432),胸

部大動脈瘤破裂においても良好な臨床成績が報告されて

いること433-439)を考えると,使用機器の準備状況次第で

積極的な適応と考えてよいものと思われる.また,外傷

性大動脈損傷は多発外傷(脳損傷,内臓出血,骨盤出血

など)を伴うことから,体外循環使用の手術に比しステ

ントグラフト治療の成績が明らかに良好である.

4)ステントグラフト治療と外科手術の選択について

現在のところ,胸部あるいは腹部大動脈瘤の治療とし

て,外科手術かステントグラフト治療かの選択は,両者

とも可能であるという条件下であれば,十分なインフォ

ームドコンセントのうえで患者の希望に依存すると考え

られる.(図 20,21参照)

近年,高度なカテーテル・インターベンション治療に

おいては,学会主導で施設基準や術者の資格認定が行わ

れることが多くなってきた.大動脈疾患に関するカテー

テル・インターベンション治療についても,適切な施行

資格を学会主導で定める必要がある.

腹部大動脈瘤に対するカテーテル・インターベンショ

ン治療(ステントグラフト)の代表的な方法を記載する.

1)代表的な方法

①到達経路

ステントグラフト本体を治療部位(大動脈瘤)まで運

搬するためには,18~24 Fr のシースカテーテルが通過

する到達経路(アクセスルート)が必要である.このア

クセスは大腿動脈を露出穿刺あるいは切開にて行なう

が,これが不可能な場合は腸骨動脈あるいは腹部大動脈

が用いられる.麻酔法については局所麻酔,硬膜外麻酔,

全身麻酔があるが,その優劣に関しては結論が得られて

いない.アクセスルートが極度に屈曲している場合,ガ

イドワイヤーの使用方法が重要となる.一般的には,

stiff wire を用いてアクセスルートを直線化する方法と,

上腕動脈-大腿動脈間に pull through wire を挿入してシー

スを通過させる方法がある.

②ステントグラフトの内挿

大動脈瘤部位にステントグラフトを内挿する際,血流

によりステントグラフトの位置がずれ,正確に内挿でき

ない場合がある.これを防ぐ目的で a. ニトロプルシッ

ド等の薬剤による降圧,b. ATP 等を用いた一時的心停

止,c. 大静脈の balloon occlusion 等による心拍出量の低

下が行なわれている.また,運搬システム自体の工夫と

して,a. ステントグラフトを包み込んだ膜(wrapping)

を中央部から開いて拡張させるシステム,b. ステントグ

ラフト先端に特殊なスタビライザー等を設け,先端部分

が最後に全拡張するシステム等が臨床応用されている.

腹部および胸部大動脈瘤に対する代表的なステントグラ

フト内挿法を図 22,23に示す.

2)ステントグラフト治療における工夫

①開窓(fenestration)

ステントグラフトの中枢側あるいは末梢側の固定範囲

(landing area)を確保するため,胸部大動脈瘤において

は左鎖骨下動脈,左総頚動脈,腹腔動脈を,また腹部大

動脈瘤においては腎動脈をこえてステントグラフトを内

挿する場合もあり,この際に,主要分枝の起始部位のみ

グラフト部分を切り取った fenestrated stent graft を使用

することがある.これにより主要分枝の血流を確保しつ

つ,landing area の延長を図ることができる.

②枝付きステントグラフト

井上らがステントグラフト開発当初からその有用性を

強調してきたもので,詳細は開発者の著書に拠る.本法

は挿入方法がやや煩雑で,塞栓症に伴う中枢神経系の合

併症発生率が高いとする報告があるが,近い将来,弓部

大動脈瘤や胸腹部大動脈瘤など治療難易度の高い領域に

おける一手法として定着する可能性が高い.

③非解剖学的バイパス+ステントグラフト内挿

Landing area 確保のためにやむなく閉鎖することにな

る主要分枝に対しては,上行大動脈あるいは腹部大動脈

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061618

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

施行施設,術者の条件3

ステントグラフト治療の方法4

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1619

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

図 22 腹部大動脈瘤に対するステントグラフト移植術

a. 右上腕動脈-右大腿動脈間に pull through wire を完成させる.b. ステントグラフト(main graft)を腎動脈下腹部大動脈から右総腸骨動脈にかけて移植する.c. 短脚(左脚)に左大腿動脈から穿刺にてカテーテルを挿入する.d. この短脚側に追加のステントグラフト(leg)を追加挿入し,動脈瘤を exclusion する.

図 23 真性下行大動脈に対するステントグラフト移植術

A B C D

a. 右上腕動脈-右大腿動脈間に pull through wire を完成させる.b. この pull through wire をガイドに,カテーテルシースを目的部位(胸部下行大動脈)に挿入する.c. 上下大静脈をバルーンにて閉鎖し,心拍出量を低下させた状態でステントグラフトを deploy する.d. ステントグラフト移植にて動脈瘤が exclusion される.

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等より非解剖学的な経路でバイパス血行再建を施行した

後,ステントグラフトを挿入する方法が多く報告されて

いる413-416,440,441).

④open stent-graft 法

本 邦においては,弓部大動脈手術の際に下行大動脈の

縫合をステントグラフトによる固定によって代用する方

法を open stent-graft 法(ステントグラフトの中枢端は,

大動脈あるいは分枝付き人工血管と縫合する)と称し,

多くの施設で行われている.本法は体外循環を用いるた

めに,低侵襲手術というわけではないが,下行大動脈の

吻合を簡略化することにより,体外循環時間を短縮し,

左開胸を行わず,反回・横隔神経損傷を回避できるだけ

でなく,人工血管移植範囲を広範囲に設定できる利点が

ある.また大動脈解離に適応する際には,残存解離腔の

予後が良好であることも報告されている296,442-445)一方で

は,通常手術に比して脊髄神経障害の発生率が高いとの

報告がある.open stent-graft 法による弓部置換方法を図

24に記す.

エンドリークは大動脈瘤に対するステントグラフト治

療における最大の問題であり,手術治療においては全く

なかった概念の合併症である.エンドリークとは,ステ

ントグラフト内挿後に,何らかの原因により大動脈瘤内

の血栓化が十分に得られないか,あるいは瘤壁に血圧の

かかる状態が継続する現象で,その発生原因より type

Ⅰ~Ⅴに分類されている(図 25).TypeⅡおよび Type

Ⅳは予後に大きな影響をもたらさないとの報告が多い.

しかし TypeⅠおよび TypeⅢは明らかに予後不良であ

り,これらのエンドリークについては適切な処置が必要

とされる.TypeⅤは endotension とも呼ばれているが,

これに関しても破裂の報告が後を絶たず,対処(治療)

が必要な type である.

腹部大動脈瘤治療初期のエンドリークは 10 % 前後に

みられ,TypeⅡがその半数以上を占める.胸部大動脈

瘤の治療初期のエンドリークも 10 % 前後あり,TypeⅠ

が中心である.遠隔期における新たなエンドリークの発

生は,腹部で 2~10 %/年,胸部で 0~8 %/年と高く,

本法施行後の経過観察が必須であることの根拠となって

いる.

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061620

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

エンドリーク(endoleak)について5

図 24  open stent-graft 法による弓部置換方法

A B C D

a. 弓部大動脈瘤b. 大腿動脈ならびに右腋窩動脈,左鎖骨下動脈,左総頚動脈より送血を施行し,弓部大動脈を腕頭動脈と左総頚動脈との間で open.c. 上行大動脈に 4 分枝付き人工血管を縫合し,続いて弓部大動脈を腕頭動脈,左総頚動脈間で切断.同部位よりステントグラフトを   下行大動脈に挿入し,挿入したステントグラフトの中枢側断端部分を,弓部大動脈壁を用いて wrapping ,吻合口を形成する.d. ステントグラフト中枢側の吻合口と 4 分枝付き人工血管を端々縫合吻合し,弓部分枝を再建する.

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1)初期治療成績

真性大動脈瘤に対するステントグラフト治療の初期な

らびに遠隔期の治療成績を表 20 に示す.ただし,報告

された症例には多くの手術不能例やハイリスク例が含ま

れており,これが初期成績ならびに遠隔期の生存率に関

して負のバイアスを作っているものと考えられる.腹部

大動脈瘤治療については幾つかの prospective randomized

study が報告されており,外科手術治療に比しステント

グラフト治療の優位性が示されている399,400).

2)遠隔期成績

胸部および腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治

療後の瘤拡大回避率は術後 3~5 年の中期で 80~90 %

で,破裂予防率は 95~98 % とされている 296,402-404).

Secondary intervention 率は 3~10 %/年と報告されてお

り446-450),外科手術の術後 5年再手術率 2~6 % とは大き

な開きがある.ステントグラフト術後に外科手術へ変更

される率(conversion rate)は,初期で 10 % 以下,遠隔

期においても 1~2 %/年程度で,多くの場合は 2回目の

カテーテル・インターベンション治療で解決することが

多い.手術治療にコンバージョンした場合の手術リスク

は,同部位の通常手術よりやや高いと報告されてい

る451-454).

1)使用機器

2005 年 9 月現在,本邦では大動脈に使用できるステン

トグラフトは薬事認可されていない.本邦では使用機器

が均一化していないことから,大動脈瘤に対するステン

トグラフト治療の成績を正確に評価することが困難であ

る.また機器の薬事認可がない現状は,品質保証やトラ

ッキングの面からも患者にとって不利益となることが多

く,早急に改善しなければならない大きな問題点である.

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1621

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

図 25 エンドリーク

TypeⅠ ステントグラフトと宿主大動脈との接合不全に基づいたリークで,perigraft leak とも呼ばれる.

TypeⅡ 大動脈瘤側枝からの逆流に伴うリークで, sidebranch endoleak とも呼ばれる.

TypeⅢ ステントグラフト-ステントグラフト間の接合部,あるいはステントグラフトのグラフト損傷等に伴うリークで connection leak あるいは fabric leak とも呼ばれる

TypeⅣ ステントグラフトの porosity からのリークで porosityleak とも呼ばれる.

TypeⅤ 画像診断上,明らかなエンドリークは指摘できないが,徐々に拡大傾向をきたすもので,endotension とも呼ばれる.

成 績6

表 20 真性大動脈瘤に対するカテーテル・インターベンション治療の急性期ならびに慢性期の治療成績

脳障害 3~5%

elective6 %

脊髄神経障害 0~5%(1.5~10.4%)

呼吸不全 3~8%TAA

腎不全 2~5%80~95% 67~90% 50~87% 5~17% 10% 14~23%

emergent12%

動脈損傷・出血・合併症 2~6%(3.8~40.9%)

エンドリーク 4~15%

1.5 % 脳脊髄障害 0~1%elective

(0~4%) 腎不全 0~3%AAA

15 % 動脈損傷・出血・合併症 5~10%90~97% 70~90% 60~80% 10% 14% 22%

emergent(10~45%) エンドリーク 2~12%

急性期 慢性期

survival Re-intervention rate死亡率 合併症

1 3 5 1 3 5

問題点と将来展望7

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2)施設・術者基準

患者に安全かつ質の高い医療を提供するためには,カ

テーテル・インターベンション治療の技術のみならず,

大動脈疾患に関する知識と外科手術を含めた治療経験が

必要である.これをふまえて,施設認定ならびに術者認

定が早急に必要な状況にある.

3)適 応(表 21)

本邦においても使用機器が均一化すれば,外科治療,

降圧治療などとの比較 randomized study が可能となり,

その適応に関するエビデンスが得られるようになり,今

後の大動脈疾患医療全体の質の向上に寄与するものと考

えられる

真性大動脈瘤に対するカテーテル・インターベンショ

ン(ステントグラフト)治療は,その低侵襲性から,外

科手術リスクのある症例を中心に適応されてきた.今後,

遠隔期を含めた治療成績が適切に評価され,外科手術に

匹敵することが明かとなれば,ステントグラフト治療が

大動脈疾患治療のスタンダードになる可能性も十分に考

えられる.より質が高く,均一性のある機器を適正に使

用することが治療成績向上の最重要事項である.

循環器疾患のリハビリテーションプログラム(以下リ

ハビリ)は,急性期から入院中の PhaseⅠ,退院早期で

発症 1~2 ヶ月の PhaseⅡ,発症 2 ヶ月以降の PhaseⅢに

わけて作成される.急性大動脈解離に対する標準化され

た医療手順の報告は少なかったが,平成 14 年度厚生労

働省科学研究費の効果的医療技術・確立推進臨床研究事

業の援助のもと,多施設で急性大動脈解離の具体的な医

療手順に関する研究の一環として,入院後の診断・治療

の標準化と早期離床に関するリハビリテーションプログ

ラムを作成し,クリニカルパスを臨床導入した455),CT

やエコーによる適切な初期診断のもとクリニカルパスの

適応も判断した.

一般に,急性大動脈解離における亜急性期の合併症は

病型や病態により予後が異なるため141,456),ひとつのリ

ハビリプログラムで対応することは困難である.大動脈

解離の亜急性期の合併症としては発症 4~24日に見られ

ることが多く,偽腔開存型では真腔の大きさが 1/4以下

の症例で分枝血管の虚血の発生が高く,偽腔閉塞型では

ULP を有する例で真腔から偽腔への再開通が多く出現

し,大動脈径が 4 cm 以上の例では,線溶凝固系の異常

が遷延したり,破裂リスクが高まったりするため,これ

らの病態を標準リハビリコースとし,その他の合併症を

起こす可能性の低い病態を短期リハビリコースとして,

2 つのリハビリコースを作成した(表 22,23,24).

尚,大動脈径が 5 cm 以上の例,FDP 40以上の例は内科

治療であっても,上記のリハビリコースは不適当であり,

個別に対応する必要がある.(表 22)

現時点で得られているリハビリのエビデンスを表 25

に示した.

安静時血圧は収縮期血圧が 130 mmHg 未満,心拍数

は 70回/分以下を目標にすることが望ましい.

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061622

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

リハビリテーション(急性大動脈解離)Ⅸ

はじめに11

まとめ8

PhaseⅠリハビリプログラム(表 24)22

循環動態1

表 21 真性大動脈瘤に対するステントグラフト治療(*解剖学的条件を充たす場合)

Class Ⅰ

1.ステントグラフト移植後慢性期の経過観察(画像診断を含む) (Level C)

2.外科手術チームのバックアップ (Level C)

Class Ⅱa

1.外科治療ハイリスク症例に対する適応*(腹部:Level B,胸部:Level C)

2.初期治療成績の向上を目的とした適応*(腹部:Level A,胸部:Level C)

Class Ⅱb

1.解剖学的条件を充たした場合の適応 (Level C)

2.小径動脈瘤(40 mm <腹部<50 mm,45 mm <胸部<60 mm)に対する適応 (Level C)

3.緊急・破裂症例に対する適応* (Level C)

Class Ⅲ

1.感染性大動脈瘤に対する適応

2.解剖学的条件を満たさない破裂例への適応

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基本的には早期離床が重要であり,炎症性胸水による

無気肺の予防や,長期臥床による下肢静脈血栓症の予防,

高齢者などでは強制的な安静による不穏や認知症の悪化

予防があげられる457).このため,他動体交は当日から可

能とし,患者視野を広くし,飲水や内服を容易にするた

め,他動 30度とした.3日目より他動 90度よりリハビ

リを開始する(表 24).

大動脈解離では腸管血流の低下から麻痺性イレウスを

発症させることがある.さらに,床上での排泄は困難で

あり,排便のコントロールが困難となり,便秘になりや

すく,イレウスの要因となる458,459).しかし,破裂の危

険性は発症 1週間ほどまでは高いため,第 6病日までは

床上とし,第 7病日にベッドサイド足踏み 2分間負荷を

クリアーした後に,ベッドサイド便器(室内トイレ)を

可能とした.

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1623

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

表 22 標準リハビリコースの対象

適応基準:Stanford A 偽腔閉塞型と Stanford B 型

・大動脈の最大径が 5 cm 未満

・臓器虚血がない

・DIC の合併(FDP40 以上)がない

除外基準(使うべきでない状態)

1)適応外の病型

2)適応内の病型であるが,重篤な合併症がある場合

3)不穏がある場合

4)再解離

5)縦隔血腫

6)心タンポナーデ,右側優位の胸水

ゴール設定(退院基準)

1)1 日の血圧が収縮期血圧で 130 mmHg 未満にコントロールできている

2)全身状態が安定し,合併症の出現がない

3)入浴リハビリが終了・または入院前の ADL まで回復している

4)日常生活の注意点について理解している(内服,食事,運動,受診方法など)

表 23 短期リハビリコースの対象

適応基準:Stanford B 型

・最大短径 4 cm 以下

・偽腔閉塞型では ULP を認めない

・偽腔開存型では真腔が 1/4 以上

・DIC の合併(FDP40 以上)がない

除外基準(使うべきでない状態)

1)適応外の病型

2)適応内の病型であるが,重篤な合併症がある場合

3)再解離

ゴール設定(退院基準)

1)1 日の血圧が収縮期血圧で 130 mmHg 未満にコントロールできている

2)全身状態が安定し,合併症の出現がない

3)入浴リハビリが終了・または入院前の ADL まで回復している

4)日常生活の注意点について理解している(内服,食事,運動,受診方法など)

表 24 入院リハビリテーションプログラム

1 標準・短期 発症~ 2 日 他動30度 ベッド上 部分清拭(介助)

2 標準・短期 3 ~ 4 日 他動90度 同上 全身清拭(介助)

3 標準・短期 5 ~ 6 日 自力座位 同上 歯磨き,洗面,ひげそり

4 標準・短期 7 ~ 8 日 ベッドサイド足踏み ベッドサイド便器 同上

5標準 9 ~ 14 日

50 m歩行 病棟トイレ 洗髪(介助)短期 9 ~ 10 日

6標準 15 ~ 16 日

100 m歩行 病棟歩行 下半身シャワー短期 11 ~ 12 日

7標準 17 ~ 18 日

300 m歩行 病院内歩行 全身シャワー短期 13 ~ 14 日

8標準 19 ~ 22 日

500 m歩行 外出・外泊 入浴短期 15 ~ 16 日

退院

ステージ コース 病日 安静度 活動・排泄 清潔

初期安静時間2 排 泄3

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入院時治療は静脈ラインからカルシウム拮抗剤の点滴

およびβ遮断剤の静注及びその内服と,ACE 阻害薬,

ARB,α遮断剤などの内服を適宜開始し,収縮期血圧

を 90 mmHg 以上 130 mmHg 未満にコントロールし,心

拍数も 70回/分未満になるようにβ遮断剤の点滴・内服

を追加することが望ましい.血圧低下により尿量の確保

ができない症例などでは,基準は緩和される.早期離床

は,譫妄の発生,炎症性胸水に伴う無気肺を予防する上

で,重要である457).血圧コントロールを十分行い,積極

的にリハビリ up に心掛ける.

リハビリテーションの開始基準としては負荷前収縮期

血圧が 130 mmHg 未満とした.負荷の合格基準は,負

荷後の収縮期血圧が 150 mmHg 未満とした.合格しな

ければ降圧剤を増量し,翌日に再施行とした.譫妄のた

め,決められた安静が守れない場合は,守れる段階のリ

ハビリ負荷を施行し,合格できれば,その段階までリハ

ビリ up を行った.本来,負荷中の血圧が最も重要であ

るため,携帯型自動血圧計が使用可能な施設では,これ

を用いて負荷中の血圧を評価し,リハビリの合格を判定

する方が望ましい457).

入院時より,部分清拭を開始し,9 日目に洗髪,標準

コースでは 15日目,短期コースでは 11日目にシャワー

浴を開始する.体を清潔に保つことは,感染のみならず

精神の安定,入院中の QOL を確保する意味で重要であ

る.また,ラジオ,テレビなどは,譫妄を予防する上で,

積極的に活用すべきである.

PhaseⅡでは入院中の安静に伴う deconditioning の改善

を主な目的に施行される.退院後の 1ヶ月間が相当する

ものと考えられるが,この時期の急性大動脈解離の治癒

過程は十分に解明されていないため,500 m 以内の軽い

散歩程度が望ましい.

PhaseⅢは社会(職場)復帰し,日常生活を行う時期

であり,発症から 2~3 ヶ月以降,退院後 1 ヶ月以降に

相当する.QOL に大きく影響を与えるため,より細か

な指導が必要となる.大動脈解離では血圧コントロール

が最も重要であるため,血圧をエンドポイントとしたト

レッドミル等の運動負荷試験により,血圧と活動範囲の

評価が必要となる.また,携帯型自動血圧計を用いた血

圧の日内変動評価も重要と考えられる.これらにより,

血圧コントロールに支障を来たさない範囲の生活活動を

指導する.血圧コントロールの目標値として,安静時

130 mmHg 未満,最大活動時でも 150 mmHg 未満が望ま

れる456).

マルファン症候群は,小児科医 Marfan にちなんで命

名された(1896年).

常染色体優性遺伝性疾患で,頻度は 15,000~20,000人

に 1 人発生するとされるが,約 20~30 % は遺伝関係が

明らかではない.

分子レベルでは microfibril の主要構成成分であるフ

ィブリリンⅠ(fibrillin-1)の異常があり460-462),フィブ

リリンⅠ遺伝子のさまざまな変異が知られている463).し

かし,遺伝子型と表現型は必ずしも一致するわけではな

い464).Microfibril は弾性線維の形成に関与するが,フィ

ブリリンⅠ遺伝子の変異により弾性線維の形成異常や構

築異常,さらには平滑筋細胞との結合に異常が発生する

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061624

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

PhaseⅡリハビリプログラム33

PhaseⅢリハビリプログラム44

表 25 大動脈解離における急性期リハビリ治療のエビデンス

Class Ⅱa

1.Stanford B 型急性大動脈解離に対する標準リハビリコース(最大短径 5 cm 未満で臓器虚血がなく FDP40 未満) (Level B)

Class Ⅱb

1.Stanford A 型偽腔閉塞型急性大動脈解離に対する標準リハビリコース(最大短径 5 cm 未で ulcer-l ikeprojection を上行大動脈に認めず,臓器虚血がなく,FDP40 未満) (Level C)

2.Stanford B 型急性大動脈解離に対する短期リハビリコース(最大短径 4 cm 未満で臓器虚血がなく偽腔開存型では最小真腔が全内腔の 1/4 を越える例あるいは偽腔閉塞型では ulcer-like projection を有しない例でFDP40 未満) (Level C)

特殊な病態Ⅹ

マルファン症候群11

概念・病理・病因1

リハビリテーションの手順4

清潔,その他5

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ことが知られている 465, 466).また,matrix metallo-

proteinase(MMP)の発現亢進による elastolysis が生じ,

弾性線維の構築の異常が助長されると考えられてい

る467).大動脈は,弾性線維を豊富に有することからこれ

らの異常の影響を強く受け,嚢胞状中膜壊死(cystic

medial necrosis)や弾性線維の構築の乱れなどの変化を

示す468,469).嚢胞状中膜壊死は大動脈中膜における局所

的な弾性線維の消失と酸性ムコ多糖類の沈着を示す病変

であり,大動脈弁輪拡張症に見られる頻度が高い21).ま

た,マルファン症候群の大動脈解離症例では非マルファ

ン症候群のものに比し嚢胞状中膜壊死や弾性線維の配列

の異常が観察される頻度が高く,本症候群における解離

の発症や進展に大きく関与している可能性が指摘されて

いる46).

マルファン症候群の特徴は,心血管病変,筋骨格異常

及び眼病変を合併し,遺伝性発症を示す全身性の結合織

形成不全疾患である(表 26).本症候群に特徴とされる

症候と遺伝性が認められるものを「典型」,満たないも

のを「不全型」と称する事がある.

1)心血管病変

大動脈弁閉鎖不全(弁の粘液変性による場合と弁輪拡

張による場合があり,約 60 % に見られる),僧帽弁逸

脱(前・後尖共に逸脱が多い)または閉鎖不全が生じ,

頻度は約 90 % と高率である.大動脈では解離

(Stanford 分類では A 型が多い)や瘤形成(上行大動脈

に多い)がある.また,大動脈瘤径 5 cm 以上では解離

の発生頻度が高くなるとされている.

2)筋骨格異常

細長い体型で身長が高く(長身),上下肢も長い.蜘

蛛状指を呈し,胸郭変形(漏斗胸)や脊椎側弯なども呈

する.関節の過伸展,自然気胸もみられ,皮膚症状では

皮膚線条等を認める.

3)眼病変

水晶体亜脱臼または偏位が特徴的(約 60 %)で,高

度近視や網膜剥離も生じる.

4)遺伝性

家族性が約 70 % で,もしくは遺伝子異常が認められ

る.第 15番染色体(15q21)にあるフィブリリンⅠ遺伝

子の変異によって起こるとされている.

5)腰仙骨部硬膜

CT スキャンまたは MR(磁気共鳴画像)で硬膜(第

5腰椎付近)の拡張が指摘されている.

欧米で出された診断基準(表 27)を参考にして,そ

れら項目をチェックして判定している470).

先ず,家族歴・遺伝歴の有無を調査する.

心血管径が最も重要で,心エコー検査で大動脈弁や僧

帽弁を観察する471).血管エコー検査では大動脈径を計測

(上行 5 cm,下行同様,腹部 4 cm で専門医へ紹介)し,

解離の有無も判定する.MRI では,腰仙骨部硬膜をチ

ェックし,胸部 X 線写真や心電図検査も行う.

身体所見で骨格・関節・筋異常の検索を行い,両腕を

広げた幅長が身長より長いことや蜘蛛状指(手首徴候=

wrist sign;対側手首を握り,親指と小指が重なる,拇指

徴候= thumb sign;親指を折り曲げた時同指尖が手掌尺

側端より出る),中手骨比(metacarpal index;第 2~5中

手骨全長と同中央部幅の比>8),側弯・胸郭変形の有無,

皮膚線条などを観察する.胸部所見では気胸の既往,ブ

ラ(bulla)の有無などをチェックする.

眼科では視力検査(近視),水晶体偏位や水晶体亜脱

臼,眼圧測定,隅角検査,視神経乳頭の観察なども併せて

行う.また,虹彩異常,網膜剥離の有無も重要である.

また,必要により遺伝子解析・分子生物学的解析も行う

(インフォームド・コンセントを得ることが必須である).

過激な運動を制限することなどが必要となるが,日常

生活は病態により異なる.病態の変化に応じて判定する

が,通常生活での制限を要することは少ない.

内科治療としては,心疾患や動脈疾患への「血圧のコ

ントロール」がある.β遮断薬が大動脈径の拡大を抑制

するとの報告から使用されるが,解離の予防に使用する

ことについては未だ客観的評価がない.しかし,血圧の

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1625

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

病 態2

表 26 マルファン症候群の特徴

骨  格:高身長,長い手足,クモ状指趾,側彎,漏斗胸,鳩胸,関節の過伸展

循環器系:僧帽弁逸脱,大動脈弁閉鎖不全,大動脈瘤,大動脈解離

眼 症 状:近視,水晶体偏位,水晶体亜脱臼,網膜剥離

そ の 他:硬膜拡張症,自然気胸

診断法3

治療法(表 28)4

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管理が必要な例では,β遮断薬を第一選択とする.

弁疾患がある場合などには,感染性心内膜炎の予防や

心不全の内科治療が必要なことがある472).

外科治療は,弁疾患や瘤に対して応用されるが,経過

観察時に時機を逸せぬように定期的に画像診断で判定す

る.大動脈の治療方針として,組織の脆弱性,解離の発

症や再手術の可能性など幾つかの配慮すべき事項があ

り,早期に積極的な手術適応(例;胸部大動脈瘤径 5

cm で手術適応を考慮)等が要請される.

また,他の合併症があれば,眼,気胸や胸郭変型など

にも各専門医の対応が必要である.

更に,本疾患の性格上,患者本人および家族への精神

的援助も,忘れてはならない対応の一つである.

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061626

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

臓器 大基準症状(高い診断特異性を有する症状) 小基準症状

表 27 マルファン症候群診断基準(Ghent 基準)

骨格系2 つの大基準項目を満たす,もしくは,1 つの大基準項目を満たし 2 つの小基準症状を有する場合,骨格系の関連症状ありと判断

発端者家族歴・遺伝歴に該当項目のない場合,少なくとも 2 臓器で大基準を満たし,もう一つの臓器の関連症状がある場合マルファン症候群を来す変異が家系内で検出されており,一臓器での大基準を満たし,もう一つの臓器の関連症状がある場合発端者の家族家族歴・遺伝歴の項目で大基準項目が一つ存在し,一臓器での大基準を見たし,もう一つの臓器の関連症状がある場合

以下の項目のうち少なくとも 4 項目を満たすこと①鳩胸②手術を要する漏斗胸③上節/下節比の低下,または指極(arm span)/身長比が 1.05 を越す④Walker-Murdoch 手首徴候ならびに Steinberg 親指徴候陽性⑤20 度を越す脊柱側彎,また脊椎滑り症⑥170 度未満の肘関節の伸展制限⑦内踝の内旋と扁平足⑧放射線学的に確認される様々な程度の寛骨臼突出(進行性の侵食を伴う深い寛骨臼)

水晶体偏位

①上行大動脈の拡張(大動脈弁逆流の有無を問わないがバルサルバ洞の拡張がある)②上行大動脈解離

①本診断基準を個人で満たす親,子または兄弟を有する②マルファン症候群の責任遺伝子として知られる

FBN1 遺伝子の変異が存在する③家系内の明らかにマルファン症候群と診断された人から受け継いだ FBN1 周辺のハプロタイプを有している(連鎖解析により確認)

眼少なくとも 2 つの小基準症状を有する場合,眼関連症状ありと判断

心血管系右記の症状をどれか 1つでも有する場合,心血管系関連症状ありと判断

肺どちらか 1 つの症状を有する場合,肺関連症状ありと判断

皮膚どちらか 1 つの症状を有する場合,皮膚関連症状ありと判断

家族歴・遺伝歴

①中等度の漏斗胸②関節の可動性③叢生歯を伴う高口蓋④特徴的顔貌(長頭,頬骨低形成,眼球陥凹,下顎後退,眼瞼裂斜下)

①角膜の異常な扁平化(角膜曲率測定による)②眼軸長の増加(超音波により計測)③虹彩低形成,または毛様体筋低形成による縮瞳不全

①僧帽弁逸脱(僧帽弁逆流の有無を問わない)②40 歳未満で原因病変がないにも関わらず主肺動脈の拡張を認める③40 歳未満での僧帽弁輪石灰化④50 歳未満での胸部下行大動脈あるいは腹部大動脈の拡張もしくは解離

①自然気胸②肺尖部ブレブ(bleb)(胸部レントゲン撮影により確認する)

①大きな体重変化や妊娠,反復性ストレスによらない線状皮膚萎縮症②反復性ヘルニアまたは瘢痕ヘルニア

CT または MRI により確認された腰仙部硬膜拡張像(dural ectasia)硬膜

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炎症性腹部大動脈瘤(inflammatory abdominal aortic

aneurysm: IAAA)は,1935 年に James473)により尿毒症

を来す原因疾患の 1 つとして報告され,1972 年 Walker

ら474)によって疾患概念が紹介された.腹部大動脈の瘤

状の拡張に加え,その壁の著明な肥厚,大動脈瘤周囲な

らびに後腹膜の広範な線維化,そして周囲腹部臓器との

癒着を特徴とした大動脈瘤である.

肉眼的には腹側から観察すると白色の硬い隆起性病変

として認められる.病理組織学的には外膜ならびにそれ

より外方の周囲組織に硝子化を伴う線維化が広範囲に見

られ,またリンパ球やマクロファージを中心とした非特

異的な慢性炎症細胞がリンパ瀘胞の形成を伴いながら層

状に浸潤する474).この層状の浸潤により線維化と炎症細

胞が交互に存在する構造を呈し,これが本疾患の比較的

特徴的な組織像となっている.肉芽腫など特異的な炎症

は認められない.一方,中膜より内腔側の組織は基本的

には腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm: AAA)と

同様の変化を示す.つまり,中膜は著明に菲薄化し,そ

れを被覆するように動脈硬化(アテローム硬化)が認め

られる.中膜が殆ど消失する場合も認められる.IAAA

と AAA の関連についてはまだ不明な点が多いが,AAA

においても外膜に炎症細胞の浸潤が認められることがあ

ること475,476),リンパ球の subpopulation にも大きな違い

は見られないこと477),両者ともに同様の危険因子を持っ

ていることなど,両者を明確に区別するものは無い.最

近では遺伝的な要因478)に加え喫煙479)やウイルス感染480)

などの因子により,炎症がより強く発現されたものが

IAAA ではないかという見方がなされている481).

欧米での本症の報告は散見され,その頻度は 4~15 %

であるが482-484),我が国での報告485-487)は,超音波検査所

見上での頻度は 4.9 %,手術例での検討では 3 % で,欧

米と比し若干低値である488).

臨床症状は,腹痛,腹部不快感,腰痛等が認められる.

微熱や血沈の亢進などの炎症に由来すると思われる症状

を認めるが,細菌感染を示唆する所見は認めない.

ま た,合併症としては,瘤壁の肥厚が「尿管」を巻き

込み,時に水腎症を生じて遂には腎不全となり,「乏尿」

や「浮腫」が生じることもある62).また,稀ではあるが,

消化管を巻き込んで,消化管の通過障害や破裂などを来

すこともある.

「臨床症状を有する腹部瘤」に留意すれば,診断の手

がかりとなる.

血液検査では,血沈の亢進や CRP 陽性などが高率に

みられる.しかし,細菌感染(白血球増多,培養陽性な

ど)を示唆する所見は認めない.

IAAA の診断は,画像診断が重要であり,特に超音波

検査と CT スキャンが有用である.超音波検査では,本

症に特異的とされている腹部瘤周囲の肥厚所見(mantle

sign;瘤の前方または前側方の低エコー域)が認められ

る.また,CT でも単純 CT で低 CT 値の瘤周囲部が造

影 CT でエンハンスされ周囲と明瞭に区別できるように

なる.また肥厚が高度な例では尿管や消化管等の周囲臓

器の巻き込みによる通過障害もみられる事があり,外科

手術時の合併症(腸管損傷,尿管損傷など)予防のため

にも本症診断は重要である.一方,血管造影では瘤周囲

の炎症性変化を判定できない.

本症の治療は,瘤自体の治療のみならず,合併する瘤

周囲の線維性肥厚に伴う諸器官の通過障害に対する処置

や予防が必要である.しかし瘤自体への治療方針は,

IAAA を合併していない紡錘状動脈硬化性真性腹部大動

脈瘤の手術適応基準に準じて,人工血管置換術が適応と

される.すなわち,4 cm から手術適応を考慮し始め,5

cm 以上は積極的適応としている.これは他の全身の合

併症(脳血管障害,虚血性心疾患,呼吸器障害,腎障害

など)との関連で決定される.すなわち,全身の合併症

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1627

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

頻 度2

臨床症状3

診 断4

治 療(表 29)5

炎症性腹部大動脈瘤22

概念・病理・病因1

表 28 マルファン症候群の心血管病変に対する治療

Class Ⅰ

1.定期的な画像診断による循環器の評価 (Level C)

2.大動脈径の拡大防止にβ遮断薬を使用 (Level C)

3.運動制限を検討すること (Level C)

Class Ⅱa

1.大動脈解離の予防にβ遮断薬を使用 (Level C)

2.弁疾患がある場合に抜歯などを行う際の抗生剤の使用(Level C)

3.家族歴があり,上行大動脈根部が 5 cm を超えるものへの予防手的置換術 (Level C)

4.上行大動脈が 5.5 cm 以上の予防的置換術 (Level C)

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が重篤な例では,先ず合併症の治療が優先される.

一方,炎症に関してはステロイドによる加療も有効と

する報告もあり,時には手術療法と併用して水腎症を示

した例などに応用して,症状の改善,mantle の減少や水

腎症の改善などが認められたとの報告もある.本症の病

理所見が著明な線維性肥厚と高度のリンパ球浸潤である

点から,これら炎症所見がステロイド治療により軽減す

る為と考えられている.

本症の自然予後は不明であるが,術中の合併症の報告

や破裂例の報告はあるものの,一般に外科手術例での予

後は良好である.瘤周囲の肥厚外膜も人工血管埋没法に

よる術後観察例で肥厚は軽減・消失する例が多く,炎症

としての術後予後も良好である.

細菌性動脈瘤は 1885 年に Osler により感染性心内膜

炎からの細菌性塞栓によって生じた動脈瘤として初めて

報告された.初期には感染巣から離れた動脈に発生する

動脈瘤を意味していたが,現在では概念を広げ,感染に

起因した全ての動脈瘤及び既存の動脈瘤に感染が加わっ

たものも含めて感染性動脈瘤と総称している.

感染性大動脈瘤は比較的稀な疾患であり,全大動脈瘤

に占める割合は 0.5~1.3 %489~491)と報告されている.以

前は感染性心内膜炎からの菌血症や感染性塞栓が主要な

感染源であったが,最近では減少しつつあり,かわって

動脈硬化・医原性の動脈損傷(カテーテルや手術)など

高齢化に伴う因子が増加している.糖尿病や悪性腫瘍治

療・膠原病治療による慢性的免疫機能低下も重要な危険

因子である.

胸部に生じるものが 32 % で,腹部分枝にかかる腹部

が 26 %,腎動脈以下の腹部大動脈が 42 % と腎動脈下大

動脈に多い492).

起因菌に関してはグラム陽性球菌(主にブドウ球菌)

あるいはグラム陰性桿菌(主にサルモネラ)が多いと報

告されている.Mayo Clinic からの報告492)では 50 %

がグラム陽性球菌(ブドウ球菌が 30 %,連鎖球菌が 20

%),35 % がグラム陰性桿菌(サルモネラ 20 %,大腸菌

15 %)であったが,台湾大学からはサルモネラが 76 %

を占め,グラム陽性球菌は 10 % 程度であったという報

告があり493),起因菌に関しては地域性があるらしい.ま

た珍しいものとして好酸菌や真菌によるものもある.

報告されている死亡率は 23.5~37 % と非感染性大動

脈瘤に比してきわめて高く494),その主要な原因は大動脈

瘤破裂や術後であれば吻合部などの破裂,あるいは敗血

症による多臓器不全である.

発熱や疼痛などの自覚症状や血液検査上の炎症所見が

発見の契機となることが多い.腹部であれば拍動性腫瘤

を触知することがある.画像診断としては単純レントゲ

ンや超音波検査,特に CT が有用である.感染兆候を呈

する患者において大動脈瘤が発見された場合は感染性大

動脈瘤を常に考慮しなければならない.画像診断上の感

染性動脈瘤の特徴として限局した嚢状瘤を形成すること

が多いといわれているが,既存の紡錘状瘤に感染を起こ

していることもあり,形態のみから感染を否定すること

はできない.動脈瘤周囲の液体貯留は炎症による浮腫,

あるいは膿瘍形成を示すものであり,感染を強く疑わせ

る所見である.また経時的に観察していて急速に拡大す

る場合はやはり感染性大動脈瘤の可能性が高い.

術前の血液培養は適切な抗生物質選択のために必須の

検査であり,感染性心内膜炎の診断に準じて複数回採取

すべきである.

1)抗生物質治療

感染性大動脈瘤が診断され次第,培養検査の結果に応

じて強力な抗生物質投与を開始する.抗生物質に対する

反応が良好で感染徴候が速やかに軽快する場合は十分な

期間抗生物質投与を行い,可能であれば完全に炎症反応

が陰性化してからの手術が望ましい.一方で常に破裂の

危険性があることを念頭に置き,発見時の動脈瘤の形態

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061628

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

診 断3

治 療(表 30)4

転帰・予後6

感染性大動脈瘤33

概 念1

疫 学2

表 29 炎症性大動脈瘤の治療

Class Ⅰ

1.感染が無く,画像診断の特徴的所見 (Level C)

2.瘤径 5 cm 以上には人工血管置換術 (Level C)

Class Ⅱa

1.副腎皮質ホルモン剤の使用 (Level C)

2.ステントグラフト法の適用 (Level C)

瘤径 4 cm 以上での手術適応検討 (Level C)

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Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 2006 1629

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン

や経時的な拡大傾向に注意ながら手術時期を逸しないよ

うにする.破裂例は当然であるが,急速な拡大が見られ

る場合も,たとえ感染の制御が不十分であっても早急な

手術を検討する.また,適切な抗生物質投与にも関わら

ず感染の制御が不良な場合も早期の手術が必要である.

動脈瘤そのものが小さくて手術適応が無く,抗生物質

治療によって感染が消退した場合の手術の必要性につい

ての一定した見解はない.Hsu らは 3 cm 以下の瘤径で

抗生物質投与により感染が制御できた 5例のうち追跡で

きた 3例の長期生存を報告している493).

2)手術治療

①術式に関して

感染性大動脈瘤の手術においては動脈瘤切除により破

裂を予防し感染巣を除去するという 2つの目的を同時に

達成するため,通常の動脈瘤手術と異なり動脈瘤を含む

感染組織を可及的に除去する必要がある.胸部大動脈に

おける食道穿孔,あるいは腹部における十二指腸穿孔を

伴う症例では消化管の修復あるいは切除が必要となるこ

とが多い.さらには人工血管およびその吻合部や大動脈

断端への感染の波及をいかに予防するかが重要な問題で

ある.

再建方法に関して,腎動脈下の感染性大動脈瘤に対し

ては,以前には感染巣内に人工血管を移植することを避

けるために動脈瘤の前後の大動脈を閉鎖し,腋窩動脈-

大腿動脈間バイパスによって下半身の血行を再建すると

いう extra-anatomical bypass が標準術式とされてきたよ

うであるが,近年では in situ への人工血管移植術を第一

選択とした報告が多い493,494).症例の少なさと個々の症

例の多様性のため,2 つの術式について成績を厳密に比

較した報告は無いが,早期の成績について in situ 人工血

管移植術は extra-anatomical bypass に決して劣るもので

はなく,extra-anatomical bypass における遠隔期でのバイ

パス閉塞の危険性を考えると,in situ 人工血管移植術が

今後は標準術式になっていくと思われる.腎動脈下の感

染性大動脈瘤の手術成績は向上しており,早期死亡率は

最近では 10~15 % 程度と報告されている494,495).

胸部大動脈や腎動脈上大動脈の感染瘤に対しては,そ

の解剖学的な要因から in situ への人工血管移植術を選択

せざるを得ない.腎動脈上の感染性大動脈瘤は腎動脈下

の感染性大動脈瘤に比して手術および再建が複雑となり

吻合部が多いため予後が悪いと考えられる.死亡率 80

% に達するという496)報告もあるが,10 %~16 % 程度の

早期死亡率という良好な成績の報告もある490,497).

②グラフトの選択

移植血管への感染再発を防止するために使用するグラ

フトにも様々な検討がなされてきている.なかでも凍結

保存した同種大動脈グラフト(ホモグラフト)に関して

良好な早期および長期成績が報告されている 498-500).

Vogt らは感染性大動脈瘤と人工血管感染に対して凍結

保存した同種大動脈グラフト(ホモグラフト)を in situ

に移植した症例と人工血管を in situ あるいは extra-

anatomical bypass として用いた症例とを比較し,特に感

染の制御に関してホモグラフトが非常に有効であったと

している.Lesche らはホモグラフト移植後の平均 3 年

間の追跡において閉塞や瘤化は 17 % と報告しており,

いずれも感染とは無関係で容易に再手術が可能であった

としている.移植されたホモグラフトの耐用年数に関し

て 10 年以上の成績は未だ不明であるが,感染性大動脈

瘤においては早期の感染制御が救命のために必要であ

り,この点においてホモグラフトは優れた材料であると

考えられる.これまでは日本国内でのホモグラフトの入

手は非常に困難であったが,臓器移植法の施行に伴う組

織提供の広まりや組織バンクの活動により,今後普及し

ていくことが期待される.

そのほか,抗生物質を浸透した人工血管501,502)や自家

大腿静脈503,504)の使用が散発的に報告されているが,通

常の人工血管に対する優位性に関しては不明である.

③大網充填

大網は血流とリンパに富む組織で感染制御に有効と考

えられており,開心術後の縦隔炎の治療にもしばしば用

いられている505).感染性動脈瘤の手術においては in situ

に移植した人工血管の周囲を大網で被覆して感染の波及

を予防する.右左どちらかの胃大網動脈を血管茎とした

有茎大網は胸部から腎動脈下までの広い範囲の大動脈に

表 30 感染性大動脈瘤の治療

Class Ⅰ

1.感受性のある抗生剤投与 (Level B)

Class Ⅱa

1.人工血管感染に対する大網充填 (Level B)

2.同種大動脈の使用 (Level C)

Class Ⅱb

1.in-situ 人工血管置換術 (Level B)

2.抗生物質浸漬人工血管の使用 (Level C)

Class Ⅲ

1.ステントグラフト法の適用 (Level C)

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対して使用することが可能である494,506).大網充填に関し

ても全例に施行するという報告もあれば全く行わないと

いう報告もあり,厳密に有効性を示した報告は未だ無い.

④術後抗生物質

術後の強力な抗生物質治療が必須である.起因菌に合

わせた抗生物質を静脈投与し,炎症反応の陰性化を目標

に 4週間から 8週間は継続する.その後抗生物質は中止

して問題ないとする報告もあるが493),一方で生涯にわた

り経口の抗生物質を投与すべきとする報告もある490,497).

3)ステントグラフトによる治療

胸部下行大動脈や腎動脈下の腹部大動脈瘤に対するス

テントグラフト治療が近年普及しつつあるが,感染性大

動脈瘤に対してステントグラフトによる治療を行い,強

力な抗生物質治療を併用することで治癒せしめたという

報告が散見される507-509)が,救命に至らないことが多い.

感染巣と人工血管が隣接し,感染巣が閉鎖腔として残存

するこの治療は,感染増悪の危険を有し禁忌との意見も

ある510).

感染性大動脈瘤は死亡率の高い疾患であり,未だに標

準的な治療法が確立されていない.個々の症例に対して

迅速かつ詳細な術前評価を行い,最適な術式や術後の治

療を組み合わせることが救命率の向上につながっていく

と考えられる.

Circulation Journal Vol. 70, Suppl. IV, 20061630

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2004-2005年度合同研究班報告)

まとめ5

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