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政治学研究論集 第31号 2010.2 政軍関係研究の現代的意義 危機管理における指揮・命令系統に注目して Contemporary Meaning on Research of Politi Focusing on Command and Control on the Cr 博士後期課程 政治学専攻 2008年度入学 KOMORI Yuta 【論文要旨】 本稿は,我が国における危機管理概念の変化と危機管理において取り扱われる事例に注目して, 政軍関係と危機管理の相関関係を考察することを目的としている。 第1節では,本稿において取り扱う政軍関係と危機管理について,先行研究及び法令等におけ る規定を基に検討を行い,政軍関係を「文民統制に代表される政府と軍部の関係」から「民主主i義 的な組織と非民主主義的な組織の関係」へと再規定することによって,危機管理の分析に応用出来 ることを論証した。 第2節では,阪神・淡路大震災と三宅島噴火及び新島・神津島地震災害を事例に,指揮・命令 系統に注目して検討を行い,二つの災害の比較を通じて,指揮・命令系統に「災害復旧にどの様に して,民主主義的要素を包含するかということ」を包含する必要であるという結果を導出した。 第3節では,政軍関係と危機管理の相関関係について,政軍関係と危機管理の概念比較,能力 及び学術的側面からの検討を行い,政軍関係と危機管理において求められる対応が酷似しているこ と,政軍関係研究に登場する部隊運用や軍事技術が危機管理研究に応用し得ること,政軍関係研究 における分析手法が危機管理研究に反映し得ることを論証した。 【キーワード】政軍関係,危機管理,C41SR,自然災害,組織運営 はじめに 1 危機管理と政軍関係について 論文受付日 2009年10月1日 掲載決定日 2009年11月11日 一65一

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政治学研究論集

第31号 2010.2

政軍関係研究の現代的意義

危機管理における指揮・命令系統に注目して

Contemporary Meaning on Research of Politico-Military Relations:

Focusing on Command and Control on the Crisis Management

博士後期課程 政治学専攻 2008年度入学

    小  森  雄  太

          KOMORI Yuta

【論文要旨】

 本稿は,我が国における危機管理概念の変化と危機管理において取り扱われる事例に注目して,

政軍関係と危機管理の相関関係を考察することを目的としている。

 第1節では,本稿において取り扱う政軍関係と危機管理について,先行研究及び法令等におけ

る規定を基に検討を行い,政軍関係を「文民統制に代表される政府と軍部の関係」から「民主主i義

的な組織と非民主主義的な組織の関係」へと再規定することによって,危機管理の分析に応用出来

ることを論証した。

 第2節では,阪神・淡路大震災と三宅島噴火及び新島・神津島地震災害を事例に,指揮・命令

系統に注目して検討を行い,二つの災害の比較を通じて,指揮・命令系統に「災害復旧にどの様に

して,民主主義的要素を包含するかということ」を包含する必要であるという結果を導出した。

 第3節では,政軍関係と危機管理の相関関係について,政軍関係と危機管理の概念比較,能力

及び学術的側面からの検討を行い,政軍関係と危機管理において求められる対応が酷似しているこ

と,政軍関係研究に登場する部隊運用や軍事技術が危機管理研究に応用し得ること,政軍関係研究

における分析手法が危機管理研究に反映し得ることを論証した。

【キーワード】政軍関係,危機管理,C41SR,自然災害,組織運営

はじめに

1 危機管理と政軍関係について

論文受付日 2009年10月1日  掲載決定日 2009年11月11日

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2 政軍関係の視点から見た危機管理の事例

3 政軍関係と危機管理の親和性

おわりに

はじめに

 本稿は,政軍関係と危機管理の相関関係を考察する為に,我が国における危機管理概念の変化と

危機管理において取り扱われる事例に注目して,政軍関係の視点を危機管理の分野に導入すること

の妥当性を検証することを目的としている。昨今,危機管理に関する議論が喧しいが,それは専ら

土木工学や機械工学といった側面からの研究が中心となっている感が否めない。本稿ではこの様な

現状を踏まえ,社会科学,特に政治学や政軍関係といった側面から危機管理を検討することを試み

たものである。

 周知の様に危機管理の分野は発展途上であり,大いに展開が期待出来る分野である。また,政軍

関係の分野もその研究対象が専ら行政機構や国際政治,政治史的側面であったことは否定出来な

い。従って,危機管理分野へ研究成果を反映することは,危機管理のみならず,政軍関係研究の更

なる発展も期待出来ると考える。

1 政軍関係と危機管理について

 前述の様に危機管理の概念は,かなり広範なものである。そこで,本節では本稿における危機管

理の概念について,政軍関係の概念と併せて若干の整理を行いたい。

 本稿における政軍関係(civil-military relations)は,「政治と軍事の関係(politico-military rela-

tions)」,言い換えるならば狭義の政軍関係である。これは政府,特に民主主義的な制度によって

構築された政府と軍事の専門家集団である軍部の関係に注目した視点であり,具体的には「文民統

制に代表される政府と軍部の関係」である1。この政軍関係の概念をそのまま当て嵌めてしまうと

その対象は非常に限定的なものとなってしまうが,「民主主義的な組織と非民主主義的な組織の関

係」と捉えることによって,特に先進国における専門家集団とそれ以外の関係に応用することが可

能となる。従って,本稿では狭i義の政軍関係及びその応用である「民主主義的な組織と非民主主義

的な組織の関係」を政軍関係と規定し,考察を行うこととする。

 一方,危機管理(crisis management)とは,元々は欧米の金融・保険業界において用いられた

用語であり,1920年代に発生した世界大恐慌を始めとする一連の不況における企業経営を維持す

ることを主目的とした概念であった2。その後,キューバ危機(1962年)を契機に,安全保障にお

ける用語として定着した。従って,特にキューバ危機以降は,短期間の問に戦争か平和かの決断を

迫られる状況の対処方法を示す用語となった。

 一方,我が国における危機管理の概念は,欧米とは異なる変化の過程を辿った。我が国への危機

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管理概念の輸入は1950年代であり,その後欧米同様,多義的な概念へと発展していった3。しか

し,欧米の様に地域紛争等の戦禍に巻き込まれなかったこともあり,あさま山荘事件や一連の学生

紛争といった政治的危機と言い得る事案は存在したものの,危機管理の主たる対象は地震や風水害

といったいわゆる天災であった4。

 この状況は,アメリカ同時多発テロ事件(2001年)以降に行われている一連の対テロ戦争

(WOT:War on Terrorism)と1990年代以降のグローバリゼーション(globalisation)の進行によ

って,大きく変化した。即ち,我が国においても軍事的安全保障を包含した危機管理を構築する必

要に迫られたのである5。また,従来の危機管理がいわゆる天災を対象としていたのに対し,企業

や公共機関における不祥事への対策も危機管理と呼称される様になり6,我が国における危機管理

の概念は,原点回帰を伴った多義的な概念へと変化していると言える。

 しかし,危機管理の多様化或いは一般化は,同時に取り扱う対象が地震や風水害といった天災か

ら戦争,企業や公共機関における不祥事といった人災にまで急激に増大したことを意味する。とは

いえ,これら全てに同様の方策で対応することは当然不可能である。従って,事例をある程度選別

して対応することが適当であると考えられる。

 一般的に危機管理における危機として扱われる事案としては,不況や企業の不祥事等の「経済的

危機」や紛争や体制変動等の「政治的危機」,地震や風水害といった「自然災害による危機」,航空

機の墜落や鉄道の脱線といった「人災による危機」がある。その中でも,本稿では自然災害による

危機に注目して論を進めたい。

 何故ならば,経済的危機は世界大恐慌や世界金融危機(2007年~)の様な全世界規模の事例も

あるものの,一企業に止まる事例も多く,また生死に直結しないことが多い7。また,政治的危機

についても,戦争や体制変動といった生死に直結する事案が多いことは事実であるが,比較政治学

や政治史の分野において,優れた研究が多く発表されている。

 これに対して,自然災害による危機と人災による危機に関する研究は,前述の様に土木工学や機

械工学等の工学系では活発に研究が進められているものの8,人文・社会科学,特に政治学におい

てはまだ未成熟である。しかし,その被害は前述の2つの危機と同様かそれ以上に深刻なものと

成り得る可能性を秘めており,早急に対応することが求められている。

 以上の様な状況を踏まえた上で,危機管理と政軍関係の関係を検討すると,危機管理の分野で政

軍関係が意識されたことは皆無であると言っても過言ではない9。それ故に本稿では,国際的に見

ても特に災害が多い我が国における危機管理を対象として,政軍関係の視点を危機管理に導入する

ことの妥当性を検討することを試みる。なお,我が国の中央省庁や地方公共団体において,一般的

に危機管理の対象とされている「危機」は【表1】の通りである。何れの危機も個々人や一企業で

対応出来る性質の事案ではなく,前述の自然災害による危機を主な対象としている点は注目に値す

る。

 また,【表2】の様に我が国では,ほぼ毎年大規模な被害をもたらす台風や地震が発生している。

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【表1】我が国における「危機」の類型及び中央省庁の関与

危 機 の 類 型 初動対応 省庁間調整 実動 対 応

地震災害 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,防衛省,海上保安庁,その他の省庁

大規模自然災害 風水害 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,防衛省,海上保安庁,その他の省庁

火山災害 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,防衛省,海上保安庁,その他の省庁

海上事故 内閣宮房 内閣府(防災担当) 消防庁,警察庁,その他の省庁

大規模火災 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,警察庁,その他の省庁

危険物事故 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,警察庁,その他の省庁

重大事故 道路事故 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,警察庁,その他の省庁

鉄道事故 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,警察庁,その他の省庁

原子力事故 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,警察庁,その他の省庁

航空事故 内閣官房 内閣府(防災担当) 消防庁,警察庁,その他の省庁

ハイジャック 内閣官房 内閣官房 警察庁,その他の省庁

重大事件 大量殺獄型テロ 内閣官房 内閣官房 警察庁,防衛省,その他の省庁

重要施設テロ 内閣官房 内閣官房 警察庁,防衛省,その他の省庁

武力攻撃事態 武力攻撃事態 内閣官房 内閣官房 警察庁,防衛省,その他の省庁

邦人救出 内閣官房 内閣官房 警察庁,防衛省,その他の省庁

その他の危機 大量避難民流入 内閣官房 内閣官房 警察庁,防衛省,その他の省庁

鳥イソフルエソザ 内閣官房 内閣官房 その他の省庁

(出典:京都府総合的危機管理指針(平成19年度作成),兵庫県危機管理基本指針(平成20年度作成))

【表2】我が国における主な自然災害の状況(1989年以降)

年 月 災 害 名 主な被災地 死者・s方不明者数

1990年 11月 雲仙岳噴火 長崎県 44人

1993年7月 北海道南西沖地震 北海道 230人

7月 平成5年8月豪雨 全国 79人

1995年 1月 阪神・淡路大震災 兵庫県 6,437人

3月 有珠山噴火 北海道 0人2000年

6月 三宅島噴火及び新島・神津島近海地震 東京都 1人

10月 台風23号 全国 98人2004年

10月 新潟県中越地震 新潟県 68人

2005年 12月 平成18年豪雪 北陸地方を中心とする日本海側 152人

2007年 7月 新潟県中越沖地震 新潟県 15人

(注1)

(注2)

(注3)

(注4)

死者・行方不明者については,風水害は500人以上,雪害は100人以上,地震・津波・火山噴火は10

人以上のものの他,災害対策基本法による非常災害対策本部等政府の対策本部が設置されたもの

阪神・淡路大震災の死者・行方不明者については2005年12月22日現在の数値。いわゆる関連死を除

く地震発生当時の地震動に基づく建物倒壊・火災等を直接原因とする死者は,5,521人。

三宅島噴火及び新島・神津島近海地震の死者は,2000年7月1日の地震によるもの。

2007年以降の死者・行方不明者数は速報値。                                  (出典:平成20年度防災白書)

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従って,事例としては事欠かない状況であるが,本稿ではその中でも激甚災害に対処するための特

別の財政援助等に関する法律(激甚災害法)改正直前に発生した「本激(全国的に大きな被害をも

たらした災害を指定する場合)」の代表例である阪神・淡路大震災(平成7年兵庫県南部地震)

(以下,阪神大震災とする)と「局激(局地的な災害によって大きな復旧費用が必要になった市町

村を指定する場合)」の代表例である三宅島噴火及び新島・神津島地震災害(以下,三宅島噴火と

する)を事例として,特に指揮・命令系統に注目して検討したい。詳細については後述するが,こ

の2つの事例は災害の規模のみならず,発生時の初期対応も好対照である為本稿の事例として

は最適であると言える。

2 政軍関係の視点からみた危機管理の事例

(1)阪神大震災の概要

 阪神大震災は,1995年1月17日午前5時46分に淡路島北部沖の明石海峡を震源として発生した

M7.3の地震である。この地震による揺れは,福島県いわき市(東端)や長崎県佐世保市(西端),

新潟県新潟市(北端),鹿児島県鹿児島市(南端)にまで及び,神戸市や近隣地域に【表3】の様

な大きな被害をもたらした。この阪神大震災において,最も問題とされたのが国や地方自治体等と

いった公共機関の初動対応である。

 地震発生後,警察や消防は所管官庁(警察庁及び総務省消防庁)の調整の下,現地入りしたもの

の,大規模災害に対する装備・機材もそれらを運用する技術も知識も持ち合わせていなかった為

救援活動は難航した10。と同時に,自治会や町内会といった地域コミュニティによる救助活動が積

極的に行われ,その存在の重要性を強く印象付けることとなった。

 これに対して,自衛隊は伊丹駐屯地(兵庫県伊丹市)に駐屯していた陸上自衛隊第36普通科連

隊が阪急伊丹駅周辺において救助活動を行ったものの,兵庫県庁や関係する地方自治体が機能不全

に陥っていた為に災害派遣要請が行われなかった11。結局,地震発生から4時間以上経過した午前

10時に兵庫県消防交通安全課の課長補佐によって行われ,その後知事によって事後承認という形

で正式に要請が行われた12。

【表3】阪神大震災被害状況一覧

死者・行方不明者 6,437人 公共建物 1,579棟

人的被害 重軽傷者 43,792人 その他 40,917棟

合計 50,229人 文教施設 1,875箇所

全半壊 249,180棟非住家被害

道路・橋りょう 7,575箇所

住家被害 一部破損 390,506棟 河川・崖くずれ 1,121箇所

合計 639,686棟 ブロック塀等 2,468箇所

(出典:総務省消防庁阪神・淡路大震災関連情報データベース)

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 さて,この様な現場の動きに対して,首相官邸や災害対策を所管する国土庁を始めとする中央省

庁は情報の収集・整理能力を欠いており,各省庁が独自に動かざるを得ない状況であった。その状

況は,「官邸をはじめとする政府,国の機関はもとより,地元の行政機関,防災関連機関にとって

も,テレビ・ラジオが最大の情報源だった13」という言葉が何よりも如実に物語っていると言え

る。また,各国からの支援の申し出にも政府として対応出来なかったことも問題となった14。

 これらを総合すると,我が国が地震多発地帯であるにも拘らず,被害地域の惨状を把握する手段

が確立されていなかったこと,未熟な危機管理体制や典型的な縦割り行政といった行政上の弊害が

一気に現れたと言うことが出来る。しかしながら,その後総理府阪神・淡路復興対策本部(以下,

復興対策本部とする)が設置され,地域住民との意見調整を行いながら,速やかな復興が行われた

点は評価に値すると言える15。

 以上が阪神大震災の概要である。復興対策本部の設置といった速やかな復興対策は評価すべきで

あるが,初動対応の遅れが目立ったことも事実である。この阪神大震災における初動対応の問題

は,多くの書誌において指摘されている。従って,本稿ではそれらの先行研究に依拠しながら,政

軍関係の視点からこの問題について,検討したい。

(2)三宅島噴火の概要

 三宅島噴火は,2000年7月1日以降に発生した一連の噴火及び地震の総称である。7月1日以

降,8月18日までに震度6以上の地震が6回発生し,9月以降には二酸化硫黄を始めとする有毒ガ

スが大量に放出され,人々が生活出来ない環境となった。この噴火及び地震によって,【表4】の

様な被害が発生した。

 この被害に対し,三宅島では9月4日までに4000人近くの島民が本土へ避難し,新島では地震

【表4】三宅島噴火被害状況一覧

利島村 新島村 神津島村 三宅村 合 計

人的被害死者・行方不明者数 1人 1人

重軽傷者数 14人 1人 15人

全半壊 17棟 2棟 16棟 35棟住家被害

一部損壊 123棟 39棟 12棟 174棟

公共建物 2棟 2棟 4棟非住家

その他 2棟 2棟

(注1) 台風3号,7月26日の大雨による被害は除く。(但し,三宅村の被害については,台風3号による被

   害を含む。)

(注2) 神津島村の死者1名は,7月10日の地震において,土砂崩れにより車1台が埋没し,生き埋めにな

   ったことによる。(注3) 神津島村の非住家(その他)の1棟の被害は神社本殿である。

(注4) 三宅村の住民等の被害状況は,現在詳細不明。

                   (出典:防災情報のページ(内閣府政策統括官(防災担当))

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【表5】三宅島噴火に対する政府の対応一覧

災害救助法に基づく生活必需品の無償供与

生活支援 生活福祉資金の無利子貸付

災害援護資金の貸付

雇用・労働相談窓口の設置

雇用支援 雇用調整助成金の支給

一時的に離職を余儀なくされた被災者に対する雇用保険の基本手当の支給

中小企業支援 災害復旧貸付の金利の引き下げ及び実質的な無利子融資とする利子補給措置

避難している全世帯について被災者生活再建支援法の適用

監視観測体制強化の為に予備費のうち14億円の使用を決定

公共事業等予備費のうち96億円を災害復旧事業などに使用することを決定その他

火山活動の終息後,速やかなライフライソ復旧の為の安全対策の実施

神津島村・新島村について公共土木施設関係の局地激甚災害指定

(三宅村の激甚災害の指定は有害ガスの放出のため現地調査が不十分)

(出典:防災情報のページ(内閣府政策統括官(防災担当))

によって被害を受けた20人が災害復旧公営住宅へ入居した。同時に,政府は8月29日に非常災害

対策本部を設置し,政治的・経済的な支援を被害の局限化に努めた【表5】。

 以上,三宅島噴火の概要及び政府の対応について概観したが,その印象としては「(人的)被害

が極めて小さいということ」が挙げられる。周知の様に三宅島では,本稿で取り上げている2000

年の噴火以外にも,数度に渡って噴火が発生している。従って,阪神大震災とは異なり,国等も含

めた行政機関や地域住民が災害自体を経験済みであった16。それ故に,過去の災害を教訓として訓

練等を実施しており,それらが有効に機能したことも被害軽減の一助となったと言える17。また,

阪神大震災において問題となった避難住民の精神面での支援が充実していたことも評価すべきであ

る18。

 総じて,三宅島噴火では阪神大震災と比較し,初動対応が迅速に行われたと言える。これは,5

年前の阪神大震災の教訓が反映されたことも大きいが19,迅速な指揮・命令が行われたことも大き

な要因であると考える。迅速な指揮・命令系統の確立は政軍関係,特に有事の際に最も求められる

要件の1つである。従って,以下では,この三宅島噴火と阪神大震災における初動対応の特徴と

問題点の比較を通じて,政軍関係と危機管理の相関関係を検討したい。

(3)政軍関係の視点から見た阪神大震災及び三宅島噴火における初動対応の特徴と問題点

 阪神大震災における初動対応の問題について,概要においても若干触れたが,現在までに主張さ

れているものとしては,以下の通りである20。これ以外にも,公式な報告書等では言及されていな

いものの,「被災地域が震災以前から有していた自衛隊へのアレルギー21」等が初動対応に関する

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問題として挙げられている。

①初動対応の為の空間の確保

②情報通信システムの確保

③専門要員確保と組織的活動

④適切な情報収集・伝達

⑤初動活動の不慣れの克服

⑥自衛隊への派遣要請及び消防広域応援要請の「遅:れ」

⑦防災専門集団とコンピュータ支援システムの欠如

⑧組織間調整

⑨交通規制の遅れと安否確認の困難性(実働部門の初動を阻害したもの)

⑩地震に対する関心の欠如

 この中でも,②や③,⑩は事前準備であり,また,①や④,⑤,⑦は減災性を高める際に問題と

なるものであり,何れも行政機関が行うものである。一方,⑥や⑧,⑨は応答性や復旧性に直結す

る問題であるが,同時に前述の事前準備の不足や低い減災性を補完し得る問題でもある。これは阪

神大震災も例外ではなく,復興対策本部の設置や復旧・復興関係の特措法を矢継ぎ早に成立させる

等して22,初動対応の遅れを取り戻している。

 この様な迅速な行動が,強力なリーダーシップに裏付けられていることは言を侯たない。とはい

え,強力過ぎるリーダーシップはややもすると住民等の利害関係者から独裁や専制と解釈され得る

要素を包含している。実際に阪神大震災でも稚拙な報道対応や積極的な災害対応の結果,その手法

が強権的であるという非難が起こっている23。また,成功と言い得る三宅島噴火においても,石原

慎太郎東京都知事の指揮・命令に関する批判が少なからず発生している24。

 この様に初動対応の失敗例と言える阪神大震災や成功例と言い得る三宅島噴火の何れにおいて

も,問題となったのは「指揮・命令系統」である。これは言い換えると「災害復旧にどの様にし

て,民主主義的要素を包含するかということ」である。この問題に対し,昨今の災害対策において

は,災害時に重要となる地域コミュニティによる共助を形成する為に日常的に地域住民との話し合

いの場を設置したり25,災害発生後の復興計画に住民の意思を反映させる為の復興協議会の設置を

義務付けたりして26,住民の意思を反映することを試みられている。

 しかし,阪神大震災に限らず,災害の復旧・復興の過程において,強力なリーダーシップが求め

られる27。その様な状況において,前述の復興協議会の設置等の方策では,災害対策の形成過程や

執行完了後に住民等の利害関係者の意思を反映することは可能となるものの,災害復旧の最中に住

民等の利害関係者の意思を反映することは不可能であると言わざるを得ない。従って,単に地域住

民等の意思を反映させるのみならず,実効性を担保することを意識することが求められる。そこ

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で,以下ではこの点を意識しながら,政軍関係と危機管理の相関関係について検討したい。

3 政軍関係と危機管理の相関関係

(t)制度的側面から見た相関関係

 一般的に危機管理に対する準備或いは方策として,事前準備(preparedness),応答性(respon-

siveness),復旧性(recovery),減災性(mitigation)というものが挙げられる28。この中でも事前

準備と減災性については,日常的に心掛けるべき性質のものである。一方,応答性や復旧性といっ

たものは,災害発生時に問題となる性質のものであり,即断即決が求められる場合が多い。これら

は作戦行動中の軍隊にも言えることである29。

 これらを突き詰めた先に,トップダウン型の組織運営があることは言うまでも無い。この典型例

が軍隊である。しかし,それは軍隊というある種閉鎖された組織だからこそ行い得る性質の話であ

る30。危機管理という警察や消防,自治体,地域住民,企業等様々なアクターが関係している問題

において,民主主義的な意思決定を無視することは不可能であると言わざるを得ない31。その矛盾

は先進国において,より一層顕著なものとなる。

 この矛盾は,国家安全保障における文民統制と部隊運用の関係,即ち政軍関係と酷似していると

言える。また,登場するアクターも文民(行政機関,警察,消防,地域住民等)や軍部(軍隊,民

兵等)等,政軍関係の分野と似通っている32。この様なアクター間に関する研究は政軍関係の分野

では盛んに行われているが,危機管理の分野ではあまり行われてこなかった。それ故に,研究する

余地は大いにあると考えられる。以上のことを総合すると,危機管理の分野に政軍関係の視点を導

入することは,決して不可能ではないと言える。

② 能力的側面から見た相関関係

 次に,危機管理の分野に政軍関係の視点を導入すると,具体的にどの様な効果が考えられるのか

について検討したい。

 1989年の冷戦終結から20年近くが経過した。その間,冷戦の一方の雄であったソ連は崩壊し,

米国の覇権は確固たるものとなった。しかし,頻発する地域紛争33や非対称戦争34の増加によっ

て,国際社会は混迷の度合いを深めている。この現状は,同時に正規軍同士の対称戦争が勃発する

可能性が低いことを示唆している。この傾向は,太平洋戦争以降強まり,冷戦下における武力衝突

への恐怖があったことも事実であるが,朝鮮戦争(1950~53年)やヴェトナム戦争(1959~75年)

以降,より顕著になったと言える。言い換えるならば,60万を超える日露の将兵が激突した奉天

会戦(1905年)や日米合わせて数百隻の艦船が対峙したレイテ沖海戦(1944年)の様な大規模な

戦闘は起こり得ないということである。

 では,冷戦を通じて膨大に膨れ上がった国防関係の予算や人員は何の為に,どの様に使うべきな

のであろうか。規模自体を削減すること,即ち軍縮も有り得るであろう35。紛争地域等に派遣する

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国連平和維持部隊(PKF)に振り分けるのも一案である36。しかし,国外の内戦に過剰な介入を行

うことは,内政干渉と成り得るものであり37,軍縮も軍隊の存在理由が,国家の安寧を担保するこ

とである以上,限度がある38。

 そこで考えられるのが,軍隊の能力の少なからざる割合を前述の政治的危機や自然災害による危

機への対策,即ち危機管理へ振り向けることである。政治的危機に対しては,その圧倒的な戦力を

以て,排除或いは抑制することが可能であることを鑑みると,政治的危機への対策への軍隊の運用

は有り得ると言える。

 一方,自然災害による危機や人災による危機に対しても,軍隊は警察や消防と比較すると,軍隊

は十分に対応し得る能力を有していると言える。特にライフラインが遮断されているであろう被災

地の支援には最適である39。本稿において,対象とすべき冷戦崩壊(1989年)以降に限っても,下

記の様にほぼ毎年大規模な災害が発生し,その度に警察・消防・自衛隊といった組織が災害復旧及

び救助の為に派遣されている。従って,需要の面からも軍隊(≒自衛隊)が自然災害による危機へ

関与することが求められていると言える。

 また,自然災害による危機への対処に限ったものではないが,軍隊は一般的にC41SRが充実し

ている40。C41SRシステムとは,軍事において,指揮官を支援する為に必要な情報提供及び決定さ

れた命令を伝達する為のシステムであり,システム構築に必要な指揮(command),統制

(control),通信(communication),コソピュータ(computers),イソテリジェソス(intelligence),

監視(surveillance),偵察(reconnaissance)の頭文字を取ったものである。現在,米国を始めと

する先進国において,「軍事における革命(RMA:Revolution in Military Affairs)」が進行してい

るが41,その本質はこのC41SRシステムの拡充である。何れにしても,危機におけるC41SRシス

テムの運用は,効果的な危機管理の大きな一助になると言える。

 以上,軍隊の能力に注目して論を進めてきたが,これらの運用のみを優先すると,軍隊と被災老

等といった他の利害関係者との間に軋礫が生じるであろうことは容易に想像出来る。政軍関係の分

野では,この様な政軍間の軋礫は,「シビル・ミリタリー・ギャップ(civi1-military gap)」と呼称

され,優れた研究が幾つか発表されている42。この様な軋礫を政軍関係の分野では,軍隊と民主主

義的な社会的組織(社会や産業,軍隊以外の政治機構)との関係とした上で,専ら軍隊の閉鎖的な

団体性に代表される特殊性に注目して分析が行われている。

 しかし,警察や消防,地方自治体等のいわゆる文民政府であっても,前述の危機による非常事態

の際には,軍隊にも似た閉鎖性を有し,地域住民等との間に軋礫を生じさせてしまうことは多々あ

ることである43。それ故に,組織の有する能力のみならず,組織の性質にも注目して分析を行って

いる政軍関係の研究成果を危機管理に反映し,この様な軋礫を漸減・消滅させることは,学術的な

視点のみならず,災害復旧といった実学的な視点からも有益であると言える。

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(3)学術的側面から見た相関関係

 政軍関係の視点を危機管理に導入する場合,最初に考えられるのは,「より多様な視点の導入」

であろう。危機管理は行政学や経営学,或いは理学や工学の分野からの研究が中心であり,その他

の分野からのアプローチは少ない44。

 これに対して,政軍関係は政治思想や政治史,政治過程論等多くの分野から検討が重ねられてき

ており45,クラウゼヴィッツ(C.P. G. Clausewitz)の『戦争論』以降,各国において研究が行わ

れ,優れた研究も多数発表されている46。また,政軍関係と危機管理の相似性も前述の通りであ

り,場合によっては概念等をそのまま反映することも不可能ではないと考えられる。

 従って,学問としての危機管理をより充実させる為にも,政軍関係の視点を導入することは,危

機管理の分野により多様な視点をもたらすこととなり,この分野の発展の一助となると言える。

 次に考えられるのは,「研究対象の明確化」であろう。前述の「より多様な視点の導入」とも重

なるが,政軍関係の視点を導入することによって,危機と呼ばれる対象が明確にすることが可能と

なると考える。危機と一言に言っても,それが個人であるならば,犯罪や失業等であろうし,国家

であるならば,自国への攻撃や自然災害であろう。即ち,被害を受けるであろう立場によって大き

く異なるだけでなく,考え方によっては,不祥事を起こした役所や企業の組織防衛を・イメージする

ことも有り得るのである47。しかし,政軍関係の視点を導入することによって,危機の対象を国家

に対して被害を与える存在と規定することが可能となる。その上,この規定によって,安全保障学

(security studies)48の分野も包摂することとなり,学問分野としての成熟度を高めることが期待出

来る。

 また,社会的意義としては,政軍関係の視点を導入することによって,危機管理の要素の中でも

即応性が求められる応答性や復旧性の向上に資することが考えられる。言い換えるならば,災害時

に可及的速やかな復旧・復興を進める為の危機管理理論の素地を構築することが可能となる。これ

は,同時に多くの人命を救うことを期待することでもあり,その視点からも政軍関係の視座を導入

することは有益であると言える。以上を総合すると,政軍関係の視点を危機管理に導入すること

は,有益であると考えることが出来る。

おわりに

 以上,政軍関係と危機管理の相関関係について,理論と事例の両面から考察してきた。本稿で論

じた様に危機管理,特に政策等のソフト面に関する体系的な学問分野は未だ形成されているとは言

い難い。しかし,復旧支援等のハード面に引き上げられる形ではあるものの,着実に進歩している

ことも事実である。また,行政と地域住民との関係に関する研究については,他の分野を先行して

おり,そういった面からも危機管理の分野は,今後大いに発展が期待出来る分野であると言える。

 一方,政軍関係の分野も専ら行政機構や国際政治,政治史等の分野において,片手間的に研究が

行われてきた感がある。本稿では,政軍関係研究の蓄積を危機管理の分野に導入することを中心に

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論じてきたが,今後は危機管理の分野における研究の成果を政軍関係研究に導入することも検討す

る必要があるのではないかと考える。政軍関係研究への危機管理概念等の反映に関する研究は,非

常に興味深い課題であるが,本稿では論じることが適わなかったので,この問題については他日を

期して論じたい。

1狭義の政軍関係については,下記を参照されたい。小森雄太「政軍関係研究再考一諸概念の定義を中心に一」

 『政治学研究論集』第30号(2009年)43-59頁。

2高井三郎『知っておきたい現代軍事用語一解説と使い方一』(アリアドネ企画,2006年)12-13頁。

3後藤田正晴によると,crisis managementを「危機管理」と邦訳したのは,当時警察庁警備局付であった佐々

 淳行であるという。後藤田正晴,村山富市,岡野加穂留『若者と語る』(毎日新聞社,202年)48-49頁。こ

 れは,佐々の自著にも同様の記述が見られるので,恐らく間違い無いと思われる。佐々淳行「危機管理(公

 務員研究双書)」(ぎょうせい,1997年)1頁。また,官報での初出は,1983年10月18日に秦豊参議院議員よ

 り提出された質問主意書においてである。参議院質問主意書第17012号(昭和58年10月18日提出)。

4阿部齊,内田満,高柳先男編『現代政治学小辞典(新版)』(有斐閣,1999年)72頁。

5その最たるものが,2003年から2004年にかけて行われた武力攻撃事態対処関連3法(改正安全保障会議法,

 武力事態対処法,改正自衛隊法)及び有事関連7法(国民保護法,米軍行動円滑化法,特定公共施設利用法,

 国際人道法違反処罰法,外国軍用品海上輸送規制法,捕虜取扱法,改正自衛隊法,特定船舶特措法)の制定

 である。

6市川宏雄「企業にみる危機管理一雪印乳業食中毒事件にみる企業崩壊の過程一」中邨章編著『危機管理と行

政 グローバル化への対応』(ぎょうせい,2005年)107-109頁。

7例えば企業が不祥事によって倒産したとしても,同業他社によって市場の空白は補完される為,長期的には

 深刻な問題と成り得ないと言える。前掲「企業にみる危機管理」141頁。

8これ以外にも,地震予測等に関する研究も積極的に行われ,1979年には東京大学地震研究所を中心とした

 「地震予知研究協議会」が設置されている。

9但し,社会学の分野では,下記の様な優れた研究が幾つか存在する。田中伯知『災害と自衛隊:危機管理の

論理』(芦書房,1998年),福田充『メディアとテロリズム』(新潮新書,2009年)。

lO阪神大震災を教訓として,消防機動救助部隊(通称ハイパーレスキュー)や緊急消防援助隊・広域緊急援助

 隊が創設された。平成20年度消防白書(http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h20/h20/html/k2721000.

 html)(2009年8月25日検索)。

11阪神大震災を教訓として,災害対策基本法等が改正され,都道府県知事や市町村長だけでなく,警察署長等

 も自衛隊への派遣要請は要請が行えるようになった。災害対策制度研究会編『新 日本の災害対策』(ぎょ

 うせい,2002年)37-38頁。

12もっとも,出動した自衛隊も,交通渋滞や被災者がひしめく中で,部隊の移動・集結・宿営地の造営に手間

 取ったり,復旧支援の主体を陸上自衛隊第3師団から陸上自衛隊中部方面総監部へ変更したりと本格的な救

 援活動を開始するまでに3日程度要している。松島悠佐『阪神大震災 自衛隊かく戦えり』(時事通信社,

 1996年)44-49頁。

13阪神・淡路大震災教訓情報資料集(http:〃www.bousai.go.jp/linfo/kyoukun/hanshin_awaji/data/detail/

 1-2-3.pdf)(2009年8月25日検索)。

14前掲教訓情報資料集(http:〃www.bousai.go.jp/linfo/kyoukun/hanshin_awaji/data/detail/1-4-4.pdf)

 (2009年8月25日検索)。

15前掲教訓情報資料集(http:〃www.bousai.go.jp/linfo/kyoukun/hanshin_awaji/data/detail/3-3-1.pdf)

 (2009年8月25日検索)。

16自治体危機管理研究会編著『実践から学ぶ危機管理』(都政新報社,2006年)68頁。

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17前掲『実践から学ぶ危機管理』69-70頁。

18三宅島噴火災害教訓情報資料集(http:〃www.bousaLgo.jp/mfs/download/mfsO403.pdf)(2009年9月1日

 検索)

19青山槍『東京都副知事ノート 首都の長の権力と責務』(講談社,2007年)54-82頁。

20兵庫県企画管理部防災局防災企画課,震災対策国際総合検証会議事務局編『阪神・淡路大震災震災対策国際

 総合検証事業検証報告第1巻 防災体制』(兵庫県,2000年)1-3頁。

21田中伯知『災害と自衛隊一危機管理と論理一』(芦書房,1998年)30-40頁。

22阪神・淡路大震災教訓情報資料集(http:〃www.bousai.go.jp/linfo/kyoukun/hanshin_awaji/data/detail/

 3-3-1。pdf)(2009年9月1日検索)

23津金澤聰廣「流言飛語とメディア」黒田展之,津金澤聰廣『震災の社会学一阪神・淡路大震災と民衆意識

 (関西学院大学 阪神・淡路大震災研究シリーズ1』(世界思想社,1999年)159-191頁。

24久慈力『防災という名の石原慎太郎流軍事演習』(あけび書房,2001年)99-103頁。

25中央防災会議防災情報の共有化に関する専門調査会「防災情報の共有化に関する専門調査会報告」(2003年

7月)(http:〃ww.bousai.go.jp/chubou/8/haifu.4-2.pdf)(2009年8月27喉索)。

26東京都震災復興マニュアル第3章(http:〃www.bousai.metro.tokyo,jp/japanese/knowledge/DATA/

 xOd4e106.pdf)(2009年9月1日検索)

27中央防災会議災害教訓の継承に関する専門調査会「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 関東大震災

 【第2編】」(2008年3月)(http:〃www.bousai.go。jp/jishin/chubou/kyoukun/rep/1923-kantoDAISHINSAI

 _2/9_chap2-1.pdf)(2009年8月24日検索)。

28中邨章「行政と危機管理一準備,応答,復旧,減災一」前掲『危機管理と行政』9頁。

29韓国初の陸軍大将である白善燵は自著において,作戦指揮は「迅速であるべき」と述べている。白善樺『指

 揮官の条件:朝鮮戦争を戦い抜いた軍人は語る』(草思社,2002年)42頁。

30但し,最近は民間軍事会社(PMC)と呼ばれる民間企業が軍事に参入してきており,「戦争の民営化」とも

 いうべき状況が現出しているので,民主的な軍隊の誕生もおとぎ話の域を脱するかも知れない。前掲『安全

 保障のポイントがよくわかる本』212頁。

31実際,東京都の震災復興マニュアルでは,地域住民を巻き込んだ復興を目指すことが明記されている。東京

 都防災ホームページ(http://www.bousai.metro.tokyo.jp/japanese/knowledge/material_t.html)(2008年11

 月11日検索)。

32政軍関係研究における文民とは,「軍人以外の全て(no military)」とされることが多い。また,「文民」と

 いう語自体は,日本国憲法の制定過程において,我が国を占領していた連合国 軍最高司令官総司令部

 (GHQISCAP)に文民規定の憲法条文への挿入を求められた高柳賢三が捻り出した言葉であるという。三宅

 正樹『政軍関係研究』(芦書房,2001年)51-52頁。一方の軍部とは,広義に考えると,「軍隊(army)とい

 う武装集団のみを指すものではなく,軍事力管轄の政府機関を含めたすべて」となり,最も広義に解釈する

 と「暴力というものの予想されることが高い領域が軍事(military)であり,暴力の予想が低い領域が民事

 (civic)である」とされることが多い。内山正熊「現代における軍部・軍隊」『変動期における軍部と軍隊』

 (慶応通信,1968年)7頁。Lasswell, H. D. and Kapran, A. Power and Society(London:Routledge,1998),

 p.252.

331989年から1999年までの10年間だけでも,ルワンダ内戦(1990年)やユーゴスラビア紛争(1991-2000年),

 ソマリア内戦(1991年),コソゴ内戦(1996年),第1次チェチェン紛争(1994-1996年),第2次チェチェ

 ン紛争(1999年)等の地域紛争が発生し,国連平和維持部隊(PKF)等が派遣されている。防衛省編『平成

 20年度防衛白書』(ぎょうせい,2008年)参照。

34正規軍同士による戦闘以外の戦闘を指し,具体的には米国同時多発テロ(2001年)や第2次湾岸戦争

 (2003年)終結後に発生しているゲリラ戦が挙げられる。防衛大学校安全保障学研究会編著『安全保障学入

 門 最新版』(亜紀書房,2003年),防衛大学校安全保障学研究会編著『安全保障のポイソトがよくわかる本:

 「安全」と「脅威」のメカニズム』(亜紀書房,2007年)参照。なお,いわゆるイラク戦争(2003年)は,湾

 岸戦争(1990年)との関係性が強いと考えられる為,本稿では「第2次湾岸戦争」と表記している。

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35試験的に日米英仏独露の6ヶ国を抽出して比較したところ,国防予算の最多額は1989年から1991年であ

 り,その後漸減傾向にあることが確認出来た。なお,これについては,引き続き調査を行い,最終的には経

 済協力開発機構(OECD)加盟国程度まで拡大させたいと考えている。 Stoc㎞olm International Peace

 Research lnstitute OfUcial Web Site(http://milexdata.sipri.org/result.php4)(10/09/2009Last accessed).

36例えば,我が国では2006年に自衛隊法が改正され,それまで付随的任務とされた海外派遣が,通常任務に格

 上げされている。前掲『平成20年度防衛白書』参照。

37国連平和維持活動(PKO)においても,過度の内政千渉が行われない様に配慮されている。前掲r安全保障

 学入門』参照。

38一方,クラウゼヴィッッは戦争を「敵をしてわれらの意思に屈服せしめるための暴力行為」であると述べて

 いる。C. P. G.クラウゼヴィッッ(清水多吉訳)『戦争論(上)』(中公文庫,2001年)35頁。従って,その

 立場から考えると,軍隊は正しく「一つの政治的手段」に過ぎないと言い得ることは,留意する必要がある。

 前掲『戦争論(上)』63頁。

39自衛隊愛知地方協力本部公式ウェブサイト(http:〃www,mod,go.jp/pco/aichi/naritai/shigoto.htm1)(2009

 年9月17日検索)。

40防衛大学校防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房,2000年)参照。

41泉伸彦「RMAと軍事戦略」『立法と調査』第218号(2000年)31-34頁。

42我が国におけるシビル・ミリタリー・ギャップに関する研究としては,以下の様なものが挙げられる。彦谷

 貴子「日本にシビル・ミリタリー・ギャップは存在するか一自衛官・文民エリート意識調査の結果から」村

 井友秀,真山全編著rリスク社会の危機管理(安全保障学のフロンティア 21世紀の国際関係と公共政策②)』

 (明石書店,2007年)。

43災害等の非常事態における行政と地域住民との対立が想定される事例としては,昨今話題となっている国民

 保護法制の運用が挙げられる。高野眞澄「「国民保護法制」の法的構造」r高松大学紀要』第43号(2005年)

 19-36頁。

44例えば,危機管理の分野において著名な中邨章は行政学者である。また,それ以外にも危機管理の分野にお

 いて著名な学者は何人か存在するが,大体が理系(特に工学系)の学者である。

45我が国だけ見ても,政軍関係を研究している学者は,三宅正樹(西洋政治史),纐纈厚(日本政治史),廣瀬

 克哉(行政学)を始めとして多岐に渡っている。

46例えば,政軍関係の分野で著名な学老としては,ハンチソトン(S.P. Huntington)(比較政治学)やファイ

 ナー(S.E. Finer)(政治史),パールマター(A, Perlmutter)(地域研究),ジャノヴィッツ(M Janowitz)

 (社会学)が挙げられ,何れも下記の様な優れた研究を発表している。Finer, S, E. The Man on Horsebαck:

 the Role of the Military in/Politics(New Brunswick:Transaction Publishers,2002),Huntington, S. P. The Sol-

 dier and the 5‘α忽the Theory and Politics()f Civil-Military、Relations(Cambridge:Harvard University Press,

 1985),Janowitz, M., The〃military in the Political develoPment of new nattons: an essay in comParative analysis

 (Chicago:University of Chicago Press,1964),Perlmutter, A. The Military and Politios in Modern Times! on

 professionαls, praetorians, and revolutionary soldiers(New Haven:Yale University Press,1977)。

47前掲『危機管理と行政』4-6頁。

48「安全保障学」について,似た概念として「防衛学(defence studies)」や「軍事学(military studies)」が

 存在するが,殆ど差異は無いと考えられるので,本稿では特に区別すること無く用いることとする。

参考資料(後注掲載資料は除く)

Desch, M. C. Civilian control of the military’the changing security environment(Baltimore:Johns Hopkins

 University Press,1999).

Feaver, P. D. Armed servants:agenay, oversight, and civil-military relations(Cambridge;Harvard University

 Press,2003).

Lダイヤモソド,M. F.プラットナー(中道寿一監訳)『シビリアソ・コントロールとデモクラシー』(刀水書

 房,2003年)。

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L.スミス(佐上武弘訳)『軍事力と民主主義』(法政大学出版局,1954年)。

S.P.ハソチソトン(内山秀夫訳)『変革期社会の政治秩序(上・下)』(サ・イマル出版会,1972年)。

麻生幾『情報,官邸に達せず』(新潮文庫,2001年)。

岩井奉信『立法過程』(東京大学出版会,1988年)。

小林宏農『国防の論理 西ドイツの安全保障と憲法との関係』(日本工業出版社,1981年)。

中邨章,幸田雅治編著『講座危機管理行政第1巻 危機発生後の72時間』(第一法規2006年)。

中邨章監修,幸田雅治編著『講座危機管理行政第2巻 危機発生!そのとき地域はどう動く』(第一法規,

 2008年)。

廣瀬克哉『官僚と軍人一文民統制の限界』(岩波書店,1989年)。

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