(名古屋第一工場787工場)名古屋第一工場787工場。巨大な装置群が開発・導入された。...

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Page 1: (名古屋第一工場787工場)名古屋第一工場787工場。巨大な装置群が開発・導入された。 2007年夏頃の初飛行が予定されている開発中の中型旅客機「787ドリームライナー」

現 場 を 訪 ね て

(名古屋第一工場787工場)(名古屋第一工場787工場)

Kawasaki News 144 2006/1010 11

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(左)自動積層機で一体成形された製造前確認試験用の「前部胴体」(直径約6m、長さ約7m)。これをオートクレーブ(加熱加圧窯、10~11ページ写真)で焼き固める。(右)間近に見る「前部胴体」はさすがに大きい。

名古屋第一工場787工場。巨大な装置群が開発・導入された。 2007年夏頃の初飛行が予定されている開発中の中型旅客機「787ドリームライナー」。

7月10日、盛大に行なわれた竣工式。

空から見た「名古屋第一工場」の全景。右の白い建屋が「787工場」。

川崎重工の担当部位(赤色部分)

前部胴体 主翼固定後縁主脚格納部

 米国・ボーイング社が国際共同開発を進めている新型旅客機「787ドリームライナー」(以下「787」)の、川崎重工担当部位の製造と組み立てを行なう787工場。この工場では先ごろ、製造前確認試験用の前部胴体を製作した。 「工場の新設備で造った前部胴体の第一号です。新設備を調整しつつ、一つひとつの工程を検証しながら、時間をかけて慎重に造りましたが、作業そのものはほぼ計画どおりに進みました」(川崎重工航空宇宙カンパニー生産本部生産技術部 谷口明参与) この前部胴体は、1か月半ほどかけてさまざまな試験で検証された。その検証を基に、ボーイング社が行なう各種試験用機体、数機分の前部胴体などを造るが、その製造作業も始まっている。

 これより先、川崎重工の航空機製品の組立工場である名古屋第一工場(愛知県弥富市)の敷地内に完成した「787工場」の竣工式が、7月10日に行なわれた。竣工式の招待者は神田真秋・愛知県知事、川瀬輝夫・弥富市長、地元選出衆議院議員の武藤容治氏、園田康博氏、ボーイング社バイス・プレジデントのランディ・ハーレー氏などボーイング関係者、鹿島建設・中村満義社長など施工関係者など合わせて約110名にのぼった。 式典の挨拶で、川崎重工の大橋忠晴社長は、「この787プログラムは、当社の航空宇宙カンパニーの中でも最重要プログラムのひとつであり、当工場は今後の川崎重工の中核工場として、地元愛知県そして弥富市にも貢献できる工場になるものと考えております。当社はこの工場で、『787』の前部胴体をはじめとする当社担当部位を最新鋭の設備にて生産します」 などと述べた。 また、ボーイング社バイス・プレジデントのランディ・ハーレー氏は、「私は、組立開始、川崎重工業からの初号機出荷、ロールアウト、初飛行、初号機引き渡しといった、今後2年弱の短い期間にこの工場とエバレット(編集部注/米国ワシントン州エバレット市、ボーイング社の主力工場の

エバレット工場がある)で予定されているいくつかのイベントを共に祝えることを楽しみにしています」 と新工場の完成を祝った。

 川崎重工が当初から国際共同開発に参画している「787」は、200~300席の中型旅客機だ。軽量化のために航空機全体に高度な複合材料を使用し、スーパーコンピューターによる計算流体学に基づく斬新な流線型のデザインを実現。同クラスの航空機と比べて燃料効率が約20%向上し、貨物搭載スペースが最大45%増加した。快適な湿度に保たれた機内、幅の広い座席・通路、大きな窓など斬新な機内環境を創り出した“革新的な航空機”である。 製作手法も革新的だ。川崎重工の

担当部位(イラスト参照)のひとつ、前部胴体の製造では世界で初めて、全複合材製の一体成形構造が採用された。従来法のように何枚かの胴体パネルを組み立てて丸い胴体にするのではなく、軽量の複合材料(炭素繊維に固まっていない樹脂を沁み込ませたもの)を自動積層しながら継ぎ目なしの胴体を一体構造として製作する。しかも、その一体構造にフレームなどを取り付け、配管やダクト、配線など艤装も行なう。そして、中部国際空港からボーイング747の改造機で輸送するという。大型航空機では前例のない方法がいくつも採用されている。

 こうした“革新的な製作手法”に対応した「787工場」は、延べ床面積が約2万m2。導入された各種の最新鋭設備は多岐にわたっている。 一体成形構造の前部胴体は、①積層工程→②オートクレーブ工程→③部品位置決め穴のドリルおよびトリム工程→④非破壊検査工程→⑤フレーム取付および自動ファスナー取付工程→⑥床その他の部品取付工程、といった流れで製作されるが、それぞれの工程に世界最大級や世界初と形容される設備がずらりと並んでいる。 たとえば①の工程のプリプレグ自動積層機は、直径約6mの胴体成形型に複合材料を巻き付けて「787」の前部胴体を形成する。0.5インチ幅の材料を32本同時に積層可能で、16インチ(約41cm)の同時積層は世界最大級のサイズ。②では、積層成形された前部胴体を高温高圧で焼き固めるが、これを行なうのがオートクレーブ(加熱加圧窯)(川崎重工グループが設計・製作)。内径が8m、長さが17mで世界最大級。炉の蓋の

重量だけでも約120tという超大型炉で、100t級の部材を数時間で最高200℃まで加熱できるという。 ④に用いる超音波非破壊検査装置は直径6m、長さ12.5mの試験体を検査できる世界初の大型機用一体成形複合材胴体の検査装置、などといった具合だ。各設備間の搬送は、オートクレーブ用無人搬送車が行なう。

 「787」は現在、2008年の運航開始を目指して開発の最終段階にある。ちなみに「787」は、2004年春に開発を宣言し、2007年夏に初飛行を目指すという「異例の短期間による開発」(谷口参与)が国際協調によって進められている。なお、「787」の受注は世界的な航空機需要の拡大を背景に好調で、世界の航空会社からの受注累計は約400機に及んでいる。 この新工場から2007年初めに、ボーイング社に向けて前部胴体を初出荷する予定である。そして、2007年夏頃には「787」の初飛行が予定されている。

現 場 を 訪 ね て

名古屋第一工場に「787」専用の新工場が竣工「前部胴体」の初出荷は2007年初めの予定

新設備を調整し、各工程を検証しながら製作

「最先端の技術・設備を導入」と大橋忠晴社長

「前部胴体」の製作に“革新的手法”を導入

世界最大級や世界初の設備が並ぶ新工場

2007年初めに「前部胴体」を初出荷の予定

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