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H28 08-27 産学連携学会 第4回研究会(1h)
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IR とは
-その意義と具体例-
森 雅生(東京工業大 学 情報活用 IR 室)
平成 28 年 8 月 27 日 第 4 回 産学連携学会 リサーチアドミニストレーション研究会
第 4 回 産学連携学会 RA 研究会 H27.08.27 (東京工業大学)
組織としての大学のあり方が問われています。
でも、まだ足りないと言われている気がする。
また、教育の成果は長期的・質的に測られるべき
という意見も理解できます。
日本の研究者による個別の成果の中には世界的に高く評価されているものも少なくありません。
では「まだ足りな
い」という空気は
どこから来るのでしょうか。
《大きな勘違い》 大学教員の成果の集積 ≠ 大学の成果
《政府や世論の見方》研究力を持つ教員が集まる大学に どのような意義と成果が期待できるのか
納税者の視点への説明責任
説明できないなら、世界で戦える大学にしろ!(例: SGU, 指定国立大学)
2 つの期待
1. 納税者が「投資」したくなる
ような大学への転換
2. 大学経営の手法が確立し自律的経営が実現
質的評価と
それを効果的に支える量的評価
内容
1. イントロ
2. IR の意義と目的(一般論)
3. 国内における IR への期待
4. 事例紹介① 出身高校分析② 教育の国際化への取り組みに対するモニタリング③ GPA または成績の平均点から何を読み取るか
5. おわりに
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2. IR の意義と目的一般論
平成 28 年 8 月 27 日 第 4 回 産学連携学会 リサーチアドミニストレーション研究会
平成 28 年 8 月 27 日 第 4 回 産学連携学会 リサーチアドミニストレーション研究会 14
2. IR の意義と目的 ◇ 多くの大学では,各業務における IT 化の進展。 2000 年代以降の急速な電子化・ネットワーク化 教務,人事,財務・経理など 効率化が最大の理由
◇ 平成 16 年以降、新業務に大学評価が加わる。 大学の活動=文化的活動のアーカイブ ステークホルダーへの説明責任 内部質保証(改善サイクル)の実質化
15平成 28 年 8 月 27 日 第 4 回 産学連携学会 リサーチアドミニストレーション研究会
2. IR の意義と目的
◇ 内部質保証
機関の目的に沿って機関の活動をモニタし,必要な場合は客観的データに基づき改善を行い,それを不断に継続する。
1. 機関の目的や評価の基準
2. モニタリングの仕組み
3. 改善の仕組み
16平成 28 年 8 月 27 日 第 4 回 産学連携学会 リサーチアドミニストレーション研究会
◆ 内部質保証を実質化するための機能= IR
◇ IR とは
“機関の意思決定や計画策定に資する
情報の提供“
J. Saupe 1990
2. IR の意義と目的
17第 4 回 産学連携学会 リサーチアドミニストレーション研究会平成 28 年 8 月 27 日
IR技能
情報技術
統計技術
高等教育行政
IR ・データサイエンスに必要な技能と素養
文脈的(政治的)知能
問題解決知能
技術的・分析的知能
IR 人材の素養 ( テレンジーニ )
IR 人材の技能 ( ダベンポート )
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2. IR の意義と目的(海外事例) 米国の場合
◦ 多くの大学は、学外からの各種データ提出に対応する集計作業。◦ 州立大学システムでは、学生の成績データが州政府の高等教育局
IRオフィスに一元的に集められる。◦ 主に教育に関するデータとその分析◦ 日本との違い「データは大学のものである」
事例 1 )ペンシルバニア州立大学◦ Planning & Institutional Assessment◦ 大学全体および、学内組織の計画立案および自己点検・評価の支援。
事例 2 )フロリダ州立大学◦ データ収集とその提供に徹している。◦ サービス対象は、管理職、一般教職員、学生におよぶ。
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2. 国内における IR への期待さまざまな戦略的推進事業(文科省HP より転載)
( 1 )世界をリードする教育拠点の形成
博士課程教育リーディングプログラム• 平成 27 年度予算額: 178億円(平成 26 年度予算額: 185億円) →俯瞰力と独創力を備え、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成するため、産学官の参画を得つつ、博士課程前期・後期一貫した世界に通用する質の保証された学位プログラムを実施する「リーディング大学院」の構築を支援する。
スーパーグローバル大学等事業• 平成 27 年度予算額: 87億円(平成 26 年度予算額: 99億円) →我が国の高等教育の国際競争力の向上及びグローバル人材の育成を図るため、世界トップレベルの大学との交流・連携を実現・加速するための人事・教務システムの改革など国際化を徹底して進める大学や、学生のグローバル対応力育成のための体制強化を進める大学を支援する。
大学の世界展開力強化事業• 平成 27 年度予算額: 24億円(平成 26 年度予算額: 28億円) →大学教育のグローバル展開力の強化を図るため、我が国にとって戦略的に重要な国・地域との間で、質保証を伴った学生交流の実施等を推進する国際教育連携やネットワーク形成の取組を支援する。
•情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業• 平成 27 年度予算額: 4億円(平成 26 年度予算額: 5億円) →情報技術を活用して社会の具体的な課題を解決できる人材を育成するため、大学や産業界による全国的なネットワークを形成し、実際の課題に基づく課題解決型学習等の実践的な教育を推進
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さまざまな戦略的推進事業(文科省HP より転載)
( 2 )革新的・先導的教育研究プログラムの開発推進
地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)• 平成 27 年度予算額: 44億円
大学教育再生加速プログラム(AP)• 平成 27 年度予算額: 12億円(平成 26 年度予算額: 10億円)
大学間連携共同教育推進事業• 平成 27 年度予算額: 22億円(平成 26 年度予算額: 24億円)
大学等における地域復興のためのセンター的機能整備事業• 平成 27 年度予算額: 10億円(平成 26 年度予算額: 11億円)
産業界のニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業
などなど、ほか高度医療人材育成関連事業にも 5件。
平成 27 年度 381億円。大学平均 4700万円投資されている。
2. 国内における IR への期待
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「戦略」とは?ー 特定の目的を達成するため、大局的・総合的な見地から活用可能な資源を
効果的に運用する方法。
そもそも大学には戦略という発想はなかったー 「特定の目的」というものがなく、学位を授与するための教育を実施し、
各々の目的に照らして研究活動を行っていた。
文科省からの資源配分の変化ー 国立大の法人化および教育改革以後、競争的な資源配分への変遷。ー テーマごとに目的志向の強い競争的資金事業による資源配分。
本丸は教育改革、国際化、ガバナンス強化ー 自立的・自律的な大学のあり方に期待。ー 客観的根拠に基づく大学経営を迫られている。ー IR の必要性が強調される
私立大学等教育研究活性化設備整備費補助金 大学ガバナンス改革推進について(中教審大学分科会 2014 )
2. 国内における IR への期待
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IR ( Institutional Research 、機関研究・機関調査)
一般的定義 機関の計画策定や意思決定に資する情報の提供( Saupe 1990)計画策定や意思決定 = 組織の執行部、経営者情報の提供 = IR 組織
• 単なる情報提供(米)のみならず、施策の提案なども期待(日)されている。• 情報を収集して、課題に応じて分析し可視化する=インテリジェンス
国内の IR への期待教学 IR = 教育改善を目的とした IR
• 大学個別の取組み‥‥立命館大、京都工芸繊維大など• 大学連携‥‥ IRコンソーシアム、 HATOプロジェクト等• アンケート調査× 成績情報(学生 ID で結合)
研究 IR =研究戦略( URA )業務運営(評価)データサイエンスを駆使、高度な問題解決能力への要求
2. 国内における IR への期待
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管理者 経営者
仲介者 (IR )
質の高い意思決定
McLaughlin とHoward による情報支援サイクル( 1998 ) データの報告
意思決定
課題同定
データの収集蓄積
DWH 分析
2. 国内における IR への期待
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大学評価と IR は密接に関連している
◦ 大学基準協会:内部質保証(基準 10 )など◦ それぞれの教育の取り組みが適切に検証されているか。◦ 社会に対する説明責任や情報の公開がなされているか。
◦ 大学評価・学位授与機構:教育の内部質保証システム(基準8)◦ 教育活動の自己点検評価と改善の仕組みの確立,機能。◦ 教育に従事する者に対する改善の取組。
★ すべてデータに基づく客観的な点検評価が基礎 ★ データがなければ評価は不成立→ IR からのデータ提供 ★ データ提供への理由づけとして評価対応は十分
2. 国内における IR への期待
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教育の目的
入学者受入方針教育課程編成方針
学位授与方針
IR: 活動のモニタリング(観測と分析)
デー
タ分
析に
基づ
く評
価と
改善 教育の内部質保証:分析の枠組み
DWH
2. 国内における IR への期待
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2. 国内における IR への期待
研究の目的1. 組織運営(人・資金)2. 環境整備(場所・設備)
3. 研究成果
IR: 活動のモニタリング(観測と分析)
デー
タ分
析に
基づ
く評
価と
改善 研究の内部質保証:分析の枠組み
DWH
学術的インパクト
社会関連性
質と量
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2. 国内における IR への期待
大学の目的
認証評価
中期目標中期計画
IR: 活動のモニタリング(観測と分析)
デー
タ分
析に
基づ
く評
価と
改善
業務運営の内部質保証:分析の枠組み
DWH
年度評価 年度評価
競争的資金による大学事業
定期的な外部評価中間評価
部局ごとの自己点検・評価
内容
1. イントロ
2. IR の意義と目的(一般論)
3. 国内における IR への期待
4. 事例紹介① 出身高校分析② ドロップアウト防止:成績の平均点の推移③ ドロップアウト防止:修得単位と平均点の相関④ 大学ランキング分析⑤ 研究活動の活性化:機関の相対インパクト向上
5. おわりに
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4. 事例紹介
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① 出身高校分析
◦ 目的:定員充足のため、どの高校からの入学が多いかを把握する。◦ 注意点:高校について個別に見るのではなく、全体の分布を俯瞰。◦ 使用するデータ: 15 年分の学生の出身高校情報。◦ 方法:各高校において 5 カ年で何人の学生が入学したかを集計。◦ グラフ:集計値を降順に並べ替え、折線グラフで表記。◦ 何がわかるか 特定の高校からの入学者の集中状況。 分布の変遷
入学者
高校
入学者
高校
入学者
高校
学生が減りつつあるので今後注視していく必要が有る。
ロングテール化に注意。入学者で同窓生のつながりができにくくなりつつある。
4. 事例紹介
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① 出身高校分析
わかったこと◦ 一極集中の減少 ⇒ 入学後の学生の変化に現れてないか。
◦ 同じ高校であった学生の増加 ⇒ 学内「独りっ子」生活への影響。
◦ 全体の状況を見るには、⇒ 高校を特定せずに情報を圧縮する。⇒ 棒グラフや折れ線グラフで簡単な可視化を試みる。
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2. 事例紹介 ② ドロップアウト防止
◦ 右のグラフは、ある資格取得系の大学の 3 つのコースにおける学生の成績平均点の推移グラフ。
問「社会福祉士の成績が良くない。なにが原因なのか?
もしも改善できるのであれば施策は何か?」
4. 事例紹介
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問「社会福祉士の成績が良くない。なにが原因なのか?
もしも改善できるのであれば施策は何か?」 当該コースの学生の入
学時の成績については,問題はなかった。
入学後の意欲低下がみられる(アンケート)。
なぜ意欲が低下したのか?社会福祉士という資格への理解が不足。
入試広報や高校説明会の改善を図った。
4. 事例紹介
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③ ドロップアウト防止 単位と成績の相関
◦ 左のグラフは、各卒業生の修得単位数と平均点について散布図にしたものである(一つの点が独りの学生を示す)。
問「単位が取れずに卒業できない学生にばらつきがあるが、何か違いがあるだろうか?
また改善できる点はあるか?」
4. 事例紹介
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問「単位が取れずに卒業できない学生にばらつきがあるが、何か違いがあるだろうか?
また改善できる点はあるか?」A グループ
単位も取れておらず,各授業についても成績が低い。
学習意欲向上などの取り組み。
B グループ 各成績は良いのに単位が取
れていない。 不適合学生や経済的困難。
4. 事例紹介
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④ 大学ランキング
THE も QS も大学が直接的努力(自力)でスコア向上に寄与できるのは,被引用数。 ただし,ランキングスコアから得られる分布からみて,かなりの修正が加えられていることに注意。上位でも競争は激しい。
国際会議や学術雑誌に投稿するだけでなく,主催・編集側として関与すれば,国際共著率の向上と,研究評判の向上に寄与。
教育評判や国際化指標の向上は制度的に難しい面がある。
4. 事例紹介
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教育評判 国際性 研究評判
被引用数THE 世界大学ランキングスコア分布( 0 〜 100pt )
産業界からの資金 総合
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国内8大学研究力分析
⑤相対インパクトを増やすには どうすれば良いか
4. 事例紹介
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教員一人当たりの学生数にはあまり関係なさそうだ
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論文の絶対数はあまり変わらない。
Web of Scienceの採録未対象の論文
を採録対象にする努力で被引用数 増加を狙う。
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まとめ IR の一般的な定義
機関のデータセンターとしての役割 米国の一部ではプランニングと協働
国内の期待 効率的データ収集機能 素早いデータ分析 高度な問題解決技能
IR の事例 教育の IR については、学生アンケートと成績情報の組み合わせ 手法については未だ開発途上 大学の文脈によって目的は大きく異なる
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IR のその先 ネガティブイメージからポジティブイメージへ
教職員が活動の成果を実感できるポジティブな情報 例:研究者の活動+大学が運営する研究者情報 DB 寄生虫の研究を癌の早期発見へ適用 例:とある大学の法学部の国際性 タイ国の行政,法曹界への人材育成 経年で変化を見る
誰に説明しているのか 大学業界の中だけで伝わるアカウンタビリティーから,国民が
納得するアカウンタビリティーへ 国民(一般)の視点,国民に支持されること。 例:「はやぶさ」,「 2位じゃダメなんですか」