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1. はじめに:本研究の位置付け サービス・マーケティング研究は、特定の

サービスやサービス産業だけを対象とする

のではなく、広く普遍的な理論体系を構築す

ることを目的として発展してきたように見

受けられる。例えば、本稿で着目する品質測

定尺度に関する研究で代表的なSERVQUAL

(Parasuraman, Zeithaml and Berry 1988)は、

幅広く種々のサービスに適応可能なものと

して提唱され、その後の追実験、批判的論文

含め複数のサービス分野を対象に実証研究

を行ったものが多い。

 しかし、消費者の生活水準や生活環境、社

会情勢の変化から、より高度な専門サービス

(プロフェッショナル・サービス)に対する需

要が高まっており、これに焦点を絞った研究

の重要性も高まってきたと考えられる 1。

 プロフェッショナル・サービスとしては、

弁護士や会計士など、資格によりその知識・

技能を保証された人的専門サービスが代表

例として挙げられる。医師や看護師が提供す

る、より一般的に消費者に広く利用され、認

知されている医療サービスもこれに含まれ

る 2。もっとも、病院を対象とした場合、疾

患や症状によってプロフェッショナル・サー

ビスの提供主体の関わりも、提供されるサー

ビス内容も一様でなく、更にそのことがサー

ビス品質の測定・評価にどのように影響する

要約(アブストラクト)

 本研究では、保険薬局を対象としたサービスの知覚品質に関する調査・分析を行い、先行研究との比較を

通して新たな知見を探った。ここで明らかになったことは以下の3点である。1つに、今回の薬局に関するサー

ビス品質の測定・評価次元は、5 次元に弁別されたが、これらは SERVQUAL の基となった 10 次元に内包

され、薬局サービスとしての特性から SERVQUAL のオリジナルとは若干異なる内容で 5 次元に集約された

と考えられること。2 つに、他の価値概念との関連性を考えた場合、統計学的な論拠からも階層構造が支持

され、北欧学派の 2 元論に集約されること。3 つに、総合評価などへの相対的影響度は、全体では表層的な

品質評価よりも本質的な品質評価の方が影響度は高いが、顧客セグメントごとで検討するとそれぞれ全く異

なること。以上の知見は、プロフェッショナル・サービスを提供する組織のマネジメントにおいて、有用な

示唆を持つものと考えられる。

キーワード プロフェッショナル・サービス、サービス品質、顧客満足、行動意図、SERVQUAL、測定尺度の次元

プロフェッショナル・サービス提供組織に対する品質評価構造に関する実証研究

―保険薬局を対象として―櫻 井 秀 彦(北海道薬科大学)

吉 町 昌 子(株式会社ツルハ)

早 瀬 幸 俊(北海道薬科大学)

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かも把握しにくい。

 そこで本研究ではプロフェッショナル・

サービスを提供する組織として、保険薬局 3

に焦点を当てる。保険薬局であれば、法的に

も薬剤師のみが医療サービスを提供してお

り、対象や範囲が明確となる利点がある。

 以下、本稿では先行研究の系譜を踏まえ、

本研究での問題意識を示した後、保険薬局を

対象としたサービスの品質測定尺度、ならび

に総合評価との関連性(これを「品質評価構

造」と定義する)についての実証分析を行い、

先行研究との対比の中で、プロフェッショナ

ル・サービス提供組織の知覚品質評価に関す

る種々の検討を行うことにする。

2. 先行研究の系譜と本研究の問題意識 サービス品質に関する研究は、測定方法

(Cronin and Taylor 1992, 1994; Teas 1993,

1994; Brown, Churchill and Peter 1993;

Parasuraman, Berry and Zeithaml 1994)や、

次元の弁別妥当性、安定性(Carman 1990;

Parasuraman, Zeithaml and Berry 1991;

Babakus and Boller 1992; Cronin and Taylor

1994; Mels, Boshoff and Nel 1997)の問題に

関する論争の時代を経て、他の価値概念との

関 連 性(Boulding et al. 1993; Oliver 1997;

Cronin, Brady and Hult 2000; Dabholkar,

Shepherd and Thorpe 2000; Olsen 2002)に

議論の中心が移ってきている。

 その中で、プロフェッショナル・サービス

提供組織である病院に対して、これらの研究

方法を適用した事例もあるが(Babakus and

Mangold 1992; Mangold and Babakus 1991;

Taylor and Cronin 1994; 中村 2007)、それ

以上に SERVQUAL とは異なった独自の質

問項目による実証研究(Brown and Swartz

1989; Shemwell and Yavas 1999; Carman

2000; Dagger, Sweeney and Johnson 2007; 藤

村 1995; 山本 1999; 余田 2001)の方が多い

ようである。

 しかし、あえてプロフェッショナル・サー

ビスという特殊なサービス提供組織の一例

として病院を対象としておきながら、一般的

なサービスとの次元の内容比較や、総合評価

等への影響度の相違を検討するなど、その特

殊性から起因する帰結にはそれほど着目さ

れていないように思われる。そのため、本研

究の問題意識としては、まず SERVQUAL

の測定尺度の次元との比較において、より専

門的な次元である「知識・能力」、医療で重

要な「安全性」やホスピタリティなどの「接

遇」に近いものが抽出されるか否か、また、

他の価値概念との関連性を検討する際には、

それらコア・サービスに関係すると目される

次元が、相対的に大きな影響を与えるか否か

を確認することにある。更に本研究では、比

較的大きな数の標本が確保可能なことから、

顧客属性等によって、評価構造にどのような

違いが生じるかも検証する。

 以上、本研究では薬剤師というプロフェッ

ショナルのみが独占的にサービス提供を行

う組織である保険薬局を対象として 4、先行

研究との次元の比較や、他の価値概念との関

連性を踏まえた評価構造の検証、更にその次

元間の相対的重要度について顧客サンプル

全体と顧客属性等セグメントごとでの分析

を行うことなどを通して新たな知見を探る。

3. 調査・分析方法3.1 独自の質問項目の設定理由について

 調査票作成に当って、薬局が提供するサー

ビスや機能を網羅し、的確に表現した設問項

目を新たに独自検討した。その理由は、まず

SERVQUAL の設問内容は、様々な業種の

サービスに適応させるために一般化されて

おり、得られた結果が薬局のサービスや機能

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を正確に表現しているとは言い難いことに

よる。Carman(1990)でも指摘されている

ように、設問は適用する業種ごとに改変され

る必要が考えられ、Parasuraman, Zeithaml

and Berry (1998) でも、サービス提供組織ご

とでの調査目的による、改変・増補の可能性

について言及している。実際に薬局側へこの

設問を提示したところ、設問と尺度が抽象的

で、薬局の業務に直接結び付けての解釈がし

づらいとの評価を受けた。本研究の趣旨から

も、重点を置くべき領域や改善点の理解が容

易となる必要がある。

 更に、SERVQUAL 提唱後、既に様々な

対象および方法で多くの実証研究が報告さ

れてきており、次元の弁別妥当性を検証する

よりも、本研究のように、より特定的な設問

群から抽出された次元を、他の先行研究と比

較検討することで、共通する次元や独自の次

元を確認し、更にそれらと総合評価との関連

性などを検証するなどして、新たな知見や研

究上の課題を探求する方が、より有意義であ

ると考えられたためである。

3.2 調査票の構成内容

 40 名程度の患者および直接本研究に関与

しない薬剤師へのプリテストを経て、表 1 に

示した 15 項目による薬局機能・サービスに

関する設問を設定した。加えて、総合評価と

して、全体満足、再来意図、他者への推奨意

図の 3 項目も設定した。また、SERVQUAL

では 7 点法で測定しているが、ここではわ

が国で広く一般的に用いられている 5 点法

とした。これは、Babakus and Mangold (1992)

などと同様、設問数がオリジナルの 22 項目

から 15 項目、スケールも 5 段階となること

で、各設問の事前と事後、更に総合評価に回

答する患者の負担を軽減でき、有効回答率の

低下や、自覚症状がない、または症状の軽い

患者の回答率が相対的に高まるなどのバイ

アスを、より避けることができる。かつ、設

問が薬局機能をそのまま表現するため、薬局

側に結果を反映しやすいといった利点が生

じる。

 本研究では、薬局が提供する医療サービス

および機能に関する設問項目について、知

覚結果と、事前期待の代わりに重要度を問

い、そのギャップ値を分析データとした。事

前期待ではなく重要度を用いたのは、本調査

前の予備調査で複数の回答者からの「期待」

という用語に違和感があるという指摘から

である。これは、Crossno et al.(2001)や

Burns, Graefe and Absher (2003) でも行われ

ている。SERVQUAL を図書館に適用した

Crossno et al.(2001)では、図書館は利用

経験者が多く、「期待度」より「重要度」のワー

ディングの方が理解されやすいとしている。

レクリエーション施設を対象とした Burns,

Graefe and Absher (2003) でも、先行研究レ

ビューで理論的整合性を検討した上で、知覚

結果と重要度のギャップ値で総合評価への

影響を検討している。また、病院を対象とし

た田久(1994)では、「初診患者以外の再来、

もしくは再来初診患者は、既に病院のサービ

スを受けているため、純粋な事前期待を測定

表1 設問と略称

社会活動地域の健康増進・維持のための啓蒙活動、社会活動への取組15.

薬の説明薬の説明1.略称質問項目

プライバシープライバシーへの配慮14.お薬手帳お薬手帳13.ミス防止調剤ミスを防ぐ手立て12.OTC品揃え大衆薬、衛生・介護用品、健食等の品揃え11.待合室待合室のサービス10.待ち時間待ち時間の短縮9.営業時間営業日、営業時間8.立地薬局の立地7.いたわりいたわり・心配り6.説明時間薬剤師からの十分な説明時間5.相談応対疑問や相談に対する対応・配慮4.注意説明薬や病気に関する生活上の注意点の説明3.GE説明ジェネリック医薬品に関する説明2.

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することは出来ない。」として「重視度」を

用いている。余田(2001)では同様の趣旨

から、病院サービスに対する純粋な事前期待

を測定するため、反対に新規患者のみに対

象を絞った調査・分析を行っている。保険

薬局においても、過去の調査(櫻井他 2007;

櫻井他 2009)の新患率は約 7 ~ 8%であり、

多くが既存患者のため同様のことが言える 5。

 以上のことから、本研究では分析の厳密化

のため、新規患者を分析対象から除外し、当

該薬局について利用経験のある患者のみを

対象とする。

 更に、当該薬局の利用状況に関する質問項

目の他、患者属性などセグメントごとによる

分析を行うため、性別、年代などに関する質

問に加え、利用頻度(はじめて、ときどき、

いつも・かかりつけ)、急性/慢性、薬局選択

の理由についても設定した。

3.3 本調査の対象と調査方法

 本調査は、2007 年 9 月 16 日から 2 週間、

主に東日本で展開する大手チェーン薬局傘

下の 160 店舗に来局した患者に対して実施

した。地域ごとの特性、薬局の店舗規模やド

ラッグストア併設型など店舗形態の違いに

よる影響は考えられたが、今回調査対象とし

た薬局は 1 企業のグループ薬局でサービス・

ポリシーは同じであり、対象者の利用目的も

処方せん調剤で同じであることから、全店舗

のデータをまとめて分析を行うことにした。

 調査票は来局順に直接配付し、服薬指導前

にフェイスシートと重要度について回答し、

服薬指導後に知覚結果を回答、記入後に回収

ポストへ投函する方式で回収した。

3.4 分析方法

 本研究での実証分析による検証は、因子分

析と共分散構造分析で行い、以下の各検討段

階で対立モデルを比較検討した。

(ⅰ)測定尺度に関する検討

まず、患者の薬局に対する評価次元

を明らかにするため、15 項目に関して

の重要度と知覚結果の差により求めた

品質評価を対象とした因子分析を行っ

た。この結果を Parasuraman, Zeithaml

and Berry (1985) や SERVQUAL などと

比較検討した。

(ⅱ)評価構造に関する検討

上記の結果をもとに、個々の品質評

価次元が総合的な評価指標に対してど

のように影響しているかを把握するた

めに、共分散構造分析にて以下のモデ

ルの検討を行った。 ● 直接モデル:因子分析によって抽出

された次元から直接的に総合評価変

数に影響するようパスを設定したモ

デル。 ● 階層モデル:因子間相関や因子の内

容から下位概念を構成し、集約した

下位概念から総合評価変数へのパス

を設定することによって、下位概念

から総合評価変数への影響を検討し

たモデル。

(ⅲ)影響要因の探索

上記のサンプル全体でのモデルを基

に、患者属性等によりセグメント化し、

母集団別分析でモデル適合を確認した。

その後、多母集団同時分析により配置不

変性の確認と推定値の差の検定を経て、

等値制約での測定不変性を検討した。

各母集団は男 / 女、利用頻度(いつ

も・かかりつけ / ときどき)、慢性 / 急

性、薬局選択理由、50 代以下 /60 代以

上のセグメントで検討した。なお、利

用頻度と急性 / 慢性については、クロ

スでの分析も行った。

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 モデルの評価は、GFI、AGFI、RMSEA、

AIC、BIC 等の各適合度指標を用いて総合的

に判断する。なお、今回のサンプル数は患者

属性ごとで見ても比較的大きいため(n=1,294

~ 8,377)、χ2 値は用いないことにした(星野 ,

岡田 , 前田 2005)。

4. 結果4.1 調査結果

 調査票は 23,250 部の配付に対し、分析対

象とした 15 項目と総合的な評価指標のすべ

てに回答があった有効回答は 8,995 部で、有

効回答率は 31.8%であった。このうち、本

稿では新規患者を除く既往患者 8,377 名分の

データで分析を進めていくことにする。

 対象となった患者の性別は男性:女性

が 36.5%:64.5%、年齢層は 10 代が 6.7%、

20 代 が 12.9 %、30 代 が 28.9 %、40 代 が

16.5%、50 代が 13.7%、60 代が 12.0%、70

代以上が 9.5%であった 6。当該薬局の選択

理由は、「病院から近いから」が 49.9%、次

いで順に「自宅から近い」が 17.1%、「薬の

情報提供や説明が良い」が 9.6%、「待ち時

間が短い」が 8.0%で、残りの理由はすべて

5%未満であった。

4.2 品質測定尺度の次元の検討

 15 項目の探索的因子分析の結果を表 2 に

示す。次元数については堀(2005)になら

い、各手法で推奨された因子数 3 ~ 6 の間で、

累積寄与率 60%以上、かつ先行研究との対

比や実務上での解釈可能性を考慮し、最終

的に5因子とした。因子抽出は最尤法、プロ

マックス回転で、因子負荷量 0.35 以上を基

準として行った。

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10

 第 1 因子は薬剤師が独占的に提供するサー

ビスの項目から『服薬指導』と命名した。第

2 因子は薬局の服薬指導以外の機能を反映

した項目から『薬局機能』と命名した。第

3 因 子 は Parasuraman, Zeithaml and Berry

(1985)同様『アクセス』と命名した。第 4

因子は応対に関する項目から『接遇』と命名

した。第 5 因子は最低限守られなければな

らない項目から『保障』と命名した。

 クロンバックのα係数は相対的に低いが、

Brown, Churchill and Peter (1993)の指摘のよう

にギャップ値であることから相対的に低くな

る現象は想定できるものであり、Parasuraman,

Zeithaml and Berry(1988)と大きな差はない

ことから、このまま分析に用いることにした。

 先行研究の次元と比較すると(表 3)、本

研 究 で 抽 出・ 弁 別 さ れ た 5 つ の 次 元 は、

Parasuraman, Zeithaml and Berry(1985)

の 10 の次元の一部にそれぞれ対応するもの

と考えられた。

表3 本研究とSERVQUALの品質測定尺度における次元の比較

本研究の次元 Parasuraman, Zeithaml and Berry(1985)の次元 Parasuraman, Zeithaml and Berry(1988)の次元薬局機能 ①有形性(Tangible) ①有形性(Tangible)  ― ②信頼性(Reliability) ②信頼性(Reliability)  ― ③応答性(Responsiveness) ③応答性(Responsiveness)服薬指導 ④能力(Competence)接遇 ⑤礼儀(Courtesy)  ― ⑥コミュニケーション(Communication)  ― ⑦信用性(Credibility)保障 ⑧安全性(Security)  ― ⑨顧客理解(Understanding/Knowing the customer)アクセス ⑩アクセス(Access)

④'確実性(Assurance)

⑤'共感性(Empathy)

 しかし、SERVQUAL では『服薬指導』、『接

遇』、『保障』に該当する次元は、1 つの次元

に集約されてしまっている。ここで、因子相

関行列を確認すると、相関係数が相対的に高

い 0.6 以上を示すのは、『服薬指導』を中心

に『接遇』と『保障』の間であり、このこと

は SERVQUAL での集約パターンを支持す

る結果となっている。

4.3 品質評価構造の検討

 次に総合評価である顧客満足や行動意図

への影響構造を確認するため、分析方法で示

した2タイプのモデルを検討した。

 5 つの次元をそのまま総合評価と結んだ直

接モデルでは、1 つの次元から総合評価への

パス係数が負で有意となり、2 つが極めて小

さく有意でないなど、多重共線性が認めら

れた。

  こ の た め、 次 に Dabholkar, Thorpe and

Rentz (1996) や Brady and Cronin (2001) を

参考に、これも 2 タイプの階層モデルを検

討した。1 つは下位概念を 1 つにまとめて

総合知覚品質として見立てるもの、2 つは表

2 の因子間相関が高い第 1、第 4、第 5 因子

を 1 つの構成概念でくくり、残りの第 2、第

3 因子を別の構成概念でくくるモデルを検

討した(図 1)。2 つの構成概念としたのは、

その内容から考えても北欧学派の “テクニカ

ル・クオリティ”と“ファンクショナル・ク

オリティ”という 2 つの要素概念(Grönroos

2000)と対応していると考えられたためで

ある。“テクニカル・クオリティ”は「何を」、

“ファンクショナル・クオリティ”は「どの

ように」提供するかであり、まさしく薬剤師

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11

が提供する医療情報や相談業務が、薬局の環

境の中で提供される状況を示しており、顧客

は大きくこの 2 つの次元で薬局サービスを

評価していることを示唆している。

 また、図 1 で総合評価より上の構造につ

いては、顧客満足とロイヤルティ、行動意図

などとの関連性に関する先行研究(Boulding,

Boulding et al. 1993; Oliver 1997; Cronin,

Brady and Hult 2000; Dabholkar, Shepherd

and Thorpe 2000; Olsen 2002)から、複数

のモデルを検討し、複数の適合度を確認した

うえで、このモデルが最も当てはまりが良い

ことを確認している。

 既存患者全体で分析した結果は、1 つ

の構成概念でまとめたものが GFI=0.956、

AGFI=0.941、RMSEA=0.054、AIC=3339.8、

BIC=3642.3 となり、2 つの構成概念で検討

したものが GFI=0.958、AGFI=0.943、RMSEA=

0.053、AIC=3217.9、BIC=3534.4 と、 す べ

ての適合度が 2 つの下位次元を想定したも

X1 本質的サービス評価→総合的評価 .37X2 表層的サービス評価→総合的評価 .10*W 本質的サービス評価⇔表層的サービス評価 .86Y1 総合的評価→総合満足 .92Y2 総合的評価→行動意図 .78Z1 行動意図→再来意図 .68Z2 行動意図→推薦意図 .74A1 本質的サービス評価→服薬指導 .85A2 本質的サービス評価→接遇 .89A3 本質的サービス評価→保障 .93A4 表層的サービス評価→アクセス .75A5 表層的サービス評価→薬局機能 .84

.943

.053注1) 標準化後の推定値注2) ワルド検定で有意でないものは n.s.、5%で有意なものは * を示し、

他は1%基準で有意であった

RMSEA

患者全サンプル

AGFI

パラメータ

図1 品質評価構造モデルと全患者のサンプルで推定されたパラメータ

GE

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12

のの方が良好であったため、後者のモデル

を検討モデルとした。パス係数は X1=0.37、

X2=0.10 という結果が得られた(図 1)。

 この下位次元はそれぞれ『本質的サービス

評価』と『表層的サービス評価』と命名した。

これらは、サービス・マーケティングでは、

“コア・サービス”、“補完的サービス”とも

呼ばれる(Lovelock and Wirts 2007)。『本

質的サービス』または“コア・サービス”は、

薬局では薬剤師が主体的に関わるもの、もし

くは薬剤師でなければ提供できないサービ

スであり、『表層的サービス』または“補完

的サービス”は直接的には薬剤師でなくとも

提供できるものであることが見て取れる。

4.4 評価構造における次元のウェイトの検討

 次に、患者属性等で区分したセグメント

で、それぞれ母集団別分析で適合度を確認

し、多母集団同時分析で配置不変性の確認を

行った上で、パラメータ推定値の差の検定

を行った(図 1、表 4)。なお、交差妥当性

についても AIC や BIC で確認し、すべての

セグメントで、測定不変モデルは配置不変モ

デルと比べて適合度が相対的に悪化したこ

とから、配置不変モデルまでを検討対象とし

た。

表4 多母集団同時分析におけるパラメータ推定結果

パラメータ

X1 本質的サービス評価→総合的評価 .08n.s. .50 .42 .28 .24 .52 .30 .19 .45 .59X2 表層的サービス評価→総合的評価 .33 .02n.s. .06n.s. .17 .20 - .02n.s. .19 .22n.s. .03n.s. - .05n.s.W 本質的サービス評価⇔表層的サービス評価 .89 .85 .89 .84 .85 .88 .92 .83 .89 .87Y1 総合的評価→総合満足 .92 .91 .95 .92 .92 .93 .96 .92 .94 .89Y2 総合的評価→行動意図 .78 .78 .78 .74 .76 .78 .81 .73 .78 .79Z1 行動意図→再来意図 .68 .68 .73 .61 .67 .70 .74 .63 .73 .58Z2 行動意図→推薦意図 .73 .75 .74 .73 .73 .76 .71 .73 .75 .73

2972 5405 3232 5145 4522 3855 736 3786 2496 1359注1) 標準化推定値注2) ワルド検定で有意でないものは n.s.、5%で水準で有意なものは * を示し、他はすべて1%水準で有意であった

パラメータ

X1 本質的サービス評価→総合的評価 .14n.s. .36 .38 .38 .27X2 表層的サービス評価→総合的評価 .38 .11n.s. .05n.s. .13* .04n.s.W 本質的サービス評価⇔表層的サービス評価 .83 .82 .90 .85 .87Y1 総合的評価→総合満足 .91 .94 .91 .93 .88Y2 総合的評価→行動意図 .88 .74 .73 .79 .74Z1 行動意図→再来意図 .60 .66 .74 .67 .72Z2 行動意図→推薦意図 .69 .69 .76 .73 .77

1294 2887 4196 6578 1799注) 同上

(ⅱ)利用頻度と(ⅲ)慢性/急性のクロス

.940

.030.941.038

慢性/ときどき

慢性/いつも・かかりつけ

(ⅰ)性別 (ⅱ)利用頻度 (ⅲ)慢性/急性

(ⅴ)年代(ⅳ)薬局選択理由

.938

急性/いつも・かかりつけ

「病院から近い」+他選択群

.940

.038.940.038.039

その他の理由

慢性 急性

RMSEA

50代以下

いつも・かかりつけ

急性/ときどき

.933

.028

60代以上

「病院から近い」のみ

女性 ときどき男性

AGFI

AGFIRMSEAn

 以下に、比較したセグメントで、特に『本

質的サービス評価』と『表層的サービス評価』

からの総合評価への影響度(X1、X2)の結

果について確認する。差の検定においては、

利用頻度と急性 / 慢性のクロス分析での慢性

の間と急性の間以外、比較的差のあるパラ

メータについては、すべて 5%水準で有意差

が認められた。

(ⅰ)性別

 男性は『表層的サービス評価』、女性

は『本質的サービス評価』のみ影響す

ると言う対照的な結果となった。

(ⅱ)利用頻度(いつも・かかりつけ / とき

どき)

 利用頻度が高い場合には、『本質的

サービス評価』と『表層的サービス評

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価』双方が影響するが頻度が低下する

と『本質的サービス評価』の影響が強

くなることが示唆された。

(ⅲ)慢性 / 急性

 慢性は上の利用頻度が高い場合、急

性は同じく利用頻度がやや少ない場合

に相当する結果であった。

 ここで利用頻度か、慢性 / 急性か、

どちらの違いの影響が大きいのか、ク

ロス分析で確認してみると(表 4 右上

欄)、慢性 / 急性が支配的であることが

見て取れる。

(ⅳ)薬局選択理由

 選択理由は上位 3 つまで回答を求め

たが、ここでは、最も多かった「病院

から近い」に着目し、「病院から近い」

のみを回答した群と、1 番目に「病院

から近い」を選択し、2 番目以降に他

の理由を選択した群、ならびにそれ以

外の群、この 3 つのセグメントで確認

したところ、「病院から近い」のみを回

答した群では、『表層的サービス評価』

のみ影響し、『本質的サービス評価』は

影響しないことが示された。

(ⅴ)50 代以下 / 60 代以上

 50 代以下では、『本質的サービス評

価』と『表層的サービス評価』双方が

影響するが、60 代以上では『本質的

サービス評価』のみが影響する結果と

なった。しかし、これは(ⅲ)の慢性

/ 急性の影響を考えると、60 代以上は

86.5%が「慢性」と回答しており、予

想と異なる結果であった。確認のため、

60 代 (n=1,003)、70 代(n=625)、80 代

(n=171)と年代ごとで分析してみると、

それぞれ適合度に問題はなかったもの

の、X1、X2 のパラメータはともに 5%

水準でも有意でなく、他のパラメータ

はすべて有意であった。このことから、

総合評価への影響を確認する際に、年

代を基準として検証する場合は、異な

るモデルを検討する必要が示唆された。

5. 考察 本研究では、先行研究の成果を踏まえ、か

つ検証する形で独自の調査・分析によりプロ

フェッショナル・サービス提供組織の品質評

価構造に関する新たな知見を探った。ここで

得られた知見は以下の通りである。

 まず、測定尺度の次元に関しては、本研

究では独自の調査票を用いたのにも関わら

ず、Carman (1990) の指摘にあるように、特

に Parasuraman, Zeithaml and Berry(1985)

の 10 次元の一部にそれぞれ対応すると考え

られる次元が抽出・弁別された。しかし、そ

の中でプロフェッショナル・サービスであ

れば「能力 (competence)」は重要な次元と

考えられ、SERVQUAL のように、他の次

元に集約されることは考えにくい。もっと

も、因子間相関を見ると、「礼儀 (courtesy)」

や「安全性 (security)」と強い相関を持って

おり、一方的でなく双方向の情報交換が必要

とされる服薬指導の場において、顧客とのイ

ンタラクションを促進する「礼儀 (courtesy)」

や、薬剤師の職能としての処方せんチェック

や有害事象防止のための行動が関連性を持

つことも理解できる。ただし、次元の前提

となる設問内容については、サービス提供

組織側のマネジメントの観点から考えると、

SERVQUAL のような汎用的かつ抽象的な

ものではなく、より特定的な調査項目が求め

られる。よって、サービスの品質測定尺度の

次元の内容や構成に関しては、ある程度の弁

別妥当性を有しながらも、サービスの種類や

性質に依存すると考えて良いであろう。

 次に、他の価値概念との関連性を考えた

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14

場合の評価構造については、統計学的な論拠

から、Dabholkar, Thorpe and Rentz(1996)

や Brady and Cronin(2001)が提唱するよ

うな階層構造が支持された。更に、集約され

た 2 つの次元については、理論的な側面から、

その論拠を北欧学派の 2 元論に求めること

ができ、サービスの種類や性質が異なって

も、その妥当性は高いと考えられた。そして、

医療などのプロフェッショナル・サービス提

供組織においても、その 2 次元の総合評価

への相対的影響度(ウェイト)は、全体的に

は本質的品質評価が高く、このことは、技術

的能力だけでなく、コミュニケーションや接

遇能力まで含めたプロフェッショナルの人

的能力の重要性を示していると考えられる。

 しかし、この 2 次元のウェイトは、サー

ビスを評価する側の属性等によるセグメン

トごとで明確に異なってくることが示され

た。このことは、一律なサービス提供を前提

としがちな医療においても、顧客セグメント

に応じたサービス・マネジメントの重要性を

示唆するものと考えられた。本研究での「服

薬指導」、「接遇」、「保障」は“コア・サービス”

の評価要素であり、「薬局機能」と「アクセ

ス」は“補完的サービス”の評価要素と考え

られるが 7、必ずしもコア・サービスだけが

重きを置かれるのではないということにな

る。例えば、慢性疾患の患者は、急性疾患の

患者に比し、薬局や薬剤師との接触回数も多

いため、経験値が高まり、補完的サービスに

関する評価の影響度が相対的に高くなると

考えられる。また、男性患者や「病院から近

い」のみを薬局選択理由に挙げたセグメント

も補完的サービスのみが影響することから、

コア・サービスの重要度や知覚結果に影響を

与えるべく、患者教育等への取組の検討など

の必要性が考えられよう。

6. まとめと今後の課題 本研究では、保険薬局を対象として、プロ

フェッショナル・サービス提供組織に対する

知覚品質に関する調査・分析を行い、先行

研究との結果の比較を通して新たな知見を

探った。ここで明らかになったことは、次の

3 つである。1 つに、ここでのサービス品質

の測定・評価次元は 5 次元に弁別されたが、

これらは SERVQUAL の基となった 10 次元

に内包され、薬局サービスとしての特性か

ら、SERVQUAL のオリジナルとは若干異

なる内容で 5 次元に集約されたと考えられ

ることである。2 つに、他の価値概念との関

連性を考えた場合、統計学的な論拠からも、

階層構造の妥当性が示され、その下位概念は

北欧学派の 2 元論に集約されることである。

すなわち、この 1 と 2 では保険薬局のよう

な専門サービス提供組織の場合、細かな次元

はサービスの特性に依存するものの、集約さ

れた根幹となる次元はコア・サービスに関わ

るものと、補完的サービスに関わるものに大

別されることが示された。3 つに、総合評価

などへの相対的影響度は、全体では表層的品

質評価よりも、本質的な品質評価の方が影響

度は高いが、顧客セグメントごとで検討する

とそれぞれ全く異なることである。これらの

知見は、プロフェッショナル・サービスを提

供する組織のサービス・マネジメントにおい

て、有用な示唆を持つものと考えられる。

 最後に、限界と今後の課題についてである

が、本研究で用いた調査票は独自のものであ

るため、先行研究同様の次元が抽出・弁別さ

れたからといって、必ずしも弁別妥当性や次

元安定性が保証されたとはいえない。他の薬

局運営組織での調査を経るなどして、その点

を確認する必要がある。また、その固有の特

性について考察した上で、プロフェッショナ

ル・サービスそのものに対象を限定し、品質

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1�

評価の“手がかり”や情報の非対称性に関す

る実証研究を行い、一般のサービスと比較考

量することで、プロフェッショナル・サービ

ス提供組織において有用な知見を探ること

が可能となると考えられる。

〈謝辞〉 本論文の投稿に際し、匿名のアリアエディター

ならびに 2 名のレビューアーの先生方には、的確

かつ有益なコメントを多々頂いた。記して感謝申

し上げます。なお、本稿における有り得べき誤り

のすべては筆者の責に帰するものである。

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〈注〉1 マーケティングにおいてプロフェッショナル・

サービスの研究に関するものとして、書籍で

はKotler, Hayes and Bloom(2002) が出版され、

学術雑誌では Journal of Professional Services

Marketing が 1985 年に刊行された。但し、こ

のジャーナルは 2001 年に Services Marketing

Quarterly へと改名されている。

2 Schmenner(1986; 2004)では、独自のサービス・

マトリクスを用いてサービスを分類し、労働

集約性の度合と相互関係ならびにカスタマイ

ズの度合の双方が高いものをプロフッショナ

ル・サービスとしている。島津(2005, p24,

図 1.1)の分類では、サービスをまず設備ベー

スものと人ベースのものに区分し、更に人ベー

スのサービスについて、提供主体を専門職か

否かによってプロフェッショナル・ヒューマ

ン・サービスと非プロフェッショナル・ヒュー

マン・サービスに区分している。

3 保険薬局とは、公的医療保険により処方せん

の調剤(保険調剤)を行う場所であり、医療

技術・薬物療法の高度化や薬学教育 6 年制移

行などにより、従来以上の専門性を求められ

るようになったと考えられる。

4 本研究では保険薬局が提供するサービスは、

処方せんで指示された薬剤の調整と提供のみ

ではなく、医薬分業の本来の目的である、い

わゆる「広義の調剤」として、処方せんのチェッ

クや有害事象の防止、服薬指導と呼ばれる情

報提供とコンサルティングによる患者教育の

他、地域の健康維持・増進に関わるものまで

を広くそのサービスの範囲とすることにする。

この「広義の調剤」という用語ならびに概念は、

例えば国民健康保険中央会(2005)でも用い

られ、薬局業界では近年、更に広い業務を含

むものとして一般化してきている。

5 本調査での新患率は 6.9%であった。

6 この薬局チェーン全体の患者分布と大きな違

いがないことを確認している。

7 詳しくは Lovelock and Wirts(2007)第 3 章

を参照のこと。