ミハル通信 8K HEVC エンコーダーシステム 発表20 6 201 4K・8K機材展特集...

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20 6 -2018 4K・8K機材展特集 手術室で8K内視鏡が撮影した手術中の映 像を、内視鏡のカメラコントロールユニット からDual GreenフォーマットでSDIケーブル を通してミハル通信の「8K HEVCエンコー ダー」に入力。8K HEVCエンコーダーでは通 常1/200にデータ圧縮して、100Mbpsのス トリームをLANポートから「HEVCデコーダー (レコードプレイヤー)」に入力。執刀医は遅 延のないベースバンド映像が表示された8 Kテレビを見ながら手術を行うが、少し前 の手術映像を確認したい場合にはHEVCデ コーダー(レコードプレイヤー)に切り替 えて、録画された8K映像の巻き戻し再生 も可能になる。これがこのシステムの大き な特徴だ。伝送レートはこのデモでは市販 8Kテレビで視聴できるように新4K8K衛星放 送と同等の100Mbpsだが、必要に応じてビ ットレートを変更す ることもできる。な お今回のデモで使用 したHEVCデコーダー (レコードプレイヤ ー)も、ミハル通信は 開発を予定している。 ❷ 院内の8K映像伝送に 既存の同軸ケーブルを活用 手術室から病院内のカンファレンスルーム など別室に置かれた8Kテレビへの8K手術映 像の伝送には、ミハル通信が得意な館内共聴 の仕組みを利用することもできる。8K HEVC エンコーダーから出力された8K内視鏡映像の ストリームをミハル通信の「ISDB-S3変調 器」に接続し、8Kテレビが受信できる高度広 帯域衛星デジタル放送方式(ISDB-S3)に変 ミハル通信は第1回4K・8K機材展で、病院 向け8Kシステムのデモ展示を行った。このシ ステムは、8K内視鏡で撮影した内視鏡手術の 映像を手術室や病院内のカンファレンスルー ムなど手術室とは別室に置かれた8Kテレビに ライブ中継して表示し、同時にアーカイブもで きる。今回デモでは、杏林大学医学部付属病院、 順天堂大学医学部付属順天堂医院で行った8K 内視鏡手術の8K映像(映像提供:株式会社カ イロス)を録画した信号を、8K内視鏡からのラ イブ映像に見立ててこのシステムで伝送して 表示させた。システムは用途に応じて次のよう な3 種類の構成が可能だ。 ライブ・録画、館内共聴、クラウド 3 種類のシステム構成を提案 ❶ 8Kの手術映像をライブ表示しながら録画 ミハル通信が8K映像伝送・記録システム(8K HEVCエンコーダーシステム)を 第1回 4K・8K機材展( 4 月4日~ 6日、東京ビッグサイトで開催)で公開した。 今後価格低下が期待できる民生用8Kテレビや建物内の既存同軸ケーブルを活用 できるシステムだ。放送・ケーブルテレビ機器で確かな地位を築いたミハル 通信が、新事業として医療用8K分野にも映像伝送ソリューションを提案する。 病院だけでなく、放送局や競技場での8K映像の伝送・録画にも使えるシステム であり、8K映像の利用がより身近なものになりそうだ。本稿の後半では、今年 4月にミハル通信の新社長に就任した中村俊一代表取締役社長に、今後の経 営方針と新事業の 8Kシステムについて聞いた。 (取材・文:渡辺 元・本誌編集部、写真:広瀬まり) 「8K HEVCエンコーダー」(左)と「HEVCデコーダー(レコ ードプレイヤー)」(右)は8K手術映像の圧縮と録画再生な どを行う 「RFアナライザー」も展示した。新 4K 8K衛星放送のBER / MERも測定 ができるのが特徴。設備工事を効率 化できる 「ISDB-S3変調器」は8K手術映像を8Kテレ ビが受信できる高度広帯域衛星デジタル放送 方式(ISDB-S3)に変調する。8Kのテスト信 号発生器としても使うことができる ミハル通信の8Kシステムのデモを見詰める 大勢の来場者 病院内で8K手術映像を伝送・記録 市販8Kテレビをモニターに活用 8Kシステムの開発 責任者、ミハル通信 株式会社 執行役員 ビジネス・テクノロジー センター長 尾花 毅氏 ミハル通信 8K HEVC エンコーダーシステム 発表

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20 6 -2018

4K・8K機材展 特集

 手術室で8K内視鏡が撮影した手術中の映像を、内視鏡のカメラコントロールユニットからDual GreenフォーマットでSDIケーブルを通してミハル通信の「8K HEVCエンコーダー」に入力。8K HEVCエンコーダーでは通常1/200にデータ圧縮して、100MbpsのストリームをLANポートから「HEVCデコーダー(レコードプレイヤー)」に入力。執刀医は遅延のないベースバンド映像が表示された8Kテレビを見ながら手術を行うが、少し前の手術映像を確認したい場合にはHEVCデコーダー(レコードプレイヤー)に切り替えて、録画された8K映像の巻き戻し再生も可能になる。これがこのシステムの大きな特徴だ。伝送レートはこのデモでは市販8Kテレビで視聴できるように新4K8K衛星放送と同等の100Mbpsだが、必要に応じてビ

ットレートを変更することもできる。なお今回のデモで使用したHEVCデコーダー(レコードプレイヤー)も、ミハル通信は開発を予定している。

❷ 院内の8K映像伝送に既存の同軸ケーブルを活用

 手術室から病院内のカンファレンスルームなど別室に置かれた8Kテレビへの8K手術映像の伝送には、ミハル通信が得意な館内共聴の仕組みを利用することもできる。8K HEVCエンコーダーから出力された8K内視鏡映像のストリームをミハル通信の「ISDB-S3変調器」に接続し、8Kテレビが受信できる高度広帯域衛星デジタル放送方式(ISDB-S3)に変

 ミハル通信は第1回4K・8K機材展で、病院向け8Kシステムのデモ展示を行った。このシステムは、8K内視鏡で撮影した内視鏡手術の映像を手術室や病院内のカンファレンスルームなど手術室とは別室に置かれた8Kテレビにライブ中継して表示し、同時にアーカイブもできる。今回デモでは、杏林大学医学部付属病院、順天堂大学医学部付属順天堂医院で行った8K内視鏡手術の8K映像(映像提供:株式会社カイロス)を録画した信号を、8K内視鏡からのライブ映像に見立ててこのシステムで伝送して表示させた。システムは用途に応じて次のような3種類の構成が可能だ。

ライブ・録画、館内共聴、クラウド3種類のシステム構成を提案

❶ 8Kの手術映像をライブ表示しながら録画

ミハル通信が8K映像伝送・記録システム(8K HEVCエンコーダーシステム)を第1回4K・8K機材展(4月4日~6日、東京ビッグサイトで開催)で公開した。今後価格低下が期待できる民生用8Kテレビや建物内の既存同軸ケーブルを活用できるシステムだ。放送・ケーブルテレビ機器で確かな地位を築いたミハル通信が、新事業として医療用8K分野にも映像伝送ソリューションを提案する。病院だけでなく、放送局や競技場での8K映像の伝送・録画にも使えるシステムであり、8K映像の利用がより身近なものになりそうだ。本稿の後半では、今年4月にミハル通信の新社長に就任した中村俊一代表取締役社長に、今後の経営方針と新事業の8Kシステムについて聞いた。

(取材・文:渡辺 元・本誌編集部、写真:広瀬まり)

「8K HEVCエンコーダー」(左)と「HEVCデコーダー(レコードプレイヤー)」(右)は8K手術映像の圧縮と録画再生などを行う

「RFアナライザー」も展示した。新4K 8K衛星放送のBER/MERも測定ができるのが特徴。設備工事を効率化できる

「ISDB-S3変調器」は8K手術映像を8Kテレビが受信できる高度広帯域衛星デジタル放送方式(ISDB-S3)に変調する。8Kのテスト信号発生器としても使うことができる

ミハル通信の8Kシステムのデモを見詰める大勢の来場者

病院内で8K手術映像を伝送・記録市販8Kテレビをモニターに活用

8Kシステムの 開 発責任者、ミハル通信株式会社 執行役員 ビジネス・テクノロジーセンター長 尾花 毅氏

ミハル通信8K HEVC エンコーダーシステムを発表

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出力した信号をクラウドに上げて、クラウドのストレージに保存することも可能だ。クラウド上にデータベース化した8K映像は、病院のスタッフや医学部の学生教育用に8Kテレビで見ることができる。大容量のクラウドをアーカイブに利用できるのがメリットだ。

調。そこから病院内の既存の同軸ケーブルを通してBS-IF信号でカンファレンスルームなどへ伝送し8Kテレビに表示させる。院内の既存の同軸ケーブルを活用できるメリットは大きい。❸ 8K映像をクラウドにアーカイブ 8K HEVCエンコーダーのLANポートから

ミハル通信の8K HEVCエンコーダーシステムを構成する機器と、このシステムで8Kテレビに表示した8K内視鏡の手術映像(画面内の手術映像提供:株式会社カイロス)

ミハル通信株式会社ビジネス・テクノロジーセンター 主査 加藤康久氏

8K内視鏡手術

8K HEVC エンコーダー

ISDB-S3 変調器

館内共聴を使って病院内に8K映像を伝送

8K映像をクラウドにアーカイブ

●手術映像の録画再生(巻き戻し再生)が可能

【図】 8K HEVCエンコーダーを使った8K内視鏡映像の伝送・録画再生・共有システム

ニーズが高い8K伝送システム放送局や競技場でも利用可能

 今回のデモ展示は4K ・8K 機材展の来場者にとても好評で、病院にシステムを収めている大手メーカー、医療系商社などの来場者から、販売開始を待ち望む声が多かった。「8Kカメラと8Kモニターは各社がすでに販売していますが、その間をつなぐトータルシステムがこれまで市場にないのが現状だったからです。今回ミハル通信がご提案したシステムは、まさに8Kカメラと8Kモニターの間をつなぐ伝送インフラであり、そのニーズに合致しました。特にミハル通信は8K対応のエンコーダーと変調器を一社で供給していることも、お客様にとって大きな利点になります」(ミハル通信株式会社 ビジネス・テクノロジーセンター 主査 加藤康久氏)。来場者からは、「導入に向けてさらに詳しくデモを見てみたい」といった要望もあったという。 このシステムは8K映像を施設内にある既存の同軸ケーブルを活用した館内共聴の

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4K・8K機材展 特集

8Kシステムの医療分野展開は事業多角化の第一歩

 8K映像は人間の肉眼で見える以上の情報を表示可能で、内視鏡手術や遠隔医療など医療分野での活用が期待できます。ミハル通信は今回の8Kシステムの市場投入によって、画期的な新規事業の芽が見えてきました。2020年の東京オリンピック後も見据えたミハル通信の多角化の第一歩となります。これまでミハル通信はケーブルテレビや放送局用の機器を中心に提供してきましたが、今後はケーブルテレビ・放送機器事業に引き続き取り組みながら、さらに8K HEVCエンコーダーシステムの医療分野展開も事業の新しい柱の一つにしていきます。ミハル通信はケーブルテレビ機器では老舗ですが、その地位に安住することなく、最新技術の8Kシステムを新規事業に育てていきます。 8Kシステムは国内市場だけでなく、海外市場でも展開していきたいと思います。ミハル通信はこれまで国内市場での展開が中心でした。グローバル展開へのチャレンジは私の大きな使命です。今まで古河電工で培ってきた海外市場とのコネクションを活かしていきます。

ミハル通信 中村新社長に聞く8Kシステムは事業の新しい柱技術力を活かして海外市場展開も目指す

中村俊一Nakamura Shunichi

ミハル通信株式会社代表取締役社長

1959年鹿児島県生まれ。84年日本大学 理工学研究科 電子工学専攻修了。84年古河電気工業株式会社入社、2005年情報通信カンパニー ブロードバンド製品部 ブロードバンドシスムユニット シニアマネージャー、06年情報通信カンパニー ブロードバンド製品部長、10年情報通信カンパニー ブロードバンド事業部長 兼 同事業部 品質保証部長、12年執行役員 情報通信カンパニー ブロードバンド事業部長 兼 同事業部 品質保証部長、13年執行役員 ブロードバンド事業部門長 兼 同事業部門 品質保証部長、15年執行役員常務、情報通信ソリューション統括部門長 兼 同部門 ソリューション&システム部長、16年執行役員常務、情報通信ソリューション統括部門長、18年ミハル通信株式会社 代表取締役社長に就任。

IP・5G・仮想化・クラウドなどを取り入れた新製品を開発していく

 ミハル通信と各グループ会社間のコラボレーションもさらに強化していきます。私は古河電工の情報通信ソリューション統括部門長を務めていました。この部門は光ファイバー、光部品、ブロードバンドソリューションを担当しており、ここでの経験を活かし、ミハル通信が得意な高周波技術と他のグループ会社のIP技術、5Gなどの無線技術を組み合わせて相乗効果を発揮させ、技術や製品のシーズを作り出します。特に5Gは4Kなど大量のデータを伝送するのに適しています。ミハル通信のFTTH機器と5Gを組み合わせたソリューションを開発し、提案していきます。ここでもミハル通信が高い技術を持つ圧縮技術を活用できます。グループの力を活かし、これまで以上に製品の幅を広げ、継続性のある事業展開をしていきます。 8Kシステムに関しては、カメラメーカーや内視鏡メーカー、その他の医療機器メーカーなど、古河電工グループ以外の企業とのアライアンスも積極的に進めていきます。ケーブルテレビ機器に関しても、各社とのアライアンスで仮想化、クラウド、エッジコンピューティングなどを取り入れ、業界に対してインパクトのある新製品を開発、提案していきたいと考えています。 私は社長に就任したばかりですが、これからミハル通信をさらに元気な企業にするためどう盛り上げていくか、楽しみで仕方がありません。(談)

方式でも伝送できるため、病院だけでなく放送局、競馬・競輪・競艇場やサーキットなどの競技場での利用にも適している。また、このシステムに使用するISDB-S3変調器は、単独でもすでに放送局やテレビメーカーなどから引き合いが多い製品だ。放送局では現在、

試験的に自社で撮影した8K素材を表示するための簡潔なシステムへのニーズが増えてきており、ISDB-S3変調器はこの用途に適した製品だと高く評価されている。テレビメーカーでは、8Kテレビの製造工場で使う製品試験用の8K映像のテスト信号源の用途で導入する

ことを考えている。民生用8Kテレビと既存同軸ケーブルを活用できるミハル通信の8Kシステムは、病院内などでの8K映像活用を安価で身近なものにする。8Kの普及を促進する画期的なシステムの誕生だ。