日語會話課的課程設計 --以文藻外語大學日本語文系的會話課...

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1 日語會話課的課程設計 日語會話課的課程設計 日語會話課的課程設計 日語會話課的課程設計 -以文藻外語大學日本語文系的會話課為例 以文藻外語大學日本語文系的會話課為例 以文藻外語大學日本語文系的會話課為例 以文藻外語大學日本語文系的會話課為例- 張汝秀 張汝秀 張汝秀 張汝秀 文藻外語大學日本語文系 文藻外語大學日本語文系 文藻外語大學日本語文系 文藻外語大學日本語文系助理教授 助理教授 助理教授 助理教授 摘要 摘要 摘要 摘要 為了應對學習需求的多樣化,日語會話教學在顧及學習者的需求下,最重 要的課題是該如何設計課程內容,以便讓學習者能習得自然流利的日語溝通能 。文藻外語大學是台灣唯一的外語大學,所以其日語會話課是如何規劃與 進行、將是很值得研究的。 拙稿是延續2009年為提升學習者的溝通能力所發表的行動研究報告,故本 搞為使會話課程設計更為明確,所以藉由分析所導入的課程活動,來探討更為 有效的指導方法。據此,希望能為今後的會話教學提出建言。 本會話課是以本校四技二年級A班為對象。其課程內容是以學生為主體, 內容設計有角色扮演、跟讀、日語配音、口試等課程活動,藉以培養學生的創 造力、及對日語的興趣、關心。 然而,由以上的探討可知,如何增進學習者對日語的學習意願將是今後的 重要課題之一。此外,在現行課程的有限時間內該如何下功夫,將一直以來以 文法學習為主的教育轉換為以培育溝通能力為主的教育,這可說是日語教育及 文藻外語大學當前極為困難的課題吧。 關鍵字: 角色扮演、跟讀、配音

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日語會話課的課程設計日語會話課的課程設計日語會話課的課程設計日語會話課的課程設計

----以文藻外語大學日本語文系的會話課為例以文藻外語大學日本語文系的會話課為例以文藻外語大學日本語文系的會話課為例以文藻外語大學日本語文系的會話課為例----

張汝秀張汝秀張汝秀張汝秀

文藻外語大學日本語文系文藻外語大學日本語文系文藻外語大學日本語文系文藻外語大學日本語文系助理教授助理教授助理教授助理教授

摘要摘要摘要摘要

為了應對學習需求的多樣化,日語會話教學在顧及學習者的需求下,最重

要的課題是該如何設計課程內容,以便讓學習者能習得自然流利的日語溝通能

。文藻外語大學是台灣唯一的外語大學,所以其日語會話課是如何規劃與

進行、將是很值得研究的。

拙稿是延續 2009 年為提升學習者的溝通能力所發表的行動研究報告,故本

搞為使會話課程設計更為明確,所以藉由分析所導入的課程活動,來探討更為

有效的指導方法。據此,希望能為今後的會話教學提出建言。

本會話課是以本校四技二年級 A 班為對象。其課程內容是以學生為主體,

內容設計有角色扮演、跟讀、日語配音、口試等課程活動,藉以培養學生的創

造力、及對日語的興趣、關心。

然而,由以上的探討可知,如何增進學習者對日語的學習意願將是今後的

重要課題之一。此外,在現行課程的有限時間內該如何下功夫,將一直以來以

文法學習為主的教育轉換為以培育溝通能力為主的教育,這可說是日語教育及

文藻外語大學當前極為困難的課題吧。

關鍵字: 角色扮演、跟讀、配音

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A case study of Wenzeo Ursuline University of

Languages Japanese department conversation class

Chang Ju-Hsiu

Assisiant Professor, Japanese Department, Wenzao Ursuline University of

Languages

Abstract

Today, there are more and more diverse needs of learners. To consider the

Japanese conservation demands of learners, it is quite an important issue on how to

design their curriculum to let the learners can speak Japanese fluently. Wenzao

Ursuline University of Languages is the only language university in Taiwan, in

addition, it is worth studying on how to plan and conduct the Japanese conversation

lessons.

This paper is a continuation that an action research report published in 2009,

enhancing the learner's communication ability. As a result, in order to make a clear

communication lesson, this paper analyzes the curriculum activities to discuss more

effective guidelines.

Accordingly, hope to put forward suggestions for the future of the

communication lessons. The communication lesson is for sophomore in class A in

our school. Its curriculum is student-centered, including role-play, shadowing,

Japanese dubbing, oral etc., in order to develop students' creativity, interest and

concern in Japanese. However, as the above discussion, how to enhance learners’

willingness to learn Japanese will be one of the important issues in the future. In

addition, to do efforts to convert grammar-based education to nurture

communication competency-based education in the limited time in the current

curriculum is said an extremely difficult task for Japanese education and Wenzao

Ursuline University of Languages currently.

Keywords: role play, shadowing, dubbing

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日本語会話授業日本語会話授業日本語会話授業日本語会話授業ののののコースコースコースコース・・・・デザインデザインデザインデザイン

----文藻外語大学日本語文系文藻外語大学日本語文系文藻外語大学日本語文系文藻外語大学日本語文系のののの会話授業会話授業会話授業会話授業をををを例例例例としてとしてとしてとして----

張汝秀張汝秀張汝秀張汝秀

文藻外語大学日本語文系助理教授文藻外語大学日本語文系助理教授文藻外語大学日本語文系助理教授文藻外語大学日本語文系助理教授

要旨要旨要旨要旨

学習ニーズの多様化に対応する日本語の会話教育は、学習者のニーズを考

えた上で自然な日本語のコミュニケーション能力を身に付けさせるために、

いかなる授業内容を構成すべきかが、重要な課題だと言える。文藻外語大学

は台湾で唯一の外国語大学であり、その日本語の会話授業はどのように工夫

され、行われるのかが、吟味する価値があると思われる。

小論は 2009 年のアクション・リサーチの研究報告を引き続き、学習者のコ

ミュニケーション能力をより高めるための会話授業の

コース・デザイを明ら

かにし、その取り入れた授業活動への分析から、より効果的な指導法を検討

しようとするものである。これに基づいて、今後の会話教育へ提案を出そう

と考える。

この会話授業は本校の四技二年生 A クラスの学生を対象とする。

授業の進

行は主に学生を中心とする授業活動を行おうと考え、ロール・プレイ、シャ

ドーイング、動画のアフレコ、口頭試問などの教室活動案作りを通し、学生

達の創造力や興味・関心を持たせようとするのである。

しかし、以上の考察から学習者が日本語への学習意欲を高めればよいのか

が、今後の重要な課題の一つである。また、現行のカリキュラムの限られた

時間内でいかに工夫を加えれば、それまでの文法学習中心の教育から、コミ

ュニケーション育成のための教育へと転換することができるのかが、日本語

教育または文藻外語大学の当面の厳しい課題だと言えよう。

キー・ワード:ロール・プレイ、シャドーイング、アフレコ

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1.1.1.1.はじめにはじめにはじめにはじめに

グローバル化時代への対応や国際化が進む状況下で、コミュニケーション

能力への重要性がますます注目されている。その教育環境作りの一環として、

教育部(日本の文部科学省に相当)では 1983 年に第二外国語(日本語,フラン

ス語,ドイツ語,スペイン語)を普通科高校の選択科目として導入した。そ

の中で、2011 年の教育部の統計調査

1によれば、日本語の履修者数は最も多

く、台湾での重要な第二外国語となった。言い換えれば、台湾では日本語は

既に英語に次いで学習者の多い外国語である。この潮流は大学教育にも及ん

だため、大学教育における日本語教育の拡充・強化がますます重要視とされ

るようになり、コミュニケーション能力の養成が当面の重要な課題となって

いる。そして、いかなる対策を取り、堪能な日本語人材を育成しているのか

が注目に値する。

これに対し、文藻外語大学は台湾で唯一の外国語大学であり、国際的な交

流の推進が重要な責務の一つとされるため、台湾社会からグローバルな人材

の育成が大きく期待されていると考えられる。この趨勢の中で、グローバル

な人材育成の一環として、学生に伸ばすべき会話能力をいかに育てればいい

のかが、本校の極めて重要な課題の一つとなり、日本語文系にとっても、な

おさらのことである。したがって、筆者が学生達のコミュニケーション能力

を一層高めようとするため、2007年に四技 1,2 年生の会話授業(ロールプ

レイ中心と会話文暗記中心)の実態と学習効果への研究調査結果

2を踏まえて、

2007 年後半にシャドイング訓練法を四技 2 年生の会話授業に導入し、その実

践結果を既に 2009 年のアクション・リサーチの研究報告によって、その効果

を実証した

3。

要するに、2007 年に行ったアクション・リサーチでは

4 技 1 年生と 2 年生

の A,B クラスの学生(196 名)を対象としてアンケート調査と 2 回の会話能

1 教育部(2011) 『教育統計 100 年度』 2011 年 5 月 20 日発表 教育部 2 張汝秀(2008.5) 「「「「[会話の小クラス]の実施実態とカリキュラム編成に関する研究調査」 『 文 藻 外 語 学 院 96 年 度 教 師 專 題 研 究 發 表 暨 研 討 會 論 文 集 』 3 張汝秀(2009.6) 「「「「シ ャ ド ー イ ン グ 訓練法を取り入れた日 本 語 会 話 授 業 の効果と展望(2)- 文藻外語学院日本語文系の会 話 授 業 を例として- 」 『 台湾応用日語研究』第六期

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力テスト(OPI 理論で口頭能力を測定)を行い、学生の会話能力を判定した。

その授業形態は表 1 と表 2 に示された通りである。入学時の学力テストおよ

び日本語能力検定の結果にによってレベルがだいぶ高い A 組は文型練習実と

会話文暗記を中心とするのに対し、B 組はロールプレイとペア発表を中心と

する授業である。

そして、口頭能力測定の結果では、図 1 に示したように、一年生の場合は、

A 組(会話文暗記中心、

53 名)と B 組(ロールプレイ重視、

50 名)の会話能

力の差がかなり縮んだ。それはロールプレイ重視の授業で

B 組の会話チャン

スがA 組より多いため、会話能力が高められたのではないかと考えられる。

これに対し、二年生の場合(図 1)は、ロールプレイ中心の

A 組(48 名)(一

年生の時:会話文暗記中心)

は、会話文暗記中心の

B 組(45 名)(一年生:

ロールプレイ重視)より、会話能力が上がり、その差もだいぶ付いた。

つまり、学生を授業の主役として行うロールプレイによって、会話の機会

がかなり増えたため、二年 A 組の口頭能力(

中下レベル 30%、中中 23%、中

上レベル 7%)は、二年B 組(

中下レベル 14%、中中 23%、)より高いこと

が明らかである。言い換えれば、「ロールプレイ中心と会話文暗記中心の授業

形態によって、学生の会話能力に差が付けられ」

4、ロールプレイ中心の授業

形態は学習者の会話能力を高めるにはかなり効果的であると分った。

表 1 一年生 A、B クラスの授業進行内容 教師 教科書 授業進行形態(2hr) 中間、期末テスト 台湾人教師 A 新文化日本語初級 4 文型練習、会話文暗記、ロールプレイ(2、3 回程度)発音、文法重視 筆記試験 日本人教師 A 発音、文型練習 口頭試問 台湾人教師 B みんなの日本語初級Ⅰ 文型練習、会話文暗記、ロールプレイ(毎回)ロールプレイ重視 筆記試験 日本人教師 B ペアワークを中心に文型の応用練習、ペアで発表 ロールプレイ

4 張汝秀(2008.5) 「「「「[会話の小クラス]の実施実態とカリキュラム編成に関する研究調査」 『 文 藻 外 語 学 院 96 年 度 教 師 專 題 研 究 發 表 暨 研 討 會 論 文 集 』 P.95

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表 1 二年生 A、B クラスの授業進行内容 教師 教科書 授業進行形態(2hr) 中間、期末テスト 台湾人教師 A 会話に挑戦 対話式の講義、ロールプレイ 口頭試問 日本人教師 A 対話式の講義、ロールプレイ 口頭試問 台湾人教師 B 中級会話 文型練習、会話文暗記、テーマ発表 筆記試験 口頭試問 日本人教師 B 文型練習、会話文暗記、ストーリー・ピクチャー 筆記試験 口頭試問

図 1 一、二年生 A、B 組の口頭能力の測定結果(二回目)

引き続き、以上の研究結果に残された課題を解決するため、2007 年 9 月か

ら 2008 年 6 月末まで行ったシャドイング訓練の導入に関する研究調査では

54 名の学生の中からランダムで選出された 32 名の実験群(A グループ)と

22 名の統制群(B グループ)に 3 回のアンケート調査と 2 回の口頭能力の測

定(OPI 測定理論で)を実施した。また、なるべく同じ条件で会話授業を進

行させるため、同じテキストと授業内容で行い、また、授業担当の教師も中

間テストの終了後に交替する。ただし、実験群だけにシャドイング訓練を導

入する。

その調査結果は図 2 に示したように、実施前の一回目測定では B グループ

の会話能力は A グループより高いことが窺がえる。しかし、シャドイング訓

練の導入によって、A グループの測定結果はその会話能力が一回目よりだい

ぶ向上し、更に B グループより高いことが明らかである。その上、A グルー

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プに対するアンケート調査からもシャドイングの導入で会話能力が高められ

たと思う学生(一回目:81%、二回目:62%)は、いずれも 60%以上である。

その外に、「アンケート調査から、日本語の流暢さ、発音、イントネーション

などの強化およびそれに関する問題意識の喚起に顕著な効果があり、また、

口頭能力測定から会話能力の向上に相当な実効があることも実証された」

5。

図 2. A ・B グループ:一回目と二回目の口頭能力測定

ところが、こうした会話授業のコース・デザイは、いかに構成されたのか

が、まだ述べられていない。これを察し、本稿はこのコース・デザイを明ら

かにし、取り入れた授業活動への分析から、より効果的な指導法を検討しよ

うとし、今後の会話教育の提案をしたいと思う。要するに、学習者のコミュ

ニケーション能力をより高めるため、文藻外語大学日本語文系で行われてい

る会話授業のコース・デザイの特色と問題点を分析しながら、より効果的な

カリキュラムの開発を試みようとするのである。そして、最後に本稿による

5 同上 P.74

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導き出された結果と考察から、今後の会話教育指導の参考とするものである。

2.2.2.2.コースコースコースコース・・・・デザインデザインデザインデザインのののの背景背景背景背景とそとそとそとそのののの理論理論理論理論

メディアの発達と社会の変化とともに、学習者が多様化している現在、日

本語学習における会話教育はいかに構成すべきか、また、その会話能力の捉

え方をどのように考えればいいのかは、学習機関によって異なると言える。

本稿は学習歴が 3~4 年ぐらいの大学 2 年生を対象とするため、ディベート、

議論・討論などのような事実や意見を交換・要求したりする交渉術の会話能

力ではなく、自分のことや見たものについて楽しく話して交流を深める挨拶、

雑談などの日常的な交流の会話能力を求めるのである。

それは日本語学習者が日本語の母語話者と出会い、人間関係を構築してい

くには文法能力のみではなく、話し手や聞き手として積極的に会話を展開し

ていくコミュニケーション能力が必要とされるからである。要するに、他者

と交流し、よい人間関係を作るため、相手の話にうまくあいづちを打ったり、

評価を示したりする異文化コミュニケーション能力が求められるのである。

しかし、日本語独自の言語特徴があり、その表現、ニュアンス、発話の運び

方などへの理解と運用力が必要とされるため、こうした異文化コミュニケー

ション能力の育成にまず直面する課題として、常に言語の学習環境作りとい

う問題である。特に海外経験、社会経験の少ない学生達は知識的にも経験的

にも尚、未熟の段階にあるため、尚更不可欠な要件である。

また、異文化コミュニケーションにはそれぞれの文化によって異なる側面

があると考えられる。ところが、学生達は日本人との交流不足で、それに触

れる機会も、学ぶ機会も少ない。さらに、限られた時間内で学習内容を充分

に盛り込むことができないという現状への配慮から、本稿ではロールプレイ

練習、シャドーイングの訓練法および動画のアフレコを導入し、日本語学習

の環境作りおよび異なる文化面への理解を学習させようとするのである。そ

れはロールプレイ練習によって意識しながら演技することで自分の行動意味

や感情、相手の思い、人間関係などに関する様々な気づきが得られ、創造性

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と問題解決力の訓練にもなると考えたからである。また、「シャドーイング

が極めて認知的なリスニング形式である」

6と同時に、会話力の向上にも役立

つのに対し、動画のアフレコによる感情の真似と表現理解への認識から日本

語学習のモチベーションが高められるからである。

田中望氏によれば、「教室活動のなかでもっとも学習者の自由度が高く、

自発的で創造的な言語行動ができるように工夫されたのがロールプレイであ

る」

7という。要するに、教師の一方的な押し付けを排除した「ロールプレイ

ではどんなセリフをしゃべるかは完全に学習者の自由にかまされる」

8ため、

学習者がそれぞれの役割を演ずることを通し、自発性・創造性のあるコミュ

ニケーション能力を育てることができるのである。それに田中望氏は「ロー

ルプレイの優れた点は、役割や状況をうまく設定することによって、ふつう

の教室のなかでは固定してしまいがちな言語表現のレベルを変えて会話を行

わせることができることである」

9と教室内で発話者数を最大にできる会話授

業の方法を明示した。

一方、玉井氏は「シャドーイングによって学習者は入力音声の同時的かつ

より正確な復誦技術を向上させる。一番働きかけるのは復誦技術の向上」

10を

述べた。それに、シャドーイング訓練の「リスニング指導には、語彙、文法

といったような知識面からの働きかけだけでなく、音韻ループ機能の活性化

を狙った技術的な」

11ものでもあり、「入力された音声情報を正確に認識し

て構音化したり、一定時間保持しながら処理を行うといったような作動記憶

の機能にかかわる能力でもある」

12という。これは意識的または無意識のう

ちに反芻されるように繰り返す限り、その情報が頭の中で残るということで

ある。

6 玉井健(2003)「リスニング力向上におけるシャドーイングの効果について」 『通訳研究』第 2 号 P.181

7 田中望(2005.9)『日本語教育の方法―コースデザインの実際―』大修館書店 P.151 8 同上 P.151

9 同上 P.152 10玉井健(2003)「リスニング力向上におけるシャドーイングの効果について」 『通訳研究』第 2 号 P191 11 同上 P191 12 同上 P191-192

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それに、シャドーイングの訓練によって、舌の動きがより滑らかになるた

め、発話能力が高められる一方、プロソディの定着にも、外国語理解への「作

動記憶機能」の活性化にも貢献できるということである。言い換えれば、シ

ャドーイング訓練によって、日本語のプロソディーの定着、語彙力、用法な

どの増強につれて、長期記憶に留めることができるため、口頭の表現力がよ

り高められるからであると考えられる。それに、シャドーイングの時、MP4

またはスマートフォンがよく利用されるため、何処でも、いつでも、繰り返

して練習できることによって、会話練習の機会が一層増えるということから、

日本語会話の学習環境作りとも言えよう。

一方、周知のように、日本のアニメが台湾の若者に人気を集め、日本や日

本語に興味を持つきっかけになった人数が少なくない。そして、学習者の好

きなアニメ形式で動機付け、文化理解、生き生きとした日本語の学習をねら

い、学習者が惹かれる要素の一つとする声優を取り上げ、声優さんの声真似

という授業活動のプランを考えた。つまり、動画へのアフレコを通し、アニ

メに表れる実際のセリフへの声真似練習から日本語の会話学習を図ろうとし

ている。その中からジャンル用語、日本語のおもしろさ、表現の使い分けな

ども学ぶことができる。これらの関連研究について、日本では、既に「アニ

メ・マンガを利用した実践例も様々報告されるようになってきている。」

13

要するに、シャドーイングの会話内容または動画のアフレコ内容から話が

弾む上手な「あいづち」のスキルや日本社会の文化面への理解が習得できる

と同時に、生き生きとした日本語の発話(気持ちを込めた発話、キャラクタ

ーらしい発音)、会話づくりの能力にも貢献できると考えられる。

ところで、対話の際に、大切な「場面に応じた表現力を向上させるには、

実践的に学び、定着させることが重要である。」

14そのため、会話授業では 1

週間おきにロール・プレイという教室活動を通して、話しかけ方、日本語の

13 川島恵子・熊野七絵(2011)「アニメ・マンガの日本語授業への活用」『日本語教育実践研究フォーラム報告』 P3 http://www.nkg.or.jp/kenkyu/Forumhoukoku/2011forum/2011_RT3_kawashima.pdf 14 梅岡巳香・宮城徹(2004)「会話教育への一提言」『留学生日本語教育センター論集』東京外国語大学 P207

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言葉遣い、演技による感情移入などの学習より、教室がまた一つの社会にな

り、学生の発話への勇気付けにも日本語のコミュニケーション能力にも役立

つのである。これに関し、梅岡が更に「学んだ言葉を聞き手や場面などに応

じて的確に発信できるように指導する」

15のを提言した。つまり、学習者に

学んだ日本語を様々な場面で使うことによって、相手の感情や立場への配慮

などが習得できるという利点があるという考えである。

3.3.3.3.授業概要授業概要授業概要授業概要

ご周知のように、コース・デザインについて、まずだれに、何を、どう、

何を使って、だれが、どのぐらいの時間で、どう評価するかなどを考えなけ

ればならない。本稿では、日常生活全般における日本語のコミュニケーショ

ン能力の向上を目標に授業を行ったのである。その主な授業活動は中間・期

末テストの口頭試問、小テストのロール・プレイ、シャドーイング及び宿題

のアフレコである。中間・期末テストの口頭試問の内容は広範囲にわたり、

採点基準も内容によって違うため、後で詳しく述べることにする。

3.13.13.13.1 対象対象対象対象クラスクラスクラスクラス

本校の日本語文系四技 2 年生 A クラスの学生達を主な対象とするが、一

クラスは約 54 名であるが、会話の学習効果を上げるため、2006 年から会

話の小クラス(一クラスの学生数を二つの小クラスに分ける)の実施とい

うわけで、実際の学生数は約 27 名である。入学当時、A クラスの学生達は

既に日本語の既習者であり、彼らの学習歴は約 3~4 年である。そこで、日

本語能力はほぼ中級以上(日本語検定試験 3級以上)のレベルである。毎

週 2 回 50 分の授業と 1 回 50 分の補強授業を行った。

3.2 3.2 3.2 3.2 指導目標指導目標指導目標指導目標

学習目標は以下の 3項目がある。

① 自然な日本語で日常生活への説明及び発言の能力を高めることがで

きる。

② 異なる主題に自分の意見や考え方を完全に表現することができる

15 同上 P206

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③ 日本人の考え方及び日本文化への理解・認識を深めることができる。

3.33.33.33.3 使用教材使用教材使用教材使用教材

この授業で使用された主なテキストはロール・プレイを中心とする大新

書局の『会話に挑戦』である。また、シャドーイングで使われている内容

は主に一分間ぐらいの日本語能力検定 2級(聴解)の会話文を素材とする。

一方、アフレコの内容は種々のアニメ作品から 10 分間程度の動画内容を

切り取る。

3.43.43.43.4 教材選定教材選定教材選定教材選定のののの基準基準基準基準

大多数の学生は既に日本語検定試験の 3級と 2級を取得したため、テキス

トの『会話に挑戦』は学生の自作内容でロール・プレイをするため、中級前

半の教材を選んだ以外、他の教材は 2 級程度の教材内容を主とする。まず、

シャドーイングの教材選定にあたり、以下の諸点に配慮した。

① 母語話者の音声教材を利用すること。

② 内容が多岐にわたっていること。

③ 2級程度で内容があまり難解すぎないものであること。

④ リスニング教材では段階を追って習得できるよう構成されること。

次はアフレコ内容の選定である。学生達のモチベーションを高めるため、

アフレコ内容の選定には主に学生達が興味・関心のある作品から 10 分間ぐ

らいの名場面を二つ選んで提供する。勿論、それぞれの好みが違うので、

学生自らが好みの作品を使用しても可能である。

3.53.53.53.5 評価評価評価評価のののの基準基準基準基準

「母語のイントネーションがもとで、日本人との間で誤解を生じ、人間

関係に支障をきたす」

16という指摘がある。つまり、声の調子やイントネー

ションなどの発話意図は心情的、感情的なものであるため、学習者の発話

が本人の意図と異なるものとして、聞き手の母語話者に聞き取られて、そ

の誤解が誤解と気づかれない現実がよくあるからである。そして、それぞ

れの評価基準は次のように考えた。まず、ロール・プレイは、声の大きさ

16

水谷修・鮎沢孝子(1991)「韻律の研究と教育をめぐって」『シンポジム日本語音声教育』凡人社

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(日本語で発話の勇気を養う)、発音の正確さ(コミュニケーションの支

障を減らすため、発音、アクセントなどへの注意を払ってもらう)、演技

(日本語の感情表現の学習)、内容(会話内容の豊かさ)の四項目に分け

て評価する。シャドーイングの評価は、発音の正確さ、流暢さ及び完成度

の三項目に分ける。これによって、感情の伝達を確実に習得させようとす

ると同時に、コミュニケーションにおける摩擦への回避をねらっている。

一方、学生達に自信を持たせたり、学習意欲をふくらませたりするよう

な励ましも大切であるため、アフレコの場合は、発音の正確さ、感情(演

技)、音声のタイミング、音声の大きさという三項目で採点するが、実は

それが励ましとしての加点基準である。

四四四四....授業展開授業展開授業展開授業展開

学習者が多様化している現在、学習者のニーズを考えた上で、それぞれの

学習目的にそって会話教育の内容も違ってくる。そのため、文藻外国語大学

の教育方針は実用的な外国語スキルを学生たちに身につけさせるということ

で、この教育方針に沿って、学生を授業の中心とする会話授業のコース・デ

ザイを考えた。言い換えれば、日本語の発話機会をより増やさせるため、教

師は単なる学習援助の役割に対し、学生は主役として授業活動を遂行すると

いう授業形態の考えである。また、より効果的に日本語をマスターさせるた

め、授業全体は日本語で進行する。つまり、日本語以外の言語使用は禁止で

ある。こうした日本語会話の学習環境作りによって、学生達が日本語で話す

チャンスを増やそうと考えたのである。

そして、表 3 及び表 4 に示したように、『会話に挑戦』というテキストの

各単元にそって、1 週間おきに教師の講義と学生のロール・プレイを交代で

行う。講義といっても、主に教師と学生の対話式で進行し、たまに即時ロー

ル・プレイをさせたりするのである。次週の授業は学生達のロール・プレイ

であり、先週の単元テーマにそって、ロール・プレイの内容と場面設定を各

グループで一人で少なくとも 1 分間の会話内容を自らが考えて作成するので

ある。また、チームワークの学習も大切だという考えから、ロール・プレイ

はクループで行い、少なくとも2人以上が基本であり、また、人数によって

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表 3.第一学期の授業内容及び予定進度 表 4.第二学期の授業内容及び予定進度 授業日期 単元名称 授業活動 授業日期 単元名称 授業活動 第一週 オリエンテーション 組組組組みみみみ分分分分けけけけ 第一週 希望の部屋を探す 講義/演習 第二週 クラスで自己紹介をする 講義/演習 第二週 希望の部屋を探す ロールプレイ 第三週 クラスで自己紹介をする ロールプレイ 第三週 電話でアルバイトに応募する 講義/演習 第四週 友達を慰める・励ます 講義/演習 第四週 電話でアルバイトに応募する ロールプレイ 第五週 友達を慰める・励ます ロールプレイ 第五週 日常生活でいろいろなことを頼む 講義/演習 第六週 先生を飲み会に誘う 講義/演習 第六週 日常生活でいろいろなことを頼む ロールプレイ 第七週 先生を飲み会に誘う ロールプレイ 第七週 L9 財布をなくして説明する 講義/演習 第八週 先生の誘いを断る 講義/演習 第八週 中間中間中間中間テストテストテストテスト 第九週 中間中間中間中間テストテストテストテスト 第九週 中間中間中間中間テストテストテストテスト 第十週 中間中間中間中間テストテストテストテスト 第十週 L12 日にち変更の許可を求める 講義/演習 第十一週 電話をかけて伝言を頼む 講義/演習 第十一週 L12 日にち変更の許可を求める ロールプレイ 第十二週 電話をかけて伝言を頼む ロールプレイ 第十二週 L16 注文の間違いを言う 講義/演習 第十三週 医者に症状を説明する 講義/演習 第十三週 L16 注文の間違いを言う ロールプレイ 第十四週 医者に症状を説明する ロールプレイ 第十四週 L17 ごみの出し方を注意されて謝る 講義/演習 第十五週 面接の練習をする 講義/演習 第十五週 L17 ごみの出し方を注意されて謝る ロールプレイ 第十六週 復習 第十六週 L18 交通事故の状況を説明する 講義/演習 第十八週 期末期末期末期末テストテストテストテスト 第十八週 期末期末期末期末テストテストテストテスト 第十九週 期末期末期末期末テストテストテストテスト 第十九週 期末期末期末期末テストテストテストテスト

一人で少なくとも 1 分間の会話内容が必要である。そこで、ロール・プレイ

の演出効果を高めるため、各グループの人数は学生自身が決めてもらうのが

原則である。

そして、採点は教師と学生全員が一緒に各グループの役割演技を評価・採

点する。また教師から演じたグループ以外の学生にロール・プレイの内容を

質問し、会話のチャンスを与えながら、学生達の理解を確認するのである。

この授業活動から学生の会話能力以外に、創造力の育成も図ろうとするので

ある。こうした小テストに対し、中間・期末テストはその単元にそって、一

人ずつ 5 分間で教師と対話するのが、基本である。採点基準は単元の内容に

よって異なる。例えば、表 3 に示された第 8 週目の「先生の誘いを断る」か

ら誘いと断りの学習にそって、「先生へのお誘い」を中間テストのテーマに

決める。学生が教師を誘い、一度断られ、また交渉し、最後、受けるかどう

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か教師の判断次第というのは条件である。一週間前、テーマを学生に教え、

学生が教師の反応を推測し、様々な対話のパターンを準備するのが普通であ

るが、試験の時、意外な展開になることはしばしばある。それは、学生達が

教師からの反応に応じながら、5 分間以内に教師が行きたくなる内容を考え

なければならない条件下で、たまには教師から学生達の予期しない質問また

は返事が出てくる場合があるからである。

もちろん、教師は一人一人の学生の会話能力によって、対話の内容を工夫

しなければならないのが原則であるが、学生が予期しない状況に対応できる

かどうかも測定のポイントの一つである。この中間テストの採点基準は発音

が 20%、表現(演技)が 20%、丁寧さが 30%、内容(行きたくなるような)

が 30%となっている。一方、期末テストのテーマは「進学または就職の面接」

であるが、その条件は必ず①応募の動機、②(会社)に貢献できるところや

自分の夢について、③アピールできる能力や得意なことについて、という 3

点を必ず述べることである。その採点基準は発音が 10%、丁寧さが 20%、話

の内容が 40%、パフォーマンスが 10%、質問が 20%ということである。こ

れによって、学生の臨機応変及び自然な日本語のコミュニケーション能力の

育成をねらいとするのである。

それでは、毎週行う 1 時間の補強授業はシャドーイングのテストに当たる。

毎週、学生達は e-learningからダウンロードした会話文の音声ファイルを聞

きながら、復唱し、熟練したら、自分の復唱内容を録音し、録音した音声フ

ァイルを e-learningにアップロードしてから、その週の宿題の提出が完了と

なる。また、学生自らが文字化した音声ファイルの会話文を訂正した後、一

人ずつのシャドーイングの小テストを行う。こうした会話文への模倣・復誦

によって、音韻ループの定着・自然な外国語の流暢さの定着などの言語能力

を育てることを期するのである。

最後は学期の宿題というよりも学生への加点チャンス(励まし)とされる

アフレコは、アニメから聞き取った台本をもとにして、その動画アニメを見

ながら感情をこめて、収録するのが一般的であるが、動画の動きに合わせな

がら、そのセリフを変更し、新たな台本を作っても可能である。そこでは、

発話のタイミングや切り出し方、状況判断、それまでの話と自分の話す内容

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の整合性の理解などが求められるのである。こうしたアフレコは一学期の日

本語会話授業の集大成というものだと見なしているため、クラス全員が一緒

に各グループの作品を鑑賞するのが基本である。これによって、学生達に自

信を付けさせるのがねらいであり、その学習の効果的な刺激から日本語への

関心を深めていくきっかけともなることを期待している。

五五五五....まとめとまとめとまとめとまとめと今後今後今後今後のののの課題課題課題課題

ご周知のように、現代社会では手紙より電話による伝達が多くなってきた

ため、話すことがより一層重要視されている。それ故に、コミュニケーショ

ンのための日本語教育の重要性が改めて認識される必要があるといわざるを

得ない。授業の本質、特に会話授業の場合は、単なる知識の伝達だけではな

く、教師と学習者の交流にもなると思わされることがある。言い換えれば、

コミュニケーションとは、互いのフィードバックの繰り返しで、それを自発

的に繰り返していくことによって、誤用、誤解が減り、適切なあいづちの習

得からより円滑なコミュニケーション能力を身につけることができるのであ

る。

さらに言えば、コミュニケーションというのは日常会話だけを意味するも

のではなく、聞き手を考えた発話が要求されるのである。こうした見地に基

づき、この会話授業はロール・プレイ、シャドーイング、アフレコなどの教

室活動案作りに取り組むことにし、できる限り日本語学習の環境作り及び学

習者の会話機会を増やそうとする一方、学習者の創造力や母語話者レベルの

流暢な日本語会話への育成を目指そうとしている。

山内博之氏によれば、ロールプレイは必要な表現や文型を導入・練習して

おき、それからロールプレイを行わせる「表現先行型ロールプレイ」と、先

にロールプレイを行い、その後、必要になる表現や文型を導入する「タスク

先行型ロールプレイ」の二種類に分られる

17。また、中級以降の学習者に「タ

スク先行型の会話教育が有効であると感じたのであるが、‥‥海外の日本語

17 山内博之(2005)『OPI の考え方に基づいた日本語教授法-話す能力を高めるために-』ひつじ書房 P.129-130

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教育においては、中級からと言わず、できるだけ早くからタスク先行型の教

え方を取り入れ、リアルに日本語を使用する機会を確保することが重要であ

る」

18と薦めた。

しかし、日本で生活する場合、当地の社会文化や言葉遣いなどを自然に身

についていくものであるのに対し、台湾で生活する場合、異文化理解への不

足や会話機会の不足による発言する勇気のなさなどへの配慮から、本会話授

業では「表現先行型」を採用したのである。つまり、先にテーマに関する関

連語彙、社会文化、また必要な場合、言い回し、文型を提示・練習した上で、

タスクを与え、ロールプレイを行うのである。

そして、2009 年のアクション・リサーチの研究報告に実証したシャドーイ

ング訓練の導入によって、プロソディへの定着、口の動き、集中力のアップ

などの面にかなり効果がある。しかし、シャドーイング訓練のような大変で、

単調な作業は、その授業時間の確保問題のほかに、いかに工夫すればメディ

ア社会に生きる学習者の興味・関心を維持できるのかが、重要な課題の一つ

である。こうした課題に対し、アフレコの導入は主に日本のアニメが若者の

人気を集め、日本語学習の動機付けとなりながら、日本語への関心を深めて

いくきっかけともなるのが目的である。キャラクターになりきって発話した

りすると、発音、イントネーション、日本語の流暢さなどの強化になる一方、

丁寧体、普通体のスタイルの違い、社会的立場および男女差における表現の

相違を理解することができることが望まれる。

とは言え、学生達は「丁寧体」と「普通体」などの相違が分かっても、現

実では不適切な混用があったりするのは実態である。そのため、本会話授業

ではロール・プレイの内容作成に各グループでセリフを書き込んでいる際、

会話内容への分析思考により、様々な待遇表現などの運用を通し、より内省

的に自覚させる案作りを用意したのである。そして、アフレコの導入に際し、

教師側がアニメなどの素材の入手や活用において、著作権上の配慮などが必

要であり、またアニメの日本語の中には現実世界での使われている日本語と

18

山内博之(2015)「学習者の話す力を伸ばすタスク先行型授業」『日本語教育 紀要』第 12 号 国際交流基金バンコク日本文化センター P.1

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異なる表現があるため、それを留意し、適切な指導を行う必要がある。

文法的間違いなどから生じる言語的違和感に対し、談話展開的違和感は、

相手の意図がうまく理解できずに会話がスムーズに進められない問題である。

そして、ロール・プレイの内容作成に際し、言語的違和感および談話展開的

違和感を与える表現を最も回避すべきである。その対応策として、本会話授

業ではシャドーイングの訓練およびアフレコの練習を導入した。シャドーイ

ングにおける日常会話および、アニメに現れる言語表現などによって、ロー

ル・プレイを進行する時、日本語社会でとるべきコミュニケーション行動に

関する規範への再認識から、学生達が自ら考え、主体的にコミュニケーショ

ン行動への修正ができるのを図っている。それは、既に学んだ表現を口頭で

繰り返すだけで、自らの思考などの内省的な活動を行わなければ、会話能力

の向上には繋がらないからである。もちろん、教師側から日本社会のルール

や習慣に関する知識の補充などの適切な指導および学生側の話す意欲が不可

欠である。

このように、こうした教室活動案作りは、シャドーイング、アフレコ、ロ

ール・プレイなどへの活用を通して、学生たちに生き生きとした日本語を楽

しく学ばせ、その自立学習の中から必要とされる社会的言語能力を育てよう

とするものである。ところが、現行の日本語教育で会話授業の時間は文法学

習の時間より圧倒的に少ないため、日本語のコミュニケーションに対して苦

手意識を持つ学生が多いのが当然であり、更に人前ではなるべく日本語で話

さないという悪循環にはまっている学生も少なくないのがご周知のようであ

る。したがって、現行のカリキュラムの限られた時間内でいかに工夫を加え

れば、それまでの文法学習中心の教育から、コミュニケーション育成のため

の教育へと転換することができるのかが、今後検討すべき重要な課題だと言

えよう。

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