茶生産における施肥の現状と課題 -...

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資料4 茶生産における施肥の現状と課題 茶生産における施肥の現状と課題

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資料4

茶生産における施肥の現状と課題茶生産における施肥の現状と課題

平 成 2 1 年 5 月

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目 次

1 茶作経営に占める肥料費の位置づけ 11.茶作経営に占める肥料費の位置づけ

2.茶園地における施肥の実態

3.茶園地における土壌の実態 ①

・・・ 1

・・・ 2

・・・ 3

4.茶園地における土壌診断の現状

5.茶園地における土壌の実態 ②

6 茶園地における窒素過剰施肥の影響と対策

・・・ 4

・・・ 5

66.茶園地における窒素過剰施肥の影響と対策

7.ECセンサーを利用した土壌診断

8.茶園地における有機物利用の現状

・・・ 6

・・・ 7

・・・ 8

9.施肥低減技術

①能性肥料の利用

②樹冠下点滴施肥技術

・・・ 9

・・・10

・・・11②樹冠下点滴施肥技術

③うね間マルチ栽培技術

④茶園用歩行型精密施肥機

・・・11

・・・12

・・・13

取り組み事例

10.新しい施肥低減技術

11 茶園地の施肥改善の課題と今後の対応方向

・・・14

・・・15

・・・1611.茶園地の施肥改善の課題と今後の対応方向 ・・・16

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1.茶作経営に占める肥料費の位置づけ

○ 平成18年における茶作経営に占める肥料費の割合は24.6%である。これは他の作物と比較して非常に高い。静岡では

経営費に占める肥料費の割合が30%を超えるなど、地域によってばらつきがある。

(1戸当たり 個別経営)○ 営農類型別の経営費に占める肥料費の割合

(1戸当たり・個別経営)水田作経営

畑作経営露地野菜作経営

果樹作経営

茶作経営施設野菜作経営

平均経営耕地面積(a) 171 495 181 152 134 211経営費(千円) 1,432 4,268 2,608 2,646 2,174 5,475

うち肥料費(千円) 126 709 320 236 535 447190

200

○ 肥料の農家購入価格の推移

うち肥料費(千円) 126 709 320 236 535 447(参考)円/10a

7,368 14,323 17,680 15,526 39,925 21,185肥料費の占める割合(%) 8.8 16.6 12.3 8.9 24.6 8.2

175

160

170

180硫安 尿素

高度化成 普通化成

資料:農林水産省統計資料「18年営農類型別経営統計」 「18年品目別経営統計」

(1戸当たり・個別経営)静岡 鹿児島 三重 宮崎 熊本 福岡 京都

2002 3387 2155 11835 249 1459 4432経営費(千円)

142

149

130

120

130

140

150

○ 生産地別にみた経営費に占める肥料費の割合

2002 3387 2155 11835 249 1459 4432うち肥料費(千円) 610 758 507 1649 44 353 1045(参考)千円/10a

69 51 57 45 8 54 9930.5 22.4 23.5 13.9 17.7 24.2 23.6

経営費(千円)

肥料費の占める割合(%)

100

110

120

H12(暦年) 13 14 15 16 17 18 19 20

1

資料:農林水産省統計資料「農業物価統計」H12 = 100

生産地は栽培面積上位7府県を示した。

資料:農林水産省統計資料 「18年品目別経営統計」

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2.茶園地における施肥の実態

が 奪 奪○ 茶は摘採や整枝によって多量の窒素が樹体から収奪されるため、栄養状態の維持のためには収奪量に見合った窒素

を補給する必要がある。これが窒素施肥の基本的考え方である。

○ 肥料の吸収率は40~50%と推定され、年間の必要施肥量は10a当たり窒素成分で50~60kgとなる。収量等を考慮し

て推定された施肥基準もこれに近い値であるて推定された施肥基準もこれに近い値である。

○ 1980~1990年代前半の窒素の施肥実態をみると、70kg/10a前後と、近年の施肥基準と比べ0~25kg/10a多くなって

いる。

○ この背景には、高級茶生産志向がある。茶特有の成分であるテアニンは茶の主要なうまみ成分であり、その含量が多

いほど高品質とされる。この物質は過剰に吸収された窒素の貯蔵形態と考えられており、多肥栽培によりその含量はあ

る程度上昇する。

○茶園地 おける施肥量 推移○200 年現在 主要県 茶園施肥基準

60

70

80

/10a)

○茶園地における施肥量の推移

60

70

80窒素

リン酸

カリ

○2005年現在の主要県の茶園施肥基準

20

30

40

50

60

当た

りの

施肥

量(kg/

30

40

50

60

間施

用量

(kg

/10a)

0

10

20

窒素質肥料 リン酸質肥料 加里質肥料

10a当

0

10

20

埼玉 静岡 三重 京都 奈良 福岡 佐賀 熊本 宮崎 鹿児島

年間

1巡目 2巡目 3巡目 4巡目 5巡目

資料:「土壌環境基礎調査(79~98年)、「土壌機能モニタリング調査」(99~03年)1巡目:79~83年(278地点)、2巡目:84~88年(341地点)、3巡目:89~93年(346地点)、4巡目:94~98年(327地点)、5巡目:99~03年(89地点)

埼玉 静岡 三重 京都 奈良 福岡 佐賀 熊本 宮崎 鹿児島

資料:茶大百科Ⅱ (農文協)

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3.茶園地における土壌の実態 ①

○ 施肥量の減少にも関わらず 茶園地における有効態リン酸及び交換性カリウムは蓄積傾向にある○ 施肥量の減少にも関わらず、茶園地における有効態リン酸及び交換性カリウムは蓄積傾向にある。

○ 有効態リン酸は地力増進基本指針の上限値を大きく上回った水準にあり、一部でリン酸過剰が原因とみられる生育障害

がみられる。

○ 交換性カリウムは適正域の上限値を超える水準にある。

○茶園地に蓄積している有効態リン酸及び交換性カリウムの推移 ○リン酸過剰が原因とみられる亜鉛欠乏の症状

120

140

160

カリ

(m

g/100g)

60

80

100

ン酸

また

は交

換性

0

20

40

リン酸 加里

有効

態リ

1巡目 2巡目 3巡目 4巡目 5巡目

資料:「土壌環境基礎調査(79~98年)、「土壌機能モニタリング調査」(99~03年)1巡目:79~83年(341地点)、2巡目:84~88年(350地点)、3巡目:89~93年(353地点)、4巡目:94~98年(340地点)、5巡目:99~03年(85地点)

資料:茶大百科II (農文協)

亜鉛欠乏症は、生育の旺盛な夏から秋にかけて新葉に黄緑色の1~2mmの斑点が生じ、一部は葉が波打ったようになる リン酸過剰により土壌中の亜鉛が不可給化してうになる。リン酸過剰により土壌中の亜鉛が不可給化して起こる。

資料:地力増進基本指針注: リン酸の実線は地力増進基本指針による適正な有効態リン酸の上限値(30mg/100g)。

交換性カリウムの実線は各県で定められている土壌診断基準、JA全農監修「土づくり肥料のQ&A」及び独法研究者への聞き取りを基に乾土100g当たりの交換性カリウム含有量の適正域(上限値)を30mg/100gと設定した。

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4.土壌診断の現状と課題

○ 茶では5.3haにつき1点土壌診断が行われている。茶農家の1戸あたり栽培面積は1.3haであり、4軒の農家に1軒の割

合で実施されている。

○ 主要産地別の土壌診断の診断密度をみると、1.3~163haのばらつきがみられる。

○ 土壌診断を実施しているにもかかわらず 茶園土壌の有効態リン酸及び交換性カリウム含量の蓄積傾向は継続してお○ 土壌診断を実施しているにもかかわらず、茶園土壌の有効態リン酸及び交換性カリウム含量の蓄積傾向は継続してお

り、さらなる減肥が必要ではないか。

○作物別の土壌診断実績(平成18年度) ○茶における主要産地別の土壌診断実績

(参考)

診断密度作  物 診断点数 処方箋件数

○作物別の土壌診断実績(平成18年度) ○茶における主要産地別の土壌診断実績

(平成18年度)

診断点数 診断密度

静岡 192 102.6haにつき1点

水稲 76,175 38,865 33haにつき1点

畑作物 61,747 42,461 19haにつき1点

茶 9,158 6,684 5.3haにつき1点

果樹 43,406 35,305 5.9haにつき1点

鹿児島 3,414 2.5haにつき1点

三重 20 163.0haにつき1点

宮崎 1,316 1.3haにつき1点

熊本 226 7.2haにつき1点

露地野菜 88,581 70,651

施設野菜 133,598 107,629

露地花き 9,144 7,060

施設花き 37 095 29 408

2.3haにつき1点

0.4haにつき1点

福岡 62 25.6haにつき1点

京都 127 12.3haにつき1点

埼玉 201 5.5haにつき1点

佐賀 50 20 6haにつき1点

資料:農林水産省農産振興課調べ注:診断密度は、診断点数÷作付面積により計算。

作付面積は、野菜は「野菜生産出荷統計」、花きは「花き生産出荷

施設花き 37,095 29,408

飼料作物 15,709 10,335 40haにつき1点 資料:農林水産省農産振興課調べ注:診断密度は、診断点数÷作付面積により計算。

佐賀 50 20.6haにつき1点

統計」、それ以外は「平成18年耕地及び作付面積統計」。

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5.茶園地における土壌の実態 ②

○ 茶は酸性土壌に適した作物であり pH4 0 5 0では根も地上部もよく生育するが pH4 0を下回ると生育が低下し また○ 茶は酸性土壌に適した作物であり、pH4.0~5.0では根も地上部もよく生育するが、pH4.0を下回ると生育が低下し、また

pHが6以上でも生育は劣るとされている。

○ 静岡県の茶園では窒素の多施用によりpHが低下する傾向にある。近年では約半数が3.5を下回っており、pH3.0を下回

る極めて強い酸性土壌もみられる。る極めて強 酸性土壌もみられる。

○ 窒素の多施用は土壌の酸性化を引き起こし、根量の減少、根の活性低下が起きている。これは肥料の利用率の低下に

つながる。

○静岡県の茶園地におけるpHの推移 ○窒素施肥量の異なる茶園における根の健全度

60~100

0~60

g/10

a)

75%

100%

○静岡県の茶園地におけるpHの推移 ○窒素施肥量の異なる茶園における根の健全度

第1層(深さ15~20cm)

健全根

健全・腐敗根

健全根

健全・腐敗根

220以上

180~220

140~180

100~140

施肥

窒素

量(kg

50%

75% 腐敗根

根の分布なし

腐敗根

根の分布なし

0~60a)

0% 25% 50% 75% 100%

以上

ほ場数の割合 (%)

0%

25%

第2層(深さ35~40cm)

180~220

140~180

100~140

60~100肥

窒素

量(k

g/10a

1巡目 2巡目 3巡目 4巡目 5巡目

<3 3.0~3.5 3.5~4.0 4.0~4.5 4.5~5.0 >5

資料:「土壌環境基礎調査」(79~98年)、「土壌機能モニタリング調査」(99~03年)1巡目:79~83年(53地点)、 2巡目:84~88年(55地点)、3巡目:89~93年(54地

0% 25% 50% 75% 100%

220以上施肥

ほ場数の割合 (%)

点)、4巡目:94~98年(58地点)、5巡目:99~03年(13地点)

注 赤枠内は地力増進基本指針の基準値pH4.0~5.5を満たしていないことを示す。

資料:茶大百科Ⅱ(農文協)

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6.茶園地における窒素過剰施肥の影響と対策

○ 茶園における窒素施肥量は明治から昭和の初めにかけておよそ年間10kg/10a程度であった また 昭和30年当時 東○ 茶園における窒素施肥量は明治から昭和の初めにかけておよそ年間10kg/10a程度であった。また、昭和30年当時、東

海近畿農業試験場茶業部では施肥量として28kg/10aが基準とされていた。

○ その後、施肥量は茶のうまみを追求するあまり40年代後半以降急速に増加を始め、50年代には120kg/10aに達してい

る。このような窒素肥料の多量施用は、若干の減少はあるものの今日まで続いてきた。

○ 茶園の環境問題は多量の窒素施肥が茶園面積の1/6にあたるうね間に集中して長年投入され、土壌劣化と水質汚染

をもたらしている。

○静岡県では、数度にわたる施肥基準の見直しが行われ、多肥栽培からの脱却を図っている。

○静岡県における茶園の施肥基準の見直し(kg/10a)

○窒素肥料使用量と茶生産量の変遷

窒素 リン酸 カリウム

普通成木園 54.0 18.0 27.0

生育良好園 80.0 27.0 40.0

普通成木園 54.0 18.0 27.0

平成7年

平成11年

資料:静岡県土壌肥料ハンドブック(平成7年3月) 持続的農林業を推進する静岡県

普通成木園 54.0 18.0 27.0

多収成木園 66.0 20.0 30.0

成木園

(一本化)54.0 18.0 27.0

平成11年

平成14年○静岡県西部、茶畑周辺の深井戸における硝酸性窒素濃度の経年変化

資料:野中(2000)

資料:静岡県土壌肥料ハンドブック(平成7年3月)、持続的農林業を推進する静岡県土壌肥料ハンドブック(平成11年3月、平成17年3月)より作成

資料:永井(1992) 6

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7.ECセンサーを利用した土壌診断

○ 茶における土壌診断では 通常のリン酸やカリなどの土壌診断に加えて 窒素についても行われる これには 土壌溶○ 茶における土壌診断では、通常のリン酸やカリなどの土壌診断に加えて、窒素についても行われる。これには、土壌溶

液中のECやRQフレックスにより測定した土壌養分濃度が用いられている。これらは簡易に測定ができ、土壌に埋設して

定期的に測定することができる。

○ ECセンサーを利用した施肥時期や窒素施用量の調節により、収量、品質を維持しつつ施肥量は2割から4割程度削減で

きる。また、窒素溶脱量も4割程度削減できる。

○実験区の窒素施用量 (kg/10a)1999年 2000年 2001年

○浸透水中の硝酸性窒素濃度の年間平均値

○生葉収量

注 ()内は当初計画量からの施肥調節量。

減肥区(計画) 67.0 53.8 46.3

減肥区(実績) 64.0 (-3.0) 50.5 (-3.3) 45.4 (-0.9)

対照区 84.1 77.7 76.1

年 年 年平均値

資料:福岡県農業総合試験場研究報告22(一部改変)40

50

度(m

g/L)

減肥区

対照区

1999年 2000年 2001年 平均 1999年 2000年 2001年 平均

725 579 566 623 611 465 478 518

(115) (101) (98) (105) (104) (108) (104) (105)

ECセンサーによる減肥区

一番茶 (kg/10a) 二番茶 (kg/10a)

○生葉収量

10

20

30

硝酸

態窒

素濃

(115) (101) (98) (105) (104) (108) (104) (105)

633 575 579 596 590 431 458 493

(100) (100) (100) (100) (100) (100) (100) (100)対照区

○荒茶中の化学成分含有量

注 ()内は対照区を100とした指数。 資料:福岡県農業総合試験場研究報告22資料:福岡県農業総合試験場研究報告22。

0

1999年 2000年 2001年

1999年 2000年 2001年 1999年 2000年 2001年 1999年 2000年 2001年

一番茶 減肥区 5.11 4.94 5.05 2,569 2,035 2,027 16.0 16.9 18.0

対照区 5.25 4.88 4.95 2,405 2,016 1,816 16.1 16.7 17.7

カテキン類2) (%)区分

全窒素(%) 主要遊離アミノ酸1) (mg/100g)

○荒茶中の化学成分含有量

対照区 , , ,

二番茶 減肥区 4.44 4.79 4.50 978 2,186 1,110 18.9 17.5 20.0

対照区 4.60 4.83 4.63 1,132 2,208 1,150 19.0 17.3 19.3注1) テアニン他19種類の合算値

2) EC、ECg、ECG、ECGgの合算値。 資料:福岡県農業総合試験場研究報告22 7

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8.茶園地における有機物利用の現状

○ 有機物の施用は 土壌改良を通じ 細根を増加させることから肥料の利用効率の向上につながる○ 有機物の施用は、土壌改良を通じ、細根を増加させることから肥料の利用効率の向上につながる。

○ 近年のたい肥施用量は、高齢化に伴う労働力不足から1t/10aから0.5t/10aまで低下しており、茶園への効率的なたい

肥施用が課題となっている。

○ このため、地域の有機物資源を安定的に確保するための組織づくりや、労力面の負荷が大きいたい肥などの有機物施○ このため、地域の有機物資源を安定的に確保するための組織づくりや、労力面の負荷が大きいたい肥などの有機物施

用の散布作業の機械化やペレットたい肥の製造・流通を促進させることが不可欠である。

○ たい肥中には肥料成分が含まれることから、たい肥から供給される肥料成分を削減するたい肥の種類別の減肥可能量

を示した減肥基準が必要ではないか。

1,000

1,200

/10a)

○茶園におけるたい肥施用量の推移

共同利用堆肥施設(静岡県掛川市) 歩行型堆肥散布機による散布作業

400

600

800

1,000

当た

り堆

肥施

用量

(kg

/

0

200

1巡目 2巡目 3巡目 4巡目 5巡目

10a当

資料: 「土壌環境基礎調査(79~98年)、「土壌機能モニタリング調査」(99~03年)1巡目:79~83年(278地点)、2巡目:84~88年(341地点)、3巡目:89~93年(346地点)、4巡目 94 98年(327地点) 5巡目 99 03年(89地点)

乗用型堆肥散布機による散布作業ペレット化した堆肥

4巡目:94~98年(327地点)、5巡目:99~03年(89地点)

○たい肥を1t/10a施用した場合の施肥量(例)

窒素 リン酸 カリ慣行施用量 (kg/10a) 54.0 18.0 27.0たい肥由来 (k /10 ) 2 4 4 9 8 8

資料:肥料価格高騰に伴う施肥技術対策指針(静岡県産業部;平成20年10月)

たい肥由来 (kg/10a) 2.4 4.9 8.8不足分(施用量) (kg/10a) 51.6 13.1 18.2

削減率 (%) 4 27 33注:(畜種:牛、副資材:オガクズ)

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9.施肥低減技術

○ 茶は好アン ア作物である とに加え 遊離アミノ酸やアミドの含量を高めて品質の向上を図るために 他の作物に比○ 茶は好アンモニア作物であることに加え、遊離アミノ酸やアミドの含量を高めて品質の向上を図るために、他の作物に比

較して窒素肥料を多用する傾向にある。

○ しかし、近年の肥料高騰による生産費の増加に加え、地下水への硝酸態窒素の流亡や亜酸化窒素の発生など環境へ

の影響が指摘されているの影響が指摘されている。

○ そこで、肥料の利用効率を高め、使用量を低減させる取り組みが行われている。

機能性肥料 樹冠下施肥機能性肥料 樹冠下施肥

肥料成分が徐々に溶出するため、溶脱による損失を回避でき、施肥

肥料吸収能力の高い樹冠下へ施肥することで肥料の

量を削減できる。主に肥効調節型肥料と石灰窒素が用いられる。

利用率を向上させる。液肥や緩効性肥料を用いる。

深層施肥畝間マルチ

畝間にマルチを敷設することで、窒素の溶脱を押さえ、施肥量も削減できる。

茶は好アンモニア作物であるため、硝酸化成が緩慢で、窒素の移動を抑制できる畝間深層に施肥し、利用率の向上を図る。

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9. ①機能性肥料の利用

○ 機能性肥料(肥効調節型肥料、石灰窒素など)は、緩やかに養分が供給されるため余剰分の溶脱が少なく、施肥量を2程度削減することができる。また、収量、品質についても、慣行とほぼ同程度であることが確認されている。

○ 寒冷地の春肥として用いる場合、溶出が遅れて一番茶の新芽の生育に間に合わない可能性がある。この場合、速効性

肥料と併用することが望ましい。

品質収量

①被覆肥料を用いた減肥の収量品質への影響

一番茶 二番茶 一番茶 二番茶

被覆標準 (54) 100 104 95 106 100 96

被覆減肥 (40) 100 103 95 102 100 95

茶試標準 ( )

内質

品質

試験区

収量

一番茶 二番茶外観

数値は百分率で示す。なお試験区の括弧はNkg/10a、収注)茶試標準 A (54) 100 100 100 100 100 100

(746) (645) (30.7) (21.3) (46.0) (34.9)

茶試標準 B (80) 99 99 97 104 100 99

茶試減肥 (40) 96 100 95 105 100 93

量の括弧はkg/10a、品質の括弧は外観が20点、内質が60点を満点としたときの評点で、1998年と1999年の2カ年平均で示す。被覆肥料はLP70で、窒素全量の55%を占める。

一般の標準は茶試標準Bにあたる。資料:環境保全と新しい施肥技術 (養賢堂)

②肥効調節型肥料と石灰窒素の組み合わせによる減肥

一番茶 出開度

(kgN/10a) kg/10a (指数) a) (%) 外観 内質 計 遊離アミノ酸 粗繊維

 肥効調節型肥料 45 377.8 (98) 48.8 26.5 38.0 64.5 3.5 17.8

収量 品質 b) 成分(%)

a)指数:慣行区の生葉収量を100としたときの指

数。

b)品質:外観(形状、光沢)

注) 肥効調節型+石灰窒素 45 352.4 (92) 58.5 27.0 38.5 65.5 3.8 16.8

 配合肥料(慣行) 60 385.2 (100) 51.0 25.0 38.5 63.5 3.2 18.0

二番茶 出開度

(kgN/10a) kg/10a (指数) a) (%) 外観 内質 計 遊離アミノ酸 粗繊維

収量 品質 b) 成分(%)

資料:平成13年度 長崎県総合農林試験場東彼杵茶業支場 試験成績

沢)、内質(香気、水色、滋味)各20点満点の合計値。

肥効調節型+石灰窒素はそれぞれ30kg、15kg。

g g 繊

 肥効調節型肥料 45 315.8 (100) 49.1 23.0 34.0 57.0 1.9 19.9

 肥効調節型+石灰窒素 45 326.0 (103) 54.0 22.5 33.0 55.5 2.1 19.3

 配合肥料 60 316.3 (100) 53.6 22.0 33.0 55.0 1.8 19.610

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9. ②樹冠下点滴施肥技術

○ 根量が多く、根の活性が高い樹冠下の土壌に液肥を供給する。かん水チューブにより必要なときに必要な量の肥料と水

分を供給できる。液肥のため、土壌と肥料の混和についても問題とならない。

○ 窒素施用量を慣行の1/3程度まで減肥可能。肥料の利用効率は慣行の約3倍。

○点滴施肥と慣行施肥の収量比較 (単位:kg/10a)

自動制御盤 液肥原液 用水処理 2001 2002 2003 平均 同左指数

自然仕立て

流量計電磁弁 液肥混入機 減圧弁 フィルター

処理 2001 2002 2003 平均 同左指数

点滴 25kgN/10a 1,074 692 859 875 129

点滴 50kgN/10a 1,215 865 997 1,026 151

慣行 69kgN/10a 759 547 731 679 100

処理 2001 2002 2003 平均 同左指数

点滴 25kgN/10a 568 480 719 589 116

点滴 50kgN/10a 573 558 739 623 123

弧状仕立て

ドリップ型かん水チューブ点滴施肥システムの模式図

資料:農業技術大系土壌施肥編6-② (農文協)

慣行 69kgN/10a 487 341 695 508 100

摘 窒 持

○点滴施肥と慣行施肥の窒素吸収量と持ち出し量 (2003)

1.施肥およびかん水時間の量、間隔を自由に設定できる自動制御装置を用いる。

2.窒素源として尿素を使用。3.施肥は液肥で施用。液肥の窒素濃度は通常30mg/lと低い。

処理 仕立て法摘採・整枝量

(kgFW/10a)

同左窒素含有量(kg/10a)

同左対施肥比率

(%)

持出し窒素量

(kg/10a)

同左対施肥比率

(%)

自然仕立て 3,821 24.2 96.8 7.4 29.6

弧状仕立て 2,901 24.4 97.6 5.7 22.8

自然仕立て 4 706 30 6 61 2 10 1 20 2

点滴 25kgN/10a

11

自然仕立て 4,706 30.6 61.2 10.1 20.2弧状仕立て 3,214 27.1 54.2 6 12自然仕立て 3,330 23.2 33.6 7.9 11.4弧状仕立て 2,380 20.3 29.4 5.4 7.8

慣行 69kgN/10a

点滴 50kgN/10a

資料:農業技術大系土壌施肥編6-② (農文協)

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9. ③うね間マルチ栽培技術

○ 茶栽培では施肥と病害虫防除作業が重なることが多い うね間マルチ栽培は施肥回数を減らすことができ 施肥量も慣○ 茶栽培では施肥と病害虫防除作業が重なることが多い。うね間マルチ栽培は施肥回数を減らすことができ、施肥量も慣

行施肥量の4割程度削減することができる技術として注目されている。

○ 被覆肥料を併用し、うね間を周年マルチングすることにより降雨による硝酸性窒素の地下浸透(溶脱)を抑制する。

○ 2月下旬に施肥し、施肥後直ちに生分解性マルチを敷設する。マルチは1年後に土中へすき込むことができる。○ 2月下旬に施肥し、施肥後直ちに生分解性マルチを敷設する。マルチは1年後に土中 すき込むことができる。

○ 本技術は、慣行施肥に比べ生葉収量は同等以上となるが、官能試験ではやや劣る結果となっている。

○施肥方法の概要

年間 うち年間

試験区年間

施用量(kgN/10a)

うち化学肥料(kgN/10a)

年間施肥回数

使用する肥料 マルチ敷設

マルチ減化学肥料

40 201回

(春肥のみ)被覆肥料入り有機配合、

被覆燐硝安カリ180日タイプなど生分解性マルチ

マルチ40 33

1回 硫安、被覆尿素70日タイプ、生分解性マルチ

マルチ標準施肥

40 331回

(春肥のみ)硫安、被覆尿素70日タイプ、

被覆燐硝安カリ180日タイプなど生分解性マルチ

慣行施肥 70 41 6回有機配合、菜種油粕、

硝化抑制剤入り化成などなし

資料:滋賀県農業技術センター平成18年度主要研究成果

生葉収量T-N アミノ酸 (kg/10a) T-N アミノ酸

マルチ減化学肥料 471 a 5 4 3 3 98 a 4 2 1 6 96

荒茶中成分(%)官能試験

二番茶生葉収量(kg/10a)

一番茶荒茶中成分(%)

官能試験試験区

○うね間マルチ栽培と慣行施肥における収量および品質 (2006)

マルチ減化学肥料 471 a 5.4 3.3 98 a 4.2 1.6 96慣行施肥 470 a 5.5 3.6 98 a 4.4 1.5 100マルチ減化学肥料 392 a 5.2 3.8 99 a 4.3 1.9 99マルチ標準施肥 408 a 5.1 3.8 98 a 4.4 1.7 100慣行施肥 365 a 5.3 3.9 99 a 4.5 2.0 99マルチ減化学肥料 475 5 3 3 4 100 4 1 1 2 98現地茶園

所内

現地茶園(傾斜地)

(花崗岩土壌)

うね間マルチングの様子

マルチ減化学肥料 475 a 5.3 3.4 100 a 4.1 1.2 98マルチ標準施肥 481 a 5.4 3.1 100 a 4.1 1.2 100慣行施肥 302 a 5.3 3.2 99 a 4.2 1.4 100

現地茶園(平坦地)

(黒ボク土壌)

※各試験区の年間窒素施用量は上段の「施肥方法の概要」と同様。資料:滋賀県農業技術センター平成18年度主要研究成果 12

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9. ④茶園用歩行型精密施肥機

○ 品質を維持し 施肥量の削減を進めるためには 生産者のきめ細やかな施肥設計とともに正確な施肥作業の実践が○ 品質を維持しつつ施肥量の削減を進めるためには、生産者のきめ細やかな施肥設計とともに正確な施肥作業の実践が

重要。

○ 野菜茶業研究所で開発された茶園用歩行型精密施肥機はロールの回転とともに定量的に肥料が排出されるため、作業

速度に関係なく散布量が一定であり 散布量の調節にも優れる速度に関係なく散布量が 定であり、散布量の調節にも優れる。

○ 現行の歩行施肥作業体系に適用可能であり、小区画茶園にも対応できる。

○速度連動機構

茶園用歩行型精密施肥機

○肥料散布試験結果 資料:農業技術大系土壌施肥編6-① (農文協)

最大 最小 平均 最大 最小 平均 設定値

硫安 1.45 0.57 0.96 36.0 27.2 24.7 25.6 25.0 3.1

有機入り化成アミノ肥料 1.60 0.55 1.00 33.5 35.3 31.1 33.5 33.0 3.8

有機配合肥料 1 71 0 67 1 20 32 7 82 5 73 1 78 7 80 1 3 6

肥料変動係数

(%)

作業速度(m/sec) 肥料散布量 変動係数(%)

有機配合肥料 1.71 0.67 1.20 32.7 82.5 73.1 78.7 80.1 3.6

菜種油かす 1.10 0.45 0.77 31.0 95.6 87.5 91.5 88.0 3.2作業速度にかかわらず、一定の肥料散布量が維持される。

資料:農業技術大系土壌施肥編6-① (農文協)

13

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取組事例 三重県鈴鹿市の農家による減肥の取り組み

○ 三重県では 環境への配慮から各地域で減肥栽培への取り組みが行われ 普及センタ などが中心となって県施肥基○ 三重県では、環境への配慮から各地域で減肥栽培への取り組みが行われ、普及センターなどが中心となって県施肥基

準以下のレベルでの実証試験が行われている。

○ 三重県鈴鹿市の農家は、機能性肥料を取り入れた減肥を行い、肥料費43%、労力50%の削減を実現した。収量はほぼ

同等であったが、品質は一番茶で同等~若干劣った。また、茶園地下の土壌溶液の硝酸性窒素濃度を3~5割削減でき同等 あ た 、品質は 番茶 同等 若干劣 た。また、茶園地下 壌溶液 硝酸性窒素濃度を 割削減 き

た。

○少肥区および慣行区の収量の推移 ○少肥区と慣行区の施肥量、肥料費、施肥労働時間の比較

肥料費 施肥労働時間施肥量(kg/10a)一番茶 二番茶 肥料費 施肥労働時間

N P K (円/10a) (時間/10a)

少肥区 35.2 13.9 16.7 29600 0.75

慣行区 65.2 39.1 30.9 51800 1.49

指数 54 36 54 57 50

処理区施肥量(kg/10a)

少肥区 927 2.9 1.5 692 2.0 0.9慣行区 836 3.0 1.5 695 2.0 1.0指数 (111) (97) (100) (100) (100) (90)

1999

処理区年度 収量(kg/10a)

遊離アミノ酸(%)

テアニン(%)

テアニン(%)

遊離アミノ酸(%)

番 番

収量(kg/10a)

注) 値は減肥取り組みを行った6年間の平均

○茶園地下1m深土壌溶液の推定硝酸性窒素濃度(2002~2004)

資料:茶大百科Ⅱ (農文協)

指数 54 36 54 57 50指数 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )少肥区 809 2.9 1.5 784 1.7 0.7慣行区 807 2.9 1.5 791 1.6 0.7指数 (100) (100) (100) (99) (106) (100)

少肥区 874 2.7 1.5 731 2.0 1.0慣行区 884 3.0 1.6 814 2.1 1.02001

2000

慣行区 88 3 0 6 8 0指数 (99) (90) (94) (90) (95) (100)

少肥区 931 3.1 1.7慣行区 944 3.1 1.8指数 (99) (100) (94)

少肥区 758 2.8 1.5 524 2.0 1.1

-2002 - -

少肥区 758 2.8 1.5 524 2.0 1.1慣行区 791 2.7 1.5 524 2.1 1.1指数 (96) (104) (100) (100) (95) (100)

少肥区 861 2.0 1.1 731 1.3 0.6慣行区 934 2.5 1.4 736 1.6 0.7指数 (92) (80) (79) (99) (81) (86)

2003

2004

注) ()内は、少肥区の同年対慣行区指数

資料:茶大百科Ⅱ (農文協)

資料:茶大百科Ⅱ (農文協)

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指数 (92) (80) (79) (99) (81) (86)

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10.新しい施肥低減技術の開発

茶 お 慣行的 多 栽培が行われ き お れま 効調節型 料 硝酸 成抑制剤 技術を開○ 茶においては慣行的に多肥栽培が行われてきており、これまでに肥効調節型肥料や硝酸化成抑制剤の利用技術を開

発し、施肥量の3割削減を達成した。しかしながら、硝酸性窒素の環境基準を考慮するとその5割削減が必要である。

○ 現在は、液肥の点滴利用や根圏環境の改善による効率的施肥技術の開発と少肥適応性品種の開発・選定を行うととも

に それらを組み合わせた圃場試験に基づく窒素施肥削減技術の開発が行われているに、それらを組み合わせた圃場試験に基づく窒素施肥削減技術の開発が行われている。

土壌のリン酸含量、塩基バランス、微量要素含量の垂直分布の解析

点滴施肥に伴う土壌中の水分分布 茶園土壌のDNA解析茶園への有機物施用

茶園土壌中の養水分動態を解析し、効率的な施肥技術を開発する。

茶園土壌をその生物性や理化学性から解析し、茶樹に好適な根圏土壌環境の解明と資材投入量(リン酸、カリウムも含む)の制御を行う。

土壌採取風景

茶園への有機物施用

少肥適応性品種候補金谷30号重窒素を用いた窒素吸収率比較試験 連鎖地図

マーカー選抜DNAシーケンス

窒素の吸収・同化に関わる遺伝情報を解析し、少肥に適応した品種を早期に選抜する。

少肥適応性を評価するための指標を明らかにし、品種の選抜に応用する。

連鎖 図

少肥適応性品種候補の生育特性・品質特性を解析して、新たな品種を選定する。

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11.茶園地の施肥改善の課題と今後の対応方向

現状と課題 今後の対応方向現状と課題 今後の対応方向

○ 土壌診断に基づき減肥基準を加味した施

○ 茶園における土壌診断は他の作物に比べて高い頻度で行われてはいるが、地域に

○ 土壌診断に基づき減肥基準を加味した施肥設計への見直しを図り、土壌中の肥料成分を活用する施肥の適正化を推進するとともに、減肥指導を徹底する施肥指導体制を再構築するべきではないか

よっては十分に行われているとは言い難い。

○ 有効態リン酸及び交換性カリの蓄積が進んでいる。特に有効態リン酸は蓄積の程度

再構築するべきではないか。

○ 窒素についても施肥基準を策定し 減肥を

が著しく、リン酸過剰が原因と考えられる症状もみられる。

○ 高品質な茶の生産のために多窒素栽培が広く行われ、茶園周辺水系への流出がみられる。

○ 窒素についても施肥基準を策定し、減肥を進めていく必要があるのではないか。

○ 土壌の酸性矯正も含めた指導を推進するべきではないか。

○ 茶園におけるたい肥施用量は、労力面の負荷などから減少の一途をたどっており、全

均 とな る

○ たい肥には土壌改良効果や肥料効果が期待できることから、有機物利用を促進する体制づくり たい肥を施用した際の減肥可能量

国平均は0.5t/10aとなっている。制づくり、たい肥を施用した際の減肥可能量を示した施肥基準が必要ではないか。

○ 肥効調節型肥料や灌水同時施肥など施肥 ○ 施肥低減技術の改善を進めつつ その栽

16

○ 肥効調節型肥料や灌水同時施肥など施肥低減とともに省力化も可能な技術が開発されている。

○ 施肥低減技術の改善を進めつつ、その栽培体系を確立し、生産現場に積極的に提示していくべきではないか。