子育て世代の患者の特徴と社会的側面に 焦点をあて …2017/02/18 ·...
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第5回緩和ケアシンポジウム「子育て世代のがん診療と緩和ケア」~患者と家族をどう支えるか~
子育て世代の患者の特徴と社会的側面に焦点をあてた緩和ケア~看護師の視点から~
2017年2月18日
兵庫医科大学病院
がん看護専門看護師
西村裕美子
兵庫医科大学病院
病床数963床(診療科数41)
稼働率88.3%、平均在院日数12.7%
地域がん診療連携拠点病院
看護部職員(看護師・助産師等)1048人
• 看護体制 一般病床7対1看護基本料20病棟 精神病床13対1看護
• CNS6人・CN29人(がん看護領域 6人)
• 看護提供方式 パートナーシップ(PNS)導入
(2016年4月現在)
阪神南の国指定地域がん診療連携拠点病院
兵庫県立がんセンター国指定: 14病院県指定: 9病院準拠点病院:23病院
計46病院
緩和ケアセンター 緩和ケアチーム(直接介入型)
平成27年度年間新規介入件数254名
がんセンター
がん相談支援センターがん診療支援室
院内外のがん患者・家族
約150件/月の相談支援
外来化学療法室 20床
当院の緩和ケアチームが介入した子育て世代のがん患者の割合
平成28年度~現在 平成27年度
介入総数 231名 254名
AYA~39歳 12名(5%) 18名(7%)
~49歳 41名(18%) 53名(21%)
~54歳 65名(28%) 72名(28%)
2人に1人が子育て世代相談支援センターは4人に1人
トータルペインの視点から
薬物療法
手術
療法
放射線
療法
緩和医療
痛み・嘔吐・呼吸困難などつらさを取り除く
悪心・嘔吐末梢神経障害口腔粘膜炎皮膚障害
倦怠感・・・・・
まず身体症状の苦痛を取り除く
子育て世代の社会的苦痛の側面に焦点をあてて
子どもにどのように伝えるか ひろいあげ、つなぐか
社会を通して生きている・・・・・
社会で生きる・つながり
就労社会的困りごと経済的困りごと家族ケア・・・アピアランス外見のケア・・・
社会的苦痛をどうしたら、適切な時期に、適切な支援を提供できるかという視点から「拾い上げる」「つなぐ」「協働」していけるか
子育て世代の課題
•子どもにがんをどのように伝えるか
•次の子どもを望むか・・・妊孕性温存
•多額の住宅ローンなどが残る
•日々の生活を支えることを失う
•就労困難・・・一家の大黒柱・生活費の生計を担う役割ができない
•病状の進行とともに再就職ができるかどうか難しい
•遺される家族への思い
•治療費がかさむことによる教育費や養育費の捻出困難
子どもにがんをどのように伝えるか
子どもに病気をどのように伝えるか親としての気がかりと、子どもの理解、ストレスを 双方の視点から話し合う
子どもがどのように思っているかを知る
子供の発達に合わせてどのように話すかを話し合う
子どもがん病気について何を知っているか、真実を伝える
治療の目的を伝える
3つのCを伝える「がん(cancer)という病名」
「誰のせいでもない(not caused)」
「うつる病気(catchy)でない」
子どもにがんを伝える・知ってもらう絵本
子どもの時から、がんを知ってほしいという1人の患者さんの願いから
生まれた絵本原案:上杉敬
親子をつなぐサポートブック親は子どもとともに一緒に成長していく
子どもにがんをどう伝えるかを考えるための教材 HopeTree(ホープツリー)~パパやママががんになったら~がんになった親を持つ子どもをサポートする情報を提供するサイトhttp://www.hope-tree.jp/
あなたとともに がん患者を支えるためのガイド ~米国がん研究所(NCI)の冊子より 第5章親のがんについてhttp://medical.nikkeibp.co.jp/all/cancernavi/images/nci_chapter5.pdf
ノバルティスファーマ(株)HPより 私だって知りたい!~おやががんになったとき 子どもに何を伝え、どう支えるか~
子どもに伝える時の姿勢
子どもの表現スタイルを尊重し真実を伝える
辛い時には一緒に泣いたり、抱きしめる
慰められ安心することで親も感情的なサイクルの同一化が図れる
子どものために頑張れる生きたい
子どもの年齢に応じた特徴とがんを伝える際の対応①
幼児期(~6歳)発達段階 特徴 対応
・母子の結びつきが強く、家族が生活の中心である・自分中心の魔術的思考をしやすい時期・死は可逆的なものだと考える
・がんは初めて聞く言葉で、ショックは少ないかもしれない・親ががんになったのは自分のせいだと考える・がんはうつると考える
・人形や絵本を使ったり、絵を描いたりしながら話す・誰が何の世話をしてくれるか、具体的に伝える・普段と変わらない生活を保つ
茶園美香(2013),子どもに伝えることを支援するための看護師の役割,がん看護 18(4),463-467.
子どもの年齢に応じた特徴とがんを伝える際の対応②
学童期(6~12歳)
発達段階 特徴 対応
・学校での仲間との活動、対人関係が増してくる・具体的に物事を考える時期・9歳くらいになれば理解できる
がんという言葉を聞いたことがあり命のかかわる病気だと知っている・がんがどのような病気なのか、どういう治療をするのかを具体的に知ろうとする・死について尋ねてくることがある
・正しい言葉を使って、きちんと説明する・質問には、わかりやすく具体的に答える・学校や課外活動など、日常生活を維持できるようにする
茶園美香(2013),子どもに伝えることを支援するための看護師の役割,がん看護 18(4),463-467.
子育て中の専業主婦の社会的苦痛入退院後の療養生活において家族だけでは支えきれない
• 自分の病気や治療についてどのように自分の子どもに伝えたらよいのか悩む
• 病気によって生じる人間関係の変化が悩みやストレスになる;入卒園の先のばし、学校や園での父兄の人間関係が不安
• 病気を持ちながらも子育てを可能としてくれるような情報を得られる場子どものことを安心して話せる繋がり、悩みや不安を打ち明け、毎日の工夫や家事育児、食事に関する情報の交換の場がない
治療中の子育てサポート
ガス抜き、情報交換、エネルギー補給、未来への希望
社会貢献意識の醸成が必要
ピアサポートと子育て支援
•患者サロンに参加しがん患者さんと何度も顔を合わせ会話することによって、困りごとを相談するにつれ、次第に信頼関係が得られ、和が広がっていく
•連絡網や情報共有の場(SNSのつながり、サイボウズも活用)
•市町村の子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポート・センター事業)にも相談し相互援助活動を情報収集
•自分の想いに共感してくれる仲間
•がん罹患とともに離婚されたり、既に母子家庭であることも・・・・・・・MSWとの連携
ひろいあげる・つなぐもの がん患者スクリーニング
ひと がん領域認定看護師・専門看護師場所 看護外来/がん相談支援センター
看護師のひろいあげとがん患者スクリーニング
医師との共同
がん患者指導管理料1 500点
がん看護リンクナース
がん患者の就労や就労支援に関する現状(厚生労働省HPより)
64%
39%
当院の相談支援センターの相談内容(最も比重の高いもの)2016年4月~12月 9ヶ月間の相談件数合計1346件
医療者との関係・コミュニケーション 27
その他 20
患者会・家族会(ピア情報) 16
セカンドオピニオン受入 12
食事・服薬・運動・外出など 8
セカンドオピニオン一般 7
医療機関の紹介 6
患者家族間の関係・コミュニケーション 6
がんの検査 6
補完代替療法 5
生きがい・価値観 4
不明 3
がん予防・検診 1
症状・副作用・後遺症 1
友人・知人・職場の人間関係・コミュニケーション 1
社会生活(仕事・就労)
全体の約5%
全体の約20%
職場に「がん」の診断を受けたことを伝えたら退職を勧められました。辞めなければならないのですか?
入院と治療でお金がかかることにより、健康保険や年金保険などからの給付にはどんなものがありますか?
治療費がかかるけれども、住宅ローンや子どもの 教育費が続くか心配、 何か良い方法はありませんか?
「がん」にかかっても入れる生命保険、がん保険ってありますか?
老後や年金のことが心配、家計や保険の見直しをしたい。今後の備えも含めて教えてください
がん治療生活を支える~仕事とお金のお悩み相談会~
仕事を続けたいけど、会社に「がん」であることをどのように伝えればよいですか?
がん治療生活を支える~仕事とお金のお悩み相談会~
相談日時:
毎月1回(第1・第2どちらかの金曜日)
11:00~13:00 【予約制】日時はご予約時にお尋ねください。
場所:8号館4階がんセンターがん相談支援センターがん診療支援室
相談員: がん専門相談員
がんライフアドバイザー/ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
(NPO法人がんと暮らしを考える会専門職チーム)
料金:無料
予約受付:兵庫医科大学病院 がんセンター
☎ 0798-45-6762(直通)
がんにかかっているので障害年金を受給したいのですが、書き方のアドバイスをしてもらえませんか?
がん治療を続けながら仕事すること、家計の問題で困っている方が増えています。お仕事の問題、生命保険や年金・ローンの返済などのお悩みに対し一緒に考え、がんの専門家とお金の専門家がチームで問題解決のお手伝いをします。
地域がん診療連携拠点病院である兵庫医科大学病院では厚生労働省の要請にこたえて、「がん患者さんの就労に関する
相談支援」を強化することになりました。
病院
医療従事者支援型モデルとしての相談会
相談者
相談員 相談員
相談員
NS
MSW
相談者
がんライフアドバイザー 【FP;
ファイナンシャルプランナー】
社会保険労務士
がん相談員
就労支援 使える制度障害年金・傷病手当金申請
生命保険のリビングニーズ特約など
治療を継続しながら就労する思いを受け止め寄り添う
気がかり・困りごとなど思いをつなぎ支援
相互補完関係によって幅広い情報提供
「がん治療生活を支える相談会」の強み
相談対象の患者の性別男性10名、女性27名 合計37名(57% 15歳~77歳合計65名)
実際の相談者の性別 男性10名、女性27名 相談背景
患者本人・女性の相談が多い
背景①~54歳までの相談
患者
78%家族
6%
患者・家族
16%
背景②がん種
乳房・胃・子宮/卵巣・大腸/小腸が多い
対象者の療養環境入院7件(19%)通院30件(81%)
相談のタイミング
相談入手の経路リーフレット3件、医療従事者34件
在宅療養生活や暮らしの中で就労・経済的問題に直面
治療前よりも治療開始・継続する中で問題に直面
背景③
相談内容
会社勤務 在宅勤務
「在宅勤務の希望をしたい」一緒に考えてほしい
http://www.japan-telework.or.jp/intro/tw_about.html
インターネットから情報収集
患者と医療者間の共有髄膜播種、浮腫と倦怠感が強く、ざ瘡様皮疹による皮膚障害のため対人と接する辛さ開発部門⇒デスクワーク「仕事をやっていく上では厳しい会社」以前の収入と比較して家計上問題ないか
人事と直属上司の理解
主治医と面談を希望したい
Networkが繋がるように会社のサーバーとつなげましょう
マニュアル作成しましょう
Powerを信じ寄り添う
患者の思いが会社のしくみを変えた・・・
制度 体制 配慮
患者・家族・がん診療を取り巻く医療者・さまざまな支える人たちと
対話を通してあみあげる
それぞれの職種の役割・専門性を理解し合う⇒チーム医療としての考え方
問題を明確化するための医療者の抽出力や「つなぐ」意識を高める ⇒医療者による誘導が必要・点を線でつなぐ若年・子育て世代の患者は潜在的に社会的苦痛を抱えていることを考慮し関わる価値観を含めたデーター収集を初期面談でおこなうことにより治療と社会的側面の包括的な支援につなげられる
⇒生活の再構築(医療面/就労面/経済面)の支援就労問題と経済的問題は混在し絡み合う
⇒どちらかだけの線引きは困難
社会的困りごとへの支援の質を高めるために・・
様々な考え方を伝えることによって選択するのは患者自己決定を支えるために
一緒に対話を通して「あみあげる」
タイミング良く「ひろいあげる」「つなぐ」
制度 体制
配慮