高精度が要求されるジャケット式岸壁の据付管理について -...

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高精度が要求されるジャケット式岸壁の据付管理について 塩釜港湾・空港整備事務所 保全課長 高橋 久雄 ○保全係長 原茂 雅光 第一工務課長 下澤 1.はじめに 仙台塩釜港仙台港区の中野地区岸壁は、昭和40年後半から50年前半で完成した岸 壁であり、近年は船舶の大型化や混雑緩和のため、新しい施設を整備することが急 務とされていました。 そのため平成24年度に中野1号ふ 頭に隣接する高松作業船船溜まりを 埋め立て、水深-14m、延長300mの施 設整備が開始されました。施工位置 を図-1に示します。 本報告では、岸壁整備のために選 定されたジャケット構造の施工にお ける据付管理がどのように行われた かを報告するものです。 2.工事概要 2.1 工法 ジャケット式岸壁の施工実績は多々ありますが、今回採用した構造は図-2に示 すような、アーク矢板ジャケット式岸壁で、岸壁背後の土留め構造とジャケットが 一体となるよう施工を行う工法で、仙台塩釜港仙台港区での施工が初めての事例と なる工法です。 平成24年度に行われた工事においては、ジャケット4基を工場製作し、そのうち2 基を仙台塩釜港仙台港区へ運搬し図-3に示す位置へ据付けを行っています。 図-1 施工位置図 図-2 ジャケット構造一般図 図-3 ジャケット据付位置

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高精度が要求されるジャケット式岸壁の据付管理について

塩釜港湾・空港整備事務所 保全課長 高橋 久雄

○保全係長 原茂 雅光

第一工務課長 下澤 治

1.はじめに

仙台塩釜港仙台港区の中野地区岸壁は、昭和40年後半から50年前半で完成した岸

壁であり、近年は船舶の大型化や混雑緩和のため、新しい施設を整備することが急

務とされていました。

そのため平成24年度に中野1号ふ

頭に隣接する高松作業船船溜まりを

埋め立て、水深-14m、延長300mの施

設整備が開始されました。施工位置

を図-1に示します。

本報告では、岸壁整備のために選

定されたジャケット構造の施工にお

ける据付管理がどのように行われた

かを報告するものです。

2.工事概要

2.1 工法

ジャケット式岸壁の施工実績は多々ありますが、今回採用した構造は図-2に示

すような、アーク矢板ジャケット式岸壁で、岸壁背後の土留め構造とジャケットが

一体となるよう施工を行う工法で、仙台塩釜港仙台港区での施工が初めての事例と

なる工法です。

平成24年度に行われた工事においては、ジャケット4基を工場製作し、そのうち2

基を仙台塩釜港仙台港区へ運搬し図-3に示す位置へ据付けを行っています。

図-1 施工位置図

図-2 ジャケット構造一般図 図-3 ジャケット据付位置

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2.2 ジャケット設置方法

本工事におけるジャケットの設置は、陸側に先行杭として鋼管杭φ1200mmの直杭

20本、仮受杭として海側にはH400×400×13×21の型鋼を16本打込んだ後、起重機

船によりジャケットを2基据付けます。

その後、鋼管杭φ1200mmの斜杭を10

本打設し完了となります。

なお、今回の工事では受注者の技術

提案により仮受杭を鋼管杭φ600mへ変

更し施工しました。

図-4及び図-5に杭の配置を示しま

す。

3.据付管理について

本工事では以下に述べる据付管理によって施工を行いました。

3.1 先行杭の打設精度を向上させるための方策

ジャケット桟橋は、先行する直杭の精度が重要となり、そのため以下の方法で実

施しました。

3.1.1 堅固な導材の設置

波浪等の影響が予測される海

域で精度良く先行杭を打設する

ため、細幅H鋼(H-600×200×

11×17)を導杭とする導材を設

置し、航路側からの波浪の影響

を受けにくい構造とし、根入れ

は6m以上としました。

先行杭打設の際は、ゴムロー

ラー付のスペーサーを設置し、

鋼管杭位置の微調整が出来るよ

うにしました。図-6に導材配置状況を示します。

3.1.2 導杭頭部変位の自動追尾式トータルステーションによる監視

先行杭の打設は、自動追尾式トータルステーションにより導杭頭部の変位を監視

しながらとし、変位が規定値を超えた場合は速やかに警告を行えるよう監視しなが

ら行いました。

図-4 杭の配置(1) 図-5 杭の配置(2)

図-6 導材配置状況

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3.1.3 2軸式傾斜計を用いたリアルタイムモニタリング管理

先行杭打設時の鉛直性は2軸式傾斜計

を用いたリアルタイムモニタリングによ

り確認しながら打設作業を行いました。

図-7に2軸式傾斜計での管理イメージ

を示します。

3.2 仮受杭の打設精度を向上させるための方策

ジャケット据付精度を確保するためには、先行杭と同様に仮受杭の位置精度確保

が重要であるため、以下の項目で対策を行い実施しました。施工フローを図-8に

示します。

3.2.1 剛性の高い鋼管に変更

仮受杭は設計の型鋼H-400から剛性の高い鋼管(φ600mm、t=12mm)に変更し施工

することとし、それに伴い、仮受キャップも円筒型に変更しました。

3.2.2 先行杭と同様の導材設置

先行杭と同様に細幅H鋼を導杭とする導材及びゴムローラー付スペーサーを用い

て、水平位置精度を確保しました。

3.2.3 ディスクカッターによる切断

鋼管仮受杭は、鋼管内からディスクカッターにて切断し、所定の高さを確保しま

した。

図-7 2軸式傾斜計での管理

図-8 仮受杭施工フロー

図-9 ジャケットの据付管理 図-10 ジャケットの姿勢制御

呼び込みウインチ

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3.3 ジャケットの据付精度を向上させるための方策

ジャケット据付は、据付位置に円滑に誘導し、先行している杭と過度の接触を防

止しなければならないため、図-9、10に示すような方策を実施しました。

3.3.1 ジャケット据付誘導システムによる位置管理

自動追尾式トータルステーションにより、ジャケットの相対位置をリアルタイム

に起重機船操船室及び陸上の監視モニターに表示して確認しながら作業を行いまし

た。

3.3.2 ジャケットの姿勢制御方法

吊上げたジャケットの姿勢制御は、吊上げ用ウインチの2フックにより護岸法線

方向上下調整を行い、呼び込みウインチで法線直角方向の上下調整及び法線出入り

の調整を行いました。

3.3.3 レグ内CCDカメラを設置

ジャケット両端部2箇所のレグ内にCCDカメラを下向きに配置し、映像をリア

ルタイムに起重機船操船室及び陸上の監視モニターに表示して確認しながら作業を

行いました。

4.ジャケット据付結果について

ジャケットの出来形については、表-1に示すとおり、法線に対する出入り、天

端高さ、本体の傾き及び延長すべて許容範囲内で良好な結果となりました。

5.まとめ

各種方策をもって施工管理を行い、2基のジャケットは規定の範囲内に据付を行

うことが出来ました。引き続き整備は続いていくため、今後の施工を精度良く行う

方策として参考にすると共に、また、この報告が同種工事の参考になれれば幸いで

あります。

表-1 出来形一覧