咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の 安全性・有効性...

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www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~iact/  E-mail:[email protected] 耳鼻咽喉 咽頭癌 / 喉頭癌 / ダビンチ / 経口的ロボット支援手術 対象疾患領域 キーワード 咽喉頭癌の治療は嚥下・発声機能と密接に関係しており、従来より早期の咽喉頭癌に対しては機能温存の観点から放 射線療法あるいは化学放射線療法が広く行われている。1990 年前後より Steiner らによって腫瘍を顕微鏡下にレーザー 切除する Transoral laser microsurgery が始められ、良好な成績が報告されているが、技術的に困難であり、国内外で一 般的な治療法として普及するには至っていない。 Weinstein (Weinstein, 2007, 2009) は手術支援ロボット da Vinci サージカルシステムを用いる Transoral Robotic Surgery ( 経口的ロボット手術:TORS) を開発した。低侵襲かつ安全な咽喉頭癌の治療方法として海外では急速に普及 しつつあるが、国内では da Vinci サージカルシステムの適応外である。そこで、咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援 手術(TORS)の多施設共同臨床試験を実施してその有用性を示し、適応拡大申請を行うことを目的に研究を開始した。 本研究は「先進医療 B」として、2016 年 10 月末の症例登録終了日までに 17 例を登録し、経口的ロボット支援手術を 実施して終了した。先行研究とあわせて 20 例の解析症例を得た。総括報告書を厚生労働省に提出し、現在企業より適 応拡大申請中である。 ダビンチサージカルシステムは泌尿器科、一般消化器外科、婦人科、胸部外科領域においては適応が得られているが、 耳鼻咽喉科領域は適応範囲外である。ダビンチサージカルシステムを咽喉頭癌治療に応用する本臨床試験を実施し、適 応拡大申請中である。 研究概要 実用化例 経口的ロボット支援手術ではダビンチサージカルシステムを使用する。経口的に内視鏡アーム 1 本、操作用アーム2 本を挿入し、手術操作を行う。従来の手術に比べ、3D 内視鏡により立体的な視野の下での操作ができる、操作用アー ムには 7 カ所に関節がありヒトの手よりも広い可動域で操作が可能、手の震えを抑制する機能がついている、リアルタ イムに操作ができる、10 倍の拡大視野で操作ができる、などの利点を持つ。狭い咽喉頭腔で自在に鉗子の先端を動か すことが出来、従来の経口手術では摘出不可能であった病変を安全に摘出することが出来る。また咽喉頭癌に対するも う一つの標準治療である放射線治療に 対し、治療期間が短い、永続的な唾液 分泌機能を抑制できる、嚥下機能が良 好である、などの利点を有する。また 咽喉頭癌を含めた頭頸部癌には多重癌 が多いという特徴があるが、放射線治 療を温存することで、将来の多重癌に 対する治療の選択肢を温存する事が出 来る。 C4 危敕覓転疷矞3噬 経口的ロボット支援手術の概念図 京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 講師 楯谷 一郎 咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の 安全性・有効性に関する多施設臨床試験 咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の 安全性・有効性に関する多施設臨床試験 咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の 安全性・有効性に関する多施設臨床試験 咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の 安全性・有効性に関する多施設臨床試験

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www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~iact/  E-mail:[email protected]

耳鼻咽喉咽頭癌 /喉頭癌 /ダビンチ /経口的ロボット支援手術

対象疾患領域

キーワード 

 咽喉頭癌の治療は嚥下・発声機能と密接に関係しており、従来より早期の咽喉頭癌に対しては機能温存の観点から放射線療法あるいは化学放射線療法が広く行われている。1990 年前後より Steiner らによって腫瘍を顕微鏡下にレーザー切除する Transoral laser microsurgery が始められ、良好な成績が報告されているが、技術的に困難であり、国内外で一般的な治療法として普及するには至っていない。 Weinstein ら (Weinstein, 2007, 2009) は手術支援ロボット da Vinci サージカルシステムを用いる Transoral Robotic Surgery ( 経口的ロボット手術:TORS) を開発した。低侵襲かつ安全な咽喉頭癌の治療方法として海外では急速に普及しつつあるが、国内では da Vinci サージカルシステムの適応外である。そこで、咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術(TORS)の多施設共同臨床試験を実施してその有用性を示し、適応拡大申請を行うことを目的に研究を開始した。本研究は「先進医療 B」として、2016 年 10 月末の症例登録終了日までに 17 例を登録し、経口的ロボット支援手術を実施して終了した。先行研究とあわせて 20 例の解析症例を得た。総括報告書を厚生労働省に提出し、現在企業より適応拡大申請中である。

 ダビンチサージカルシステムは泌尿器科、一般消化器外科、婦人科、胸部外科領域においては適応が得られているが、耳鼻咽喉科領域は適応範囲外である。ダビンチサージカルシステムを咽喉頭癌治療に応用する本臨床試験を実施し、適応拡大申請中である。

研 究 概 要

実 用 化 例

 経口的ロボット支援手術ではダビンチサージカルシステムを使用する。経口的に内視鏡アーム 1本、操作用アーム2本を挿入し、手術操作を行う。従来の手術に比べ、3D 内視鏡により立体的な視野の下での操作ができる、操作用アームには 7カ所に関節がありヒトの手よりも広い可動域で操作が可能、手の震えを抑制する機能がついている、リアルタイムに操作ができる、10 倍の拡大視野で操作ができる、などの利点を持つ。狭い咽喉頭腔で自在に鉗子の先端を動かすことが出来、従来の経口手術では摘出不可能であった病変を安全に摘出することが出来る。また咽喉頭癌に対するもう一つの標準治療である放射線治療に対し、治療期間が短い、永続的な唾液分泌機能を抑制できる、嚥下機能が良好である、などの利点を有する。また咽喉頭癌を含めた頭頸部癌には多重癌が多いという特徴があるが、放射線治療を温存することで、将来の多重癌に対する治療の選択肢を温存する事が出来る。

優 位 性

C4

経口的ロボット支援手術の概念図

京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 講師 楯谷 一郎

咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の安全性・有効性に関する多施設臨床試験

咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の安全性・有効性に関する多施設臨床試験

咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の安全性・有効性に関する多施設臨床試験

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