開発した青切りタマネギ用高能率調製機の性能と利用法開発した青切りタマネギ用高能率調製機の性能と利用法...

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開発した青切りタマネギ用高能率調製機の性能と利用法 誌名 誌名 香川県農業試験場研究報告 ISSN ISSN 03748804 著者 著者 西村, 融典 山浦, 浩二 西澤, 准一 三代, 満 巻/号 巻/号 66号 掲載ページ 掲載ページ p. 1-10 発行年月 発行年月 2016年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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開発した青切りタマネギ用高能率調製機の性能と利用法

誌名誌名 香川県農業試験場研究報告

ISSNISSN 03748804

著者著者

西村, 融典山浦, 浩二西澤, 准一三代, 満

巻/号巻/号 66号

掲載ページ掲載ページ p. 1-10

発行年月発行年月 2016年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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開発した青切りタマネギ用高能率調製機の性能と利用法

西村融典・山浦浩二 1) ・西津准ー2) ・三代 満2)

キーワード:青切り,タマネギ,調製,根切り,葉切り,省力化

Performance and usage of a newly developed high-e血ciencygreen onion topper

Hironori NISHIMURA. K吋iY AMAURA. Junichi NISHIZA W A. Mitsuru MISHIRO

Keywords: topper, green cutting, onion, processing, root cutting, leaf cutting, labor saving

Abstract

To reduce the amount of labor required for harvesting and processing onions in temperate areas, we developed

and evaluated the performance, usability, and usage of an onion topper that automatically removes the roots and

leaves of green onions excavated and left in the field.

1. The developed onion topper consists of a leaf cutting unit, a root cutting unit, and a separator, and runs on 100

v AC electric power. The machine was capable of fully automatically removing leaves and roots from onions with

attached roots and leaves when onions were fed continually into the machine at rate of 1 plantls via a conveyor

or feeder rack.

2. The cutting precision of the topper depended on shape and quality of onions. For onions with stems and leaves

20 cm or longer, roots 4 cm or longer, and bulbs with height-diameter ratio 0.80-0.95, the percentage of damaged

bulbs was 4% or less and the percentage of correctiy cut onions was 94% or higher. The processing rate per lane

was 3400 onions/h or more, which was 4.4 times the speed of manual processing using shears.

3. The processing time for a stationary 2-1ane topper was 4.5-4.8 h/10 a, compared with 6.2-7.4 h/10 a for a topper

mounted on a tractor and moved around the field; thus, stationary usage resulted in higher processing effi.ciency.

4. Total processing time, expressed as the product of the machine processing time and the number of workers

required, was 9.6-18.0 worker-hours/lO a for stationary machines, which was 29 to 54% of the total processing

time required for conventional manual processing, representing substantial savings in labor. Stationary usage also

required less labor than mobile usage, and showed excellent usability.

用方法を調査,検討した。主な結果は次のとおりであっ

摘要。

暖地のタマネギ生産における収穫・調製作業の省力化

を図るため,掘り取ったタマネギの葉と根を自動で切断

する青切り用の調製機を開発し,その性能や作業性.利

1.開発した青切り用調製機は,葉切り部,根切り部,

排出部等から構成され,交流1ωv電源によって駆動

する。根葉付きのタマネギを供給コンベアや投入台等

を使って概ね毎秒 1個ずつの間隔で投入すれば,葉切

1 )香川県園芸総合センター 2)株式会社ニシザワ

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り・根切りを全自動で連続して行うことができる。

2. 調製機の切断精度はタマネギの形質に大きく左右

されたが,葉長20cm以上,根長4cm以上,球形指数

0.80-0.95の条件を満たしていれば傷玉率は4%以下,

適切り率は94%以上であった。また,処理能力は調製

ライン 1列当たり3.400個/h以上で,鉄による手作業

の約4.4倍の能力であった。

3. 調製ラインを 2列装備したタイプの調製機による

調製作業時間は,調製機を定置利用した場合で4.5-

4.8h/lOa,トラクタに装着して圃場内を移動利用した場

合で6.2-7.4h/lOaで、あり,定置利用の方が能率が高

かった。

4 作業時間と作業人員の積で表した調製作業の延べ作

業時間は,定置利用時が9.6-18.0人h/l0aで'慣行の手

作業の29-54%となり,労力の削減効果が大きかっ

た。また,作業員の労働負担度についても定置利用時

の方が移動利用時より低く,作業性に優れると判断さ

れた。

緒言

タマネギは,キャベツ・ダイコンと並ぶわが国の重要

野菜であるが,近年,都府県の生産量が急速に減少して

おり,それに代わり業務・加工用を中心に輸入品のシェ

アが拡大しつつある(貿易統計)。

都府県の生産量が減少を続ける作業上の要因として

は,収穫時において①根切り・葉切り作業(以下.調製

作業と記す)が機械化されておらず多くの時聞を要する

ため作付け規模の維持拡大が制限されること,②大量の

小型コンテナを人力で扱うため作業者の労働負担が大き

いこと,③水稲後の軟弱かつ小区画の圃場が多いため大

型機械の導入が困難であること,④北海道で確立してい

る機械化体系は気象条件や栽培様式が異なるため利用

できないこと,などがあげられる(竹中21)。このため,

著者ら 31は拾い上げ機能とリフト機能を併せ持ったトラ

クタ装着式のピッカーによりコンテナ運搬労力の省力化

等の対策を試みたが,多大な時間を要する調製作業の能

率化が課題として残された。

調製作業の対象は,業務・加工用途など,タマネギを

掘り取ったあと短期間のうちに調製作業を行う青切りタ

マネギと,一定期間,乾燥・貯蔵した後に調製作業を行

う乾燥タマネギに大別され,それぞれの物性や性状に対

応した機械調製技術が必要である。このため(独)農業・

食品産業技術総合研究機構・生物系特定産業技術研究支

援センターほかの研究グループは, 2009年度から,主に

乾燥タマネギを対象とした定置型の調製機の開発に取り

組み, 2013年から農業機械メーカにより販売が開始され

ている(員沼11)。

一方,筆者らの研究グループは, 2010年度から青切り

タマネギ用の調製機の開発に取り組み, 2014年度に商品

化し販売を開始した。さらに同グループは2014年度か

ら,利用できるタマネギの条件拡大や操作・取扱い性の

向上に向けた改良に取り組んできたところである。そこ

で,開発した青切り用調製機の切断精度,能率,作業性

等を調査するとともに,その利用方法について検討を加

えたので結果を報告する。

なお,本報は農林水産省の「新たな農林水産政策を実

現する実用技術開発事業(平成22-24年度)Jおよび同

省の「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急

展開事業(平成26-27年度)Jおよび「かがわ中小企業

応援ファンド事業(平成25年度)Jにおいて実施したも

のである。

材料および方法

1 .調製機の概要

1 )開発方針と目標

タマネギの棄と根の切断を目的とする調製機は,従前

より青切り用あるいは乾燥タマネギ用のものが実用化,

販売されているが,いずれの機種もタマネギの姿勢を 1

個ずつ手で整えて人力供給するタイプであり,処理能力

や切断精度が十分でないため幅広い普及には至っていな

い。特に,青切り出荷では,作業が短期に集中すること

もあり全自動タイプの高能率調製機の実用化が望まれて

いた。

そこで開発方針としては,①根葉付きのタマネギを対

象とする,②葉に青味の残る青切り用の調製機とする,

③大小コンテナ等で調製機に一括投入でき連続処理が

可能なこととし,性能目標としては,①処理能力が1連

(ユニット)当たり毎秒 1個程度,②葉および根の切断

ミス 3%以下, (主傷玉率 3%以下とした。

2)構成および特徴

開発した調製機(以下,調製機と記す)の概略とタマ

ネギの流れを図-1に,主要諸元を表 1に示した。

調製機は,葉切り部,根切り部および排出部から

構成され,これらのユニットを 1列配置した 1連タイ

プと 2列配置した 2連タイプがある。駆動源はいず

れもAClOOVである。機体寸法は, 1連タイプで全長

1,890mm,全幅750mm,機体重220kg,2連タイプは全

長は同じで,全幅1,022mm,機体重350kgであり,いず

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【葉切り部】

引込・搬送ロール

3

【根切り部】

【排出部】

図-1 開発機の概要とタマネギの流れ

表-1 主要諸元

1連タイプ;全長1,890x全幅 750x全高 990mm2連タイプ;全長1.890x全幅1.022x全高1.020mm

1連タイプ;220kg. 2連タイプ;350kg

交流100V(1連;880W. 2連1.080W)

一対の引込・搬送ロールによる棄と根の巻込み式

ロール径120mm.螺旋ピッ チ140mm.螺旋ロープの材質PET

ロール径 80mm.螺旋ピッチ 56mm(2条).螺旋体の材質PP

一対の円板ナイフ(回転差15%)

機体寸法

一一一一宮一一注)機体寸法,機体重にコンベアは含まない

れも軽トラックの荷台に積載可能である。

タマネギの葉と根を切断する一連の流れは以下のとお

りである。

まず,タマネギが葉切り部に投入されると,互いに内

向きに回転する一対の引込・搬送ロールが葉を引き込む

ことでタマネギを下向き (逆立ち状態) に整列させると

同時に後方に搬送し左右一対の円板ナイフが葉を所定

の長さに切断する。引き続き,根切り部の引込・搬送

ロールが根を引き込むことでタマネギを上向きに整列さ

せると同時に後方に搬送し, 一対の円板ナイフが根を切

断して排出部から排出する構成となっている。

本切断方式では,葉切り時および根切り時ともにタマ

ネギの切断部位を下向きに接地させ,切断長の基準位置

を揃えた状態で切断するもので,大きさの異なるタマネ

ギが連続して流れてきても円板ナイフの高さ位置を制御

する必要がなく,比較的シンプルな構造で葉や根の長さ

を揃えて切断することを目標としている。

各部の構成要素のうち,葉切り部の引込・搬送ロール 図一2 葉切り部の引込・搬送ロール(591]ブラシ)

を図-2に 示 した。(矢印はタマネギの進行方向と口ールの回転方向を示す)

葉切り部の引込・搬送ロールは,外径120mmのPVC

製パイプの外周にPET製ロープ(以下,ロープ)とナ

イロン製ブラシ(以下,ブラシ)を140mmピッチで蝶

旋状に配置したもので,ロープを右巻にしたロールと左

巻にしたロールを一対にし,互いに内向きに回転させ

る。本ロールのうち,ブラシは葉を引き込み,ロープは

タマネギを軸方向に搬送する働きをするが,ブラシが多

すぎると葉を下方に引き込む力が大きくなり,ロープと

の摩擦も大きくなってタマネギの肩部分に傷が発生し易

掴幽盤D -...,一一.....,ーームー:回転方法 EB!明 螺旋ロープ azE1ぽ孟白血a

IIIW-瓢…/AI略...ヨ区劃 晶~cm 点瞳 園 面 薗 圃Eω・EE 螺旋ブラシ 園圃岨圃-,,~ ・・・・E圃置、3趨鍛錬制明、-~~. ~-~/-.;;-(ÇV,国語~~ 、百戸ー山司 、 ー

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くなる。また,逆にブラシが少なすぎると葉の引き込み

力が低下してタマネギの整列精度が低下する。これらの

バランスを確保するには葉の分量によってブラシの植毛

率を調整する必要があり.業の枯れ具合によってブラシ

の配列数を 3列(青葉), 5列(黄変葉), 9列(枯葉)

から選択し使い分ける(図-3)。

次に,根切り部の引込・搬送ロールを図-4に示した。

根切り部の引込・搬送ロールは, pp製の螺旋体の溝部

にブラシを植毛して形成したもので,螺旋体の外径は

80mm,凸部の幅は 7mm,螺旋ピッチは56mm(2条

螺旋)である。本ロールのうちブラ シは根を引き込み,

螺旋体凸部がタマネギを搬送する働きをする。

また,棄と根を切断する円板ナイフの上方には,タマ

ネギを一時的に挟持する円柱形のスポンジ(直径125,

高さ10umm) を左右一対に配置し,互いに逆回転させ

る。このスポンジは,葉や根を切断する際にタマネギの

姿勢が変化して切断ミスとならないようタマネギを一時

的に固定する役割を持つ。

その他,排出部には,滑り板の傾斜方向が左右に切り

替わる排出方向切替器を設置した(図-5)。本器は処

理した2連分のタマネギをひとまとめにすると同時に排

出方向を左右に切り替え可能とし収納コンテナの交換

図-3 葉切り部の引込・搬送ロール

図-4 根切り部の引込・搬送ロール

作業を容易にする。

3)利用方法と付帯装置

調製機の利用法としては,施設内等での定置利用のほ

か, トラク タに装着して圃場内を移動させながら利用す

る方法等が考えられ,各利用法に応じたタマネギの供給

装置や関連機器等の付属装置が必要である。

(1)調製機へのタマネギ供給装置等

調製機の処理能力を発揮し切断精度を安定させるに

は,調製機への供給作業の省力化とその精度が重要であ

る。そこで,調製機を施設内で定置利用することを前提

とした供給手段として,作業の省力化を優先させたタマ

ネギ供給コンベアと供給精度を優先させたタマネギ投入

台の2つの供給装置を試作した。供給コンベアを利用し

た作業状況を図-5に,投入台を利用 した作業状況を図

6に示した。

供給コンベアはAC1∞Vを電源とするスラット式のコ

ンベアで,コンベア軸間長は1.250mmである。コンベア

下部のホッパにタマネギを一括投入すれば,左右2列に

分割して毎秒約 1個ずつの速度でタマネギを繰り上げ調

製機に投入する。この供給方法は小型のプラスチックコ

ンテナ(以下,コンテナと記す)を使った収穫体系に対

応する。

図-5 供給コンベアを利用した作業状況

図-6 投入台を利用した作業状況

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一方,投入台は大容量のコンテナにも対応可能とした

もので,別途試作したフレキシプルコンテナバッグ(以

下,フレコンと記す)の底面からタマネギを一気に排出

して投入台に移し替えた後,人力で1個ずつ調製機に供

給する。荷台の高さは約850mmで,約500kgのタマネギ

を受け入れることができる。

なお,調製機で切断した葉や根が各切断部の下に堆積

すると作業が停止したり,切断精度低下の原因となるた

め,葉や根を自動排出してコンテナに収納できるよう長

さ約 1m.幅40cmのミニコンベア (AC1ωV)を調製機

の下に設置した(図-6)。

(2) トラクタへの装着器具等

調製機を圃場内で移動利用することを前提に, トラク

タへの装着器具や関連機器を試作した。トラクタへの装

着状況を図一7および表-2に示した。

タマネギの畝を跨いで移動利用する際の作業性を考慮

し調製機はトラクタの後部に縦方向に設置し,タマ

ネギは後方から投入して前方左右に排出するよう構成

した。このため,調製機はL型のフレームに固定する形

とし,フレームはトラクタの3点リンクに直装した。ま

た,収納用のコンテナの入替え台としてアルミ製ローラ

コンベアを調製機の左右に設置したほか,業切り部への

タマネギの投入労力の軽減を図る目的で簡易な供給コン

図-7 トラクタへの装着状況

表-2 トラクタ装着時の主要諸元

トラクタ出力 18.lkW (25PS)

トラクタ前輪内寸法 1.160 (mm)

後輪内寸法 1.120 (mm)

発電機出力 2.2 (kVA)

作業機全体す法 全長5.6x全幅1.6x全高1.4(m)

調製機単体重量 350 (kg)

その他装具重量 116 (kg)

注)その他装具は,方向切替器・コンテナ入替台 ・トラクタ装着金具・空コンテナ置き台など

5

ベアを試作して装着した。

なお, トラクタを含めた作業機全体の前後の重量バラ

ンスを保つため, トラクタの前部には調製機の駆動源と

しての発電機(重量45kg) とバランスウエイト(重量

60kg)を搭載した。また, トラクタがタマネギの畝(畝

幅1400-1500mm)を跨げるよう,前・後輸の輪距(内寸)

を約800mmから1.120-1.160mmに拡幅して供試した。

2 調製機の性能

1 )試験 1;調製前のタマネギの形質と作業精度

調製機の切断精度や傷の発生等の作業精度は, タマネ

ギの葉,根,球の形質や状態に大きく影響される。そこ

で,タマネギの処理速度や投入方法が作業精度に及ぼす

影響を把握するとともに,条件の異なるタマネギを供試

して調製機の作業精度を調査した。作業精度の試験区を

表-3に,各区のタマネギの外観を図-8に示した。な

お,調製機は2連タイプを使用した。

供試したタマネギのうち,試験区 1-1 (以下. 1-

I区と記す)は機械収穫時に葉を荒切りし. 1 -II区は

収穫後,葉長を15cmに調整したが,その他の区は葉と

根がすべて付着した状態のまま調製機に投入した。タマ

ネギの形質の調査は,各区とも40-50個を無作為に抽出

し,葉,根,球の形状や重量などの平均値を求めた。

作業精度の試験は,定置試験で実施し,タマネギの供

給は手作業による直接投入を含めすべてランダムな姿勢

で投入した。

タマネギは各区とも3ω個以上を連続で供給し切断

ミスと傷玉,適切り球(正常に切断できたもの)に区分

し,切断ミスと傷が重複するものについては傷玉に含め

てそれぞれ比率を求めた。このうち,切断ミスの基準

は. 2-3日経過後においても一見して根や棄の残存が

確認できる程度とし「葉」の切断ミスは葉鞘が5cm以

上残存しているもの. r根Jの切断ミスは 1cm以上の根

表-3 作業精度の試験区分

試験区 供試品種 タマネギ形質の主な特徴

1 -1 もみじ3号 標準,葉は機械収穫時に荒切り

1-II もみじ3号

もみじ3号1-ill

(マルチ栽培)

1-N もみじ3号

標準,葉は長さ15cmにカット

根が短い,甲高球,球がやや

軟らかい

標準

浜松在来種1-V 偏平球,球が非常に軟らかい

(マルチ栽培)

1一羽 北もみじ20∞根が少なく脆い,球が硬い

注)調製機の葉切り機ブラシは 1-ill. Nは5列タイ

プ,他は3列タイプを使用

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1 -1、E、N 標準 1-III 根が短い・甲高 1-V 偏平・軟弱球 1一羽 根が少ない・脆い

図-8 供試したタマネギの外観

が3本以上残存しているものとした。また,葉と根とも

に切断ミスが生じた個体は「葉」の切断ミスに含めた。

傷玉の基準については,根切り部で根を切断する際に

誤って葉の首部を切断したものは「首切りJ,根切断時

の深切りによる球の切り傷や葉切り部でのウレタン螺旋

による肩部の擦り傷,皮剥け等の傷は「その他傷」とし

た。

2)試験2;効率的な利用形態の検証

調製機の効率的な利用方法を明らかにするため,調製

機を一定の場所に固定して利用する「定置利用Jとトラ

クタに装着して圃場を移動しながら利用するの「移動利

用」の二つの利用形態およびタマネギの供給方法を変え

て作業能率や作業性を調査した。作業能率試験の試験区

を表-4に示した。

なお,調製機はすべて2連タイプを使用した。また,

供試タマネギは試験区 1-I, III区に供試した「もみじ

3号」とした。

( 1 )定置利用における試験

調製機を施設内で定置利用する場合のタマネギの供給

は,試作した供給コンベアおよび投入台を利用した。こ

のうち,供給コンベアを利用した 2-1区の作業の流れ

と調査対象は,①運搬車からコンテナの降ろし,②供給

コンベアホッパへのタマネギの投入, ③排出部でのコン

テナ交換と し, 各作業の所要時間や作業人員の内訳,作

業員の労働負担度等の作業性を調査した。このうち労働

負担度は,タマネギの投入作業員の心拍数を携帯型ハー

トレートモニタ (POLAR社H-2)で測定し,次式で求め

た心拍数増加指数により,1.0以上1.3未満を軽作業, 1.3以

上1.5未満を中作業, 1.5以上1.9未満を強作業に分類(鶴

崎3') した。

心拍数増加指数=作業中の平均心拍数/安静時心拍数

一方,投入台を利用 した 2-II区の作業の流れと調査

対象は,①フォークリフトによるフレコンの運搬・吊上

げ,②フレコンの底面を解放して投入台にタマネギを排

出,③調製機にタマネギを投入,④排出部でのコンテナ

交換,とし作業人員やその内訳等の作業性を調査し

た。

また,対照区 (2-III区)として,圃場内での鋲を

使った根葉切り作業の所要時間と作業員の労働負担度を

調査した。

( 2)移動利用における試験

調製機をトラクタに装着して圃場内で移動しながら利

用する場合のタマネギの供給方法は,試作した簡易コン

ベアおよび人力による直接投入とした。また,畝端での

トラクタのせん回 (改行)方法は, トラクタを前進させ

ながら調製作業を行い1畝毎にせん回する i1畝毎せん

表-4 作業能率と作業性の試験区分

試験区 調製機の利用方法 タマネギの供給方法 調査対象とした作業内容とその流れ

2 -1 施設内での定置利用 供給コンベア利用運搬車からコンテナ降ろし→コンベアへ一括投入→コンテナ交換

2-II 施設内での定置利用 投入台利用フレコン吊上げ→投入台にタマネギ排出→調製機に投入→コンテナ交換

2-IlI 対照(手作業) 圃場内で鉄で根葉切り

2-N トラクタによる移動利用 ・1畝毎

簡易コンベア手で拾上げ・コンベアに投入→コンテナ交換→

せん回方式 トラクタせん回・空コンテナ補給

2-V トラクタによる移動利用・ 1畝毎

手投入手で抜取り ・調製機に投入→コンテナ交換→ト

せん回方式 ラクタせん回・空コンテナ補給

2-VI トラクタによる移動利用・ 3畝毎

手投入手で拾上げ・調製機に投入→コンテナ交換→ト

せん回方式 ラクタせん回・空コンテナ補給

2-W 対照(手作業) 圃場内で鋲で根葉切り・コンテナに収納

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回方式」と. 1畝を前進しながら作業した後,せん回せ

ずにそのまま後進しながら左右両隣の2畝のタマネギを

処理してせん回する 13畝毎せん回方式j とした。

簡易コンベアを利用した 2-N区の作業の流れと調査

対象は,①事前に抜き取ったタマネギの拾上げ同時簡易

コンベアへの投入,②排出部でのコンテナ交換,③トラ

クタのせん回操作(1畝毎せん回)および空コンテナの

補給とし各作業時間や作業人員の内訳,タマネギの拾

上げ・投入要員の労働負担度等を調査した。

タマネギを手で抜き取って直接調製機に投入する 2

V区の作業の流れと調査対象は,①タマネギの抜取り同

時直接投入,②排出部でのコンテナ交換,③トラクタの

せん回操作(1畝毎せん回)および空コンテナの補給と

し各作業時間や作業人員の内訳,タマネギの拾上げ・

投入要員の労働負担度等を調査した。

タマネギを拾い上げると同時に直接投入する作業にお

いてトラクタを 3畝毎にせん回する 2-VI区の作業の流

れと調査対象は,①事前に抜き取ったタマネギの拾上げ

と簡易コンベアへの投入,②排出部でのコンテナ交換,

③トラクタのせん回操作 (3畝毎せん回)および空コン

テナの補給とし,各作業時間や作業人員の内訳を調査し

た。

また,対照区として,圃場内で鉄を使って根葉切りを

行い,同時にコンテナに収納する作業の所要時聞を調査

した。

結果および考察

1 調製機の作業精度

調製機の作業精度の試験結果を表-5に示した。

7

調製機の処理速度は,供給コンベア利用時で1列当た

り3.412個Ih.投入台利用時で2.145-2.754個Ihで,別途

調査した鋲による手作業での処理速度778個Ihに対し2.8

-4.4倍であった。

タマネギの投入速度と作業精度の関係については. 1

列当たり 3.412個Ih程度の投入速度では葉切り部での整

列ミスもなく切断精度には影響ないと考えられた。しか

し人為的に 2-3個ずつを同時に投入した実験では,

葉切り部でのタマネギの姿勢転換が困難となり整列精度

が大きく低下した。葉切り部の引込・搬送ロールによる

標準搬送速度は43cm/sで、あり,この搬送速度において

は毎秒 1個程度の速度で1個ずつ投入することが基本と

考えられた。

タマネギの形質と作業精度の関係については,全体的

傾向としてタマネギに残存する葉や根が長く分量が多い

ほど切断精度が高くなる傾向が認められた。

まず,タマネギの葉長の影響は,葉を15cmにカット

した 1-n区では葉切り部ブラシによる葉の引込性がや

や悪く,整列ミスが原因で葉の切断ミスが2%発生し

た。また,葉が切断されなかった個体は根切り部で葉を

引込まれる確率が高くなり,根切り部でも整列ミスと

なって根の切断ミスを増加させた。一方,平均葉長が

23cmで、あった 1-1区では葉長が平均を下回る (20cm

未満)個体で整列ミスが若干見られたが葉の切断ミスは

1%であり,葉を切断せずにそのまま供試した他の区で

は切断ミスはほとんど見られなかった。従って,葉の切

断ミスを極力なくすための葉の条件としては葉長が概ね

20cm以上(葉の質量で、は概ね20g以上)であることが重

要であり,この条件は後の根の切断精度など,作業精度

全体を左右する重要な要件であると考えられた。

表-5 タマネギの形質と調製機の作業精度

タマネギの形質等 作業条件

試験区 品種 葉長葉重根長根数球径球形指数球重球の6) タマネギの処理速度cm gl個 mm 本 mm球高/球径 g 硬軟 投入方法個/h・連

1 -1 もみじ3号 23 19 125 46 82 0.84 248 標準供給

3.412 コンベア

1 -II もみじ3号 15 10 43 76 0.96 246 標準 手投入 2.809

もみじ3号87 39 34 89 l.01 347

やや投入台 2.145 1 -m (マルチ栽培) 47 軟

l-N もみじ3号 45 35 51 45 91 0.87 340 標準 投入台 2.754

浜松在来種1 -v (マルチ栽培) 49 71 74 40 92 0.75 298 軟 手投入 1.704

l-VI北もみじ2ωo 37 30 53 22 75 0.88 200 硬 手投入 2.403

注. 1)切断ミスの基準は.I葉」は5cm以上.I根」は lcm以上で、3本以上残るものとした。2)傷区分の「首切り」は根切り部で葉の付け根部分を切断したもの。3)切断ミスと傷の重複は“傷"としてカウントした。4)根と葉ともに切断ミスの個体は葉の切断ミスとした。5)調製機の葉切りブラシは. 1 -m. Nは5列タイプ,他は3列タイプを使用した。6)球の硬軟は達観による。

切断ミス1'% 傷% 適切り率

葉 根 首切りと その他の傷

%

1 1 4 。94

2 10 7 。81

。27 7 5 61

。1 2 。97

。3 5 5 87

。6 11 。83

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次に,根の状態の影響は,根の平均長が3.9cmと短

かった l-ill区において根切り部での根の引込性が悪

く整列精度が極端に低下して根切りミスが27%と多発

した。これは,根切り部の引込・搬送ロールの直径が

80mmであり,左右一対のロールの上端面から根の引込

力が作用するロール接点までの垂直高さが40mmで、ある

ことが影響していると考えられた。また,根の本数が22

本と少なく,かっ脆い状態であった l-VI区でも根切り

部での整列精度が悪く,誤って葉を引込むケースが多く

なったことから首切り球が11%と多発した。これらか

ら,作業精度を維持するための根の条件としては,根腐

れ等の症状のない健全な根が約4cm以上あることが要件

と考えられた。

次に,タマネギの球の形状の影響は,球形指数が1を

超える甲高(縦長)球の l-ill区や同指数が0.75と偏平

球の l-V区の切断精度が悪かった。このうち, 1 -ill

区については前述の根が短かったことに加え甲高のため

重心位置が高く,根切り部で搬送される途中に横転す

る確率が高くなり根の切断ミスが増加した。また,甲高

のタマネギは,根を切断する際に深切りとなる傾向が

あり,球の一部を切断するなど傷玉の発生も 5%と多く

なった。また,逆に偏平球の l-V区については,球底

の形状がフラットなため根切り部の一対の引込・搬送

ロール聞の凹部形状(逆三角形)との密着性(すわり)

が悪く,搬送途中に球が踊って整列精度が低下するなど

の傾向が見られた。このため,球の形状としては球形指

数が0.80~0.95程度のやや楕円形状が適すると判断され

た。

一方で、,球が特に柔らかかった l-V区は,葉切り部

で搬送される際に螺旋ロープとの摩擦により球の肩部に

擦り傷,剥け傷が5%発生した。これには,螺旋ロープ

やPVC製パイプとの摩擦を低減させるための改良が別

途必要と考えられた。

調製機の作業精度を確保するための上記の3点の条件

をクリアした 1-1区およびl-N区については,葉と

根の切断ミスが2%以下,傷玉率が4%以下となり,適

切り率は94%以上であった。適切り品は傷がなく葉の長

さ 2~3cm,根の長さは lcm以下で、あった。

2.調製機の作業能率と作業性

開発した調製機は,タマネギに混入して投入される土

塊や稲株,雑草などの爽雑物についても,引込・搬送

ロールの隙間 (26mm)から瞬時に排出できるため,作

業を停止することなく長時間の連続運転が可能であっ

た。なお,球径が4cm程度以下の小玉球についても前

記ロールの間隙を通過して落下した。

1 )定置利用の場合

定置利用による調製機の作業能率と作業性の試験結果

を表 6に示した。

供給コンベアを利用した調製作業2-1区は,タマネ

ギの供給係 1名と排出部でのコンテナ交換 1名の合計2

名で作業が行え能率的であった。しかし切断した葉や

根の除去・運搬や根切り部ブラシの掃除などの作業があ

り2名体制ではやや慌ただしい状況であった。 10a当り

に換算した作業時間は4.8h/10aで,内訳は運搬車からタ

マネギの降ろし5%,調製作業79%,根切り部ブラシの

掃除16%,であった。特にPP製螺旋体の溝部に巻き付

いた根の除去がし難く, 1時間ごとに10分程度の掃除の

時聞が必要であった。

一方,投入台を利用した調製作業2-II区は,タマネ

ギの投入係 2名,コンテナの交換 1名,フォークリフ

ト・フレコンの操作とコンテナ交換の兼務 1名,の合計

4名が必要で、あった。調製機が2連タイプのため投入係

が必ず2名必要で、あるが,定位置でタマネギを 1個ずつ

流し込むだけの作業であり,高齢者や女性でも対応可

能な作業であった。また,コンテナの交換要員が1.5名

のため全体的に余裕を持って作業が行えた。作業時間は

4.5h/10aで,内訳はフォークリフトとフレコンによるタ

マネギの搬入・排出15%,調製作業83%,根切り部ブラ

シの掃除3%であった。

作業時間と所要人員の積で表した延べ作業時間(労

力)は,供給コンベアを利用した 2-1区が9.6人h/lOa,

投入台を利用した 2-II区が18.0人h/lOaで,対照とし

た手作業で、の調製作業33.3人h/lOaに対し投入台利用

時で54%,供給コンベア利用時では29%と大幅に削減で

きた。

タマネギの供給作業員の労働負担度(心拍数増加指

数)は,供給コンベアを利用した 2-1区が1.07,対照

の手作業が1.10となりいずれも「軽労働」に区分された。

また,投入台を利用した作業は測定してないが,前述の

とおり定位置での軽作業であり,労働負担度はさらに小

さいと考えられた。

以上の結果から,作業人員が少ない場合には供給コン

ベアを利用し作業人員に余裕がある場合は投入台を利

用する手法が効率が良く優れる。ただ,供給コンベアは

2列分の供給が自動化できる反面,タマネギの葉等の性

状や球のサイズによって供給精度が大きく変動するた

め,安定した作業を行うにはコンベア角度の調整等,煩

雑な作業が必要である。この点,投入台は投入係が2名

必要であるが, 1個ずつ確実に投入できるため調製機の

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表-6 定置利用時の調製機の作業時間と作業性

試験区 タマネギ処理面積所要時間 処理速度 所要人員と内訳 10a当り作業時間とその内訳延べ作業時間(対照比)作業員の労働負担度

心拍数増加指数1)供給方法 ぱ mm 個/h'2連 人 h/10a 内訳(%) 人h/10a (労働強度2')

供給 2 調製掃除 タマネ2 -1 コンベア 101 29 6.824 (供給 1. コンテ 4.8 ギ搬入 9.6 (29) l.07 (軽)

ナ交換 1) 79 16 5

4 2-ll 投入台 566 152 4.289 (投入2. コンテ 4.5 83 3 15 18.0 (54)

ナ交換ほか2)

2-ill 対 照 190 127 2.334 3 11.1 33.3 (100) 1.10 (軽)

注 1)心拍数増加指数は.平均心拍数/安静時心拍数。2)労働強度は,鶴崎 (1983)の区分による(l.0-l.3軽労働.l.3-l.5中労働.l.5-強労働)。

切断精度はより高位に安定する。また,フレコン等の大

型コンテナに対応した方法であり,荷役機械でタマネギ

の運搬・搬入を行うため作業者の労働負担が極めて小さ

くでき,作業効率も高いことが特徴である。これらの点

を考慮すると定置利用時のタマネギの投入方法としては

投入台を利用した方がメリットは多いと考えられた。

2)移動利用の場合

移動利用による調製機の作業能率と作業性の試験結果

を表-7に示した。

調製機をトラクタに装着して圃場内を移動しながら作

業する利用法は.事前に抜き取ったタマネギを人力で拾

い上げる作業をともなうため, トラクタの作業速度を

0.04m/s以下の低速とする必要があった。また, トラク

タ車輪の輪距(内す法)と畝のすそ幅を合わせることで

ほぼ畝に沿った倣い走行が可能となったためトラクタを

操作する専任の作業員は不要であった。

簡易コンベアを利用した 2-N区は,タマネギの拾

上・投入係 2名と排出部でのコンテナ交換 1名, トラ

クタの操作とコンテナ交換の兼務 1名の合計4名が必

要であった。このときのトラクタの作業速度は0.04m/s

程度が適当であった。 10a当りに換算した作業時間は

6.7h/lOaで,内訳は調製作業68%.根切り部ブラシの掃

除6%. 空コンテナの補給6%. トラクタのせん回20%

であった。トラクタ,調製機,街易コンベア等から構成

される調製作業機は,後方荷重が大きく全体の重量バラ

ンスが悪くなったほか, トラクタ操作の不慣れもあって

せん回時間の比率が大きくなった。

次に, タマネギの抜き取りを人力で行い調製機に直接

投入する作業法2-V区は 前記2-N区と同じ4名組

体制で、行った。この場合,タマネギの抜取りに時間を要

するためトラクタの作業速度は0.03m/sとさらに減速す

る必要があった。作業時間は7.4h/lOaで,内訳は調製作

業79%.根切り部ブラシの掃除9%. 空コンテナの補給

4%. トラクタのせん回 8%であった。作業時間は若干

長くなったが作業内容にタマネギの抜取りが含まれてお

り,収穫から調製までを完了する体系としては最も短時

間で作業ができる方法と考えられた。

タマネギを拾い上げると同時に直接投入する作業にお

いてトラクタを 3畝毎にせん回させる作業法2-VI区に

ついても前の2つの区と同じ4名組体制で、行った。この

場合. トラクタの前進時(l畝を処理)は0.03m/s. 後

進時 (2畝を処理)は0.02m/sとする必要があった。作

業時間は6.2h/lOaで,内訳は調製作業90%.根切り部ブ

ラシの掃除6%. 空コンテナの補給 1%. トラクタのせ

ん回 3%であった。この方式は移動利用時の作業方法の

中では最も効率的な利用方法であった。

表-7 移動利用による調製機の作業時間と作業性

処理面積所要時間 処理速度 所要人員と内訳 10a当り作業時間とその内訳 延べ作業時間(対照比)作業員の労働負担度試験区 タマネギ 心拍数増加指数1)

供給方法 rrl min 個/h・2連 人 h/10a 内訳(%) 人h/lOa (労働強度")

簡易119 48 3.789 調製掃除コンテナせん回2-N コンベア

4 6.7 補給 1.17 (軽)(拾上・投入2. 68 6 6 20 26.8 (79)

2-V 114 50 3.050 コンテナ交換 1.手投入 トラクタ操作 1) 7.4 79 9 4 8 29.6 (87) l.30 (中)

2 羽 225 84 3.188 6.2 90 6 3 24.8 (73)

2-Vll 対照 190 160 3 14.0 42.0 (100)

注 1 )心拍数増加指数は,平均心拍数/安静時心拍数。2)労働強度は,鶴崎(1983)の区分による(l.0-l.3軽労働.l.3-l.5中労働.l.5-強労働)。

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延べ作業時間(労力)は,簡易コンベアを利用した

2-N区が26.8人h/lOa.抜き取り作業を同時に行った

2-V区が29.6人h/10a.トラクタを 3畝毎にせん回させ

る2-VI区が24.8人h/10aで,対照の手作業での調製・

収納作業42.0人h/10aに対して73-87%に削減できた。

タマネギの投入作業員の労働負担度(心拍数増加指

数)は,タマネギを拾い上げて供給コンベアに投入する

2-N区が1.17で「軽労働」であったが,抜き取りを同

時に行った 2-V区は1.30で「中労働jに区分された。

畝上のタマネギを拾い上げる作業は「立ち屈み作業」の

連続となるほか,抜き取り作業はさらにタマネギの葉を

掴んで引き抜く力やこつ,作業の正確性等が求められる

ため,作業員の労働負担度は精神的負担も含め労働強度

の調査結果以上に大きいと判断された。

以上から, トラクタを利用して圃場内を移動しながら

調製作業を行う手法としては,タマネギを拾い上げて直

接投入しトラクタを 3畝毎にせん回させる作業方法が最

も作業効率がよく,かつ能率的であった。しかしタマ

ネギを拾い上げる作業を人力に因る限りは作業員の労働

負担が大きく,現在の手法では普及性は低いと判断され

た。

以上の結果,調製機を定置利用する場合と移動利用す

る場合,それぞれごとに利点と欠点があり,いずれの手

法を選択するかは利用者個々の事情に応じて決定するべ

きである。例えば,移動利用については,①切断した葉

や根などの残誼処理の必要がない,②掘取り作業,拾上

げ作業を同時化できるため作業工程数を減らせるなどが

利点であるが,前述のとおり作業者の労働負担が大きい

ため,掘取り,拾上げ作業を含めた機械化が必要と考え

られた。また,定置利用については調製作業の精度や効

率の面では有利であるが,①掘取り・拾上げ作業や調製

場所までの搬入作業が必ず別工程となる,②調製場で残

査の処理が必要となるなどの欠点がある。従ってこれら

の欠点の対策を検討すると同時に,収穫から調製・出荷

に至る作業体系全体を通した効率的な利用法の検討が必

要であると思われた。

3.残された課題

開発した青切り用調製機の効率的な利用法として,現

状ではフレコンと投入台を利用した定置利用法が最も省

力的で高能率な方法と考えられ,前述の掘取り・拾上

げ・搬出作業を省力かつ能率よく行える作業機が実用化

されれば一連の省力体系として確立できると思われる。

ただ,青切り用の調製作業については閏場内での作業を

希望する生産者も多いため,移動利用体系についてもそ

の確立に向けた検討は必要である。この点については,

既に 1連タイプを対象にトラクタ装着式のアタッチメン

トを製品化して対応しているが,将来的には前に述べた

掘取り・拾上げ・調製・搬出が一度に行える複合作業機

(仮称タマネギコンパイン)の中への調製機能の追加に

ついても一つの方向として検討の必要があると考えられ

る。

謝辞

本研究にあたっては,調製機の製造元である(株)ニ

シザワに全面的な協力をいただいたほか,現地試験にあ

たっては. (株)OCファーム. (有)グリーンフィール

ド,静岡県農林技術研究所. (株)和田オートマチック

ス,中讃農業改良普及センターの関係者に多大なご協力

をいただいいた。ここに記して深く感謝の意を表す。

引用文献

1 )貝沼秀夫 (2012)・タマネギ調製装置,農業機械学

会誌74(5) : 353-355. 2012

2)竹中秀之 (2010):北海道における野菜生産の機械

化最前線,農業機械学会誌72(3) : 196-202. 2010

3)鶴崎孝 (1983):急傾斜カンキツ園における運搬労

働,特にモノレール車運搬に関する研究,愛媛大農学

部紀要28:1-53

4)西村融典・山浦浩二・十川和士 (2002):水回転換

畑における効率的なタマネギ拾上・搬出技術の開発,

農作業研究37(4) : 205-214. 2002