テーマ:CS 経営における J リーグに関する一考察...

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卒業論文 2016 1 22 経営学科4年 倉又理貴 テーマ:CS 経営における J リーグに関する一考察 ~満員率に着目して~ 1

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卒業論文

2016 年1 月22 日 経営学科4年

倉又理貴

テーマ:CS 経営における J リーグに関する一考察 ~満員率に着目して~

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目次

序章 ................................................................................................................................................. 3 第 1 節:本研究の目的と位置付け .............................................................................................. 3 第 2 節:本論文の分析フレームワークと構成 ........................................................................... 5

第 1 章:J リーグの現状 ................................................................................................................. 6 第 1 節:概要 ............................................................................................................................... 6 第 2 節:J リーグの取り組み ...................................................................................................... 7

第 2 章:J リーグ・クラブに関する先行研究 ................................................................................ 9 第 1 節:J クラブのビジネスモデルに関する研究 ..................................................................... 9 第 2 節:観戦者に関する研究 ................................................................................................... 11 第 3 節:満員率に関する研究 ................................................................................................... 15 第 4 節:満足度に関する研究 ................................................................................................... 17

第 3 章:顧客満足の理論研究 ....................................................................................................... 19 第 1 節:顧客満足の意義 .......................................................................................................... 19 第 2 節:顧客満足の定義 .......................................................................................................... 20 第 3 節:期待不一致 .................................................................................................................. 21 第 4 節:現代の企業経営における顧客満足 ............................................................................. 23

第 4 章:数量分析 ......................................................................................................................... 24 第1節:アンケート概要 ........................................................................................................... 24 第2節:分析結果 ...................................................................................................................... 25

第 5 章:事例研究 ......................................................................................................................... 29 第 1 節:川崎フロンターレ ....................................................................................................... 30

第 6 章:インプリケーションと今後の課題 ................................................................................. 37 第 1 節:インプリケーション ................................................................................................... 37 第 2 節:今後の課題 .................................................................................................................. 38

参考文献・URL ............................................................................................................................. 39

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序章 第 1 節:本研究の目的と位置付け 近年の日本を見てみると国民とスポーツの関係は以前と比べるとより密接な関係になってい

る。現代社会においてスポーツはもはや立派な文化の1つとして認識されている。それはスポー

ツ観戦にとどまらず、個人が健康を保持するための手段、世代問わず共有することができる話題

としてのコミュニーケションツールということである。また、消費社会という現代の経済におい

てもかなりの波及効果を生み出すものとして捉えられている。2020 年に行われることが決まっ

た東京五輪に始まり、2015 年から設置されているスポーツ庁の存在など、スポーツと国民の関係

というのは今まで以上に深くなっていくことが考えられる。 そして、このスポーツの発展を大きく担っている競技というのが「サッカー」である。かつて

は野球が日本を代表するスポーツであったのに対して、近年はその傾向が変化しつつある。テレ

ビのプロ野球中継時間が減少しているのに対して、サッカーにおいてはプロリーグ、代表戦とも

に増加している。その要因としては、2002 年の日韓共催ワールドカップの開催、2010 年のワー

ルドカップ南アフリカ大会におけるベスト 16 進出などが挙げられる。また 2011 年のなでしこジ

ャパンワールドカップ優勝やフットサルの認知度向上により、サッカーというスポーツは子供か

ら大人まで、さらには男女関係なく携わることが出来る競技となったのである。さらには、情報

化の発達により海外のサッカーをより身近で触れることが出来るようになったなどの要因も挙

げることができる。 それでは、ここまでサッカーの人気を爆発的に上昇させた要因とは何であろうか。それはやは

り、日本プロサッカーリーグ(以下 J リーグ)の存在である。1993 年に J リーグが発足されて、サ

ッカーが正式にプロスポーツになったことにより、メディアやマスコミへの露出などが増加した。

また、同年に起きた「ドーハの悲劇」1などが重なり、国民のサッカーに対する認知度は飛躍的に

上昇した。またサッカーの競技レベル自体も向上し、現在では本田選手、長友選手などのヨーロ

ッパの一流クラブに選手を輩出することが出来るレベルにまで到達した。これらはすべて J リー

グが発足したことが要因だと考えることが出来る。 ところが、2008 年頃を境にトップリーグである J リーグ Division1(以下 J1)の年間を通した観

客動員数が低下しつつある。2011 年は東日本大震災の影響で大幅に減少し、翌年には一定数は増

加したが、さらに翌年からは再び減少傾向になっているのを見ることができる。これにはさまざ

まな要因が考えられるが、J リーグはこれを改善するために多くの改善策を施行している。近年

でいえば、「2 ステージ制への移行」などが挙げられる。また、J リーグ各クラブも、観客動員数

を増加させるために、独自の取り組みを行っているクラブも見られる。しかし、観客動員数は一

向に増加の兆しを見ることができない。これは、J リーグ、各クラブが行っている顧客満足経営

が適していないためではないかと考えることができる。 また J リーグでは赤字経営を行っているクラブがいくつか存在している。プロスポーツクラブ

1 1993 年に行われた W 杯アメリカ大会のアジア最終予選において、勝利すれば本大会初出場が決まる戦いの

中、引き分けにより初出場を逃したこと。

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でスポンサーがいるとは言え、その状態が続くことは決して好ましくない。その現状を踏まえて

J リーグは 2012 年に「クラブライセンス制度」を導入した。しかし、まだまだ回復傾向にあると

は言い難い。これは、J クラブの主な収入源である入場料収入、つまり観客動員数が減少してい

るためだと考えることが出来る。したがって、少しでも多くのお客さんにスタジアムに足を運ん

でもらうことこそ、経営環境を良くすることにもつながると考えることが出来るのである。 そして、観客動員数でのみクラブを見ていると、スタジアムの収容人数により差が生まれてし

まう。したがって、先行研究よりスタジアムの収容人数と相関関係にない満員率に着目して分析

をしていきたいと考えている。 以上より、本研究では「J クラブが今後行ってくべき顧客満足経営はどのようなものなのか」

というのをリサーチクエスチョンとして、J クラブが行っていくべき顧客満足経営を顧客へのア

ンケートを分析して求めていく。既存の研究では、J クラブの観戦要因や満足度についての研究

は行われてきたが、それを満員率との関係性を求めているものはなかった。また、各要因の影響

の強さは明らかになっていない。そして、要因に対して具体的な事例を研究したものは存在しな

かった。これにより、スポーツが文化になりつつある日本という国で、プロスポーツリーグ全体

だけではなく、各プロスポーツチームにとっても、観客数の増加、および健全な経営を行う方策

の 1 つになると考えられる。 (図表 1)1993 年~2013 年の J1 の観客動員数

(出所)J リーグ公開資料から筆者作成

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第 2 節:本論文の分析フレームワークと構成 本研究における分析フレームワークは以下の通りである。独自の J リーグのサービスに対する

満足度のアンケート調査により明らかになった観戦頻度により強い影響を与える 4 つの要因をも

とに分析を行っていく。 構成としては、先行研究として、顧客満足経営と J リーグの観戦者、満足度などに関する先行

研究を行う。顧客満足経営の先行研究では、定義の移り変わりを確認していく。そして、現代の

顧客満足が目指すべきものを整理し、「不満足」の解消ではなくて、「非満足」からの脱却を図っ

ているものと定義する。 そして、J リーグの先行研究では、まず J リーグのマネジメントを整理する。そこから観戦者

の要因に対する効果を確認していく。そして、観戦者がクラブから与えられている満足度の傾向

を確認して、満員率で研究を行う意味を定義する。 次に独自の J リーグのサービスに対する満足度のアンケート調査を行う。その結果を重回帰分

析にかけて、どの要因が満員率により強い影響を与えているのかを明らかにしていく。 そして、事例研究として満員率で良い結果を残している J クラブを事例対象として、分析結果

から出た観戦に強い影響を与えている分野におけるサービスを研究し、それをリサーチクエスチ

ョンの解とする。 (図表 2)分析フレームワーク

(出所)筆者作成

観戦頻度

1.スタジアム設備要因 1.ネット要因

3.顧客要因 4.グッズ要因

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第 1 章:J リーグの現状 第 1 節:概要

社名 公益社団法人日本プロサッカーリーグ 代表者 村井満(チェアマン) 所在地 東京都文京区本郷3丁目 10 番 15 号 JFA ハウス9階 設立 1991 年 11 月 1 日 事業概要 プロサッカーリーグの運営、地域スポーツ振興活動によるスポーツ文化の醸成な

ど J リーグは 1993 年に当時日本サッカーの最高峰であった「日本サッカーリーグ(JSL)」をプロ

リーグ化することにより誕生した。初年度はわずか 10 チームからスタートした。J リーグの理念

として以下の 3 つを掲げている。 一、日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進 一、豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与 一、国際社会における交流及び親善への貢献 この理念のもと以下の活動方針で活動している。 1.フェアで魅力的な試合を行うことで、地域の人々に夢と楽しみを提供します。 2.自治体・ファン・サポーターの理解・協力を仰ぎながら、世界に誇れる、安全で快適なスタジ

アム環境を確立していきます。 3.地域の人々にJクラブをより身近に感じていただくため、クラブ施設を開放したり、選手や指

導者が地域の人々と交流を深める場や機会をつくっていきます。 4.フットサルを、家族や地域で気軽に楽しめるようなシステムを構築しながら普及していきます。 5.サッカーだけでなく、他のスポーツにも気軽に参加できるような機会も多くつくっていきます。 6.障がいを持つ人も一緒に楽しめるスポーツのシステムをつくっていきます。 また、事業内容としては以下の 11 項目から構成されている。 ① プロサッカーの試合の主催および公式記録の作成 ② プロサッカーに関する諸規約の制定 ③ プロサッカーの選手、監督および審判等の養成、資格認定および登録 ④ プロサッカーの試合の施設の検定および用具の認定 ⑤ 放送等を通じたプロサッカーの試合の広報普及 ⑥ サッカーおよびサッカー技術に関する調査、研究および指導 ⑦ プロサッカーの選手、監督および関係者の福利厚生事業の実施 ⑧ サッカーに関する国際的な交流および事業の実施 ⑨ サッカーをはじめとするスポーツの振興および援助 ⑩ 機関紙の発行等を通じたプロサッカーに関する広報普及

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⑪ その他目的を達成するために必要な事業 1999 年からはディビジョン 2(以下 J2)が誕生し、2 部制となった。2002 年のワールドカップ

を経て、2005 年からは J1 が 2 ステージ制から 1 ステージ制になった。そして、年々クラブ数は

増加していき、2014 シーズンよりディビジョン 3(以下 J3)も誕生し、2015 年現在 J1 が 18 クラ

ブ、J2 が 22 クラブ、J3 が 12 クラブの合計 52 クラブにまで拡大し、37 都道府県に広がってい

る。そして、2015 シーズンからは再び 2 ステージ制およびチャンピオンシップ制が導入される。 第 2 節:J リーグの取り組み

(図表 3) 1993 年~2013 年の J1 の観客動員数

(出所)J リーグ公開資料から筆者作成

1993 年に J リーグが発足してから、最初の 3 年間は爆発的に観客動員数が増加していった。

しかし、1996 年に最初の壁が来る。サッカー人気が急激に減少したことに並行して、観客動員数

も一気に減少したのである。そこで、J リーグは改革に乗り出す。1999 年から 2 部リーグにあた

る J2 をスタートさせることで、J リーグ全体の規模を拡大させプロクラブのチーム数を大幅に

増加させたのである。これによって、今までプロクラブがなかった都道府県にもプロの試合が見

られる環境が生まれたことによって、観客動員数は若干上昇の気配を見せる。その後少し落ち込

むが 2002 年のワールドカップのためのスタジアムの建築、改修や大会での日本代表の躍進も相

まって、再び観客動員数は増加していったのである。 ところが、ヨーロッパなどのトップリーグと比べると満員率などを含めて、到底追いつけるも

のではない。さらに、2005 年頃から横ばいになってきて、2009 年以降は下降傾向にある。そこ

で、J リーグはこの状況を打開すべく 2007 年度より「イレブンミリオンプロジェクト」をスター

トさせたのである。これは、J リーグの理念を実現するために 2010 年までに J1・J2 のそれぞれ

のリーグ戦と、入れ替え戦、J1 で行われるカップ戦の観客動員数の合計を年間で 1,100 万人以上

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を目標にしたプロジェクトである。熱狂のスタジアムを作るということをコンセプトに 4 要素が

必要であると表明した。それは、①クラブ経営の安定・発展②地域密着活性化③試合の価値アッ

プ④メディアとの協力の 4 つである。この 4 つの要素を意識して、具体的な取り組みは各クラブ

の環境に合わせて執り行うことになっていた。しかし、革新的な施策を打ち出すのではなく、当

時のチェアマンである鬼武健二氏が「入場者を増やすためにどうしたらよいか。それは地道な努

力しかないのです。~中略~ そのような活動の積み重ねが、クラブチームへの親しみやすさや

愛情を育んでいくのです。」と述べたように、これまで J クラブがそれぞれの地域で行ってきた

活動を今後も継続して行っていく方針を示したのである。しかし、最終的にこのプロジェクトは

2010 年の観客動員数が 8,645,762 人ということで失敗に終わってしまうのである。4 要素を表明

したのみで、さらに具体的な施策を J リーグが提案出来なかったことが原因として挙げられる。 そして、東日本大震災の影響もあり、2011 年シーズンはさらに落ち込み、翌年少し回復するが、

さらに翌年は再び減少した。そこで、J リーグは 2015 年シーズンより再び 2 ステージ制にする

ことを決定した。さらに加えてチャンピオンシップの復活も決定したのである。これは野球のク

ライマックスシリーズと同じように注目試合を増やすことによって、観客に対してプロモーショ

ンを行い、観客動員数を増加させることを目的としている。しかし、試合数が 1 ステージ制の時

より増加することによる選手への疲労増加や、時代を逆行する施策ということから、決定前から

選手、サポーターの両者から猛反対されていた。今回 J リーグは両者の意思を受け入れずに決定

したといえる。 J リーグは他にも動きを見せている。それはスタジアム環境の整備である。2022 年ワールドカ

ップの招致の失敗により浮き彫りになった世界標準のスタジアムづくりのために、2020 年を目

標に新たなスタジアム基準を 2010 年に決定した。それまで「スタジアム検査要項」は 1993 年の

J リーグ開幕に向けて作成された規定を少しずつ改定して使用していたが、この時点で大幅な改

定を行い、2020 年に向けて各クラブとも着実に整備の動きを見せ始めた。しかし、これもまだ明

確な結果が出ているとは言いがたく、もっと J リーグから各クラブに積極的にアプローチしてい

くことが必要である。

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第 2 章:J リーグ・クラブに関する先行研究 J リーグに関する研究は、発足してからまだ 20 年余りしか経過していないことや、経営情報の

開示が行われたのが2006年からのため理論として構築されるに至っている研究はほとんどない。

J リーグに関する先行研究は主に 2002 年以降のものを中心に参照した。これは 2002 年の日韓ワ

ールドカップ開催をきっかけに日本においてのサッカーというスポーツ、J リーグ市場の確立が

なされたと考えたためである。 第 1 節:J クラブのビジネスモデルに関する研究 昨今の J リーグでは、経営破たんするクラブが徐々に出現してきて社会問題化してきているの

である。各 J クラブにとって経営を安定させることは、経営上の大きな課題になっている。した

がって、経営を安定させるためには、収益構造を計量的に評価するビジネスモデルの構築が必要

なのである。そもそも、J クラブの収益構造については、以下のグラフの通りである。 (図表 4)2014 シーズンの J1 の営業収益の平均の内訳

(出所)J リーグ公開資料から筆者作成 まず、広告料収入とは、J クラブのスポンサー企業が広告宣伝を目的とし、J クラブに支払う

広告料としての収入である。この収入が営業収益の半分近くを占めている。しかし、これは平田

(2008)によると、「比較的規模の大きいクラブは親会社が存在し、1 年間の事業収支が赤字になっ

た場合の損失額を補てんする役割を果たしている。」と述べている。したがって、純粋なクラブ独

自の営業活動による収益という見方はふさわしいとは言えないのである。次に入場料収入とは、

J クラブが主催するホームゲーム(リーグ戦 17 試合、さらにカップ戦も含む)における観戦チケッ

ト収入のことである。また、物品販売やスタジアムにおける飲食収入も含まれている。この収入

はもちろん観戦者数によって影響を受けるものである。そして、広告料収入よりも純粋に観戦者

48%

21%

7%

24%

広告料収入 入場料収入 Jリーグ配分金 その他の収入

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がクラブを評価する指標として適していると言えるだろう。最後に J リーグ配分金とは、J リー

グが協賛金収益、商品化権収益、放映権収益などの財源から昨年度の順位に即した金額を J クラ

ブに配分するものである。順位によって金額に差があると述べたが、J リーグは海外のリーグほ

どの差はないのが現状であり、海外のリーグでは上位から下位で 50 億円以上の差があるのに対

して、J リーグでは 50 万円ほどである。したがって、こちらもクラブの独自の活動よりに影響は

強く受けないのである。また、割合も上記2つと比べてとあまり大きな比ではない。 ちなみにこれらの収益構造の現状に対して、大東、村井(2014)は、「企業スポーツからの脱却を

うたってスタートした J リーグではあるが、脱却しきれていない現実も見え隠れし、適正価格の

広告宣伝費としてクラブに協賛することは何ら問題ないが、責任企業への依存という構造から脱

却しようとする姿勢すら感じられないクラブもある。」と述べている。また、J LEAGUE ANNUAL REPORT(2014)では、「クラブの歴史や背景によって収益構造に特徴は見られるもの

の、基本的には二大収益源である入場料収入と広告料収入をバランスよく獲得し特定の収入に依

存しすぎないことが、クラブ経営の安定につながる。」と述べている。これらのことから、広告料

収入に過剰に依存している現状に危機感を抱かれていると言えるのである。 J クラブの成功するビジネスモデルに関しては、明確なものは存在していない。しかし、いく

つかの先行研究が行われている。佐藤、猿渡、仲澤(2006)は、J クラブの収入源が大きく 3 つに

分かれているが、いずれの J クラブにとっても「スタジアムにおけるチケット収入の増加を図る

ことが、クラブの運営上最も重要な課題と言える。」と述べている。 荒井、角埜(2009)は成功モデルとして浦和レッズをあげて、高収益ビジネスモデルの仮説を構

築している。浦和レッズを対象とした要因は、2000 年代後期の浦和レッズは J リーグ優勝、ACL優勝、CWC3 位などの好成績を収め、かつ営業収入に関して突出していたからである(2014 年度

においても営業収入は全 18 チーム中 1 位)。結果としては、「浦和レッズは主な収入源である企

業支援(=広告料収入)、J リーグ配分金に大きく依存することなく、自立してプロフィットセンタ

ー化し、ビジネスの好循環を生み出している。」と述べている。つまり、浦和レッズは入場料収入

を、ファンサービスを含む事業費に充て、積極的な集客活動を実現するなどして、高収益をあげ

ているのである。また、浦和レッズは入場料収入の営業収益全体における割合が毎年 30%~40%という金額なのである。

(図表 5)浦和レッズ営業収益構成比 2014 年度 (単位:百万円) 営業収益 5,854 構成比 広告料収入 2,380 41% 入場料収入 1,982 34% J リーグ配分金 263 4% その他 1,229 21% (出所) J リーグ公開資料から筆者作成

さらに、平田、佐藤、浦嶋、柴田、梶川(2008)は、浦和レッズの経営と成長要因について述べ

ている。これは、平田、中村(2006)で提案されたプロスポーツにおけるトリプルミッションモデ

ルを浦和レッズに当てはめて分析したものである。このトリプルミッションというのは、「勝利」、

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「普及」、「市場」の循環が成功要因として必要であるとするものである。この 3 つの概念をそれ

ぞれ順位、観客数、営業収入として相関分析を行ったのである。結果としては、トリプルミッシ (図表 6)トリプルミッションモデル図

(出所)平田、中村(2006)から引用 ョンモデルを構成するそれぞれの要素が密接に循環し合っているということであった。さらにこ

の好循環を生み出せた背景に自立および、親会社依存からの脱却をあげていた。脱却し、親会社

つまりスポンサーからの損失補てんに頼らず、このモデルを循環させることこそ 1 つの成功モデ

ルであると述べている。 また、J LEAGUE PUB REPORT(2015)によれば、「入場者数の増加は入場料収入の増加につ

ながるが、それに加えて、スポーツのコンテンツ価値の向上にもつながり、その結果として広告

料収入の増加、さらにはメディア露出の増加へと波及していく。そして、メディア露出の増加は、

またさらなる入場者数への増加へつながる。このように、スポーツでは連鎖的に収益が増加して

くメカニズムがある。」と述べている。 以上のことから、広告料収入などの外部からの援助に依存するのではなくて、入場者数、およ

び入場料収入をより増加させるための施策を行うことこそが有益なビジネスモデルであると言

うことが出来るのである。 第 2 節:観戦者に関する研究 前節から観客数を増加させることが入場料収入の増加につながり、さらにはクラブ経営の黒字

化にまでつながることがわかった。それでは、観客数を増加させるための要因とはどのようなも

のがあるのか。これについては、一定の先行研究を見受けることが出来た。 福原(2011)は、「スタジアム設備への投資やクラブグッズ販売・開発にかける費用の係数が正で

あるため、スタジアムの設備を充実させ快適なものとし、入場者を増加させることを通じてクラ

ブの成績を上昇させていくことができる」と述べている。庄司(2013)は、「シーズンチケットの売

り上げを増加させる要因として、前年度スタジアム収容率、前年度平均観客動員数、前年度の順

位などの魅力要因が影響を与える。」と述べている。また、庄司、間野、中村(2011)は、「リーグ

勝利

普及 市場

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観戦者の移動距離、つまり自宅からスタジアムへの移動距離が短いほど観戦回数が多い。」と述べ

ている。しかし、「JFLから Jリーグに昇格すると観戦者のスタジアムへの誘致距離が長くなる。」

とも述べている。また、宮崎、川田(2013)は海外の事例をあげている。「ドイツでは老朽化したス

タジアムの改装が進められ、地域との結びつきを強化する拠点となるスタジアムを中心としたビ

ジネスモデルの重要性が再認識された。居心地の良いスタジアムは集客向上につながり、さらに

は入場料収入の向上、クラブマネジメントの強化をもたらす要因となるであろう。」と述べてい

る。これらのことから立地などに代表されるスタジアムの要因も観客動員数に大きく影響がある

ことがわかった。 桑田、佐藤、川島(2013)では、周辺施設の関連性について述べている。J2 所属のジェフユナ

イテッド市原千葉のホームスタジアムであるフクダ電子アリーナを事例にとった。フクダ電子ア

リーでは、交通施設の整備に加えて、大型商業施設、スポーツ施設等の整備を行っており、スポ

ーツ振興の拠点としてだけではなく、ショッピングタウンとしても周辺地域の整備が行われてい

る。これらの現状からヒアリング調査などを重ねて、「フクダ電子アリーナ周辺地域のように集客

の見込める商業施設を整備し、スタジアムと連携することで、双方の集客増加等の相乗効果が期

待できると考えられる。その際にはスタジアムと周辺商業施設との位置関係やイベント時の駐車

場の問題等を想定するなど、整備計画には十分考慮することが求められる。」と結論付けている。

これらのことから、スタジアムの周辺施設についての要因も影響を与えることがわかった。 畔蒜、能智、平田(2012)は、公式戦においてのアウェイクラブ(=ホームチーム視点からの対戦

相手)における観客動員数への影響について述べている。ホームゲームの観客動員数の対戦相手に

よる違いは、増加数が最大の場合で 10,000 人~15,000 人であり、最小の場合は-3,000 人~-

5,000 人であり、最大と最小で 13,000 人~18,000 人前後の差であることが結果として判明した。

そして、人気クラブである浦和レッズの場合は、アウェイクラブによる観客動員数が最多のクラ

ブとして(2012 年時点で)7 シーズン連続しており、一方で 2008 年には 809,353 人とJリーグ最

多観客動員数を記録する等、ホームゲーム、アウェイゲームともに観客動員力のあるクラブであ

り、Jリーグ全体の観客動員数の増加に貢献しているとしていた。これらのことから「Jリーグ

においても対戦相手によって、ホームゲームの観客動員数が増加するクラブが存在し、その様な

対戦相手との試合でチケットの値段を上げたヴィッセル神戸の様な人気差を利用した経営に対

して支持をすることができると考えられる。」と結論付けた。また、海外プロサッカーの事例とし

ては、実際にスペイン・リーガエスパニョーラの FC バルセロナは対戦相手に応じて 7 段階のカ

テゴリーに販売価格を分けている。さらに、現在世界一の観客動員数の名をほしいままにしてい

るドイツ・ブンデスリーガでは、どのクラブも当たり前のように販売価格を分けている。これら

のことから、対戦相手が人気チームであるのか、そうでないのかということが影響与えることが

わかったと同時に、チケット価格の変動によって経営的にも利益をもたらすことがわかったので

ある。 仲澤、平川、ダン、メアリー、戸苅、中塚(2000)は、女性観戦者にセグメントを絞った研究を

行っている。「選手のタレント化を背景にすると、女性観戦者への働きかけとして、個々の選手の

魅力を訴求するプロモーションが有効であると考えられている。それはパーソナリティーやパー

ソナル・ヒストリーをプロモーションの手段とすることなどを含んだものである。」と述べてい

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る。また、女性にサッカーという競技自体への理解を深めてもらうことを目的に、「競技場におけ

る配布物や電光掲示板を利用した、ルールや戦術の理解を促進させる情報サービス、プレイヤー

との交流を含めた女性のためのサッカー観戦クリニック等のサービスなどの施策が考えられる。」

としている。このことから、女性観戦者に限定すると、個々の選手のプロモーションを活発にす

ることと、サッカーという競技への理解度を上昇させるためのサービスへの取り組みが、スタジ

アムへ足を運んでもらうために必要であると考えることができる。 佐藤、入口、西嶋(2014)は、J2 所属の徳島ヴォルティスを中心にヒアリング調査なども含めて

事例研究を行った。そこで、「観客動員数を増やすためには、素晴らしいサッカーを展開してスタ

ジアムに足を運んでもらうことはもちろんだが、地域の誇りとしてサポートし続けたくなるよう

なクラブイメージの定着が望ましい。また特定の選手を個人的に応援してもらうことも要因の一

つである。そのためには、クラブが積極的にイベントを行い、選手が地域活動に参加してサポー

ターとふれあいの輪を広げていくことが必要である。」と述べている。イメージの定着の方法とし

ては、さまざまなプロモーションが考えられるが、その 1 つにウェブサイトがあり、林(2002)は「急速に発展しているインターネットの分野で、ウェブサイト等を活用することによりファンや

サポーターに従来とは異なるアプローチをすることができ、それが認知度向上につながる。」と述

べている。したがって、J リーグの活動方針にしたがって、地域貢献活動を行い、より住民にク

ラブの存在を認知してもらうことが必要であり、そのためにはウェブサイトなどの活用が有効で

あるということである。 平田、シマンスキー(2009)は、ワールドカップが J リーグの観客数に与えた影響に関して述べ

ている。中心として取り上げているのは 2002 年の日韓共催ワールドカップであるが、関連して、

1966 年のイングランド大会、1974 年の西ドイツ大会、1982 年のスペイン大会、1990 年のイタ

リア大会、1998 年大会のフランス大会、2006 年のドイツ大会もあげている。ワールドカップ開

催時にサッカーがその国で普及していたのか、またワールドカップで使用されたスタジアムとそ

うでないスタジアムなどの多くの視点から分析を行った。結果としては、「ワールドカップがJリ

ーグの観客数に対して、正の影響を与えたことを確認できた。ワールドカップ効果は、Jリーグ

のクラブ全体に与えられたが、特にワールドカップ開催のために地方自治体によって建設された

新スタジアムを使用しているクラブ(ワールドカップ開催地クラブ)への影響が大きかったことを

明らかにした。」と結論付けている。このことから、国内で国際的な大会を行うことにより、スタ

ジアムの改修、建設などさまざまな効果をもたらすなどして、Jリーグの観客数の増加につなが

ると考えることができる。ワールドカップを頻繁に行うことは現実的に不可能だが、トヨタプレ

ゼンツ FIFA クラブワールドカップなどが 2,3 年に一度開催されるなど、全く国際的な大会を

行っていないというわけではないというのが現状である。 J リーグの観客数に影響を与える要因について河合・平田(2008)は 5 つのジャンル、21 の要因

の説明変数を抽出した。要因としては、1.経済的要因(チケット価格・移動距離・ダービー・人

口・所得)、2.試合要因(昇格後 1 年目・ホーム、アウェー両チームの推定年俸と昨年順位・連勝

数)、3.観戦要因(開幕戦・平日・雨)、4.人気要因(ホーム、アウェー両チームの昨年平均観客数)、5.J リーグ要因(プロ野球チームの存在・プロ野球チームとの距離・4 月・10 月)を回帰分析して

いる。

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(図表 7)観客数に影響を与える要因

要因 効果 考察

経済的要因 チケット価格 負 価格を下げると観客数は増加

移動距離 負 移動によるコスト負担

ダービー 正 移動負担の少なさ、地域対抗感情

人口 関連なし 人口の多さは関係なし

所得 負 所得が多いと代替品にうつる

試合要因 昇格後 1 年目 正 レベルの高い試合を見たい

ホーム推定年俸 関連なし

アウェー推定年俸 正 有名な選手がいれば観客数は増加

ホーム順位 負 順位が良い方が観客数は増加

アウェー順位 負 順位が良い方が観客数は増加

連勝数 正 クラブの調子が良いと観客数は増加

観戦要因 開幕戦 正 特別のイベントが開催される

平日 負 日程が悪い

雨 負 行くのをためらう

人気要因 ホーム平均観客数 正 前年度の影響が大きい

アウェー平均観客数 正

J リーグ要因 プロ野球チームの存在 負 プロ野球チームとの観客の奪い合い

プロ野球チームとの距

正 プロ野球チームとの観客の奪い合い

4 月 負 日本独自の行事による

10 月 負 日本独自の行事による

(出所)河合・平田(2013)を参考に筆者作成

この研究により、観戦者数がどの要因に対して、どのような影響を受けるのかということが判

明した。日本独自の要因なども明らかになったが、各要因の影響の強さを示すことは出来ていな

い。

14

卒業論文

以上の先行研究により観戦要因や観客動員数を増加させるための施策などは数多く見られた。

しかし、最終的に多くの要因の中で影響の強弱は明らかにならなかった。また、満員率に焦点を

当てたものはなかった。 第 3 節:満員率に関する研究 ここでは、満員率についてとそれに着目する意義について見ていく。まず満員率というのは、

スタジアムの収容人数に対して何人のお客さんが入っているかというスタジアム稼働率のこと

である。求める計算式としては以下のものである。 (図表 8)満員率の求め方

(出所)福田(2009)P133 より引用 福田(2009)は、満員率についてこのように述べている。「プロスポーツビジネスにおいて、その

コンテンツ価値を高めるためには、観客動員はもちろん、試合日におけるスタジアムの満員率を

高めなければならない。競技面で成功を収めることは重要であるが、全ての試合に勝つことは不

可能であり、負けが続いてもクラブの経営は継続していかなければならない。つまり、競技面で

の成績に影響されないよう、いかにして満員のスタジアムを作り出すかが、プロスポーツビジネ

スにおけるビジネスサイドに課せられた使命である。」したがって、収容人数に関係なくどのスタ

ジアムでも満員の状態を作ることが必要であるということである。さらにドイツ・ブンデスリー

ガに所属しているレバークーゼンを例にあげていた。レバークーゼンでは満員のスタジアムが醸

し出す雰囲気を作り出すために、意図的にスタジアムの規模を押さえ、収容人数を低くコントロ

ールしているという事例を報告している。海外の事例に関しては宮崎、川田(2013)も述べていて、

「ホスピタリティ向上のためドイツ・ブンデスリーガのハンブルガーSV やフランクフルトのよ

うにスタジアム改修後に収容人数が減ったにもかかわらず、満員率が 15%から 20%増加したので

ある。」ということである。これらの事例からも満員の雰囲気がより観客の満足につながり、リピ

ートにつながっていると考えることが出来る。 そして、福田(2009)は、2007 年時点のデータで満員率のリーグ全体平均が 90%以上というイ

ングランド・プレミアリーグに対して、J1の各試合では、スタジアムの約 4 割が空席であり、

J2 に至っては、その約 7 割が空席であるという非常に低い数値を読み取っている。ここから満員

率といくつかの要因で回帰分析を行った。結論としては以下の通りである。 ① 平均観客数と平均満員率

→極めて高い関係が認められるが、平均観客動員数の多寡がスタジアムの平均満員率の変動

に与える影響は約 52%である。つまり、スタジアムの収容人数は一定でないため、平均観客

観客動員 満員率= ×100

スタジアム収容人数

15

卒業論文

動員数だけではスタジアムのコンテンツ価値を決定付けることが出来ない。 ② 順位と満員率

→平均順位が平均満員率に変動を与える影響は約 42 パーセントである。したがって、競技面

でのパフォーマンスだけでは、満員率の変動に強い影響を与えないため、それ以外のマーケ

ティング面での集客戦略の構築が重要であると考えられる。 ③ スタジアム収容人数と満員率

→収容人数の多いスタジアムでは、満員率が低い傾向があると思われがちだが、スタジアム

の収容人数と満員率の間には、ほとんど相関が見られないことが明らかとなった。 ④ スタジアムへのアクセス時間と満員率

→スタジアムへのアクセス時間と満員率との間にはほとんど相関関係は見られない。つまり、

立地ではなく、遠くてもスタジアムに足を運びたくなるような仕組みづくりが必要であると

考えられる。 ③からもわかるようにスタジアムのサイズにおいて、クラブ間で有意差はないということがわ

かった。このことから、スタジアムの収容人数で差が出てしまう観客動員数ではなく、満員率で

見ていくことが有効であると考えることが出来るのである。 J リーグの満員率の基礎的研究を出口(2014)が行っている。やはり観客動員数だけを見た場合、

空席があり集客に関して改善する余地があるにも関わらず成功しているようにみえてしまった

り、逆に満員率が高く成功しているにも関わらず、入場者数がほかのクラブと比べて劣るため改

善の余地があるように見えてしまったりするという問題から、「スタジアムの収容人数の違いを

超えて分析できることから満員率は有用な変数であると考える。」と述べている。1999 年から

2012 年までのデータで分析を行った結果としては、「J1 と J2 では満員率に有意差がみられるこ

と、1 試合あたりの入場者数の平均は少ないが満員率の平均が高いクラブ、逆に 1 試合あたりの

入場者数の平均は多いが満員率の平均の低いクラブの存在が明らかになった。」と結論付けてい

る。 したがって、以上の先行研究から満員率は、1.多くのファンがスタジアムに足を運ぶことにお

いて重要であるということ。2.満員率ならばスタジアムの収容人数の違いを超えて分析できると

いうこと、という 2 点の特徴があり、有効なものであると考えることが出来る。 (図表 9)2014 シーズンの平均入場者数とスタジアムの収容人数

010,00020,00030,00040,00050,00060,00070,00080,000

仙台

鹿島

浦和

大宮

柏 F東京

川崎

F

横浜

FM

甲府

新潟

清水

名古屋

G大阪

C大阪

神戸

広島

徳島

鳥栖

スタジアム収容人数

平均入場者数

(出所)J リーグ公開資料より筆者作成

16

卒業論文

第 4 節:満足度に関する研究 また、鈴木(2012,2013,2014)はJリーグクラブのサービスに関する満足度調査を行っている。

ACST(American Customer Satisfaction Index)の顧客満足度指標モデルを参考にして、J リーグ

クラブのサービスに特化した顧客満足度指数化モデルを構築している。J クラブが提供するサー

ビスに対する満足度の計測を行うために、サービスの品質を①クラブチーム成績【観測変数 1 項

目】②チーム・選手(J リーグクラブのチームの中核的なサービス) 【観測変数 4 項目】③スタジ

アム(ファンにスタジアムに足を運んでもらうために必要なサービス要素) 【観測変数 8 項目】④

ファンサービス・地域貢献(J リーグの理念に基づき、多くのクラブが非常に重視しているサービ

ス要素) 【観測変数 3 項目】⑤ユニフォーム・ロゴ(クラブのイメージを形成するのに影響を与え

る要素) 【観測変数 2 項目】の 5 つに分けて設問を行っている。その結果から、総合満足度、応

援ロイヤルティ、観戦ロイヤルティを計測し、その結果から下記のモデルを結果としているので

ある。 (図表 10)鈴木による J クラブの顧客満足度指数化モデル

チーム成績

チーム・選手

スタジアム

ファンサービス

地域貢献

ユニフォーム

ロゴ

総合満足度

満足 理想への近さ 応援ロイヤルティ

観戦ロイヤルティ

応援 応援推奨意向

観戦推奨意向 観戦

(出所)鈴木(2014)より引用

17

卒業論文

(図表 11)鈴木による総合満足度に対するサービスの影響度

(出所)鈴木(2014)から引用

結果としては、5 つの要因の中で総合満足度に対する影響要因として最も大きいものは、④フ

ァンサービス・地域貢献であった。ついで、③スタジアム②チーム・選手となっていた。対して、

①チーム成績⑤ユニフォーム・ロゴの総合満足度への影響力は比較的小さいことということであ

った。また、この調査は 2012 年、2013 年にも同様なものが行われているが、2014 年の結果比

べて大きな変化は見られなかった。

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

ユニフォーム・ロゴ

ファンサービス・地域貢献

スタジアム

チーム・選手

チーム成績

効果(標準化係数)

18

卒業論文

第 3 章:顧客満足の理論研究 第 1 節:顧客満足の意義 顧客満足の定義付けを行う前に、顧客満足が生まれた要因や意義、そしてなぜスポーツに当て

はめることが出来るのか考えていきたいと思う。そもそも顧客満足というのは、サービス・マー

ケティングの分野から生まれたものである。サービス・マーケティングというは、1970 年代から

研究されてきた比較的新しい分野である。要するに、これまでの製造業に代表される有形財によ

るビジネスモデルばかりであったのに対して、先進国の経済構造変化の中で顕著にみられる「経

済のサービス化」による無形財の提供が増加してきたために新たに研究対象として取り上げられ

て来たということである。 この「サービス」とは多くのマーケティング論者により定義付けがなされてきた。コトラー

(2008)は「サービスとは、一方が他方に対して提供する行為や行動で、本質的に無形で何の所有

権ももたらさないものをいう。サービスの生産には有形製品が関わる場合もあれば、関わらない

場合もある。」と定義している。また、ラブロック(2008)は「サービスとは、ある主体が別の主体

に提供する経済活動である。通常、時間単位の行動であり、受けて自身あるいは受けての所有物

や財産に対しての期待通りの結果をもたらすものである。顧客は、金銭、時間、活動の対価とし

て物、労働力、専門技術、設備、ネットワーク、システムを利用し、価値を手に入れることを期

待している。」と説明した。また、近藤(2010)は、「個人や組織にとって何らかの便益(ベネフィッ

ト)をもたらす活動そのものが、市場取引の対象となるときにサービス(商品)と呼ぶことができ

る。」と述べている。これらの諸定義から共通項を見出した松井(2014)は、「顧客に何らかの便益

を提供する無形の活動や行為であるという点が、サービスの意味内容である。」としている。この

ことから、J リーグが提供しているものはこれらの言うサービスとすることが出来るであろう。 サービス産業の重要性は次第に増していき、日本においてもそれは同じである。サービス産業

などの非製造業が国内総生産の 70%を上回り、雇用の 2/3 以上を占めるまでに至っているのであ

る。サービスの経済化が進められていく中で、サービスに対する評価というのはどのようにすれ

ば良いのかという疑問にたどり着いた。製品の場合は明確な品質基準があり、基準を満たしてい

ないものは不良品となる。しかし、サービスの場合は、サービス品質といっても明確な基準がな

いのが普通である。このことから考えられてきたのが「顧客満足」という考え方である。松井(2014)はこのことについて、「顧客と向き合う場面において、サービス提供者はサービスを購入する顧客

の喜びや満足とは何かを探求する。それは相手を思いやる気持ちを育む素晴らしい行為である。」

と表現している。フィスク、ブラウン、ビトナー(1993)のレビューによれば、「今日までのサービ

ス・マーケティングにおいて、単一のトピックとして最も研究された領域である」ということで

ある。したがって、無形財というサービスに対しての評価基準が顧客満足というわけである。こ

れらのことからサービス産業であるサッカーにおいての顧客満足を考えることが、スタジアムの

観客数を増加させることにつながると考えることが出来るのである。 また、近藤(2007)は、「新規顧客は、再購入のリピート客に比べて費用がかかる。もし、新規顧

客の取引ばかりで売上が構成されるとすれば、利益を見込むことが出来ない場合がある。」と述べ

19

卒業論文

ている。また、松井(2014)は、「企業としては新規顧客を獲得することに力を傾注するよりも満足

度の高い顧客を長く保持し続ける方が収益は大きい。満足度の高い顧客は、消費者に対して自社

への好意的な口コミを広めてくれるので良い広告塔であり、低コストで新規顧客を獲得すること

が出来る。」と述べている。よって、新規顧客の満足度を高めスタジアムに連れてくることよりも、

現在観戦に来ている顧客の満足度を高めてリピート率をあげることのほうがより有効であると

考えることが出来るのである。

第 2 節:顧客満足の定義 顧客満足の諸定義はこれまでさまざまな論者によって論じられてきた。しかし、顧客満足の統

一された定義と言うのは存在していない。その中でも代表的なものとされているのが

Oliver(1997)の「顧客満足とは顧客の目的達成に対する充足反応である。製品・サービスの属性

(またはその製品・サービス自身)が好ましい水準の消費関連の充足をもたらした(もたらしつつあ

る)という判断である」というものである。さらに Fornell(1992)は「顧客満足とは、購入後その

購買に対する総合的な評価である」とし、Cadotte(1987)は「顧客満足とは、使用経験を評価する

時に生じた感情である」と定義した。これらを見ると、顧客満足とは顧客を中核に捉えることを

前提に、製品の購入・サービスの経験の後の評価であるということがわかる。 ここで満足というのは、期待に対する充足を考えるのか、それとも要求に対する充足のことを

考えるのかという問題が生じる。期待というのは、将来そのことが実現するだろうと心待ちにす

ることである。対して、要求は当然であるとして強く求めることである。このことに関してラブ

ロック(2008)は顧客の抱く期待を異なる 3 つのレベルに分けている。「まず、顧客が抱く最も強い

期待のサービスは、顧客が受けるべきあるいは受けることが可能であろうと期待しているレベル

のサービスであり、これを希望サービス(Desired service)とする。また、これとは対極にある顧

客が抱く最も弱い期待のサービスは、提供されたサービスに対して受容できる最低レベルのサー

ビスであり、これを下限サービス(Adequate service)とする。そして、実際に顧客が特定の企業が

提供するであろうと考えるサービスの質が予測サービス(Predicted service)である。」と述べてい

る。予測サービスは下限サービスに大きな影響を及ぼすとしていて、予測サービスが高い場合、

下限サービスは高くなり、予測サービスが低ければ、その時の下限サービスは低いとしている。

さらに「希望サービスと下限サービスの間にある範囲は容認範囲であり、顧客が提供されたサー

ビスを許容する範囲である。」と述べている。つまり、期待と要求というのは相反するものであり

ながらも、全く関連性のないものというわけではなくて、どちらに対しても顧客の事前の期待と

事後の評価の 2 つの観点から考えることが出来るということである。(したがって、以下では「期

待」という言葉で一括する。) 小野(2000)は顧客満足概念を 1.古典的な顧客満足概念(ニーズ充足度としての満足、多属性ア

プローチによるブランド選択モデル、代替品ブランドとの比較に基づく満足)、2.マーケティン

グ戦略論における新しい顧客満足概念、3.期待不一致アプローチにおける顧客満足概念に分類し

ている。また、Wilton(1998)は「顧客満足とは、消費前の期待と消費後に近くしたパフォーマン

スとの間に生じた不一致の評価による反応である」と定義した。片山(2011)は「満足というのは

顧客が目に見える、実感できるものを対象にすると考え、製品やサービスを購入する時における

20

卒業論文

顧客の事前期待と事後評価の関係のことを意味している。」とした。さらに、コトラー(2009)は、

「満足とは顧客の期待に対して製品の知覚パフォーマンス(または結果)がどれくらいであったか

によって得られる個人の喜びまたは失望の感情である。パフォーマンスが期待を下回れば、顧客

は不満を覚える。パフォーマンスが期待を上回れば、顧客の満足度と喜びは大きくなる」と述べ

ている。前述の Oliver(1997)の定義に照らしてみると、期待不一致アプローチは顧客の充足反応

を適切に測れるアプローチであると考えられる。 よって、本研究では、それらを踏まえて、「サービス経験後の顧客の事前期待と事後評価の不一

致度」というのを顧客満足の定義とする。不一致度の結果が喜びならばそれは満足であり、失望

ならば不満足ということである。

第 3 節:期待不一致 顧客の喜びや失望という感情の生まれる要因は、顧客の期待があるためである。顧客が抱く期

待というのは、松井(2014)は、「サービスを経験する前に顧客が持つそのサービスに対するうれし

い予想や希望である。」と述べている。顧客が持つ期待に対して、そのサービスから得られる効用

が期待を裏切るもの(不一致)ならば、顧客は不満を持つのである。反対に期待した結果と一致し

ていれば、顧客は満足を覚えるのである。さらに、期待を上回る結果(不一致)を得たならば、顧客

の満足は非常に大きなものとなるのである。ラブロック(2008)は「顧客は個々のサービス・エク

スペリエンスについて、さまざまなレベルの満足ないし不満足を経験する。満足・不満足のレベ

ルは、サービス・エクスペリエンスが顧客自身の期待にどの程度合致したかあるいは期待を超え

るものであったかに応じる。満足は情緒に関わる状態であるが故に、顧客の購買後のリアクショ

ンは、怒り、不満足、苛立ち、どちらでもない、喜びなどさまざまなものとなり得る。」と述べて

いる。つまり、満足というのは人間の感情に依存するものであるから、顧客の満足あるいは不満

足の程度は、体験したサービスが顧客の期待にどの程度応えることが出来ているのかということ

によって決まってくるということである。 商品やサービスに対する顧客の満足・不満足は、顧客がその商品・サービスから得られると事

前に期待した水準(期待水準)、実際に体験をして感じた知覚水準、そしてこれらの 2 つの水準が

どの程度一致しているかによって決まってくると考えられている。このことを期待不一致アプロ

ーチと呼び、小野(2010)は、「顧客満足モデルの最も支配的な理論とされている」と述べている。 (図表 12)期待不一致アプローチ

知覚水準

不一致の大きさ

期待水準

満足・不満足

(出所)小野(2010)P81 より引用

不一致効果

パフォーマンス効果

期待効果

同化・対比

効果

21

卒業論文

事前の期待水準が知覚水準よりも高い場合には、負の不一致が起こり、顧客はその商品・サー

ビスに対して失望したり不満を持ったりする。さらに、再購買意向は低下し、サービス・ブラン

ドに対する評価も悪化してしまう。対して、事前の期待水準よりも知覚水準のほうが高い場合に

は、正の不一致が起こり、顧客は商品・サービスから満足を得ることになる。さらに、再購買意

向やそのサービス・ブランドへのロイヤリティーを高めることにつながるのである。事前の期待

水準と知覚水準が同じ場合には、一致したということで、満足も不満もないのである。 期待水準と言っても「期待・要求」と前述したように、さまざまな意味がある。代表的なもの

として小野(2010)は予測的期待と規範的期待をあげているが、「期待不一致アプローチでは予測的

期待が重要な要因になる」とした。さらに、知覚水準とは「商品・サービスの品質や性能が良い

か悪いかに関する消費者の主観的な評価」とした。 そして、この顧客の期待はそのサービスの産業の成長次第でも大きく変わってくる。ベックウ

ィス(1998)は、「産業が生まれたばかりの揺籃期はギリギリ最低限の基準を満たすことが目標とな

る。しかし、第 2 段階になり競争相手が参入してくると、差別化が盛んになり顧客のニーズに応

えることが目標になる。さらに第 3 段階を目指す場合は顧客の期待を超えた度胆を抜かなければ

ならない。そして、たいていのサービス産業はせいぜい第 2 段階で足踏みをしている。」と述べて

いる。したがって、先述した下限サービスの基準が次第に高くなってくると考えることが出来る。

J リーグにおいては開幕してから 20 年以上経過して、第 2 段階に移っていると考えることが出

来るだろう。しかし、エンターテイメントという分野では競争相手となるディズニーランドに代

表されるテーマパークには到底勝っていない。したがって、ベックウィスの述べる第 3 段階に行

くためにも、より一層の満員率の上昇を目指さなければならない。 また、この期待に影響を与える要因としてバロン・ハリス(2002)は以下の 4 点をあげた。それ

は①口コミ②個人的なニーズと選好③過去の経験④外部とのコミュニケーションである。J リー

グにおいてもこれら 4 つはあてはめて考えることが出来る。 そして、ここまで述べてきた事前の期待と事後の評価の不一致度というのを測定するためには

どうすればよいのか。顧客の満足度を高めていくためには、この不一致度を明らかにしなければ

ならない。明らかにするためには、面談やアンケートなどにより調査して、自らと競合のサービ

スを顧客に評価してもらう必要があるということである。そこで、ラブロック(2008)は、顧客の

抱く不満と満足の程度を次の 5 段階のレベルにわけたのである。 (図表 13)ラブロックの満足度レベル

レベル 1 非常に不満足である レベル 2 やや不満足である レベル 3 どちらでもない レベル 4 やや満足である レベル 5 非常に満足である

(出所)ラブロック(2008)より筆者作成 「本当の顧客はレベル 5 の顧客であり、他の顧客をも引き付ける伝道師である。これらの顧客

はサービス提供者にとって極めて重要な存在である。」と述べている。先述の満足度の高い顧客を

22

卒業論文

長く保持し続けるほうが収益は大きいということからこのレベル 5 の顧客をいかに多く有するか

が重要なことであると考えることが出来る。 第 4 節:現代の企業経営における顧客満足 1990 年代以前の顧客満足は主に不満への対応であり、いわばマイナスの評価をゼロにするた

めのものであった。しかし、嶋口(1994)は、「現代において起業の顧客満足に対するテーマという

のは、積極的な社会価値を取り入れながらいかに競争優位と成長を構築するかにかかわる、むし

ろゼロからプラスに向けた顧客満足といえる」とした。これはつまり、不満足の解消を目指すの

ではなく、「非満足」からの飛躍を目指すということである。非満足というのは、不満な状態では

ないけれど、満足をしているわけでもないという状態のことである。嶋口(1994)は不満足をディ

スサティスファクション、非満足をアンサティスファクションとし、満足と不満足を異なる軸と

して捉えた。 (図表 14)嶋口の提案した不満足と非満足の特徴

ディスサティスファクション アンサティスファクション

性格 ・「不満」「怒り」 ・マイナスの満足

・「満足でない」 ・ゼロの満足

顧客行動 ・コンシューマリズム ・公害告発運動

・これしかないから仕方なく ・よくないので買い控え

企業対応 ・消費者相談窓口 ・オンブズマン制度 ・公害防止対策

・戦略的に仕掛ける満足 ・満足推進

顧客高価 ・マイナスをゼロに (怒りの豪華)

・ゼロをプラスに (喜びの創出)

企業高価 ・顧客の維持 (企業存続)

・顧客の創造 (企業成長)

現代の顧客満足は、アンサティスファクションに関わるもので、「満足していない」顧客に対し

て、企業はどのように高い満足を提供できるのかということが問題となっている。

(出所)嶋口(1994)P50より引用

23

卒業論文

第 4 章:数量分析 第1節:アンケート概要 先行研究から Jクラブのサービスにおいて観戦要因に影響を与えているものはいくつか判明し

たが、各要因の影響の強さを提示しているものはなかった。また、総合満足度へ影響を与える要

因の研究が存在したが、それが具体的に観戦につながっているかは明らかにされていなかった。

そこで、J クラブのどのサービスに対する満足度が観戦への影響を与えているのかを明らかにす

るために独自のアンケート調査を行った。アンケート結果をもとに重回帰分析を行い、影響の強

いサービスを明らかにしていく。

質問項目は鈴木(2012,2013,2014)を参考にして、全部で 18、うち分析に使用する項目を大き

く分けて 5 つ、細かく分けて 15 と設定した。対象者は性別年齢ともに設定はなく紙媒体、ネッ

ト媒体両面から無差別に行った。集計結果としては、合計で 264 人であり、うち分析対象とする

有効票は 200 人であった。分析対象はJリーグの試合のスタジアム観戦を今までに 1 回以上行っ

た者を対象とした。理由としては、先行研究より新規顧客獲得よりもリピート率をあげることが

効果的であるというところからJリーグの試合を 1 回以上観戦している、つまりサービスを受け

たことがある者をターゲットとするためである。細かい内訳は男性 164 人(うち 10 代 51 人、20代 95 人、30 代 5 人、40 代 2 人、50 代 9 人、60 代 2 人)、女性 36 人(うち 10 代 7 人、20 代 16人、30 代 2 人、40 代 3 人、50 代 7 人、60 代 1 人)、年齢別だと 10 代 58 人、20 代 111 人、30代 7 人、40 代 5 人、50 代 16 人、60 代 3 人である。

調査期間は 2015 年 12 月 11 日~2015 年 12 月 25 日である。質問項目としては文末の通りで

ある。

24

卒業論文

第2節:分析結果 分析はまず重回帰分析を行う。従属変数を観戦頻度とし、独立変数には満足度調査のアンケー

ト結果の以下の 15項目を用いて分析を行った。

1.スタジアムの席の座り心地 2.席からの試合の見やすさ 3.スタジアムのスタッフの対応 4.スタジアムのフード商品 5.スタジアムのトイレ設備 6.スタジアムの立地(アクセス) 7.チケットの値段 8.チケットを入手する過程 9.クラブのファンサービスの充実 10.選手とファンとの交流 11.クラブの地域住民へのサービス・貢献活動 12.クラブの公式ウェブサイト 13.クラブ・選手のブログ等のSNS 14.ユニフォーム・ロゴのデザイン 15.グッズ 分析結果としては以下の通りである。

(図表 15)アンケート項目の重回帰分析の結果

(出所)筆者作成

回帰統計重相関 R 0.458191重決定 R2 0.209939補正 R2 0.145532標準誤差 5.848883観測数 200

分散分析表

自由度 変動 分散 測された分散 有意 F回帰 15 1672.619 111.5079 3.259567 8.09E-05残差 184 6294.536 34.20943合計 199 7967.155

係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 下限 95.0% 上限 95.0%切片 -7.78162 2.77892 -2.80023 0.005652 -13.2643 -2.29898 -13.2643 -2.29898

1 0.800349 0.513576 1.558386 0.12086 -0.21291 1.813604 -0.21291 1.8136042 0.311732 0.420742 0.74091 0.459693 -0.51837 1.141832 -0.51837 1.1418323 0.774606 0.600716 1.289471 0.198853 -0.41057 1.959782 -0.41057 1.9597824 -0.02759 0.507817 -0.05433 0.956734 -1.02948 0.974304 -1.02948 0.9743045 1.106611 0.456928 2.421849 0.016412 0.205119 2.008103 0.205119 2.0081036 -0.23982 0.362964 -0.66073 0.509609 -0.95593 0.476284 -0.95593 0.4762847 -0.43373 0.441705 -0.98193 0.327422 -1.30518 0.437733 -1.30518 0.4377338 0.219353 0.527908 0.415515 0.678249 -0.82218 1.260885 -0.82218 1.2608859 0.620676 0.621594 0.998524 0.319337 -0.60569 1.847044 -0.60569 1.847044

10 0.2258 0.530497 0.425637 0.67087 -0.82084 1.272439 -0.82084 1.27243911 -0.31125 0.58044 -0.53623 0.592446 -1.45642 0.833923 -1.45642 0.83392312 -0.17977 0.581101 -0.30936 0.757395 -1.32625 0.966707 -1.32625 0.96670713 1.028096 0.585475 1.756003 0.080752 -0.12701 2.183204 -0.12701 2.18320414 -0.56615 0.529386 -1.06944 0.286272 -1.61059 0.4783 -1.61059 0.478315 0.464718 0.625652 0.742774 0.458566 -0.76966 1.699092 -0.76966 1.699092

各項目の満足度1~5 *詳しくは上記のアンケート参照

25

卒業論文

重相関 R は 0.458191 であり、相関係数の検定値は�4

n+2=� 4

200+2=0.141 なので、正の相関が

あると言える。ところが、多重共線性の可能性があるので、相関係数行列を求め、確認を行う。

相関係数行列の結果は以下の通りである。 (図表 16)アンケート項目の相関係数行列

(出所)筆者作成

これを見るとそもそも 6.スタジアムの立地(アクセス)、7.チケットの値段、14.ユニフォーム・

ロゴの相関係数はそれぞれ 0.029182、0.03581、0.085523 と検定値 0.141 より小さく相関がない

ことが分かった。また、4.スタジアムのフード商品と 8.チケットを入手する過程も相関はあるが、

ほとんどないことが分かった。そして、9.クラブのファンサービスの充実と 10.選手とファンとの

交流と 11.クラブの地域住民へのサービス・貢献活動の間に強い相関があるため、多重共線性で

あると考えられる。これは、ファンサービスやファンとの交流が同時に地域貢献であると認識さ

れているからであると考えられる。また、12.クラブの公式ウェブサイトは、13.クラブ・選手の

ブログ等のSNSと強い相関があるため、多重共線性であると考えられる。これは、どちらかの

満足度が高い者はネット媒体でよくクラブの情報を入手するためであると考えられる。 以上の点から、4.スタジアムのフード商品、6.スタジアムの立地(アクセス)、7.チケットの値段、

8.チケットを入手する過程、14.ユニフォーム・ロゴを相関係数の低さから除外する。そして、9.クラブのファンサービスの充実と 10.選手とファンとの交流と 11.クラブの地域住民へのサービ

ス・貢献活動は多重共線性のために 10.選手とファンとの交流 11.クラブの地域住民へのサービ

ス・貢献活動は除外し、9.クラブのファンサービスの充実を大きなくくりとして考える。最後に、

12.クラブの公式ウェブサイトは、13.クラブ・選手のブログ等のSNSと多重共線性のために、

観戦頻度 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15観戦頻度 1

1 0.306012 12 0.241816 0.469974 13 0.279709 0.327766 0.381549 14 0.175374 0.26188 0.27305 0.365522 15 0.332492 0.393883 0.250865 0.374016 0.321044 16 0.029182 0.103282 0.059727 0.086011 0.096918 0.206886 17 0.035851 0.133818 0.112665 0.164755 0.204683 0.122039 0.120146 18 0.174745 0.209778 0.232288 0.313913 0.389397 0.254282 0.120656 0.400661 19 0.249911 0.310512 0.229811 0.265262 0.2806 0.234202 0.118194 0.294091 0.443046 1

10 0.194812 0.263599 0.202065 0.158789 0.197964 0.224593 0.075025 0.191557 0.238953 0.539862 111 0.185861 0.256704 0.273696 0.179501 0.273891 0.317695 0.083594 0.107478 0.263251 0.471537 0.532984 112 0.216762 0.287656 0.271233 0.350714 0.239357 0.292872 -0.05797 0.150762 0.28886 0.363553 0.294447 0.323732 113 0.283712 0.23127 0.21059 0.281093 0.169485 0.291549 0.058866 0.11058 0.166765 0.358952 0.307439 0.378002 0.47024 114 0.085523 0.186337 0.148196 0.249568 0.286656 0.172421 0.085215 0.198708 0.15816 0.219297 0.155746 0.178631 0.301331 0.325789 115 0.203172 0.236583 0.215384 0.240567 0.354976 0.211225 0.035655 0.197815 0.232075 0.372336 0.236004 0.214956 0.388078 0.458258 0.594745 1

26

卒業論文

除外する。したがって、以下の 7 項目で再び重回帰分析を行う。 1.スタジアムの席の座り心地 2.席からの試合の見やすさ 3.スタジアムのスタッフの対応 5.スタジアムのトイレ設備 9.クラブのファンサービスの充実 13.クラブ・選手のブログ等のSNS 15.グッズ 分析結果としては以下の通りである。

(図表 17)7 項目での重回帰分析の結果

(出所)筆者作成

重相関 R は 0.441815 であり、検定値は同じく 0.141 のため正の相関があると言える。さらに

ここから、各項目の観戦頻度に対する影響度を調べるために、分析結果の〔t〕で示された t 値か

ら確認する。

回帰統計重相関 R 0.441815重決定 R2 0.1952補正 R2 0.165859標準誤差 5.778897観測数 200

分散分析表

自由度 変動 分散 測された分散 有意 F回帰 7 1555.191 222.17 6.6526683 4.7E-07残差 192 6411.964 33.3956合計 199 7967.155

係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 下限 95.0% 上限 95.0%切片 -9.47884 2.427137 -3.9054 0.0001302 -14.2661 -4.69157 -14.2661 -4.69157

1 0.773675 0.504793 1.53266 0.1270065 -0.22198 1.769328 -0.22198 1.7693282 0.302959 0.408642 0.74138 0.4593684 -0.50304 1.108964 -0.50304 1.1089643 0.679476 0.564859 1.20291 0.2304914 -0.43465 1.793603 -0.43465 1.7936035 1.018909 0.430887 2.36468 0.0190435 0.169028 1.868789 0.169028 1.8687899 0.560081 0.505186 1.10866 0.2689624 -0.43635 1.556509 -0.43635 1.556509

13 0.924195 0.538201 1.71719 0.0875564 -0.13735 1.985741 -0.13735 1.98574115 0.083354 0.514373 0.16205 0.8714363 -0.93119 1.097901 -0.93119 1.097901

各項目の満足度1~5 *詳しくは上記のアンケート参照

27

卒業論文

(図表 18)tの絶対値

(出所)筆者作成

このグラフから観戦頻度への影響度は 5.スタジアムのトイレ設備、13.クラブ・選手のブログ等

の SNS、1.スタジアムの席の座り心地、3.スタジアムのスタッフの対応、9.クラブのファンサー

ビスの充実、2.席からの試合の見やすさ、15.グッズの順で強いことが分かった。大きく分けると

スタジアムに関する要因が 4 つあり、[スタジアム設備要因]とし、その他を[顧客要因]、ブログ・

SNS の[ネット要因]、[グッズ要因]ということになった。また、スタジアムの影響要因が多くを

占めているということが分かった。以下からの事例研究ではスタジアムを中心にこれらの要因を

調査していく。

0

0.5

1

1.5

2

2.5

スタジアムの席の座り心地

席からの試合の見やすさ

スタジアムのスタッフの対応

スタジアムのトイレ設備

クラブのファンサービスの充実

クラブ・選手のブログ等のSN

S

グッズ

28

卒業論文

第 5 章:事例研究 事例研究に移っていくのだが、事例対象を選択するのに満員率を参考にする。これは先述の先

行研究においても述べられているように、観客動員数よりも満員率を使用するほうがより有効で

あるということに基づいている。そして、事例対象の主に調査する内容としては、数量分析の結

果を参考にする。つまり、観戦頻度に強く影響を与える要因について事例対象の研究を行う。こ

こで、満員率と観戦頻度の関係性についてだが、先行研究の鈴木(2012,2013,2014)で述べられて

いるように、J クラブのサービスへの満足度が最終的に観戦ロイヤリティーにつながっているこ

とや、独自に行った回帰分析から両者にはかなり強い相関が見られたことから、観戦頻度の増加

が満員率の上昇につながると考えた。以下は回帰分析の結果である。 (図表 19)観戦頻度の平均と満員率の平均の回帰分析の結果

回帰統計 重相関 R 0.873037 重決定 R2 0.762194 補正 R2 0.735771 標準誤差 0.016195 観測数 11

(出所)J リーグ公式資料より筆者作成 これは、J1 の 2003 シーズン~2013 シーズンの各シーズンの年間の観戦頻度と満員率の平均

である。重相関 R は 0.873037 であり、相関係数の検定値は� 411+2

=0.5547 となるので、正の相

関があり、強い相関係数があることが分かった。したがって、満員率から事例対象を選択した。 対象として選択したのは J1 に所属している川崎フロンターレである。対象とした理由は、満

員試合が 2015 シーズンにおいて多かったからである。満員率の求め方については、先行研究の

通りであるが、J リーグは公式な指標として、満員率 80%以上の試合を満員試合と定義付けてい

る。2015 シーズンは、満員試合は全部で 68 試合あり、クラブ別で大きかったのは、12 試合の松

y = 0.0299x + 0.1777

40.0%

45.0%

50.0%

55.0%

60.0%

8 9 10 11 12 13

満員率の平均

観戦頻度の平均

満員率

29

卒業論文

本山雅、9 試合の川崎、8 試合の湘南と G 大阪でそれ以下は以下の通りである。この 4 チームを

見てみると、松本山雅と湘南は今シーズンから J1 に昇格してきたチームであり、その効果が影

響を与えていると考えることが出来て、サービスによる結果という信憑性が落ちる。また、G 大

阪は昨シーズンに J1 と国内カップ全て優勝するという三冠を成し遂げており、こちらも信憑性

が落ちる。したがって、満員試合数の多かったチームでリーグの昇格がなく、かつ優勝などもな

くサービスによる満足度の影響が直接満員試合につながったと考えることが出来るのが川崎フ

ロンターレのために事例対象とした。 (図表 20)2015 シーズンの J1 の満員試合の内訳

松本山雅 FC (2015 シーズンから J1 昇格) 12 試合 川崎フロンターレ 【事例対象】 9 試合 湘南ベルマーレ (2015シーズンから J1昇格) 8 試合 G 大阪 (2014 シーズン三冠達成) 8 試合 柏レイソル 7 試合 ベガルタ仙台 5 試合 ヴァンフォーレ甲府 5 試合 その他 (各 3 試合以下) 14 試合 (出所) J LEAGUE PUB REPORT(2015)を参考に筆者作成

第 1 節:川崎フロンターレ 概要 社名 株式会社川崎フロンターレ 代表者 藁科義弘 所在地 〒213-0013 神奈川県川崎市高津区末長 4-8-52 設立 1996 年 11 月 21 日 事業概要 プロサッカー事業の展開、並びにスポーツの普及・振興活動

川崎フロンターレは、100 万都市川崎市をホームタウンに「スポーツ文化の振興及びスポーツ

による地域社会への貢献」を理念として、1996 年 11 月に設立された。J1、J2 の昇降格を何度か

繰りかえすも、2005 年シーズンから J1 に昇格したのを皮切りに着実に力をつけていき、現在で

は常に上位を争うクラブになった。近年では、多くの選手を日本代表に輩出 2するまでに至って

いる。 ① スタジアム設備要因

川崎フロンターレのホームスタジアムは等々力陸上競技場である。施設は川崎市が所有

し、公益財団法人川崎市公園緑地協会が指定管理者として運営管理を行っている。この等々

力陸上競技場はメインスタンドを 2013 年から 2015 年 3 月の間に改築した。J リーグの開

幕は 3 月上旬であり、2015 シーズンが開幕する 2 日前に改築が完了した。そして、収容人

2 中村憲剛選手、大久保嘉人選手、川島永嗣選手など

30

卒業論文

数も約 25,000 人から 26,232 人まで増加した。1 シーズンの満員試合 9 試合を達成したの

はやはりこの改築の影響がかなり強いということが考えられる。以下から新メインスタン

ドを中心に各要因について述べていく。 まず、最も影響が強かったトイレ設備であるが、個室内がカラーリングされており、空

き状況が一目瞭然で分かる。サッカー観戦においてトイレの待機時間は 1 つの課題である。

試合の前半と後半の間のハーフタイムはわずか 15 分間しかない。その間にトイレを利用す

る観戦者はもちろん多くて、寒い時期には長蛇の列を作ってしまう。すると、肝心の後半

の序盤を見逃す、または前半の終盤を見ずに、先にトイレに向かわなければならないなど、

メインである試合観戦の時間を削ることにつながってしまう恐れがある。したがって、空

き状況を分かりやすくすることによって、入れ替えの時間を短縮して、待機時間を減少す

ることにつながるのである。そして、入口と出口を明確に分けて一歩通行でスムーズにな

る動線を構築している。出口に目立つように矢印をつけて進むように促している。これも

待機時間の減少に貢献しているのである。さらに直接的には関係ないのだが、改築前には

幅が狭かったコンコースを大幅に拡大して、混雑時の人の流れをスムーズになるようにし

て、トイレはコンコースの下の階に配置した。これにより、トレイを待機しているとコン

コースの階にある売店に並んでいる人を明確に分けて、混雑回避につながっているのであ

る。 また、トイレには着替えスペースがあり、ここで衣装チェンジすることが出来る。これ

は、試合観戦の際にユニフォームを着て応援する人のために設けられているスペースであ

る。観戦者によっては、自宅からユニフォームを着用して、観戦後も着用したまま帰宅す

る人もいれば、スタジアム外では恥ずかしさから、観戦中のみ着用したいと考える者もい

る。また、平日に試合がある場合は会社から直接向かう者もいるだろう。男性の場合は気

軽に席のほうで着替えることも出来るだろうが、女性の場合はそのようなわけにもいかな

いであろう。このように女性の意見を多く取り入れている。他にも女性の意見を取り入れ

ていて、手洗い場と鏡が別になっており、他の利用者を気にしないで、化粧直しをするこ

とが出来る。 以上の点から、トイレ設備においては、トイレの待機時間の短縮、さらには女性観戦者

への配慮を強く意識していることが分かった。 次は席の座り心地であるが、ここでは関連する部分も多いので、席からの試合の見やす

さも同時に述べていく。席は当初 20 席くらいの横長の列だったのだが、それでは間隔が狭

くて快適さが損なわれていたので、通路を多く作ったのである。これは、先ほどのトイレ

でも述べていた動線に共通するものであり、スタジアム全体で動線を意識して作られてい

る。また、ひじ掛けやドリンクホルダーの位置なども観戦者への快適さを考慮して、試行

錯誤の上に設置されている。これらは、当初 10,000 人収容を予定していたのだが、それを

最終的に 6,983 人削ってまで実現したのである。

31

卒業論文

そして、席とグラウンドの距離にも工夫が施されている。陸上競技場のためトラックが

あり、サッカー専用スタジアムと比較すると、どうしてもグラウンドとの距離が離れてし

まう。しかし、川崎フロンターレが独自にサポーターに行ったアンケートではグラウンド

との距離が近く感じるという評価が多かったのである。これはなぜかというと、スタンド

自体を全面的に前に押し出すことで、ピッチとの距離を短くすることに成功したからであ

る。しかし、これによって、2 階席からは陸上トラックの 7~8 レーンは見ることができな

いのだが、陸上競技協会との話し合いにより了解を得たのである。また見やすさという点

では、最先端技術であるコンパクトな LED 照明が使用されていて、より明るい環境で試合

観戦を行うことが出来て、かつ消費電力を減らすエコ活動も同時に行っている。 そして、さまざまな観戦者に対応出来るようにバラエティーシートというアイデアが採

用されている。バラエティーシートには 5 種類あるが、現在一般販売されているのは、3 種

類ある。1 つ目がペアシートである。これは、メインスタンド下層中央にある 2 人のため

の特別席である。カップホルダーを完備したサイドテーブルがあり、ゆっくり食事をしな

がら観戦することが出来て、カップルや夫婦向けのものになっている。2 つ目がパーティー

シートである。これは、12~15 名に対応していて、団体での観戦向けのものになっている。

大きなテーブルがいくつか配置されていて、そこに座りながらの観戦は、また通常とは異

なった眺めになっているのである。3 つ目がファミリーシートである。これは客席前方に子

どもたちが遊べるスペースがあり、試合を親が観戦しながら子どもを視野に入れて、見守

ることが出来るのである。後述するが、このファミリーシートには地域貢献活動も含まれ

ているのである。一般販売されていない BOX シートと 6 階テラスシートを含めた以上の 5種類がバラエティーシートである。このように多くの種類の席があることにより、カップ

ル・夫婦のデート、子育て中の夫婦、会社のイベントなどさまざまな観戦者のニーズを満

たすことが出来るのである。 以上の点から席の座り心地、試合の見やすさでは、収容人数を減らしてまで、観戦者の

快適さに配慮した工夫がなされていた。席同士の間隔であったり、ひじ掛けの位置やドリ

ンクホルダーの位置であったりまで配慮されていた。そして、陸上競技場ならではのグラ

ウンドとの距離というデメリットに対しても、最低限の物に抑えられていた。実際に筆者

も行ったのであるが、他の陸上競技場でサッカー観戦するよりもはるかにグラウンドに近

いと感じたのである。そして、快適さという意味では、さまざまなニーズに対応した席が

用意されていた。子育てにより試合観戦から遠ざかったという観戦者などにも安心して観

戦が出来るようになっているのである。 次はスタジアムのスタッフの対応であるが、まずスタジアムのスタッフの仕事内容であ

るが、入場口でのチケットのもぎりからお客さんの席案内などさまざまあり、他にも数多

くあるが、観戦者と関わりを持つのは、上記の 2 つであろう。川崎フロンターレが他のチ

ームと異なる部分があるのだが、それはスタッフの募集形態である。一般的なクラブはス

タッフを派遣会社のアルバイトを雇っているのに対して、川崎フロンターレはボランティ

アを募り、その人たちをスタジアムのスタッフとして起用しているのである。スタジアム

32

卒業論文

のスタッフにアルバイトではなく、ボランティアの起用を明確に打ち出し、クラブのホー

ムページ上で、募集を募っているのは、2016 シーズンの J1 全 18 チーム中 4 チームのみ

であった。ボランティアということは、ほとんどが地元の住民であったり、そのクラブチ

ームのことを応援している人であったりということが考えられる。また、川崎フロンター

レのボランティアは年齢層も 10 代の高校生から 70 代の高齢者まで幅広いものとなってい

る。あくまで、派遣の仕事としてスタジアムで席案内するスタッフと、地元について精通

していて、そのクラブに対する愛着もあり席案内するスタッフと、どちらが対応か良いか

といえばもちろん後者のほうであろう。実際に筆者が行ったときに、最寄り駅までの移動

方法を聞いたときに地元の方しか知らないような抜け道を教えてもらうという出来事があ

った。これは、他のスタジアムのスタッフに同じことを質問した時にはなかったものであ

る。 以上の点からスタジアムのスタッフは地元の住民であり、クラブに愛着を持っているボ

ランティアが行うことによって、観戦者はとって有益な情報を入手することが出来て、満

足が得られていると考えることが出来る。

② 顧客要因 ここでは、ファンサービス自体はもちろん分析の結果でも述べたように地域貢献なども

含めて述べていく。この要因では川崎フロンターレは J1 で現在トップのサービスを行って

いるクラブと言っても過言ではないだろう。その証拠に J リーグの観戦者調査において 5年連続 1 位を獲得している。J リーグの理念として地域貢献が掲げられているが、川崎フ

ロンターレはまさにその言葉の神髄を体現していると言えるだろう。川崎という街ではも

ともと J リーグ創設期にヴェルディ川崎がホームタウンとしていたが、ヴェルディが離れ

てから、住民のサッカーへの興味は薄れていた。そこで新たにホームタウンとした川崎フ

ロンターレはより一層地域住民とのつながりを重要視したという経緯があるのである。代

表取締役社長である武田氏は「私たちの使命は川崎市民が誇りを取り戻し、地元に愛着を

持てるようにすること、川崎を活気のある明るい街にすることです。」と述べている。その

ための活動として以下の 5 点をあげていて、ほとんどが(下線の箇所)ファンサービス・地域

貢献に関連する内容であった。 Ⅰ.開かれたクラブ作り Ⅱ.地元密着のホームタウン活動 Ⅲ.健康、街づくりのための、スポーツ普及活動 Ⅳ.トップチームの戦い Ⅴ.等々力競技場の賑わいを作ること

Ⅰ.開かれたクラブ作りというのは、親会社は株式会社富士通なのであるが、2005 年の

時点でエンブレムから「FUJITSU」という企業名を外すなどして企業独占のイメージを払

拭し、身近にある市民クラブへと生まれ変わったのである。 Ⅱ.ホームタウン活動ではさまざまなものが行われている。まず、2002 年から行われて

33

卒業論文

いる「Paint it Blue~等々力を、川崎を、青く染めろ。~」というキャンペーンがある。

これは、言葉の通り川崎フロンターレのチームカラーである青を街全体に浸透させ、一体

感を作るというものである。これは現在ももちろん行われており、スタジアムにもさまざ

まな部分に青が散りばめられている。この活動により着実に青色は川崎の街に浸透してい

る。商店街には青色の旗が多く掲げられており、スタジアムにも青の洋服を着こんでやっ

てくる観戦者が数多くいるのである。 そして、このチームカラーである青の衣装を着たサンタクロースの小児病棟訪問や、バ

ッジを制作して 500 円以上の募金をつのる赤い羽根共同募金への協力、川崎市教育委員会

とのタイアップによる子どもたちへの読書推進キャンペーン、算数ドリルの制作・配布、

法務省の社会を明るくする運動への協力など数えきれないほどある。この算数ドリルには、

選手の写真やイラストが数多く掲載されているのである。ちなみにこれらの活動はチーム

スタッフのみで行うのではなく、川崎フロンターレの選手が実際に行って活動を行ってい

るのである。これによって、市民は選手をより身近に感じることが出来るのである。選手

はユニフォームを着用することが多いので、名前と背番号と顔を一致させることにより、

試合観戦の時の理解度を増加させるのである。他にも、もう 20 年続けている新年の挨拶

回りや、川崎浴場組合と組んで、銭湯とのコラボレーションにより試合のないオフ期間も

クラブを意識してもらいつつ、銭湯の活性化も促すという WIN-WIN の関係を築くなど年

間 50 以上の地域イベントに参加しているのである。このように選手の活動を円滑に行う

ために、要所で選手本人や選手会にはその活動の趣旨を説明している。また、各選手の所

属事務所とは、契約の際に「ホームタウン活動には無償で参加する」という条件を入れて

いるのである。 さらに環境活動として、全ホームゲームにリユース食器を導入しており、回収率は 90%

以上に上っているのである。また、選手がサポーターとともに行う多摩川の清掃活動や、

他県だが東日本大震災の復興支援活動も行っており、被災した陸前高田市の小学校に選手

がサインした算数ドリルを 800 冊送り、今年の 7 月にも復興試合を行う予定である。 Ⅲ.スポーツ普及活動では、2010 年度には、川崎市 113 校ある小学校のうち 112 校の体

育の授業にセカンドティーチャーを派遣し、延べ 23,000 人の子どもたちに指導を行った。

ほかにもサッカーの巡回指導なども行い、2010 年度には延べ 46,000 人以上の子どもたち

を指導した。子どもたちだけでなく、シニア層に対しては介護予防という主旨で、鷺沼で

運営しているフットサル場で、さまざまな教室を開講している。 Ⅴ.等々力競技場の賑わいというのは、先述したことはもちろんであり、イベントも積極

的に行っている。このイベントに招待されるタレントは川崎市在住であったり、出身者を

起用していて、過去の例では小森純さんや西城秀樹さんなどがいる。また、川崎唯一の相

撲部屋である春日部屋とのタイアップによるイベント、選手サイン会などを実施している。

そして、先述したファミリーシートでは子どもが遊べるスペースに遊具が置いてあるのだ

が、この遊具は川崎市内の町工場で作ったものを使用しているのである。さらには「藤子・

F・不二雄ミュージアム」3とのコラボレーションでメインスタンドに全部で 8 体のブロン

3 藤子・F・不二雄が死去する 1996 年までの 35 年間暮らした川崎市内に博物館を設置した。

34

卒業論文

ズ像を設置しているのである。 以上の点から、川崎フロンターレはサッカーの試合という部分以外でいかに多くの地域

の住民に対して、ファンサービスおよび貢献活動を行っているかが分かった。それは単純

なイベントの開催だけに留まらず、地元の企業とのコラボレーションを行い、クラブの認

知度上昇と地元企業の活性化という WIN-WIN の関係性を作っているということもわか

った。また、川崎市内だけに留まらずに陸前高田市への活動なども精力的に行っていた。

そして、これらの活動がチームスタッフのみではなく、川崎フロンターレの選手たちが行

えるように入念な事前準備を行なわれていたのである。以下はごく一部であるが、川崎フ

ロンターレがこれまで行ってきたファンサービス、および地域貢献の企画である。 (図表 21)川崎フロンターレが行ってきた主な企画

年度 企画 年度 企画 2002 等々力満員大作戦 2009 算数ドリル作成 2003 川崎朝日会とタイアップ 2009 多摩川エコラシコ 2005 打倒!オレンジ DAYS 2010 天体戦士サンレッドとのコラボ 2006 ビッグフラッグ作成 2010 正念場時代 2006 修羅場 3 2010 フロンターレ動物園 2007 エスを狙え 2010 一緒におフロんた~れ 2007 水色バイバイン計画 2010 川崎フロンターレと本を読もう! 2007 川崎市民の歌 2010 平泉成さんが開幕キャンペーンに出演 2007 アタック 25 2010 ピラメキーノとコラボレーション 2008 席ツメ隊 2011 Mind-1 ニッポン プロジェクト 2008 イッツァスモウワールド 2012 ニコニコ生放送による新体制発表 2009 Dole バナナランド 2012 漫画『テルマエ・ロマエ』とコラボレーション 2009 フロンターレ牧場 2015 川崎の車窓から~東急グループフェスタ~ 2009 11 回目のプロポーズ 2016 漫画『宇宙兄弟』、JAXA とコラボレーション

(出所)川崎フロンターレオフィシャルウェブサイトを参考に筆者作成 ③ ネット要因

まず、公式のオフィシャルウェブサイトでは、SNS へアクセスすることの出来るリンク

が貼りつけられていたのであるが、クラブがアカウントを作成している SNS が数多くあっ

たのが特徴である。Twitter、Facebook、LINE、You Tube、Instagram、メールマガジン、

755 など実に 7 種類であった。2016 シーズンの J1 全 18 チームのオフィシャルウェブサ

イトでは 7 種類もあるとこは他にはなく、平均 3,4 つの SNS しかアカウントを持ってい

なかったのである。このことからもスマートフォンの利用者増加に合わせて、より多くの

観戦者にさまざまな SNS でチームのことを発信出来るようにしていたということである。 選手個人に関しては、Twitter は所属しているほとんどの選手がアカウントを作成してい

た。ブログはクラブの公式携帯サイトに登録すれば、全ての選手のものが閲覧出来るよう

35

卒業論文

になっていた。また、知名度の高い一部の選手 4は公式携帯サイトではなく、個人でブログ

を開設していたのである。シーズン中であったり、選手によって多少のバラつきはあるも

のの、更新頻度は多く、飽きさせないものであった。 そして、Twitter ではクラブ公式アカウントとは別にクラブスタッフのアカウントが存在

した。このアカウントでは、先述の企画、イベントについての告知が数多くなされていた。 以上の点から、ネットサービスにおいて他チームよりも多くの情報伝達手段を持ち、ま

た情報伝達の頻度、内容ともに多いということが分かった。

④ グッズ要因 分析結果ではグッズ要因の影響はあまり強いものではなかったが、少なからずはあるた

めに調査を行った。川崎フロンターレのグッズの特徴としては 2 点ある。まず 1 つ目は、

タオルマフラーというグッズの定番アイテムとしての確立である。他チームでもタオルマ

フラーの販売はもちろん行われているが、川崎フロンターレではゴールを決めるとバック

スタンドにある「G ゾーン」と呼ばれる熱狂的なサポーターが集まるゾーンでは一斉にタ

オルマフラーを掲げて、ぐるぐると振り回し、選手を祝福するのである。現在では、これが

定着して、G ゾーンのみではなくメインスタンドやゴール裏関係無しに、タオルマフラー

を振り回す仕草が見られようになっているのである。筆者が実際に観戦に行った際も、ゴ

ールを決めると、スタジアム中がタオルマフラーを振り回し、スタジアムがまさに一体に

なっていると感じることが出来た。これに興奮を覚えて、また見に行きたいと感じる観戦

者も多いことだろう。 2 つ目は、グッズのバリエーションの豊富さである。1 つ目で述べたタオルマフラーの

2015 年版なのだが、ラインナップが実に 8 種類もあるのである。「FRONTARE」の文字が

書かれた『ベーシックタイプ』から、試合前に必ず流れる「川崎市民の歌」の一節にもある

「好きです 川崎 愛の街」と書かれた『川崎タイプ』のほか、『ハートタイプ』、『チェッ

クタイプ』などが販売されている。後ろの 2 つは女性向けの可愛いデザインになっている。

性別、地元住民、初心者問わずに、自分の好みに合わせてお気に入りを購入することが出

来るようになっているのである。 以上の点から、グッズでは試合に欠かせない定番アイテムというものを確立して、かつ

さまざまなニーズに応えられるようなバリエーションを揃えていたのである。スタジアム

設備要因でも述べているように、女性に対するアプローチをグッズにおいても強く見るこ

とが出来たと言えるだろう。

4 中村憲剛選手、大久保嘉人選手など。

36

卒業論文

第 6 章:インプリケーションと今後の課題 第 1 節:インプリケーション 本研究では「J クラブが今後行ってくべき顧客満足経営はどのようなものなのか」というのを

リサーチクエスチョンとして研究を行ってきた。先行研究をもとにして、独自のアンケート調査

を行い、それを使用して重回帰分析を行った。結果として、観戦頻度に影響を与える要因は①ス

タジアムの席の座り心地、②スタジアムの席の見やすさ、③スタジアムのスタッフの対応、④ス

タジアムのトイレ設備、⑤クラブのファンサービスの充実、⑥クラブ・選手のブログ等の SNS、⑦グッズであった。影響の強さとしては、④⇒⑥⇒①⇒③⇒⑤⇒②⇒⑦であった。また、大きく

分けるとスタジアム設備要因が 4 つであり、顧客要因・ネット要因・グッズ要因が各 1 つずつと、

全体的にスタジアムの要因が大半を占めていることが分かった。これらの要因の満足度が高いほ

どに観戦頻度が多くなるというのが、本研究の重回帰分析の結果である。 次にこれを事例対象に当てはめていくのだが、その対象を選ぶ要因として満員率を参考にした。

これは先行研究より、観客動員数で評価するとスタジアムの規模により影響を受けるが、満員率

ならば影響を受けないというところから満員率を指標として事例対象を選択した。その結果事例

対象として選択したのは J1 所属の川崎フロンターレであった。 スタジアム設備要因においては、2015 年に新メインスタンドに改築されたこともあり、さまざ

まなサービスを発見することが出来た。まず、トイレ設備においては、最も重要視されていたの

はいかに待機時間を減らすのかということであった。また、着替えるスペースや鏡の設置など女

性観戦者を意識して作られていた。座席に関しては、収容人数を減らしてまで幅を広く取り快適

さを追求していた。また、カップル、子ども連れ、大人数などさまざまな観戦者のニーズに対応

出来るように座席の種類を増加させていた。スタジアムのスタッフは、J1 では数少ないボランテ

ィアスタッフを起用していた。これにより、地元に精通している観戦者にとっても有益な情報が

もたらされ、観戦者の満足度は上がるということが考えられるであろう。 顧客要因においては、5 年連続地域貢献度 1 位という結果として表れているように、さまざま

なイベント・企画が行われていた。特徴としては、イベント・企画の数の多さはもちろんである

が、何より運営スタッフのみではなく、選手自身が直接参加しているということであった。また、

地元出身者や地元の企業とのコラボレーションで WIN-WIN の関係を築いている事例も多く見

受けられた。そして、若年層から高齢者まで幅広い世代が参加することが出来るようにイベント・

企画が行われていたのも特徴であった。 ネット要因においては、まず他チームと比較しても圧倒的な情報発信源の数の多さであった。

多くの SNS のアカウントを保持しており、さまざまな角度からクラブの情報を発信していた。

LINE などの若年層に人気のあるものから、メールマガジンなど比較的高齢者でも利用すること

の出来るサービスを設置していたのである。また、各選手のブログ・SNS もあり、更新頻度も高

かったのも特徴であった。 最後にグッズ要因としては、特定のグッズと試合観戦を結び付けて相乗効果を確立したことが

特徴であろう。そのグッズとはタオルマフラーであり、試合観戦に欠かせないマストアイテムと

37

卒業論文

して観戦者には受け入れられている。タオルマフラーがあればより試合観戦が楽しいものになる

という流れが作られている。そして、もう1つの特徴としては女性向けなどにさまざまなニーズ

に応えるグッズを取り揃えているということであろう。 以上が観戦に影響を強く与える要因で、満員率で良い結果を残していた川崎フロンターレの事

例研究だが、各要因において行っていくべきサービスは述べた通りであるが、これらに共通する

ことがいくつかあったので以下からはそれをまとめてみる。まず、1つ目としてはさまざまな観

戦者に向けてサービスがなされていたことであろう。最も強い影響を与える要因であるトイレ設

備から席の種類、グッズの種類など多くの要因で幅広いニーズに向けたサービスが意識されてい

たのである。特に女性観戦者に向けてのサービスが多く見られた。J リーグ全体で女性の観戦者

が増えてきたとはいえ、まだまだ増加させなければならないというのが課題でもある。したがっ

て、女性観戦者を取り込む傾向があると言えるだろう。2つ目は地域との交流である。顧客要因

で述べた部分はもちろんであるが、グッズの柄やスタジアムのボランティアスタッフ、スタジア

ムのファミリーシートの遊具の購入先などにおいても、地域との交流を強く意識していることが

わかった。 これらの点から、より J クラブが満員率を増加させるためには、影響を強く与える要因におい

ては、7 つの要因においては以上のようなサービスを、さらに全体的に見ると、主に女性に向け

たさまざまなニーズを持った観戦者、および地域との交流を意識したサービスが行われている傾

向であった。これらのサービスがリサーチクエスチョンである「J クラブが今後行ってくべき顧

客満足経営はどのようなものなのか」の解とする。

第 2 節:今後の課題 今後の課題としては、大きく 2 つある。まず 1 つ目は、アンケートの信憑性である。今回行っ

たアンケートは無差別に回答を求めたためサッカーに対する認知度、理解度ともに一定ではない。

したがって、質問の真意を明確に理解した上で回答出来ているのかという問題がある。先行研究

の鈴木(2012.2013.2014)で行われていたアンケートではスタジアムに実際に観戦に来ている観戦

者に対して行われていた。したがって、よりサッカーに精通している者に調査出来たと考えるこ

とが出来る。したがって、より正確な分析をするためには、各スタジアムに行ってアンケート調

査をすることが必要である。 2 つ目としては、あくまでこれは 1 つの考察という点である。冒頭で述べたように J リーグは

現在全国に 53 クラブ存在している。53 クラブ中の中で成功しているクラブの事例を挙げたのみ

なので、リサーチクエスチョンの解として求めたものだけが、優れた顧客満足経営とは言い切る

ことが出来ないであろう。つまり、本論文の解はあくまで、J クラブがより満員率を増加させる

ためのサービスの 1 つの方法論であるということをご了承頂きたい。しかし、サッカー観戦およ

びスポーツ観戦において満員率を増加させるために、いくつかの示唆をもたらすことができたと

いう点で本論文は多少なりとも有益性を持っているのではないかと考える。

38

卒業論文

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(図表 22)アンケートの調査項目

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卒業論文

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(出所)筆者作成

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