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学習 成果の可視化の意義と課題 評価指標の開発と DP 見直し 2019 11 5 10:00 11:30 大東 文化大学板橋校舎中央棟多目的 ホール 田中正弘(筑波大学)

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学習成果の可視化の意義と課題―評価指標の開発とDPの見直し―

2019年11月5日10:00~11:30大東文化大学板橋校舎中央棟多目的ホール

田中正弘(筑波大学)

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• 可視化の事例• 可視化の意義と課題• 成績評価ガイドライン• 評価指標の開発とDPの見直し• まとめ

目次

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可視化の事例

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• 2015年度にアセスメント・ポリシーを定め,学習成果を多角的観点から複数の指標に基づいて評価することとした。

• カリキュラム・ポリシーの中に,「学修成果の評価」の項を設けた(2018年度以降の入学生を対象)。

【学修成果の評価】9. 学士課程の集大成としての卒業研究を全学科必修とし、目標と

する資質・能力を身につけることができたかを、ルーブリックを用いて評価する。

10.本学のリベラル・アーツ教育の学修成果について、直接的指標と間接的指標を用いて、多角的観点から評価を行う。

東京女子大学の事例(1)

4出典:文部科学省(2018)「テーマⅡ 学修成果の可視化 実績報告書」,19-20頁

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東京女子大学の事例(2)

出典:http://office.twcu.ac.jp/univ/about/gp/ap/files/02_riberarua-tsukyouikuno.pdf5

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• 直接的指標を用いて行う直接評価とは– 学習成果の直接的なエビデンス(学習者が何を知っていて,何が出来るかを自ら示すこと)に基づく評価のこと

• 間接的指標を用いて行う間接評価とは– 学習成果の間接的なエビデンス(学習者は何を知っていて,何が出来ると考えているのか,あるいはどのように学んでいるのかを,学習者自身や卒業生,またはステークホルダーに尋ねる)に基づく評価のこと

直接評価と間接評価

出典:松下佳代(2019)「学習成果とその可視化」中央教育審議会大学分科会教学マネジメント特別委員会(第6回)配付資料,7頁。

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• 「直接評価は学習成果を直接に測定し,評価するのに適しているが,学生の学びのプロセスや行動を把握するには限界がある」(山田 2013:28)。– 「学修行動調査やインタビュー等あるいは授業評価で実施される間接評価は,学生の期待度や満足度,学習行動の把握,関与(エンゲージメント,インボルブメント)や経験を把握することができ,成果につながる教育の過程を評価するという機能を伴っている」(山田 2013:28)。

直接評価の限界と間接評価の必要性

出典:山田礼子(2013)「学生の特性を把握する間接評価:教学IRの有用性」『工学教育』61(3),27-32頁。

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• GPAを学修成果の指標として利用するため、成績評価の平準化に向けた体制を整え、指標としての適切性を高める取組を行った。– 2014年度に、成績Web登録時の成績分布の可視化を全授業科目について実施し、教員が自身の成績評価基準の適切性及び教育の効果を容易に確認できるようにした。

– 2015年度に、成績評価のガイドラインを導入した。– 2016年度より進級条件科目及び卒業研究についてルーブリック評価の運用を開始し、2018年度に、1年次演習及び全学共通力リキュラムの1・2年次対象の必修・選択必修科目についても運用を開始した。

東京女子大学の事例(3)

出典:文部科学省(2018)「テーマⅡ 学修成果の可視化 実績報告書」,21頁

直接的指標

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• 自己点検・評価委員会において、2008年度より「学修行動調査」を実施している。– 現在は「4年次アンケー卜」を12月から1月にかけて、「2・3・4年次アンケー卜」を4月に実施している。

• 回収率は毎年80%以上を維持している。• この調査では、本学の教育理念・目的及びディプロマ・ポリシーに照らした項目を設定し、毎年度IR専門委員会において設問項目についての適否を確認することで、質の高いアンケー卜を実施している。

東京女子大学の事例(4)

出典:文部科学省(2018)「テーマⅡ 学修成果の可視化 実績報告書」,22頁

間接的指標

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• ALCS学修行動調査– 2015年度に教育研究開発委員会において、他大学との比較も行えるよう,「ALCS学修行動調査」(教学比較IRコモンズが運営)の実施を決定した。

• 教学比較IRコモンズのサイト(https://cmpir.com/site/index.php#sec5)

• 卒業生および企業による外部評価アンケート– 卒業生対象の自己評価アンケー卜、卒業生が勤務する企業の雇用者対象のアンケートならびにインタビユーを実施し、本学の教育における専門知識、汎用的能力、態度・志向の修得を間接的に測定した。

東京女子大学の事例(5) 間接的指標

出典:文部科学省(2018)「テーマⅡ 学修成果の可視化 実績報告書」,22頁

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岩手大学の事例(1)

区分 科目名 知識・理解 思考・判断 関心・意欲 態度 技能・表現 重付合計a b c d e f g h

課程共通科目 共生環境入門 80 20 100基礎キャリア形成ゼミ 80 20 100

共生環境課程共通 応用力学 60 40 100

共生環境課程共通 応用数学 60 40 100

インターンシップ 80 20 100コース科目 森林資源と人間生活 20 80 100

森林測量学Ⅰ 20 80 100森林測量学実習Ⅰ 20 20 60 100樹木資源学 100 100林業・木材産業論 100 100農林生物共生論 100 100暖帯林概論 100 100樹木の組織と形態・生理 100 100樹木の組織と形態・生理実習 20 20 60 100

出典:江本理恵(2019)「教育の内部質保証システムの一端を担う『In Folio(アイフォリオ)』の運用と教学IR」(日本教育工学会2019年秋季全国大会発表資料)

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岩手大学の事例(2)

出典:江本理恵(2019)「教育の内部質保証システムの一端を担う『In Folio(アイフォリオ)』の運用と教学IR」(日本教育工学会2019年秋季全国大会発表資料)

In Folioの出力画面(DP達成量)

DP達成量

単位数×重み付けを足し合わせた量

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岩手大学の事例(3)

学位授与の方針(卒業時に到達していることが求められる目標)

達成に必要な項目 自己評価

1 教養教育等で培う幅広い分野の知識を身につけている。

□ 教養教育(文化・社会・自然・環境・地域)の科目を履修している。

○十分身についている

□ 教養教育(文化・社会・自然・環境・地域)の科目の卒業に必要な単位を修得した。

○かなり身についている

□ 学内外の講演会等に参加し、幅広い分野の知識に触れる機会を確保している。

○あまり身についていない

□ 幅広い分野の本を読んでいる。 ○少しも身についていない

2 専門分野の基礎的な分野の知識を身につけている。

□ 専門基礎教育科目として開講されている、数学、物理、化学、生物の各講義科目と実験科目を履修している。

○十分身についている

□ 専門基礎教育科目の卒業に必要な単位を修得した。○かなり身についている

□ 専門教育のコース科目を履修している。 ○あまり身についていない

□ 専門教育のコース科目の卒業に必要な単位を修得した。

○少しも身についていない

出典:江本理恵(2019)「教育の内部質保証システムの一端を担う『In Folio(アイフォリオ)』の運用と教学IR」(日本教育工学会2019年秋季全国大会発表資料)

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岩手大学の事例(4)

出典:江本理恵(2019)「教育の内部質保証システムの一端を担う『In Folio(アイフォリオ)』の運用と教学IR」(日本教育工学会2019年秋季全国大会発表資料)

In Folioの入力画面(DP達成状況の自己

評価)

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岩手大学の事例(5)

-1.4

-1.2

-1

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

(j)2016年前期

(j)2016年後期

(j)2017年前期

(j)2017年後期

(j)2018年前期

達成量(学期) 達成量(積算) 自己評価

入学当初は自己評価が低い

対応授業の増加(達成量の増加)に伴い、自己評

価も高くなる

出典:江本理恵(2019)「教育の内部質保証システムの一端を担う『In Folio(アイフォリオ)』の運用と教学IR」(日本教育工学会2019年秋季全国大会発表資料)

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兵庫教育大学の事例(1)

出典:兵庫教育大学学部教員養成スタンダード運営室(2019)「1年次生クラス担当教員対象説明会」(学内配付資料),3頁

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兵庫教育大学の事例(2)

出典:兵庫教育大学学部教員養成スタンダード運営室(2019)「1年次生クラス担当教員対象説明会」(学内配付資料),15頁

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兵庫教育大学の事例(3)

出典:兵庫教育大学学部教員養成スタンダード運営室(2019)「1年次生クラス担当教員対象説明会」(学内配付資料),18頁

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貴学の事例

出典:大東文化大学(2019)「将来ヴィジョンと基本方針」,57頁

可視化するための評価指標はすでに

豊富にある。

注:活用未定の指標も含まれている

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学習成果の可視化の意義と課題

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学習成果の可視化の意義

• 学習成果をなぜ可視化するのか?– 認証評価への対応のため?– 大学のため?– 教職員のため?– 学生のため!!

• 学生のための可視化とは?– 学位を授与された学生が大学の期待する知識・技能・態度などを修得したことを保証(点検)するのに必要な行為

• しかしながら,大学の期待する知識・技能・態度を修得したこと(学習成果)をどのように把握するのか?

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• 学習成果の把握は容易ではない。– 学習成果=望ましい就職結果ではない。– 学習成果=優れた卒論でもない。– 学生は正課外活動からも学ぶ。

• このため,多角的な視点から複数の指標が必要となる。• 大学が把握しておくべき最も重要な学習成果は,正課(内)教育の結果(成績)である。– 正課教育は,各科目の積み重ねで構成されている。

• よって,成績として表される各科目の学習成果(成績評価)の結果は信頼できるものでなければならない。

学習成果の把握

注:成績判定には,直接評価だけでなく,間接評価も用いるべき。

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可視化の課題(成績評価)

• 日本では,成績評価は大学教員の裁量にほぼ全て委ねられているため,評価基準が不統一かつ曖昧であることが多い。– 特に,ペーパーテストで測れない能力(主体性などの態度)の評価は,教員によって評価基準がバラバラで,客観性に欠ける嫌いがある。

• 新たな評価指標の開発が必要である。– そもそも,ペーパーテストで測れない能力の育成は,ディプロマ・ポリシー(DP)に記載されていても,ほとんどの科目でなされていない。

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1. 知識・技能① 豊かな教養の基礎となる広範な知識を修得している。② 自らが学ぶ学位プログラムの基礎となる専門知識・技能を修得し、活用す

ることができる。2. 思考力・判断力・表現力

① 多文化社会に貢献できる国際的な視野と感覚、異文化への共感的想像力やコミュニケーション能力をもっている。

② 国内外における諸課題を発見し、解決策を構想するための思考力や判断力を身に付けている。

③ 自己の意見を適切に表現・伝達できるとともに、背景や価値観の異なる他者の意見に傾聴し、議論や協働により問題解決を行うことができる。

3. 主体的に学習に取り組む態度① 生涯にわたって学び続け、国際社会や地域社会の発展に貢献する意欲と能

力をもっている。② 社会の一員としての強い責任感、使命感、モラルをもち適切に行動できる。

貴学のDP(学士課程全体)

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赤字の能力を従来型の講義だけで修得させる

のは難しい。

出典:大東文化大学(2019)「将来ヴィジョンと基本方針」,52頁

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• 長所– 大量の知識・技能を短い時間で伝達できること

• 学生が知識・技能を効率的に修得できる。– 大教室でのマスプロ教育が可能なこと

• 短所– 修得した知識・技能を活用する機会が乏しいこと

• 知っていることと,活用できることはイコールではない。– 表現力や主体性などの育成が難しいこと

講義の長短

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• 長所– 修得した知識・技能を活用する機会が豊富なこと

• 知識・技能を前もって修得していることが前提となる。– 表現力や主体性などを育成できること

• 短所– 教員が伝達できる知識・技能の量が少ないこと– 大教室でのマスプロ教育は難しいこと

• 少人数が望ましい。

アクティブラーニング型授業の長短

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• 講義の評価– 知識・技能の量と質を評価する。

• 従来型の学期末テスト,小テストなど– 問題解決力の質を評価する

• 論述試験など• アクティブラーニング型授業の評価

– 問題解決力・表現力・主体性などの質を評価する• シミュレーション,実地試験,観察記録法(授業中の態度や行動などのパフォーマンスを観察)など

• 論文・レポートなど

授業形態に応じた評価

出典:佐藤浩章(編)(2010)『大学教員のための授業方法とデザイン』玉川大学出版部,42頁。

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パフォーマンス評価

• パフォーマンス評価とは,フィギュアスケートの採点方法に近いものである(松下 2013)。– 数分間、実際に演技させる。– 複数の専門家(審査員)が評価基準に従って採点する。

出典:松下佳代(2013)「学習成果の評価の方法―パフォーマンス評価を中心に」平成25年度(第16回)弘前大学FDワークショップ,13頁

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パフォーマンス評価の概念図

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出典:松下佳代(2013)「学習成果の評価の方法―パフォーマンス評価を中心に」平成25年度(第16回)弘前大学FDワークショップ,11頁。

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• ルーブリックを用いても,パフォーマンス評価は主観的になりやすい。

• そこで,できるだけ多くの人が評価することで,客観性を高める必要がある。

• フィギュアスケートでは,複数人で評価し,最も高い評価と最も低い評価を除いた評価結果の平均をとることで,評価の客観性を高めている。

• 教員だけでなく,学生も評価者になってもらう。• そのためには,評価方法に関する共通理解が重要となる。– 成績評価ガイドラインの設定が望まれる。

主観的評価を客観化する工夫

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成績評価ガイドライン

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お茶の水女子大学のガイドライン

レターグレードと評点区間、及び評価基準表

S (90点以上)基本的な目標を十分に達成し、きわめて優秀な成果をおさめている。

A (90点未満から80点以上) 基本的な目標を十分に達成している。

B (80点未満から70点以上) 基本的な目標を達成している。

C (70点未満から60点以上) 基本的な目標を最低限度達成している。

D (60点未満不合格)基本的な目標を達成していないので再履修が必要である。

S評価を評価対象者の15%以内(履修者数が10人未満の場合は2名以下)に留める。履修放棄によって評定できない場合はD(不合格)となる。レターグレードで評定する場合の評点は,S=95、A=85、B=75、C=65、D(不合格)=55となる。

出典:お茶の水女子大学「シラバス(成績評価基準)」(http://www.ocha.ac.jp/education/info/about_grade.html)

絶対評価に相対評価の要素を加

えている。

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• 成績評価は相対評価を原則とし,S評価,A評価及びD評価の標準的な分布は,おおむね次のとおりとする。

明海大学のガイドライン

成績評価 標準的な成績評価の分布

S 10%程度

A 20%程度

D 20%以内

出典:明海大学「浦安キャンパスにおける単位認定及び成績評価に関するガイドライン」(http://urayasu.meikai.ac.jp/tebiki/pdf_syllabus/manual_guideline.pdf)

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評価基準

学部 大学院 共通 Point 評価付与範囲

S所期の到達目標をほぼ完全に達成するか、または傑出した水準に達している。

所期の到達目標をほとんど完全にもしくはそれを超えて達成し、特段に優れた成績を修めた。

100点法では90点以上に対応。

4講義科目S評価・・・10〜20%程度を目安とする。A評価・・・20〜25%程度を目安とする。B評価・・・20〜25%程度を目安とする。C評価・・・10〜20%程度を目安とする。

演習科目、実習科目については、目安を設けない。

A所期の到達目標を達成し優秀である。

所期の到達目標をほぼ達成し優秀であるが、不十分な点がいくつかある。

80~89点に対応。 3

B誤りや不十分な点があるが、所期の到達目標を相応に達成している。

所期の到達目標に照らして妥当な成績を修めたが、不十分な点が目に付く。

70~79点に対応。 2

C所期の到達目標の最低限は満たしている。

相当の欠点が見受けられるが、到達目標の最低限は満たしている。

60~69点に対応。 1

D 単位を与えるためにはさらに勉強が必要である。

単位を与えるためには、さらに研究・調査が必要である。

60点未満に対応。

0

E

欠席超過など評価対象外 欠席超過など評価対象外 評価不可能

0

貴学のガイドライン

出典:大東文化大学(2019)「評価付与内規(修正版)案」

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• 成績評価の検証– 学長および学部長は、各授業科目の目的や授業方法および特性に応じて成績評価の妥当性を検証し、成績分布に著しい偏りがあると判断した場合、当該科目の担当教員に対して学習到達目標・評価基準および評価方法の適切性やその成績分布に至った理由について説明を求めることができる。担当教員からの説明の妥当性は協議会で判断するものとする。ただし、学外協力機関からの評価に基づいて成績評価が行われる実習科目、認定科目についてはその限りではない。

大阪大谷大学のガイドライン

出典:大阪大谷大学「成績評価ガイドライン」(https://www.osaka-ohtani.ac.jp/files/about/disclosure/grade-evaluation-guidelines.pdf)

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岩手医科大学のガイドライン

• 医学部の評価方針:抜粋1. 講義・演習のみの科目では、知識とその応用を査定します。実習を伴う科目では、技能、態度、コミュニケ-ション能力も評価します。臨床現場での実習科目では更に倫理・遵法精神と利他精神を評価対象にします。

2. 知識とその応用に関しては筆記試験や口頭試問、技能は実技試験、その他の能力は実習現場評価(レポート、スケッチ、段階的技能・行動表と業務現場評価法、および自己進達度表等を取りまとめたポートフォリオ)で査定します。

3. 筆記試験、口頭試問、実技試験は数値化して達成度を査定します。実習現場評価では、可能な限り数値化できる評価法を用いて達成度を査定します。

4. 評価方法の選定と合否基準の設定にあたっては、その妥当性、客観性ならびに実現可能性を考慮し、担当委員会にて定期的に見直しを行い、次年度開始時に被評価者と評価者にシラバスで呈示します。

出典:岩手医科大学(2017)「評価方針(アセスメント・ポリシー)」(http://www.iwate-med.ac.jp/education/assessmentpolicy/)

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相対評価と絶対評価

• 単純な相対評価の適用は避けるべき。– 他の学生と比べて,どれだけ優れて(劣って)いるかよりも,各学生が到達目標をどの程度達成できたかによって個別に評価することを,大学は期待されているからである。

• 単純な絶対評価の採用も避けるべき。– 各教員がバラバラに定めた到達目標は,学生に不安を与える要因になったり,無用な混乱を引き起こしたりする危険がある。

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ガイドラインの設定

• 絶対評価を基本理念としつつ,相対評価の理念を組み合わせたガイドラインの設定が必要である。

• 各学生が何をどの程度できるようになったかで,成績を判断(絶対評価)する。

• ただし,正規分布(相対評価)とかけ離れている場合は,同僚による事後点検を実施する。

担当教員に説明を求める。

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• ガイドラインに則って適切に成績評価がなされていることを組織的に点検する必要がある。– 点検の項目や方法を記載したものが,アセスメント・ポリシーである。

• アセスメント・ポリシーは適宜見直す必要がある。– 特に,点検項目(評価指標)の開発や見直しは,成績評価の妥当性・客観性・実現可能性を高め,かつ点検の負荷を下げるために,必須といえる。

ガイドラインの運用

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評価指標の開発とDPの見直し

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貴学の評価指標

出典:大東文化大学(2019)「将来ヴィジョンと基本方針」,57頁

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いわき明星大学の評価指標

出典:いわき明星大学(2018)「アセスメントポリシー」(http://www.iwakimu.ac.jp/information/assessment_policy.html)

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京都女子大学の評価指標

出典:京都女子大学(2018)「アセスメントポリシー」(http://www.iwakimu.ac.jp/information/assessment_policy.html)

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• 作業1– アセスメント・ポリシーに記載されている評価指標を,学習成果の可視化に用いるものと,成績評価の点検(モニタリングやレビュー)のみに用いるものとに,区別する。

• モニタリング:プログラムレベルで毎年行う点検• レビュー:プログラムレベルで5~7年ごとに実施する点検

• 作業2– DPに記載されている技能・態度などを適切に測定する指標がなければ,開発する。

• 例:ラーニング・ポートフォリオの開発

評価指標の開発

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• 作業3– ほぼ同じ結果(示唆)をもたらす指標は,どちらかに統一する。

• 例:同じDPを測定しているGPAと外部有料テストの結果がほぼ同じなら,外部有料テストの実施をやめる。

• 作業4– 同じDPを測っているにもかかわらず,お互いの結果が矛盾する指標を特定し,それらの適切性を吟味する。

• 例:GPAと学生の自己評価の結果に相関がない。

評価指標の見直し

注:作業3と4は,IR室を中心に分析を行う。

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大阪府立大学の事例(1)

出典:高橋哲也(2015)「学修成果可視化に向けた大阪府立大学の取組」,17頁。( https://www.spod.ehime-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2015/09/2703H01.pdf )

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大阪府立大学の事例(2)

出典:高橋哲也(2015)「学修成果可視化に向けた大阪府立大学の取組」,17頁。( https://www.spod.ehime-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2015/09/2703H01.pdf )

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• 評価指標の信頼性が低いと可視化の意味がない。よって,指標の見直しが必要である。– 成績評価の信頼性が低い。

• 評価方法の見直し• 達成目標の見直し

– 学生の自己評価の信頼性が低い• ルーブリックの見直し• ポートフォリオの見直し

– そもそも,DPの設定に無理がある。• DPの見直し

評価指標やDPの見直し

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• 評価指標やDPの見直しに合わせて,シラバスに記載されている達成目標も適宜修正する。

• 同時に,シラバスに記載されている達成目標が,実現可能性の観点から「達成困難」であると判断された場合は,達成目標の修正を行う。

• 達成目標の修正に合わせて,DPの見直しの可能性を議論する。

シラバスの見直し

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まとめ

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• 学習成果を可視化するのは,学位取得者がDPに記載された知識・技能などを確かに修得したことを保証(点検)するためである。

• しかし,残念ながら現状は,可視化するデータの質がよくないため,学生にとって,有益な情報になっていない。

• 従って,現時点では,可視化されたデータを成績評価方法の改善などのFD活動に用いるのが望ましいと思われる。

まとめ

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ご静聴,ありがとうございました。

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