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2011年12月16日CLG「ゲームフルな教育をデザインする」ワークショップ事例発表1:「Quest to Learn:学校カリキュラムのゲーミフィケーション事例」発表者: 藤本 徹(東京大学大学院情報学環)

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2011年12月16日CLG「ゲームフルな教育をデザインする」ワークショップ

Q t t L 学校カリキ ラムのQuest to Learn:学校カリキュラムのゲーミフィケーション事例ゲ ミフィケ ション事例

藤本 徹

東京大学東京大学

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自己紹介:藤本 徹(ふじもと とおる)

1973年大分県別府市生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒、教育関連

企業等で勤務の後 米国ペンシルバニア州立大学大学院博士課程修了企業等で勤務の後、米国ペンシルバニア州立大学大学院博士課程修了。(Ph.D. in Instructional Systems)

現在:東京大学大学院情報学環 特任助教

兼務:NPO法人産学連携推進機構客員研究員、慶應義塾大学・東京工芸大学非常勤講師など

著訳書著訳書共訳「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(2011)ジェイン・マクゴニガル著、早川書房早川書房

「シリアスゲーム-教育・社会に役立つデジタルゲーム」(2007)、東京電機大学出版局機大学出版局訳書「テレビゲーム教育論」(2007)マーク・プレンスキー著訳書「デジタルゲーム学習」(2009)

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訳書「デジタルゲ ム学習」(2009)マーク・プレンスキー著 他

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トピック

Quest to Learnに関して・・・

• どのような経緯で誕生したのか?

• どのようなカリキュラムが提供されているのか?• どのようなカリキュラムが提供されているのか?

• 生徒はどのような経験をしているのか?

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Quest to Learnとは

• Quest To Learn:6年生から12年生対象のニューヨーク市の公立チャータースクール(中高一貫校)

• 2009年秋に開設、初年度の入学者は76名。毎年1学年ずつ追加されて 年後に完成追加されて6年後に完成

• ゲームデザイナーと教育専門家が協力してカリキュラム開発と学習環境デザインを行 て開設された全米初(世界初)発と学習環境デザインを行って開設された全米初(世界初)の「ゲーム型学習」の公立校

• 設立の背景• 設立の背景• 米国の子どもの学力低下、高い中退率(3分の1が中退、マイノリティ

の高卒率50%)

• 5年間でニューヨーク市のスモールスクール運動が100校以上の中等教育機関を設置、卒業率改善に成功

• マッカ サ 財団の「デジタルメディアと学習」助成事業(5年間5000• マッカーサー財団の「デジタルメディアと学習」助成事業(5年間5000億ドル)2007年~

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学校の様子

• Q2LのPicasaギャラリー

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Quest to Learnの開発・運営体制

• インスティテュート・オブ・プレイ:ゲームデザイナーとゲーム

型学習の研究者が設立した非営利組織。ゲームデザインの手法を用いた学校カリキュラム・学習環境全般のデザイン

h h l f ヨ ク市にある• Parsons the New School for Design: ニューヨーク市にあるニ

ュースクール大学のデザインカレッジ。研究開発や生徒募集に関する協力に関する協力

• New Visions for Public Schools:学校運営に関する監修とニューヨーク市教育省への提案書作成ュ ヨ ク市教育省 の提案書作成

• ニューヨーク市教育省:学校設立に関する関係主体との調整機能機

• マッカーサー財団、ゲイツ財団:学校の企画段階から資金を提供

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Quest to Learnの実践方針

アイデンティティを形成する実践共同体 知る必要性への対応(単に「生徒」ではない)

ゲームデザインとシステム思考の導入

(複雑な問題への疑問と挑戦の意欲)

他者との交流(活動の関係性を意識する)

状況の中での実践(「教わる」だけでなく

(世界の中の自分を理解する)

実験を通して可能性のイメージを広げ状況の中での実践(「教わる」だけでなく実践機会としての学校)

遊びと振り返り

実験を通して可能性のイメ ジを広げる(創造的な行動を起こす)

相互にフィ ドバ クを与え合う遊びと振り返り(ゲーム経験を学びに活かす)

相互にフィードバックを与え合う(学習を可視化し自ら課題を見出す)

理論化して評価する(意味ある知識を生み出す)

解決法を編み出す(ルールの発見、プロセス構築、実行と評価)

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基本カリキュラム構成

5つの学習領域とSNSで構成さ

れた教科統合型カリキュラム(ニューヨーク州カリキュラム標準に準拠)準拠)

• 物事の働き(数学/理科)

存在 空間 場(国語/社会)• 存在・空間・場(国語/社会)

• コードの世界(数学/国語/プログラミング)プログラミング)

• ウェルネス(保健体育/食育/道徳)/道徳)

• こころのスポーツ(ゲームデザイン/メディアアート)ザイン/ ディアア ト)

• ビーイング・ミー(学内SNS)2011/12/16 (c) 2011 Toru Fujimoto  8

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標準的な時間割(6年生)

時限 月 火 水 木 金

8:35‐ 朝礼/ホーム ホームベース ホームベース ホームベース 朝礼/ホーム9:12

朝礼/ホ ムベース

朝礼/ホ ムベース

9:14‐10:05

1 コードの世界 コードの世界 こころのスポーツ

物事の働き コードの世界

10:07‐10:56

2 存在・空間・場 コードの世界 こころのスポーツ

物事の働き コードの世界

10:58‐ 3 存在・空間・場 存在・空間・場 物事の働き ウェルネス ウェルネス10:5811:47

3 存在 空間 場 存在 空間 場 物事の働き ウ ルネス ウ ルネス

11:49‐12:34

4 昼食 昼食 昼食 昼食 昼食

12:36‐1:25

5 こころのスポーツ

存在・空間・場 物事の働き 存在・空間・場 ウェルネス

1:27‐ 6 こころのスポー 物事の働き スタジオQ コードの世界 存在・空間・場1:272:16

6 こころのスポツ

物事の働き スタジオQ コ ドの世界 存在 空間 場

2:18‐3:06

7 ウェルネス 物事の働き コードの世界 存在・空間・場

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3:08‐3:20

ホームベース ホームベース ホームベース ホームベース

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ゲーム的要素の導入

• 学習課題をミッション(大目標)/クエスト(小課題)として提示

– クエストの種類:収集、パズル、共有、ドラマ、征服、成長、縮小、迷宮、物語、配達、発見破壊、スパイ、調査、デザイン、修行、捜査、実験

最終プロジェクト課題:「ボスレベル」(学期末の2週間)– 最終プロジェクト課題:「ボスレベル」(学期末の2週間)

• 成績の代わりに称号付与– ポイントシステムでクエスト達成度を可視化ポイントシステムでクエスト達成度を可視化

– 「未学者」、「初学者」、「見習い」、「上級者」、「達人」

• ゲームデザインを通した学習– 物事の仕組みを理解してルールやモデルを構成する

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クエストの基本構成

• クエスト名

• 概要

• ゴール

• 期間

• 前提スキル

• 重要な問い

• 対象とするコンピテンシー/知識/スキル

• 対応するカリキュラム標準

• 想定される学習活動定 動

• 評価基準

• 利用するリソース利用するリソ

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クエストの例

クエスト:空間調査 (7年生の夏休みの宿題)クエスト:空間調査 (7年生の夏休みの宿題)手順:1.訪問する場所を一つ選びましょう。公園でも動物園でもミュージアムでも駅でもどこでも構いません!こでも構いません!2.その場所に行って、写真を撮るか、絵を描きましょう。3.50~100語でその場所の様子を説明しましょう。五感を活かして説明してください(視る、聴く、味わう、触る、臭う)。(視る、聴く、味わう、触る、臭う)。4.写真か絵にラベルを付けて、その場所の名前と説明を書きましょう。5.その場所のシステム図を作りましょう(別紙)。6.その写真か絵と、システム図を使って、その場所をもっともよく表現したコラージュを作成してください(9×12インチで)。-雑誌の切り抜きや言葉、図や写真を使いましょう

-その空間に訪れた時の感じを五感(視る、聴く、味わう、触る、臭う)との関係で説明できるように考えてみてください。7.ボーナスポイント!別の場所を選んでこのクエストに挑戦してみましょう。

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空間調査クエストの構造図解の例

コアメカニクス:

走る、追う、話す、見る、排せ する

空間:

ドッグパークは細長く、犬の遊び場は飼主が休憩する 排せつする

構成要素:

遊び場は飼主が休憩するためのベンチが数台設置してある。地面は樹皮と土で公園の周囲はフェンスで囲

(多様な種類の)犬、飼主、ベンチ、犬の遊び場、ボール、棒きれ

公園の周囲はフェンスで囲まれている

ゴール: 選択した場所:ゴ ル:

犬がよく運動でき、他の犬と交流できて、必要な時に排

ルール:

1. 犬が運動できるよう する と

ワシントンスクエアパークのドッグラン

て、必要な時に排せつも可能にする うにすること

2. 犬同士で仲良くしてケンカをしないこと

障害/挑戦:

他の犬とケンカしないで遊べるようにすること

選択:

犬はその空間で何をするか選ぶことができる

こと

3. 飼主同士が会話できること

4 犬の糞はきちんと遊べるようにすること。

他の犬と一緒に空間を共有できること

るか選ぶことができる:

独りで遊ぶ/他の犬と遊ぶ/飼主と遊ぶ

4. 犬の糞はきちんと拾って帰ること

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学習活動例

テーマ 遺伝子の仕組み

遺伝子ゲームを作りたいゲームデザイナーに遺伝子のことを教える

クエスト

生物の細胞を顕微鏡で見る

の とを教える

学習活動ゲームデザイナーにDNAの知識について説明する資

細胞をスケッチする

知識について説明する資料を作成する

(宿題)ネット検索で遺伝子について調べる

模型を組 立 構

プレイヤー向けのゲームの導入説明文を書く

DNAの模型を組み立てて構造を理解する

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教育評価手法

教育評価 • 個々の活動プロセスにおいてパフォーマンスデータ収集と分析ツール利用し 評価利用して評価

評価対象 • クエストの計画と実行、結果、探索ミッション、ボスレベル達成の流暢さ、ミッション~クエストの学習結果

評価ツール • ルーブリック(概念、プロセス、傾向に関する全体的、分析的ルーブリッ評価ツ ル ル ブリック(概念、プロセス、傾向に関する全体的、分析的ル ブリック)

• 観察プロトコル(イベント現場、生徒の学習ログ/手記、ミッションやクエスト計画時の既有知識、介入時)

• 質問プロトコル(教師の教授デザイン上のチェックポイント、支援方略としての問いかけ、生徒による問いかけ、生徒のメタ認知方略と振り返り:シンクアラウドのフォーマット)

• インタビュープロトコル(教師-生徒、生徒同士、生徒-専門家)

• 表現の解釈基準(作文、作図、作画、ライブやオンラインの演技や発表)専門的教育 評価手法(相 教授法 ガ ド付 復)• 専門的教育-評価手法(相互教授法、ガイド付反復)

• 会話分析• 評価用ゲーム2011/12/16 (c) 2011 Toru Fujimoto  15

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Quest to Learnの現在の推移

• 開設3年目– 6~8年生が在籍して順調に運営

• 資金獲得– マッカーサー財団の助成事業:180万ドル(3年)

– ニューヨークコミュニティトラスト助成事業:25,000ドル

マーグルフ財団:35 000ドル– マーグルフ財団:35,000ドル

• Chicago Questが2011年秋に新設

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Quest to Learnの意義

• 学習活動や教科カリキュラムレベルを超えた「学校のゲーミフィケーション」のモデルを提示

• デジタルメディアを基盤とした次世代型の教育機関デジタルメディアを基盤とした次世代型の教育機関の在り方を問う存在

• ゲームデザイナーのノウハウ x教育工学の方法論・• ゲ ムデザイナ のノウハウ x教育工学の方法論・知見による成功

ゲーム開発者 教育者 教育行政とのコミュニケーション– ゲーム開発者、教育者、教育行政とのコミュニケーション

– ゲームの活動と学習の関連付け

教育評価体制の整備– 教育評価体制の整備

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