外来生物対策に関する最近の国の動き · 分布を拡大する外来種...
Transcript of 外来生物対策に関する最近の国の動き · 分布を拡大する外来種...
© 上野高敏 © JWRC今井仁
フイリマングース ツマアカスズメバチ
グリーンアノール アライグマ
オオクチバス
カミツキガメ
外来生物対策に関する最近の国の動き
環境省 自然環境局 野生生物課外来生物対策室 関根 達郎
外来生物が引き起こしている様々な被害
生態系に係る被害●捕食:マングースの捕食による希少動物の減少
オオクチバスの捕食による水生生物の減少
●競争:在来種との生息・生育域、
餌等の様々な競合
●交雑:外来サルとニホンザルの交雑
農林水産業に係る被害
●食害:アライグマ等による農作物の食害
●営農活動の阻害:外来植物の農地や農業用水路などへの侵入
による営農活動の阻害
●通水阻害:カワヒバリガイや水草による用水路等の通水阻害
人の生命または身体に係る被害●咬傷・毒等:セアカゴケグモ、カミツキガメ等
による咬傷や毒による被害
×
こうしょう
• 1992(平成4)年 地球サミットの開催
生物多様性条約の採択
• 1993(平成5)年 生物多様性条約の発効
• 2002(平成14)年 生物多様性条約締約国会議で外来種
対策指針原則決定
新・生物多様性国家戦略の策定
外来種対策が進められた経緯
生物多様性国家戦略2012-2020(2012年9月閣議決定)
【生物多様性の4つの危機】
第1の危機開発など人間活動による危機
第2の危機自然に対する働きかけの縮小による危機
第3の危機外来種など人間により持ち込まれたものによる危機
第4の危機地球温暖化や海洋酸性化など地球環境の変化による危機
• 1992(平成4)年 地球サミットの開催
生物多様性条約の採択
• 1993(平成5)年 生物多様性条約の発効
• 2002(平成14)年 生物多様性条約締約国会議で外来種
対策指針原則決定
新・生物多様性国家戦略の策定
環境省「移入種(外来種)への対応
方針について」策定
• 2003(平成15)年 中央環境審議会「移入種に対する措置
の在り方について」答申
• 2004(平成16)年 外来生物法制定
• 2005(平成17)年 外来生物法施行
外来種対策が進められた経緯
目的:特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業に係る被害の防止
特定外来生物 未判定外来生物 指定されない生物
取扱を規制・飼養・栽培・保管・運搬・輸入、譲渡・野外への放出・植栽
輸入者に届出義務 規制なし
要注意外来生物リストによる注意喚起等
国、地方公共団体、民間団体が防除を実施
判定
外来生物法:特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律
112種類の動植物を指定。(2014年8月現在)
(主な特定外来生物) 哺乳類:アライグマ、ヌートリア、マングース 鳥 類:ガビチョウ、ソウシチョウ 爬虫類:カミツキガメ、グリーンアノ-ル 両生類:オオヒキガエル、ウシガエル 魚 類:オオクチバス、コクチバス、ブルーギル 昆虫類:アルゼンチンアリ、ヒアリ 無脊椎動物:セアカゴケグモ、ウチダザリガニ 植 物:オオキンケイギク、オオハンゴンソウ
特定外来生物
外来生物法(防除の規定)
主務大臣等による防除の公示①防除の目標、②防除の方法、③適正な防除を進めるために必要な事項
国(主務大臣等) 地方公共団体 民間団体・個人
・防除実施計画策定・専門家、地域との協 議会の開催 等
・主務大臣の確認・防除実施計画策定・専門家、地域との協議会の開催 等
・主務大臣の認定・防除実施計画策定・専門家、地域との協議会の開催 等
飼養等(特に保管・運搬)の禁止を当該防除について適用除外
特定外来生物が鳥獣である場合、鳥獣保護法を適用除外
私有地に立ち入って防除を行う権限あり
防除費用を原因者に請求する権限あり
自然公園法を適用除外(伐採・損傷・採取・殺傷・立入り等)
マングース(特定外来生物)の被害と対策
奄美大島におけるマングースの分布拡大 - 沖縄島・奄美大島でハブ退治のため導入
- アマミノクロウサギ等の希少動物を捕食
↓
1999(平成11)年:約1万頭
2006年度 2012年度
1979(昭和54)年 30頭を放獣
2000(平成12)年より本格的なマングースの駆除を実施
2012(平成24)年:約150~300頭
奄美大島におけるマングースの分布減少
↓
→減少した希少種の生息数が回復
一定区間の林道を車で走行した際に確認されたアマミノクロウサギの個体数
マングース防除事業
平成12年(2000年)より本格的なマングースの駆除を実施
マングースバスターズ
筒わな
カゴわな
探索犬
セアカゴケグモが確認された都道府県(2014年10月31日時点)
- 毒を持ち、咬まれると重篤になる場合もある
(6~10月に被害集中)
◆分布を拡大する外来種 ◆最近侵入が確認された外来種
- 南アメリカ、北アメリカ南部原産
- 琵琶湖南湖では2009(平成21)年に確認され、4年間で面積を100倍以上に拡大
- 在来生物や漁業への影響
- 2014(平成26)年に特定外来生物に指定
ツマアカスズメバチ
- 中国南部、東南・南アジア原産
- 2013(平成25)年長崎県対馬で確認
- 在来スズメバチとの競合、養蜂業への影響懸念
■ 2010年までにセアカゴケグモを確認:19府県
■ 2011年以降にセアカゴケグモを確認:16都県
凡例
- オーストラリア原産
- 2005(平成17)年に特定外来生物に指定
- 輸入物資等に付着して侵入し、国内に分布を拡大
© 上野高敏
セアカゴケグモ オオバナミズキンバイ
侵入発見
定着初期
生息数
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まん延期に防除を開始した場合
分布拡大期
途中で防除を中断した場合
適切な方法で防除を継続した場合
まん延期
定着初期に防除を開始した場合
多
少
1年目 2年目 3年目 10年目 X年目・・・・・・・・・・・・・・
短期間で根絶達成 根絶達成
低密度維持の達成
侵略的外来種を根絶させるまでの防除段階ごとの防除の留意点
費用対効果の高い侵入初期における緊急防除
・オオバナミズキンバイ、ツマアカスズメバチ、ヒアリ 等
世界自然遺産候補地等、わが国の生物多様性保全上重要な地域における防除
・マングース防除(奄美大島・沖縄本島やんばる地域)・オオクチバス防除(ラムサール条約湿地) オオクチバスマングース
全国的に問題となっている外来生物の対策についての情報収集及び共有による地方公共団体支援
・アライグマ、ヌートリア防除
ツマアカスズメバチ
アライグマ ヌートリア
オオバナミズキンバイ
防除に係る環境省の取組方針
© 上野高敏
愛知目標(2010年COP10で採択)
愛知目標(ポスト2010年目標)○中長期目標(自然との共生):2050年までに、生物多様性が評価され、保全され、回復され、そして賢明に利用され、そのことによって生態系サービスが保持され、健全な地球が維持され、全ての人々に不可欠な恩恵が与えられる。
○短期目標 :
2020年までに、生物多様性の損失を止めるために、効果的かつ緊急な行動を実施する。
○20の個別目標:
保護地域を陸域17%、海域10% など
【目標 9 侵略的外来種】2020年までに、侵略的外来種とその定着経路が特定され、優先順位付けられ、優先度の高い種が制御され又は根絶される。また、侵略的外来種の導入と定着経路を管理するための対策が講じられる。
外来種に関する最近の動き
愛知目標個別目標9
2020年までに、侵略的外来種とその定着経路が特定され、優先順位付けられ、優先度の高い種が制御され又は根絶される。また、侵略的外来種の導入又は定着を防止するために定着経路を管理するための対策が講じられる。
外来生物法の施行状況の検討→意見具申「外来生物法の施行状況を踏まえた今後講ずべき必要な措置」
平成22年
平成24年
平成25年
外来生物法の改正 侵略的外来種リスト(仮称)
外来種被害防止行動計画(仮称)
侵略性の高い外来種を選定。定着状況、対策の方向性、利用上の留意事項等についての情報を示す。
外来種対策の中期的な戦略として、国の対策の実施方針、各主体の役割、対策の優先度の考え方等を整理。
平成26年公表予定
改正内容
(1) 外来生物の定義を改め、特定外来生物が交雑して生じた生物も特定外来生物に指定できることとする。
(2) 防除の推進に資する学術研究のための特定外来生物の放出を環境大臣等が許可できることとする。
(3) 輸入物資に付着・混入している特定外来生物の消毒方法の基準を定めるとともに、環境大臣等が輸入者に対し消毒等の措置を命令できることとする。
外来生物法の改正
○平成25年6月に成立→平成26年6月から施行
外来種対策の一層の進展を図るため、国民の生物多様性保全への関心と
知識を高め、適切な行動を呼びかける基礎資料として作成。
生態系、人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼすおそれがあるものを生
態的特性及び社会的状況も踏まえて選定。国内由来の外来種や外来生物法
に基づく規制の対象ではないものも含む。
以下の効果を期待。
侵略的外来種リスト(仮称)の目的
各主体の理解、より積極的な参加・協力の促進
リスト掲載種の利用抑制・適切な管理
防除等の外来種対策の普及・促進(基礎資料)
地方版外来種リストの整備の促進
調査研究、モニタリングの実施の促進
特定外来生物への追加指定
広く国民全般に対して…
産業界など利用主体に対して…
防除等を行う主体に対して…
国、地方公共団体、研究機関等に対して…
国(外来生物法の運用)に対して…
侵略的外来種リスト(仮称)作成手順の流れ
生物学的条件・定着の可能性・被害の甚大性・分布拡大・拡散の可能性
自然環境・社会経済条件・定着・分布拡大/拡散の可能性・保全上重要な地域への影響・人的・経済被害など
侵略性の評価
検討対象:既存の文献などから検討を行う種を抽出 特定外来生物
・海外から導入される外来種(未定着のものを含む)・国内由来の外来種 要注意外来生物
特定外来生物 侵略的外来種 (特定外来生物以外)
400~500種類程度
継続的なリストの見直し・追加
見直し作業
総合的に対策が必要な外来種(総合対策種)
適切な管理が必要な産業上重要な外来種(産業管理外来種)
産業又は公益的役割において重要で、代替性がなく、その利用にあたっては適切な管理を行うことが必要な外来種。
国内に定着が確認されているもので、生態系等への被害のおそれがあるため、分布拡大の防止、野外での防除、遺棄・逸出防止など総合的に対策が必要な外来種。
定着を予防する外来種(定着予防種)
国内に未定着であるが、定着した場合に生態系等への被害のおそれがあるため、導入の予防や水際での監視、野外への逸出・定着の防止、発見した場合の早期防除が必要な外来種。
①対策の方向性によるカテゴリ区分(案)
②定着段階と対応目標の基本的な考え方
我が国における定着段階を記載。
さらに、各主体での対策の検討・実施等の参考となるよう、各定着段階に対応
する対策目標の基本的な考え方を整理。
③特に問題となる地域・環境特に植物については、様々な環境で生息し、問題とならない環境もあることから、
特に問題となる環境・地域を記載。 例)「亜高山帯」「海浜草原」「河川敷」など
④利用上の留意事項
掲載種には種毎に利用状況や利用上の留意事項を記載。
A) 未定着
B) 定着初期/限定分布
C) 分布拡大~まん延期
D) 小笠原・南西諸島
監視と予防による未定着状態の維持
国内からの根絶、分布拡大の阻止
地域的根絶、保全上重要な地域への拡大阻止
現在分布する島での封じ込め又は根絶
2020年までの外来種全般に関する総合戦略
生物多様性の保全等を図るため、外来種対策を社会の中で主流化するため
の基本的な考え方や各主体の外来種問題に対する行動指針を提示。
行動計画の策定により、以下の効果を期待。
行動計画の目的と役割
A) 外来種の取扱いに関する国民全体の認識の向上と各主体による適切
な行動の促進
B) 優先度を踏まえた効果的・効率的な防除の推進
C) 多様な主体の役割分担と連携に基づく広域的な防除の推進
D) 非意図的に導入された外来種や国内由来の外来種の対策の推進
我が国の外来種対策を総合的かつ効果的に推進。
外来種問題の基本認識
行動計画の対象及び目標行動計画の目的及び役割
外来種対策をめぐる主な動向
前文
全体の基盤となる対策●普及啓発・教育、人材育成●優先度を踏まえた対策●情報基盤の構築と調査研究
導入・逸出の防止●意図的導入される外来種の管理●非意図的な導入に対する予防
防除の推進●効果的,効率的な防除の推進
第1章 基本認識と目標
第2章 考え方及び行動指針
第3章 国による具体的な行動
第4章 実施状況の点検と見直し
各主体の役割と行動指針●国、自治体、研究機関、事業者、民間団体、民間団体等
外来種被害防止行動計画(仮称)の構成
地域固有性の保全●国内外来種等への対応
●外来種の認知度の向上
●侵略的外来種リストを踏まえた優先度に基づく対策●分布情報の発信と共有化●効果的な防除手法の開発
●特定外来生物の追加指定●ペットの適正飼養についての普及啓発●産業利用種に係る利用指針の策定●非意図的導入の経路の実態把握
●モニタリングと早期防除●生物多様性の保全上重要地域における重点対策(マングースの根絶等)●防除に係る連携体制の構築(連絡会議の開催等)
●地方版リストの作成促進●遺伝的攪乱に関する事例収集と普及啓発
できることから始める
外来生物被害予防三原則
1.悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない
2.飼っている外来生物を野外に捨てない
3.野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない
外来生物対策は目的達成のための手段!
地域の生態系、動植物、景観・・・
守りたい対象を共有し、外来生物の影響を取り除いていくことが重要
関係情報は「外来生物法ウエブサイト」で!
http://www.env.go.jp/nature/intro/
以下のような情報を掲載中
・特定外来生物の基礎情報・特定外来生物の分布確認地図・特定外来生物の同定マニュアル・特定外来生物の防除マニュアル・外来生物法の手続き方法・各種パンフレット類・過去のシンポジウム記録・環境省が進めている防除に関する概要・実績・防除の確認・認定を受けた案件のリスト