播種性⾎管内凝固症候群(DIC)DICの きな特徴は出...

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関連製剤︓アコアランノイアート シリーズ 播種性⾎管内凝固症候群(DIC) DICのエキスパートに聞く (2019年3⽉取材) 第2回 敗⾎症病態における凝固線溶異常とDIC 北海道⼤学病院救急科 北海道⼤学⼤学院 医学研究院 侵襲制御医学講座 救急医学教室 和⽥ 剛志 先⽣ ― はじめに先⽣のご所属先と教室の特徴について教えてください。 和⽥先⽣︓ 私が所属しているのは、北海道⼤学病院救急科で、救急医学教室として⿇酔科とともに医学研究院侵襲制御医学講座を構成してい る教室です。 教室の特徴としては、当院の集中治療室で重症度が⾼い患者さんを多く受け⼊れ、救急搬送だけでなく、院内病棟からも重症敗⾎ 症の⽅を受け⼊れて、⽇々診療を実施してきました。 敗⾎症の病態は様々で、外科の術後感染や⾻髄移植に伴う感染、通常の免疫ではない⽅、さらに⾎液腫瘍のバックグラウンドをも つ患者さんなど、複雑なケースも少なくありません。多くの患者さんは敗⾎症の重症度が⼤変⾼いため、我々が接触する時点でほ ぼすべてがDICに該当しているという状況です。 「敗⾎症病態における凝固線溶異常とDIC」 ― 敗⾎症ではどのような凝固・線溶系の異常が起こるのでしょうか。 和⽥先⽣︓ ⽣体に感染が起きると、⽣理的反応として細菌の全⾝への播種を予防するため⾎栓が⽣じますが、これは、⽣理的な意味で「免疫 ⾎栓」(Immunothrombosis)という表現が⽤いられます。これが病的な反応(過⼤侵襲)になり、ある⼀線を越えると全⾝性 の虚⾎性病変を引き起こします(図1)図1 免疫⾎栓と敗⾎症性DIC 本来は⽣体防御機構である免疫⾎栓のシステムが制御可能な範囲を超えて拡⼤し、全⾝の微⼩⾎管を閉塞してしまう状態が、敗⾎症性DICの病態基盤であると考えられる。 伊藤隆史.⾎栓と循環.2015;23(2):7-13. 2019年8月掲載(審J1908107)

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関連製剤︓アコアラン、ノイアート

シリーズ

播種性⾎管内凝固症候群(DIC)DICのエキスパートに聞く

(2019年3⽉取材)

第2回 敗⾎症病態における凝固線溶異常とDIC北海道⼤学病院救急科

北海道⼤学⼤学院 医学研究院

侵襲制御医学講座 救急医学教室

和⽥ 剛志 先⽣

― はじめに先⽣のご所属先と教室の特徴について教えてください。

和⽥先⽣︓私が所属しているのは、北海道⼤学病院救急科で、救急医学教室として⿇酔科とともに医学研究院侵襲制御医学講座を構成している教室です。教室の特徴としては、当院の集中治療室で重症度が⾼い患者さんを多く受け⼊れ、救急搬送だけでなく、院内病棟からも重症敗⾎症の⽅を受け⼊れて、⽇々診療を実施してきました。敗⾎症の病態は様々で、外科の術後感染や⾻髄移植に伴う感染、通常の免疫ではない⽅、さらに⾎液腫瘍のバックグラウンドをもつ患者さんなど、複雑なケースも少なくありません。多くの患者さんは敗⾎症の重症度が⼤変⾼いため、我々が接触する時点でほぼすべてがDICに該当しているという状況です。

「敗⾎症病態における凝固線溶異常とDIC」

― 敗⾎症ではどのような凝固・線溶系の異常が起こるのでしょうか。

和⽥先⽣︓⽣体に感染が起きると、⽣理的反応として細菌の全⾝への播種を予防するため⾎栓が⽣じますが、これは、⽣理的な意味で「免疫⾎栓」(Immunothrombosis)という表現が⽤いられます。これが病的な反応(過⼤侵襲)になり、ある⼀線を越えると全⾝性の虚⾎性病変を引き起こします(図1)。

図1 免疫⾎栓と敗⾎症性DIC

本来は⽣体防御機構である免疫⾎栓のシステムが制御可能な範囲を超えて拡⼤し、全⾝の微⼩⾎管を閉塞してしまう状態が、敗⾎症性DICの病態基盤であると考えられる。

伊藤隆史.⾎栓と循環.2015;23(2):7-13.

2019年8月掲載(審J1908107)

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DICは「線溶抑制型DIC」「線溶均衡型DIC」「線溶亢進型DIC」に病型分類されますが、特に敗⾎症には「線溶抑制型DIC」という特徴が多く⾒られます(図2)。凝固亢進により⾎栓が⽣じますが、線溶が抑制されるため⾎栓が溶けず、結果として虚⾎性の臓器障害を引き起こすという病態です。

図2 線溶能によるDICの病型分類

DICの⼤きな特徴は出⾎症状と臓器症状であるが、DICの病型により臨床症状の出現に差がみられる。

DIC 診断基準作成委員会.⾎栓⽌⾎誌 .2009;20:77-113.

― どのような状態になればDICと診断されるのでしょうか。

和⽥先⽣︓DICには診断基準があり、我々は「急性期DIC診断基準」でDICの診断を⾏います。しかしこの基準は、どのような施設においても検査、診断が容易に可能になるようにという点を念頭に置いて作成されているため、実臨床においては真のDICの病態を反映していない部分も散⾒されます。

仮にDICの真の病態を探ろうとするときには、例えば、凝固の亢進であれば、TAT(トロンビン・アンチトロンビン複合体)やSFMC(可溶性フィブリンモノマー複合体)、SF(可溶性フィブリン)などの指標を⾒る必要があります。また、線溶系の評価においては、DダイマーやFDP(フィブリノゲン/フィブリン分解産物)がありますが、これは⾎栓が溶けた結果だけを確認するものになるため、線溶の状態を評価するには、PAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1)やα2PI(アルファ2プラスミンインヒビター)を測る必要があります。しかし、これはどの施設でも容易に測ることができる検査ではなく短時間で結果もでないため、実臨床には直接結びつかないと考えます。

実臨床でのDIC診断において最もわかりやすいのは「⾎⼩板の減少」ですが、敗⾎症患者さんの診察では単に⾎⼩板の減少のみですぐにDICとは診断せず、⾎⼩板減少の病態を念頭に置き、臨床症状が類似しているTMA(thrombotic microangiopathy)などとの鑑別診断をしっかりと⾏う必要があります。この点は近年、学会でも徐々に意識が⾼まってきています。鑑別診断でDICと診断された後の診療においては、凝固の状態や⾎⼩板、バイタルサインを毎⽇繰り返し確認して、病態の改善度を把握することが重要です。

2019年8月掲載(審J1908107)

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― DIC診療のガイドラインについてお聞かせください。

和⽥先⽣︓J-SSCG2016において、関⼼の⾼いアンチトロンビン※1とトロンボモジュリン※2について、前者は弱い推奨、後者はSCARLET試験の結果を待つという表現になりました。

※1 CQ16-3 敗⾎症性DICにアンチトロンビンの補充を⾏うか︖

推奨︓アンチトロンビン活性値が70%以下に低下した敗⾎症性DIC患者に対して、アンチトロンビン補充療法を⾏うことを弱く推奨する(2B)。

※2 CQ16-2 敗⾎症性DICにリコンビナント・トロンボモジュリン投与を⾏うか︖

意⾒︓敗⾎症性DIC患者に対するリコンビナント・トロンボモジュリン製剤について、現時点では明確な推奨を提⽰しない(エキスパートコンセンサス/エビデンスの質

「B」)。

SSCGでのDICの考え⽅の変遷については、後述するように海外ではDICの疾患概念⾃体が浸透しておらず、敗⾎症と凝固障害が⼀体として理解されてきた経緯があります(図3)。しかし、ようやくSSCG2016で、「DIC」という⽤語が初出し、世界的にもDICが認識され始めてきたという印象を受けます。

図3 DIC診断における現在の混乱

海外では様々な専⾨家が様々な⽤語でDICにつながる凝固活性化プロセスを呼称しており、DICの疾患概念が定着してこなかった。

Thachil J. Expert Rev Hematol.2016;9(8):803-814.

― DICの疾患概念における⽇本と欧⽶の違いについて教えてください。

和⽥先⽣︓歴史的に⾒ても、敗⾎症の疾患概念は⽇本も欧⽶も同様で、そこに凝固異常があるということも⽇本と欧⽶は同じです。しかし、欧⽶では凝固異常については特別に治療を⾏う必要はなく、基礎疾患の治療のみ⾏えば問題はないというスタンスです。⼀⽅、⽇本の場合は、DICは敗⾎症に伴う障害で、それは臓器障害と同様であるという理解です。⾎液に異常が⽣じるのであれば、そこをサポートするのは当然という考え⽅で進んできています。

こうした欧⽶の考え⽅の根拠となっていたのは、「敗⾎症における抗凝固療法はRCTで有効とされている治療法ではないので、治療をする必要はない」という考え⽅にありました。また、海外では検査データは取っても、なかなかスコア化をしないという習慣が存在しました。

2019年8月掲載(審J1908107)

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海外で根拠とされているRCTで否定された対象患者⾃体が、実はDICではなかったり、先述したように敗⾎症とDICを⼀体であると理解していて、DICであるか評価すらしなかったために、治療をする必要のない⼈までRCTの対象として組み込んでしまい、抗凝固療法の効果をしっかりと検証できていなかった可能性が⾼いと考えられます。しかしこの数年、治療対象をどのような⼈にすべきなのかという流れに少しずつですが変化しつつあります。

このような背景を受けてDICに関するエビデンスは⽇本発が多く、ようやくDICという疾患概念や診断基準が欧⽶に浸透してきました。これからは診断基準+αの議論が必要になると思います。何らかのDIC診断基準を満たしていて、かつもう少し重症度の⾼い患者さんに抗凝固療法が有効ではないかという報告が出されています(図4)。これが次のステップに繋がるものと考えています。

図4 抗凝固療法の治療対象に関して

2019年8月掲載(審J1908107)

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成⼈敗⾎症患者を対象にDICおよびSOFAスコアに基づき、患者を層別化し、抗凝固薬(AT、rTM、ヘパリン、プロテアーゼ阻害薬等)の治療効果を検討した。

その結果、抗凝固療法は何らかのDIC診断基準を満たしており、かつ重症度の少し⾼い患者群(SOFA score13-17)に有効ではないかと報告されている。

※実線(⾚⾊)は抗凝固薬群の患者、点線(緑⾊)は対照群の患者

※ISTH︓国際⾎栓⽌⾎学会、JAAM︓⽇本救急医学会

 Yamakawa K, et al. Crit Care.2016;20(1):229.

― 敗⾎症で凝固線溶異常が認められれば抗凝固療法をした⽅がいいのでしょうか。

和⽥先⽣︓「凝固線溶異常」というと病的なものと捉えられがちですが、元来、⽣体防御に働く⽣理的な反応なので、敗⾎症軽症の段階で抗凝固療法を施⾏してしまうとむしろ害を与える可能性もあると思います。簡単に⾔えば、細菌を捕捉するために⾎栓が⽣じるのであって、その反応がなくなると細菌が播種してしまう危険性もあります。したがって、軽症例に抗凝固療法を適⽤することは、恐らく良い結果に結びつかないであろうと考えられます。DICに関しても従来は「早く診断して早く治療をする」という流れはありましたが、現在、その考え⽅は適さないとされており、実臨床では免疫⾎栓という概念がよく浸透してきています(図5)。

2019年8月掲載(審J1908107)

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図5 DICに対する抗凝固療法

抗凝固療法の対象はDICであり、敗⾎症軽症の段階で治療介⼊を⾏うと細菌が播種し、⽣体にとって害を与える可能性がある。

 Gando S, et al. Nat Rev Dis Primers. 2016;2:16037.

先述しましたように、実際の臨床現場では急性期DIC診断基準に沿って診断していますが、急性期DIC診断基準のスコア+αの条件が必要ではないかと考えています。何を基準にするかということは、今後、検討する必要があると思います。現在の急性期DIC診断基準では4点以上でDICとしていますが、この基準を作成した際に、4点にするか5点にするかでかなり意⾒が分かれたという背景があります。

従来の診断基準の1つである旧厚⽣省DIC診断基準においてDICと診断された患者は、病期として進⾏しているということが指摘されたため、診断感度を優先させ、旧厚⽣省DIC診断基準との差別化を考慮して4点に設定したとされています。ここで、仮に基準を5点に設定すると、そこで死亡率が上昇し、重症度も⼤きく上がりますので、4点でDICと診断するが、抗凝固療法の治療対象としては、例えば5点以上にするというような実臨床に沿った表現が必要になると思います。私⾃⾝は、5点かつ、SCARLET試験でも基準とされているPT1.4以上に設定する⽅法が良いのではないかと考えています。

他にもDダイマーなど採⽤できる指標はありますが、Dダイマーの場合は他の要因も受ける数値なので最適とは⾔えません。その点PTは他の要因からの影響は少ないと思います。さらに、他の分⼦マーカーを追加することも臓器不全を来している症例においては基準になる可能性があるため、指標に組み込むことも考えられます。しかし、そうした複雑に組み合わせた指標を全世界、あらゆる国で臓器不全のスコアリングとして実施することは実現性が低いため、諸々考え合わせると現在ではPTが適しているように思います。

逆に抗凝固療法を実施しない⽅がいいという患者像を考えると、それはDICではない患者ということになります。感染が起きるということは、どこかで必ず凝固は亢進するのですが、それが⽣理的なのか、病的なのかという判断こそが重要です。我々は実際に⾎栓を⾒ているわけではないので、⽣理的か病的かを間接的に診断する⽅法がDIC診断基準ということになります。つまり「DIC診断基準を満たしていない敗⾎症においては、感染=抗凝固療法ではない」という意識を持つことが重要なポイントになります。

― 治療効果の評価についてはいかがでしょうか。

和⽥先⽣︓アウトカムを28⽇死亡率で測る⽅法は、数年前から⾒直されつつあります。morbidityの改善なしにはmortalityを改善させても仕⽅がないということは納得できます。ですからSOFAスコアやDIC改善率など、それぞれ単独でもアウトカム評価は可能であり、様々なアウトカムの指標と併せて評価する⽅法もあると思います。morbidityと組み合わせたアウトカム評価は、今後、当然施⾏していかなければならないと考えています。さらに、PICSという新しい考え⽅もありますが、慢性期までをカバーする指標はあまり多くはありません。⻑期予後の観点は、今後注⽬していくと⾯⽩いと思います。

2019年8月掲載(審J1908107)

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― 抗凝固療法の中でアンチトロンビン製剤に期待することを教えてください。

和⽥先⽣︓敗⾎症におけるDICということで、我々は凝固障害ばかりに⽬を奪われがちですが、敗⾎症は特に炎症性の臓器障害を引き起こす病態でもあるので、抗炎症作⽤を有するアンチトロンビンが治療の可能性のある選択肢としては有望であると考えています。また、アンチトロンビンは、活性値をモニターしながら、どの程度投与すればどのように変化するかということを測ることが可能な薬なので、ターゲットを決めて処⽅するには適していると⾔えます。ただ、投与には、投与期間、投与量、活性値の⽬標などの点が課題であり、これからも検討が必要です。

― アコアランに対してはいかがですか︖

和⽥先⽣︓薬の処⽅については、先述のように最適な投与量やアンチトロンビン活性値をどこまで上げれば良いかなど明確になっていない部分もありますが、特にアコアランに関して⾔えば、体重換算投与※が可能であるという点で患者さん個⼈個⼈に適した処⽅ができる可能性があり、今後期待できるものと思われます。

※アコアランの⽤法・⽤量〔アンチトロンビン低下を伴う播種性⾎管内凝固症候群(DIC)〕

通常、成⼈には1⽇1回36IU/kg投与する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1⽇量として72IU/kgを超えないこと。

ただし、投与量が増える際には出⾎のリスクなどに注意も必要です。病態の⾯から考えると、敗⾎症に限らず感染がベースにあれば少なからず炎症は起こります。その病態から来る炎症性臓器障害も、敗⾎症が臓器障害を来す原因の⼀つになりますが、敗⾎症の病態が炎症と凝固の密接な関係から成⽴しているという点を考えても、アンチトロンビンやトロンボモジュリンのような炎症と凝固の両⽅に作⽤する薬が有効であることは理解しやすいと思います。

― JSSCG2016のガイドラインにおいてアンチトロンビン製剤は「弱い推奨」とされていますが、「ガイドラインで弱い推奨の薬剤は使⽤しない」という意⾒に対しては、どのようにお考えでしょうか。

和⽥先⽣︓「エビデンスがないからその薬剤は使⽤しない」と⾔うのであれば、当該のエビデンスがどのような経緯で作られているのかをしっかりと把握、理解した上で、治療法を決断すべきではないかと思います。今回のような例は、私からすればいろいろな問題を含んだRCTデザインで実施されているわけですからは、そこには治療されるべき症例も含まれるのではないかと考えます。対象が明確にデザインされた試験を実施した上で、薬剤が効かなかったのであれば仕⽅ないですが、そうではない場合、その結果を基に「治療をする必要がない」と主張することはできないと思います。実臨床における病態把握などから薬効があるに違いないと考えて、治療判断をすべきではないでしょうか。DICについて⾔えば、いまあるエビデンスは⼗分に効果を検証しているとは⾔い難いため、「エビデンスがないから治療しない」ということにはあたらないと思います。「エビデンスがない」ということと「治療する必要がない」ということはあくまでも別の考え⽅です。

当教室では発⾜当初より「⽣命予後が改善されるか」という視点で診療にあたってきました。教室⾃体、⼤変重症度が⾼い症例が多いのですが、そうした条件下においても我々の治療成績は決して悪くないのではないかという⾃負をもっています。

※本⽂内に記載の薬剤をご使⽤の際には、製品添付⽂書をご参照ください。

2019年8月掲載(審J1908107)

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