第8回細胞核と遺伝子発現機構 核酸(ヌクレオチド)hirofun/2011cb08.pdfDNA...

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第8回 細胞核と遺伝子発現機構 関係章:6章~9章 複製 転写 RNAプロセッシング mRNA翻訳 核小体 細胞質 核酸(ヌクレオチド) 塩基 リン酸 五炭糖 リボース デオキシリボース プリン ピリミジン ヌクレオシド・・・塩基+五炭糖 ヌクレオチド・・・塩基+五炭糖+リン酸 付加リン酸は1つとは限らず、3つのも の多い 核酸 デオキシリボ核酸(DNA) ・・・五炭糖がデオキシリボース 自然界のDNAは原則二本鎖 リボ核酸(RNA) ・・・五炭糖がリボース 自然界のRNAは原則一本鎖 教科書p8387 ヌクレオシド(Nucleoside)とヌクレオチド(Nucleotide)の名称 塩基 プリン ピリミジン アデニン Aグアニン G) シトシン C) ウラシル(U) [チミン(T)] ヌクレオシド RNAアデノシン グアノシン シチジン ウリジン DNAデオキシア デノシン デオキシグ アノシン デオキシシ チジン デオキシチミジン ヌクレオチド RNAアデニル酸 グアニル酸 シチジル酸 ウリジル酸 DNAデオキシア デニル酸 デオキシグ アニル酸 デオキシシ チジル酸 デオキシチミジル酸 ヌクレオシド一リン酸 AMP GMP CMP UMP ヌクレオシド二リン酸 ADP GDP CDP UDP ヌクレオシド三リン酸 ATP GTP CTP UTP デオキシヌクレオシド一、 二、三リン酸 AMP教科書p8485 DNA 副溝 ~1.2nm 主溝 2.2nm 直径2nm 1回転の長さ:3.4nm Watson & Crick Nature(1953年)に掲載 された僅か2頁の論文 教科書p8586 1.08nm 水素結合 ホスホジ エステル 結合

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第8回 細胞核と遺伝子発現機構関係章:6章~9章

複製

転写

RNAプロセッシング

mRNA翻訳

核小体

核細胞質

核酸(ヌクレオチド) 塩基

リン酸

五炭糖

リボース

デオキシリボース

プリン

ピリミジン

ヌクレオシド・・・塩基+五炭糖ヌクレオチド・・・塩基+五炭糖+リン酸

付加リン酸は1つとは限らず、3つのもの多い

核酸デオキシリボ核酸(DNA)

・・・五炭糖がデオキシリボース自然界のDNAは原則二本鎖

リボ核酸(RNA)・・・五炭糖がリボース

自然界のRNAは原則一本鎖

教科書p83~87

ヌクレオシド(Nucleoside)とヌクレオチド(Nucleotide)の名称

塩基

プリン ピリミジン

アデニン(A)

グアニン(G)

シトシン(C)

ウラシル(U)[チミン(T)]

ヌクレオシド RNA中 アデノシン グアノシン シチジン ウリジン

DNA中 デオキシアデノシン

デオキシグアノシン

デオキシシチジン

デオキシチミジン

ヌクレオチド RNA中 アデニル酸 グアニル酸 シチジル酸 ウリジル酸

DNA中 デオキシアデニル酸

デオキシグアニル酸

デオキシシチジル酸

デオキシチミジル酸

ヌクレオシド一リン酸 AMP GMP CMP UMPヌクレオシド二リン酸 ADP GDP CDP UDPヌクレオシド三リン酸 ATP GTP CTP UTP

デオキシヌクレオシド一、二、三リン酸

cAMP等教科書p84~85

DNA

副溝~1.2nm

主溝~2.2nm

直径2nm

1回転の長さ:3.4nm

Watson & CrickNature(1953年)に掲載された僅か2頁の論文

教科書p85~86

1.08nm

水素結合

ホスホジエステル

結合

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TATAボックス結合蛋白質(TBP)のC末端領域が、A、T塩基に富むDNA配列の主溝に結合すると二重螺旋を解き、鋭く曲げる。ほとんどの真核動物の遺伝子は転写にTBPが必要。

存在する様々なDNA構造(a) 10.5塩基対で螺旋1巻(b) 11塩基対で螺旋1巻(塩基対螺旋軸に

対して傾く)(c) 左巻き二重螺旋

0.34

nm

pH12以上のアルカリ性や90℃以上の加熱⇒2本鎖DNAは1本鎖に解離1本鎖DNAを2本鎖に戻す⇒再生(renaturation)・・・Hybridizationに応用Hybridization: 多数のDNA(RNA)混合物から特別なDNA(RNA)を検出・単離する技術

すべての真核生物は直鎖状二本鎖DNAを有し、両側に末端が存在する

DNAの螺旋構造 教科書p85

多くの原核生物は閉環状二本鎖DNAを有する。通常、超螺旋構造をしている(下左)が、トポイソメラーゼⅠ(topoisomerase I: DNAに無差別に結合し片側の鎖のホスホジエステル結合を切断)で一方のDNA鎖を切断(nick)するとねじれが弛緩し、環状を呈する(下右)。

トポイソメラーゼⅡ(topoisomerase Ⅱ)は、DNAの二本鎖両方を切断し、その後に再びつなぐ。ねじれのゆがみを解消するとともに、二つの環状DNAをつなぐことができる。

遺伝子と染色体の構造の概要核

間期染色体

クロマチンの高次折りたたみ

30nm繊維

ミトコンドリア

染色体骨格に結合した30nm繊維のループ

糸につながれたビーズ

ヌクレオソーム可動性因子

単純配列DNA

スペーサーDNA

遺伝子ファミリー

イントロン

単一コピー遺伝子

教科書p123真核細胞DNAは、ヒストン(塩基性タンパク質)と強固に結合したヌクレオソーム構造として存在

ヌクレオソームは他のタンパク質と結合し、クロマチン繊維を形成

ヌクレオソーム構造

ヌクレオソームの超螺旋構造

クロマチン繊維

中期染色体

染色体の一部

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教科書p123 DNAの役割

① 種族維持複製(replication)

② 個体維持

転写

翻訳

蛋白質合成

DNA

RNA

アミノ酸

蛋白質

個体を維持するために必要な物質(蛋白質)を生産

蛋白質

DNA

蛋白質

DNA①

②②

遺伝情報の発現(gene expression)

細胞分裂・・・子孫細胞(仲間)をつくる

細胞増殖は細胞の最も基本的な機能

教科書p88

細胞分裂遺伝子は親細胞の中で2倍に複製されてから娘細胞に分裂する

遺伝子とは(定義)・・・

「高分子DNAの中でタンパク質の一次構造(アミノ酸配列)あるいは非翻訳RNAの構造(塩基配列)を決定する情報を持った領域」

真核細胞では遺伝子間の領域が広く、遺伝子は全DNA中にまばらに点在

教科書p89 ゲノム: 細胞あたりに含まれる遺伝子の特異的な配列の1セット原核細胞は一般に一倍体 ・・・ 細胞の全DNA配列がゲノム配列真核生物は一般に二倍体 ・・・ 一倍体相当セットがゲノム配列

染色体ゲノム ・・・ 核内DNA染色体外ゲノム・・・原核細胞のプラスミドDNA、

真核細胞のミトコンドリアDNA・葉緑体DNA

哺乳動物の核ゲノム(2000~4000Mb/一倍体)

アミノ酸指定配列

アミノ酸非指定配列

転写調節配列 イントロン非翻訳配列 リボソームRNA、tRNAなど

偽遺伝子 スペーサー 中頻度から高頻度繰り返し配列

縦列型反復配列

単一と中頻度繰り返し配列

遺伝子DNA 非遺伝子DNA

分散型反復配列

約30% 約70%

約14%約56%

約3% 約27%

Intron

Exon1つの遺伝子

DNA

教科書p90

Exon:蛋白質構造決定領域

図7‐3

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DNAの複製

細胞分裂の前・・・同じDNAのコピーを作る

コピー機の役割をするのがDNAポリメラーゼ

DNAの複製は・・・単位となるデオキシリボヌクレオチドを重合して高分子のDNAにすること

DNAポリメラーゼは、デオキシリボヌクレオチドを重合

教科書p92-93 真核細胞のDNAポリメラーゼ

α β γ δ ε

細胞内区画 核 核 ミトコンドリア 核 核

プライマーゼの結合

あり なし なし なし なし

生物学的機能 ラギング鎖複製

DNA修復 ミトコンドリアDNA修復

リーディング鎖複製

複製

3’エキソヌクレアーゼ活性

なし なし あり あり あり

DNAポリメラーゼの反応は常に5’⇒3’

Ⅰ Ⅱ Ⅲ

構造遺伝子 polA polB polC

生物学的機能 DNA複製、RNAプライマー切断

SOS DNA修復? 複製的伸長

3’エキソヌクレアーゼ活性 あり あり なし

大腸菌のDNAポリメラーゼ

教科書p93

保存的複製 半保存的複製

15N培地中で合成された親鎖

14N培地中での最初の複製

14N培地中での2回目の複製

予想される結果

実際の結果Meselson & Stahlの実験 教科書p94

親DNA二本鎖

複製フォークの進行方向

リーディング鎖

短いRNAプライマー

岡崎フラグメント

ラギング鎖

結合点

複製はラギング鎖で不連続DNAポリメラーゼの反応は常に5’⇒3’ リーディング鎖は連続的に複製

ラギング鎖は岡崎断片が後でつながる不連続複製

DNAポリメラーゼの反応にはプライマー(primer)が必要。

RNAポリメラーゼがRNAプライマーを合成し、その先にDNAポリメラーゼがDNAを複製していく。DNAリガーゼ(DNA ligase)が岡崎断片の隙間(gap)を結合させる。

教科書p94~95

DNA複製時に2本鎖DNAが3本

・・・複製フォーク(Replication fork)

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DNA複製に関わる種々の酵素

ヘリカーゼ・・・親鎖の二本鎖を解くDNAジャイレース(トポイソメラーゼ)・・・DNA鎖切断時に親鎖にたまる歪みを解消一本鎖結合タンパク質・・・ヘリカーゼによって露出した一本鎖を安定化プライマー合成酵素(プライマーゼ)・・・RNAプライマー合成DNAポリメラーゼⅢ・・・DNA鎖延長DNAポリメラーゼⅠ・・・ラギング鎖でRNAプライマーを分解しながらDNA合成DNAリガーゼ・・・ラギング鎖で岡崎断片のDNA同士をつなげる

教科書p96

複製開始の調節大腸菌 ヒト

ヌクレオチド対の数/細胞 3.9 x 106 6 x 109

複製フォークの進行速度(μm/分) 30 3DNA複製速度(ヌクレオチド数/秒/複製フォーク) 850 60-90複製開始点/細胞 1 103-104

ゲノム複製所要時間 0.67 8細胞分裂所要時間 0.33 24

教科書p88

大腸菌DNA合成開始から終了に約40分DNA合成終了後細胞分裂に約20分最良条件下では20分に1回分裂

DNA合成開始から20分後には複製開始点から次のDNA合成開始(マルチフォーク型 Multi fork)

哺乳動物DNA合成すべて終了し、細胞分裂期を経ない限り複製開始点が再度活性化することはない

S期内再複製禁止

一度使用したライセンス因子失活、細胞質内の新たなライセンス因子必要(核膜通過不能・・・核膜消失の必要)

DNAの修復親指指

ポリメラーゼ触媒活性

伸長鎖

鋳型鎖3’→5’エキソヌクレアーゼ部位

教科書p97

DNAポリメラーゼの校正機能

ヒト細胞における複製されたDNAのミスマッチ除去修復

新たに合成された娘鎖

鋳型鎖

MLH1エンドヌクレアーゼ、PMS2

DNAヘリカーゼDNAエキソヌクレアーゼ

DNAポリメラーゼとリガーゼによるギャップの修復

MSH2とMSH6タンパク質複合体がDNAの不適合断片に鋳型と合成された娘鎖を見分けるように結合これが引き金となり、MLH1エンドヌクレアーゼが結合し、PMS2なども結合。DNAヘリカーゼがらせんを解き、娘鎖が切り出される。エキソヌクレアーゼがミスマッチの塩基を含むいくつかのヌクレオチドを除去。ギャップがDNAポリメラーゼδにより埋められ、DNAリガーゼによりふさがれる。

転写

DNA

mRNA

タンパク質

転写

翻訳

セントラルドグマ

教科書p99~TATAボックスやCCAATボックス

ターミネーター

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遺伝子暗号

開始コドン: AUG (メチオニン)終止コドン: UAA、UAG、UGA

開始~終止: 翻訳領域(コード領域)

コドン(codon):1つのアミノ酸を特定する3つの塩基配列4^3個=64種類が20種類のアミノ酸に対応

教科書p99~100

RNAの転写

教科書p100~101

センス鎖のTをUに換えるとmRNA

RNAの種類

• mRNA (messenger RNA)– DNAの持つタンパク質一次構造の遺伝情報を転写してタンパク質合成系に

運ぶ。遺伝子の数だけ存在。細胞内の全RNAの1%以下。

• rRNA (Ribosomal RNA)– 真核細胞では、5S、5.8S、18S、28Sなどの種類があり、多くのタンパク質

とともにリボソームを形成。細胞内の全RNAの約95%。

• tRNA (Transfer RNA)– タンパク質合成の際に、アミノ酸を結合してタンパク質合成の場であるリボ

ソームに運ぶ役割。4S程度のサイズで、種類は40~50種類。細胞内の全RNAの5%程度。それぞれのtRNAは結合するアミノ酸が決まっている。

• snRNA (Small nuclear RNA)– スプライシングの際にイントロンを切除して2つのエキソンをつなぐスプライセ

オソームに含まれている。

mRNA以外のRNAを非翻訳RNA(non-coding RNA)という

教科書p101~102

RNAの役割

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遺伝子の転写• 遺伝子の部分(アミノ酸配列の情報を持つコード領域の前後を

含め、少し長い範囲)だけが転写される。 ⇔ 複製(DNA全体)

• どちらがセンス鎖になるかは遺伝子による。

• 真核生物では少なくとも3種類のRNAポリメラーゼがRNAを合成する。

– Ⅰは主にrRNA合成、ⅡはmRNA合成、ⅢはtRNA合成

• RNAポリメラーゼがDNAに取り付く場所をプロモーター(Promoter)という。

教科書p102~104 転写

TATAボックスやCCAATボックス

ターミネーター

教科書p102~104

真核生物のプロモーター領域・・・TATAボックスやCCAATボックスなど基本転写因子が認識する領域を含む

RNAは5‘⇒3’へ合成されるので、3‘⇒5’に向かうDNAが鋳型

RNA合成終了領域は二本鎖に戻る

転写修了指示するターミネーターとよばれる塩基配列・・・

ターミネーター領域まで合成されたRNAがDNAとの対から離れRNA自身

の中で二本鎖構造(ヘアピン構造)作り、DNAから離脱

原核生物と真核生物の転写の違い

原核生物 真核生物

mRNAプロセシング (Processing)• キャッピング(キャップ形成)

• ポリA付加

• スプライシング

真核生物特異的なmRNAの変化

転写と5’キャップ形成

エンドヌクレアーゼによるポリA部位での切断

終結部位

mR

NA

前駆

体プ

ロセ

シン

一次転写産物のRNA

ポリアデニル酸化

RNAスプライシング

教科書p106~108

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キャップ形成7-メチルグアノシン

5‘→5’結合

塩基1

塩基2

キャップ構造

mRNAの5’端に、5’と5’間にリン酸を介した結合を有する7-メチルグアノシンが付加される

mRNAがタンパク質合成に使われる際に必須の構造で、mRNAはキャップに結合する特殊なタンパク質を介してリボソームと結合する。

原核生物のmRNAはキャップ構造が無いので真核生物の中で働くことは出来ない

教科書p106~107

ポリA付加

• 切断/ポリアデニル酸化特異性因子(CPSF)がPre-mRNAの3‘端近傍のAAUAAAポリAシグナルに結合 ⇒G/Uなどと相互作用しRNAループをつくる ⇒ポリAポリメラーゼ(PAP)の結合により10~35ヌクレオチド下流で切断 ⇒PAPが12個のA残基付加 ⇒この短いポリA尾部にポリA結合タンパク質Ⅱ(PABPⅡ)が結合するとPAPによる付加が加速 ⇒数十から千を超えるA(アデニル酸)が付加 ⇒PABPⅡがPAPに重合を止める信号を送る。

• この合成に鋳型は不用。

• ポリA鎖の存在は、タンパク質合成開始やmRNA分解抑制に必要と考えられている。

教科書p107

RNAスプライシング

2回のエステル転移反応の結果、mRNA前駆体エキソンのスプライシングが起こる。

教科書p107

Intronが除去され、exonが互いにつなぎ合わされる

投げ縄構造

スプライソソーム(Spliceosome)がスプライシングを実行する

スプライシングの際にsnRNAはmRNA前駆体と、またはsnRNAどうしで塩基対を形成する

5種類のスプライシングsnRNAがmRNA前駆体上に集合し、スプライソソームと呼ばれる大きなリボ核タンパク質複合体を形成

教科書p107~108

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翻訳

タンパク質合成

・・・塩基配列をアミノ酸配列に翻訳する過程

教科書p109~

tRNA(転移RNA)の構造教科書p109図9-1

共通CCA-3’配列

アンチコドン

mRNAの翻訳のための2段階の解読過程

アミノアシルtRNA合成酵素: アミノ酸とtRNAを正しい組合せで結合させる酵素

①. アミノアシルtRNA合成酵素が、tRNA末端のアデノシンの2‘ヒドロキシ基または3‘ヒドロキシ基と、tRNAに対応する特定のアミノ酸との間に高エネルギーエステル結合を生じる

②. tRNAの3塩基対(アンチコドン)とアミノ酸を特定するmRNAコドンが塩基対を形成する。

アミノアシルtRNA

教科書p109

原核生物と真核生物のリボソームの一般的構造

リボソームの2/3がRNA、1/3がタンパク質

リボソーム: mRNAと結合し、アミノアシルtRNAとも相互作用しながら、両者を連動させ、かつtRNAとペプチド鎖とのエステル結合を切断し、ペプチドとアミノ酸間でペプチド結合を作る酵素反応を進めながら、タンパク質合成を進行する場

S=標準条件下で遠心した際の粒子の沈降速度(スウィードベリ単位)

教科書p110

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mRNAtRNA(転移RNA)rRNA

翻訳には3種類のRNAが関与

翻訳領域

5’非翻訳領域 3’非翻訳領域

5’ 3’

H2N COOH

mRNAの構造

タンパク質

教科書p111

真核生物の翻訳開始 (その1)

eIF1A

開始因子(Initiation factor)によってリボソームの大小サブユニットが解離。

小サブユニットに三者複合体が結合し、開始前複合体形成

eIFとmRNA複合体が開始前複合体に結合し、開始複合体を形成

教科書p111

真核生物の翻訳開始(その2)

ヘリカーゼ活性のあるeIF4AがATP

加水分解で生じたエネルギーでRNAの二次構造をほどき、mRNA上を読み取って開始コドンを見つけ出す。

40Sサブユニットが開始コドンに位置すると大サブユニット(60S)が会合して80Sリボソームを完成する

教科書p111~112

ペプチド鎖の延長

1.P部位にMet-tRNAがあるところに、GTP型延長因子(elongation factor)を結合したアミノアシルtRNA複合体がA部位に結合。

2.GTP型EF1αのGTPが加水分解され、GDP型EF1αは遊離。アミノアシルtRNAは強くA部位に結合。A部位のアミノアシル化3’末端とP部位のMet-tRNAi

Metの3’末端が近づく。

3.2番目のアミノ酸のα-アミノ基は開始tRNA上の活性

化(アミノアシル化)されたメチオニンと反応し、ペプチド結合を形成(ペプチジル転移反応:大サブユニットrRNAが触媒)。

4.リボソームは1コドン分だけ移動 (トランスロケーション:GTP型EF2のGTP加水分解で放出されるエネルギーで駆動)

一連のアミノアシルtRNAの取り込み

ペプチド結合形成

トランスロケーション(リボソームの1コドン分移動)

教科書p113

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真核生物にける翻訳の終結

新生ポリペプチド鎖を結合したリボソームが終止コドン(UAA、UGA、UAG)に到達

終結因子(release factor)RF1がリボソーム複合体のA部位かその近くにeRF3・GTPとともに入り込む

GTPの加水分解に伴い、P部位のtRNAのペプチド鎖が切断され、tRNAと大小リボソームサブユニットが解離する

教科書p113

ポリソーム(Polysome、またはポリリボソームPolyribosome)

新生ポリペプチド鎖を含んだ複数のリボソームが一本のmRNAに結合したもの・・・同時にタンパク質合成中

教科書p113

タンパク質の高次構造と翻訳後修飾

細胞内でのタンパク質の折りたたみはシャペロン(Chaperone)が促進する。

分子シャペロン: 解けたタンパク質や部分的に巻き戻ったタンパク質に結合し、凝集したり分解されてしまうのを防ぐ。

シャペロニン: タンパク質の折り畳みを直接促進

シャペロン

シャペロニン

アミノ酸残基の化学修飾

リン酸化:セリン、トレオニン、チロシン残基

グリコシル化:アスパラギン、セリン、トレオニン側鎖

ヒドロキシル化:プロリン残基、リジン残基

メチル化:ヒスチジン残基

γカルボキシル化:グルタミン酸

教科書p115

復習問題

1. 二本鎖環状プラスミドの塩基配列決定には、相補的で短い一本鎖オリゴヌクレオチドDNA(プライマー)をプラスミドに結合させる。このため、普通はプラスミドとプライマーを90℃に加熱し、その後、ゆっくりと温度を25℃にする。この方法が上手くいくのは何故か?

2. 原核生物と真核生物のmRNAについて、その合成のされ方と構造にはどんな違いがあるか。

3. mRNAプロセシングは細胞内のどこで起こっていると考えられるか。その根拠は何か。

4. 翻訳に関わるRNAを挙げ、それぞれの役割について簡単に述べよ。