第2章...
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化学I
第2章
原子の電子構造と元素の周期律(3)
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補講の予定
6月18日(金)4限(118M講義室)7月 2日(金)3限(115M講義室)
7月にさらに2回実施
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授業計画
1回 物質観の進歩と自然科学の発展
2回 原子の電子構造-電子,陽子,原子量-
3回 水素原子の電子スペクトル
4回 Bohrの水素原子模型
5回 物質の波動性
6回 量子数
7回 原子の電子配置と周期律表
8回 化学結合 ―イオン結合―
9回化学結合 ―共有結合―
10回 化学結合 ―分子軌道法―
11回 分子の構造―共有結合の方向性―
12回 配位結合
13回 金属結合,多重結合
14回 水素結合
15回 期末試験
原子によるa線の散乱(1)
原子にa線を衝突させる実験は,ラザフォードの指導のもとに,彼の研究室で行われた.ガイガー(ドイツ:
1882-1945)とマースデン(イギリス)は,ラジウムから放出されるa粒子を薄い金属箔にあて,その影響をしらべる実験を行った(1909).
原子によるa線の散乱(2)
ガイガーとマースデンの実験において,金属箔に入射したa粒子の大部分は,箔を通り抜けて直進するけれども,ごく一部は大きな角度の方向へ散乱された.
ラザフォードの有核原子模型
ラザフォード(イギリス:1871-1937)
ガイガーとマースデンの実験結果と,トムソン模型の不成功とを考慮して,原子内のプラス電荷+Zeは原子全体
に広がっているのではなく,かなり狭い範囲に局所的にかたまっていて,そのかたまりとa粒子のプラス電荷とがクーロン(フランス:1736-1806)の斥力で反発しあってa粒子の大角度の散乱が起きると考えた.
原子番号と質量数
原子番号(atomic number):陽子の数(元素によって異なる)(原子番号Z の原子はZe の正電荷をもつ原子核と電気素量e
の電荷をもつ電子がZ 個ある電気的に中性な粒子)
原子番号(原子番号(ZZ)) == 陽子数陽子数 == 電子数電子数
質量数(mass number):原子核に含まれる陽子と中性子の数の和
質量数質量数((AA)) == 陽子数陽子数((ZZ)) ++ 中性子数中性子数((NN))
(注)イオンになると陽子数と電子数は一致しない→イオン(注)同一元素で中性子数が異なる原子が多く存在する→ 同位体
同位体(アイソトープ)
同位体を含めた原子の表記法:
同位体(isotope) :「陽子数と電子数が同じで、中性子の数が異なる原子」
→原子番号が同じで、同じ元素に属しているので、それらの化学的性質(主に外殻電子で決まる)は同じ。
A: 質量数Z: 原子番号(元素記号がわかると決まるので、よく省略される)
E: 元素記号
EA
Z
演習(表記法)
Mn55
25
Co60
27
質量数55のマンガン原子:
質量数60のコバルト原子:
質量数235のウラン原子: U235
92
質量=(陽子+中性子+電子)の質量
2.4 原子量
原子の質量はきわめて小さい(例えば、1H 1個が約1.7×10-27 kg)ので、1 個あたりの重さで議論するのは繁雑。
↓12Cの相対質量を正確に12と定め、これを基準にした各原子の相対質量(原子質量:atomic mass)を絶対質量の代わりに用いる。
統一原子質量単位(atomic mass unit):12C原子1個の質量の1/12(u) = 1.6605402 ×10-27 kg
原子量(atomic weight):同位体の存在比を一定と考え、同位体の原子質量と存在率から求めた各元素の平均の相対質量
炭素の原子量
原子量の計算
例題:炭素の原子量を計算せよ.
表.炭素の同位体の相対原子質量と存在比
核種 相対原子質量 存在比(%)12C 12 98.90
13C 13.003354839 1.10
12011107.12
100
10.1003354839.1390.9812
(12でないことに注意!)
問.同位体の存在率と原子質量よりNa とMg の原子量を求めよ。
Na (23Na:22.9897677, 100 %)
Naの原子量=22.9897677
Mg (24Mg:23.9850423, 78.99 %)(25Mg:24.9858374, 10.00 %)(26Mg:25.9825937, 11.01 %)
Mg の原子量
演習
305.24
100
11.0125.982593710.0024.985837478.9923.9850423
23.9850423
物質量
(原子を1つ1つ数えて取り扱うのは面倒→ ある数の粒子をまとめて議論を進める)
12C原子の12 g中に含まれる原子の数 ≡ アボガドロ数6.02213671023 個 (Avogadro’s number)
この6.021023個の粒子の集まりを1 mol (モル)と定義
→ 原子だけでなく,電子や分子,イオンなどの粒子に対しても用いられる。
授業計画1回 物質観の進歩と自然科学の
発展
2回 原子の電子構造-電子,陽子,原子量-
3回 水素原子の電子スペクトル
4回 Bohrの水素原子模型
5回 物質の波動性
6回 量子数
7回 原子の電子配置と周期律表
8回 化学結合 ―イオン結合―
9回化学結合 ―共有結合―
10回 化学結合 ―分子軌道法―
11回 分子の構造―共有結合の方向性―
12回 配位結合
13回 金属結合,多重結合
14回 水素結合
15回 期末試験
2.5 水素の原子スペクトル
原子・分子のようなナノ(10-9 m)の世界において、
エネルギーは連続ではなく、とびとびの値(量子化)だけが許容
○水素原子のスペクトルの発見
水素ガスを放電管に低圧で封入し、放電すると淡赤色に光る。これをプリズム分光すると、右図のようなとびとびの線スペクトルが観測される。
2.5 水素の原子スペクトル(2)
)5,4,3(
m103647
410
2
2
n
a
an
n
)5,4,3(
m1009677.1
1
2
11~
7
22
n
R
nR
・バルマー(Balmer、スイス):各スペクトル線の波長λが右式
のような簡単な関係式によって、正確に表されることを見出す。
・リュードベリ(Rydberg, スウェーデン)波数(=振動数/光の速度)を用いて、より一般的な式を導く。
水素原子のスペクトル系列の一般化
スペクトル系列 n2 n1 スペクトル領域
Lyman (1906)
Balmer (1885)
Paschen (1906)
Brackett (1922)
Pfund(1924)
1
2
3
4
5
2, 3, 4, · · ·
3, 4, 5, · · ·
4, 5, 6, · · ·
5, 6, 7, · · ·
6, 7, 8, · · ·
紫外部
可視部
赤外部
赤外部
赤外部
2
1
2
2
111~
nnR
古典的な電磁気学による水素の原子スペクトルの理解
2
0
2
2
0
22
4
4
mv
er
r
e
r
mv
電子が核のまわりを回っているとすると、それまでの電磁気学からすれば、光を出せばその分エネルギーが減って、漸次軌道は縮尐していき、スペクトルは連続スペクトルとなり、ついには電子は核まで落ちて、原子はつぶれてしまうはず。
r
e
r
emvE
0
2
0
22
842
1
全エネルギー=運動エネルギー+位置エネルギー
2.6 ボーアの水素原子模型
量子数
)プランク定数(
角運動量
n:
h
nh
nmvr
J 106.6261:
234-
• 古典物理学と量子論の組み合わせ
•定常状態(stationary state)+量子条件
電子の周回運動の軌道(orbit)の半径は,
nm 0529.02
2
2
0
2
nme
hnr
ここで,n=1の場合をボーア半径(a0)という
この値はエネルギー準位と呼ばれる.基底状態(ground state): n=1のとき励起状態(excited state): n=2以上のとき
2.6 ボーアの水素原子模型(2)
量子条件をみたす定常状態のエネルギーは
22
0
2
2
0
2
0
22
8842
1
hn
me
r
e
r
emvEn
2.6 ボーアの水素原子模型(3)
一つの定常状態から他の定常状態に移るとき,その前後のエネルギー差に相当する振動数をもつ光が放射あるいは吸収されると仮定(振動数条件)
2
1
2
2
22
0
2
21
11
8 nnh
meEEh nn
2.6 ボーアの水素原子模型(4)
2
1
2
2
32
0
4 11
8
~
nnch
me
~c振動数νと波数νの関係
この式は,量子数n1の状態から,量子数n2のより安定な状態(n1 > n2)に移るときに放射される光の波数を示している.リュードベリの一般化した実験式と比較すると,
1-7
32
0
4
m 1009737.18
ch
meR
Rの実験値(1.09677×107 m-1)とよく一致