『2nd International Conference on Geotechnique...

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テルの会議室で開催されました。オープニングセレモ ニ ー が 行 わ れ た 後、 チ ャ ー ル ズ 教 授(Hong Kong University of Science and Technology)、原特任教授 ( 岐 阜 大 学 )、 レ イ ハ ン 教 授(University Kebansang Malaysia)からそれぞれ30分ずつキーノートレクチャ ーがありました。大学や公的研究機関の研究者が多い ためでしょうか、土の要素試験(ベンダーエレメント 試験など)やナノレベルでの材料特性といったあまり 馴染みが薄い報告が多かったのですが、杭と補強材を 併用した新工法の耐久性に関する試験といった実務的 で興味深い内容も聴くことができました(写真-1)。 3.会議の様子 先に述べたとおり、個別テーマ(基礎および擁壁、 土の動的特性、軟弱地盤対策、水環境計画、地震津波 対策など)は17と多岐に渡っており、学術的な内容か ら実務に関するものまで幅広く報告されていましたが、 投稿論文ならびに発表者の6割弱が地盤技術によるも のでした。 林主任研究員は『Measurement of Hydraulic Conductivity for Peat Ground Using CPTU(電気式 コーン貫入試験を用いた泥炭地盤の透水係数測定)』 『2nd International Conference on Geotechnique, Construction Materials & Environment』に参加して 橋本  聖 林  宏親 ** 1.はじめに 2012年11月14日から16日までマレーシアの首都クア ラ・ルンプール市において『2nd International Conference on Geotechnique, Construction Materials & Environment』が開催され、寒地地盤チームから 林主任研究員と橋本研究員が参加する機会を得まし た。この会議において研究成果を発表するとともに、 数多くの情報を得ましたので報告します。 2.国際会議の概要 『Geotechnique, Construction Materials & Environment』は『地盤技術・建設材料及び環境』と 訳されますが、会議のトピックは上記の3つ(地盤技 術、建設材料、環境)を主要テーマとして17の個別テ ーマで構成されており、全体的に地盤技術に関する論 文が多い印象でした。この会議は2011年に初めて三重 県津市で開催されて、今回が2回目です。世界26の国 と地域から約150編の論文が掲載されましたが、会議 への参加者約80名のうちイランからの参加者が最も多 く、次いで日本、マレーシアの順でした。会議はクア ラ・ルンプール市中心部にあるイスタナ(ISTANA)ホ 写真-1 キーノートレクチャー 写真-2 林主任研究員の発表の様子 報 告 寒地土木研究所月報 №720 2013年5月 37

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Page 1: 『2nd International Conference on Geotechnique ...良形式に関する効果)』と題して発表しました(写真- 3)。盛土の安定対策としてセメントによる地盤改良

テルの会議室で開催されました。オープニングセレモニーが行われた後、チャールズ教授(Hong Kong University of Science and Technology)、原特任教授

(岐阜大学)、レイハン教授(University Kebansang Malaysia)からそれぞれ30分ずつキーノートレクチャーがありました。大学や公的研究機関の研究者が多いためでしょうか、土の要素試験(ベンダーエレメント試験など)やナノレベルでの材料特性といったあまり馴染みが薄い報告が多かったのですが、杭と補強材を併用した新工法の耐久性に関する試験といった実務的で興味深い内容も聴くことができました(写真-1)。

3.会議の様子

 先に述べたとおり、個別テーマ(基礎および擁壁、土の動的特性、軟弱地盤対策、水環境計画、地震津波対策など)は17と多岐に渡っており、学術的な内容から実務に関するものまで幅広く報告されていましたが、投稿論文ならびに発表者の6割弱が地盤技術によるものでした。 林主任研究員は『Measurement of Hydraulic Conductivity for Peat Ground Using CPTU(電気式コーン貫入試験を用いた泥炭地盤の透水係数測定)』

『2nd International Conference on Geotechnique, Construction Materials & Environment』に参加して

橋本  聖* 林  宏親**

1.はじめに

 2012年11月14日から16日までマレーシアの首都クアラ・ ル ン プ ー ル 市 に お い て『2nd International Conference on Geotechnique, Construction Materials & Environment』が開催され、寒地地盤チームから林主任研究員と橋本研究員が参加する機会を得ました。この会議において研究成果を発表するとともに、数多くの情報を得ましたので報告します。

2.国際会議の概要

 『Geotechnique, Construct ion Materia ls & Environment』は『地盤技術・建設材料及び環境』と訳されますが、会議のトピックは上記の3つ(地盤技術、建設材料、環境)を主要テーマとして17の個別テーマで構成されており、全体的に地盤技術に関する論文が多い印象でした。この会議は2011年に初めて三重県津市で開催されて、今回が2回目です。世界26の国と地域から約150編の論文が掲載されましたが、会議への参加者約80名のうちイランからの参加者が最も多く、次いで日本、マレーシアの順でした。会議はクアラ・ルンプール市中心部にあるイスタナ(ISTANA)ホ

写真-1 キーノートレクチャー 写真-2 林主任研究員の発表の様子

報 告

寒地土木研究所月報 №720 2013年5月 37

Page 2: 『2nd International Conference on Geotechnique ...良形式に関する効果)』と題して発表しました(写真- 3)。盛土の安定対策としてセメントによる地盤改良

良形式に関する効果)』と題して発表しました(写真-

3)。盛土の安定対策としてセメントによる地盤改良を実施する際、支持地盤まで改良体を構築しない改良形式の効果について整理したものです。発表後、マレーシアの大学教授から日本で実施しているセメント改良による対策工法の質問があり、最近、使用実績が多い対策工法について回答しました。

4.トロピカルピート

  マレーシアでも木質遺骸による泥炭(トロピカルピートと呼ばれる)が広く分布しているそうです。会議では、マレーシアの学生がトロピカルピートの強度特性に関する発表を行っていました。結論からいえば、冷涼な地域(北海道)に分布している北海道の泥炭と大差ないという印象でした。寒地地盤チームでは『泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル』を発刊し、主に北海道内の道路盛土の設計などで活用されていますが、以前、日本のある大学教授から依頼されて、そのベースとなる文献の英訳版(能登元理事著)を日本に留学経験のあるマレーシア人(マレーシア勤務)に送付したことがありました。発表を聴いたあと、なぜ、寒地土木研究所で実施した泥炭研究の成果が、マレーシアで必要なのかを理解したとともに、北海道のみならず海外の技術者にも貢献していることを大いに感じました。

写真-3 橋本研究員の発表の様子

と題して発表しました(写真-2)。特殊土である泥炭地盤における透水係数の評価法に新しい地盤調査技術を応用した事例報告です。発表に対して、カナダの大学関係者とマレーシアの技術者から透水係数の異方性や圧密圧力依存性など、泥炭地盤において重要なファクターについて質問がありました。これに対して、寒地地盤チームがこれまで行ってきた研究成果に基づいて、泥炭地盤の特殊な性質とその評価法について回答しました。  橋 本 研 究 員 は『Consideration Concerning Reasonable Modif ied Form of Floating-type Improved Ground(浮き型式地盤改良の合理的な改

橋本 聖*

HASHIMOTO Hijiri

寒地土木研究所寒地基礎研究グループ寒地地盤チーム研究員技術士(建設)

林 宏親**

HAYASHI Hirochika

寒地土木研究所寒地基礎研究グループ寒地地盤チーム主任研究員博士(工学)技術士(建設・総合)APEC エンジニア(Civil)

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