ナラティヴ・セラピー会話術入門2015年12月
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ナラティヴ・セラピーの会話術入門
開催日: 12 月 19 日(土)・ 20 日(日)
ナラティヴ・セラピーとは
アリス・モーガン
「ナラティヴ・セラピーは、カウンセリングやコミュニティワークのなかで、敬意を示し、非難しないアプローチを実践し、それによって人々をその人生の専門家として中心に据えていくのだ」( Morgan, p.2 )
ワイカト大学のチーム
「ナラティヴ・アプローチの実践とは,相手に敬意を払いつつカウンセリングをしていくということである。その意味するところは,カウンセリングの過程においてクライアントの持つ力を弱めることなく、クライアントの人生の構築を促進するということである」( Drewrey & Winslade, 1997 )
人を問題の主たる責任者であると位置づけることを拒絶し、ものごとの「本当の真実」は存在せず、ただそのことを語るストーリーが存在するという立場を取ること、そして、その人自身に自分の人生を生き抜いていくことのできる資質、資源、能力が必ずや存在しているという仮説を持っていることなどがあげられるでしょう。つまり、その人には必ずや希望があるのだという信念を持っていること、と言ってもいいでしょう(国重 , 2013 )
「名」の話
「名」から想像できること
• 精神分析療法、行動療法、認知療法、クライアント中心療法• うつ病、人格障害、発達障害• 津波被害・放射能被害・ PTSD• 母子家庭・父子家庭• 無職・ひきこもり• どもり・吃音
「名」の役割
• 「名」は、「そのこと」を想像させてくれると同時に、「そのこと」を限定していく。• 人は、「そのこと」をその歴史
や変遷から理解するのではなく、その「名」から「そのこと」が何であるかを作り出す。
ナラティヴ外在化脱構築再著述
文章化
マッピング
ストーリーポストモダニズム
社会構成主義
物語療法・語り療法
ナラティヴ・セラピー
質問技法
「ナラティヴとは何か」は、「名」から作られる
「ナラティヴ」から想像できるもの(語り、物語、ストーリー、お話)を、自分の文脈にあてはめ、そこから意味を作り出していく。
「ナラティヴ」という用語
「『ナラティヴ』という用語に、私たちは完全に満足しているわけではない。このアプローチは確かに物語を語るという概念を見事に使用しているが、単にそれだけのことではないからだ」
( Drewrey & Winslade, 1997 )
ウィトゲンシュタイン 「青色本」
「一般的なるものへの渇望」と言う代わりに、私は、「個別ケースへの軽蔑的態度」と言うこともできた。
“ ひとくくりにする描写”
一言で要約され、分かったような気持ちにさせられるもの。ナラティヴの用語で「薄い描写」対をなす用語は「豊かな描写」
何かに名を与えることが、それを実物にするわけではない
名称を持つものは実体であり存在物であり、それ独自の存在を持つものであると信じる傾向はつねに強い。そして、その名称に対応する実在が見つからない場合、そこには何も存在していないのだが、それは何か特別に難解で神秘的なものなのだ、と想像をめぐらしてきたのだ。
ジョン・スチュアート・ミル( 1869 )
私たちの「想像力」という問題
• 容易に想像できることとは?• 一般的な表現で括られる状態は、容易に思い浮
かべることができる。• たとえば、「つらい」「苦しい」「悲しい」• このような描写から、私たちは、その人たちの内面が、「常にそのようである」と、想像してしまうのである。
• 簡単な描写から「物語全編」想像できてしまうのである。
大震災後の緊急派遣カウンセラーとして1
想像できることとは?• 地震被害を受けることとは、津波を見ることと
は、崩壊した町を見るとは、大切な人を失うとは、いったいどのようなことなのか?
• みなさんが想像できることは、たぶん一般論としては「間違っていない」。ところが、自分の目の前にいる人、その人が、一般論と同じように感じている保証はどこにもないのである。
• 一般論を持って望む態度は、残念なことに、その人の声を奪っていく。
学校の様子(私の日記から) 生徒たちは、不思議なぐらい「普通に近い」状態でいます。教員に、授業中における変化を尋ねていますが、極端な変化を感じないということでした。実際には、家を完全に失った人、保護者を失った人、肉親を失った人、親が職を失った人がたくさんいて、このような話をいたるところで聞くことができます。 子どもたちは周りに非常に気を遣っているので、普通通りに振る舞っているのではないかということです。これについては、何人かの生徒と話をしましたが、「私はまだよかった」という、周りと「比較」して自分の体験を位置づけようとしている生徒がいました。つまり、まだ良かったので、そんなに嘆き悲しんでいる場合ではないということにつながるのだと思います。 また、子どもたちの反応として、「普通」にすること以外、振る舞いようがないのだろうとも考えたりしています。学校に来て、「普通」や「平常」を感じ、そのように行動していくこと自体は大切なこととして感じられます。
想像したものが見えないとき
• その想像したものがないとは、考えられないため、一所懸命「目的の現象を探そうとする。
• あるいは、「そのように語りかけていく」。「辛かったね」、「苦しかったね」と。自分の想像したものを確認するために。
• 専門家・メディアなどは、「目的の現象」を見つけようと努力していた。
「問題」を存続させるもの問題の解決を検討する前に、どうして問題が存在し、存続できるのか、考えてみよう
普遍的な問題はない•普遍的(意味:あまねくゆき
わたること。すべてのものに共通に存すること)• 問題は、時代、場所、文化、
言語によって違った様相を見せる。
問題を問題として認識し、存続させる
• 問題は、問題として認識されて問題となる• 問題は、問題として語られて存続する• 問題は、それを解決するように取り組むこと
で、目前の問題として居座る(たとえば、「不登校」に対して「登校」。「どもり」に対して「流暢性」)
関係性の中で生じ、維持される問題(不登校支援・ひきこもり支援)
「クヨクヨすること」(反社会学の不埒な研究報告)
• クヨクヨとは「気に病んでも仕方のないことに心を悩ますさま(広辞苑)」
パオロ・マッツァリーノ
リチャード・カールソンの「小さいことにくよくよするな !― しょせん、すべては小さなこと」が1999年に翻訳が出版される
「カールソンさんは、自分はくよくよしている人たちを救っているつもりなのでしょうが、現実は逆なのです。くよくよしないための百のヒントとは、裏を返せば、くよくよするためのシチュエーションを百個紹介してしまっているのと同じことです…この本のキャッチフレースが 「しょせん、すべては小さなこと」って、 だったら黙っててくれればいいのに」
みなさんが遭遇する問題とは?
• それでは、みなさんがクライアントと取り組む「問題」はどうだろうか?
• 何がその問題を支え、どのような語りが繰り返されているのだろうか?
• その問題のあり方を変えるためにはどのような語り方ができるのだろうか?
「不登校」という舞台の上演登場人物: 生徒、親、教員、他の生徒不登校の原因はどこにあるのか?どのようにしたら子どもは学校に行けるのだろうか?
「文脈」の話1 文章の流れの中にある意味内容のつながりぐあい。多くは、文と文の論理的関係、語と語の意味的関連の中にある。文章の筋道。文の脈絡。コンテクスト。「―で語の意味も変わる」「―をたどる」2 一般に、物事の筋道。また、物事の背景。「政治改革の―でながめると」(デジタル大辞泉)
言語における言葉の中立的、辞書的定義は、言葉の共通した特徴を確定し、その言語の話し手すべてがそれぞれ理解し合うことを保証するが、生きた対話のコミュニケーションにおける言葉の使用は、本質的に、常に個人的で文脈的なものである…言葉は何かを表現するが、その表現された何かはその言葉に内在するものではない( Bakhtin, 1986, p.88 )。
語りに影響を与える文脈• ものごとを語るときに、私たちはその場
の文脈を無視して、語ることができない。• その文脈は、私たちが使用できる言葉を
限定し、私たちの語りを形づくる。–好きな色は? Yes or No?
• 相手の語りを変えるということは、異なる文脈に招き入れるということである。–使用できる言葉の変更に伴い、語る言葉も変更される (ビデオを参照)
質問形式によって• 私たちの質問形式によって、相手が答えるられ
る内容が制限される。• 「大変だったね?」は、質問と呼べるのか?• 「はい」としか言えない、気持ちになる。否定
するのは相手に失礼だと思うから、相手を戸惑わせると思うから。あるいは、「いいえ」と言っても分かってもらえないと、分かっているから?
• 「はい」と聞いた人は、どのようにそのことを周りに伝えるだろうか?
東北大震災後の緊急派遣カウンセラーとして2
自由に語れない• それは、他者への配慮であり、自分の特殊性に
対する心配である。• 自分よりも、状況が悪いと比較し、判断すると
き、「自分のことは、それほどでもないし、不平不満をいう価値もない」と感じてしまうのである。そして、もっとも恐れるのは、自分の発言が、ほかの被災者を傷つけるかもしれないということである。
• 自分は、「津波を見たことには反応していない」でも、周りが気にしていないようにみえる「サイレンの音」に拒否反応が出ているとき、言えないという気持ちになる。
メディアも自由に語れない
外在化する会話法
自分の言葉と行動だけど、どこまで自分のものだろう?(なぜ外在化なのか?)
「好きで○○していない」「○○はやめようと思うん
だけど…」「私に○○させないで」
• その人は好きで、その行為をしているとは感じていない。
その言葉は誰のもの?• あなたはどうしてそのように語るのだろ
うか?–「お元気ですか?」–「おいしいですね」–「お世話になりました」–「たいへん勉強になりました」
• 自分が話していることは、自分の気持ちをしっかり反映しているのだろうか?
「 It’s a show time 」(さあ、ショーが始まる)
• 自分役を演じて、私たちは社会生活をおくっていると考えることはできないだろうか? 教師の役、親の役、サラリーマンの役、カウンセラーの役
• その場面に応じて、たいへん上手に、何の違和感もなく、役を切り替えている。
再生産• 社会で認められた言葉を繰り返すこと(声明文の提示。会話を続けるように作用しない)–「ゆっくりしてくださいね」「頑張っていますね」「辛いでしょうね」
• たとえば、 PTSD 、傾聴
• 再生産の延長上に、問題を維持するシステムがあるのではないだろうか?
そこから必然的に導かれる質問の形式は、
「何が、あなたに○○をさせているのですか?」
→ 外在化する会話法
相手に文脈を提供する相手にどの立場(役割)から語って欲しいのだろうか?
クライアントという立場
• 相談や悩み、苦しみを持ってこないといけない立場。
• そして、それを誰かに手伝ってもらわなければ、自分ではどうしようもないという立場。
• この立場からある種の話し方が誘導されていく。
クライアント以外の立場とは?
• その人が、自身の人生についてもっとも知っているという立場
• その人が、自分の子どものことについてもっとも知っているという立場
• その人が、今まで試行錯誤しながら、七転び八起きしながら、何とか試練を乗り越えてきたという立場
震災被災後の語り
• 緊急派遣カウンセラーのとしての勤務から
• 「被災者」という立場の語りではなかった。被災者は、外の者が被災者と定義付け際に使った用語である。
• 話をしてくれてた物語のジャンルとは
物語の構造
起承転結• 時系列に並んでいる• 結論に関係のない話(余分な話)は省かれる• 原因は、結論に向かって探しもとめられる
(現在から過去へ)• 特定の原因は、未来を予測する(過去から未来へ)
• 起こらなかった結末は語られない(このようなストーリーがユニークな結末へとつながる)
出来事・説明・描写・予測・流布
• (出来事)何が起こったのか• (説明)どのようにして起こったのか• (描写)起こったことはどういうことな
のか• (予測)それが起こったとなれば、将来
どのような可能性が生じるのか• (流布)理路整然とした話が人に伝わっ
ていく
物語は将来を予測していく
• 自分の自己イメージを変えることの難しさ → 物語が持つ推進力の強さ•常に、同じように語ることに
よって、このイメージは定着していく
ナラティヴ・セラピーの進め方
相手を位置づける
• はじめにききたいのですが……私のような者に今、この時期に会いに来たというのは,どういうことなのでしょうか?( Madigan )
• どのような話をしたいのかお聞きしてもよろしいでしょうか?
• そのことについてもっと詳しく教えてもらってもよろしいでしょうか?
影響相対化質問法(前半)
• その問題が、あなたの人生にあたえている影響を教えてください。
• そのことは、あなたをどうしてしまうのですか?
• そのことは、友だちとの関係にどのように作用しているのですか?
「問題からの影響のマッピング(描写)」脱構築
問題「問題からの影響」問題がその人にさせてしまうこと問題がその人に人間関係の影響を及ぼしていること問題が及ぼしている期間問題が及ぼしている領域問題がここまで大きくなってきた変遷問題が問題であることを助けているもの
文脈から理解する
• その問題は、この社会でどうしてそんなに大きな問題となっているのでしょうか?
• 誰が、それが問題だといっているのですか?
• そのことに何か反論したいことはありませんか?
影響相対化質問法(後半)
• 「あなたが、その問題の人生にあたえている影響を教えてください」
• その問題があるにもかかわらず、自分らしさを失っていないところはどこでしょうか?
• それにもかかわらず、友だちとどのようにやってきたのですか?
「問題への影響のマッピング(描写)」再著述する会話
問題「問題に対する影響」その人が問題に対して与えている影響問題を弱体化する方策問題を大きくしないための抵抗問題が問題として存在するのを助けているものに対抗するその人が問題に抵抗するのを助けてくれるものや人(コミュニティの形成)
デモンストレーション• 一対一の会話(インタビュー)• そのインタビューをめぐるグループ
の会話(その人の話がどのように自分の個人的な体験に呼応したのか?)
• 他の人が自分の体験談について語るのを聞いて、自分が呼応したこと(インタビュー)
ワーク「会話を続けよう」• 二人ひと組になります。• 一人がインタビューワーとなり、 20 分間、あ
るテーマについていろいろと尋ねていきます。• 次に、役割を変えて同じ取り組みをします。• このワークの目的は、「人の話に好奇心を示
すこと」「質問という形式での問いかけを続けること」「話の細部にも注意を向けること」「好奇心を持って聞いてもらえることはどのようなことなのか感じること」です。
話を聞くときの三つの次元
• 長さ• 深さ• 広がり
[email protected]://www.facebook.com/groups/narrativejp/
アイデンティティアイデンティティとは、 「人格における同一性。ある人の一貫性が成り立ち、それが時間的・空間的に他者や共同体にも認められていること。自己同一性。同一性。主体性。(広辞苑)」
アイデンティティをひとくくりにする描写
(名)• 診断名、職業名、母子(父子)家庭、同性愛
• その描写(名)は、誰が考案したものだろうか? その描写(名)を人に与える特権は誰が有しているのだろうか?
• 私が誰であるかについては、文化的および社会的な文脈に影響を受ける。
<私>は、私を越えて定義され、語られる。自己肯定感、自尊心、自信、セルフエスティーム「連れ合い」「旦那・主人」「職業名」「所属先」「人種」「宿命・運命」
私自身よりも、<私>を描写する権威を有するもの
• 専門家 — 人のことを描写する権限を有するもの。(診断名・ファイルシステム)–統合失調症に対する最近の動向
• メディア
ナラティヴの質問の形式
質問するセラピー• ナラティヴ・セラピーでは、セラピストから
の語りは、かなりの割合で「質問形式」を取る。• 質問形式では、相手の発言を促すことができる。• 質問形式ではないとすれば、それは声明文と
なってしまう。声明文が提示されるとき、それは、会話の途切れとなってしまう。その途切れを再開するのは、新たな質問あるいは、相手からの自発的な語りを待つことになる。
質問に答えることによって1
• その人は、自分自身を作り上げていく(パフォーマティヴ。演じていくこと)–自分が何をしたいのか–自分が何を望んでいるのか–自分はどのような人物なのか
• 「あなたの好きな色は何ですか?」• 「あなたは今日何を食べたいですか?」
質問に答えることによって2
• 自分の考えを、相手に伝えることによって、聞くのである。
• それは、まさしく自分の口から出てきたものではあるが、語られないとすれば、それは気づくことにはつながらない。
• そのような語りを促すために、質問は続けられていく
質問の方向性
• 質問が、その人の欠点や過失に焦点を当て続けられることはない。• 逆に、質問は、その人が語る機会
の少ない、その人の資質や他者との関係性について、語るように促していくのである。
ナラティヴ・セラピーの語りとは
その問題がその人に影響を及ぼしていない領域(ユニークな結果)を手がかりに、その領域はどのようなものか(ユニークな説明)、その領域はどのような意味を持つのか(ユニークな再描写)を求めていく。そして、その領域を維持、拡大することによってどのような可能性があるのか(ユニークな可能性)を探る。そして、そのことに対して、他の人の貢献を求めていく(ユニークな流布)
トム・アンデルセンハリー・グリーシャンがとても熱心に言っていたことだが、「僕らは、自分が考えていることを言ってみないことには、それが何かわからない」ということだ。彼は言った。「考えることを見つけるためには、話し続けなければならない」。表現が先で、それから意味が生じる。
出来る限りオープンな質問もう少し教えてくださいもう少しそのことを話せますか?それってどういうことなんですか?
相手の話の歴史に興味を示す○○は、いつからのことなのでしょうか?
相手が伝えようとしている程度を確認するそれはどの程度のことなのか、もう少し教えて下さい。その程度がわかるような話はありませんか?
伝えようとしていることの意味を確認するそれは、どのような意味なんですか?それは、どれほど重要な事なんですか?
何が語られていないのか私は、そのことについてすべて聞いたのでしょうか?
語られていないもの• 語られていないことがある。• 語られたことからでしか、私た
ちは相手を理解できない。• 何が語られたのかだけでなく、
どのようなことがまだ語られていないのだろうかに興味を示す。
好奇心・関心
•相手の話に興味と関心を示す。•相手の話の細部・詳細をしっかりと聞く。
外在化する会話
文法的な側面からみる外在化
• 「私が」悪い。• 「私が」もっとしっかりしていたら。
• 「何が」あなたにそれをさせているのでしょうか?
• 「どのような状況が」その問題を悪化させているのでしょうか?
比喩的な側面からみる外在化
• 「うつ」は誰の力をかりているのでしょうか?
• 「うつ」は何を味方につけているのか分かりますか?
• 「うつ」が嫌がることを一緒に考えてみませんか?
• 「うつ」を弱体化させるのに協力してくれるのは誰でしょうか?
外在化された問題との関係をめぐる会話
• 「リスカ」と今後どのようにつきあっていきたいのでしょうか?
• 「リスカ」がいろいろなことを要求してきたときに、どのようにして断ることができるのでしょうか?
• 「リスカ」との適切な距離感というものはあるのでしょうか?
ワーク(どのように質問するのか)
• 4〜 5 名のグループになる。• 一名がクライエント役で、比較的分かりやすい
「問題の名」の元で、ロールプレイを行う。• 残りの人たちは、一緒になって、質問を考え、ク
ライエントに質問する。• クライエントの答えをもらったら、また一緒に
なって外在化する質問の形式の返答を考える。そして、次の質問を考えていく。
• そのやりとりを記録し、それぞれの質問がどのように相手に伝わったのかを確認していく。
脱構築
脱構築する会話
• これはどのようにして成し遂げるのかというと、まずは、「隠された意味,隙間や割れ目,矛盾する物語の存在などに耳を澄ませる」( Monk, et, al., 1997 )のです。それは、その言葉がその意味を持つためには、それが意味しないものを識別できなくてはならないからです( Derrida, 1978 )。
脱構築する会話
「私は母親失格ですね」と言うとき、「よい母親像」または「合格点が与えられている母親」がその陰に存在しているということでもあります。私たちは、いろいろなモデルを想定し、自分と比較し、自分を判断しているのです。「母親として失格である」というストーリーを前にして、どのような事柄から「母親として失格である」という判断をしているのかという点を理解していく(中略)そのような判断基準がどこから来ているのか、どのように成立するようになったのか、または、その判断基準は「誰のためのものなのか」ということを明らかにするようにします。
脱構築する会話
「当たり前」や「当然」とする考え方に疑問を呈していく姿勢をナラティヴ・セラピーでは持つことになります。このような考え方は、「真実」ではなく、社会的に構築されたものだからです。よって、構築されたものは「解体」することもできるはずです。当たり前、当然とする考え方の特徴は、それが例外のないものであると、私たちに迫ってくる点にあります。この社会のどの領域にも適応されるものであるという「思い込み」をもたらします。ことが重要視されたのかということを見ていくのです。
再著述する会話
二つの風景
• 行為の風景とアイデンティティの風景• 物語は、「何が起こったのか」という側面と、「それは何を意味しているのか」という側面の二つで物語が構成されているという考え方があります。前者を「行為の風景」、後者を「アイデンティティの風景」と呼ぶことにします。
二つの風景を紡ぐ会話
• 「いったいどんなことをされたのでしょうか?」(行為)
• 「その取り組みは、あなたにとってどのような意義があったのかと思いますか?」(アイデンティティ)
• 「同じような取り組みを他の状況でされたことはありませんか?」(行為)・・・(続く)
他者の貢献
•リ・メンバリングする会話•定義的祝祭
コミュニティの大切さ
• バフチンによれば、自分自身を知るのは、他者の目を通じて自身を見ることによってのみ可能なことなのである。私は、他者の目を通じて私自身を見る( Bakhtin, 1990) 。バフチンの考えでは、私たちが、存在している人として自分自身を見たければ、鏡に映った自分を見る際に、他者の目を借りるしかないのだ。Seikkula, J (2008). Inner and outer voices in the present moment of family and network therapy. “Journal of Family Therapy, 30: 478–491
他者の視線を組み込む質問
• あなたがその事ができるようになって、いちばん驚かない人は誰でしょうか?
• このことを、○○さんが見たら、なんと言うでしょうか?
• 同じような取り組みをしている人が他にもいるとすれば、その取り組みをどのように思いますか? また、どのような声かけをしてあげたいでしょうか?
他者への貢献を組み込む質問
• あなたは、○○さんにとって、どのような存在だったのでしょうか?
• その取り組みは、○○さんにとって、どのような影響があるでしょうか?
• あなたの思いや希望を○○さんが知るとすれば、どのような気持ちになるのでしょうか?
ワーク(問題に対する影響力を探る)
• 4〜 5 名のグループになる。• 一名がクライエント役で、比較的分かりやすい「問題
の名」の元で、ロールプレイを行う。• 残りの人たちは、一緒になって、質問を考え、クライエントに質問する。
• 今回の質問するポイントは、どのようにしてその問題を回避してきたのか、その問題に対抗しようとしてきたのかを十分に語ってもらう。
• 何をしたのか、どうしたかったのか、誰が助けとなったのか、何が助けとなったのか、どのように自分を維持していったのか、など。
『「人が問題ではなく、問題が問題なのだ。そして…その解決は単に個人的なものではない」。ひとたび問題が外在化されると(それ故に、社会的な領域におかれると)、解決策はただ単に個人に返されるのではなく、その代わりに、共同的な貢献への機会がつくられ、「社会的運動」的な貢献への機会が提供され ることにつながる、このことに私は興味を持つのだ。』デンボロウ , 2008
• 「私たち(セラピスト)の役割は、近代的権力のうっかりした共犯者になることなのか? それとも、日常生活の多様性を提供することなのだろうか?
• 私たちの役割は、ひとつのストーリーに収束する人生観を促進することなのだろうか? それとも、人生のオルタナティヴ・ストーリーという感覚における複雑性を生み出すことなのだろうか?
• 面接室は、既知の身近なことを確認する文脈なのか? それとも、知り得そうなことに到着する文脈なのだろうか?
• それは、見知らぬ異国のものを慣れ親しんだものにする文脈なのか? それとも、慣れ親しんだものを「見知らぬ異国のものにする」文脈なのだろうか?」マイケル・ホワイト「ナラティヴ・プラクティス」