造影剤の現状 ―X線造影剤を中心に― 第1号 2016 94(94) 1. X線造影剤...

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日獨医報 第61巻 第 1 号 93-118(2016) 93(93) イオパミロン発売30周年 特別寄稿 造影剤の現状 ―X線造影剤を中心に― 早川 克己 1) ,鳴海 善文 2) ,桑鶴 良平 3) ,林  宏光 4) 岩手県立釜石病院 放射線科 1,大阪医科大学 放射線医学教室 2順天堂大学 放射線医学教室 3,日本医科大学 放射線医学 4はじめに 本格的な非イオン性X線造影剤が国内に臨床導入され 30年が経過し、画像診断やIVRinterventional radiol- ogy:画像下治療)で日常的に使用されている。現在使用 されている非イオン性X線造影剤は安全性が大きく向上 し、すでにその臨床的有用性は確立しているが、発現頻 度は低いものの一定頻度で重篤な副作用発現が報告され ている。また、近年でも造影剤の誤投与の事例があり、 安全な造影検査を行う上で、造影剤の種類や特性事項を 知っておくことは重要である。 以前、『造影剤の適正使用推進ガイドFAQ』として計12 回のシリーズ(200612月~20093月)で、臨床画像(メ ジカルビュー社)にX線造影剤の添付文書に関する記載 事項の解説やその背景情報などを紹介した。その後、日 本医学放射線学会、日本放射線科専門医会・医会では、 造影剤安全性委員会を立ち上げ、「ヨード造影剤問診表 における質問項目と推奨度」、「ヨード造影剤(尿路・血管 用)とビグアナイド系糖尿病薬との併用注意」、「原則禁 忌であった急性膵炎の慎重投与への変更」、「重症筋無力 症でのヨード造影剤の使用」などの情報発信や、2012には日本腎臓学会、日本循環器学会との共同編集での「腎 障害患者におけるヨード造影剤の使用に関するガイドラ イン2012」(東京医学社)が発刊されるなど、より安全 な造影剤の使用が求められる環境を背景として医療関係 者への情報提供が継続されている。 長きにわたり造影検査に携わっている医師にとって は、これまでの造影剤の変遷とともに診療を行ってきた ことから、日常の臨床を通じて造影剤に関する様々な知 識を得ている方々も多いと思われるが、新たに画像診断 IVRなどで造影剤に関わる者にとっては、むしろ知ら ない事項が数多くあるのではないだろうか。本稿では、 日本における各種造影剤の概要および、この30年間での 造影剤を取り巻く環境の変化、造影剤の安全性に関する 情報を振り返り紹介する。この機会に造影剤についての 情報を改めて整理していただければ幸いである。 造影剤安全性情報の入手 造影剤の安全性に関する重要な資料として製品の添付 文書があるが、添付文書は当該製剤の情報に限られると ともに情報量には制限があり、必要十分な情報が掲載さ れているとは言い難い。造影剤は様々な疾患に用いられ、 さらに用いる検査法の違いやIVRなどの治療を目的とす る場合もあり、少なからず使用法が異なるため関連する 情報は膨大となる。日本放射線科専門医会・医会のホー ムページ上では「造影剤副作用カード」の掲載や、「ちょ っと役立つ造影検査に関する話題 CT/MRI 編」が共同 発行されている。また、日本医学放射線学会と日本医学 放射線科専門医会・医会が作成した「画像診断ガイドライ 2013年版」(金原出版)にも造影剤の安全性に関する 情報が掲載されている。その他、造影剤販売メーカーの Webサイトにも参考となる情報が掲載されている。 海外でも添付文書の他に、専門学会が中心となり、造 影剤使用に関するガイドラインやマニュアルが発行され ている。ACRAmerican College of Radiology)によ Manual on Contrast Media ESUREuropean So- ciety of Urogenital Radiology)によるガイドラインが よく知られているが、造影剤の適応など国内と異なる部 分もあることに留意して参照されたい。 日本医医学放射線学会ホームページ: http://www.radiology.jp/ 日本放射線科専門医会・医会ホームページ: http://www.jcr.or.jp/ ManualonContrastMediaVer.10.1(ACR): http://www.acr.org/~/media/ACR/Documents/

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日獨医報 第61巻 第 1 号 93-118(2016) 93(93)

イオパミロン発売30周年 特別寄稿

造影剤の現状 ―X線造影剤を中心に―

早川 克己1),鳴海 善文2),桑鶴 良平3),林  宏光4)

岩手県立釜石病院 放射線科1),大阪医科大学 放射線医学教室2),順天堂大学 放射線医学教室3),日本医科大学 放射線医学4)

はじめに

本格的な非イオン性X線造影剤が国内に臨床導入され30年が経過し、画像診断やIVR(interventional radiol-

ogy:画像下治療)で日常的に使用されている。現在使用されている非イオン性X線造影剤は安全性が大きく向上し、すでにその臨床的有用性は確立しているが、発現頻度は低いものの一定頻度で重篤な副作用発現が報告されている。また、近年でも造影剤の誤投与の事例があり、安全な造影検査を行う上で、造影剤の種類や特性事項を知っておくことは重要である。

以前、『造影剤の適正使用推進ガイドFAQ』として計12

回のシリーズ(2006年12月~2009年3月)で、臨床画像(メジカルビュー社)にX線造影剤の添付文書に関する記載事項の解説やその背景情報などを紹介した。その後、日本医学放射線学会、日本放射線科専門医会・医会では、造影剤安全性委員会を立ち上げ、「ヨード造影剤問診表における質問項目と推奨度」、「ヨード造影剤(尿路・血管用)とビグアナイド系糖尿病薬との併用注意」、「原則禁忌であった急性膵炎の慎重投与への変更」、「重症筋無力症でのヨード造影剤の使用」などの情報発信や、2012年には日本腎臓学会、日本循環器学会との共同編集での「腎障害患者におけるヨード造影剤の使用に関するガイドライン2012」(東京医学社)が発刊されるなど、より安全な造影剤の使用が求められる環境を背景として医療関係者への情報提供が継続されている。

長きにわたり造影検査に携わっている医師にとっては、これまでの造影剤の変遷とともに診療を行ってきたことから、日常の臨床を通じて造影剤に関する様々な知識を得ている方々も多いと思われるが、新たに画像診断やIVRなどで造影剤に関わる者にとっては、むしろ知らない事項が数多くあるのではないだろうか。本稿では、日本における各種造影剤の概要および、この30年間での

造影剤を取り巻く環境の変化、造影剤の安全性に関する情報を振り返り紹介する。この機会に造影剤についての情報を改めて整理していただければ幸いである。

造影剤安全性情報の入手

造影剤の安全性に関する重要な資料として製品の添付文書があるが、添付文書は当該製剤の情報に限られるとともに情報量には制限があり、必要十分な情報が掲載されているとは言い難い。造影剤は様々な疾患に用いられ、さらに用いる検査法の違いやIVRなどの治療を目的とする場合もあり、少なからず使用法が異なるため関連する情報は膨大となる。日本放射線科専門医会・医会のホームページ上では「造影剤副作用カード」の掲載や、「ちょっと役立つ造影検査に関する話題 CT編/MRI編」が共同発行されている。また、日本医学放射線学会と日本医学放射線科専門医会・医会が作成した「画像診断ガイドライン 2013年版」(金原出版)にも造影剤の安全性に関する情報が掲載されている。その他、造影剤販売メーカーのWebサイトにも参考となる情報が掲載されている。

海外でも添付文書の他に、専門学会が中心となり、造影剤使用に関するガイドラインやマニュアルが発行されている。ACR(American College of Radiology)によるManual on Contrast MediaやESUR(European So-

ciety of Urogenital Radiology)によるガイドラインがよく知られているが、造影剤の適応など国内と異なる部分もあることに留意して参照されたい。

  日本医医学放射線学会ホームページ:  http://www.radiology.jp/

 �日本放射線科専門医会・医会ホームページ:  http://www.jcr.or.jp/

 �Manual�on�Contrast�Media�Ver.10.1(ACR):    http://www.acr.org/~/media/ACR/Documents/

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1. X線造影剤

現在、国内で使用されるX線造影剤を分類すると表2

のように、物性や構造から大きく分類することができる。画像上での写り方の違いで陽性と陰性に大きく分け

られ、陽性造影剤はバリウム系とヨード系に分けられ、ヨード系はさらに油性と水溶性に分類される。バリウム系の造影剤は消化管用であり、画像診断で使用する機会の多い造影剤は、CTや血管造影で用いられる尿路・血管用に分類される水溶性の非イオン性モノマー型造影剤である。

水溶性ヨード造影剤はいずれもトリヨードベンゼン環を基本骨格とする(図1)。イオン性と非イオン性の大きな違いは同一ヨード量での浸透圧の違いがよく知られているが、他にもナトリウムイオンやメグルミンイオンといった電解質含有の有無のほか、一般に化学毒性と呼ばれるような生体との相互作用の程度も異なり、安全性の面でイオン性と非イオン性は大きく異なるといえる(図2)。なお、イオン性モノマー型造影剤は2001年に血管内適応が削除となり、臨床適応は非常に限られるものとなっている。

水溶性ヨード造影剤のもう1つの構造上の特徴として、モノマー型とダイマー型がある。これらの違いは、1分子中のヨードの数がダイマー型では2倍となり、同一ヨード量での浸透圧はダイマー型で低く、非イオン

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Manual/2015_Contrast_Media.pdf

 ��ESUR�Guidelines�on�Contrast�Media�Ver.9.0(ESUR):   http://www.esur.org/guidelines/

日本で使用される造影剤の種類と概要

造影剤は用いられるモダリティにより、X線造影剤、MRI造影剤、超音波造影剤に大別される。モダリティの違いにより、使用される造影剤も当然異なってくる。X

線造影剤はX線を吸収し透過性に差をつけることで、MRI造影剤は造影剤そのものが画像に写るのではなくプロトンの緩和を促進し、超音波造影剤は超音波の反射を増やすことで造影効果が得られる。

国内における造影剤の臨床への導入時期をモダリティごとに一覧としてまとめた(表1)。X線造影剤は80年代から多くの製剤が導入されているが、近年は新たな製剤は登場していない。MRI造影剤、超音波造影剤の多くは90年代から導入された比較的新しい種類の造影剤であることがみてとれる。

次項より、各モダリティで使用される造影剤の概要を紹介する。

表1 国内における造影剤の導入時期

造影剤のタイプ 〜1970年代 80年代 90年代 2000年代 2010年代

X線造影剤尿路・血管系

ウログラフイン(’55)†

コンレイ(‘65)†§

アミパーク(’84)*

イオパミロン(’86)�ヘキサブリックス(’87)オムニパーク(’87)

オプチレイ(’92)イオメロン(’94)�プロスコープ(’96)イマジニール(’97)*

その他ガストログラフイン(’61)

ビリスコピン(’82)イソビスト(’87) 

ビジパーク(’00)

MRI造影剤

細胞外液性 ― マグネビスト(’88)プロハンス(’94)�オムニスキャン(’96)

マグネスコープ(’01)

ガドビスト(’15)

肝特異性 ― フェリデックス(’97)*リゾビスト(’02)EOBプリモビスト(’08)

消化管用 ― フェリセルツ(’93) ボースデル(’06)

超音波造影剤非経肺性 ― アルブネックス(’93)*

経肺性 ― レボビスト(’99)** ソナゾイド(’07)

†:イオン性モノマー型は2001年に血管系の適応削除.§:コンレイは2015年販売中止.*:すでに販売中止(アミパークは1988年,イマジニールは2015年,フェリデックスは2006年,アルブネックスは1997年に中止).**:現 在 販 売 一 時 中 止 .

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表2 国内で使用されるX線造影剤の種類

陰性造影剤 空気,炭酸ガス

陽性造影剤

バリウム製剤 (消化管用)

ヨード造影剤

油性 リピオドール(リンパ管,子宮卵管,医薬品または医療機器の調整)

水溶性

イオン性モノマー型ウログラフイン(ERCP,PTC,特殊管腔)

ガストログラフイン(消化管用)

イオン性ダイマー型ヘキサブリックス(尿路・血管用)

ビリスコピン(静脈性胆嚢胆道用)

非イオン性モノマー型イオパミロン,オムニパーク,オプチレイ,イオメロン,プロスコープ(尿路・血管用)

非イオン性ダイマー型イソビスト(脊髄,子宮卵管,関節)

ビジパーク(一部の血管,ERCP)

図1 トリヨードベンゼン環水溶性ヨード造影剤はいずれも3つのヨードが導入されたベンゼン環の基本構造をもつ.R1~R3は側鎖.

タイプ イオン性 非イオン性

構造

アミドトリゾ酸カルボキシル基(赤部分)をナトリウム塩やメグルミン塩にすることで水溶性を示す.水溶液中で陽イオンと陰イオンに解離する.

イオパミドール複数の水酸基(赤部分)により水溶性を示す.水中で解離しないため,水溶液中での粒子数は増えず浸透圧が抑えられる.

図2 イオン性と非イオン性

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タイプ モノマー型 ダイマー型

構造(模式図)

備考1分子中に3つのヨードをもつ 1分子中に6つのヨードをもち,モノマー型と同じヨード含量

の場合,分子数は半分となり,浸透圧が抑えられる.分子量はモノマー型の約2倍となる.

図3 モノマー型とダイマー型

表3 国内で使用されるMRI造影剤の種類

ガドリニウム造影剤細胞外液分布型

イオン性リニア型 マグネビスト(Gd-DTPA)

非イオン性リニア型 オムニスキャン(Gd-DTPA-BMA)

イオン性マクロ環型 マグネスコープ(Gd-DOTA)

非イオン性マクロ環型 プロハンス(Gd-HP-DO3A),ガドビスト(Gd-BT-DO3A)

肝特異性イオン性リニア型 EOB・プリモビスト(Gd-EOB-DTPA)

SPIO製剤 超常磁性酸化鉄 リゾビスト

消化管用造影剤Feイオン フェリセルツ

Mnイオン ボースデル

性ダイマー型はいずれも体液と等張である。一方でダイマー型は分子量が大きくなり、粘稠度は高くなる。非イオン性ダイマー型のもつ適応はかなり限定される(図3)。個々の造影剤のもつ適応の詳細については各々の添付文書で確認いただきたい。

2. MRI造影剤

MRIで使用されるガドリニウム造影剤、SPIO製剤(superparamagnetic iron oxide:超常磁性酸化鉄微粒子)はいずれも静脈内投与で用いられる。細胞外液分布型のガドリニウム造影剤は静脈内投与後、血中、細胞間隙に分布し尿中に排泄される。一方、EOB・プリモビストは血中から細胞間隙に分布するほか、トランスポーターを介して肝細胞にも取り込まれ尿中のほか、胆汁中へも排泄される。SPIO製剤は静脈内投与後、網内系で貪食され、肝ではKuppfer細胞に取込まれる。

現在、国内で使用されるMRI造影剤の種類を表3にまとめた。

ガドリニウム造影剤はいずれも希土類金属であるガド

リニウムをキレート化した構造をもち、X線造影剤とは全く異なる化合物である(図4)。MRI造影剤の用量はX

線造影剤に比べ少量であり、ガドリニウム造影剤のイオン性・非イオン性による浸透圧の違いは、X線造影剤とは異なり、安全性の面における違いには結びついていない。

近年、ガドリニウム造影剤の生体内でのキレート安定性が、ガドリニウム造影剤に特有の副作用として認識されるようになった腎性全身性線維症(nephrogenic sys-

temic fibrosis: NSF)のリスクの差となるとされている。生体内でのキレート安定性はマクロ環型で高く、各ガドリニウム造影剤のNSFリスク分類は、このキレートの安定性およびガドリニウム造影剤の排泄経路で分類されている。

3. 超音波造影剤

超音波造影剤はいずれもマイクロバブル(微小気泡)が造影源となる。単なる気泡では肺で消失してしまうが、肺を通過できる経肺性の造影剤が発売されている。いずれも血管内に投与する場合は静脈内投与で用いられる。

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タイプ細胞外液分布型 肝特異性

リニア型 マクロ環型 リニア型

構造

製剤略号 マグネビスト(Gd-DTPA)

ガドビスト(Gd-BT-DO3A)

EOB・プリモビスト(Gd-EOB-DTPA)

排泄経路 尿中 尿中 尿中・胆汁中

図4 ガドリニウム造影剤の構造

表4 国内の超音波造影剤の種類

微小気泡の成分 適応など

レボビスト* 空気とパルミチン酸膜 心エコー図検査,ドプラ検査,子宮卵管エコー

ソナゾイド ペルフルブタン 肝腫瘤性病変,乳房腫瘤性病変

          *:2016年2月現在,一時供給停止中.

超音波造影剤での重篤副作用はMRI造影剤よりもさらに少ないと考えられている。微小気泡を血管内に投与するが、空気塞栓の懸念もほとんどない。製剤により適応が異なる点には注意が必要である(表4)。

X線ヨード造影剤を取り巻く環境の変化

X線ヨード造影剤の使用は、古くは透視撮影が中心であったが、現在はCTで使用される割合が極めて多い。1970年代に登場したCTは、この20年の間に大きく進歩し、広範囲の領域を短時間で撮影することが可能となり、その適応範囲も格段に広がっている。また、被ばく低減技術の進歩も著しく、現在もその途上にあり、今後さらにCTの適応は広がりをみせるものと思われる。シリンジ製剤も自動注入器との併用により、再現性の高いプロトコール設定や個々の患者の体重による造影剤量の設定など、カスタマイズしたプロトコール設定も可能となっている。血管造影は侵襲性を伴うことから、診断目的のみでの実施は減少しているが、血管造影の手技を治療に応用したIVRは様々な領域・対象疾患で大きな広がりを

みせている。これらCTやIVRでX線ヨード造影剤は不可欠の薬剤となっている。一方で、ほかの画像診断モダリティが有用なことから、施行される頻度が減少している検査もある。脊髄疾患ではMRI検査が多くの疾患に対し有用であり、X線での脊髄造影検査が行われる機会は減少しているが、ほとんどのX線造影剤は「脊髄造影には使用しないこと」と添付文書に記載されており、適応をもつ造影剤は極めて限られる。これまでの造影剤誤投与で大きな問題とされるのは多くがこの脊髄造影検査であり、脊髄造影を行う際には必ず造影剤の適応の確認をすべきである。

X線ヨード造影剤の添付文書の変遷をみるといくつかの大きな変化がうかがえるので、以下に紹介する。

1. 予備テストの記載の変遷

X線ヨード造影剤を使用する際に最も懸念される事項として、生命を脅かすような重篤な副作用の発現があり、過去にいくつもの副作用の予知法の検討がされてきたが、現在でも重篤な副作用を予知する方法はなく、リスク因子を評価し、リスクとベネフィットを勘案して適応

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の最終的な決定が行われる。古くは造影剤本体とは別にテストアンプルが添付さ

れていたが、造影剤本体と異なるロットのテストアンプルが使用される場合があること、そもそもテストによる予知能がないこと、およびヨードテストでも重篤な副作用が生じる可能性があるにもかかわらず救急体制の整っていない状況下でヨードテストが行われることが多いこと1)から、テスト実施を添付文書で推奨する記載は徐々に弱まり、2000年にはテストアンプルの添付が中止され、添付文書からも予備テスト実施に関する記載は削除された。

2. 原則禁忌記載の変化

X線ヨード造影剤の添付文書には、数多くの禁忌および原則禁忌項目が記載されている。この中で「急性膵炎の患者」が2012年に原則禁忌から慎重投与に変更されたのをご存知だろうか。急性膵炎は造影CTによる重症度評価の重要性が以前から認識されており、急性膵炎診療ガイドラインでも造影CTが推奨されていたが、添付文書では原則禁忌の項に記載され臨床との乖離が生じていた。急性膵炎を原則禁忌とするエビデンスはほとんどなく、種々の関係学会の働きかけおよび過去の国内での急性膵炎における造影剤使用に関する情報が日本膵臓学会でまとめられていたことが、この添付文書の記載変更に際し重要な情報になったと思われる。

現在の添付文書の原則禁忌には「重篤な心障害のある患者」や「重篤な肝障害のある患者」が記載されているが、心臓CTや冠動脈インターベンション(percutaneous cor-

onary intervention: PCI)、肝細胞癌患者での造影CTやTACE(transcatheter arterial chemoembolization)などに造影剤は広く用いられており、これらの診断や治療において不可欠な薬剤であることを考えると、こうした記載も変更される必要があると思われる。

3. 相互作用の記載

以前よりX線ヨード造影剤の添付文書には、併用注意としてビグアナイド系糖尿病用剤(メトホルミン塩酸塩、ブホルミン塩酸塩など)が記載されている。X線ヨード造影剤とビグアナイド系薬剤の相互作用は薬剤間の直接の相互作用ではなく、もともと腎機能が低下している患者や造影剤使用により腎機能が低下した際にビグアナイド系薬剤の排泄が遅延することで乳酸アシドーシスを招く

可能性があるために記載されている。近年、新しいビグアナイド系糖尿病用剤の配合剤や後発品が多数発売されており、2016年2月現在で30製剤に及んでいる。日本医学放射線学会では、服用薬剤を確認する目的でビグアナイド系糖尿病用剤の一覧ポスターを作成しているので、活用いただきたい。

4. 適用上の注意にある記載事項から

血管撮影の実施に際して「カテーテル内をよくフラッシュすること。注入器やカテーテル内で血液と長時間にわたって接触させることは避け、直ちに使用すること」と記載されている。すでに、血管造影では標準的な手技となっている生理食塩液やヘパリン加生食でのフラッシュであるが、現在の非イオン性造影剤は血液凝固抑制作用がイオン性造影剤に比べ弱いことから、血液との接触によりイオン性造影剤より容易にクロットが形成されるため、クロットを発生させないために重要な手技的注意事項である。

一見すると意味不明な記載として、「注入装置の洗浄が不十分な場合には、注入器内部に付着する残存液に由来する銅イオン溶出などによって生成物(緑色などに着色)を生じるおそれがあるので、使い捨て以外の器具を用いる場合には内部の汚れに注意し、洗浄、滅菌を十分に行うこと」と添付文書に記載されている。現在はディスポーザブル器具を用いる機会が多く、金属製の器具も少なくなっているので、X線ヨード造影剤が着色するような事例に遭遇することは稀と思われるが、この記載はX線ヨード造影剤を注入器などに移す際に使用されていた真鍮製のU字管でみられた現象からきている。現在でもバルーンカテーテル拡張用のインフレーションデバイスの圧計には真鍮製のブルドン管が用いられているものがあり、バルーン内部で淡い着色がみられることがある。色調はX線ヨード造影剤によって異なり淡い青色系・緑色系となることがある。

非イオン性ヨード造影剤の副作用発現頻度

造影剤による副作用は種類も多く、また副作用の程度も軽度から重篤なものまであり多様である。軽微な副作用は見過ごされる可能性もあり、その頻度については、調査方法により違いが現れる可能性がある。より重要となる重篤な副作用は見過ごされることはないが、重篤な

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副作用の発現頻度は稀であるため、小規模な試験では数値として現れてこないことも考えられる。ここでは、現在の非イオン性ヨード造影剤の副作用の頻度に関する情報を急性副作用と遅発性副作用に分けて紹介する。

1. 急性副作用の発現率

前述のように、重篤な副作用の発現頻度は稀であるため、その頻度を知る上では、対象症例数の大きな試験を参考とする必要がある。ここで紹介するデータは多くのガイドラインなどでも引用されているが、重篤な副作用についてみても発現していない報告もあれば、発現している報告での頻度も0.001~0.04%と実に40倍もの違いがある。

留意すべき事項として、副作用の重症度や重篤度の基準が報告により違いがある点や報告の対象とする検査の種類に違いがある点があげられる。カテーテルを用いた動脈内投与では、手技に関連する合併症もあるが、造影剤の副作用としてとらえられる可能性も考えられる。

代表的な国内外からの報告2~10)を表5~7にとりまとめた。

2. 遅発性副作用の発現率

遅発性副作用は造影剤投与後1時間以上経過して発現する副作用として捉えられている。ヨード造影剤の添付文書では、遅発性副作用について患者へ説明を行い、発

現した場合には主治医に連絡するなど、適切な対応をとるよう記載されるとともに、遅発性でもショックを含む重篤な副作用が起こり得る旨が記載されている。

1990年前半に多く報告されている遅発性副作用がどの程度の頻度で発生するのかは、報告によるバラツキも多く明確でないが、頭痛などの不定愁訴を除き、客観的に確認できる皮膚症状での発現頻度は概ね2~4%といわれている。遅発性副作用のほとんどは軽微で特に治療を要さずに回復するものである。また、単純CTでも一定頻度に皮膚症状などが発生することから、造影剤と無関係の症例や調査による心理的な側面により惹起された症状も含まれるものと考えられる。静脈内投与の検討ではモノマー型に比べダイマー型非イオン性造影剤(現在、国内で静脈内投与の適応をもつダイマー型非イオン性造影剤はない)で遅発性副作用の発現頻度はやや高いことも報告されている。

代表的な国内外からの報告11~14)を表8、9にとりまとめた。

副作用予防の方法とそのエビデンスおよび breakthrough reaction

造影剤の副作用を確実に予知する方法は確立しておらず、問診などによるリスク因子の把握によりリスク&ベネフィットを考慮し造影剤使用の適否が判断され

表5 急性副作用の頻度に関する国内からのデータ

イオン性造影剤と非イオン性造影剤の副作用比較2)

 調査期間:1986年9月〜1988年6月  対象検査:静脈内投与(造影CTや排泄性尿路造影など)

対象症例数� 168,363例� 重篤副作用の基準�呼吸困難,急激な血圧低下,心停止,意識消失のいずれかあるいは複数の症状のうち,治療を要したもの

総副作用� 3.13%

重篤副作用� 0.04%

備考 副作用の発現率:非イオン性造影剤の総副作用はイオン性造影剤の約4分の1,重篤な副作用は約6分の1に低減�副作用のリスク因子:副作用の既往歴,アレルギー歴(特に喘息),心疾患の有無�副作用の発現時期:注入中と注入5分後までで70%以上が発現した

非イオン性造影剤での重篤副作用および死亡例の頻度調査3)

 メーカーからの出荷本数と重篤副作用件数,死亡件数の当局への報告数集計からの推定値� 調査対象期間:1986年8月〜2002年末  対象検査:全ての造影検査が含まれるが投与経路別の母数は不明

総出荷数 91,298,444 重篤症例の定義�死亡,障害,これらにつながるおそれのある症例.治療のために入院または入院期間の延長が必要とされる症例�上記に準じて重篤である症例�後世代における先天性に疾患または異常

推定検査数 73,038,755

重症作用発現率 0.0040%

死亡率 0.00025%

備考 重度副作用の頻度は2.5万例に1例,死亡例は40万例に1例

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100(100)

表6 急性副作用の頻度に関する海外からのデータ

複数の専門分野で構成されたワーキンググループによる6試験の統合解析4)� 対象検査:静脈内投与,動脈内投与,心臓内投与 �AHPCR:Agency�for�Health�Care�Policy�and�Research,FDA:Food�and�Drug�Administration,NIH-OMAR:National�Institutes�of�Health-Office�of�Medical�Applications�of�Research

対象症例数 270,317例 重篤副作用の基準�即座の治療を行わないと不可逆的な心血管・神経の不全となるような副作用アナフィラキシーショック,肺浮腫,咽頭/喉頭浮腫,気管支痙攣,重篤な血圧低下/血圧上昇,意識消失,硝酸薬に反応しない狭心症,ペーシングを要するリズム障害,重要な血栓塞栓症

重篤副作用 0.059%

死亡 0.001%

米国FDAデータ5)� 調査対象期間:1990年〜1994年  対象検査:全ての造影剤使用を対象

100�万例当たりの件数 重篤副作用の基準�呼吸困難,急激な血圧低下,心停止,意識消失のいずれかあるいは複数の症状のうち,治療を要したもの

総副作用 44.44(0.0044%)

重篤 10.52(0.001%)

死亡 2.07(0.0002%)

備考 副作用の発現率:非イオン性造影剤の総副作用はイオン性造影剤の4.4分の1,重篤副作用は3.5分の1

造影CTでのプロスペクティブ調査6)� 調査対象期間:2001年1月〜2003年5月  対象検査:静脈内投与(造影CT)

対象症例数 29,508例 重篤副作用の基準�生命を脅かすような事象で即座の薬物治療が必要で,入院治療を要した,または死亡総副作用 211(0.7%)

重篤   4(0.014%)

死亡   1(0.003%)

備考 患者年齢,造影剤量,検査季節による副作用発現率に差はなかった。�女性,入院患者で統計学的に有意に高い発現率となった。

米国Mayo�Clinicの報告7)

 調査対象期間:1999年1月〜2005年12月   対象検査:静脈内投与

対象症例数 84,928例 重篤副作用の基準ACR�Manual�on�contrast�media�5th�editionに準拠�重篤な呼吸困難,増悪する血管浮腫,痙攣,意識消失,心肺停止

アレルギー性反応 545(0.6%)

中等度 116(0.137%)

重篤 11(0.013%)

Mayo�Clinicの報告8)

 調査対象期間:2002年〜2006年   対象検査:全ての造影剤使用を対象

対象症例数 298,491例 重篤副作用の基準�心血管虚脱,中等度以上の気管支痙攣,喉頭浮腫,意識消失,�発作総副作用 458(0.153%)

重篤 15(0.005%)

死亡   1(0.00034%)

る。ヨード造影剤に対して、過敏症や喘息などの禁忌や原則禁忌に該当するような症例に対して、代替検査に適当なものがなく、どうしてもヨード造影剤の使用が必要となる場合に、ステロイドや抗ヒスタミン薬を用いた前投薬および以前使用した造影剤と異なる造影剤の使用が考慮される。しかし、これらの副作用の予防法に関する十分なエビデンスはなく、前投薬を行ってもなお副作用

が発現するbreakthrough reactionと呼ばれる副作用の存在も知られている。ここでは、前投薬に関するエビデンスと海外でのレジメを紹介し、breakthrough reactionの報告についてはその頻度や重症度について紹介する。

1. 前投薬に関するエビデンス

ステロイドの前投与によりイオン性造影剤での副作用

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表7 若年者での急性副作用の頻度に関するデータ

19歳未満での頻度9)� 調査対象期間:1999年1月〜2006年6月   対象検査:静脈内投与

対象症例数 11,306例 重篤副作用の基準重篤な呼吸困難,反応消失,痙攣,不整脈,心肺停止,血管浮腫の増悪急性アレルギー反応 20(0.18%)

重篤 3(0.027%)

死亡 0

21歳以下を対象とした検討10)

 調査対象期間:1999年1月〜2005年12月  対象検査:静脈内投与

対象症例数 12,494例 重篤副作用の基準ACR�Manual�on�contrast�media�5th�editionに準拠し,喉頭浮腫を加えて評価(重篤な呼吸困難,増悪する血管浮腫,痙攣,意識消失,心肺停止)

総副作用 57(0.46%)

中等度 10(0.08%)

重篤 0

表8 遅発性副作用の頻度に関する国内からのデータ造影CTと単純CTでの比較11)� 調査期間:1995年3月〜5月および1996年6月〜9月  調査方式:質問表(回収率56.5%)� 対象検査:静脈内投与  使用造影剤:300mgI/mL,100mL

症例数 遅発性副作用発現率単純CT 907 93(10.3%)造影CT 2,370 293(12.4%)遅発性副作用症状(件数)の発現時期とその構成比発現時期 Day1 Day2 Day3 Day4 Day5 Day6 Day7 不明単純CT 82(67.2%) 10(8.2%) 10(8.2%) 8(6.6%) 5(4.1%) 7(5.7%) � 0�(0%) 12造影CT 334(74.9%) 30(7.2%) 25(6.0%) 11(2.6%) 8(1.9%) 7(1.7%) � 3�(0.7%) 28

静脈内投与での遅発性副作用の発現率とリスク因子(プロスペクティブ,多施設検討)12)� 調査期間:1997年2月〜4月および1997年7月〜9月   対象検査:静脈内投与症例数 遅発性副作用発現率 皮膚症状6,764例 192(2.8%) 105(1.6%)遅発性副作用の重症度(件数)遅発性副作用件数 軽度 中等度 重篤256件 174(2.6%) 82(1.2%) 0(0%)備考 リスク因子:アレルギー歴,花粉症の季節(2〜4月),検査法(CTより静脈性尿路造影で多い),手術や侵襲的治療の同

時期施行

発現が低減するとLasserらによって報告15)されたが、後に統計手法の誤りが指摘されている。その後、同じくLasserらにより行われた非イオン性造影剤での検討16)

では、造影剤投与の6~24時間前および2時間前の計2回のメチルプレドニゾロン経口投与のレジメとプラセボでの比較で、副作用全体と軽度の副作用の発現が有意に低下したのみで、残念ながら中等度や重篤副作用に対する前投薬による効果は立証されていない(表10)。

イオン性造影剤で中等度~重篤副作用歴を有する200

症例を対象に、前投薬を行った上で、非イオン性造影剤(iopamidol、iohexol)を使用した場合の副作用の検討17)

では、再び副作用が発現したのは1例のみで全体としては0.5%の発現頻度で、さらに血管内投与が行われた181

例に限定すると0.55%の発現頻度という結果から、過去にイオン性造影剤で副作用歴のある症例では、前投薬を行った上で非イオン性造影剤を使用することの有用性が示されている。なお、この文献中には前投薬を行いイオン性造影剤を使用した900検査での副作用発現は87例

(9.7%)であったと記載している(表10)。一方で、症例数は少ないが、静注による非イオン性造

影剤投与で蕁麻疹の既往のある50症例での前投薬による有用性の検討18)では、前投薬を行った群で副作用発現率

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表9 遅発性副作用の頻度に関する海外からの報告

造影CTと単純CTでの比較13)�

 調査期間:1996年〜2002年  造影CT1はモノマー型造影剤,造影CT�2はダイマー型造影剤を100mL使用

症例数遅発性副作用(皮膚症状)

単純CT 252 �14�(5.6%)

造影CT1 258 �25�(9.7%)

造影CT2 262 � 43�(16.4%)

遅発性副作用(皮膚症状)の発現時期

発現時期 Day1 Day2 Day3 Day4 Day5 Day6 Day7 不明

単純CT 2 3 5 0 1 1 0 2

造影CT1 4 5 6 3 3 0 1 3

造影CT2 7 10 7 7 2 1 1 8

造影CTと単純CTでの比較14)� 調査期間:2006年〜2008年

症例数 遅発性副作用 皮膚症状

単純CT 281 � 7�(2.5%) � 2�(0.71%)

造影CT 258 �37�(14.3%) �26�(10.1%)

備考 造影群で有意に発現が多かった症状として,皮疹,紅斑,皮膚の腫脹,頭痛をあげている

表10 前投薬に関するエビデンスデータ

Lasserらの副作用既往例での非イオン性造影剤使用におけるステロイド前投薬とプラセボでの副作用予防効果の検討16)� 対象検査:排泄性尿路造影,造影CT   使用造影剤:非イオン性モノマー型(iohexol,Ioversol)

症例数 総副作用 グレードⅠ グレードⅡ グレードⅢ 副作用のグレードⅠ:�くしゃみ,嘔気,単回の嘔吐,眩暈Ⅱ:�掻痒,皮疹/発疹,紅斑,発熱,血圧上昇,血圧低下,動悸

Ⅲ:�呼吸困難,喉頭浮腫,眼瞼浮腫,気管支攣縮

前投薬群 580 10(1.7%) 1(0.2%) 7(1.2%) 2(0.3%)

プラセボ群 575 28(4.9%) 11(1.9%) 9(1.6%) 8(1.4%)p(Two-tailed�t-test) 0.005 0.004 0.63 0.11

前投薬レジメ:メチルプレドニゾロン�32mgを造影剤投与の6-24時間前,2時間前の2回経口投与

Greenbergerらのイオン性造影剤に副作用歴を有する症例での血管内投与での結果17)

症例数 副作用発現

前投薬1 140 1(0.71%)

前投薬2 41 0(0%)

全体 181 1(0.55%)

前投薬レジメ1:プレドニゾロン50mgを検査の13時間,7時間,1時間前+50mgジフェンヒドラミンを1時間前前投薬レジメ2:上記に加え,検査1時間前にエフェドリン25mgこの試験では前投薬の投与経路は動注,静注,経口が行われている

Kolbeらの非イオン性造影剤の静注で蕁麻疹の既往のある症例での検討18)

症例数ベース 検査数ベース

症例数 蕁麻疹発現 検査数 蕁麻疹発現

前投薬なし 23 3(13%) 66 � 5�(7.6%)

前投薬1 7 1(14%) 25 � 2�(8.0%)

前投薬2 10 5(50%) 26 �12�(46%)

前投薬3 10 4(40%) 16 � 7�(44%)

前投薬レジメ1:検査の1時間前にジフェンヒドラミン25〜50mgの経口または静注�前投薬レジメ2:検査の12時間前と2時間前にメチルプレドニゾロン32mgを経口投与�前投薬レジメ3:上記のレジメ1,2を合せたもの

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たとしている。この論文のまとめとして、①前投薬は副作用のリスクをなくすことはできない、②前投薬により副作用の重症度は、以前の副作用と同程度となるが、多くの場合、副作用は発現しない。軽度の副作用歴を有する場合、重篤な副作用発現のリスクは低い、③軽度の副作用歴の場合、前投薬により副作用は発現しないか発現しても軽度であることが多い。しかしながら、中等度以上の副作用歴を有する場合、再度、中等度以上の副作用を発現するリスクが高くなる、④副作用歴のある患者では検査による診断の可能性や治療の有用性を考慮すべきである、⑤中等度以上の副作用を発現するリスクファクターとしては、重篤な副作用歴、4種類以上のアレルゲン、薬剤アレルギー、慢性的なステロイドの服用がある、としている。

◆ Breakthrough reactionの報告の多くは、研究対象が小人数であるのに対して、初めて1,000名を超える症例数に対して、ACR manualに基づいた標準的な13時間の前投薬実施を前向きに行い、結果を後ろ向きに解析した報告がある20)。それによると前投薬投与の適応は、60%が過去に造影剤副作用歴を有する症例で、40%が造影剤以外のアレルギー歴や喘息であった。Breakthrough reaction

の頻度は、1.2%(13/1051)であり、副作用歴のない通常の患者における副作用頻度として計算上の数値の0.6%に対して有意に高頻度であった(P

<0.0001)。このうち、造影剤に対する過敏症の副作用歴にて前投薬を受けた群における頻度は最

が高く、前投薬に対して否定的な結果を示した(表10)。このように、前投薬による造影剤の副作用予防効果に

ついては議論のあるところであり、また、前投薬で使用する薬剤そのものによる副作用発現のリスクや費用負担といった別の問題点もある。海外のガイドラインでもエビデンスについては限られるとした上で、実施する場合には、造影剤使用の6時間前には服用することが推奨されている。ステロイドでの予防効果は肥満細胞などの膜の安定化を介したケミカルメディエーター放出の抑制が推定され、検査直前では予防効果を期待することはできないと考えられる。

2. Breakthroughreaction

造影剤副作用歴や喘息があるといった造影剤投与のハイリスク例に対して、ステロイドなどの前投薬を行ってもなお発現する副作用がbreakthrough reactionと呼ばれている。Breakthrough reactionの頻度や以前に発現した副作用との重症度の変化についての報告をいくつか紹介する。

◆ 2009年のDavenportらの報告19)では、非イオン性造影剤使用140,753例での1,044件の副作用の解析を行っている。この中で、以前の副作用の程度が 判 定 で き て い る128例 で、breakthrough

reactionと以前の副作用の重症度の変化をみると、重症度が下がったのは15例(11.7%)、上がったのは10例(7.8%)で、103例(80.5%)は同程度であった(表11)。この報告では、同じ造影剤を使っても、造影剤を変更しても、副作用発現には差はなかっ

表11 非イオン性造影剤が使用された140,753例での検討

Breakthrough�reactionとnon-breakthrough�reactionの副作用の重症度分布19)

対象件数副作用のグレードと構成比 副作用分類の基準   �

 �軽度:咳嗽,紅斑,発疹,�鼻閉,掻痒,イガイガ感,�くしゃみ� �中等度:除脈,気管支痙攣,�胸痛,呼吸困難,顔面浮腫,�血圧上昇,一過性の血圧低下,軽度の低酸素症,頻脈,�広範の蕁麻疹� �重篤:心肺停止,著明な血圧低下,中等度以上の低酸素症,咽頭浮腫

軽度 中等度 重篤

Non-Breakthrough 854 776(90.9%) 64(7.5%) � 14�(1.6%)

Breakthrough 190 152(80.0%) 35(18.4%) � 3�(1.6%)

副作用の程度の変化

Breakthrough�reactionの程度

軽度 中等度 重篤

既存の副作用の程度 不明 45 17 0

軽度 94 9 0

中等度 11 7 1

重篤 2 2 2

前投薬レジメ:ACR�Manual�on�Contrast�Mediaのレジメ1

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も高い2.6%(10/385)となり、副作用の種類が不明な副作用歴の群では1.2%(3/241)、造影剤以外のアレルギー歴に対する前投薬を受けた群での頻 度 は0%(0/425) で あ っ た(表12)。Breakthrough reactionの重症度内訳としては、全てが軽度・中等度に分類されるもので重度な副作用はなかった。Breakthrough reactionのリスクとしては、若年者および2つ以上の前投薬の適応(造影剤に対する過敏症の副作用歴と他のアレルギー歴をもつ)を有する症例であった。造影剤に対する過敏症の副作用歴のために前投薬が行われた群におけるbreakthrough reactionの頻度は、通常の患者の造影剤副作用発生率の3~4倍であり、それ以外の前投薬の適応(喘息、他の薬剤、食物に対するアレルギーなど)を有する患者での前投薬群では、breakthrough reactionの発現はないものの、1例の造影剤過敏性反応を予防するために必要となる例数は全体で69例、重篤副作用予防では569例と報告した20)。

◆ 副作用予防の観点から、注目すべき報告が日本から行われている。Abeらは、過去に造影剤による副作用歴のある症例での副作用予防として、前処置の実施と使用する造影剤の変更についての比較研究を報告している21)。この報告での前投薬は、近年用いられる前投薬レジメと異なるため、ここでは前処置として記載するが、前処置の実施と使用する造影剤の種類の変更が区別して検討されており、前投薬に限らず造影剤を変更することの有用性が示されている。同じ造影剤を繰り返し使用した群(対照群)における副作用発現率は27.7%、同じ造影剤を使用して前処置を行った群での発現率は17.3%、他の造影剤へ変更し前処置なしとした群における副作用発現率は5.2%、他の造影剤へ変更し前処置も行った群では、副作用発現率は2.7

%であった。対照群と比較して、他の造影剤に替えた群での副作用発現率(5.2%) は有意に低率であった(P=0.0003)。また、その詳細として副作用歴が高浸透圧性イオン性造影剤と低浸透圧性イオン性造影剤による場合、非イオン性低浸透圧性造影剤投与での副作用発現は0(0/20)で、このような場合には、非イオン性低浸透圧性造影剤に造影剤を替えるのみで前投薬投与なしで、副作用発現を抑えられるとしている。また、副作用歴が、非イオン性低浸透圧性造影剤であった場合、別の非イオン性低浸透圧性造影剤に替えた結果は7.9%

(3/38)、さらに前処置を加えた場合は2.9%と、前処置の一定の効果を認めたとしている。いずれにしても、造影剤を別の種類へ替えることの良いエビデンスを出したことの意義は大きいものがあると思われる(表13)。

限られた症例数での検討ではあるが、他にもbreak-

through reactionの重症度について検討している文献をいくつか簡単に紹介する。(表14)

◆ Breakthrough reactionの言葉を初めて使用したFreedらの報告22)では、53例でのbreakthrough

reactionを解析している。以前の検査で発現した副作用とbreakthrough reactionで副作用の重症度のクラス分類が変わったのは計8例(クラス1→2:6

例、クラス2→1:2例)で、85%(45/53)は以前の副作用の重症度と同じクラス分類となった。

◆ 韓国のKimらの報告23)では、副作用の既往例に対し前投薬が行われた30例での検討で、全体では5

例(16.7%)にbreakthrough reactionがみられ、副作用の既往が軽度であった17例では4例に、副作用の既往が重篤であった13例では1例に発現し、その重症度はいずれも以前の副作用と同程度であり、前投薬で多くの場合副作用を抑えることがで

表12 1,000例を超える症例での検討�20)

対象例数 Breakthroughの頻度

全体 1,051 13(1.2%)

前投薬実施の理由

 アレルギー性副作用歴 385 10(2.6%)

 タイプ不明の副作用歴 241 3(1.2%)

 他のリスク因子による 425 0(0%) 

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表13 日本からの副作用予防での検討報告21)

n副作用�発現率

Grade�0 Grade�1 Grade�2 Grade�3副作用のGrade� 0:悪心,頭痛,眩暈 1:mild   2:moderate 3:severe

リスクなし群(同期間内のCTから) 59,057 1.0% 243 307 18 8

コントロール群(過去の副作用発現時と同じ造影剤使用)

220 27.7% 14 43 3 1

以前の副作用 178 41 1 0

前処置群(前処置実施で同じ造影剤使用) 271 17.3% 2 43 1 1

以前の副作用 84 184 2 1

造影剤変更群*(前処置なしで以前と異なる造影剤を使用)

58 5.2% 2 1 0 0

以前の副作用 13 33 0 12

前処置+造影剤変更 222 2.7% 1 4 1 0

以前の副作用 35 171 7 9

前処置2006年1月〜2012年12月レジメ検査30分〜1時間前にヒドロコルチゾン(100〜500mg)+クロルフェニラミン(10mg)の静注2013年1月からのレジメ経口での前投薬,検査前夜と検査3時間前にプレドニドン(30mg),検査1時間前にフェキソフェナジン(30mg:H1拮抗薬)

表14 その他のBreakthrough�reactionの重症度に関する報告

Freedらの報告22)

n副作用のグレードと構成比 副作用のクラス

クラス1:�皮膚症状(皮疹,蕁麻疹,発赤,掻痒など),くしゃみ

クラス2:�呼吸困難,気管支痙攣,咽頭浮腫,顔面浮腫

クラス3:�血圧低下,意識消失,心肺停止

グレード1 グレード2 グレード3

既存の副作用 件数ベース 61件 46件(75%) 13件(21%) 2件(3%)

患者数ベ�ース 53例 42例(79%) 9例(17%) 2例(4%)

Breakthrough 患者数ベ�ース 53例 38例(72%) 13例(25%) 2例(4%)

Kimらの報告23)

Breakthroughの程度

副作用なし 軽度 重篤

以前の副作用の程度 軽度 13 4 0

重篤 12 0 1

前投薬レジメ:プレドニゾロン�50mgまたはメチルプレドニゾロン40〜50mgを3回(12時間,7時間,1時間前)と1時間前に抗ヒスタミン剤(静注または経口)とH2遮断薬(経口または静注)を多くの症例で使用

Jinguらの報告24)

前投薬実施の理由 以前の副作用の程度

例数Breakthroughの程度

軽度 中等度 重篤

ヨード造影剤での副作用既往 軽度 n=113 7 1 0

中等度 n=4 0 0 0

ガドリニウム造影剤での副作用既往 軽度 n=4 0 0 0

中等度 n=2 0 0 0

遅発性副作用既往の疑い ― n=11 0 0 0

気管支喘息 ― n=64 1 0 0

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表15 �海外のガイドラインに掲載されている前投薬レジメESUR�Guideline�Ver.�9 プレドニゾロン30mgもしくはメチルプレドニゾロン32mgを造影剤投与の12時間前と2時間前に経口投与ACR�Manual�on�Contrast�Media�Ver.�10.1

待機的検査の場合

レジメ1 プレドニゾロン50mgを造影剤投与の13時間前,7時間前,1時間前に経口投与,さらにジフェンヒドラミン50mgを1時間前に静注または筋注または経口投与

レジメ2 メチルプレドニゾロン32mgを造影剤投与の12時間前,2時間前に経口投与抗ヒスタミン剤をレジメ1と同様に追加してもよい(経口投与が困難な場合,ヒドロコルチゾン200mgの静注が代替になり得る)

緊急検査の場合

レジメ1 メチルプレドニゾロンナトリウムコハク酸塩40mg(もしくはヒドロコルチゾンナトリウムコハク酸塩200mg)を造影剤投与まで4時間ごとに繰返し静注する.さらにジフェンヒドラミン50mgを1時間前に静注する

レジメ2 喘息やメチルプレドニゾロン,アスピリン,NSAIDにアレルギーのある場合デキサメタゾンナトリウム硫酸塩7.5mg(もしくはベタメタゾン6mg)を造影剤投与まで4時間ごとに繰返し静注する.また,ジフェンヒドラミン50mgを1時間前に静注する

レジメ3 ステロイドなしにジフェンヒドラミン50mgを静注する(ステロイドの効果は投与後4〜6時間以上が必要なため)

きるが、軽度の副作用既往症例であってもbreakthrough reactionが起こり得るとしている。また、breakthrough reactionが発現した症例は以前使用した造影剤と同じ造影剤の使用あるいは以前使用した造影剤が不明な症例であり、異なる造影剤が使用された症例ではbreakthrough reaction

は発現していない。◆ Jinguらは、ヨード造影剤とガドリニウム造影剤使

用に関して、副作用既往例と気管支喘息の症例に対し前投薬を行いbreakthrough reactionを検討した結果を報告24)している。前投薬実施例でのヨード造影剤使用に対するbreakthrough reactionは4.5%(9/198)で、同時期に施行されたCT検査での副作用発現率は0.27%(110/41,388)であり、軽度の副作用既往や気管支喘息例に対し前投薬が有用となる可能性を示している。

ヨード造影剤に対し副作用既往のある場合でも、その既往がイオン性造影剤での事象であったなら、非イオン性造影剤を用いることで副作用を回避できる可能性がある。また、非イオン性造影剤に対する副作用既往例では、使用する造影剤の変更と前投薬の実施により多くの場合には副作用を回避できる可能性が示されている。しかし、中等度以上の副作用既往がある場合には再度中等度以上の副作用を発現するリスクが高い事を認識しておく必要がある。Breakthrough reactionが発現するかどうかの予測は困難であり、やむを得ずリスクの高い患者でヨード造影剤を使用せざるを得ない場合には、現在行える最善の方法を選択した上で、副作用への対応準備をして使

用する必要がある。また、使用した造影剤名や発現した副作用の情報を明確に記録しておくことは、以後の造影剤使用での重要な情報となり、造影剤を使用する者の責務になると思われる。

最後に参考情報として現在のESUR Guideline Ver.9、ACR Manual on Contrast Media Ver.10.1に掲載されている前投薬レジメを表15に示す。また、国内での実際として、群馬大学で用いられている造影剤使用に関する提言25)を参考として以下に示す。

 造影剤による中等度または重度の副作用の既往がある場合には造影剤使用検査は施行しない。 軽度の副作用既往がある患者に対する造影剤使用はプロトコルによる前処置を施行した場合のみ造影検査を施行する。 成人(20歳以上)になってから喘息の治療歴のある患者に対しても同様に前処置をした場合のみ造影検査を施行する。

<処置内容>① メドロール錠(メチルプレドニソン)32mgを造影

剤投与の約12時間前と約2時間前に経口投与する。

② レスタミンコーワ錠(ジフェンヒドラミン)50mg

を造影剤投与の1時間前に経口投与する(緑内障,前立腺肥大症の患者には禁忌)。

* ①の処置は必須。患者状態に応じて②の処置を追加する。

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造影剤の副作用に対する免疫学的検討

造影剤による副作用発現のメカニズムに関しては不明な点が多いが、以前より一部の副作用は免疫学的機序によることが示唆されている。ESURガイドラインでは遅発性副作用に関する推奨事項として、パッチテストおよび遅発型の皮内テストは造影剤に対する遅発性副作用の皮膚反応の診断および他の造影剤との交叉反応の確認に有用な場合もあるとし、遅発性副作用の既往のある症例で再度造影が必要な場合には、交叉反応のない造影剤を使用し、皮膚テストで交叉反応性を示した薬剤は使用しないことと記載されている。この記載は、ヨーロッパで行われた多施設プロスペクティブ試験の結果26)がエビデンスとされているが、同じ報告の中にある即時型副作用症例に対する検討結果に関してはガイドラインに反映されておらず、遅発性副作用と即時型副作用では免疫学的機序の関与の程度が異なる可能性も考えられる。そのような背景もあるので、遅発性副作用と急性副作用に対する検討を分けて紹介するが、いずれの報告も症例数はごく限られたものであり、ここで紹介する情報をもってエビデンスとできるものではない。あくまで副作用既往の症例に対し造影剤の使用が回避できないような場合に参考とする情報であり、通常の造影検査における副作用予知を目的とするものでないことに十分留意いただきたい。

なお、皮膚テストには皮内テスト、プリックテスト、パッチテストがあるが、皮内テストとプリックテストは観 察 す る 時 間 に よ り、15分 後 の 評 価 で はIgE

(immunoglobulin E)によるⅠ型アレルギー反応を、24

~48時間後ではT細胞によるⅣ型アレルギー反応を評価することとなる。パッチテストはT細胞によるⅣ型アレルギー反応のみの評価になるとされる。

1. 遅発性副作用例での検討

1990年代に遅発性副作用に関する報告が数多く行われたが、発現頻度やリスク因子の検討が主たるもので、皮膚テストによる被偽薬の確認や交叉反応の有無についての検討は限られていた。その理由として、皮膚テストでの検討は副作用が発現した症例を対象とするため症例が限られることや放射線科での皮膚テストの実施は現実的には困難であり、皮膚科での実施が必要となる点などがあげられる。

ヨード造影剤に対する遅発性副作用は、ヨードそのものよりも造影剤の側鎖や造影剤分子そのものに対する反応である可能性が報告27、28)されているが、パッチテストと皮内テストでは異なる結果となる場合がある。また、皮内テストでは用いる試験薬の濃度によっても異なる結果となる場合もあり、コンセンサスを得るには至っていなかったと思われる。近年の報告も症例数に関しては限られたものではあるが、造影剤間の交叉反応について検討された報告を紹介する。

◆ Brockowら26)はヨード造影剤でアレルギー性副作用のあった患者220例(即時型副作用:122例、遅発性副作用:98例)を対象に皮膚テストの有用性を検討している。この報告の中で、遅発性副作用例に関する検討では、皮膚テスト陽性となったのは38%(37/98)で、被偽薬で皮膚テスト陽性となった25例に対する交叉反応試験では88%(22/25)の症例で交叉反応がみられ、化学的構造の類似する造影剤間で交叉反応が認められることを報告している(表16)。

◆ ヨード造影剤に対する副作用発現のみられた12例(11例は遅発性副作用)を対象に、T細胞が関与する副作用の発現機序をin vitro、in vivoで検討した報告29)では、遅発性副作用例の半数以上が皮膚テストで交叉反応が確認され、皮膚組織を用いた免疫組織学的検討では、Ⅳ型アレルギーでみられる所見が複数の症例で確認されたと報告している

(表17)。造影剤を繰り返し投与される患者は今後も増えることが予想され、使用した造影剤名の記録の重要性を示唆している。

◆ ヨード造影剤に過敏症を示した23例(17例は即時型、6例は遅発型)を対象に6種の非イオン性造影剤で皮膚テストを行った報告30)では、被偽薬に対する皮膚テストの陽性率は、即時型で64.7%

(11/17)、遅発性で50%(3/6)となり、造影剤に対する過敏症の診断や再度造影を行う場合の造影剤の選択に有用な情報になる可能性を示唆している(表18)。

2. 即時型副作用例での検討

一般に造影剤アレルギーといわれる副作用の発現機序についてはいまだ不明な点が多く、IgEの関与以外にも造影剤の直接的な好塩基球やマスト細胞への刺激と

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表16〜18の造影剤略号一覧

非イオン性モノマー型IOP:Iopamidol IOH:Iohexol IOV:Ioversol IOM:Iomeprol

Iopr:Iopromide IOB*:Iobitridol Iope*:Iopentol

非イオン性ダイマー型 IOD:Iodixanol IOT:Iotrolan

イオン性 IOX:Ioxaglate AMI:Amidotrizoate Ioxi*:Ioxithalamate

表中に試験法の記載のないものは,プリックテスト,皮内テスト,パッチテストのいずれかまたは複数で陽性となったものを陽性として記載している.いずれの表も★:被偽薬,網掛け:陽性,空欄:陰性,/:未実施としている.なお,赤太枠内は国内でも使用されている非イオン性モノマー型造影剤となる.

*:国内未発売品.

表16 Brockowらの遅発性副作用例での交叉反応試験結果26)

症例No.非イオン性 イオン性

モノマー型 ダイマー型IOP IOH IOV IOM Iopr IOB* Iope* IOD IOT IOX AMI Ioxi

1 ★2 ★3 ★ ★4 ★5 ★67 ★8 ★ ★9 ★10 ★1112 ★13 ★14 ★15 ★161718 ★19 ★20 ★21 ★22 ★23 ★24 ★ ★25 ★

症例No.6,17は被偽薬不明.

活性化や補体を介した非特異的な活性化、キニン系の活性化など単一の機序ではなく様々な機序が関係しているものと考えられる。臨床で特に問題となるのは、中等度以上の副作用と思われるが、その発現率自体は低く、これらの症例を対象として検討を行うには相当数の症例と時間が必要となることは想像に難くなく、十分なエビデンスを得ることは難しい側面を有している。ここで紹介するいくつかの報告をみると、即時型副作用の発現機序の一部は免疫学的機序による可能性があることを示しており、中等度以上の副作用が発現した症例で、造影剤使

用が回避できないような症例に対し、使用する造影剤の選択を行う際に参考とできる可能性もある。また、これらの検討結果は、副作用を発現した造影剤と異なる造影剤を用いることを支持する情報ともなる。

◆ ヨード造影剤でアレルギー性副作用がみられた患者220例(即時型副作用:122例、遅発性副作用:98

例)を対象に皮膚テストの有用性を検討した報告26)

では、即時型副作用のあった122例に対する皮膚テストの陽性率は全体で26%(32/122)であった。しかし、皮膚テストの種類により結果は異なり、

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表18 Ahnらの遅発性副作用例での交叉反応試験結果30)

症例No

皮内テスト 48時間 パッチテスト

非イオン性モノマー型ダイマー型

非イオン性モノマー型ダイマー型

IOP IOH IOV IOM Iopr IOD IOP IOH IOV IOM Iopr IOD

1 ★ ★

2 ★ ★

3 ★ ★

4 ★ ★

5 ★ ★

6 ★ ★

プリックテスト陽性は3.2%(4/122)、皮内テスト(20分後)陽性は25%(30/122)、10~24時間後陽性は2.5%(3/121)との結果が示されている。交叉反応をみた11例では、交叉反応のみられた5

例でも交叉反応を示さない造影剤が存在している(表19)。

◆ ヨード造影剤に過敏症を示した23例(17例は即時型、6例は遅発型)での検討30)では、被偽薬に対する 皮 膚 テ ス ト の 陽 性 率 は、 即 時 型 で64.7%

(11/17)、遅発性で50%(3/6)で、即時型副作用を対象とした結果をみると、プリックテストより

皮内テストの方が陽性の頻度は高いことがうかがえる(表20)。

◆ 即時型副作用がみられた38例を対象とした検討31)

では、皮膚テストが実施されたのは26例で、皮膚テスト陽性例をアレルギータイプ、陰性例を非アレルギータイプとした場合、26例の内分けは非アレルギータイプが26%(n=7)、アレルギータイプが73%(n=19)であった。交叉反応は19例中6

例で確認されたが、交叉反応を示した造影剤は少ない結果を報告している(表21)。

表17 Kannyらの遅発性副作用例での交叉反応試験結果29)

症例

非イオン性イオン性

モノマー型ダイマー型

IOP IOH IOV IOM Iopr IOB* Iope* IOD IOX AMI Ioxi

A ★

B ★

C ★ ★ ★

D ★

E ★

F ★

G ★

G’ ★

H ★

I ★

J ★

K ★ ★

L ★

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表19〜22の造影剤略号一覧

非イオン性モノマー型IOP:Iopamidol IOH:Iohexol IOV:Ioversol IOM:Iomeprol

Iopr:Iopromide IOB*:Iobitridol Iope*:Iopentol

非イオン性ダイマー型 IOD:Iodixanol IOT:Iotrolan

イオン性 IOX:Ioxaglate AMI:Amidotrizoate Ioda*:Iodamide Ioxi*:Ioxitalamate

表中に試験法の記載のないものは,プリックテスト,皮内テスト,パッチテストのいずれかまたは複数で陽性となったものを陽性として記載している.いずれの表も★:被偽薬,網掛け:陽性,空欄:陰性,/:未実施としている.なお,赤太枠内は国内でも使用されている非イオン性モノマー型造影剤となる.

*:国内未発売品.

表19 Brockowらの即時型副作用例での交叉反応試験結果26)

症例No.非イオン性

イオン性モノマー型 ダイマー型

IOP IOH IOV IOM Iopr IOB* Iope* IOD IOT IOX AMI Ioxi Ioda*

1 ★2 ★3 ★45 ★6 ★7 ★8 ★9 ★10 ★11 ★

症例No.4は被疑薬不明で,皮内テスト(非イオン性造影剤使用)で5分後に全身性の蕁麻疹,鼻声門浮腫が発現した.この症例でのプリックテストは陰性であった.

表20 Ahnらの即時型副作用例での交叉反応試験結果30)

症例No.

皮内テスト 20分 プリックテスト

非イオン性モノマー型 ダイマー 非イオン性モノマー型 ダイマー

IOP IOH IOV IOM Iopr IOD IOP IOH IOV IOM Iopr IOD

1 ★ ★

2 ★ ★

3 ★ ★

4 ★ ★

5 ★ ★

6 ★ ★

7 ★ ★

8 ★ ★

9 ★ ★

10 ★ ★

11 ★ ★

12 ★ ★

13 ★ ★

14 ★ ★

15 ★ ★

16 ★ ★

17 ★ ★

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111(111)

さらに、皮膚テストなどの結果からチャレンジテストの実施や再度の造影検査を実施した報告もある。

◆ アナフィラキシー反応のみられた96例を対象とし、アナフィラキシーがIgEを介するものか、また、被偽薬の特定だけでなく、その後に造影検査を行う場合に使用する造影剤の選択が可能かを検討した報告32)では、96例中、皮内テスト陽性となったのは4例(4.2%)で、これらはIgEを介するアレルギー反応ととらえ、4例中2例では皮内テ ス ト と 好 塩 基 球 活 性 化 試 験(basophil

activation test: BAT)で陰性となった造影剤を

用い、30分間隔で0.05mLから徐々に量を増やし25mLまでの計49.05mLを静脈内投与でチャレンジテストが実施され、いずれも陰性の結果が得られている(表22)。

◆ 即時型副作用のみられた106例を対象に皮内テストを行い、その結果から造影剤の選択を検討した報告33)では、即時型副作用の被偽薬に対し皮内テストが陽性となったのは11例の10.4%で、プリックテストは全例が陰性の結果が得られた。陽性となった11例中7例に対し8種類のヨード造影剤を用いた皮膚テストで交叉反応を確認し、陰性となっ

表21 Dewachterらの即時型副作用例での交叉反応試験結果31)

症例No.

非イオン性イオン性

モノマー型 ダイマー

IOP IOH IOV IOM Iopr IOB* Iope* IOD IOX AMI Ioxi

1 ★

2 ★

3 ★

4 ★

5 ★

6 ★

7 ★

8 ★

9 ★

10 ★

11 ★

12 ★

13 ★

14 ★

15 ★

16 ★

17 ★

18 ★

19 ★

表22 Trckaらの即時型副作用例での交叉反応試験結果32)

症例No.

皮内テスト BAT チャレンジテスト

(静脈内投与)非イオン性モノマー型 非イオン性モノマー型

IOP IOM Iopr Iope* IOP IOM Iopr Iope*

1 ★ ★ Iopr�使用

2 ★ ★

3 ★

4 ★ ★ IOP使用

BAT:好塩基球活性化試験.

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表23 Prieto-Garcíaらの即時型副作用例での交叉反応試験結果33)

症例No.

非イオン性イオン性 チャレンジ

テスト(静脈内投与)

モノマー型 ダイマー

IOP IOH IOV IOM IOB* IOD IOX AMI

1 ★ IOV使用

2 ★ IOV使用

3 ★ IOV使用

6 ★ IOP使用

8 ★

9 ★

10 ★ IOV使用

た造影剤を用いたチャレンジテストが5例で行われ、いずれも陰性の結果が得られ、さらに2例では交叉反応で陰性となった造影剤を用いた造影CT

が施行されている(表23)。 これらの報告では、診断や治療において造影剤の

使用が避けられない患者は少なからず存在し、それらの患者での造影剤選択は重要な問題であり、皮膚テストで陽性となった造影剤はもちろん、交叉反応で陽性となった造影剤は使用すべきでないとしている。

以上のように副作用に対する皮膚テストでの交叉反応を確認した報告が散見されるが、皮内テストではテストで使用する検体の希釈の程度でも異なる結果31)が得られるなど、皮膚テストの種類や皮膚テストの実施時期など課題も少なくない。なお、皮膚テストでも重篤な副作用が発現しているため、交叉反応の有無を確認する場合には、重篤な副作用に対応できる準備や患者へ

表24 ヨード造影剤に副作用歴のある患者115例での再投与での検討結果

再投与での副作用発現率

再投与の使用造影剤 例数 再投与での副作用発現例数

同じ造影剤 13 2(15.38%)

異なる造影剤 102 12(11.76%)

Total 115 14(12.17%)

再投与での副作用の重症度

再投与での副作用の重症度

No Miid Moderate Severe

既存の副作用�重症度

Mild 100�(89.29%) 12�(10.71%) ― ―

Moderate 1�(50.00%) 1�(50.00%) ― ―

Severe 0�(0.00%) 1�(100.00%) ― ―

のインフォームドコンセントも必須になると思われる。また、これらの報告は、通常の造影検査で副作用予知を目的とするものでない事を十分認識していただきたい。

3. 造影剤副作用歴のある患者に対する造影剤再投与時

の副作用発生頻度について

造影剤副作用歴のある患者に対し、副作用予防目的での前投薬投与を行わず造影剤の再投与が行われた症例に対する調査を行ったので、その結果を以下に紹介する

(unpublished personal data, Kuwatsuru) (表24)。対象は造影CTで副作用の既往のある症例に対し、予

防的前投薬なしで再造影検査を施行された115例である。再投与では12.2%で副作用が見られた。また、再投与で使用した造影剤については、前回と同じ造影剤の使用か異なる造影剤の使用かによる副作用の比較では、異なる造影剤使用の方がやや副作用発現頻度が少ないが、統計学的有意差は認められなかった。さらに、副作用の既往の重症度別の再造影剤投与時の重症度との関連で

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後、7~14日後に前値に戻るとされるが、中には腎機能低下が進行し、透析が必要となる場合もある。

CINの定義はヨード造影剤投与後、72時間以内のSCr

値が前値より0.5mg/dL以上または25%以上の増加を示すもので、造影剤以外の原因が除外される場合とされている。

コレステロール塞栓など造影剤以外の要因も造影後の急性腎障害の原因となることもあり、CINはPC-AKI

(acute kidney injury)(造影後の急性腎障害)のサブグループとして位置付ける考えもある。しかしながら、CINとPC-AKIを明確に区別することは困難な場合もあり、これまでのCINの報告には偽陽性も含まれている可能性も否定できない。

CINの発現率については報告により大きな差異があり、CIN定義の違い、対象とされる患者背景や原疾患など不均一性の存在、造影剤の投与経路の違いなどが主な要因であると思われる。

現在でも数多くのCINに関する報告が行われているが、まだいくつもの課題を抱える問題であるといえる。

1. 腎機能の評価指標

CINの定義ではSCr値が用いられているが、クレアチニンの産生は筋肉量に比例するため、筋肉の少ない患者や筋肉量が減少するような疾患では低値となるので、年

は、軽度の副作用の既往の場合、再投与では副作用の発現した症例は10%程度で、以前の副作用よりも重症度が高くなった症例はなかった。

自験例での結果を含め、副作用歴のある患者での造影剤の再投与に関して、免疫学的検討の報告を中心に紹介した。今後、さらに検討が行われると思われるが、本当の意味で造影剤使用を禁忌とすべき副作用とはどのようなものであるかを考えていく必要があると思われる。これまで、副作用を一括りでとらえていた場合も少なくないと思われるが、我々も造影剤による副作用を評価する際には少なくともアレルギー性と非アレルギー性に分けてとらえていく必要があるのではないかと思われる。参考として、ACRで用いられている副作用分類を記す(表25)。

造影剤腎症(contrast induced nephro-pathy: CIN)

近年、心腎関連など腎障害の発現が予後にも関わる因子であることや、慢性腎臓病(chronic kidney disease:

CKD)が末期腎不全の予備軍であることなどから造影剤による腎障害も注目されるようになった。造影剤による腎障害は古くから知られているが、一般的には可逆性で、血清クレアチニン(SCr)値は3~5日後にピークに達した

表25 ACRの副作用分類

重症度 アレルギー性症状 非アレルギー性症状

軽症 症状の増悪はなく限定的

限局性の蕁麻疹/掻痒限局性の皮膚の浮腫局所の掻痒,喉頭の“イガイガ感”鼻閉くしゃみ/結膜炎/鼻漏

限局した嘔気/嘔吐,一過性のフラッシュ/熱感/悪寒頭痛,めまい/不安/味覚異常軽度の高血圧自然消失する血管迷走神経反応

中等症 �症状がより顕著で,一般的な医学的管理を必要とする.治療しなければ重度になる可能性が一部ある.

びまん性の蕁麻疹/掻痒バイタルの安定したびまん性紅斑呼吸困難のない顔面浮腫呼吸困難のない喉の圧迫感や嗄声軽度あるいは低酸素症のない喘鳴/気管支痙攣

持続する嘔気/嘔吐高血圧切迫症孤発性胸痛治療を要するが反応する血管迷走神経反応

重症 �しばしば生命を脅かされ,適切に管理されていない場合,永久的な罹患や死亡につながる.

呼吸困難を伴うびまん性浮腫/顔面浮腫低血圧を伴うびまん性紅斑喘鳴and/or低酸素症を伴う喉頭浮腫喘鳴/気管支痙攣での著明な低酸素症アナフィラキシーショック(低血圧+頻脈)

治療抵抗性の血管迷走神経反応不整脈痙攣,発作高血圧緊急症

心肺停止は重篤なアレルギー性,非アレルギー性のいずれでも起こる非特異的な終末像である.機序が不明な場合アレルギー性と判断されることが多い.肺水腫は稀な重篤副作用であるが心源性,非心源性がある.非心源性肺水腫はアレルギー性,非アレルギー性のいずれでも起こり,機序が不明な場合アレルギー性と判断されることが多い.

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齢や性別による違い、体格や消耗性疾患の存在などによる筋肉量の減少に注意する必要がある。また、クレアチニン値には10%程度の日内変動があり、激しい運動時や肉の大量摂取時には上昇し、タンパク摂取制限時には低下することも知られている。近年、簡便に腎機能を評価するためSCr値と年齢、性別の3つの要素から糸球体濾過量を推算するeGFR(estimated glomerular filtration

rate)が用いられるようになってきた。日本人のデータから作成された「日本人のGFR推算式」(日本腎臓学会作成)が造影剤使用に際しての腎機能の指標として広く用いられてきているが、eGFRの正確度はGFR実測値の±30%の間に75%の症例が含まれる程度であることの認識も必要であると思われる。

より正確な指標としてはシスタチンC精密測定が2005

年より保険適用となっており、SCr値よりも軽度の腎機能障害がとらえられ、血清シスタチンCからGFRを推算することもできSCr値からのeGFR creatとシスタチンC

からのeGFR cysの平均値を用いると、推算GFRの正確度が高まるとされているが、保険上の制約もある。これらは主に糸球体の機能を評価するものであるが、より早期に腎障害を検出するための指標として尿細管障害の指標も注目されており、尿中L型脂肪酸結合蛋白(liver-type

fatty acid binding protein: L-FABP)やNGAL(Neutrophil

gelatinase-associated lipocalin:好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン)あるいはLCN2 (リポカリン2)といった指標も報告されている。

2. CINのリスク因子

CINの最も重要な危険因子は「既存の腎機能障害」であると認識されているが、動脈内投与と静脈内投与ではCIN発現のリスクの程度が異なると考えられ、現在の「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン 2012」で は、 動 脈 内 投 与 で はeGFR<60mL/分/1.73m2、静脈内投与ではeGFR<45mL/分/1.73m2で、補液による予防策の実施が推奨されている。

他のリスク因子としては加齢、CKDを伴う糖尿病(CKDを伴わない場合のリスクについては議論のあるところではある)、利尿薬の使用(特にループ利尿薬による脱水は腎機能を悪化させる)、NSAIDs(non-steroidal

anti-inflammatory drugs)の使用(腎血流を減少させるため、可能であれば前後24時間の使用を中止する)、使用する造影剤の量(造影剤腎症は用量依存性があると考

えられるため)、短期間の繰り返しての造影剤使用(静脈内投与でも24~48時間での反復使用でリスクが増加するとの報告がある)といったものがある。

3. 造影剤投与経路での違い

前述のように動脈内投与と静脈内投与ではCIN発現のリスクの程度が異なると考えられるが、それぞれに課題も存在する。ヨード造影剤の動脈内投与と静脈内投与では対象とされる患者の背景因子として原疾患の違いや使用される造影剤量の違い、動脈内投与ではカテーテル操作による動脈硬化病変からのコレステロール塞栓を引き起こす可能性などがあげられる。動脈内投与での報告はPCIや冠動脈造影での報告が多いが、脳血管造影や末梢動脈疾患、TACEなど造影剤を使用する様々な検査や治療でのCIN発現率の検討もされており、動脈内投与であっても対象疾患や部位によりCINのリスクが若干異なる可能性もある。一方、静脈内投与ではコントロール群として非造影群を設定し比較を行った報告では、造影群と非造影群でCIN発現に有意差のない結果を示す報告もあり、静脈内投与でのCINリスクが過大評価されている可能性が示唆されている。しかしながら、造影CTを行う対象と単純CTのみを行う対象では原疾患やその重症度を含めた背景因子には少なからずバイアスが存在することも想定される。

興味深い報告として、同一患者で7日から1年以内(中央値37日)にヨード造影剤を動脈内投与と静脈内投与された170例での検討で、リスク因子を補正するとCINの発現率は動脈内投与 14.0%、静脈内投与 11.7%と類似していた結果の報告34)もされている。

4. 造影CTでのCIN検討

コントロール群として非造影CT群をおき、腎機能を層別化したCIN発現率の検討報告では、造影CTと非造影CTでは全体でのCINの発現率に有意差はみられないものの、重症の腎機能低下群では造影CTでの発現率が高い結果の報告35、36)や、コントロール群はおかれていないが約10万例(約14万検査)の結果では、既存の腎機能障害がCINの最も高いリスク因子であるとする報告37)もある。一方で、腎機能低下の程度によらず差はみられなかった結果の報告38)もある。これらの報告をみると既存の腎機能の評価をSCrかeGFRで行っているかで異なる結果となっている(表26)。成人の入院患者でCTが施行

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表26 造影CTでのCIN検討報告

Murakamiらの報告35)

 使用造影剤:300〜370mgI/mL,1〜2mL/kg,150mL上限 CIN定義:48〜72時間後のSCrの25%または0.5mg/dL以上の増加

n eGFR(平均) CIN発現率(全体)腎機能別CIN発現率

eGFR�60〜45 eGFR�45〜30 eGFR<30

造影CT 938 44.5±9.99 6.1% 4.4%(30/679) 10.5%(23/219) 10%(4/40)

非造影CT 1,164 44.9±11.7 5.8% ― ― ―

Davenportらの報告36)

 使用造影剤:300〜370mgI/mL,30〜200mL CIN定義:24〜72時間後のSCrの50%または0.5mg/dL以上の増加

n CIN発現率(全体)腎機能別CIN発現率

eGFR≧60 eGFR�45〜59 eGFR�30〜44 eGFR<30

造影CT 8,826 7.0%5.4%

�(379/6,971)10.5%

(134/1,273)16.7%

(90/538)36.4%(16/44)

非造影CT 8,826 6.9%5.5%

�(384/6,996)10.8%

(130/1,207)14.2%

(78/551)19.4%(14/72)

Leeらの報告37)

 使用造影剤:不明 CIN定義:3日以内のSCrの25%または0.5mg/dL以上の増加

n CIN発現率(全体)腎機能別CIN発現率

eGFR≧45 eGFR<45

造影CT 140,838 2.2% 1.6%(2,132/135,054) 31.3%(971/5,784)

McDonaldらの報告38)

 使用造影剤:300mgI/mLほか,80〜200mL CIN定義:24〜72時間後のSCrの0.5mg/dL以上の増加

n腎機能別CIN発現率

SCr�<1.5 SCr�1.5〜2.0 SCr>2.0

造影CT 10,686 2.9%(210/7,281) 8.5%(209/2,447) 10.0%(96/958)

非造影CT 10,686 3.1%(226/7,281) 8.8%(215/2,447) 10.8%(103/958)

された症例を対象としたSCrとeGFRでの腎機能のリスク評価を行った報告39)では、SCrでのリスク評価の限界を示唆している(表27)。

5. CINの予防法に関して

有効性が広く認識されているものは輸液のみであるが、輸液として何を用いるか、どのようなレジメが最適かについては明確な結論に至っていない。現時点では生理食塩液、重曹輸液などの等張性輸液製剤を造影検査の前後に経静脈的に投与することが推奨されている(図5)。

飲水での水分摂取による検討報告もあるが、輸液と同等の効果が得られるかについてはエビデンスが不十分であり、現時点では飲水のみより輸液を行うことが推奨され

る。造影剤によるCINの発現メカニズムについては現在で

も明確にはなっていないが、造影剤のもつ浸透圧や粘度、投与される造影剤の量により、腎での血行動態や酸素分圧の低下、血管作動性物質の合成障害などによる虚血に伴う影響、造影剤の直接的な毒性などの関与が推定されている。また、腎の構造上、皮質側より髄質側がより虚血状態を招きやすいと考えられる(図6)40)。

CIN予防を目的として、活性酸素種の産生抑制を抑える抗酸化作用やフリーラジカルのスカベンジャー作用、血管拡張による腎血流保持作用などを期待してN-アセチルシステイン、スタチン類、テオフィリン、hBNP(ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド)、アスコルビン酸など

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図5 造影剤腎症の予防を目的とした輸液法の実際

図6 造影剤腎症(CIN)発現の推定機序40)

表27 Davenportらの28,390例のスクリーニングにおけるSCrとeGFRの腎機能評価39)

女性:14,786例 平均年齢:58歳(範囲:18〜103歳)男性:13,604例 平均年齢:58歳(範囲:18〜101歳)

SCr eGFR≧60 eGFR�45〜59 eGFR�30〜44 eGFR<30

<1.5 85.2% 11.8% 3.0% 0%

≧1.5 0.7% 19.6% 51.1% 28.6%

≧1.6 0% 7.0% 55.4% 37.6%

≧1.7 0% 2.8% 48.5% 48.7%

≧1.8 0% 1.4% 40.3% 58.3%

≧1.9 0% 0.5% 33.5% 66.0%

≧2.0 0% 0% 25.4% 74.6%

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数多くの薬剤での検討が行われているほか、薬剤以外にも酸素吸入や虚血耐性を期待する遠隔プラコンディショニングといった検討も行われている。

おわりに

造影剤使用に伴うインフォームドコンセントは広く行われるようになったが、それでも臨床の場で造影剤使用の判断において苦慮する場合もある。そのような場合にどのような判断を行うかをあらかじめ院内で取り決めを行っていくことも重要となる。

副作用やCINを確実に予防する方法が確立していない現状では、より慎重に適応判断を行うとともに、リスクのある患者で造影剤を使用せざる場合には、細心の注意を払うとともに、何らかの異常がみられた際の処置・対応についても十分な準備を行うことが求められる。

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