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1 2.構造設計(非クリープ域) 次の項目について説明する。 (0) 設計法の概要 (1) 機器分類と状態分類 (2) 構造設計基準 (2.1) 解析による設計と公式による設計 (2.2) 応力分類 (2.3) 延性破断および塑性崩壊に対する設計 (2.4) シェイクダウンと熱ラチェットに対する設計 (2.5) 疲労破損に対する設計 (2.6) 座屈に対する設計 軽水炉構造設計

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2.構造設計(非クリープ域)

次の項目について説明する。

(0) 設計法の概要

(1) 機器分類と状態分類

(2) 構造設計基準

(2.1) 解析による設計と公式による設計

(2.2) 応力分類

(2.3) 延性破断および塑性崩壊に対する設計

(2.4) シェイクダウンと熱ラチェットに対する設計

(2.5) 疲労破損に対する設計

(2.6) 座屈に対する設計

軽水炉構造設計

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(0)設計法の概要:応力分類による設計

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応 力 分 類 概 略 説 明

一次応力

一次一般膜応力 外力によって断面に発生する平均応力

一次局部膜応力 外力によって断面に平均に発生する応力だが、周囲との変形の整合のために発生する応力

一次曲げ応力 モーメントによって断面内で引張から圧縮に変化する応力

二次応力 熱応力など

ピーク応力 応力集中などにより、一次+二次応力に付加されるもの

応力を、その発生原因によって区分し、区分毎に異なる制限値を与える

応力分類の考え方は、1963年に発行された米国機械学会の原子炉圧力容器の規格(ASME Boiler and Pressure Vessel Code Section Ⅲ)に初めて採用された。その後まもなく、日本にも取り入れられた。

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(0)設計法の概要:損傷防止の考え方

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損傷の様式 説 明 具体的な対処策

(1)延性破壊 金属の棒を引張っていくと、最終的に破断するような現象

一次一般膜応力を制限

(2)塑性崩壊 金属の棒に曲げ荷重を加えていくと、最終的に曲げ荷重を少し増やしただけで曲げ角度が著しく大きく増えるような現象

一次(膜+曲げ)応力を制限

(3)座屈 金属の棒に圧縮荷重を加えていくと、弾性範囲でも急に著しい変形が生じるような現象

外圧や圧縮応力などを制限

(4)疲労損傷 一回加えただけでは損傷しない大きさの荷重でも、繰り返し加えていると、ついにはき裂が生じ、破断に至るような現象

一次応力+二次応力+ピーク応力を制限

(5)その他 進行性変形、脆性破壊、応力腐食割れ等

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(1) 機器分類と状態分類

重要度の観点から求められる機器分類

原子炉施設を設計する場合,まず機器などを安全上の重要度によっていくつかのクラスに分類し,その区分に応じて要求する健全性の水準を定めている。この機器などの分類は、“機器分類”とよばれている。

原子炉施設で使用されている構造物(以下,原子炉構造物という)を考えると,原子炉容器のようにその内部に多量の放射性物質を保有するとともに,炉心を冷却する冷却材を保持するきわめて重要な機器から、万一破損を生じても直接的に炉心の損傷を引き起こす恐れがなく,その波及効果が比較的小さい機器まで,安全上の重要度に幅があることに気がつく。

この場合,原子炉施設のすべての機器に対して同一の設計裕度を課すよりも、安全上重要な機器ほど高い健全性を要求する方が合理的である。

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(1) 機器分類と状態分類(2) 重要度の観点から求められる機器分類

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(1) 機器分類と状態分類(3)

発生頻度に応じた運転状態分類

原子炉構造物の設計に当たって,いかなる荷重を想定すべきか考えてみよう。

通常運転時に作用する運転圧力,通常起動・停止に伴う熱荷重,運転時に何らかの異常でトリップしたときの過渡変化に伴う熱荷重および圧力,設計上想定されるいくつかのレベルの地震荷重などをあげることができよう。ただし,これらの荷重はそれぞれ発生頻度が異なっている。たとえば,原子炉の通常起動に伴う熱荷重などは各運転サイクルごとに発生するものであるが,設計用限界地震(いわゆるS2地震)のように発生頻度がきわめて低い稀な事象として仮想的に想定ずるものもある。

設計上考えなければならない荷重またはその荷重が生じる状態を発生頻度に応じていくつかに区分し,発生頻度の高い事象ほどより厳しい制限を課して設計することは合理的といえる。

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(1) 機器分類と状態分類(4) 発生頻度に応じた運転状態分類

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(2) 構造設計基準 (2.1) 解析による設計と公式による設計

原子炉構造物のうち,原子炉容器など,とくに重要な構造物(第1種容器)に適用される構造設計基準としては,ASME Boiler and Pressure Vessel Code Section III Subsection NB*1(以下,ASME Code Sec. III Sub. NBと略す),告示501号の第1種容器構造規格などがある。

原子力以外の各種のボイラおよび圧力容器を対象とした構造設計基準であるASME Boiler and Pressure Vessel Code Section ⅥIIは。今世紀初めに米国でボイラの爆発事故が相ついで起こったことを契機として最初に制定されたASME Boiler and Pressure Vessel Code Section I (Power Boiler用設計基準)の系譜に属している。

(1)公式による設計: その基本思想は“公式による設計(design by rule)”とよばれるものである。その主要

な内容は,単純な規格計算によって腹部の周方向応力が許容応力値以下であることを確認することである。

(2)解析による設計: 一方,ASME Code Sec.III Sub.NBの基本思想は,"解析による設計(design by analysis)"とよばれるものである。その考え方は,起こりうるすべての破損様式を考慮し,各破損様式に対して応力制限,温度制限などを設け,詳細な解析によってこれらの制限を満足することを確認することにより,構造健全性を評価しようとするものである。

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(2) 構造設計基準 (2.1) 解析による設計と公式による設計(2)

ASME Codeは次の11のSectionとその規定の事例解釈であるCode Caseから成立.

Section I Power Boilers Section II Material Specifications Section III Nuclear Components Section IV Heating Boilers Section V Nondestructive Examination Section VI Recommended Rules for Care and operation of Heating Boilers Section VII Recommended Rules for Care of Power Boilers Section VIII (Unfired)Pressure vessels Section IX Welding and Brazing Qualifications Section X Fiberglass Reinforced Plastic Pressure vessels Section XI Rules for Inservice Inspection of Nuclear Power Plant Components

この中で,Section IIIは,原子炉施設の機器の構造規格であり,二つの編を用意している. Division 1 Code for Metal Components Division 2 Code for Concrete Reactor Vessels and Containments

これらは,次の6種に分類された機器について,それぞれ規定を設けている。 Class 1(Highest Quality) Class 2(Intermediate Quality) Class 3(Slightly better than commercial quality) Class CS(For core support structures) Class MC(Metal containment : Containment Vessels) Component Support

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(2) 構造設計基準 (2.2) 応力分類

一端を固定した棒の他端に,右図(a)では分銅を載せて一定の荷重を与え,また図(b)ではネジを刻み,締めつけて一定の強制変位を与えている。

両者の応力は,その発生要因が異なっており,前者を荷重制御型応力,また後者を変位制御型応力とよんで区別している。この両者の応力の性質は基本的に異なっていることが重要である。すなわち,

(1)荷重制御型応力の場合,変形が増加しても応力は緩和されることがなく,この種の応力が過大になると変形が無制限に大きくなり直接延性破断に至る恐れがある。

(2)変位制御型応力は,発主要因である変位が規定されているのでこれに伴う変形やひずみは有限である。

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(2) 構造設計基準 (2.2) 応力分類(2)

構造設計基準では,上述の荷重制御応力および変位制御型応力の概念を取り入れて,発生応力を1次応力,2次応力およびピーク応力に分類している。これらを具体例をあげて説明しよう。

1次応力の1例として,左図(a)に示すような一定の内圧を受ける円筒容器の胴部の局方向膜応力σpをあげよう 。外力,

内力およびモーメントに対して単純なつり合い関係を満足する垂直応力またはせん断応力が1次応力である。

2次応力の代表例は,熱応力と不連続応力である。熱応力は,温度変化による材料の自由な熱膨張や熱収縮が拘束されることによって生じる応力であり,その例を右図(b)(内部流体の温度変動により肉厚方向に直線的温度勾配を生じた円筒容器の熱応力)に示す。

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(2.2) 応力分類(3) 2次応力(不連続応力)とピーク応力 不連続応力の例を図(a)(内圧を受ける円筒容器と球形鏡との接合部の応力)に示す。円筒殼と球殼とでは,内圧を受けたときに生じる半径方向変位に差がある。このように変位差がある不連続な形状を強制的に連続にして接合すると局所的に高い応力が発生する。このような応力が不連続応力とよばれるものである。不連続応力は変位制御型応力である。隣接部分の拘束または自己拘束により生じる垂直応力,またはせん断応力が2次応力である。

ピーク応力の一例として,図(b)に示すような円孔縁の応力があげよう。この場合は応力集中に起因するものであるが,他の例として,変形には寄与しないが疲労に関与する局部熱応力がある。このように,応力集中または局部熱応力により,1次応力または2次応力に付加される応力の増加分がピーク応力である。

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(2.2) 応力分類(3) 応力分類と破損様式

発生応力を分類する必要があるのだろうか。理由は,この応力分類と構造物の破損様式との間に結びつきがあるからなのである。たとえば,延性破断に寄与するのは1次応力のみであり,2次応力およびピーク応力は寄与しない。また,応力分類と破損様式との関連がわかれば,その知見に基づいて,1次応力,2次応力およびピーク応力をそれぞれが寄与する破損様式に応じて適切に制限することにより,構造物の健全性が評価できるからである。

応力分類と破損様式との結びつきをまとめると次のようになる。すなわち

(a)延性破断,塑性崩壊の破損様式に対して寄与するのは,1次応力のみである。

(b)過大な塑性変形,弾塑性座屈の破損様式に対して寄与するのは,1次応力と2次応力である。

(c)疲労破損に対してピーク応力を考慮する。

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(2.2) 応力分類(4) 応力分類と破損様式(2)

構造設計基準では,これらの応力分類と破損様式との結びつきを踏まえて,それぞれのカテゴリの応力に対して異なる合理的な許容限界を設けて制限している。

表には脆性破壊および高温クリープに関する破損が現れていない。

(1)脆性破壊の防止については,応力解析よりもむしろ切欠き靭性を考慮した材料選択および温度制限によって対処する方法がとられている。たとえば,フェライト系材料では,破壊靭性試験を実施し,破壊力学に基づく手法によって最低使用温度においても材料に十分な靭性があることを確認することが要求される。

(2)一方,高温クリープについては,材料別に使用上限温度を定めて,この破損様式を除去する方法がとられている。軽水炉では,たとえばPWRの原子炉冷却材圧カバウンダリの最高使用温度が約343°Cであるように,ほとんどすべての機器が,クリープを問題としない温度域(フェライト系材料:375°C以下,オーステナイト系材料および高ニッケル合金:425°C以下)で用いられる。

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(2.3) 延性破断および塑性崩壊に対する設計 (1)塑性崩壊

容器の断面を単純化したモデルとして,左図に示す矩形断面はりを考える。容器が実際に耐えうる荷重限界を検討するため,右図のような応力ーひずみ関係を有する材料(弾完全塑性体という)の矩形断面はりについて,弾性限を越えて塑性域に入った場合,どの程度まで耐荷能力があるかを調べる。

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(1)塑性崩壊(2)

(1)矩形断面はりに加える曲げモーメントの大きさをゼロから次第に大きくしていくと,まず断面の上下縁が最初に降状点に達する(図(a))。

(2)曲げモーメントをこれより大きくすると塑性域が断面の縁から中央へと拡がり,図(b)の状態になる。

(3)曲げモーメントをさらに増加させると塑性域が断面の中央に達し,図(c)の全断面

塑性の状態になる。はりはもはやこれ以上の曲げモーメントには耐えきれなくなり,無制限な変形を生じるようになる。このように少なくとも構造物の一部で有限な塑性変形が荷重の増加なしに起こりうるとき,この構造物は塑性崩壊にあるという。

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(1)塑性崩壊(3)

まず断面の上下縁が最初に降状点に達する(図(a))。このときの曲げモーメント(降伏モーメントという)Myは,

My=σy ・Ze (Ze:断面係数)

矩形断面はりの場合

2

e bd6

1Z

弾塑性状態では、

2

d

yy

y

0A 0

0

bydyσ2σbydy2σydAM

2

0

2

y by3

1bd

4

塑性崩壊での耐えうる最終モーメント(塑性モーメントという)Mpは,yo→0の極限を考えて

2

yp bd4

1σM

モーメントの計算

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(1)塑性崩壊(4)

曲げモーメントを受けるはりが最終的に耐えうる限界Mpははりの断面が最初に降伏するMyよりも,増倍率にして

だけ大きいことがわかる。ここで,Kは断面形状の関数であって,形状係数とよばれる。矩形断面の場合は,K=1.5である。

最終的に耐えうる増倍率

epyp /ZZ/MMK

構造物の耐えうる限界Mpが降伏モーメントMyよりも大きい理由は,負荷曲げモーメントを越えても,その超過分|σy|に相当する曲げモーメントを,応力が再配分されることによって負担できるからである。

上式のKは,この応力再配分の能力の大きさを示すものである。たとえば,I型ビームは,断面の縁に比べ中央部分の面積が小さく,応力再配分の余地が小さいため,Kは1.1程度である。

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(1)塑性崩壊(5) 塑性崩壊の防止(モーメントと軸力の制限)

負荷形式が曲げの場合,塑性崩壊を防止するには,曲げモーメントMを

と制限しなければならないことがわかる。

pyZM

弾性計算から算出される弾性応力で表現すると、次のとおり。

yepye 5.1Z/ZM/Z

一方,負荷形式が軸力Pの場合,塑性崩壊を防止するには

ここで,A : 断面積である。

yP/A

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(1)塑性崩壊(6) 軸力と曲げが同時に作用する場合の塑性崩壊

塑性崩壊(3)において,曲げモーメントMと軸力Pについて平衡関係より次式が成り立つ。

bd2aσP y

aba-dσM y

上式でa=d,a=d/2は,それぞれM=0,P=Oの場合に相当し,

軸力による降伏荷重:

塑性モーメント :

である。上式を用いると

1d

4a-

d

4a

P

P2

22

y

bdσP yy

4/bdσM 2

yp

d

4a

d

4a

M

M2

2

p

1M

M

P

P

p

2

y

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(1)塑性崩壊(7) 塑性崩壊に対する許容限界

1M

M

P

P

p

2

y

モーメントと軸力が重畳する場合の塑性崩壊は、次のとおり。

上式を書き換えると、

11.5

PP

y

b

2

y

m

y

m

2

y

m

y

bm

1.5

PP151

PP.

さらに、 次の量を導入する。

1次一般膜応力 Pm=P/A、 1次曲げ応力 Pb=M/Ze

これを図示すると,右図のようになり,矩形断面はりを仮定する場合の塑性崩壊に対する許容限界を知ることができる。

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(2)延性破断および塑性崩壊の防止基準

設計限界は,図の斜線部として与えられる。すなわち

ybm

ym

PP

3/2P

図からわかるように,ここには適切な安全余裕が含まれている。

延性破断の場合,関連する材料強度は,引張強さであるから,許容応力(設計応力強さとよぶ。記号はSm)は,材料の降伏点と引張強さの両者を考慮して,次のように定められている。

① フェライト系材料では次の(a),(b),(c),(d)の値のうちで最小のもの。

(a)室温での規格引張強さの1/3の値 (b)各温度での設計引張強さの1/3の値 (c)室温での規格降伏点の2/3の値 (d)各温度での設計降伏点の2/3の値

② オーステナイト系材料および高ニッケル合金では,次の(a),(b), (c),(d)の値のうちで最小。

(a)室温での規格引張強さの1/3の値 (b)各温度での設計引張強さの1/3の値 (c)室温での規格降伏点の2/3の値 (d)各温度での設計降伏点の0.9倍の値

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(2)延性破断および塑性崩壊の防止基準(2)

一例として,SUS 304 の設計応力強さSmを図に示す。

さて,許容応力としてSmを用いると,限界式は以下のとおり。

mbm

mm

1.5SPP

SP

と書ける。なお,運転状態III,IVのように発生頻度の低い状態に対しては,許容応力の割増しが行われている。

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5.2.4 シェイクダウンと熱ラチェットに対する設計

上に述べたルールに従えば,1次応力のみの場では塑性変形をある一定量にとどめることができる。しかし,さまざまな荷重を受ける構造物において過大な塑性変形を防止するには,これだけでは十分でない。

1次応力に加えて2次応力が繰返して作用する場合には,ある限界を越えると変形が一方向に進行し,それが累積する現象(ラチェッティングという)がみられる。

すなわち,過大な塑性変形あるいは進行性変形を防止するには,1次応力と2次応力を同時にある範囲に制限しなければならないことになる。

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(1)シェイクダウン

(2.4) シェイクダウンと熱ラチェットに対する設計

図(a)に示す長さlの一様断面体を考える。材料の応力ーひずみ関係は弾完全塑性体を仮定する。この体の下端に,①引張強制変位δを与え(負荷過程),次に,②この変位を解除し棒を元の長さlこ戻す(除荷過程),という操作を繰返すことにしよう。(すなわち①→②→①→②→‥・)。

(a)強制変位δが小さくO<a=δ/l≦εy (すなわちO<σ≦σy)の場合は明らかに弾性範囲内にある。すなわち,図6.12に示す応力ーひずみ線図上では,0Aと弾性線上を往復する。

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(1)シェイクダウン(2)

(b)強制変位がεy<ε2=δ/l≦2εy (すなわちσy

<(σ)R≦2σy)の場合,1回目の負荷過程は,応力ーひずみ腺図上では,原点OからBに達して降伏し,ひずみがε2のCに至る。次に,除荷過程では,Cから弾性線と同一の傾きで左下方に移動し,全ひずみがゼロのDに至る。この結果,0D分の残留応力が生じるが,これはσyより絶対値が小さいので再降伏しない。

その後,2回目以降の負荷除荷の過程ではCD間の直線上を往復するだけで,弾性応答をするようになる。このように,塑性変形が生じる可能性がある範囲内において,荷重が繰返されるとき,構造物のひずみサイクルが安定し,弾性的に応答する状態をシェィクダウン(shake down)という。

以上から,応力の変動範囲が2σy以内の場合は,構造物は弾性応答することがわかる。このようにシェイクダウンが期待できる場合は,ひずみの変動範囲を弾性解析の結果から簡易に推定することができるなど設計が容易となるので,弾性解析による設計を行う場合の一つの目標とされる.

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(1)シェイクダウン(3)

(c)強制変位がε3=δ/l>2εyすなわち(σ)R>2σy)の場合,1回目の負荷過程は,応力ーひずみ線図上では,0→B→Eとなり,除荷過程はE→F→Gという軌跡を描く。この結果,0Gという降伏応力に等しい圧縮残留応力が生じる.2回目以降の負荷除荷の過程では というヒステリシスループを描き,各サイクルごとに塑性ひずみがサイクリックに変化する。

FEHG

ここでは,1軸の場合を取扱っているが,一般的なシェイクダウン限界の評価として,メラン(Melan)の定理,コイター(Koiter)の定理が知られている。参考までにMelanの定理は,"除荷時につり合い条件を満足する残留応力状態があり,それに与えられた荷重や温度変化によって起こる弾性計算応力を加えた合計の応力が,降伏条件をおかさないならば,その構造物はシェイクダウンする"と説明される。

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(2)熱ラチェットに対する設計

一定荷重を受ける構造物に熱応力が繰返し加えられる場合を考える。一定荷重による1次応力と熱応力がある限界を越えた組合せになっている場合,ひずみまたは変形が荷重の作用方向に熱サイクルとともに進行し累積することがある。これは,熱ラチェットとよばれ,高温機器の破損様式の一つとして重要である。

3本棒モデル

材料は,σyを降伏点(εyは降伏ひずみ)とする弾完全塑性体とする。 3本棒モデルでは,上端は剛体の天井に固定され,下端には剛体のブロックをつけ,これに荷重Pが常に加えられている。3本の棒のうち,外側の2本の断面積はA,中央の1本は2Aとする。ここで,外側の2本の棒が図のように周期的にΔTだけ高い温度まで加熱され,再び初期温度まで戻されるとしよう。ただし,中央の棒は初期温度のまま一定とする。

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(2)熱ラチェットに対する設計(2)

初期状態 最初,3本の棒には外力Pによりσm=xσy(O<x<1)の応力が生じている。これは,図ではao,bo点として表示されている。ここで,aは周期的に加熱,冷却される外側の棒,bは一定温度の中央の棒を示す。

0.5サイクル後 外側の2本の棒が,ΔTだけ高い温度まで加熱されたとする。加熱の間に外側の棒は熱膨張し,中央の棒は引き伸されるため,中央の棒は今まで以上の荷重を負荷するようになり応力はboからσyまで弾性的に増加し,さらには塑性流動を生じb0.5 点に至る。

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(2)熱ラチェットに対する設計(3)

0.5サイクル後(続) 一方,外側の棒は,中央の棒の応力が増加したので,外力Pとつり合うための負担が減るため応力は減少する。すなわち外側の棒の応力σは,外力Pとのつり合いから、外側の棒の軌跡はa0→a0.5で示される。

1サイクル後 次に,外側の棒が冷却され,元の温度に戻されたとしよう。 a0.5から降伏点σyのa1まで弾性的に増加し,それ以後は塑性流動する 。一方,中央の棒は,b0.5点から弾性的にb1まで下がるが,外側の棒が塑性流動を生じているので,そこで停止する。

2サイクル以後 2サイクル目の加熱,冷却サイクルでは,中央の棒は

b1→b0.5→b1.5→b2,外側の棒は,a1→a1.5→a0.5→a2の軌跡を描く。また,第2サイクル以降も同様なパターンの繰返しである。

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(2)熱ラチェットに対する設計(4)

この3本棒モデルの条件では,第2サイクル以後に各サイクルごとに塑性伸びがΔεだけ下向きに累積していく(熱ラチュットが生じる)ことがわかる。3本棒モデルに対して,定常的な1次応力と各サイクルごとに繰返される熱応力のいかなる組合せで熱ラチェツトが生じているか検討する。

(a)0.5サイクル目において,中央の棒の応力が降伏点に達しない場合,

すべてのサイクルで弾性挙動を示し,進行性変形は生じない。

yTm σσσ

(b)1サイクル目において,外側の棒が降伏点に達しない場合,すなわち

では,シェイクダウンする。

yTym σσσ2σ

(c) Δε>Oすなわち

の領域ではラチェツトが生じる。

yT

m σ2

σσ

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(2)熱ラチェットに対する設計(5)

これらの領域を図に示す。重要な点は,一定の1次応力(σm)と繰り返しの2次応力(σT)の組合せにおいては,弾性領域(E),シェイクダウン領域(S),ラチェツト領域(R)が存在することである。また,設計上は熱ラチェツトの防止の観点から,ラチェツト領域の境界が重要である。

三本棒モデル

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(2)熱ラチェットに対する設計(5)

円筒殼モデル

原子炉構造物は容器,配管にみられるように円筒殼であることが多い。 Breeは円筒殼について熱ラチェットの発生領域を調べ,図の線図を得た。ここで,各領域の意味は次のとおりである。

E:弾性領域であり,塑性ひずみは生じない。

S1,S2:シェイクダウン領域とよばれ,第1回目の熱応力の作用時に塑性ひずみを生じるが,以降のサイクルではシェイクダウンし,進行陸変形は生じない。添字1および2は,それぞれ第1サイクルで片面および両面が降伏することを示す。

P:塑性サイクル領域とよばれ,塑性ヒステリシスループを描き,変形は進行しない。

R1,R2:ラチェット領域とよばれ,各サイクルごとに1次応力の作用方向に変形が進行していく。添字1および2は,それぞれ第1サイクルで片面および両面が降伏することを示す。

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(2.5) 疲労破損に対する設計

一般に構造物は一定の静荷重以外に変動する荷重を繰返し受けることが多い。このような場合,設計上考慮しなければならないのは疲労とよばれる破損様式である。原子カプラントの構造設計においても,疲労破損は主要な設計考慮事項であるが,この場合はとくに低サイクル疲労を主要な破損様式として考えることである。低サイクル疲労とは,破壊までの繰返し数がたかだか105回程度の現象のことである。

以上の観点から設計基準では,次のような疲れ解析の手順を与えている。

(1)使用材料に適合する設計疲れ線図を選ぶ。

(2)想定される事象別に,弾性応力解析を行い,発生応力を算定する。

(3)(2)で求めた各発生応力から繰返しピーク応力強さとその繰返し数を算定する。

(4)繰返しピーク応力強さSa1,Sa2,Sa3‥に対応する許容繰返し数N1,N2, N3, ‥を設計疲れ線図から読みとる。

(5)マイナー則に基づいておのおのの負荷サイクルについて,累積疲れ係数を求め、1以下であるか確認する。

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(1)使用材料に適合する設計疲れ線図を選ぶ。

設計疲れ線図は,多数の平滑小型試験片を用いて,完全両振ひずみ制御試験を行って得られた,“ひずみ振幅と破損までの繰返し数の関係”を表すデータについて最適曲線(両対数で表される)を求め,ひずみ振幅について2,破損繰返し数について20の安全率を施して作成したものである(図参照)。

(2.5) 疲労破損に対する設計(2)

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(2.5) 疲労破損に対する設計(3)

(1)使用材料に適合する設計疲れ線図を選ぶ。

設計疲れ線図の一例を図に示す。設計疲れ線図では,ひずみ振幅の代りに,ヤング係数を乗じて応力のディメンジョンに直した仮想的な弾性応力振幅で示されているが,意味のある物理量はあくまでもひずみ振幅であることに注意されたい。

このような塑性ひずみ主体の応力場にあっては,負荷サイクルとして,一定の応力振幅(応力制御)とするか,あるいは一定のひずみ振幅(ひずみ制御)とするかにより疲労破壊の挙動は異なる(図参照)。前者の場合は,例えば片振りでは,材料は塑性伸びを続けて破壊するのに対し,後者の場合は,ヒステリシスループを継続して破壊する。

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(2.5) 疲労破損に対する設計(4)

低サイクル疲労を問題とするような応力集中部では高応力,高ひずみ状態の繰返し状態が現われ,塑性ひずみが主体となる応力場が形成されている。 1次応力は降伏点の2/3以下に制限されており,また,(1次十2次)応力は,繰返し負荷サイクルの中で基本的にシェイクダウン基準により制限されているので,対象とする構造物はピーク熱応力が存在する表層や局所的な不連続部を除けば総体的には弾性的挙動となる。疲労の発生が予想される周囲は弾性体で取り囲まれて拘束されているので,繰返し応答は本質的にひずみ制御的と考えられる。

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(2)想定される事象別に,弾性応力解析を行い,発生応力を算定する。

(3)(2)で求めた各発生応力から繰返しピーク応力強さとその繰返し数を算定。この手順は以下のとおりである。

① 各事象間のすべての組合せのなかから最大の繰返しピーク応力強さSa1を与える組合せを選び,その繰返し数n1を求める。

② 与えられた事象の発生回数から①の組合せを除いたもののなかから最大の繰返しピーク応力強さを与える組合せを選び,その繰返し数n2を求める。

③ 以下,与えられた事象の発生回数を完全に消費するまで順次繰返しピーク応力強さSa1および対応する繰返し数n1を求める。

(4)繰返しピーク応力強さSa1,Sa2,Sa3‥に対応する許容繰返し数N1,N2,N3‥を設計疲れ線図から読みとる.

(5)マイナー則に基づいておのおのの負荷サイクルについて,U1=n1/N1,N2=n2/N2,‥・を求め,累積疲れ係数Uが1以下か確認する。

(2.5) 疲労破損に対する設計(4)

k

1i

iUU

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(2.6) 座屈に対する設計

構造物に外圧,軸圧縮荷重などが作用し,過大な圧縮応力が生じる場合には座屈の恐れがある。構造設計基準では,原子カコンポーネントに関連が深い円筒殼および球殼の構造形態に対して,外圧や軸圧縮が作用する場合の座屈荷重(座屈応力)について,詳細な応力解析を実施することなく設計チャートにより簡易に許容値(許容外圧や許容軸圧縮荷重)を求めることができるようになっている。ここでは,座屈に関する設計チャートの構成および内容を理解するため,外圧を受ける円筒殼を例にとって検討しよう。

外圧を受ける円筒殼

図に示す外圧を受ける円筒殼において軸長が長い場合の弾性座屈圧カPcは

33

2cr

t2.2E

r

t

ν14

EP

座屈とは比較的薄肉の構造物が圧縮応力を受ける場合において,圧縮応力がある限界値に達すると,急に力と直角方向に大きなたわみを生じ,載荷能力を失う現象である。外圧を受ける円筒殼では,ある限界圧を越えると図の右図に示すように表面がくぼみ,それが増大して,ついには押しつぶされる。

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外圧を受ける円筒殼(2)

弾性座屈圧力Pcにより円筒殼の周方向に生じる応力σcは

2

c

cD

t1.1E

2t

DPσ

外圧Pを受ける円筒殼の周方向に生じる応力σは、σ=PD/2tであるので,いま仮に安全率を4とすると,許容圧力Paは座屈応力のσcを用いて

D/t

B

D/t

1

2D

2t

4

1P cc

a

部材内に生じる応力が弾性限を越えて塑性域に入ったところで起こる塑性座屈についても考慮しなければならない。塑性座屈の評価に当たっては,従来より塑性変形理論(plastic deformation theory)によることが多く,設計基準でも塑性変形理論に基づいて評価している。これは,上式などにおいて,ヤング係数Eの代りに有効係数E’を代入して評価する方法である。有効係数E’としては,図に示す接線係数

(tangent modulus)Et,割線係数(secant modulus)Es,あるいは等価係数(reduced modulus)Erが用いられる。

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外圧を受ける円筒殼(3)

塑性座屈領域ではヤング係数Eの代りに有効係数E’を用いるという評価を設計チャート上で体系的に行うために

Aと表記するεc E

2B

E

σc

の関係を用い,さらに式を変形し

0

2

0

1.5

LLt/D1.1

LLL/D

t/D3.1

A

と無次元化して表示する。 Aはひずみを表し,使用材料によらず円筒殼の形状のみにより定まるので,外圧を受ける円筒殼の座屈限界を図に示すように,Aを横軸に,L/Dを縦軸に,D/tをパラメータにとって1枚のチャートにまとめることができる。