高齢透析患者における 前希釈オンラインHDF での ヘ … ·...

16
高齢透析患者における 前希釈オンラインHDF での ヘモダイアフィルタ選択 医療法人社団城南会 西條クリニック鷹番 朝日大樹、長友まどか、中島成仁、土屋光清、 下地 博、藤田菊恵、西條公勝、西條元彦 第26回日本臨床工学会 於、国立京都国際会館 平成28年5月15日(日)

Transcript of 高齢透析患者における 前希釈オンラインHDF での ヘ … ·...

高齢透析患者における 前希釈オンラインHDF での ヘモダイアフィルタ選択

医療法人社団城南会 西條クリニック鷹番

朝日大樹、長友まどか、中島成仁、土屋光清、

下地 博、藤田菊恵、西條公勝、西條元彦

第26回日本臨床工学会 於、国立京都国際会館

平成28年5月15日(日)

演題発表に関連し、開示すべき COI 関係にある 企業などとして、

①顧問: なし ②株保有・利益: なし ③特許使用料: なし ④講演料: なし ⑤原稿料: 東レ・メディカル株式会社 ⑥受託研究・共同研究費: なし ⑦奨学寄付金: なし ⑧寄附講座所属: なし

⑨贈答品などの報酬: なし

第26回日本臨床工学会

COI開示

筆頭発表者名:朝日大樹

高齢透析患者の前希釈オンラインHDFにおける

ヘモダイアフィルタの選択について検討したの

で報告する。

目的

対象と方法

ニプロ社製ヘモダイアフィルタMFX-Sで30L前希釈オンライン

HDFを20ヵ月間施行している高齢透析患者19名の中で、GNRI

91未満およびDWの低下などの栄養障害があり、同意が得られ

た13名をアルブミン漏出を抑えた東レメディカル社製ヘモダイ

アフィルタTDF-Mに変更した。

今回は、13名の中でTDF-Mを12ヵ月間

使用した8名で検討した。

対象と方法

TDF-M変更群:8名

MFX-S継続群:6名

コントロール

コントロール

MFX-S 20ヵ月目

MFX-S

MFX-S

12ヵ月間

観察期間: 12ヵ月間 分類 :MFX-SからTDF-Mに変更→ TDF-M変更群

統計学 :前希釈オンラインHDF施行20ヵ月目を 検定 基準(以下コントロール)とした。 コントロールをベースラインとして、 Wilcoxon符号付き順位検定で比較し、 危険率5%未満を有意水準とした。

① 栄養状態(コントロール、6ヵ月後、12ヵ月後)

② 透析中の処置総数と各処置回数 (コントロール、4ヵ月後、8ヵ月後、12ヶ月後)

③ 血清β2-MGとα1-MGの推移(コントロール、8ヵ月後)

n-PCR、血清リン、%CGR、GNRI、

DW、月平均体重増加率

各処置項目

① 液温調節 ② 下肢挙上 ③ 除水調整 ④ 除水停止

⑤ 補液・生食 ⑥ 透析中止 ⑦ 血流量低下

1ヵ月間の各処置回数の合計を処置総数として評価した。

対象と方法 評価項目

TDF-M変更群

患者数 8名

平均年齢 77.9±6.2

原疾患 DMN 2名 その他 3名 不明 3名

ADL※ 軽度症状 5名

50%以上起居 3名

対象と方法 患者背景

わが国の慢性透析療法の現況(2010年)における分類

軽度症状… 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが歩行、軽作業や座業はできる。

50%以上起居… 歩行や身のまわりの事はできるが、時に少し介助のいることもある。

TDF-M変更群

条件 コントロール 変更後

ヘモダイアフィルタ MFX-S TDF-M

膜面積 [m2] 1.65 ±0.30 1.50

治療時間 [hr] 4.0 4.0

血流量 [mL/min] 215.0 ±17.7 215.0 ±17.7

Kt/V [-] 1.54 ±0.20 1.53 ±0.21

β2-MG除去率(%) 71.7 ±5.3 66.8 ±5.0

α1-MG除去率 (%) 24.0 ±5.2 1.1 ±5.2

対象と方法 治療条件 **P<0.01 mean±SD

変更前をベースラインとしてWilcoxon符号付き順位検定

**

**

**

※TDF-M変更3ヵ月後のデータ

6ヵ月後 12ヵ月後

6ヵ月後 12ヵ月後

コントロール 6ヵ月後 12ヵ月後 コントロール

コントロール

**P<0.01 *P<0.05 mean±SD

コントロールをベースラインとしてWilcoxon符号付き順位検定

栄養状態の推移①

※12ヵ月後 TDF-M変更群は6名

血清リン [mg/dL]

n-PCR [g/kg/day] 月平均体重増加率 [%]

栄養状態の推移②

6ヵ月後 12ヵ月後

6ヵ月後 12ヵ月後

コントロール 6ヵ月後 12ヵ月後 コントロール

コントロール

**P<0.01 *P<0.05 mean±SD

コントロールをベースラインとしてWilcoxon符号付き順位検定

※12ヵ月後 TDF-M変更群は6名

GNRI [-] DW [kg]

%CGR [%]

透析中の各処置回数と処置総数&血圧推移

コントロール 4ヵ月後 8ヵ月後 12ヵ月後 コントロール 4ヵ月後 8ヵ月後 12ヵ月後

透析開始時 透析終了時 [mmHg] [mmHg]

回数

** *

*

* *

コントロールをベースラインとしてWilcoxon符号付き順位検定 **P<0.01 *P<0.05 mean±SD

TDF-M MFX-S

**

除去率

血清β2-MG&α1-MGの推移 コントロールをベースラインとしてWilcoxon符号付き順位検定 **P<0.01 mean±SD

(%) mg/L

N=8 N=8

**

**

β2-MG α1-MG β2-MG α1-MG

血清濃度

4月 10月 4月 12月 10月

6ヵ月間

2014年 2015年

血清β2-MG [mg/L]

症例 患者 :80代女性 原疾患 :糖尿病性腎症

認知症:なし 生活活動度:50%以上起居

条件:30L前希釈オンラインHDF 、QB=200mL/minで固定

MFX-15S TDF-15M MFX-15S

除去率(%)

β2-MG 77.4 α1-MG 32.9

除去率(%)

β2-MG 69.1 α1-MG 9.3

除去率(%)

β2-MG 75.9 α1-MG 35.7

4月 10月 4月 12月 10月

6ヵ月間

2014年 2015年

血清β2-MG [mg/L]

症例 患者 :80代女性 原疾患 :糖尿病性腎症

認知症:なし 生活活動度:50%以上起居

条件:30L前希釈オンラインHDF 、QB=200mL/minで固定

MFX-15S TDF-15M MFX-15S

除去率(%)

β2-MG 77.4 α1-MG 32.9

除去率(%)

β2-MG 69.1 α1-MG 9.3

除去率(%)

β2-MG 75.9 α1-MG 35.7

4月 10月 4月 12月 10月

6ヵ月間

2014年 2015年

血清β2-MG [mg/L]

4月 10月 4月 12月 10月

2014年 2015年

血清リン、n-PCR、%CGRが増加したことから

透析中の血圧が安定したことで、処置回数が減少し、身体的

要因による食欲低下が改善したと考えられた。

考察

ヘモダイアフィルタMFX-Sにおける高齢透析患者の前希釈オンラインHDFは、

HDに比べDWの維持、透析前後の血圧安定、処置総数の減少に有用性を報告

朝日大樹,他:高齢透析患者における前希釈on-lineHDFの有用性.腎と透析77別冊ハイパフォーマンス・メンブレン‘15:120-122,2015

栄養障害や循環動態が不安定な高齢透析患者は、低分子量

蛋白領域の除去率を抑えたヘモダイアフィルタへの変更に

よって、栄養状態改善と透析中の処置回数が減少した。

結語

アルブミン漏出を抑えた前希釈オンライン

HDF治療は、 栄養状態改善と処置総数の

減少に寄与するが、血清β2-MGの増加を

伴うため、栄養状態が改善した時は、

低分子量蛋白領域の除去率が高いヘモダ

イアフィルタの選択が必要である。