高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

36
高高高高高高高高高高高高高 高高 高高高高高高 高高高高 (体) 2012/11/14 高高高高高高 高高高 高高高 高高 高高高

description

高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について. 2012/11/14 社会福祉法人 創志会 理事長 新保 瑠美子. 高齢者虐待防止法の 施行の経緯と概要(1). ●法律の正式名称 『 高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援などに関する法律 』 ●法律の成立と施行 2005(平成17)年11月成立 2006(平成18)年4月施行. 高齢者虐待防止法の 施行の経緯と概要(2). ●法施行の背景 高齢者のための国連原則 (1991年) 「高齢者は、尊厳及び保障をもって、肉体的・精神的虐待から解放された生活を送ることができる」 ● 介護保険制度の目的 - PowerPoint PPT Presentation

Transcript of 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

Page 1: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

高齢者介護の実際と権利擁護(身体拘束の廃止)について

2012/11/14 社会福祉法人 創志会理事長 新保 瑠美子

Page 2: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

2

高齢者虐待防止法の施行の経緯と概要(1)

●法律の正式名称– 『高齢者虐待の防止、高齢者の擁護者に対する支援などに関する法律』

●法律の成立と施行– 2005(平成17)年11月成立– 2006(平成18)年4月施行

Page 3: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

3

高齢者虐待防止法の施行の経緯と概要(2)

●法施行の背景– 高齢者のための国連原則(1991年)

• 「高齢者は、尊厳及び保障をもって、肉体的・精神的虐待から解放された生活を送ることができる」

●介護保険制度の目的– 高齢者の尊厳を保持し、有する能力に応じて自立した生活を営めるようにする

●家庭や介護施設などで高齢者への虐待が表面化、社会的な問題に

Page 4: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

4

高齢者虐待防止法の施行の経緯と概要(3)

●法の目的(第1条)① 『高齢者の尊厳の保持』を大きな理念とする

② 『尊厳の保持』を妨げる高齢者虐待の防止が極めて重要

③そのために必要な措置を定める

高齢者の権利利益を守る

Page 5: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

5

高齢者虐待防止法の施行の経緯と概要(4)

① 高齢者虐待を初めて定義

② 高齢者虐待の早期発見・早期対応を主眼としている

③ 家庭内の虐待に止まらず、施設や在宅サービス事業の従業者等による虐待も対象としている

④ 高齢者を養護する人の支援も施策の柱の一つとしている

⑤ 財産被害の防止も施策の一つに取り上げている

⑥ 住民に身近な市町村を虐待防止行政の主たる担い手として位置付けている

⑦ 法施行後に検証を重ねることが予定されている

●法の特徴

(厚生労働省作成資料より)

Page 6: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

6

養介護施設従事者等による   高齢者虐待の実態(1)●実態把握

– 都道府県が情報をまとめ、年度ごとに公表⇒厚生労働省が全国の状況をまとめ、毎年公表(ホームページ等で公開)

– 厚生労働省公表資料より http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/bukyoku/rouken.html

平成21年度

平成20年度

平成 19年度

平成 18年度

市町村への通報等 423件 469件 379件 273件

都道府県への通報等 83件 83件 62件 59件

通報数の合計 452件 506件 432件 290件

虐待の事実認定件数 76件 70件 56件 54件

Page 7: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

7

養介護施設従事者等による高齢者虐待の実態(相談・通報者内訳)

本人 家族・親族

当該施設職員

当該施設元職員 医師 介護支援

専門員 国保連 都道府県 その他 匿名 合計

21年度実数 14 105 123 51 2 16 1 38 61 41 45220年度実数 14 156 116 56 3 16 4 24 56 61 50619年度実数 20 97 99 47 6 20 6 22 68 47 43218年度実数 11 67 63 29 2 10 8 17 45 38 29021年度割合 3.1% 23.2% 27.2% 11.3% 0.4% 3.5% 0.2% 8.4% 13.5% 9.1% 100.0%20年度割合 2.8% 30.8% 22.9% 11.1% 0.6% 3.2% 0.8% 4.7% 11.1% 12.1% 100.0%19年度割合 4.6% 22.5% 22.9% 10.9% 1.4% 4.6% 1.4% 5.1% 15.7% 10.9% 100.0%18年度割合 3.8% 23.1% 21.7% 10.0% 0.7% 3.4% 2.8% 5.9% 15.5% 13.1% 100.0%

※通報者は元職員まで含めると 40% 弱が施設職員!!通報する前に、正しい支援・援助ができるような協力体制がない組織風土・職員意識なのでは?と思うと悲しい結果です。

合わせて 38.5%

Page 8: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

8

養介護施設従事者等による高齢者虐待の実態(虐待の種類・類型)

身体的虐待 介護等放棄 心理的虐待 性的虐待 経済的虐待 種別不明 合計21年度実数 53 2 26 8 1 0 9020年度実数 52 4 21 3 3 0 8319年度実数 48 10 19 3 5 0 8518年度実数 40 7 20 6 3 1 7721年度割合 58.9% 2.2% 28.9% 8.9% 1.1% 0.0% 100.0%20年度割合 62.7% 4.8% 25.3% 3.6% 3.6% 0.0% 100.0%19年度割合 56.5% 11.8% 22.4% 3.5% 5.9% 0.0% 100.0%18年度割合 51.9% 9.1% 26.0% 7.8% 3.9% 1.3% 100.0%

身体的虐待は身体拘束の可能性が高い!!

Page 9: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

9

特別養護老人ホーム

介護老人保健施設

介護療養型医療施設

認知症対応型共同生活介護

有料老人ホーム

小規模多機能型居宅介護

軽費老人ホーム

養護老人ホーム

短期入所施設

訪問介護訪問入浴介護

老人テ イ゙サ ーヒ ズセンター

特定施設入居者生活介護

合計

21年度実数 23 11 2 17 7 2 1 2 3 3 2 3 7620年度実数 21 11 0 22 0 1 0 1 1 7 3 3 7019年度実数 17 9 2 19 7 0 0 1 4 1 2 0 6218年度実数 19 10 0 10 7 0 1 0 3 3 1 0 5421年度割合 30.3% 14.5% 2.6% 22.4% 9.2% 2.6% 1.3% 2.6% 3.9% 3.9% 2.6% 3.9% 100.0%20年度割合 30.0% 15.7% 0.0% 31.4% 0.0% 1.4% 0.0% 1.4% 1.4% 10.0% 4.3% 4.3% 100.0%19年度割合 27.4% 14.5% 3.2% 30.6% 11.3% 0.0% 0.0% 1.6% 6.5% 1.6% 3.2% 0.0% 100.0%18年度割合 35.2% 18.5% 0.0% 18.5% 13.0% 0.0% 1.9% 0.0% 5.6% 5.6% 1.9% 0.0% 100.0%

養介護施設従事者等による高齢者虐待の実態(施設・事業所内訳)

Page 10: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

10

男 女 合計21年実数 34 104 13820年実数 31 73 10419年実数 21 79 10018年実数 20 74 9421年割合 24.6% 75.4% 100.0%20年割合 29.8% 70.2% 100.0%19年割合 21.0% 79.0% 100.0%18年割合 21.3% 78.7% 100.0%

養介護施設従事者等による高齢者虐待の実態(男女別・年齢別内訳)

64~ 65 69~ 70 79~ 80 89~ 90 99~ 100~ 合計21年実数 0 5 35 67 29 1 13720年実数 0 6 20 57 18 0 10119年実数 4 17 34 39 4 2 10018年実数 2 6 22 36 28 0 9421年割合 0.0% 3.6% 25.5% 48.9% 21.2% 0.7% 100.0%20年割合 0.0% 5.9% 19.8% 56.4% 17.8% 0.0% 100.0%19年割合 4.0% 17.0% 34.0% 39.0% 4.0% 2.0% 100.0%18年割合 2.1% 6.4% 23.4% 38.3% 29.8% 0.0% 100.0%

※それぞれ不明が、H20 : 3件、 H21 : 1件

Page 11: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

11

29~ 30 39~ 40 49~ 50 59~ 60~ 合計21年実数 21 19 17 9 8 7420年実数 21 19 15 9 9 7319年実数 16 12 8 10 7 5318年実数 19 16 2 8 4 4921年割合 28.4% 25.7% 23.0% 12.2% 10.8% 100.0%20年割合 28.8% 26.0% 20.5% 12.3% 12.3% 100.0%19年割合 30.2% 22.6% 15.1% 18.9% 13.2% 100.0%18年割合 38.8% 32.7% 4.1% 16.3% 8.2% 100.0%

介護職員 看護職員 管理者 施設長 開設者 合計21年実数 70 6 3 4 3 8620年実数 77 1 5 1 1 8519年実数 58 3 6 0 2 6918年実数 55 5 2 1 1 6421年割合 81.4% 7.0% 3.5% 4.7% 3.5% 100.0%20年割合 90.6% 1.2% 5.9% 1.2% 1.2% 100.0%19年割合 84.1% 4.3% 8.7% 0.0% 2.9% 100.0%18年割合 85.9% 7.8% 3.1% 1.6% 1.6% 100.0%

※それぞれ不明が、H18 : 15件、 H19 : 16件、 H20 : 13件、 H21 : 16件※それぞれその他の職種が、H18 : 0件、 H19 : 0件、 H20 : 1件、 H21 : 4件

養介護施設従事者等による高齢者虐待の実態(虐待者の職種・年齢)

Page 12: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

12

養介護施設従事者等による高齢者虐待の実態(施設・事業所内訳)

自立 要支援1 要支援2 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5 合計21年度実数 4 1 2 16 14 21 50 28 13620年度実数 0 2 2 11 18 30 28 12 10319年度実数 1 0 2 2 11 24 37 23 10021年度割合 2.9% 0.7% 1.5% 11.8% 10.3% 15.4% 36.8% 20.6% 100.0%20年度割合 0.0% 1.9% 1.9% 10.7% 17.5% 29.1% 27.2% 11.7% 100.0%19年度割合 1.0% 0.0% 2.0% 2.0% 11.0% 24.0% 37.0% 23.0% 100.0%

※それぞれ不明が、H19 : 1件、 H20 : 1件、 H21 : 2件、平成 18年度は厚生労働省資料に記載なし

Page 13: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

13

養介護施設従事者等による   高齢者虐待の実態(2)●高齢者虐待と思われる行為を受けた利用者の特

徴– 年齢が高く後期高齢者(75歳以上が大半)– 要介護度がやや高い– 認知症の人の割合が高く、意思疎通の難しさ等の関連する問題がある

●高齢者虐待と思われる行為を行った職員の特徴- 年齢・性別・職種などに大きな特徴は考えにくい- 個人的な特性以上に、組織的な問題に関わる職務上の背景要因が考えられる

行動・心理症状(BPS D)の存在特に攻撃的言動や介護への強い抵抗がある

Page 14: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

14

高齢者虐待の考え方(1)

①報道などで顕在化した高齢者虐待以外にも、気づかれていない虐待がありうる。

● 『高齢者虐待』を考えるための2つの視点

意図的な虐待だが表面化していないもの(意図的虐待)結果的に虐待を行ってしまっているもの(非意図的虐待)『緊急やむをえない』場合以外の身体拘束

②明確に『虐待である』と判断できる行為の周辺には、判断に

迷う『グレーゾーン』が存在する。『虐待である』とは言い切れないが『不適切なケア』明確な線引はできず、『不適切なケア』を底辺として連続

Page 15: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

15

『不適切なケア』を底辺とする      『高齢者虐待』の概略図

表面化している案件

表面化していない案件

 不適切なケア

グレーゾーン

 高齢者虐待とは、「意図的虐待」と「非意図的虐待」の2つに大きく分類されます。すなわち、高齢者虐待を考えるとき「意図的虐待」を行っている者に対して「どう介入するか?」・「非意図的虐待」を行っている者を「どう支援するか?」という2つのベクトルで考えることが必要です。

※三角形の面積に虐待件数が比例

意図的虐待

非意図的虐待

高齢者が認識している案件

高齢者が認識していない案件

Page 16: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

16

高齢者虐待の考え方(2)

●不適切なケアから考える

『養介護施設従事者等による高齢者虐待』の問題は『不適切なケアから連続的に考える必要がある虐待が顕著化する前には、表面化していない虐待や、その

周辺の『グレーゾーン』行為があるさらにさかのぼれば、ささいな『不適切なケア』の存在が

放置されることで、蓄積・エスカレートする状況がある

『不適切なケア』の段階で発見し、『虐待の芽』を摘む取り組みが求められ

Page 17: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

17

 ある企業のサイトで『いまさら聞けない基本用語』第3位にランクインした『コンプライアンス』、みなさんはその意味を説明できますか?

社会秩序を乱す行動や社会から非難される行動をしないこと

◎法令遵守 ◎組織の倫理・経営倫理に伴った行動

応用的には、リスク管理の一部として『職員行動規範』として・・・

 もともと『コンプライアンス』とは、『コンプライ』(~を遵守する)という動詞の名詞形です。すなわち、目的語を伴わなければ意味不明な単語なのです。(英語圏の人が聞いたら「なにを?」って聞かれてしまうかも・・・) そんな曖昧な言葉が実際に我が国でどういった意味でよくつかわれているのでしょうか?

組織の中で・・・

一般的には・・・

ここでちょっと   コンプライアンスについて

これだけじゃない!!!

Page 18: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

高齢者虐待・     不適切なケアの背景

18

役割や仕事の範囲職員間の連携

理念とその共有組織体制運営体制

“ 非”利用者本位意識不足虐待・身体拘束に   関する意識・知識

負担の多さストレス組織風土

認知用ケアアセスメントと個別ケアケアの質を高める教育

Page 19: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

19

身体拘束がもたらす悪循環

身体拘束

体力の減衰痴呆の進行

せん妄・転倒等の2次的・3次的障害

さらに拘束が必要に・・・

「一

時」が「

常時」の拘束

に・・

死期を早める

結果にも・・

Page 20: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

20

身体的弊害

精神的弊害

社会的弊害

1.       本人の関節の拘縮、筋力の低下といった身体機能の低下や圧迫部位のじょく創の発生などの外的弊害をもたらす。 2.       食欲の低下、心肺機能や感染症への抵抗力の低下などの内的弊害をもたらす。

3.       車いすに拘束しているケースでは無理な立ち上がりによる転倒事故、ベッド柵のケースでは乗り越     えによる転落事故、らには抑制具による窒息等の大事故を発生

1.       本人に不安や怒り、屈辱、あきらめといった大きな精神的苦痛を与え、そして人間としての尊厳を侵す。

2.       身体拘束によつて、痴呆がさらに進行し、せん妄の頻発をもたらすおそれもある。

3.       本人の家族にも大きな精神的苦痛を与える。自らの親や配偶者が拘束されている姿を見たとき、混乱し、後悔し、   そして罪悪惑にさいなまされる家族は多い。 4.       さらに、看護・介儀スタッフも、自らが行うケアに対して誇りを持てなくなり、安易な拘束が士気の低下を招く。

身体拘束は、看護・介護スタッフ自身の士気の低下を招くばかりか、介護保険施設等に対する社会的な不信、偏見を引き起こす恐れがある。そして、身体拘束による高齢者の心身機能の低下はその人の QOLを低下させるのみでなく、さらなる医療的処置を生じさせ経済的にも少なからぬ影響をもたらす。

「機能回復」とは正反対!!

身体拘束がもたらす弊害

Page 21: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

21

身体拘束至る原因とは・・・

徘徊や興奮状態での周囲への迷惑行為

転倒のおそれのある不安定な歩行や点滴の抜去などの危険な行動

かきむしりや体をたたき続けるなどの自傷行為

姿勢が崩れ、体位保持が困難であること

身 体 拘 束

現象のみにとらわれない身体面・環境面・精神面を考慮したケアの徹底

根本的な原因の究明

5つの基本

起きる 食べる排せつする

活動する

を大切に!!

清潔にする

よりよいケア

「言葉による拘束」等の身体拘束禁止規定にない事柄にも注意!

Page 22: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

22

身体拘束とは・・・

11.   自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

1.       徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

2.       転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

3.       自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。

4.       点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。

5.       点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、   手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

6.       車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、    Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。

7.       立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。

8.       脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

9.       他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。

10.   行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

具体例をだしてみよう!

Page 23: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

23

高齢者虐待の考え方(1)

利用者が同じことを繰り返し訴えると、無視したり 「ちょっと待って」「さっきも言ったで

しょ」などの強い口調でこたえたりする。  自力で食事接種が可能だが時間がかかる利

用者に対し、時間節約のため職員がすべて介助して

しまう一斉介護のスケジュールがあるからという

理由で、利用者の臥床・離床・起床等を半強制的に行う

Page 24: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

24

○徘徊そのものを問題と考えるのではなく、そのような行動をする原因・理由を究明し、対応策をとる。

(例) ・例えば、心の中で描いている家に帰らなくてはと思い、夕方になると出かけようとする場合は、夕方寂しい思いを させないよう、一緒になじみの家具などの手入れをしたり、語りかけたりする。 ・歩き回っている高齢者の気持ちになって、一緒に歩いたり、疲れる前にお茶に誘うなどして本人を納得させる工 夫をする。

○転倒しても骨折やけがをしないような環境を整える。

(例) ・敷物、カーペット類を固定したり、コード類などの障害物をできる限り居室や廊下などから移動させたりしておく。 ・手すりなどのきめ細かな設置やトイレなどの必要箇所の常時点灯など転倒しにくい環境を整える。 ・弾力のある床材やカーペットを使用する。

○スキンシップを図る、見守りを強化・工夫するなど、常に関心を寄せておく。

(例) ・目を見て話しかける、手を握るなどスキンシップを図り、情緒的な安定を図る。 ・不安や転倒の危険性があるときは一緒に付き添い、ときおり声をかける。(遠いところや後方から声をかけると驚 いて転倒したり、振り向き時に転倒したりする恐れがあるので、必ずそばで声をかけるようにする。) ・目の届きやすいところにベッドを移動するなど見守りやすいように工夫する。(ただし・排せつや更衣を行うとき は別室に移動するなど、場所によってはプライバシーの保護に十分留意することが求められる。また、場所を移動 することで不安や混乱を招かないよう、説明と安心できる環境づくりを工夫する。) ・「ユニットケア」のように一定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。 ・夜間の観察や巡回の頻度を増やす。そのために夜間のスタッフを増やすなどの応援態勢を組む。

身体拘束回避の point①(1) ※ カッコのなかの数字は、P22とリンク

Page 25: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

25

身体拘束回避の point②(2・3)

○自分で動くことの多い時間帯やその理由を究明し、対応策をとる。

(例) ・例えば、昼夜逆転が起こり、夜中に起き出そうとする場合は、日中はベッドから離床するよう促すなど、一日の生活 リズムを整える。 ・昼夜逆転が起こらないよう、適切なケアと日中の適度な活動による刺激を増やしていく。(老年期は夜間排尿回数が 多いため、夜中に目が覚めて不眠となり、昼夜逆転が起こる場合や、向精神薬などにより睡眠時間が日中にずれ込む 場合などがある。)

○バランス感覚の向上や筋力アップのための段階的なリハビリプログラムを組んだり、また栄養   状態の改善を図ることなどにより、全体的な自立支援を図る。 ○ベッドから転落しても骨折やけがをしないような環境を整える。 (例) ・ベッドの高さを調節し、低くする。

・ベッド脇に床マットを敷く。 ・ベッドの高さや幅を認識できない場合、清潔さに配慮した上で、床に直接マットレスを敷き、その上で休んでもらう。 ・弾力のある床材やカーペットを使用する。

(例) ・ナースステーションの近くなど、日の届きやすいところにベッドを移動するなど見守りやすいように工夫す る。(ただし、排せつや更衣を行うときは別室に移動するなど、場所によってはプライバシーの保護に十分 留意することが求められる。また、場所を移動することで不安や混乱を招かないよう、説明と安心できる環 境づくりを工夫する。) ・「ユニットケア」のように一定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。 ・夜間の観察や巡回の頻度を増やし、そのために夜間のスタッフを増やすなどの応援態勢を組む。

○見守りを強化・工夫するなど、常に関心を寄せておく。

※ カッコのなかの数字は、P22とリンク

Page 26: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

26

身体拘束回避の point③(4・5) ※ カッコのなかの数字は、P22とリンク

○点滴、経管栄養等に頼らず、口から食べられないか十分に検討する。

(例) ・嚥下訓練を行いながら、 1 回に少しずつ口からの摂取を行い、徐々に回数を増やしていく。(誤嚥しやすい場合は食 後咳払いをさせたり、食べ物を吐かないように注意して吸引を行う。)・食事にとろみをつける、柔らかく煮るなど・飲み込みやすい工夫をする。 ・生活リズムを整えたり、食堂に連れ出したりすることで、本人の「食べたい」という意欲を引き出す。

○点滴、経管栄養等を行う場合、時間や場所、環境を選び適切な設定をする。

(例) ・ルートを襟から袖の中に通してとる。 ・刺入部を下肢よりとり、ルートをズボンの中に通す。 ・経管栄養のチューブが視野に入らないようにするため、鼻柱にそって額にテープで固定する、又は横から出して耳に かける。

(例) ・点滴や経管栄養を・スタッフの日の届く場所で行う。 ・処置中は会話やゲームなどをして患者の気をまぎらわす。 ・点滴を入眠時間に行う。 ・点滴台を利用し、いっしょに手をつないで歩くなど、利用者の動きに付き添う

○管やルートが利用者に見えないようにする。

○皮膚をかきむしらないよう、常に清潔にし、かゆみや不快感を取り除く。

(例) ・内服薬、塗り薬の使用などによりかゆみを取り除く。 ・入浴の際は、皮胎を不必要に落とさないよう、石けんをつけすぎたり、皮膚をこすりすぎたりしないように注意する。 ・入浴後は保湿クリームを用いる。 ・かゆみを忘れるような活動(アクティビティ)で気分転換を図る。

Page 27: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

27

身体拘束回避の point④(6・7) ※ カッコのなかの数字は、P22とリンク

○車いすに長時間座らせたままにしないよう、アクティビティを工夫する。 ○バランス感覚の向上や筋力アップのための段階的なリハビリプログラムを組んだり、 また栄養状態の改善を図ることなどにより、全体的な自立支援を図る。 ○立ち上がる原因や目的を究明し、それを除くようにする。

(例) ・不安、不快症状を解消するため、排せつパターンを把握するなど、様々な観点から評価し、原因を発見 する。(車いすに長時間同じ姿勢で座っているため、臀部が圧迫されている場合、車いすの座り心地が 悪い場合、おむつが濡れたままになり不快なため何とかしようとする場合など)・昼夜逆転が起こらないよう、適切なケアと日中の適度な活動による刺激を増やしていく。(老年期は夜 間排尿回数が多いため、夜中に目が覚めて不眠となり、昼夜逆転が起こる場合や、向精神薬などにより 睡眠時間が日中にずれ込む場合などがある。)

○体にあった車いすやいすを使用する。

(例) ・床に足がしっかりつくよう、体にあった高さに調整する。 ・安定のよい車いすを使用する。 ・ずり落ちないように、すべりにくいメッシュマットを使用する。 ・適当なクッションを使用したり、クッションのあて方を工夫したりする。

○職員が見守りやすい場所で過ごしてもらう。

(例) ・日中は極力ホールや食堂で過ごしてもらうなど見守りやすいように工夫する。 ・「ユニットケア」のように一定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。

Page 28: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

28

身体拘束回避の point⑤(8) ※ カッコのなかの数字は、P22とリンク

○おむつに頼らない排せつを目指す。

○脱衣やおむつはずしの原因や目的を究明し、それを除くようにする。

○かゆみや不快感を取り除く。

(例) ・内服薬、塗り薬の使用などによりかゆみを取り除く。 ・入浴の際は、皮脂を不必要に落とさないよう、石けんをつけすぎたり、皮膚をこすりすぎたりしないように注意する。 ・入浴後は保湿クリームを用いる。 ・かゆみを忘れるような活動(アクティビティ)で気分転換を図る。

○見守りを強化するとともに、他に関心を向けるようにする。

(例) ・看護・介護職員室の近くなど、日の届きやすいところにベッドを移動するなど見守りやすいように工夫する。(ただし、脱  衣がはじまったときや、排せつや更衣を行うときは別室に移動するなど、場所によってはプライバシーの保護に十分留意す ることが求められる。また、場所を移動することで不安や混乱を招かないよう、説明と安心できる環境づくりを工夫する ) ・「ユニットケア」のように一定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。 ・夜間の観察や巡回の頻度を増やす。 ・会話や散歩などの活動により、他に関心を向ける。

(例) ・尿意のサインの有無、排尿回数、梯尿間隔、失禁の状態などをチェックし、排せつパターンを把握した上で、適時のトイ レ誘導を行う。 ・おむつをはずし、尿取りパットのみにするなど、個人にあった排せつ方法を検討する。 ・失禁があった場合は、簡単なシャワー浴などで清潔を保つ。

(例) ・肌着はごわごわしていないか、おむつの素材に問題はないか、併せつ物による不快感はないかなど原因を究明する。 ・失禁の状態などから判断しておむつからの離脱が困難な場合、排せつパターンにあわせた適時のおむつ交換を行う。

Page 29: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

29

身体拘束回避の point⑥(9・10・11)

※ カッコのなかの数字は、P22とリンク

○迷惑行為や徘徊そのものを問題と考えるのではなく、原因や目的を究明し、 それを取り除くようにする。

(例) ・本人の状況や生活のリズムを把握する。 ・迷惑行為や排掴につながるストレスはなかったか(スタッフの関わり方、態度や言葉づかいなど)を検証し、不安、  不快症状を解消する。 ・落ち着ける環境を整える。

○見守りを強化・工夫するとともに、他に関心を向けるようにする。

(例) ・看護・介護職員室の近くなど、日の届きやすいところにベッドを移動するなど見守りやすいように工夫する。 (ただし、排せつや更衣を行うときは別室に移動するなど、場所によってはプライバシーの保護に十分留意することが求 められる。また、場所を移動することで不安や混乱を招かないよう、説明と安心できる環境づくりを工夫する。) ・「ユニットケア」のように-定の場所で常時見守りと生活支援が行えるスタッフを要所要所に配置する。 ・夜間の観察や巡回の頻度を増やす。 ・話や敢歩などの活動により、他に関心を向ける。

Page 30: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

30

 利用者のAさんが、利用者のBさんに手を上げようとしている所を、職員のCさんが発見しました。Cさんの行動は素早く、実際にBさんに危害が加わる前に仲裁に入ることができ、実際にBさんには身体的には危害が加えられることはありませんでした。 その後CさんがAさんに話を聞いたところ、過去の記憶からBさんだけでなくほかの何名かの利用者に対し、漠然とした不快感があり今日はいらだちが抑えきれなかったとのことでした。

今日の私はよくやった!あとで報告しておこう・・・

契約書にも「他人に迷惑をかけたら退所」とあるし、あとは自己責任!

Aさんとっても、Bさんとっても良い方法をAさんの様子

を見ながら考えよう!

だれでもよいから人をつかまえて、Aさんの様子を見てい

てもらい、直に報告!

どうする?①

Page 31: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

31

どうする?② 職員のCさんは利用者Aさんの話を聞き、再発する危険を感じました。以前先輩職員のDさんから、「暴力をふるう利用者さんを、短い期間だけど外側から鍵の掛けられる部屋に移したことがある」と聞いたことを思い出しました。 先輩に相談はしたいけれども、相談したい先輩は今外出中だし、相談している間にAさんが他の利用者さんに手をあげてしまうかもしれない。Aさんが完全に落ち着いているとも言えないし、長期的に考えても不安という状況です。

Dさんは話しやすいけど、施設長は恐いから、話しに聞いた通りにして、Dさんが帰ってきてから相談しよう!

契約書にも「他人に迷惑をかけたら退所」とあるし、あとは自己責任!

Aさんとっても、Bさんとっても良い方法をAさんの様子

を見ながら考えよう!

だれでもよいから人をつかまえて、Aさんの様子を見ていてもらい、他のセクションで

も責任者に相談!

Page 32: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

リスクマネジメントってなに?

リスク - マネジメント [risk management]

危機管理 クライシス - マネージメント  [crisis management]

予測できる危険(事故)に対して行う、予防・事後処理の管理体制

予測できない危機が起きたときに行う、事後処理の管理体制

器具の点検などの管理体制

緊急連絡網などの管理体制

 外来語って難しいです。普段あたりまえに使っている言葉の意味を知らなかったりします。たとえば・・・コンプライアンス(倫理法令遵守)とか、 CS( Customer Satisfaction=顧客満足)とか。職場で使われる言葉の意味を知ることは、仕事を知ることに繋がり能力の向上につながることです。自分だけが分かるのではなく、他者に教えられるぐらいの知識持っているとよいですね。

とりあえず簡単に・・・(事例も簡単に・・・)

32

Page 33: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

33

設備・用具の把握

介護の基本方針の徹底

利用者個々の状態の把握

 施設設備・施設用具・利用者の持ち物などにどのようなものがあるのか、把握!

 たとえば、勤続20年の職員と入職したばかりの職員の、職務に対する基本「あたりまえ」の内容は大きく違うはず。施設としての「あたりまえ」を統一!

まずは、下準備!!

 利用者一人ひとりウィークポイントは異なり、それによって潜んでいるリスクもことなります。アセスメントの手法・用紙・家族からのヒアリングなどを手法を駆使して、より個別に潜んでいるリスクを正確に把握!※利用者もしくは家族にシートを記入してもらうよりも、ほしい情報をヒアリングにて確認するほうが、実用的。但しヒアリングを行う際の言葉遣いなどで施設そのものを評価されでしまうこともあるので、ヒアリングスキルを磨こう!!

リスクマネジメントの基本①            (リスクの把握)

Page 34: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

34

設備・用具の把握

介護の基本方針の徹底

利用者個々の状態の把握

・実際に利用者の立場にたってのロールプレイ等をして分析・評価

・施設全体および各部署で、「日常業務の基本」をマニュアル化

100%はありえない!暫定版のつもりで作成

 収集データを分析し、対応策を策定。個人情報保護の観点を踏まえた上で、利用者の取り違えのないように、かつ分かりやすい場所へ対応策を格納。

・定期点検の間隔を決定

・定期的な勉強会などで、繰り返しマニュアルに沿った介護の徹底

リスクマネジメントの基本②            (分析・評価)

Page 35: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

35

リスクマネジメントの基本③(対応・実践)⇒(再評価・再発防止)

ヒヤリハット事例の収集 どんなに熟練の職員でも、利用者の変化、施設・設備の老朽化、などによって「ヒヤリ」としたり、「ハット」したりすることもあるはず、職員の「たぶん大丈夫」という意識をすて、可能な限り多くの事例を集められる体制を整備!

現行制度の見直し マニュアル・システム等は定期的に見直しが必要!すばらしいものが出来上がったとしても、時間の経過・法制度の改正によって必ず見直しが必要になります。定期的(年1・2回)と臨時(制度の改正)に見直しを図りましょう!

利用者個々の状態の把握 ライフイベントの発生時には必ず対応策の再評価・見直しが必要。また、定期的な見直しを設定も必須!

再評価を繰り返すことは必ず必要!!

Page 36: 高齢者介護の実際と権利擁護 (身体拘束の廃止)について

36

まとめ(思考枠組)

WHY(なぜ・理由)

WHO(誰が・主体)   WHOM(誰に・客体)

HOW MUCH(いくらで・価格・どれくらい)WHERE(どこで・空間)

WHAT(何に、何で、何を・客体、媒体、対象)

WHEN(いつ・時間)⇒業務等の優先順位・期間

HOW TO(どのようにして・方法)