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「地球工学研究所・環境科学研究所 研究概要 -2010 年度研究成果-」 ©CRIEPI 2011
低レベル放射性廃棄物処分 24
ベントナイト混合土のセメント溶出水との反応による透水係数の挙動
背 景
浅地中ピット処分における難透水性覆土や余裕深度処分等の空洞充てん材等として使用が検討されてい
るベントナイトを 10~30wt%含むベントナイト混合土は、核種移行抑制のため透水性が低い材料である必要
がある。ベントナイト混合土の透水性は、セメント系材料の溶脱に伴って生じるアルカリ溶液による変質で
増大する可能性が指摘されているが、それを模擬した検討事例は少なく、長期的な性能変化予測における不
確実性の増大要因となっている。
目 的
アルカリ溶液によるベントナイト混合土の鉱物学的な変質挙動と透水性の変化を評価し、アルカリ溶液の
組成が透水性の変化に及ぼす影響を明らかにする。
主な成果
セメント系材料の溶脱水の組成やベントナイト混合土の交換性陽イオンの組成が経時的に変化すること
を考慮して、Na 型ベントナイト(15wt%)混合土には NaOH 溶液(pH13.3)、Ca 型化ベントナイト(15wt%)
混合土には Ca(OH)2溶液(pH12.0)を断続的に通水する透水試験を 50℃で約 2年間実施し、以下のことが明
らかとなった(表 1)。
(1)NaOH を用いた試験では、モンモリロナイト等の鉱物の溶解により(図 1)、供試体の透水係数は試験
終了時までに約 5.6 倍に増大した(図 2)。
(2)Ca(OH)2を用いた試験では、モンモリロナイト等の鉱物が溶解していたものの(図 1)、供試体の透水
係数は試験終了時までに 2 桁以上低下した(図 2)。この透水係数の低下は、二次生成物である珪酸
カルシウム水和物(C-S-H)の沈殿による空隙の閉塞が原因である可能性が高い(図 3)。
(3)両試験の透水係数の変化傾向に違いが認められた要因は、アルカリ溶液の組成が異なることで鉱物学
的な変質挙動に差異が生じ、その結果、透水係数を増大させる要因(モンモリロナイトの溶解等)と
透水係数を低下させる要因(二次生成物の沈殿等)の影響度合いが異なるためであることが分かった。
以上より、透水係数の変化については従来から考えられてきたようなモンモリロナイトの溶解によって増
大することだけでなく、処分施設の環境条件等により二次生成物の沈殿が大きく影響し、透水係数が低下す
る可能性のあることが示唆された。
今後の展開
アルカリ溶液を用いた透水試験を流量をパラメータとして実施し、透水溶液の流量と二次生成物の沈殿速
度との関係が透水性の変化傾向に与える影響を明らかにする。
主担当者
地球工学研究所 バックエンド研究センター 主任研究員 横山 信吾
関連報告書 (報告書名の後に記載されているアルファベットと数字は、電力中央研究所報告の報告書番号です)
・放射性廃棄物処分におけるベントナイト系材料のアルカリ溶液による変質挙動(その 2)-アルカリ溶液
の種類がベントナイト混合土の透水性へ及ぼす影響-〔N10037〕
・放射性廃棄物処分におけるベントナイト系材料のアルカリ溶液による変質挙動(その 1)-アルカリ性の
各種溶液に浸漬した締固めベントナイトの鉱物学的な変質と透水性の変化-〔N09015〕
「地球工学研究所・環境科学研究所 研究概要 -2010 年度研究成果-」 ©CRIEPI 2011
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試験番号 試験 1 試験 2
ベントナイト Na 型ボルクレイ Ca 型化ボルクレイ
ベントナイト配合率 15% 15%
乾燥密度 1.55Mg/m3 1.55Mg/m3
透水溶液 NaOH Ca(OH)2
溶液の濃度 300mmol/l 5mmol/l
溶液の pH 13.3 12.0
試験温度 50℃ 50℃
表 1 透水試験の試料、透水溶液および主な条件
透水試験は、供試体を含む透水試験容器
を 50℃の恒温器内に設置して実施した。
透水溶液の通水は、連続通水ではなく、
断続的に概ね 2日間隔で行った。
注)Ca 型化ボルクレイ:透水試験に供する前に、CaCl2溶液を用いてボルクレイの主要な交換性陽イオンを
Ca に予め置換したもの。
乾燥
重量
(g)
乾燥
質量
(g)
各初
期試
料の
乾燥質
量を
100%
とし
て算
出し
た各
成分の
割合(
%)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
0
10
20
30
40
50
倉阨 倊阨 倉阨 倊阨
NH C CH
レイ混合土
型ボルク
Na
NaOH Ca(OH)2
レイ混合土
型化ボルク
Ca
モンモリロナイト以外の成分モンモリロナイト
上部 下部 上部 下部
図 1 供試体の乾燥質量
NaOH を用いた試験では、モンモリロナイトなどの溶
解により供試体の乾燥質量が減少していた。
Ca(OH)2を用いた試験では、モンモリロナイトの含
有量は減少しているものの、二次生成物の沈殿によ
り供試体の乾燥質量は増加していた。
1.E-10
1.E-09
1.E-08
1.E-07
1.E-06
0.15 0.20 0.25 0.30 0.35
有効モンモリロナイト密度(Mg/m3)
NaOHCa(OH)2
10-6
10-7
10-8
10-9
10-10
透水
係数(
m/s)
図 2 透水係数と有効モンモリロナイト密度の変化。中
抜きプロットは試験初期、中塗プロットは試験終了時
の値(いずれも 10 測定値の平均値)
NaOH を用いた試験では、モンモリロナイト等の溶解に
より有効モンモリロナイト密度が減少し、透水係数が
増大した。一方、Ca(OH)2を用いた試験では、モンモリ
ロナイト等の溶解により有効モンモリロナイト密度が
減少していたが、透水係数は 2 桁以上低下した。この
透水係数の低下は、C-S-H の沈殿による空隙の閉塞が原
因である可能性が高い。
注)有効モンモリロナイト密度:砂などを混合した締固めたベント
ナイトにおいて単位体積あたりに含まれるモンモリロナイトの乾燥
質量をモンモリロナイト以外の材料の体積を除いた体積で割ること
により得られる密度
図 3 Ca(OH)2を用いた供試体の SEM 画像
Ca(OH)2を用いた供試体では、ケイ砂やその他の鉱
物の間を充填するように C-S-H が沈殿していた。