Post on 15-Mar-2016
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3.3. 社会秩序の推論
社会心理学特殊講義(高木)2000.07.13
この3.3.は大部分、以下に基づいています。•高木英至 (1999) 「社会科学におけるシミュレーション研究の現状」、『日本ファジー学会誌』、 11 巻、 30-42. •高木英至 (1998) 「社会秩序のシミュレーション」 . 『オペレーションズ・リサーチ』 , 43(7), 389-394.
1.群居と分居
Sugarscape のシミュレーション Epstein & Axtell (1996) 食糧クラスタにエージェントの群居が生じる 食糧の再生率に応じて移民の波が生じること 視力の良いエージェントは渡り鳥型の移動、視力の悪いエージェ
ントは冬眠定住型 食糧採取に伴う公害(負の外部性)が集合的移動を生む
他者からの有益な情報による群居 捕食者からの逃避のシグナル 生存技術の学習
分居 (segregation) Schelling (1971) 、 Sakoda (1971) 、 Epstein & Axtell (1996)
2.親族組織 血縁選択説 子供への親の利他性と、子供の側の親への接
近傾向の共進化 (Parisi et al.,1995) 親族組織の進化をシミュレートする試み
3.利他性 (altruism)
非血縁的利他性の可能性 「基礎社会」、ゲマインシャフト 一般交換としての利他性
一般交換(利他性) 社会的交換のサーリンズ説
家族
氏族
村落
部族
部族外
一般互酬 均衡互酬 負の互酬
一般交換=利他性 釣り合った限定交換
無条件利他戦略: Altruist 無条件に他者に自分の資源をすべて与える。 Altruist だけの社会は効率的(高い利得を実現させる。) 利他性の実現を保障しない[孤立主義者( NonCoop )の侵入に無防備]。
条件付き利他戦略: C_Alt(x,y) x :他者に与える資源総量 y :与える相手の資格条件( y 以上を他者に与える者に与える) x, y が固定されている → C_Alt は NonCoop を駆逐する。→ 利他性の実現 x, y が可変のとき → C_Alt は NonCoop に淘汰されることがある。
Round0
20
40
60
80
100
Players
0.02.55.07.510.0
Round0
20
40
60
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100
Players
NonCoopC_Alt(10,0)C_Alt(10,2.5)C_Alt(10,5)C_Alt(10,7.5)C_Alt(10,10)
内集団利他戦略: I_Alt(x,y) y 以上を他者に与える者を「仲間」とみなす。仲間にだけ与える。 しかし仲間に y 以上を与えていない仲間は仲間から外す。 I_Alt は安定的に NonCoop を淘汰できる。→ 利他性の実現
I_Alt による利他性の実現:その意味 社会を「善き市民」と「逸脱者」に分割。逸脱者を差別する。 利他性の実現には排他性(非寛容性)が必要。
4.基礎社会
基礎社会 (communal societies) :利他性(一般交換)が生じる社会圏
利他性によって固有の社会秩序が生まれる。 集団中心主義 (group-centrism) 社交の階層化 弱者のサポート 正義
例:社会的ディレンマの解決 集団内で利他性(一般交換)ゲームと公共財供給ゲームが共存 「良き市民」の基準に利他的であることと公共財に貢献すること
が含まれるようになる → 公共財が供給されやすくなる。
5.規範形成
「見つけた者勝ち」の規範 (Conte & Castelfranchi, 1995)
相互の強さの考慮あり/なしで攻撃をする場合に比べ、攻撃は生じにくく、エージェントの福祉は高く、不平等も少ない。
規範ゲーム: Axelrod (1986, 1997) エージェントはコストを払って非協力者を罰する選択肢を持つ(規範ゲーム) →
科罰水準の低下、規範の崩壊 メタ規範(罰に加わらない者も罰の対象にする)→規範の維持
分配正義の生成 異なった分配ルールを持つ協働集団 どの分配ルールが支配的になるか?
6.富の不平等
Epstein & Axtell (1996) sugarscape において富の不平等が進化(ジニ係数が上昇) 富の相続や(複数資源の)取引可能性を導入することで不平等は
さら増大する。
7.権力構造
貢物システム: Axelrod (1995, 1997) 近隣エージェントに貢ぎ物を要求できる。 要求を受けたエージェントはしたがうか戦うかを決定し、負ければ貢ぎ物を出す。
貢ぎ物のやりとりがあるエージェント間では戦いでも同盟する。 結果:多様なシナリオ
覇権国の成長 「帝国の過大拡張」による最大の覇権国の凋落
交換に基づく権力 前提
エージェント間に科罰可能性 エージェント間で協力の交換 他者から協力を得たエージェントは強くなる。
社会的交換の偏り
他者から多くの協力を得ると科罰能力が高まる
強いと認められることでさらに協力を得る
誰が強いかに 関する
Reputation
与える量と受け取る量のバランスは両科罰条件で崩れる。 科罰可能性の下での権力の発生 権力者
多くの協力を受け取るエージェント 被罰は少なく科罰は多い。 科罰-不平等条件では、元来強い者が権力者になりやすい。
科罰なし条件 科罰-平等条件 科罰-不平等条件ラウンドブロック
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1相関係数
科罰なし
科罰平等
科罰不平等
8.分業
蟻の社会のシミュレーション Drogoul & Ferber (1994a,b) エージェントの蟻は刺激(例:空腹の蟻)によって活性化された反応(例:食事を与える)を選ぶ。
機能特化した5つのエージェント集団による分業 Epstein & Axtell (1996)
ワルラス的調整機構のない人工的市場である。
文献
下記の論文の参考文献を高木のホームページからダウンロードできるようにしておきます。
高木英至 (1999) 「社会科学におけるシミュレーション研究の現状」、『日本ファジー学会誌』、 11 巻、 30-42.
追加の文献 Nowak, M.A. & Sigmund, K. (1998) Evolution of indirect reciprocity by
image scoring. Nature, Vol.393, 6685, pp. 573-577 Takagi, E. (1999) Solving Social Dilemmas is Easy in a Communal
Society. In M. Foddy, M. Smithson, M. Hogg & S. Schneider (Eds.) Resolving Social Dilemmas. NY: Psychology Press.
Takahashi, N. (2000). The emergenece of generalized exchange. American Journal of Sociology, 105, 1105-1134.
山岸俊男 (1998) 『信頼の構造』 東京大学出版会