101031 修士論文研究計画 渡辺文隆_公開用

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修士論文 研究計画書

NPO 型マーケティングの革新におけるインターネット活用とモチベーション設計(第 1 章)

デジタルハリウッド大学院 5 期生

渡辺文隆

概要

日本を含む世界の多くの国で NPO セクターは存在感を増しており、その生産性向上は人々の生活をより豊かにすると考えられています。

また、インターネット技術の進歩によって、 NPO に対して個人が金銭的・人的な支援を行うことは、より容易になってきています。

本論文は、インターネット技術の進歩というチャンスを活かすためのモチベーション設計を通して、日本の NPO のマーケティングにレバレッジをかけるための、新しい方法論を模索するものです。

具体的には、以下の 2 つのアプローチが有望ではないかと考え、中間支援組織や NPO へのヒアリングによって検証しようと考えています。

  1)NPO の「受益者」に「支援者」になってもらう(そのために、地理的・時間的・金銭的制約をインターネットツールで越える)

  2)NPO の「支援者」が NPO 自体からではなくその周囲のコミュニティによって報いられる仕組みをつくり、支援を続けてもらえる割合を高める(そのコミュニティの維持にインターネットを活用する)

これまでの調査のまとめ

関連研究レビュー (1)NPO 型マーケティングの変遷   1. 本研究の対象となる NPO

   2.NPO によるマーケティング活動の分類   3.NPO 型マーケティングにおける革新の歴史 関連研究レビュー (2) インパクト投資の登場   1. インパクト投資の例   2. 寄付とインパクト投資の比較 課題 関連研究レビュー (3)

   1. 寄付者やボランティアのモチベーション設計

関連研究のレビュー (1)NPO型マーケティングの変遷

1. 本研究の対象となる NPO

本研究の対象とする NPO (非営利組織)は、以下の条件を満たす組織 ( 山内 1999) とします。

  1) 利益・利潤を分配しない  2) 非政府・私設である  3) 法人格を持つか、法人格がなくても組織としての体裁を持つ  4) 自己統治・自己統制できる機能を持ち、他の組織に

 支配されず、完全に独立した組織運営を行っている  5) 組織にボランタリー的要素があり、自発的に組織化され

 寄付行為や無償の労働力に依存している

上記には、営利法人である社会的企業は含まれませんが、寄付やボランティアを受け入れることが一般的な医療法人、学校法人、宗教団体なども含みます。

2.NPO によるマーケティング活動の分類

NPO マーケティングは、

  1)病院や大学、社会福祉法人など事業収入に依存する 組織による企業型マーケティング

   2)教会や発展途上国の開発援助団体など寄付金を主な

 資金源とする NPO 型マーケティング

 に分類されます(三宅 2003 )。

企業型マーケティングの革新については企業そのものの手法を取り入れやすく、研究も進んでいることから、本稿では NPO 型マーケティングの革新について考えます。

NPO に企業のマーケティングを応用しようという考え方は、「ソーシャルマーケティング」と呼ばれ、既に 30年以上の歴史を持っています (Weinreich 1999) 。

この手法は主に受益者の行動変容(禁煙、望まない妊娠の回避、乳がん検診の受診など)にフォーカスが当てられているものでした。

これらの手法は、次第に寄付者の開拓にも使われるようになり、ファンドレイジングという分野として確立しつつあります。

NPO寄付者 受益者

3.NPO 型マーケティングにおける革新の歴史

NPO 型マーケティングの革新が行われてきた米国では、プロフェッショナルとしての技術を持つスタッフの台頭や、プロによって運営されている組織を好む財団の数と資金の拡大、ダイレクトマーケティングと IT の活用などによって、NPO 型マーケティングはより多くの資金を獲得してきました。

NPO寄付者 受益者

3.NPO 型マーケティングにおける革新の歴史

米国では、数多くの NPO がファンドレイジングを行っていった結果、寄付者がどの NPO を選ぶべきか迷っている状況が発生し、 NPO 間の比較や、寄付者向けの情報提供のニーズが高まりました。

現在では、マーケティングインターネット上に NPO を評価する組織・ウェブサイトが発達しており、 NPO の透明性や資金効率について寄付者へと情報を提供しています。

3.NPO 型マーケティングにおける革新の歴史

寄付者向け情報提供サイト“ Charity Navigator”

  寄付者に対して、 NPO の透明性や効率性についての情報を提供するサイト。

寄付者と NPO の支援サイト“ Better business bureau”

  寄付者と NPO に情報を提供しているサイト。

米国の NPO では、寄付金額そのものが目標となり、受益者ニーズに機敏に応えることができなくなる等の団体も増加したことで、生活者からの批判にさらされる事例が増加しました( Kanter and Fine 2010 )。

これらの反省から、米国の NPO はソーシャルメディアによる寄付者との対話に関心を強めています( Kanter and Fine 2010 ) 。

NPO寄付者 受益者

3.NPO 型マーケティングにおける革新の歴史

近年は、 NPO が簡易に寄付を集めることのできるコミュニティサイトである ammado や、 facebook のファンドレイズ用アプリケーションである cause 、自分の応援する団体のために寄付を募ることのできるJust Giving 、マイクロボランティア(=細切れの時間を使ってボランティアをすること)のための sparked といったサイトが出現しています。

これらによって、人々が、自分の資金、人脈、スキルなどを NPO のために使える技術的な基盤は整ってきました。

日本では、エイズ孤児支援 NGO PLAS が Twitter を用いたキャンペーンを行ったり、シャンティ国際ボランティア会が Ustream での定期的な情報発信を行ったりする例があり、 NPO によるオンラインツール活用は増加傾向にあります。

NPO寄付者 受益者

ボランティア

3.NPO 型マーケティングにおける革新の歴史

ファンドレイズ支援サイト“ ammado”

  NPO が、オンラインで寄付を集めることができるコミュニティサイト。多数の通貨に対応しており、毎月の寄付などを行うこともできる。

Facebook アプリケーション“ cause”

  NPO のための寄付やメンバー集め、メンバーへの情報発信などができるfacebook アプリケーション。

マイクロボランティア支援サイト“ sparked”

  NPO のために、ウェブサイトへのフィードバックや、オンライン広告のためのキャッチコピー作成などのボランティアを行うことができる。

ファンドレイズ支援サイト“ Just Giving Japan”

  NPO のために、寄付集めのキャンペーンを簡単に企画し、ページを公開できる。ページからは、閲覧者が寄付を行うことができる。