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スナップエンドウに対する窒素施肥の違いが生育・収量に及ぼす影響
○長友 誠・中島 純・樋口康一・古江広治
(鹿児島農総セ)
【目的】
スナップエンドウについては,最近の急速な
需要の高まりから栽培面積が急増するなか,供
給の増加に向けた新作型開発が期待されている。
産地では,着莢負担増による草勢低下のため頻
繁に施肥を行う事例など,産地ほ場の土壌養分
過剰の課題があり,作型に対応した施肥管理技
術確立の必要がある。
そこで,既存の「夏まき」および「秋まき」,
新作型として主に4~5月に収穫する「冬まき」
の3作型について窒素施肥量の違いが生育,収
量,養分収支に及ぼす影響について検討した。
【方法】
試験は,夏まき作型および冬まき作型ではセ
ンター内露地ほ場(表層腐植質黒ボク土),秋
まき作型では指宿市山川の露地ほ場(淡色黒ボ
ク土)で行った。供試品種は ” ニムラサラダス
ナップ ” を用い,仕立て法は主枝1本仕立て,
栽植密度は畦幅 150cm,株間 6 ~ 7.5cm の1条
植えとした。試験区の構成及び窒素施肥量は,
無窒素区,基肥窒素 5kg/10a(以下/10a 略)+追肥窒
素 5kg 区,基肥窒素 10kg 区,基肥窒素 15kg 区
の4区を設定した。
【結果】
①窒素施用量 10 ~ 15kg/10a の範囲内では,各
作型の収益性を考慮した目標収量(夏まき
0.5t/10a,秋まき 1.8t/10a,冬まき 1.4t/10a)は達
成した。②莢収量については,夏まきおよび冬
まき作型では,窒素施用量増加に伴い増加する
傾向がみられたが,秋まき作型では立ち枯れ症
状による欠株がみられ,基肥窒素 15kg 区の莢総
収量は基肥窒素 10kg 区に比べ少なくなった。③
夏まきおよび秋まき作型では,追肥施用によっ
て茎葉重増加はみられたが,収量増加はみられ
なかった。冬まき作型では,追肥施用による茎
葉重および収量の増加はみられなかった。④養
分収支では,各作型とも施肥窒素量に比べて窒
素吸収量が多く,窒素収支はマイナスであった。
無窒素区の窒素吸収量は,秋まき作型では
35kg/10a,夏まき作型および冬まき作型では 14kg/10a と大きく,根粒菌の関与がうかがわれる
とともに作型あるいは栽培地でその量は大きく
異なった。
大豆根粒菌の活性は,土壌 pH や土壌消毒,
在来の根粒菌や連作などに影響されることが明
らかになっているが,エンドウの根粒菌が生産
性に及ぼす影響について明らかでなく,今後,
これらがエンドウの根粒菌着生や活性等に及ぼ
す影響についての検討が,窒素施肥法確立のた
めに必要と考える。
kg/10a kg/10a 指数 kg/10a 指数 kg/10a %
無窒素 - 1,326 ( 85 ) 853 ( 61 ) 13.9
基肥窒素5kg+追肥窒素5kg 10 1,743 ( 111 ) 1,261 ( 91 ) 22.6
基肥窒素10kg 10 1,568 ( 100 ) 1,389 ( 100 ) 18.6
基肥窒素15kg 15 1,235 ( 79 ) 1,516 ( 109 ) 18.0 4.5
無窒素 - 3,249 ( 98 ) 2,758 ( 93 ) 35.2
基肥窒素5kg+追肥窒素5kg 10 3,872 ( 117 ) 2,890 ( 98 ) 35.5
基肥窒素10kg 10 3,318 ( 100 ) 2,956 ( 100 ) 36.0
基肥窒素15kg 15 3,462 ( 104 ) 2,805 ( 95 ) 36.1 9.4
無窒素 - 479 ( 91 ) 1,201 ( 82 ) 14.0
基肥窒素5kg+追肥窒素5kg 10 424 ( 81 ) 1,434 ( 98 ) 15.3
基肥窒素10kg 10 525 ( 100 ) 1,460 ( 100 ) 16.1
基肥窒素15kg 15 583 ( 111 ) 1,608 ( 110 ) 17.4
冬まき(南さつま市)
作型(栽培地)
区名
表1 生育・収量および窒素吸収量の関係(2014年)
窒 素吸収量
注)1.茎葉重,莢総収量および窒素吸収量は,欠株率を考慮し計算した。 2.耕種概要:堆肥無施用,苦土石灰100kg/10a施用,リン酸およびカリは各区とも15kg/10a施用 栽植密度:夏まき作型 畦幅1.5m,株間6cm,1条植,秋まきおよび冬まき作型 畦幅1.5m,株間7.5cm,1条植
試験規模:夏まき作型 6m2/区,66株/区,2反復 秋まき作型および冬まき作型 6m
2/区,53株/区,2反復
栽培期間
8/23 ~1/30
9/25 ~3/27
11/15 ~5/31
欠株率
秋まき(指宿市)
夏まき(南さつま市)
莢可販品収量窒 素施肥量
茎葉重
諫早湾干拓地の半促成長期どりアスパラガスにおける pH 矯正による収量の回復
○平山裕介
(長崎農林技開セ)
【目的】 諫早湾干拓地の土壌は元来,陽イオンや塩素イ
オンが高く,下層にはグライ層を有している。干
拓直後の pH は 9.0 前後のアルカリ土壌で,硫安を
主体とする施肥体系がとられてきた。中でもアス
パラガスの窒素施肥量は 50kg/10a と非常に高く,
硫安を連用することで,土壌 pH は 4.0 前後まで低
下し,収量低下の要因と考えられた。そこで,永
年性の品目である半促成長期どりアスパラガスの
pH 矯正法を検討するとともに収量を調査した。 【材料および方法】
供試材料は 2005 年 10 月に長崎県農林技術開発
センター干拓営農研究部門のハウス内に定植した
「UC157」(ウェルカム)を使用し,6 年生(2011年)~9 年生(2014 年)株にかけて調査した。
試験区は同じハウス内の 1.5m×5.75m(8.625㎡)とし,施肥体系は表 1 の通りで,施肥以外の
管理は同じとした。各区 2 反復とした。
試験区 年窒素肥料
石灰資材
硫安区2011-2013
硫安 無し
2011 硫安 立茎中に苦土石灰100kg/10a×6回
2012 尿素保温開始前に消石灰200kg/10a×1回立茎中に苦土石灰100kg/10a×2回
2013 尿素 保温開始前に消石灰200kg/10a×1回
2014 - 保温開始前に消石灰200kg/10a×1回
※いずれの区も保温開始前に牛ふん堆肥2t/10a(現物)施用
矯正区
※窒素肥料は窒素成分で50kg/10aで統一。
※窒素肥料は4~9月に月1回分施(計6回)。春肥の施用なし。
表1 試験区の施肥体系
土壌サンプリングは畝上から深さ 10-15cm(堆
肥の層を除き 5-10cm:根が分布する層)の土壌を
採取し分析した。測定項目は,pH(H2O),EC,交換性陽イオン,CEC とし,分析方法は「土壌,
水質及び植物体分析法(日本土壌協会)」に準じた。 【結果および考察】
矯正開始前(2010 年)は硫安連用区の pH は 3.9,年間収量が 2,817kg/10a,矯正区の pH は 4.7,年間
収量は 2,446kg/10a であり,いずれも石灰飽和度は
20%以下であった。 立茎中に畝上から苦土石灰を施肥した 2011 年
は矯正区の pH は 4.1 であり,pH の矯正効果は見
られず,年間収量も 1,959kg/10a に低下した。 保温開始前の堆肥投入時に消石灰 200kg/10a を
土壌と混和し,窒素肥料を尿素に変更した 2012年は,矯正区の pH は 5.5 に矯正され,収量も
2,216kg/10a とやや回復した。 同様の施肥体系の 2013 年の矯正区の pH はアス
パラガスの適正範囲である 6.7 に回復し,年間収
量も 3,254kg/10a と回復した(表 2,図 1)。
また,多量の消石灰と堆肥を同時に施用するこ
とから,若茎への障害を調査したが,矯正区の異
常茎割合は硫安区より低かった(表 3)。 以上より,窒素肥料を硫安から尿素に変え,保
温開始前に消石灰 200kg/10a を土壌と混和し 2 年
間施用することでアスパラガスの適正 pH に矯正
できた。また異常茎割合は増加せず,春芽・夏芽
共に収量が回復した。
異常茎 商品 異常茎 商品
矯正 172 1,239 12% 矯正 39 769 5%
硫安 262 1,119 19% 硫安 79 807 9%
矯正 332 1,338 20% 矯正 102 1,139 8%
硫安 412 977 30% 硫安 104 802 12%
矯正 550 2,215 20% 矯正 97 810 11%
硫安 411 875 32% 硫安 101 589 15%
表3 異常茎の収量と総収量に占める割合
2012
2013
2014
2011
2012
2013
異常茎割合夏芽
収量(kg/10a)春芽
異常茎割合
収量(kg/10a)
図1 若茎の収量変化
1,072 1,207720 693 769 808
1,139802 810
589
1,3741,610
1,239 1,1191,447
977
2,115
875
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
矯正前 硫安 矯正 硫安 矯正 硫安 矯正 硫安 矯正 硫安
2010 2011 2012 2013 2014
収量(kg/10a)
春芽 夏芽
表2 夏芽収穫期間中の土壌分析結果
pH EC Ca/Mg Mg/K
(H2O) (mS/cm) CaO MgO K2O 当量比 当量比
矯正区 4.7 0.2 202 74 127 2.0 1.4 18.0%硫安区 3.9 0.3 97 35 48 2.0 1.7 8.7%矯正区 4.1 0.4 263 114 133 1.7 2.0 23.4%硫安区 3.6 0.6 75 66 84 0.8 1.8 6.7%矯正区 5.5 0.2 449 123 124 2.6 2.3 40.0%硫安区 3.8 0.3 94 57 78 1.2 1.7 8.3%矯正区 6.7 0.2 555 109 118 3.6 2.2 49.4%硫安区 3.9 0.2 75 39 62 1.4 1.5 6.7%矯正区 2.0 0.0 353 35 -9 1.7 0.8 31.4%硫安区 0.1 -0.2 -22 4 14 -0.6 -0.3 -2.0%県基準 6.0~6.5 220 30 15-40 4-8 2以上
交換性陽イオン(mg/100g乾土)
矯正前との差
試験区石灰
飽和度
矯正前 2010
矯正開始
2011
2012
2013
年
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