食道癌の内視鏡・病理診断 ~発見から診断,内視鏡治療・病理診断まで~
IHI 播磨病院
内科
内視鏡センター
大西 裕
食道癌診療の,知ってそうで以外と知られない知識
扁平上皮癌がほとんどだが,腺癌やいわゆる特殊系といわれる組織型が存在する. 扁平上皮癌はハイリスクが有る程度設定可能(男性,高齢,喫煙,飲酒,flusher, そしてこれらの危険因子のある方のまだら食道). NBIで発見頻度が増加することが報告されているが,すべての扁平上皮癌がbrownish area を呈するわけではなく,白色光での診断能力が大事.また,ハイリスクにはヨード染色を. ヨード染色は,市販のルゴール液ではきちんと染まらない(市販のルゴール液はグリセリン が含まれている.ヨウ素ヨウ化カリウム液を各施設で作成). ヨード染色は一度すると上皮が障害を起こすので,後で精査の時にきちんと写真をとろうなど ということは言語道断.1ヶ月以上はきちんと染められない事を認識すべし. トルイジンブルー二重染色はもうすぐできなくなる. 透視は有管法でないとなかなかきちんと評価できる写真はとれない. バリウムと空気を一緒に注入して撮影すべし. Short segment Barrett epitheliumに伴う腺癌は,増えている?増えてない? まだ異論はあるものの,早期癌の診断例は増加中.その定義と特徴(解剖学的,組織学的 そして内視鏡的)は必ず知るべし. その発見のためにEcjをきちんと見るためには,被検者に深吸気をしていただく.
症例① 早期食道癌(T1a-LPM)のESD症例 扁平上皮癌の組織像,深達度診断について
70歳代,男性
人間ドックの際,上部消化管内視鏡検査を受けられ,病変を指摘.
喫煙: 約20本×45年
飲酒: 日本酒換算3-4合/日×45年
撮影前に,よく洗うこと!!!
何回も,何回も洗うこと!!!
食道拡大内視鏡分類(案)
井上分類,有馬分類を統合 Type 1: 血管形態の変化がないか軽微なもの. 1A: IPCLの変化を認めない 1B: IPCLの軽微な変化を認める Type 2: 血管形態の変化が高度なもの. 2A: 拡張・蛇行・口径不同・形状不均一を示すIPCL様血管 2B: ループ形成に乏しい血管異常 ただし,AVAが形成される場合は,その大きさが0.5以上3mm未満 2C: 高度に拡張した不整な血管が認められえるもの.または,ループ形成に乏しい 異常血管で形成された領域が3mm以上を超えているもの.AVAが形成される場 合はその大きさが3mm以上 付記1: 不規則で細かい網状血管を認めることがあり,低分化,INFC, 特殊な組織型を示す 食道癌のことが多いので,Rと付記する 付記2: BAを構成している血管と血管の間の色調をIntervascular background coloration: 血管間背景粘膜色調を称する. IPCL: intra-epithelial papillary loop, 乳頭内血管 AVA: avascular area, 無血管野
2A 2A
2B 2B
当院では3%のヨウ素ヨウ化カリウム溶液を使用 散布した後に,とにかくきれいに洗う!!!
IT-knife2にてESD
ESD後新鮮標本水浸観察
内視鏡で撮影する時は水深で撮る!!!
固定標本観察と切り出し
自分で写真を撮り,自分で切る!!!
自分で撮影して,自分で切る!!!
正常な食道の粘膜~粘膜下層上部
上皮
基底層
上皮下層
粘膜筋板
食道腺
粘膜下層
上皮内進展のフロント
EP部拡大
LMP部拡大
導管内進展
②小細胞癌の手術症例
特殊型の組織像と内視鏡診断について
80歳代,男性
嚥下障害で他院より,上部消化管内視鏡検査依頼にて初診.
胃潰瘍にて胃亜全摘出術の既往あり.
この症例の詳細は
Digestive Endoscopy 16(1), 66-70, 2004で
PAS染色
特殊型のまめ知識
未分化癌(小細胞癌,大細胞癌),低分化扁平上皮癌,類基底細胞癌
粘表皮癌,腺様のう胞癌,いわゆる癌肉腫
粘膜下腫瘍様の発育形態を示す頻度が多い
(食道癌取り扱い規約第10版での1sep, 0-Isepといわれていた形態)
周辺の粘膜の異常を十分に読影する(これはBarrett癌の診断でも有用な姿勢)
未分化癌では,扁平上皮癌や腺癌の成分を有していることも多い
③Barrett食道癌の症例
Barrett上皮の内視鏡診断とともに, 食道透視について
60歳代,男性
全身倦怠感で受診.
中~低分化腺癌
食道精密透視
①喉をキシロカインスプレーで表面麻酔. ②チューブを挿入し,透視下で適切な位置とする. ③秘伝のバリウムとエアをシリンジに入れて用意. ④適度なスピードでバリウム→エアを食道に注入. ⑤バリウムが流れつつ,エアで食道が拡張する. ⑥適切なタイミングで撮影する. ⑦必要に応じて,正面像や側面像,バリウムの流 れる速度の調整のために体位を調整する.
物品 キシロカインスプレー バリウム 造影チューブ 20mlプラスチックシリンジ
3年前の胃癌検診後精検時内視鏡
Barrett上皮
内視鏡的には,柵状血管の下端を食道下端とし,同部より 口側に連続する円柱上皮はBarrett上皮とする. 病理学的にそこがBarrett上皮であることを示す所見 粘膜筋板の二重化 食道腺の存在 扁平上皮島の存在
何が隠れているでしょう?
経鼻内視鏡でも必死で探す!
人間の体は胃腸だけではない
胃腸が悪い人も,心疾患があったり,
肝臓が悪かったり.
むしろ・・・
基礎疾患を持った人が胃腸疾患になる方が
多いかもしれない.
「何でも診れないと内科医ではない」
食道に詳しくなりたい先生が参加すべき研究会 ①兵庫県食道疾患研究会(年2回,神戸市にて) ②食道色素研究会(年2回,東京が多い) 必読参考文献 ①Pathology of the Esophagus/ Kaiyo Takubo ②食道癌取り扱い規約(第9, 10版)
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