Title シャイロックについて : 『ヴェニスの商人』に...

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Title シャイロックについて : 『ヴェニスの商人』におけるア イロニーと諷刺 Author(s) 青木, 啓治 Citation 英文学評論 (1990), 59: 1-42 Issue Date 1990-03 URL https://doi.org/10.14989/RevEL_59_1 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

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Title シャイロックについて : 『ヴェニスの商人』におけるアイロニーと諷刺

Author(s) 青木, 啓治

Citation 英文学評論 (1990), 59: 1-42

Issue Date 1990-03

URL https://doi.org/10.14989/RevEL_59_1

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

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-『ヴェニスの商人』におけるアイロニーと諷刺青

シャイロックについては、その解釈をめぐって、いまもなお、批評界に大きな対立がある。欲のために、人間

性を失ったと思われるこのユダヤ人の高利貸しは、そのりんしょくがこっけいに扱われているだけでなく、人肉

裁判で、高潔なアントーニオの命をねらうところからみて、あきらかに彼は、残酷な悪党として措かれているよ

うにみえる。だがそのシャイロックに、人道的見地から同情する傾向が、一九世紀の後半に強くなり、現代にお

いても、この批評の流れは、根強く残っているのである。その立場を簡単に要約するならば、シャイロックは

代々にわたって虐げられてきたユダヤ民族の代弁者であって、彼が仮借ない悪魔的な性格となるのは、人種差別

に対する憎しみに加えて、彼が個人的にうける侮辱と不正のためであるというのである。必然的に彼と対立する

キリスト教徒たちの態度に、いろいろと批判の目が向けられる。シャイロックの犠牲において恋人たちがたのし

む終幕のベルモントの世界が軽薄にみえてくるというのである。

しかしシャイロックを現代の人道主義の立場から捉える場合、その前に『ヴェニスの商人』が書かれた一五九

六~七年頃の観客が、一般にユダヤ人をどのように受けとめていたか、また高利貸しをどのように考えていたか

シャイロックについて

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シャイロックについて

を調べてみる必要があるであろう。当時のロンドンに、ユダヤ人がいたかどうか問題になっているが、lエリザベ

ス女王の侍医であるユダヤ系のDrLOpeNが、彼女を毒殺しょうとしたという疑いで一五九四年六月に庭刑され、

それまでロンドン市民の問に眠っていた反ユダヤ主義を復活させていたのである。彼が虞刑された週の間、悪党

のユダヤ人Barabasを主人公とするChristOpherMar-OWeの3屯廿等亀ゝ冷評(-山笠)が再び上演された記録が残

っていて、シェイクスピアも、民衆のそのような反ユダヤ的感情を利用してマーロウの劇に対抗する劇を書くよ

ぅに、劇団から頼まれた可能性があるのである。だがそのような歴史的事実は、あくまでも参考にする程度にと

どめて、シャイロックを如何に解釈すべきかは、劇の綿密な分析によらなければならない。それでは、シャイロ

ックの筋を中心に、この劇のアクションを辿ってみよう。

この劇は、ヴェニスの豪商であるアントーニオの登場にはじまるが、彼はまったく理由の分らないゆううっな

気分にとりつかれているのである。何故彼の気分がそのようにふさぐのか、批評家たちの間でいろいろ議論され

ているが、それは、未来に起るシャイロックとの不幸な事件に対する虫の知らせというものであり、それに対し

うー、

て観客の心を準備させておくための劇作家の技巧なのである。他の友人たちが去って、親友バサーニオと二人だ

けになったアントーニオは、友がひそかに会おうとしている女性が誰であるか尋ねる。バサーニオほ、「友情と

金(inmOneyandin-○くe)」において、アントーニオに最も世話になっていることを認めながら、その借金が返せ

る一つの計画があると云う。これに対してアントーニオが、「不名誉なことでなければ」、自分の財布も体も何で

も提供して、その計画を援助したいと云うので、彼はベルモントのポーシャのことを話す。その話によれば、彼

女は大きな遺産の相続者で、美しく、また美しい以上に才徳を備えていて、名だたる求婚者たちが世界の至ると

ころからやってきているが、自分に他の競争者と張合うだけの金があれば、幸運をつかめる可能性があるという

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のである。アントーニオは喜んで彼を助けたいと思うが、全財産が海の上にあって、現金がないので、二人はヴ

ェニスに行き、彼の信用を最大限に利用して金を借りることになる。

第二場のベルモントの場面をはさんで、第三場は、バサーニオが高利貸しのシャイロックと、金を借りる交渉

をしているところからはじまる。保証人をアントーニオにすることについて、シャイロックがーAntOロiOisa

geedmaローというとき、保証人として彼が信用がおけるという意味で云っているのに、それをバサー二オが道徳

的意味にとるとき、二人の住む世界と人間の違いが最も明確に示されている。だがシャイロックは、アントーニ

オの財産に不安があるというのである。船を世界のあちこちに出していても、それが無事に帰ってくる保障はな

いというのである。

SHY.…ShipsarebutbOards-Sai-OrSbutmenこherebe-and・ratSandwater・ratS-Water・thieくeSand-aロd・

thieくeSIImeanpirates;ndthenthereistheperi-Ofwaters-Winds-andrOCks.

(I.iii.N?Nu)

そこへアントーニオがやってくる。彼をみたシャイロックは、傍白で観客に向って次のように云うのであるが、

これはシャイロックとアントーニオのこれまでの関係を示すものとして、またこれから劇の展開をみてゆく観客

の態度を指示するものとして、もっとも重要なものである。

SHY二宮註]HOW-ikeafawningpub-icanhe-00ks一

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シャイロックについて

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シャイロックについて

He-endsOutmOneygratisもndbringsdOWn

TherateOfusanceherewithusinくenice.

HfIcancatchhimOロCeupOnthehipI

Hwiufeed訂ttheancient唱udgeHbearhim.

HehatesOurSaCrednatiOn;ndherai-S-

EくentherewheremerchantsmOStdOCOn唱egate-

Onme-mybarga5Sもndmywe--・WOnthrift-

Whichhecaロsinterest.Cursedbemytribe

lf〓Orgiくehim叫

(I.iii.∽?念)

シャイロックがアントーニオに敵意をもつのは、宗教的あるいは種族的理由もあるが、それよりも、アントーニ

オが金をただで貸して、高利貸しの利息を引下げ、商売のじゃまをするからである。敵の弱味を抑えたら、この

怨みを晴らしてやるという堅い決意を強調しているが、これが傍白によって、他の二人の人物に聞こえないよう

に、直接観客に語られている点に注目する必要があるであろう。

聖書からJacObの話を引用して、シャイロックが高利貸しを正当化しょうとするのをきいて、アントーニオは、

やはり傍白で、バサーニオに次のようにいう。

ANT.[e註且MarkyOuthis.Bassani01

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↓hedeくロcanciteScripturefOrhispurpOSe.

Ane星sOu-prOducinghO-ywitness

Is-ikeaくEainwithasmi-ingcheek-

Ag00d-yapp-erOttenattheheart.

〇IWhatag00d-yOutSidefa-seheedhath一

(I.iii.㌶l害)③

一方、シャイロックは、利子をつけて金を貸し借りしないアントーニオが、友人のためとはいえ、習慣を破っ

て、金を貸してくれというのを大いに皮肉る。自分に唾をかけ、足蹴りにし、「犬」と呼んだことを思い出さし

て、「『このようなおもてなしのお礼に、これだけの金をお貸ししてさしあげましょう』と、奴隷のような調子で

おそるおそる申上げましょうか」と皮肉たっぷりに云うのである。だが、アントーニオは、あくまでも対抗する

姿勢を変えないで、次のようにいう。

AN↓.Iamas-iketOCa-〓heesOaga-n一

TOSpitOntheeagainこOSpurntheet〇〇.

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AstOthyfriends-訂rwheロdidfriendshiptake

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Bu〓enditrathertOthineenemy-

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シャイロックについて

WhOifhebreakthOumayStWithbetterface

EH由Ctthepena-ty.

(l∴ii.-Nで-∽N)

現代人の目からみれば、唾をかけたり、足蹴りにすることは、ずい分失礼なことであって、シャイロックに同情

する批評家たちの問題にする一つの点であるが、アントーニオは、劇全体をとおして高潔な人間として描かれて

おり、彼のこのような決然とした態度には、ユダヤ人や高利貸しに対する、当時の観客の反感が予定されている

ように思われるのである。

ところで、アントーニオにそういわれたシャイロックは、急に態度を変える。そして「仲良くして、可愛がっ

て頂きたい」から「御入用の金を利子一文もとらないで用立てしましょう」といって、いかにも「親切心」があ

るようなふりをする。ただ彼は、冗談を装いながら、一つの条件をつけた。

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(I.iii.-合⊥怠)

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アントーニオがそのような証文に判をつくことに、バサー二オが反対するので、シャイロックは、「人間の肉一

ポンド、人間の体から切りとったところで、羊や牛や山羊の肉ほどのねうちもなければ、もうけにもなりやしま

せん」といって、あくまでもアントーニオの好意を得るために、「親切気」を出したことを強調するのである。

シャイロックに同情的な批評家の中には、このような彼の言葉を額面どうりに受取る者がいるが、そういう解

釈は無理であろう。観客はすでに傍白をとおして、彼のアントーニオに対する深い怨みと、復讐の堅い決意をき

いているので、彼の「親切さ」を信ずることはできないからである。もちろん、この証文でアントーニオの肉一

ポンドを切り取るためには、彼の船がすべて難破するか、証文の期限よりおくれて帰る必要がある。だが海の上

の船が非常に危険が多く不安なものであるということは、シャイロック自身がよく知っていて、いまそれを強調

したところである。これらの事実を考えあわせると、この変った内容の証文は、アントーニオが契約を実行でき

ないこともあることを予想して、彼の命をひそかにねらっているのである。そのような証文を「冗談」と「親切

心」を装いながら提案する悪党らしい偽善は、何かHunchbackを思い出させるところがある。バサーニオも、

シャイロックの提案を受け入れるアントーニオに対して、言-ikenOこ巴rtermsanda皇】ain-smind-といって、

もう一度、懸念を示しながら、第一幕は終るのである。

劇が観客(あるいは読者)に与えられる知識や印象を基にして組み立てられてゆく構造物であるとすれば、シ

ャィロックの解釈は、彼がはじめて登場するこの場面に基礎を置かなければならない。ここで最も大切なことは、

舞台にいる他の二人に聞えないように、彼が直接観客に、アントーニオに対する深い怨みと、堅い復讐の意志を

伝え、そのために布石を打ったということである。

さて、第二幕では、家庭におけるシャイロックが描かれている。彼の召使いで道化役のラーンスロットや娘の

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ジェシカの話によって、彼がどんな人物であるか分るのである。ラーンスロットは、主人の家から逃げ出すよう

にすすめる「悪魔」(許nd)と、それに反対する「自分の良心」(mycOnSCieロCe)との問にはさまれて困っている

というのであるが、彼の話の面白さは、シャイロックを悪魔とみることによって産み出される論理の矛盾にある。

主人から「逃げるな」という良心の忠告は、「まさに悪魔の化身」(theくOryde墓incarna-)のところへおれとい

うことになり、「逃げろ」という悪魔の忠告の方が思いやりがあるというのである。ラーンスロットがシャイロ

ックのところから逃げたい主な理由は、けちん坊の主人が、めLをろくに食わせてくれないからで、「あいつに

奉公したために、餓死しそうで、あばら骨で指が数えられる」(Iamfamishedinhisser5.CeいyOumayte--eくery

PngerIhaくeWithmyribs)というのである。これは、指であばら骨が数えられるというのを間違えたもので、眼

がゴミに入ったというのと同じ言い方であるが、シェイクスピアは、観客を笑わせながら、この道化役のロをと

うして、シャイロックを諷刺しているのである。

次の場面(IH.iii.)では、シャイロックの娘ジェシカが、ラーンスロットと別れるのを惜しがって、「この家は地

獄よ、今までほお前という陽気な悪魔がいてくれたので、いくらか退屈さもまざれたけど」(OurhOuSeishe戸

andthOuもmerrydeくi--\DidstrObitOfsOmetaSteOftediOuSneSS)とのべている。欲にとりつかれたこの陰気な

高利貸しの家には、笑いがないのである。しかし観客は、ここで、このけちん坊の娘が恋をしていることを知ら

される。ジェシカが恋人のPレンゾーに手紙を渡すように、ラーンスロットにことづけるからである。シャイロ

ックのようなりんしょく家が、恋の世界と相容れないことほ明らかであるが、彼の知らぬところで、娘の恋の計

画がすすめられているのである。ラーンスロットが退場して一人になったジェシカは、さらに次のようにいう。

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HamnOttOhismanners.

(II.iii.-∽⊥盟

第二行と三行には、ジェシカの性格の良さがあらわれているといえるであろう。その彼女が、「自分は父と血の

つながりがある娘だけど、品行の上では親子ぢゃない」という。要は、シャイロックの品性が問題なのである。

彼のそのような性格は、第五場において、さらに明確にあらわれてくる。今やバサーニオの召使いになったラー

ンスロットは、主人がシャイロックを夕食に招待したので、彼を迎えにゆくが、シャイロックはかつての召使い

に対して、「俺のところでしたようにこれからは大めLを食うことはできんぞ」という。そして招かれている夕

食も「放とう者のキリスト教徒(バサーニオ)めを食い倒してやるために憎んでゆく」のである。だが彼は、ゆ

ぅべ財布の夢をみたので、なにか悪いことが起りそうで、ゆきたくないという。前の場面で、今晩、金や宝石を

もって恋人と駈落ちするジェシカの計画を知らされている観客は、この場面のシャイロックにアイロニーを感ず

るであろう。彼はさらに、ラーンスロットの言葉から、仮装会のあることを知って、ジェシカに注意する。

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シャイロックについて

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シャイロックについて

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LetnOtthesOundOfsha--OWfOpp、苛enter

MysOberhOuSe.

(lH.く.Nツ山望

シャイロックにとって、お祭り騒ぎやその音楽は、節約を破壊するもので、娘はそれを見ることも聞くことも許

されないのである。それらを軽蔑して彼は「このまじめな家の中へ、浮っ調子な馬鹿騒ぎの物音を入れてはなら

ないぞ」という。

さらに彼は、立去ろうとするラーンスロットをみて、ジェシカに次のようにいう。

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SnaiTS-OWinprO巴もndhes訂epsbyday

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HisbOrrOWedpurse.WeロLessica-的Oin…

PerhapsIwi--returnimmediate-y.

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FastbindLast沙ndI

AprOくerbne扁rS邑einthriftymind∴貪謎

(II.く.畠l∽e

ラーンスロットの商売に向かない性格が、ここでは、動物のイメジャリーを用いて強調され、彼を手放した理由

として述べられている。だがそれはむしろ、召使いに対する彼の描写をとおして、欲にとりつかれたりんしょく

家の金に細かい生活と、仲間に対する人間的配慮を欠いた自己中心的な彼の性格が、明らかにされているといっ

た方がよいのである。彼は、この場面でジェシカに、戸00ktOmyhOuSe‥LOCkupmydOOrS二shutd00rSafter

yOu-と述べ、「倹約家」には古くさくない諺として、.『astbind二astDnd三しっかり閉めれば、しっかりもうか

る」という言葉を残して出てゆく。一人になったジェシカは、父と訣別する意図を観客に伝えるが、彼女を非難

する批評家たちは、ゴOuSelがシャイロックの存在の核心にあるのであって、ジェシカはその「家」の娘にすぎ

ないことを忘れてはならない。ロレンゾーとの駈落ちも、彼女のいわゆる「地獄」からの脱出を意味するものに

外ならないからである。

この娘の逃亡に対するシャイロックの反応は、二幕八場で、アントーニオの友人であるサラリーノとソレイニ

オによって伝えられる。

シャイロックについて

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シャイロックについて

SOLAN.:neくerheardapassiOnSOCOnfus喜

SOStrange-▲utrageOuS-andsO∴くariab-e-

AsthedOgJewdidutterinthestreets.

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Andjewe-S⊥wOStqPeS.tWOrichandpreciOuSStqロeS-

StO-ゴbymydaughterこustice一Findthegirだ

ShehaththestOneu苫nherandtheducats.、

SALER.WhyaロthebOySinくenicefOロOWhim-

C苛ing-hisstOneS.hisdaughter.andhisducats.

(HH.まii.-NINe

娘がキリスト教徒と駈落ちし、しかもたくさんの金や宝石を持去ったことに対するシャイロックの怒りやかなし

みには、ペーソスがあるかも知れない。しかし彼が失って惜しんでいるのは、結局、娘ではなくて、彼女に持っ

てゆかれた金や宝石なのである。観客が彼に同情することを、シェイクスピアが期待していないことは、コミカ

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ルな性格のこの二人の人物に、その話を伝えさせていることから分るであろう。五行目の終りの.〇myChris・

tianducatsでほ、人と金の混乱から生れた言葉である。子供達までが、馬鹿にして、「宝石だ、娘だ、金だ」と

叫んで、彼についてゆくのである。

サラリーノは、ここでアントーニオがシャイロックと交わした証文のことを思い出して、「アントーニオは、

例の証文の期限を守るように気をつけた方がいいな。でないと、ひどい目にあうぜ」という。これをきいてソラー

ニオは、「船荷をうんと積んだわが国の船が一そう難破した」という噂をきいたことがあるが、そのとき、それ

がアントーニオの船でないことをひそかに祈ったというのである。サラリーノは、娘の駈落ちに対するシャイロ

ックの怒りが激しいために、証文の期限が切れた場合、彼が実際にアントーニオの肉一ポンドを要求するかも知

れないことを心配したのである。だが劇の最初のシャイロックの傍白で、彼の復讐の決意をきいている観客は、

彼が打っておいた布石が、いよいよ現実的な意味をもってきたことを知るのである。サラリーノの言葉は、ジェ

シカの駈落ちが、シャイロックに復讐を決意させたことを示すのではない。それは観客にあの証文の内容を思い

出させ、アントーニオの不安な運命を予期させるためのものである。

第三幕は、アントーニオの船が難破したという噂からはじまる。彼の危機を前にして、シェイクスピアはサラ

リーノに、卓eggdAntOniOLhehOロeStAロtOni010thatIhadatit-eg00denOughtOkeephisnamecOmpany二

といって、友人の高潔な性格を賞讃させている。そこへシャイロックがやってくる。彼は娘の駈落ちのことにつ

いて、サラリーノとソラーニオに問いただすが、そのことで、彼等にからかわれるのである。

SHY・YOukロeW-】OneSOWeロもOneSOWeロasyOu-▲fmydaughter㌦空ght,

シャイロックについて

一三

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シャイロックについて

SALER.That、sceユainここOrmypaユ.knewthetai-Orthatmadethewingsshe謡wwitha-.

SOLAN.AndShy-OCk-fOrhisO毒口partIknewthebirdwasPdge‥andthenitisthecOmp-e軋○ロOfthema--

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(HII∴.NTN3

アントーニオが船を失った後でも、彼の友人の二人が、このように、シャイロックの悲しみを逆なでするような

態度をとるのを不思議に思う批評家がいるが予しこでシェイクスピアは、彼等のロをとうして、駈落ちする娘に

金を持逃げされるりんしょく家の喜劇性をもう一度強調しているのである。そしてこのような彼等の態度が同時

にシャイロックを刺激する効果をもつことは事実であろう。サラリーノにアントーニオの船のことを尋ねられる

と、彼は、.abaロkrupt-aprOdiga-、と言いながら、藷thim-00ktOhisbOnd、を繰返す。そしてサラリーノが、

「たとえ期限が切れても、あの人の肉を取ったりはしないだろう?何の役にも立たないからな」と念を押すと、

今度は、本性をむきだしにして、次のように答える。

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hindgdmeha-fami--iOnこaugh、datmy-OSSeS-mOCk、datmygainsISCOrロedmynatiOnこhwartedmy

bargainsも00-edmyfrieロds-heatedmineenemies.Aロdwhat-shisreasOn~Hamalew.

(IHH.i.畠1巴)

我々は、アントーニオがシャイロックを憎むのは、彼があこぎな高利貸しであるためと思っていたが、ここでは

その理由が、ユダヤ人に対する人種的な差別のせいにされている。そしてここにおいてシャイロックは、ある批

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評家たちにとって、彼を虐げられた民族の代表者にまで高めた、あの有名な言葉を吐くのである。

…HathnOtaleweyes吋一〓athnOtalewhandsもrganS定imensiOnS-SenSeSも鞠訂tiOnSもaSSiOロSLedwiththe

Samef00d-FurtwiththesameweapOロSISubjecttOthesamediseases盲ea訂dbythesamemeans-Warmed

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(III∴.組めふN)

キリスト教徒と駈落ちした娘のことを問いただしながら、ロの悪い二人に嘲けられるところに、このシャイロッ

クの言葉のきっかけがあるように思われる。だがそれに対して感傷的になるのは、作者の意図に反するであろう。

この言葉は、ユダヤ人とキリスト教徒が人間として同じである点を沢山ならべることによって、アントーニオに

対する自分の復讐の正当性を強調しょうとする一種のレトリックであって、自分の属する民族の公平な扱いを要

求しているのではないからである。更にまた、この言葉でもう一つ注目すべきことは、ユダヤ人がキリスト教徒

と同じ人間である証拠として挙げられているものが、肉体の部分、感覚そして反応といった、人間の下等な要素

に関するもので、愛とか魂といった人間の気高い要素と明確に区別されている点である。それは、我々がこれま

シャイロックについて

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でみてきたシャイロックの物質主義や動物的イメージと密接に結びつくのであって、ここからも、彼に対する作

者の態度を窺うことができるのである。この言葉の中に、彼の同胞に対する愛情をよみとろうとする者は、この

言葉だけを切離して考えるのではなく、すぐ後につづく彼の言葉にも注目する必要がある。娘を探しに行ってく

れた仲間のTuba-から、彼女がみつからないという報告をきいて、彼は次のようにいう。

SHY.Whythereこhereこhereこhere叫AdiamOndgOneもOStmetWOthOuSandducatsiロ耳ankfOrt叫The

CurSeneくOrfe--upOnOurnatiOnti--nOWこne記rfe-titti--nOW.TwOthOuSandducatsinthatもndOther

preciOuSもreCiOuSjewe-S.IwOu-dmydaughterweredeadatmyf00t.andthejewe-sinherear=WOu-d

Shewerehearsdatmyfe0tもndtheducatsinhercO諦n叫NOneWSOごhem~Why-S0-1andIknOWnOt

What-sspeロtinthesearch.WhyこhOu--OSSupOn-OSS叫Thethie蝿gOneWithsOmuChもndsOmuChtO

蹄ndthethief二mdnOSatisfactiOnInOreくenge∵:

(HHI.i.可N-巴)

問題は、二行目の.Thecurseneくerfe--upOnOurロatiOロti--nOWこneくerfe-titti--nOW.、という言葉である。いま

民族的差別に対する彼の怒りをきいたはかりの我々は、この言葉から、彼の同胞愛が自己中心的なものでしかな

いことを知るのである。彼にとっては、自分の損得がすべてに優先する。それは、つづいて示される娘に対する

彼の態度においても明らかである。シャイロックが娘を愛していると信ずる者がいるならば、この引用の三行目

から四行目にわたっている彼の恐ろしい言葉をどのように解釈するのであろうか。「娘がこの足もとにくたばっ

ていればよいのに、耳に宝石をつけて。棺の中に入れられていればいい、その棺に金がはいっているならば」と

Page 18: Title シャイロックについて : 『ヴェニスの商人』に …...シャイロックについて-『ヴェニスの商人』におけるアイロニーと諷刺 青木啓治

いうのである。娘に沢山の金や宝石を持逃げされた彼の損害は大きいが、それを取り戻すためには、その「泥棒」

(娘をそう呼ぶのである)を沢山の費用をかけて探さなければならない。だが探しても、このようにみつからな

いとなると、まさに彼がいうように「損の上塗り」なのである。ここには、欲のために人間性を失った、哀れな

りんしょく家の姿が、シェイクスピアによって、こっけいに描かれているのである。

作者のシャイロックに対するこのような諷刺的態度は、すぐこの後につ、、つく、彼と仲間のチューバルとの対話

にあらわれているように思われる。

↓U甲[AntOni且hathanargOSyCaStaWayCOming昔OmTripO-is・

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SHY・Iamくeryg-adO〓tこ占p-a望ehimこゴtOrturehimこamg-adOfit.

TU甲.〇neOfthemShOWedmeaコngthathehadOfyOurdaughterfOramOnkey.

シャイロックについて

一七

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シャイロックについて

SHY.OutupOnher∵↓hOutOrtureStme-Tuba-.ItwasmyturquOiseこhaditOfLeahwhenHwasa

bache-OrこwOu-dnOthaくegiくenitfOraWi-dernessOhmOnkeys.

TUB.ButAntOniOiscertain-yundOne.

SHY.Nayこhat、st2eこhat㌦くeryt2e.

(III.i.∞?-○∞)

ここでは、シャイロックが宿敵アントーニオの災を喜ぶ気持と、娘に自分の大金や宝を浪費されるくやしさとが、

交互に四回にわたってくりかえされている。かつてJOhnPa-merは、チューバルに対するこのシャイロックの

反応を「あやつり人形のけいれん的な反射運動」にたとえたが、′彼を機械に近づけることによって、シェイクス

ピアは喜劇的効果をうみだしているのである。ジェシカの浪費は、貪欲な父に対する面当てとして意図されてい

るのであって、W.H.Audenのように咽ここに浪費の罪に対する作者の批判を読みとることはできないのである。

シャイロックは、娘が猿とひきかえに他人にやった指輪が、亡妻Leahから独身時代にもらったものであるとい

って、惜しんでいるが、それは亡き妻を愛する誠実な心を示すものとして、彼に同情する批評家たちに注目され

てきた。最近では、RuthNeくOがこの場面をとりあげ、シャイロックへ同情をかきたてながら、娘の品性に不

安をいだかせるものとして、彼女が得た猿の中に、より深い意味を探ろうとしている。だがこの批評家は、そう

いうことを追求するよりも、シェイクスピアがここに指輪の話をもってきた理由を考えてみる方がよいであろう。

娘がリアのくれたエンゲージ・リングを手放すことによって、シャイロックが悲しむ損失に変化をもたせること

ができるだけでなく、大切なことは、これが終幕におけるエンゲージ・リングの主題の先触れとなるのである。

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彼が亡妻を慎Lがる気持は真実であるとしても、ここは観客を笑わせる場面であって、同情して彼の心に入って

ゆく批評態度は、作者の意図と矛盾する。この場面の観客は、Leahの名を聞く前に、それまでのシャイロック

の反応の機械性にきがついて、笑いだしている箸である。このように、諷刺の対象として描かれた人物に感傷的

になることができるのは、批評の体質に問題があるといわなければならない。私には、心理的リアリズムに基づ

いた性格中心の批評のもつ危険性が、この短い場面の中に、凝縮されているように思われる。

だがシャイロックの側に立つ批評家たちのもっと大きな欠陥は、すでにみたように、この人物の言葉をそのコ

ンテキストからの切り離して、それに意味を付加しようとする傾向である。この場合でも、すぐあとに、シャイ

ロックの一wiロhaくetheheartO〓im[AntOniO〓fhefOr訂itこOrWereheOutOfくeniceLcanmakewhatmerchan・

diseHwiローという言葉が続いている。これで変った証文を提案したときの「巧言」のうらにかくされた「悪党の

心」がいよいよ明らかになったわけであるが、シャイロックに同情する批評家たちは、貪欲から他人を殺そうと

する彼の殺意よりも、亡き妻を思う彼の心の方に注目するのである。

さて、このようにして、ヴェニスでアントーニオの身に危険が迫っているとき、ベルモントのポーシャの邸で

は、バサーニオが箱選びに成功して、彼女と結婚できることになる。彼が選んだ鉛の箱の上には、.whO

Ch00SethmemustgiくeandhaNardaロhehas-という銘が刻まれていた。考えてみれば、愛するもののために、自

分の所有するすべてのものをなげうつぐらいの覚悟がなければ、その人を真に愛しているとはいえないであろう。

だがこの言葉はまた、劇全体を貫いている愛と金の主題を象徴するものとして、注目されなければならないので

ある。こ

の主題を中心に考えるとき、アントーニオとシャイロックは全く対照的である。劇の冒頭の場面で、アントー

シャイロックについて

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シャイロックについて

ニオは友情から、バサーニオにできる限りの援助を約束しながら、「不名誉なことでなければ、わたしの財布も、

私の身も、わたしの力の及ぶ限り、必ず、ご用立てします」といって、変った証文に判を押し、実際に身を危険

にさらすことになった。これに反して、シャイロックは金もうけの鬼であって、自分の物質的利益が、ユダヤ民

族の運命や、娘の命よりも大事なのである。彼がアントーニオの命をねらうのも、「あいつさえ、ヴェニスにい

なければ、どんな商売でもできる」からであった。

アントーニオの船が全部難破したという報せは、ポーシャがバサーニオに婚約指輪を与えたすぐ後に、ジェシ

カ等と共にベルモントにやってきたサラーリオによって伝えられる。彼はシャイロックについて、「人間の皮を

かぶっていて、あんな残忍な、人殺し根性で固まった奴は、ついぞみたことがありません」とのべ、今となって

は、支払う現金があっても受取らないだろうという。ジェシカも、父と一緒にいたとき、彼が同国人のテユーバ

ルとチューズに、「アントーニオに貸した金を二十倍にして返されるよりも、あいつの肉の方が欲しい」と彼が

毒づいているのを聞いたことがあるので、法律や権力でおさえないと、アントーニオはひどい目にあうという。

一方、ポーシャは、手紙を呼んで顔色を変えるバサーニオに尋ねることによって、その手紙の主が如何なる人物

であるかを知るのである。

BASS.ThedearestfriendtOmeこhekindestman-

ThebestcOnditiOndandunweariedspirit

IロdOingcOurteSies二ndOneinwhOm

TheancientROmanhOnOurmOreappearS

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ThaロanythatdrawsbreathinIta-y.

(III∴i.N筐lN麗)

ポーシャは、バサーニオのそのような親友が、彼のあやまちのために髪一本でも失うことがあってはならないと

して、教会で式を挙げた後、アントーニオの借金の二〇倍の金を持たせて、彼をヴェニスに発たせる。

次の場面は、シャイロックが自分の家の前で、アントーニオにつきそってきた牢獄番に「こいつは、ただで金

を貸した阿呆だ」とのべ、アントーニオには、「おれは証文どうりにして貰うと、撃言したので」証文を取り消

せといっても無駄だといって、一wi--haくemybOnd-をくりかえす。アントーニオも、彼が自分の命をねらう理

由をよく知っているのである。

ANT.〓eseeksmy-ife…hisreasOnWe-〓knOW‥

IOftde-iくerdfrOmhisfOrfeitures

ManythathaくeattimesmademOantOme‥

TherefOrehehatesme.

(III.iii.NTNe

シャイロックに金を借りて、期限までに返すことができないで助けを求めてきた者達に、アントーニオはよく金

を貸してやって、抵当にしていた不動産などがとられるのを防いでやったのである。これは高利貸しには、我慢

がならなかったことであろう。

第四幕はいよいよ法廷の場面であるが、そこへ入ってきたシャイロックは、証文どうりにして貰うという決意

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をのべ、もしそれがならぬということであれは、ヴェニスの法律は反古同然だという。三〇〇〇ダカットより「わ

ずかな腐れ肉」の方を欲しがる理由については、きまぐれとかアントーニオに対する宿怨であるといって、本当

の理由はかくしている。公爵の「人に慈悲を施さないで、どうして神の慈悲が望めるのだ?」という質問に対し

ては、自分は悪いことをしていないから、どんな裁きも恐くないとして、アソトーニオの肉一ポンドを要求する

ことの正当性について、次のように述べる。

SHY.Whatjud的mentShaロHdreadldOingnOWrOロg旬

YOuhaくeamOngyOumanyapurChas、ds-aくe-

WhichこikeyOuraSSeSandyOurdOgSaロdmu-es-

YOuuSeinabjectandins-aくishparts-

BecauseyOubOughtthemいSha-〓saytOyOu

戸etthembefree-mar苛themtOyOurheirs-

Whysweattheyunderburdens~--ettheirbeds

BemadeassOftasyOurSもnd-ettheirpa-ates

BeseasOndwithsuchS.andsJYOuWiロanswer

↓hes-aくeSareOurS∵SOdOHansweryOu‥

ThepOundOf詳shwhichHdemandOfhim

Isdear-ybOught∴tismineもndlwiuhaくeit.

(:く∴.雷⊥00)

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ここでは、金で買ったものは、それをどのようにしようと勝手であるという冷酷な個人主義の主張がなされてい

る。それがヴェニスのキリスト教社会の奴れい制度を論拠としているだけに、キリスト教徒の慣習を模範にして、

彼がアントーニオに対する復讐を正当化しょうとした場合(-II〔コ)と同じように、反論がむつかしいのである。

アントーニオから肉を切り取ろうとして、靴の庇でナイフをといでいるシャイロックをみて、グラシアーノは、

老OtOnthysO-e盲utOnthysOu-盲arshlewらhOumakestthyknifekeen、とのべ、彼の残忍さを激しく非難しな

がら、シャイロックがおふくろのきたない腹の中にいるとき、人殺しで絞首刑になった狼の凶暴な魂が、彼の体

の中にもぐりこんだのだという。これに対してシャイロックは

SHY.TiロthOuCanStrailthesea〓rOmO擢mybOnd-

ThOubutO鞠gd妊thyFロgStOSpeaksO-OudH

Repairthywit1g00dyOuthl▲ritwi-〓aロ

TOCure訂ssruin.IstandherefOr-aw.

(Iく∴.-∽?-畠)

といった具合で、グラシアーノを馬鹿にしながら、キリスト教徒たちの如何なる説得も嘆願もうけつけない。そ

のようなお手あげの状況の中で、法学博士に扮したポーシャが登場してくるのである。これからポーシャがその

シャイロックをやっつけるのであるが、それまでの過程は、アイロニーにみちた諷刺的な構成から成立っている。

彼女は、まずシャイロックに対して「お前の訴訟は奇怪なものだが、道筋をととのえているから、ヴェニスの

法律は、お前を非難するわけにはいかない」といって、アントーニオに慈悲をかけてやるようにすすめる。公爵

シャイロックについて

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がのべたように、神の慈悲を祈るなら、我々は互いに慈悲を施さなければならないというのである。だがシャイ

ロックは、自分は慈悲を必要としないとして童ydeedsupOnmyhead.1Icraくethe-aw「と叫んで、証文どうり

の科料を要求する。バサーニオが、今度だけは権力によって法を曲げて、「この残酷な悪魔」の意図を阻んでく

れるように頼むと、彼女は、悪い先例を残して、国家を誤るもととなるから、それはできないという。これをき

いたシャイロックは

S呂Y一ADanie-cOmetOiudgment{Yea、=Danie二

〇wiseyOungjudge-hOWIdOhOnOurthee叫

(Iく.i.N-乎N-盟

といって、相手が自分の意図を挫く目的でやってきたことを知らないで、裁判官をはめそやす。そして被告側が

借りた金の三倍を戻すといっていることを彼女に告げられると

SHY.AnOathもnOath.IhaくeanOathinhea扁n.

Sha-ニーayperjuryupOnmySOuC

Z0-nOtfOrくenice.

(Iく∴.NN㌣NNe

といって、それを受取ることを拒否する。貪欲で、徹底した物質主義のシャイロックが、ぎysOu-、を口にする

のは、およそ似合わないが、これも偽薯の罪を重視するキリスト教社会の慣習を逆手にとった皮肉な発言である。

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証文をみたポーシャは、それが期限がすぎているので、彼の要求が正当であることを認めるが、慈悲をかけて、

三倍の金を受取るようにもう一度すすめる。これに対してシャイロックは、

:由ymysOu〓swear

ThereisnOpOWerinthetOn的ueOfman

TOa-terme.IstayhereOnmybOnd.

(Iく∴.Nu望NuJ

といって、証文どうりにしてくれることを要求する。悪党は、懲らしめられる前に、いつもこのように得意にな

るのである。彼女は、アントーニオが出血のために死ぬといけないから、自費で医者を呼んでおくようにいう。

だがシャイロックは、「証文にそうかいてない」という理由でそれを拒否する。このようにして、ポーシャは、

予定している形勢の逆転をより喜劇的にするために、相手が喜ぶことを述べ、自分を何度も賞めさせて、それま

での過程をできるだけ引伸ばす。そして最後にもう一度hApOundOfthatsamemerchant、S謡shisthine-とのべ、

シャイロックにも自分を嘗讃させて、いよいよ彼がナイフをもってアントーニオに近づくとき、「ちょっと待て」

ということになるのである。その証文は、肉一ポンドは与えているが、血は一滴も与えていないので、肉を切る

とき、キリスト教徒の血を一滴でも流したら、ヴェニスの法律によって、国家へ全財産が没収されるというので

ある。証文の言葉どうりにして貰うことを要求してきたものは、その言葉が血を与えていないといわれれば反論

できない。シャイロックは、自分が主張してきたものによって敗北するという皮肉な結果になったのである。

自分の形勢が悪くなったとみたシャイロックは、貸した金の三倍を沸うという申出を受け入れようとする。こ

シャイロックについて

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の金については、魂に偽誓の罪を犯させることになるから、ヴェニス全体を貰ってもいやだと断わったのである

が、卑劣にも、いまその金を受取ろうとするのである。しかしもう遅い。いままでそれを受け取るチャンスは二

度あったのであるが、もう遅いのである。ポーシャはシャイロックに、.asthOuurgeStjustice-JeassuredthOu

sha-thaくejustice1mOrethanthOudesirest.といって、証文の科料以外、取ることを許さないのである。しかも

肉を切り取るとき、一寸でも血を出したり、肉が一ポンドより、ちょっと多くても少なくても、彼は死刑になり、

財産を没収されるというのである。これをきいたグラシアーノは、夏OWLn監e-LhaくeyOuOnthehip.といって

喜ぶ。劇の最初のシャイロックの傍白の中に、己Icancatchhim[AntOniO]OnCeupOnthehip二I.iii.舎)という

表現があったが、作者はいま、それを意識していたであろう。これはユダヤ人の陰謀が、完全に失敗したことを

意味するものであった。彼は元金を貰って帰ることを望むが、すでに法廷で公然とそれを拒否しているので、そ

れもできないで、ただ法律どうりに、証文に記された科料を受取ることしか許されないのである。グラシアーノ

ほ、-ADanie--Sti--sayHもSeCOndDanie弓といって、その言葉を教えてくれたユダヤ人に感謝する。そして憤然

と出てゆこうとするシャイロックに、法律ほまだ用があったのである。

ヴェニスの法律では、市民の命を奪おうとした外国人は、自分の財産の半分をその市民に取得され、他の半分

を国庫に没収されるだけでなく、犯罪者の命は、公爵の意のままになるのである。だからシャイロックは、ひざ

まづいて公爵の慈悲を乞わなければならないことになる。これは、アントーニオに対して慈悲をかけてやる必要

性を再三説かれながら、それを拒否してきた者が招くにふさわしい皮肉な結末であった。このようにして、彼の

高慢な態度や言葉の一つ一つが、アイロニカルな復讐の効果をもって、彼自身にはねかえってくる。いつも法律

に訴えてきたシャイロックが、法律によって裁かれるのは仕方のないことである。彼は証文の言葉に固執し、あ

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くまでも正義を主張することによって、自分が確実に落ちる墓穴を掘っていたのである。我々はシャイロックを

論ずる場合、このようにアイロニーに満ちた諷刺的な劇の構成に注目しなければならない。これはいうまでもな

く、シャイロックに対するシェイクスピアの態度が諷刺的であるということであって、法廷の場面のポーシャは、

劇作家を代表しているのである。

慈悲の必要を説くポーシャが、シャイロックに対しては無慈悲であるとか、彼はキリスト教徒たちによって不

当な扱いをうけるとよくいわれる。だがその解釈は正しくない。シャイロックの命を自由にできる立場にある公

爵は、自分達の心が、彼とは違うところをみせるために、乞われる前に命を助けてやり、国庫に没収されるユダ

ヤ人の半分の財産も、悔悟するなら、罰金だけで許さぬこともないという。そこでポーシャがアントーニオに、

「お前も慈悲を施す気があるか」と尋ねると、彼はまず、ユダヤ人の財産の中、国庫に入る分については、罰金

さえも許して貰えるように願うとともに、自分に与えられる分については、シャイロックがすぐにキリスト教徒

になるということ、そして彼の死後、すべての遺産が、娘夫婦に渡るように証書をかくという条件で、それを預

かっておくことにするのである。いままでユダヤ人に殺されようとしていた彼がである。シャイロックが強制的

にキリスト教徒にならされることを問題にするにする批評家がいる。だが当時では、アントーニオの命をねらっ

た彼の魂が救われるためには、その必要があると考えられたであろう。

これらのキリスト教徒たちが、無情、冷酷なシャイロックと対照的であることは明らかであるが、ユダヤ人の

そのような性格は、すべて貪欲に根ざしたものであって、劇全体をとおしてみるとき、彼等の本質的な相違は、

富に対する態度の中に示されているといわなければならない。高利貸しのシャイロックは、家の中に富を蓄える

ことだけが生きがいであって、その目的が同胞の運命や娘の命よりも大切である自己中心的な人物で、食事も惜

シャイロックについて

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シャイロックについて

Lがるけちん坊として、こっけいに扱われている。これに対して、彼が「浪費者」と呼ぶキリスト教徒たちは、

他人との交際を大切にし、愛情のためには金を惜しまないのである。この劇は、そのような対照的な二つの世界

から成り立っているのであって、シャイロックがアントーニオの命をねらうことは、精神的、人間的な世界に対

する、物質的、非人間的(動物的ともいえる)世界の挑戦を意味したのである。このように考えると、シャイロ

ックの陰謀が打ち砕かれた後にくる終幕のベルモントの世界も、その意味がはっきりしてくるのである。それは、

嵐が過ぎ去った後のように月が明るく輝き、音楽もきこえてくるロマンティックな世界で、幕のはじめのジェシ

カとロレンゾーの幸せなduetが示すように、愛し合う者たちの勝利をあらわしているのである梅

しかもこの劇では、愛する者達の経済的な幸せにも配慮がなされている。「黄金の羊毛」を手に入れた「ジェ

イソソたち」(IHH.ii.N駐)はいうに及ばず、友情のために生命も危険にさらしたアントーニオに、全部難破した

と思われていた彼の船の中、三そうが、思いがけなく、船荷を一杯積んで港に戻ってくるという報せが届くので

ある。そしてジェノアで父の金や宝を浪費したジェシカとその恋人も、シャイロックが死んだ場合、遺産はすべ

て譲渡するという証書を、「飢えた老たちに降ってきたマナのようです」といって有難く受取るのである。劇の

終りにおけるこのmanna(神から与えられた食物)のイメジは、大きな意味をもつように思われる。

この劇には、貪欲なりんしょく家に対する諷刺はあるが、浪費に対する批判はない。このような愛する老たち

の幸せをシャイロックの生活と比較して考えるとき、我々は、人種の問題を越えた、人間の生き方に関する教訓

のようなものを感じる。シャイロックが非難されるのは、彼がユダヤ人であるからではない。それは彼が高利貸

しで、利欲のために、他人を殺そうとするような人間であったからである。シェイクスピア時代のロンドンに、

ユダヤ人がいたかどうか問題になっているが、ユダヤ人の高利貸しがいなかったことは確かである。利息一〇パー

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セント以下の高利貸しが英国で法律的に認められたのは、一五七一年であって、この劇が書かれた一五九七年頃

には、経済的必要から、高利貸しがさかんに行われていたようである。金貸しをやっていたのは、主に清教徒た

ちであった。彼等はよく、風紀の面から、劇の内容や俳優たちを攻撃していたので、劇作家や劇団の者達は、彼

等を仇と思っていた。だからシェイクスピアがシャイロックを諷刺するとき、その実際の標的は、清教徒たちで

あったという説がある。

それはともかくとして、シャイロックのように諷刺的に扱われている人物に対して、批評家たちが同情的にな

れるのは何故であろうか。シェイクスピア時代とくらべて、人道主義が発達したためかも知れないが、それより

も、現代のシェイクスピア批評になおも根強く残っている心理的リアリズムに基づいた性格中心の批評が、アイ

ロニーや諷刺に反応することを不可能にしているのである。劇の終りで不当な扱いをうけるという点で、シャイ

ロックはよく『ヘンリー四世』のフォールスタッフに比較されてきた。だが王子の悪い仲間は、劇の最初から、

英雄の偉大さを隠す雲として意図されているのであって、それを知らないで、戴冠式に駆けつけるフォールスタ

ッフには、強烈なアイロニーがある。だから彼を追放するハルを冷酷だと非難し、彼に同情する批評の立場は、

作者の意図と全く逆なのであって、シャイロックに同情して、キリスト教徒たちを非難する立場も、これと同じ

批評の体質を反映したものである。第一独自で自らを雲にかくれた太陽に喩えるハル王子は、シェイクスピア自

身にとって太陽であるように、法廷の場面のポーシャは、作者を代表しているのである。

シェイクスピア劇の人物を論ずる場合、心理的リアリズムだけに依存する批評の立場は、途方もない解釈へ導

く可能性がある。人物の性格は、劇の主題との関連において、もっと象徴的に捉えられなければならない。そし

てこれは心理的に性格を追求する批評家にはむつかしいことだが、劇中の人物からある程度距離を保って、アイ

シャイロックについて

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ロニーの方向に絶えず注目する必要があるのである。それは、しばしば作者の批判をあらわし、我々のとるべき

姿勢や進むべき方向を指示するので、その効果に反応できなければ、劇の解釈が全く誤った方向に進む危険性が

あるからである悔最近私は、そのような立場から『ジョン壬』を論じたことがあったが海シャイロックの解釈も

同じような問題を含んでいるように思われる。

(これはある公開講座で話したものを基にして書いた論文である。)

なお、シェイクスピアのテキストは、peterA-eH如nder(ed.)-3屯C箋隻註こき罫:鼠等琶註志望数屋首慧

(C0--ins.LOndOnL誤-)を使用した。

(注)①EdwardHがユダヤ人を英国から追放して以来、彼等の入国は認められていなかったから、シェイクスピアは、ユダヤ

人を見たことがないかも知れないと考えられていた。しかしいまでは、可なり大きな彼等の社会が、英国にあったことが

知られている。(SeeC.1.Siss昌㍉AC0-OnyOこewsinSh許espeareJLOndOn㍉in日雇竃聖軋哲邑訂.、員-誓q-

pp.加平巴)

②批評家が言及しないのが不思議に思われるが、これは、和訂訂邑壇で、アイルランド遠征に出発した王と別れた後の王

妃-sabe-を思い出させる。彼女は、ぎyinwardsOuくWithnOthingtremb訂S;tSOヨethingit唱ie記SLMOrethaロWith

partingfrOmmy-Ordthekiロg.(和計訂註只-〓i.u⊥∽)といって、理由の分らないゆううっな気分に悩んでいるが、リチ

ャードの留守の間に、ボリングプルクが大軍を率いて帰ってくるのであって、未来の不幸に対する虫の知らせといったも

のに、シェイクスピアは興味をもっていた。アントーニオのゆううっを、親友の恋愛と結びつける解釈があるが、あとか

らすぐ分るように(Seel∴.ロ?-N-)このときすでに、バサーニオに好きな女性がいることは知っていた筈である。だか

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らそれが原因であるとすれば、冒頭の7行で、あんなに自分のゆううっの理由が分らないように云うのはおかしいであろ

う。私はこの劇で、友情と恋愛の蔦藤が注目すべき主題であるとは思わない。

③この言葉は、Richard:::の.Ic-Othemynakedくi--any、WithOddO-dendsstO-ゴ訂rthOfhO首writ\Andseemasaint

whenmOSこp-aythede邑よね計訂邑h声I.iii.uU?uu∞)を思い起させる。

④H.B.Char-tOn定評訂官SSCQ挙凰三LOndOnL霊浮p.GO一HarOEC.GOddardlhTheThreeCasketsこn治乱怠蛮声

叫密造町言訂ミ亀憲諷C完d.byJOhnWiEersもLuu.だが劇の最初の傍白でのべられたこのようなシャイロックの決意は、

以後、傍白か独自でその決意を撤回するまでは持続されるというのが、エリザベス時代における舞台のコンヴェンション

ではなかったか。

⑤父親をすてるジェシカは、よく批評家から非難されるが、私はこの二行に、彼女を悪い性格にしたくないという作者の

配慮を感ずるのである。

⑥SeeRObertOrnsteiローS訂訂督彗aCQ豆乳計ヱUniくerSityOfDe-awarePress∴石空軍pLS.

⑦LawrenceDansOnは、サラリーノとソラ1二オの見方をシェイクスピアの見方と同一であるかのように受けとるとこ

ろにE.E.StOロの基本的な誤りがあるとして、ジェシカの逃亡を伝えるソラー二オの言葉に彼の悪意をみることによっ

て、その事件に対する我々のたのしみを減じようとするのである。(SeeL.DansOn二尋こ詳東宝訂.亀.叫ぎb冷邑訂ミ亀

憲諷CさYa訂Uniく佃rSityPressL笥∞も.-∞∽)しかし、このようなコーラス的な人物を心理的にとらえる批評態度は、道

標を見失うことになり、誤った方向に進む危険性がある。この紛わしい名前の二人は、台詞を互いに入れ替えても問題で

ないような人物たちで、作者は一緒に道具として用い、観客に必要な知識や情緒を彼等のロをとおして伝えている。たと

えば、劇の冒頭の場面におけるアントーニオとの対話では、彼のゆううっの原因についての彼等の推測は当っていなくて

も、サラリーノが用いる.awindt00唱eat:shanOWS:評ts:rOaringwaters:dangerOuSrOCks、といったイメジャリーは、

アントーニオの不安な未来を暗示しているともいえるのである。その他、バサーニオとアントーニオの友情(II.象i.u㌣

g)、アントーニオの高潔な性格(-I:.i.-千㍍)、それからジェシカの逃亡に対するシャイロックの反応(II.象i.-NIN告

それからベルモントに伝えられるアントーニオの破産と仮借ないシャイロックについての情報といったように、彼等が伝

えることは、みなこの劇の重要な主題と密接な関連があるものであって、むしろコーラス的要素をもつものとして、彼等

シャイロックについて

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シャイロックについて

の役割は注目する必要がある。彼等が陽気な性格として登場するのも、気むずかしいシャイロックとの対照が、最初から

意識されているような感じである。

⑧一幕三場で、傍白をとおして語られるシャイロックの復讐の決意は、もちろん継続されているが、その目的を果すため

には、アントーニオの船が難破する必要があった。この場面の観客の立場にたって考えれば、証文の場面から時間もたっ

ているし、これまで家庭におけるユダヤ人のコミカルな面をみてきたので、ここで作者はア/トーニオの船が難破したこ

とを伝えるだけでなく、もう一度サラリーノたちにシャイロックを刺激させて、心理的にその復讐の決意に真実味を与え

る必要があった。その意味で、ジェシカの駈落ちのことでこの人物をからかうサラリーノたちは、同時に二重の役割を果

していることになる。

⑨lOhnP巴mer..Shy-OCk-Ln治乱且莞童心ぎきざ註軍言〓ぎ計ed.bylOhnWi-derl一.-Nい.

⑲W.H.Auden13屯」ぜq‡迦§爵(LOndOn.FaberandFaberL霊山)も.Nu-.

⑪RuthNe3-Cも鼓こざ屋ぎ萱註軍資詮訃音彗三Methuen.-霊○)も.--↓.

⑫シャイロックが用いるイメジャリー、あるいはシャイロックに対して他人が用いるイメジャリーには、下等な動物のイ

メジャリーが多く、その数はざっと五〇を数え、その種類は、犬と狼が中心だが、その他に、蛇や猿など多くの動物にわ

たっている。これを彼が用いる物質的や肉体的なイメジャリ1とあわせて考えると、詩人シェイクスピアが、愛に生きる

ものたちと比較して、シャイロックをどのように考えていたか推察がつくのである。

⑬一九六五年にロンドンでみたTheROya-ShakespeareCOmpanyの『ヴェニスの商人』では、このduetが特に印象的で、

この劇がたのしい劇であることをはじめて知った思い出がある。シャイロックを演じたのはEricPOrterであったが、演

技、発声、服装のすべての面で、その役は抑えられていた感じである。

⑱最近ではRObeユOrnsteinがこの点に言及している。(SeeR.〇rnsteinもp.Cit.p.ココ

⑮この最もよい例は、『ヘンリー四世』のハル王子の解釈であろう。S訂訂督S幹鳶ヾ恕(CambridgeUniくerSity

PressL霊悪は、三〇年に一度の総括で、拙著望邑訂官宅急こ紆月こく、旨軋埴昌ゼヨb打憲迦N邑cc訂⊇C瞥這乱立芋幹芋

C訂邑3~鳶(KyOtOL等∽)に大きな注目をはらっているが、私が主張するように、『ヘンリー四世』にシェイクスピアが

意図するものが、英雄の偉大さを世界が知らない面白さであるとしたら、これまでの、王子を堕落しているものとしてそ

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の成長を追う批評も、また彼をいやな性格として捉える立場も、ともに何の意味もなかったことになる。心理的リアリズ

ムに基づいた性格中心の批評の恐ろしさを、これ以上はっきり示した例はないであろう。『ヴェニスの商人』の批評でい

えば、こういう危険な批評の体質がもっとも明白にあらわれているのは、HarOEC.GOddardの解釈であろう。そこでは

劇の中の人物が作者の手をほなれて、完全にl一人歩きしている。シェイクスピアの客観性をいうのは正しいが、シェイク

スピアの人物でも、所詮は、作者の操り人形にすぎないことを忘れてはならない。(SeeH.GOddard∴TheThreeCasket∽"

in望匡許せ昌葛∴⊇石きざ已§ミを二才諷完Macmi-【an一-宗華pp.-畠⊥詔)

⑮教室の「英文学評論」五三号に英文で書いて載せた拙論dOmmOdityThemeandlrOnyin無尽去罫号を新訂訂官彗

S監⊇受巴(CambridgeUniくerSityPressL農学か、知叫C訂⊇こ51に関する私の立場も含めて、注目してくれている。『ジョ

ン王』は、ほぼ同じ内容をもつ↓heTrOub-esOmeReignOfKinglOhn-という作者未詳の劇との関係が問題であるが、後

者に潜在する便宜主義の主題とアイロニーをシェイクスピアが強調することによって劇の統一を乱している点に着目し、

その面から、『ジョン壬』をめぐる多くの問題を解決しようとした。大きな反響があったので、海外の有名なシェイクス

ピア学者からの手紙を載せておこう。

一、もとKentにいたR・A・フォークス教授は、いまカリフォルニア大学にいる。

UniくerSity象Ca-ifOrnia

LOSAnge訂S∞May-霊↓

DearDrAOkil

ManythanksindeedfOrSendingmeanO昏rintOfyOurinterestingessayOn無毒b賢.〓詳eyOurgenera【ar等・

mentabOutitsreEiOntOtheゴQ監釘も遠へ恕瞥云ndemphasisOnShakespeare㌦irOny-WhichisOneOfthemOSt

pOWerfu-○ごhedramatice評ctshedep-OyS.Hncidenta-質もneOfmycOロeaguesherelA.R.Braunmu-訂r.isediting

鞠叫葛bぎ訂rtheO監OrdseriesもndIhaくenOdOubthewiロbeinterestedinwhatyOuhaくeWritten-Iwiロmakesure

heseesthecOpyIhaくe.

YOurSSincere-y

掬b‥ヨ音詩現

シャイロックについて

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シャイロックについて

二、ミュア教授は、現代の最も偉大なシェイクスピア学者で、世界シェイクスピア学会の会長もやっていた。英国では教

授の生誕八〇年を祝って、記念行事がおこなわれたようである。

LiくOrp00-UロiくerSity

-NMay

DearMrAOki.

FOrgiくemefOrnOtWritingbe訂re.Hhaくe苫StbeeロCe-ebratingmy霊thbirthdayandIhaくehadtOWritemOrethan

ahuロdred-ettersOfthankstOpeOp訂whOCame-▲rWrOte-▲rCOntributedanartic-e.

〓ikedyOurartic-eOn壇叫葛bぎ∴tseemstObeaくe苛SanetreatmentO{whatIhaくeaFaysfOundtObeapuNZ-ing

p【ay.ThankyOufOrSendingmeacOpy.

YOurSSincere】y-

加村≡宗法㌣きざ法

三、ジェンキンズ教授は、「アーデン・シェイクスピア」のgene邑editOrとして有名であり、『ハムレット』のアーデン

・エディタでもある。

NNNOユhCresceロtILOndOnNUuLL

uJune-宗①

DearPrOfessOrAOkiI

I宅ritetOthankyOufOryOurCOurteSyandkindnessinsendingmetheO昏rintOfyOurinterestinga邑C-eOn和音叫

甘ぎーWhichhasbeen訂rwardedtOme淳OmEdinburgh-Where-SiロCemyretirementLn0-Ongeram.ThereEiOn・

ShipbetweenShakeSpeare㌦無葛甘ぎand3へ↓首監訂Q鳶無骨hasa】Waysbeenapuzz-eもndもSmygreatEend

ErastHOnigmannknOWSLhaくeneくerquitebeenab-etOaCCepthis5.eWthat当ざ叫ざ註訂Q選へ知へ瞥wasaderi畠ti記

p-ayratherthanasOurCe.YOu已cOurSedOnOtdirect-yar望ethematterbutacceptasapremisethat3へ

ぎ邑蒼葦戸評瞥【SaSOurCe.ThecOmparisOnisthenくOryinterestingassuggestingsOmeOfthewaysinwhich

ShakespearemOdi許sthespiritinwhichtheeくentSareregardedもnd〓hinkyOuareperSuaSiくeinmaiロtaiローngthat

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thisisthecau肪eOfadua-もndeくenaCOn空ctingもpprOaCh.IfShakespeareisrewOrkingtheOEerp【ayこhisa-sOe琴

pEnsthecOmpreSSiOnOftheEeracts盲ehastOCOmpreSSnOWtOgetaロthemateria〓n・YOurCOmparisOnbetween

鞠軋葛甘ぎand知訂訂邑hqisa訂Ointeresting…

Withthanksaga-nandbestwishesI

YOurSSincereF

読替旨ござをぎ

四、エール大学のウェイス教授は、↓heO且OrdShakespeare、では↓itusAndrOnicus、などを担当するが、『ジョン王』

の研究家でもある。

Ya訂UniくerSity

DEPARTMENTO句ENGL:SH

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DearMr.AOkiI

HtwasくeryggdOfyOutOSendmeanO昏rintO昔OureSSayOn無尽古き忘p【aywhichhasinterestedヨe訂rmany

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CurredtOme諒諾ryilFminating.鞠叫葛bぎisindeedadi諦cu-tp-aytOSeeaSauni許dwhOFYOumayWeロbeユght

thatShakespearechan的edhismind.〇rLnrewritingthemOrepatriOticp-ay盲e訂thisirOnicくiewpredOminateinmOre

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曾Q蔓草N空-害学PerhapsitwOu-dinterestyOu.IぎsOrryHnO【OngerhaくeanO昏rint.

Iぎenc-OS-ngSOmethingmOrereCentOhmine.

Withaロbestwishes.

両虎噂記へ旨一男謎罫

五、マフッド教授は、↓heNewCambridgeShakespeare-で『ヴェニスの商人』を担当した。

シャイロックについて

三五

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シャイロックについて

Kent宅ynS-

望ackgateLaneI

Hen許-d-Susse8

-1u-y-慧↓

DearPrOfessOrAOki-

ThankyOuSOmuCh訂rsendingmeyOurreCentartic訂On無薦b訂.HOunditくeryperSuaSi扁incOn守mingthe

genera専he】dbe-ieごhatShakespeare一smOde】wasqぎ↓首鼠訂旨選句恕瞥andinputtingfOH尋ardtheideathatthe

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thinkHOnigmannJwarinessabOutSChO-ars∴nsistencethatShakespeare㌦nOrm巴methOdOfwOrkingwastOStart

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StO苛‥inthatcaseこhep【ay㌦incOnSistencieswOrkaga-nSttheOE・p-ayidea-becausetheyshOWShakespeare-snOt

扁苛Ski-どこOinsintheunitingOfthetwOStOries.YOuSeeIhaくethe3へ旨葛訂ミOnmymind-:イerecentすぎish・

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ChancetOgetbacktOyOurOWnWriting.Witheくe苛g00dwish-

YOurSSincere-y、

旨ゝ薫き訂訂5札

六、サリンガー教授は、旨訃音彗芸邑罫こざ注ぎ芸CQ鳶阜(CambridgeUni扁rSityPressLSeで知られている。

TrinityCO--ege

CambridgeCBNHTQ

GMay-父可

DearPrOfessOrAOkiI

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:twas謡rygOOdO‡OutOSendmeacOpyO‡Ourartic-eOn疎叫薦きざ.-tseemstOmeaくOrythOughtfu-andin・

terestingstudyこhOrOugh百ar望ed.

-wasstruckbyyOurpaSSingreferencetOMacbethOnpageuN.:tseemstOmethereisanOtherSi習OfthOught

that訂dOntO-含C評語inOneOfJOhn、sdyingspeeches(く.裏.N平岩)IWherehe訂e訂heis.C2mb〓ing】uptOdust㍉

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stressespatriOtismandnatiOna-unityもndhenceこOya吉tOthekingこthinkthep【ayhasa【sOShOWnC訂ar首enOugh

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訂gitimacy(persOn巴andd当ロaStic)inter-OCkswiththethemeOfcOmmOdityinthe許sth巴‡〓hep【ay.andperhaps

thatheすstOe葛-ainShakespeare正treatヨentOfJOhn.ButpersOna寺IぎstiFratherpuzNledbythee諦ctOfthe

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AreyOuthinkingOfcOmmgtOEng-andata巳S00nごfsOもerhapsyOuCOuEgetin什OuChwithme.andwecO已dhaくe

anOppOrtunitytOtakethisdiscussiOnPrther.

Bestwishes-meanWhi打もndthankyOuOnCeaga-n-

YOurSSincere-y-

卜昌り註居宅

七、ニコラス・ブルク教授は、色訂訂亀虫慧よねぎせムゴ馬乱紆ュMethuenL霊∞)の著者で、↓heO且OrdShakespeare定は

『マクベス』を担当する。

-Phi首HOuSeHeneage

St.LOndOnE-∽NW∽、聖等

DearMr.AOki.

↓hankyOu扁ryヨuChfOryOurO昏rintOnirOnyin壇叫馬b訂.YOuWiuseethatIhaくeretiredfrOmEastAng-iatO

シャイロックについて

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シャイロックについて

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thep-ay〆andtheロastard〆dis-OCatiOn.HぎnOtyetSureabOuttheirOnicfOrmOfthe-astpartOfthep-ay.andmust

thinkFrtherOnyOurSuggeStiOnS.

Withbestwishes-

YOurSSincereF

h5鼠吏訂こ皆書斎

八、ハーグァード大学のエヴァソズ教授からの手紙である。

WarrenHOuSe

HaコardUniくerSity

Cambridge-Mass.ON-∽∞

Nのlune-宗↓

DearPrOfessOrAOki-

Itwas完rykindandthOughtfu-○昔OutOSendmeacOpyOfyOurartic訂○ロ無毒b訂.〓Ounditiロ訂rmatiくeand

he首fu-and:washappytOSeethatyOuWereunWiEngtOaCCeptHOnigmann、sar望mentOnthe邑atiくeOrder象

Shakespeare㌦p-ayand3罵ゴ忌蚤訂冨葛如愚挙ThankyOu訂rthinkingOfme.

YOurSSincere-y"

の二関村計ミS憲こ黒さ遅

九、バツテンハウス教授からは、手紙と共に、『ジョン王』に関する彼の論文の抜刷が送られてきた。

IロdiaロaUniくerSity

DepartmentOfEng【ish

Ba-FntineHan

B-00min聖Onこndiana会合ひ

Page 40: Title シャイロックについて : 『ヴェニスの商人』に …...シャイロックについて-『ヴェニスの商人』におけるアイロニーと諷刺 青木啓治

(巴N)∽∽∽ふNN-

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attentiOntOthehistOricalnemesiswhichmOCkshumane舛ueCtatiOnS-andthusaidsrepentance.〓hinky昌might

haく巾e邑endedthispOintbyshOWinghOWitOperateSもttheendOごhep【ayLntheBastard㌦OWnCaSe.YOudOShOW

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nOb訂S(hisfOrmerenemies)fOrCOminghOme.Thep-ay㌦許a〓inehasaぎaysseemedtOmeagrandgenera-izatiOn

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is‥=IfEng-ishヨenremaint2etOEng-andbyrepentingOfpr-くateambitiOn。-andIthink芸事ご茜雲賢Jpp許stOthe

Bastardhimse-hasweロastOaロtheOthermaincharactersinthep-ayこheyremain〝t2e、bygiくmguppr【くateambi・

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Sincereす

き亨評違鼓§莞

〇、コールダーウッド教授は、S訂評督彗寒さ百註碧玉竺UniくerSityOfMinnesOtaPressL笥亡で知られているが、拙論

では、Bastardの解釈をめぐって、彼と厳しく対立した。

UniくerSityOfCa】i訂rnia-

シャイロックについて

Page 41: Title シャイロックについて : 『ヴェニスの商人』に …...シャイロックについて-『ヴェニスの商人』におけるアイロニーと諷刺 青木啓治

シャイロックについて

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甘選へ旬ト.CQ~計ミQ軋

、ベヴィソトン教授は

のエディターである。

↓heO已OrdShakespeare-で『ヘンリー四世』を担当しており、↓heBantamShakespeare-

TheUniくerSityOfChicagO

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DearPrO訂ssOrAOki、

lamhOnOred冒d望atefu-tOhaくeyOu完SSayOn..commOdityThemeandlrqロ笠nb訂薦甘富、、.YOudOaロeHheロent

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WithmywarmestwishesandadmiratiOn.

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二、トロント大学のレガット教授は、最近旨註苺さまこざ註邑hざま・賢二を音二首苫聖邑賢哲さ謹呈望-

(ROE訂dgeL宗空を出した。

UniくerSityCOロege

UniくerSityOfTOrOntO

June等-宗可

DearPrO訂ssOrAOki-

ThankyOufOryOurCOurteSyinsendingmeacOpyOfyOur邑ic-20n無毒盲訂.Icertain-yagreewithyOuabOut

theimpOユanceOfirOnyinthepFyこtseemstOmea-言e「くaSiくe.

Bestwishes.

ゝ訂誌古詩「卜奄叫、

三、チャンピオン教授は∃紺的S賢哲苧亀り訂訂冬草華でP章且三HarくadU.P.こ害○)で知られている。

ZerthCarO【inaStateUniくerSity

DepartヨentOfEng-ish

MayNNこ霊可

DearPrO訂ssOrAOki‥

YOuWerethOughtPltOSendヨeanO昏rintO柵yOurreCentartic】e㍉COmヨOdityThemeand-rOnyin疎音叫きざ㌧-

frOmthe和宣瞥這蒜ざ青草にぎ註5-enjOyedreadingit.Pロd-thinkyOurpOintabOutShakespeare-sbeingab-etO

hand-ethenarratiくeirOnica-FeSpeCia専inthe-astha-‡fthep-ay-becauseOごheaudience-sbasic訂ヨi-iaritywith

thep-Ot(thrOughtheear紆r叫ざ邑訂○重油知内督こspa註cu-ar首interesting.

ThankyOuagainfOryOurCOurteSy.

YOurSSincerely-

訂3品C訂属官昌

四、フライ教授は、今世紀最大の文垂批評家の一人といわれているが、最近彼のシェイクスピア論ゝき添豆二g烏塁

シャイロックについて

Page 43: Title シャイロックについて : 『ヴェニスの商人』に …...シャイロックについて-『ヴェニスの商人』におけるアイロニーと諷刺 青木啓治

シャイロックについて

S訂訂督彗叉Ya-eUni扁rSityPress.edbyRObertSan已erL窓豆がでた。

UniくerSityO嶋TOrOntO

MasseyC0--ege

lu-y-∞こ謡可

DearPrOfessOrAOki.

ThankyOuくerymuChfOryOurO昏nntOn鞠鞍馬b訂.There-atiOnOfap-aytOthe叫ざ註訂室戸評瞥isO〓0∈Sea

くe苛COmple80ne;utyOurCaSeSeemStObequitefair-ypresentedandithasnOtCロde8-ayedtheOrigm巴ityO〓he

Shakespearep【ay.

Withbestwishes.

YOurSSincere首-

≧芝雷尽知ぜ

五、西ドイツのクレーメン教授には、若い時、イメソャリーの研究で影響を受けた。

①NO↓EndOユ【Oberbayern】

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-N、くIl\.雲

DearMr.AOkil

ThankyOuくe苛muChfOryOurinterestingarticFwhichbeuseEこ00もtOurShakespeare・Libra草

YOurSSincere-y.

車雷管3gC打率3