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C146-0379 Technical Report EI-MRMおよびPCI-SIM 法を用いた繊維製品中 の PFOSおよび PFOA 前駆物質の分析 Analyses of PFOS and PFOA precursors in textile products using EI-MRM and PCI-SIM method Crystal Yeong 1 Lai Chin Loo 1 坂本 雄紀 2 Abstract: パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)に分解する可能性を指摘されているパーフルオロオクタン スルホンアミド(FOSEs や FOSAs)やパーフルオロオクタンスルホンアクリル酸(FTAs)などの7種類のパーフルオロ化合物(PFCs)を GC-MS/MSを用いた EI-MRM 法とシングル -GC/MSを用いた PCI-SIM 法での定量方法について検討しました。定量限界(LOQ)は、 EI-MRM 法およびPCI-SIM法ともに5.0 ng/mLであり、EUの製造および流通における繊維製品中の使用制限濃度 (25 ppb) を満たすことが可能です。 Keywords: PFCs、PFOS、PFOA、GC-MS/MS、繊維、撥水剤 1. はじめに パーフルオロ化合物(PFCs)は、炭素原子上のすべての水素原 子(官能基に付随する炭素を除く)がフッ素原子で置換されてい る炭化水素化合物の総称です。パーフルオロスルホンアミドおよ びフッ素テロマーアルコールなどの PFCs は、典型的なポリマー主 鎖の炭化水素にフッ素が側鎖として組み込まれ、繊維に撥水・撥 油効果をもたらします。しかし、不完全な重合により、パーフルオ ロオクタンスルホンアミド(FOSEs や FOSAs)およびアクリレート (FTAs)などの残留前駆物質を生成すると考えられており、それら がパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびパーフルオロ オクタン酸(PFOA)に分解する可能性を指摘されています。PFOS および PFOA は強い C-F 結合のため極めて安定であり、揮発しにく いことから、生物濃縮性があるといわれています。PFOS は 2017 年 6月に残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条 約に加えられています [1] PFOS は他の POPsとは異なり、脂肪組織内に分配されるのでは なく、血液や肝臓中タンパク質に結合します。 PFOA、その塩類お よびエステル類は現在ノルウェーで規制されており、POPsのストッ クホルム条約に記載されることが提案されています [2] また、本研究で対象化合物としたPFOSおよびPFOAの前駆物 質は、2007年にOECD(経済協力開発機構)が調査・改訂した物 質のリストに含まれています [3] そのため、PFOS および PFOA から生じる可能性のある環境問題 に取り組むために、PFOSおよびPFOA前駆物質(FOSEs, FOSAsお よび FTAs)を微量濃度まで測定する手法が望まれています。本研 究では、シングル -GC-MS を用いた CI-SIM 法およびトリプル四重極 型GC-MS/MSを用いたEI-MRM法を用いて繊維製品中のPFOSお よび PFOA 前駆物質のうち 4 種類のパーフルオロオクタンスルホン アミド(FOSEs, FOSAs) および 3 種類のパーフルオロオクタンスル ホンアクリル酸(FTAs)の微量定量について検討しました。 2. 実験 PCI-SIM法はシングル-GC-MSのGCMS-QP2020 NXを、EI-MRM 法は、トリプル四重極型 GC-MS/MS の GCMS-TQ8050 NX を用い ました。両分析法は、GC および MS の温度制御条件を統一しまし た。詳細な分析条件は Table 1 に示します。 2-1. 装置および分析条件 Table 1 分析条件 GC-MS : GCMS-QP2020 NX および GCMS-TQ8050 NX (GC 部は 230V 仕様) オートインジェクタ : AOC-20i+20s カラム : SH-Rtx-200 (Length 30 m, 0.32 mm I.D., df=0.5 µm) [GC] 気化室温度 : 250 ℃ カラムオーブン温度 : 80 ℃ =>(30 ℃/分)=> 260 ℃(1分) 注入モード : スプリットレス キャリアガス : He キャリアガス制御 : 48.7 cm/sec(線速度一定) 高圧注入 : 150 kPa(1分) 注入量 : 2 µL [MS] イオン源温度 : 200 ℃ インターフェイス温度 : 250 ℃ EI-MRM イオン化法 : EI データ採取モード : MRM イベント時間 : 0.3 秒 PCI-SIM イオン化法 : PCI データ採取モード : SIM 試薬ガス : メタン(200 kPa) イベント時間 : 0.1 秒 1 SHIMADZU (ASIA PACIFIC) PTE LTD. 2 株式会社島津製作所 分析計測事業部 1

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C146-0379

TechnicalReport

EI-MRMおよびPCI-SIM法を用いた繊維製品中の PFOSおよび PFOA 前駆物質の分析Analyses of PFOS and PFOA precursors in textile products using EI-MRM and PCI-SIM method

Crystal Yeong1、 Lai Chin Loo1、 坂本 雄紀 2

Abstract:パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)に分解する可能性を指摘されているパーフルオロオクタンスルホンアミド(FOSEs や FOSAs)やパーフルオロオクタンスルホンアクリル酸(FTAs)などの 7 種類のパーフルオロ化合物(PFCs)をGC-MS/MSを用いた EI-MRM 法とシングル -GC/MSを用いた PCI-SIM 法での定量方法について検討しました。定量限界(LOQ)は、 EI-MRM法およびPCI-SIM法ともに5.0 ng/mLであり、EUの製造および流通における繊維製品中の使用制限濃度(25 ppb)を満たすことが可能です。

Keywords: PFCs、PFOS、PFOA、GC-MS/MS、繊維、撥水剤

1. はじめにパーフルオロ化合物(PFCs)は、炭素原子上のすべての水素原

子(官能基に付随する炭素を除く)がフッ素原子で置換されている炭化水素化合物の総称です。パーフルオロスルホンアミドおよびフッ素テロマーアルコールなどの PFCs は、典型的なポリマー主鎖の炭化水素にフッ素が側鎖として組み込まれ、繊維に撥水・撥油効果をもたらします。しかし、不完全な重合により、パーフルオロオクタンスルホンアミド(FOSEs や FOSAs)およびアクリレート

(FTAs)などの残留前駆物質を生成すると考えられており、それらがパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびパーフルオロオクタン酸(PFOA)に分解する可能性を指摘されています。PFOSおよび PFOA は強い C-F 結合のため極めて安定であり、揮発しにくいことから、生物濃縮性があるといわれています。PFOS は 2017年 6月に残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約に加えられています [1]。

PFOS は他の POPsとは異なり、脂肪組織内に分配されるのではなく、血液や肝臓中タンパク質に結合します。 PFOA、その塩類およびエステル類は現在ノルウェーで規制されており、POPsのストックホルム条約に記載されることが提案されています [2]。

また、本研究で対象化合物とした PFOS および PFOA の前駆物質は、2007 年にOECD(経済協力開発機構)が調査・改訂した物質のリストに含まれています [3]。

そのため、PFOSおよびPFOAから生じる可能性のある環境問題に取り組むために、PFOSおよびPFOA前駆物質(FOSEs, FOSAsおよびFTAs)を微量濃度まで測定する手法が望まれています。本研究では、シングル-GC-MSを用いたCI-SIM法およびトリプル四重極型 GC-MS/MSを用いたEI-MRM 法を用いて繊維製品中の PFOS およびPFOA前駆物質のうち4種類のパーフルオロオクタンスルホンアミド(FOSEs, FOSAs) および3種類のパーフルオロオクタンスルホンアクリル酸(FTAs)の微量定量について検討しました。

2. 実験

PCI-SIM 法はシングル -GC-MS の GCMS-QP2020 NXを、EI-MRM法は、トリプル四重極型 GC-MS/MS の GCMS-TQ8050 NXを用いました。両分析法は、GC および MS の温度制御条件を統一しました。詳細な分析条件は Table 1 に示します。

2-1. 装置および分析条件

Table 1 分析条件

GC-MS : GCMS-QP2020 NX および GCMS-TQ8050 NX (GC 部は 230V 仕様)

オートインジェクタ : AOC-20i+20sカラム : SH-Rtx™-200

(Length 30 m, 0.32 mm I.D., df=0.5 µm)[GC]気化室温度 : 250 ℃カラムオーブン温度 : 80 ℃ =>(30 ℃/ 分)=> 260 ℃(1 分)注入モード : スプリットレスキャリアガス : Heキャリアガス制御 : 48.7 cm/sec(線速度一定)高圧注入 : 150 kPa(1 分)注入量 : 2 µL[MS]イオン源温度 : 200 ℃インターフェイス温度 : 250 ℃EI-MRMイオン化法 : EIデータ採取モード : MRMイベント時間 : 0.3 秒PCI-SIMイオン化法 : PCIデータ採取モード : SIM試薬ガス : メタン(200 kPa)イベント時間 : 0.1 秒

Gas Chromatograph Mass Spectrometer

新たな領域を切り拓く超高感度トリプル四重極型 GC-MSGCMS-TQ8050 NX は、新たな高効率検出器と3 つのノイズ低減技術を搭載し、これまで到達できなかったフェムトグラムオーダーでの極微量の定量分析が可能になりました。また、その圧倒的な超高感度を活かして、長期利用でのメンテナンス頻度・コストの削減や高質量分解能による更なるきょう雑物との高分離といった新たな領域の定量分析を提案します。

高効率検出器を搭載GCMS-TQ8040 NX に比べてイオン数が少なくても、高い増幅率でピークを検出することができます。そのため、フェムトグラムオーダーのようなこれまで定量が難しかった微量濃度でも安定した分析が可能です。

Gas Chromatograph Mass Spectrometer

ラボの可能性を拡げる Smart ソリューションさまざまな分野で利用される GC-MS は、今や分析の汎用機となっています。その中で、装置のさらなるコストパフォーマンスの向上と、利用するユーザーのワークライフバランスが期待されています。GCMS-QP2020 NX は、分析のあらゆる場面に対しての効率化を提案し、ラボの可能性を最大限に拡げます。

高感度・長期安定性イオン源フィラメントとイオン源ボックスの間に距離を取り、フィラメント電位のイオン源内部への影響を低減しています。また、フィラメントから生じる輻射熱をシールドで遮り、イオン源ボックスの温度均一化を実現しました。イオン源内部に活性点が生じにくいため、高感度かつ長期にわたり安定した分析が可能です。

(特許:US7939810)

:フィラメント

Temperature

Low High

: 電 界: 熱 線

シールド

シールド

GCMS-TQ8040 NX

GCMS-TQ8050 NX

GCMS-QP および GCMS-TQ は、株式会社島津製作所の商標です。Rtx は、Restek Corporation の商標です。

1 SHIMADZU (ASIA PACIFIC) PTE LTD.2 株式会社島津製作所 分析計測事業部 1

本資料の掲載情報に関する著作権は当社または原著作者に帰属しており、権利者の事前の書面による許可なく、本資料を複製、転用、改ざん、販売等することはできません。掲載情報については十分検討を行っていますが、当社はその正確性や完全性を保証するものではありません。また、本資料の使用により生じたいかなる損害に対しても当社は一切責任を負いません。本資料は発行時の情報に基づいて作成されており、予告なく改訂することがあります。

                               初版発行:2018 年 9 月                            © Shimadzu Corporation, 2018

3218-05802-10AIT

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2-2. 試料の前処理および分析条件最適化4 種類のパーフルオロオクタンスルホンアミド(FOSEs, FOSAs)

および 3 種類のパーフルオロオクタンスルホンアクリル酸(FTAs)を対象化合物とし、内部標準物質としてナフタレン -D8 を用いました。対象化合物の詳細をTable 2 に示します。各標準品を混合・希釈して混合標準溶液を作成し、MRM 条件の最適化を行いました。Fig. 1 に混合標準溶液を測定した MRMクロマトグラムを示します。7種類の対象成分およびナフタレン-D8(ISTD)は7分以内で検出され、高速分析条件を利用しても良好な分離が得られました。

マトリクスブランクとして使用した布地は、約 5 mm×5 mm 角で裁断しました。1 g の裁断した布地を20 mL バイアルに入れ、10 mL のテトラヒドロフラン(THF)を添加しました。

その後ウォーターバスを用いて60℃で 1 時間加温し、抽出液を0.45 µmのナイロンフィルターでろ過しました。ろ過した抽出液を1 mL に濃縮してマトリクスブランク用の抽出溶液を調製しました。評価試料として使用した繊維製品は、同様の手順で前処理を行いました。

検量線標準溶液は、標準品を混合・希釈した混合標準溶液をマトリクスブランクに添加することで調製し、マトリクス含有の検量線を作成しました。また、マトリクス干渉の影響を低減するために、プロテクタントとしてD-ソルビトールを利用し、検量線標準溶液および試験検体抽出溶液に 50 µL の D-ソルビトール溶液(20 µg/mL)を50 µL 添加しました。 

3. 結果と考察

対象化合物の定量イオンおよび確認イオンの MRMトランジションとコリジョンエネルギーをTable 3 に示します。EI-MRM 法の成分同定の妥当性として、4 つの条件を設定してモニタリングイオンを選定しました。

(1)各モニタリングイオンのピークトップの絶対保持時間が±0.10分以内であること

(2)1 種類の定量イオンの選択 (3)少なくとも1 種類以上の確認イオンの選択 (4)確認イオンが Table 4 に示した相対比率(%)に応じた最大許

容幅に収まること

3-1. EI-MRM法における成分同定の妥当性 5.0 ng/mLでの対象化合物の MRMクロマトグラムをFig. 2 に示します(ただし、N-MeFOSE および N-EtFOSE は 0.5 ng/mL)。

装置検出限界(IDL)および定量限界(LOQ)はマトリクスブランクに既知濃度を段階的に添加して濃度を調製した試料を測定して決定しました。IDL は、定量イオンの S/N が 5以上、かつ確認イオンが Table 4 に示した最大許容幅に収まる濃度としました。N-MeFOSE および N-EtFOSE の IDL は、0.5 ng/mL、FTA 6:2 の IDLは 1.0 ng/mg、その他の対象化合物の IDL は 4.0 ng/mgでした。N-MeFOSA、N-EtFOSA、FTA 8:2、FTA 10:2 の IDL が 4.0 ng/mLと他の成分と比較して高いのは、2.0 ng/mL や 3.0 ng/mL の濃度では、定量イオンの S/N は基準を満たせていましたが、確認イオンの許容幅が Table 4を満たせなかったことが原因でした。LOQ は、定量イオンの S/N が 10以上、かつ確認イオンが Table 4 に示した最大許容幅に収まる濃度とし、すべての対象化合物において5.0ng/mLでした。

3-2. EI-MRM法におけるIDLおよびLOQ

Fig. 1 対象化合物および ISTD のクロマトグラムパターン

Table 2 対象化合物の情報詳細

FTA 6:2FTA 8:2

FTA 10:2N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

略称

17527-29-627905-45-917741-60-531506-32-84151-50-2

24448-09-71691-99-2

CAS No.

Apollo ScientificSigma Aldrich

Apollo ScientificWellington LaboratoriesWellington LaboratoriesWellington LaboratoriesWellington Laboratories

標準試薬購入先化合物No.

1H,1H,2H,2H-Perfluorooctyl acrylate1H,1H,2H,2H-Perfluorodecyl acrylate

1H,1H,2H,2H-Perfluorododecyl acrylateN-methylperfluoro-1-octanesulfonamideN-ethylperfluoro-1-octanesulfonamide

2-(N-methylperfluoro-1-octanesulfoamido)-ethanol2-(N-ethylperfluoro-1-octanesulfoamido)-ethanol

1234567

Table 3 対象化合物および ISTD の MRM 情報

10 20201599

1824

CE(V)化合物名 定量イオン

418.0>99.0136.0>108.0518.0>99.0618.0>99.0

430.0>111.0512.0>448.0526.0>462.0540.0>448.0

24 202121219

2025

CE(V)確認イオン(1)

418.0>71.0 134.1>82.0518.0>72.0618.0>72.0

448.0>378.0448.0>428.0526.0>169.0540.0>169.0

24

2730

CE(V)確認イオン(2)

418.0>137.0

518.0>57.0618.0>137.0

FTA 6:2Naphthalene-D8 (ISTD)

FTA 8:2FTA 10:2

N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

FTA 6:2

Naph-D8

(ISTD)

FTA 8:2

FTA 10:2

N-MeFOSA N-EtFOSA

N-MeFOSE N-EtFOSE

5.04.03.02.5 5.8min

684,339

Fig. 2 PFCs の EI-MRMクロマトグラム(5.0 ng/mL)(N-MeFOSE および N-EtFOSE は 0.5 ng/mL)

Table 4 確認イオンの許容範囲

確認イオンの相対強度(%)(定量イオンに対する相対面積比)

最大許容幅

± 20%± 25%± 30%± 50%

> 50%> 20% to 50%> 10% to 20%

≤ 10%

N-MeFOSE (0.5 ng/mL) N-EtFOSE (0.5 ng/mL)

4.80 4.90 5.00 5.10

0.5

1.0

1.5

(x1,000)

526.0>169.0526.0>462.0

5.00 5.10 5.20 5.30

2.0

4.0

6.0

8.0

(x100)

540.0>169.0540.0>448.0

FTA 6:2 FTA 8:2 FTA 10:2

2.40 2.50 2.60 2.70

2.0

4.0

6.0

(x1,000)

418.0>137.0418.0>71.0418.0>99.0

3.00 3.10 3.20 3.30

2.0

4.0

6.0

8.0

(x1,000)

518.0>57.0518.0>72.0518.0>99.0

3.50 3.60 3.70 3.80

1.0

3.0

5.0

7.0

(x1,000)

618.0>137.0618.0>72.0618.0>99.0

N-MeFOSA N-EtFOSA

3.80 3.90 4.00 4.10

1.0

2.0

3.0

4.0(x1,000)

448.0>378.0430.0>111.0

4.00 4.10 4.20 4.30

1.0

2.0

3.0

4.0

(x1,000)

448.0>428.0512.0>448.0

2 3

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2-2. 試料の前処理および分析条件最適化4 種類のパーフルオロオクタンスルホンアミド(FOSEs, FOSAs)

および 3 種類のパーフルオロオクタンスルホンアクリル酸(FTAs)を対象化合物とし、内部標準物質としてナフタレン -D8 を用いました。対象化合物の詳細をTable 2 に示します。各標準品を混合・希釈して混合標準溶液を作成し、MRM 条件の最適化を行いました。Fig. 1 に混合標準溶液を測定した MRMクロマトグラムを示します。7種類の対象成分およびナフタレン-D8(ISTD)は7分以内で検出され、高速分析条件を利用しても良好な分離が得られました。

マトリクスブランクとして使用した布地は、約 5 mm×5 mm 角で裁断しました。1 g の裁断した布地を20 mL バイアルに入れ、10 mL のテトラヒドロフラン(THF)を添加しました。

その後ウォーターバスを用いて60℃で 1 時間加温し、抽出液を0.45 µmのナイロンフィルターでろ過しました。ろ過した抽出液を1 mL に濃縮してマトリクスブランク用の抽出溶液を調製しました。評価試料として使用した繊維製品は、同様の手順で前処理を行いました。

検量線標準溶液は、標準品を混合・希釈した混合標準溶液をマトリクスブランクに添加することで調製し、マトリクス含有の検量線を作成しました。また、マトリクス干渉の影響を低減するために、プロテクタントとしてD-ソルビトールを利用し、検量線標準溶液および試験検体抽出溶液に 50 µL の D-ソルビトール溶液(20 µg/mL)を50 µL 添加しました。 

3. 結果と考察

対象化合物の定量イオンおよび確認イオンの MRMトランジションとコリジョンエネルギーをTable 3 に示します。EI-MRM 法の成分同定の妥当性として、4 つの条件を設定してモニタリングイオンを選定しました。

(1)各モニタリングイオンのピークトップの絶対保持時間が±0.10分以内であること

(2)1 種類の定量イオンの選択 (3)少なくとも1 種類以上の確認イオンの選択 (4)確認イオンが Table 4 に示した相対比率(%)に応じた最大許

容幅に収まること

3-1. EI-MRM法における成分同定の妥当性 5.0 ng/mLでの対象化合物の MRMクロマトグラムをFig. 2 に示します(ただし、N-MeFOSE および N-EtFOSE は 0.5 ng/mL)。

装置検出限界(IDL)および定量限界(LOQ)はマトリクスブランクに既知濃度を段階的に添加して濃度を調製した試料を測定して決定しました。IDL は、定量イオンの S/N が 5以上、かつ確認イオンが Table 4 に示した最大許容幅に収まる濃度としました。N-MeFOSE および N-EtFOSE の IDL は、0.5 ng/mL、FTA 6:2 の IDLは 1.0 ng/mg、その他の対象化合物の IDL は 4.0 ng/mgでした。 N-MeFOSA、N-EtFOSA、FTA 8:2、FTA 10:2 の IDL が 4.0 ng/mLと他の成分と比較して高いのは、2.0 ng/mL や 3.0 ng/mL の濃度では、定量イオンの S/N は基準を満たせていましたが、確認イオンの許容幅が Table 4を満たせなかったことが原因でした。LOQ は、定量イオンの S/N が 10以上、かつ確認イオンが Table 4 に示した最大許容幅に収まる濃度とし、すべての対象化合物において5.0 ng/mLでした。

3-2. EI-MRM法におけるIDLおよびLOQ

Fig. 1 対象化合物および ISTD のクロマトグラムパターン

Table 2 対象化合物の情報詳細

FTA 6:2FTA 8:2

FTA 10:2N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

略称

17527-29-627905-45-917741-60-531506-32-84151-50-2

24448-09-71691-99-2

CAS No.

Apollo ScientificSigma Aldrich

Apollo ScientificWellington LaboratoriesWellington LaboratoriesWellington LaboratoriesWellington Laboratories

標準試薬購入先化合物No.

1H,1H,2H,2H-Perfluorooctyl acrylate1H,1H,2H,2H-Perfluorodecyl acrylate

1H,1H,2H,2H-Perfluorododecyl acrylateN-methylperfluoro-1-octanesulfonamideN-ethylperfluoro-1-octanesulfonamide

2-(N-methylperfluoro-1-octanesulfoamido)-ethanol2-(N-ethylperfluoro-1-octanesulfoamido)-ethanol

1234567

Table 3 対象化合物および ISTD の MRM 情報

10 20201599

1824

CE(V)化合物名 定量イオン

418.0>99.0136.0>108.0518.0>99.0618.0>99.0

430.0>111.0512.0>448.0526.0>462.0540.0>448.0

24 202121219

2025

CE(V)確認イオン(1)

418.0>71.0 134.1>82.0518.0>72.0618.0>72.0

448.0>378.0448.0>428.0526.0>169.0540.0>169.0

24

2730

CE(V)確認イオン(2)

418.0>137.0

518.0>57.0618.0>137.0

FTA 6:2Naphthalene-D8 (ISTD)

FTA 8:2FTA 10:2

N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

FTA 6:2

Naph-D8

(ISTD)

FTA 8:2

FTA 10:2

N-MeFOSA N-EtFOSA

N-MeFOSE N-EtFOSE

5.04.03.02.5 5.8min

684,339

Fig. 2 PFCs の EI-MRMクロマトグラム(5.0 ng/mL) (N-MeFOSE および N-EtFOSE は 0.5 ng/mL)

Table 4 確認イオンの許容範囲

確認イオンの相対強度(%)(定量イオンに対する相対面積比)

最大許容幅

± 20%± 25%± 30%± 50%

> 50%> 20% to 50%> 10% to 20%

≤ 10%

N-MeFOSE (0.5 ng/mL) N-EtFOSE (0.5 ng/mL)

4.80 4.90 5.00 5.10

0.5

1.0

1.5

(x1,000)

526.0>169.0526.0>462.0

5.00 5.10 5.20 5.30

2.0

4.0

6.0

8.0

(x100)

540.0>169.0540.0>448.0

FTA 6:2 FTA 8:2 FTA 10:2

2.40 2.50 2.60 2.70

2.0

4.0

6.0

(x1,000)

418.0>137.0418.0>71.0418.0>99.0

3.00 3.10 3.20 3.30

2.0

4.0

6.0

8.0

(x1,000)

518.0>57.0518.0>72.0518.0>99.0

3.50 3.60 3.70 3.80

1.0

3.0

5.0

7.0

(x1,000)

618.0>137.0618.0>72.0618.0>99.0

N-MeFOSA N-EtFOSA

3.80 3.90 4.00 4.10

1.0

2.0

3.0

4.0(x1,000)

448.0>378.0430.0>111.0

4.00 4.10 4.20 4.30

1.0

2.0

3.0

4.0

(x1,000)

448.0>428.0512.0>448.0

2 3

Page 4: Technical Report EI-MRMおよびPCI-SIM法を用いた …...C146-0379 Technical Report EI-MRMおよびPCI-SIM法を用いた繊維製品中 のPFOSおよびPFOA前駆物質の分析

マトリクス効果を評価するために、布地を抽出したマトリクスブランクおよび THF に混合標準試料を添加し、測定して得られた面積値を比較しました(Table 5)。マトリクス効果は、低濃度(5.0 ng/mL)、中濃度(50.0 ng/mL)および高濃度(200 ng/mL)のそれぞれ 3 回繰り返し分析を行い、THF に標準試料を添加した面積値を基準として相対比率(%)を算出しました。ほとんどの濃度でマトリクス効果は 100%以上の値を示したことから、マトリクスブランクに標準試料を添加して検量線を作成することにより、試験試料の定量精度が向上すると考えられました。

検量線は 5.0 ng/mL から200 ng/mL の 5 点で作成し、すべての化合物において、R2 は 0.998以上と良好な直線性が得られました。

低濃度、中濃度、高濃度における6 回繰り返し面積比再現性(Table 5)は、最大で 17.2% (N-EtFOSA, 5.0 ng/mL)でした。

定量確度は、低濃度(7.50 ng/mL)、中濃度(30.0 ng/mL)および高濃度(150 ng/mL)の添加試料を測定して得られた定量値と既知濃度の相対比率を算出しました(Table 6)。すべての化合物および濃度領域において、ほぼ 30% 以内に収まることが確認できました。

3-3. EI-MRM法でのマトリクスの影響、検量線の直線性および定量確度

Table 5 各種濃度でのマトリクス効果と繰り返し再現性

化合物名面積比再現性%RSD (n=6)

3.541.651.636.784.141.486.393.071.6616.97.813.4917.24.471.597.260.960.5714.13.001.98

濃度(ng/mL)

5.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.0200

マトリクス効果(%)(n=3)

12311711498.110811011310710411010010811598.9110114115119142120119

FTA 6:2

FTA 8:2

FTA 10:2

N-MeFOSA

N-EtFOSA

N-MeFOSE

N-EtFOSE

Table 6 各種濃度での定量値の確度

化合物名150 ng/mL

81.380.476.582.078.775.877.4

7.50 ng/mL

74.771.469.110193.491.689.7

定量確度(%)

30.0 ng/mL

78.781.278.981.590.278.878.5

FTA 6:2FTA 8:2

FTA 10:2N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

Table 7 CI-SIM 法における定量イオンと確認イオン

確認イオン

447.0165.0547.0647.0515.0529.0558.0572.0

定量イオン

419.0136.0519.0619.0514.0528.0540.0554.0

化合物名

FTA 6:2Naphthalene-D8 (ISTD)

FTA 8:2FTA 10:2

N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

N-EtFOSA

4.00 4.10 4.20 4.30

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

(x10,000)

529.0528.0

N-MeFOSA

3.80 3.90 4.00 4.10

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

(x10,000)

515.0514.0

N-MeFOSE

4.80 4.90 5.00 5.10

0.50

1.00

1.50

(x10,000)

558.0540.0

N-EtFOSE

5.00 5.10 5.20 5.30

0.25

0.50

0.75

1.00

1.25

1.50

(x10,000)

572.0554.0

FTA 6:2

2.40 2.50 2.60 2.70

0.50

0.75

1.00

1.25

1.50

1.75

(x10,000)

447.0419.0

FTA 8:2

3.00 3.10 3.20 3.30

0.6

0.9

1.2

1.5

(x10,000)

547.0519.0

FTA 10:2

3.60 3.70 3.80 3.90

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

(x10,000)

647.0619.0

CI-SIM 法における対象化合物の定量イオンと確認イオンをTable 7 に示します。CI-SIM 法においても同様に、4 つの条件を設定してモニタリングイオンを選定しました。

(1)各モニタリングイオンのピークトップの絶対保持時間が±0.10分以内であること

(2)1 種類の定量イオンの選択(3)1 種類の確認イオン の選択(4)確認イオンが Table 4 に示した相対比率(%)に応じた最大許

容幅に収まること

3-4. CI-SIM法における成分同定の妥当性装置検出限界(IDL)および定量限界(LOQ)はマトリクスブラ

ンクに既知濃度を段階的に添加した試料を測定して決定しました。IDL は、定量イオンの S/N が 5 以上、かつ確認イオンが Table 4 に示した最大許容幅に収まる濃度としました。2 種類の基準を満たす IDL は、すべての対象化合物で 4.0 ng/mLでした。Fig. 3 に4.0 ng/mL の各対象化合物の SIM マスクロマトグラムを示します。

LOQ は、定量イオンの S/N が 10以上、かつ確認イオンが Table 4 に示した最大許容幅に収まる濃度とし、すべての対象化合物において5.0 ng/mLとEI-MRM の LOQと同等でした。

3-5. CI-SIM法におけるIDLおよびLOQ

Fig. 3 PFCs の CI-SIM マスクロマトグラム(4.0 ng/mL)

4 5

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マトリクス効果を評価するために、布地を抽出したマトリクスブランクおよび THF に混合標準試料を添加し、測定して得られた面積値を比較しました(Table 5)。マトリクス効果は、低濃度(5.0 ng/mL)、中濃度(50.0 ng/mL)および高濃度(200 ng/mL)のそれぞれ 3 回繰り返し分析を行い、THF に標準試料を添加した面積値を基準として相対比率(%)を算出しました。ほとんどの濃度でマトリクス効果は 100%以上の値を示したことから、マトリクスブランクに標準試料を添加して検量線を作成することにより、試験試料の定量精度が向上すると考えられました。

検量線は 5.0 ng/mL から200 ng/mL の 5 点で作成し、すべての化合物において、R2 は 0.998以上と良好な直線性が得られました。

低濃度、中濃度、高濃度における6 回繰り返し面積比再現性(Table 5)は、最大で 17.2% (N-EtFOSA, 5.0 ng/mL)でした。

定量確度は、低濃度(7.50 ng/mL)、中濃度(30.0 ng/mL)および高濃度(150 ng/mL)の添加試料を測定して得られた定量値と既知濃度の相対比率を算出しました(Table 6)。すべての化合物および濃度領域において、ほぼ 30% 以内に収まることが確認できました。

3-3. EI-MRM法でのマトリクスの影響、検量線の直線性および定量確度

Table 5 各種濃度でのマトリクス効果と繰り返し再現性

化合物名面積比再現性%RSD (n=6)

3.541.651.636.784.141.486.393.071.6616.97.813.4917.24.471.597.260.960.5714.13.001.98

濃度(ng/mL)

5.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.0200

マトリクス効果(%)(n=3)

12311711498.110811011310710411010010811598.9110114115119142120119

FTA 6:2

FTA 8:2

FTA 10:2

N-MeFOSA

N-EtFOSA

N-MeFOSE

N-EtFOSE

Table 6 各種濃度での定量値の確度

化合物名150 ng/mL

81.380.476.582.078.775.877.4

7.50 ng/mL

74.771.469.110193.491.689.7

定量確度(%)

30.0 ng/mL

78.781.278.981.590.278.878.5

FTA 6:2FTA 8:2

FTA 10:2N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

Table 7 CI-SIM 法における定量イオンと確認イオン

確認イオン

447.0165.0547.0647.0515.0529.0558.0572.0

定量イオン

419.0136.0519.0619.0514.0528.0540.0554.0

化合物名

FTA 6:2Naphthalene-D8 (ISTD)

FTA 8:2FTA 10:2

N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

N-EtFOSA

4.00 4.10 4.20 4.30

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

(x10,000)

529.0528.0

N-MeFOSA

3.80 3.90 4.00 4.10

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

(x10,000)

515.0514.0

N-MeFOSE

4.80 4.90 5.00 5.10

0.50

1.00

1.50

(x10,000)

558.0540.0

N-EtFOSE

5.00 5.10 5.20 5.30

0.25

0.50

0.75

1.00

1.25

1.50

(x10,000)

572.0554.0

FTA 6:2

2.40 2.50 2.60 2.70

0.50

0.75

1.00

1.25

1.50

1.75

(x10,000)

447.0419.0

FTA 8:2

3.00 3.10 3.20 3.30

0.6

0.9

1.2

1.5

(x10,000)

547.0519.0

FTA 10:2

3.60 3.70 3.80 3.90

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

(x10,000)

647.0619.0

CI-SIM 法における対象化合物の定量イオンと確認イオンをTable 7 に示します。CI-SIM 法においても同様に、4 つの条件を設定してモニタリングイオンを選定しました。

(1)各モニタリングイオンのピークトップの絶対保持時間が±0.10分以内であること

(2)1 種類の定量イオンの選択(3)1 種類の確認イオン の選択(4)確認イオンが Table 4 に示した相対比率(%)に応じた最大許

容幅に収まること

3-4. CI-SIM法における成分同定の妥当性装置検出限界(IDL)および定量限界(LOQ)はマトリクスブラ

ンクに既知濃度を段階的に添加した試料を測定して決定しました。IDL は、定量イオンの S/N が 5 以上、かつ確認イオンが Table 4 に示した最大許容幅に収まる濃度としました。2 種類の基準を満たす IDL は、すべての対象化合物で 4.0 ng/mLでした。Fig. 3 に4.0 ng/mL の各対象化合物の SIM マスクロマトグラムを示します。

LOQ は、定量イオンの S/N が 10以上、かつ確認イオンが Table 4 に示した最大許容幅に収まる濃度とし、すべての対象化合物において5.0 ng/mLとEI-MRM の LOQと同等でした。

3-5. CI-SIM法におけるIDLおよびLOQ

Fig. 3 PFCs の CI-SIM マスクロマトグラム(4.0 ng/mL)

4 5

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EI-MRM 法と同様にマトリクス効果を評価するために、布地を抽出したマトリクスブランクおよび THF に標準試料を添加し、測定して得られた面積値を比較しました(Table 8)。低濃度(5.0 ng/mL)、中濃度(50.0 ng/mL)および高濃度(200 ng/mL)のそれぞれ 3回繰り返し分析を行い、THF に標準試料を添加した面積値を基準として相対比率(%)を算出しました。FOSEs および FOSAs のマトリクス効果は、100%以上を示しましたが、低濃度(5.0 ng/mL)での FTA 8:2 および FTA 10.2 は若干の抑制効果があることが示されました。

検量線は 5.0 ng/mL から200 ng/mL の 5 点で作成し、すべての化合物において、R2 は 0.999以上と良好な直線性が得られました。低濃度、中濃度、高濃度における6 回繰り返し面積比再現性は、最大で 12.6%(FTA 8:2, 5.0 ng/mL)でした。

定量確度は、低濃度(7.50 ng/mL)、中濃度(30.0 ng/mL)および高濃度(150 ng/mL)の添加試料を測定して得られた定量値と既知濃度の相対比率を算出しました(Table 9)。CI-SIM 法でもすべての化合物および濃度領域において30% 以内に収まることが確認できました。

3-6. PCI-SIM法でのマトリクスの影響、検量線の直線性および定量確度

市販されている繊維製品を前処理し、EI-MRM 法および CI-SIM法で測定しました。EI-MRM 法において、綿とスパンデックスの混合繊維からN-MeFOSE が、100% ポリエステルスポーツウェアからN-EtFOSE がそれぞれ検出され、定量結果は N-MeFOSE が

1.74 ng/g、N-EtFOSEが2.91 ng/gでした(Fig. 4および5)。一方、CI-SIM では検出限界が 4.0 ng/mL のため、検出することができませんでした。

3-7. EI-MRMおよびCI-SIM法での繊維製品の分析結果

また、防水処理された傘の繊維部分を前処理した試験試料をEI-MRMとCI-SIM 法を用いて測定した結果をFig. 6 および Fig. 7 にそれぞれ示します。CI-SIM の定量値は、FTA 8:2 が 89.8 ng/g、FTA 10:2 が 41.0 ng/gと算出されました。

一 方、EI-MRM の 定 量 値 は FTA 8:2 が 83.1 ng/g、FTA 10:2 が38.7 ng/gとして算出されました。両法の定量値は、ほとんど同じですが、CI-SIM 法でのマスクロマトグラムは、若干夾雑物の影響を受けていることが定量値の差につながったと考えられます。

Fig. 4 綿とスパンデックスの混合繊維中の N-MeFOSE(EI-MRM) Fig. 5 100% ポリエステル製スポーツウェア中の N-EtFOSE(EI-MRM)

Fig. 6 CI-SIM 法での防水処理された傘の繊維部分の分析結果

Fig. 7 EI-MRM 法での防水処理された傘の繊維部分の分析結果

Table 8 各種濃度でのマトリクス効果と繰り返し再現性

化合物名面積比再現性%RSD (n=6)

7.941.522.5412.61.252.878.281.742.949.211.462.937.012.142.979.642.843.335.152.382.96

濃度(ng/mL)

5.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.0200

マトリクス効果(%) (n=3)

99.710297.388.310195.688.794.293.0107107101109106102137137136134130133

FTA 6:2

FTA 8:2

FTA 10:2

N-MeFOSA

N-EtFOSA

N-MeFOSE

N-EtFOSE

Table 9 各種濃度での定量値の確度

化合物名150 ng/mL

88.183.182.179.782.785.986.2

7.50 ng/mL

10476.695.889.897.784.592.1

定量確度(%)

30.0 ng/mL

88.683.787.478.880.081.083.4

FTA 6:2FTA 8:2

FTA 10:2N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

4.80 4.90 5.00 5.10

526.0>169.0526.0>462.0

濃度 : 1.74 ng/g

5.00 5.10 5.20 5.30

540.0>169.0540.0>448.0

濃度 : 2.91 ng/g

3.00 3.10 3.20 3.30

547.0519.0

1.0 2.0 3.0 Conc. Ratio

0.50

1.00

1.50

Area Ratio

3.60 3.70 3.80 3.90

647.0619.0

1.0 2.0 3.0 Conc. Ratio

0.2

0.4

0.6

0.8

Area Ratio

2.8 3.0 3.2 3.4 3.6

518.0>57.0518.0>72.0518.0>99.0

1.0 2.0 3.0 Conc. Ratio

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

Area Ratio

3.2 3.4 3.6 3.8 4.0

618.0>137.0618.0>72.0618.0>99.0

1.0 2.0 3.0 Conc. Ratio

0.02

0.04

0.06

0.08

Area Ratio

濃度 : 89.8 ng/g 濃度 : 41.0 ng/g

濃度 : 83.1 ng/g 濃度 : 38.7 ng/g

FTA 8:2 FTA 10:2

FTA 8:2 FTA 10:2

4. 結論EI-MRM 法は 2 段階の質量分離による夾雑物と分離し、高感度

で対象化合物を検出することができるため、繊維製品中の PFOAおよび PFOS 前駆物質の微量定量を行うために非常に適した方法です。一方、CI-SIM 法は、高質量のプロトン付加分子を利用することが可能なため、GC-MS/MSよりも安価なシングル -GC/MSを用いてこれらの対象化合物の定量を行うことが可能です。いずれの方法でもLOQ は 5.0 ng/mLであり、EU が提案している製造および流通における繊維製品中 PFOA、その塩類および前駆物質の含有制限濃度 25 ppb(ng/g)に対して、十分な定量精度を有しています。

5. 参考文献[1] The 16 New POPs. An Introduction to the chemicals added

to the Stockholm Convention as Persistent Organic Pollutants by the Conference of the Parties (2017, June).

[2] PFOA-Restriction in Norway (Product regulation FOR 2004-06-01 Nr. 922, Section 2-32).

[3] Lists of PFOS, PFAS, PFOA, PFCA, related Compounds and Chemicals that may Degrade to PFCA. ENV/JM/MONO (2006) 15.

[4] COMMISSION REGULATION (EU) 2017/1000 of 13 June 2017 amending Annex XVII to Regulation (EC) No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council concerning the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH) as regards perfluorooctanoic acid (PFOA), its salts and PFOA-related substances.

6 7

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EI-MRM 法と同様にマトリクス効果を評価するために、布地を抽出したマトリクスブランクおよび THF に標準試料を添加し、測定して得られた面積値を比較しました(Table 8)。低濃度(5.0 ng/mL)、中濃度(50.0 ng/mL)および高濃度(200 ng/mL)のそれぞれ 3回繰り返し分析を行い、THF に標準試料を添加した面積値を基準として相対比率(%)を算出しました。FOSEs および FOSAs のマトリクス効果は、100%以上を示しましたが、低濃度(5.0 ng/mL)での FTA 8:2 および FTA 10.2 は若干の抑制効果があることが示されました。

検量線は 5.0 ng/mL から200 ng/mL の 5 点で作成し、すべての化合物において、R2 は 0.999以上と良好な直線性が得られました。低濃度、中濃度、高濃度における6 回繰り返し面積比再現性は、最大で 12.6%(FTA 8:2, 5.0 ng/mL)でした。

定量確度は、低濃度(7.50 ng/mL)、中濃度(30.0 ng/mL)および高濃度(150 ng/mL)の添加試料を測定して得られた定量値と既知濃度の相対比率を算出しました(Table 9)。CI-SIM 法でもすべての化合物および濃度領域において30% 以内に収まることが確認できました。

3-6. PCI-SIM法でのマトリクスの影響、検量線の直線性および定量確度

市販されている繊維製品を前処理し、EI-MRM 法および CI-SIM法で測定しました。EI-MRM 法において、綿とスパンデックスの混合繊維からN-MeFOSE が、100% ポリエステルスポーツウェアからN-EtFOSE がそれぞれ検出され、定量結果は N-MeFOSE が

1.74 ng/g、N-EtFOSEが2.91 ng/gでした(Fig. 4および5)。一方、CI-SIM では検出限界が 4.0 ng/mL のため、検出することができませんでした。

3-7. EI-MRMおよびCI-SIM法での繊維製品の分析結果

また、防水処理された傘の繊維部分を前処理した試験試料をEI-MRMとCI-SIM 法を用いて測定した結果をFig. 6 および Fig. 7 にそれぞれ示します。CI-SIM の定量値は、FTA 8:2 が 89.8 ng/g、FTA 10:2 が 41.0 ng/gと算出されました。

一 方、EI-MRM の 定 量 値 は FTA 8:2 が 83.1 ng/g、FTA 10:2 が38.7 ng/gとして算出されました。両法の定量値は、ほとんど同じですが、CI-SIM 法でのマスクロマトグラムは、若干夾雑物の影響を受けていることが定量値の差につながったと考えられます。

Fig. 4 綿とスパンデックスの混合繊維中の N-MeFOSE(EI-MRM) Fig. 5 100% ポリエステル製スポーツウェア中の N-EtFOSE(EI-MRM)

Fig. 6 CI-SIM 法での防水処理された傘の繊維部分の分析結果

Fig. 7 EI-MRM 法での防水処理された傘の繊維部分の分析結果

Table 8 各種濃度でのマトリクス効果と繰り返し再現性

化合物名面積比再現性%RSD (n=6)

7.941.522.5412.61.252.878.281.742.949.211.462.937.012.142.979.642.843.335.152.382.96

濃度(ng/mL)

5.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.02005.0050.0200

マトリクス効果(%) (n=3)

99.710297.388.310195.688.794.293.0107107101109106102137137136134130133

FTA 6:2

FTA 8:2

FTA 10:2

N-MeFOSA

N-EtFOSA

N-MeFOSE

N-EtFOSE

Table 9 各種濃度での定量値の確度

化合物名150 ng/mL

88.183.182.179.782.785.986.2

7.50 ng/mL

10476.695.889.897.784.592.1

定量確度(%)

30.0 ng/mL

88.683.787.478.880.081.083.4

FTA 6:2FTA 8:2

FTA 10:2N-MeFOSAN-EtFOSAN-MeFOSEN-EtFOSE

4.80 4.90 5.00 5.10

526.0>169.0526.0>462.0

濃度 : 1.74 ng/g

5.00 5.10 5.20 5.30

540.0>169.0540.0>448.0

濃度 : 2.91 ng/g

3.00 3.10 3.20 3.30

547.0519.0

1.0 2.0 3.0 Conc. Ratio

0.50

1.00

1.50

Area Ratio

3.60 3.70 3.80 3.90

647.0619.0

1.0 2.0 3.0 Conc. Ratio

0.2

0.4

0.6

0.8

Area Ratio

2.8 3.0 3.2 3.4 3.6

518.0>57.0518.0>72.0518.0>99.0

1.0 2.0 3.0 Conc. Ratio

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

Area Ratio

3.2 3.4 3.6 3.8 4.0

618.0>137.0618.0>72.0618.0>99.0

1.0 2.0 3.0 Conc. Ratio

0.02

0.04

0.06

0.08

Area Ratio

濃度 : 89.8 ng/g 濃度 : 41.0 ng/g

濃度 : 83.1 ng/g 濃度 : 38.7 ng/g

FTA 8:2 FTA 10:2

FTA 8:2 FTA 10:2

4. 結論EI-MRM 法は 2 段階の質量分離による夾雑物と分離し、高感度

で対象化合物を検出することができるため、繊維製品中の PFOAおよび PFOS 前駆物質の微量定量を行うために非常に適した方法です。一方、CI-SIM 法は、高質量のプロトン付加分子を利用することが可能なため、GC-MS/MSよりも安価なシングル -GC/MSを用いてこれらの対象化合物の定量を行うことが可能です。いずれの方法でもLOQ は 5.0 ng/mLであり、EU が提案している製造および流通における繊維製品中 PFOA、その塩類および前駆物質の含有制限濃度 25 ppb(ng/g)に対して、十分な定量精度を有しています。

5. 参考文献[1] The 16 New POPs. An Introduction to the chemicals added

to the Stockholm Convention as Persistent Organic Pollutants by the Conference of the Parties (2017, June).

[2] PFOA-Restriction in Norway (Product regulation FOR 2004-06-01 Nr. 922, Section 2-32).

[3] Lists of PFOS, PFAS, PFOA, PFCA, related Compounds and Chemicals that may Degrade to PFCA. ENV/JM/MONO (2006) 15.

[4] COMMISSION REGULATION (EU) 2017/1000 of 13 June 2017 amending Annex XVII to Regulation (EC) No 1907/2006 of the European Parliament and of the Council concerning the Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH) as regards perfluorooctanoic acid (PFOA), its salts and PFOA-related substances.

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C146-0379

TechnicalReport

EI-MRMおよびPCI-SIM法を用いた繊維製品中の PFOSおよび PFOA 前駆物質の分析Analyses of PFOS and PFOA precursors in textile products using EI-MRM and PCI-SIM method

Crystal Yeong1、 Lai Chin Loo1、 坂本 雄紀 2

Abstract:パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)に分解する可能性を指摘されているパーフルオロオクタン

スルホンアミド(FOSEs や FOSAs)やパーフルオロオクタンスルホンアクリル酸(FTAs)などの 7 種類のパーフルオロ化合物(PFCs)をGC-MS/MSを用いた EI-MRM 法とシングル -GC/MSを用いた PCI-SIM 法での定量方法について検討しました。定量限界(LOQ)は、 EI-MRM法およびPCI-SIM法ともに5.0 ng/mLであり、EUの製造および流通における繊維施品中の使用制限濃度(25 ppb)を満たすことが可能です。

Keywords: PFCs、PFOS、PFOA、GC-MS/MS、繊維、撥水剤

1. はじめにパーフルオロ化合物(PFCs)は、炭素原子上のすべての水素原

子(官能基に付随する炭素を除く)がフッ素原子で置換されている炭化水素化合物の総称です。パーフルオロスルホンアミドおよびフッ素テロマーアルコールなどの PFCs は、典型的なポリマー主鎖の炭化水素にフッ素が側鎖として組み込まれ、繊維に撥水・撥油効果をもたらします。しかし、不完全な重合により、パーフルオロオクタンスルホンアミド(FOSEs や FOSAs)およびアクリレート

(FTAs)などの残留前駆物質を生成すると考えられており、それらがパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびパーフルオロオクタン酸(PFOA)に分解する可能性を指摘されています。PFOSおよび PFOA は強い C-F 結合のため極めて安定であり、揮発しにくいことから、生物濃縮性があるといわれています。PFOS は 2017年 6月に残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約に加えられています [1]。

PFOS は他の POPsとは異なり、脂肪組織内に分配されるのではなく、血液や肝臓中タンパク質に結合します。 PFOA、その塩類およびエステル類は現在ノルウェーで規制されており、POPsのストックホルム条約に記載されることが提案されています [2]。

また、本研究で対象化合物とした PFOS および PFOA の前駆物質は、2007 年にOECD(経済協力開発機構)が調査・改訂した物質のリストに含まれています [3]。

そのため、PFOSおよびPFOAから生じる可能性のある環境問題に取り組むために、PFOSおよびPFOA前駆物質(FOSEs, FOSAsおよびFTAs)を微量濃度まで測定する手法が望まれています。本研究では、シングル-GC-MSを用いたCI-SIM法およびトリプル四重極型GC-MS/MSを用いたEI-MRM 法を用いて繊維製品中の PFOS およびPFOA前駆物質のうち4種類のパーフルオロオクタンスルホンアミド(FOSEs, FOSAs) および3種類のパーフルオロオクタンスルホンアクリル酸(FTAs)の微量定量について検討しました。

2. 実験

PCI-SIM 法はシングル -GC-MS の GCMS-QP2020 NXを、EI-MRM法は、トリプル四重極型 GC-MS/MS の GCMS-TQ8050 NXを用いました。両分析法は、GC および MS の温度制御条件を統一しました。詳細な分析条件は Table 1 に示します。

2-1. 装置および分析条件

Table 1 分析条件

GC-MS : GCMS-QP2020 NX および GCMS-TQ8050 NX (GC 部は 230V 仕様)オートインジェクタ : AOC-20i+20sカラム : SH-Rtx™-200 (Length 30 m, 0.32 mm I.D., df=0.5 µm)[GC]気化室温度 : 250 ℃カラムオーブン温度 : 80 ℃ =>(30 ℃/ 分)=> 260 ℃(1 分)注入モード : スプリットレスキャリアガス : Heキャリアガス制御 : 48.7 cm/sec(線速度一定)高圧注入 : 150 kPa(1 分)注入量 : 2 µL[MS]イオン源温度 : 200 ℃インターフェイス温度 : 250 ℃EI-MRMイオン化法 : EIデータ採取モード : MRMイベント時間 : 0.3 秒PCI-SIMイオン化法 : PCIデータ採取モード : SIM試薬ガス : メタン(200 kPa)イベント時間 : 0.1 秒

Gas Chromatograph Mass Spectrometer

新たな領域を切り拓く超高感度トリプル四重極型 GC-MSGCMS-TQ8050 NX は、新たな高効率検出器と3 つのノイズ低減技術を搭載し、これまで到達できなかったフェムトグラムオーダーでの極微量の定量分析が可能になりました。また、その圧倒的な超高感度を活かして、長期利用でのメンテナンス頻度・コストの削減や高質量分解能による更なるきょう雑物との高分離といった新たな領域の定量分析を提案します。

高効率検出器を搭載GCMS-TQ8040 NX に比べてイオン数が少なくても、高い増幅率でピークを検出することができます。そのため、フェムトグラムオーダーのようなこれまで定量が難しかった微量濃度でも安定した分析が可能です。

Gas Chromatograph Mass Spectrometer

ラボの可能性を拡げる Smart ソリューションさまざまな分野で利用される GC-MS は、今や分析の汎用機となっています。その中で、装置のさらなるコストパフォーマンスの向上と、利用するユーザーのワークライフバランスが期待されています。GCMS-QP2020 NX は、分析のあらゆる場面に対しての効率化を提案し、ラボの可能性を最大限に拡げます。

高感度・長期安定性イオン源フィラメントとイオン源ボックスの間に距離を取り、フィラメント電位のイオン源内部への影響を低減しています。また、フィラメントから生じる輻射熱をシールドで遮り、イオン源ボックスの温度均一化を実現しました。イオン源内部に活性点が生じにくいため、高感度かつ長期にわたり安定した分析が可能です。

(特許:US7939810)

: フィラメント

Temperature

Low High

: 電 界: 熱 線

シールド

シールド

GCMS-TQ8040 NX

GCMS-TQ8050 NX

GCMS-QP および GCMS-TQ は、株式会社島津製作所の商標です。Rtx は、Restek Corporation の商標です。

1 SHIMADZU (ASIA PACIFIC) PTE LTD.2 株式会社島津製作所 分析計測事業部 1

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                               初版発行:2018 年 9 月                            © Shimadzu Corporation, 2018

3218-05802-10AIT