Precautionary and counter measures of clinical …Precautionary and counter measures of clinical...

2
A4 判変型 / 240 頁 / カラー 定価(本体 15,000 円+税) ISBN978-4-263-46159-4 〒 113-8612 東京都文京区本駒込 1-7-10  TEL03-5395-7630 FAX03-5395-7633 https://www.ishiyaku.co.jp/ 本書は , さまざまな場面で起こりうるトラブルに対する予防・ 解決法を, エビデンス 臨床症例 でわかりやすく 解説した役立つ実践書です. インプラントにおけるトラブルは,「外科的」「生物学的」「補綴 学的」なものが,「即時」「早期」「晩期」に起こり, さらには 「複合」して起こります. 鈴木貴規 エビデンスと臨床症例から学ぶトラブルシューティング Precautionary and counter measures of clinical complications of dental implants インプラントトラブル対応策 予防策 https://www.ishiyaku.co.jp/ 鈴木貴規 エビデンスと臨床症例から学ぶトラブルシューティング Precautionary and counter measures of clinical complications of dental implants インプラントトラブル対応策 予防策 インプラント周囲組織におけるトラブルシューティング ① インプラント周囲炎への対応 10インプラント周囲炎に対する歯周組織再生療法は統一見解がないもの,Froum が用 いる歯周組織再生療法の症例を紹介したい. 患者は 50 歳代の白人女性.他院で上顎左側側切歯のインプラント修復がなされたも のの,治療終了 2 年後にインプラント周囲炎に罹患したため来院した.X 線像での骨 吸収は顕著で,プローブ深さは 10mm 以上であった.全層弁で歯肉弁を剥離したとこ ろ,隣在歯の犬歯近心ならびに頬側の歯槽骨は吸収し,インプラント周囲の歯槽骨は 80%近くの骨吸収であった. 一般的にインプラント周囲の歯槽骨吸収が 50%以上の場合,インプラント撤去の適 となるものの,患者の意向で歯周組織再生療法によるインプラント保存を行った. インプラント表面の機械的清掃はエアーポリッシングパウダー(キャビトロン プロ フィージェットクリーニングパウダー;デンツプライシロナ)を用い,化学的清掃はク エン酸ならびにクロルヘキシジンを用いた後,エムドゲインをインプラント表面ならび に隣在歯に応用し,ゼノグラフト,アログラフトと GEM-21 を混合した骨補填材と Bio-Gide を用いて歯周組織再生療法を行った.1 年半後に再度再生療法を行った際, 歯肉弁を開けたところ,5mm 近くのインプラント周囲ならびに隣在歯の歯槽骨再生が 確認された.さらに 5 年後の X 線像では,骨レベルはインプラントプラットフォーム 近くまで確認された.他院にて新たな最終補綴物が装着され,歯間乳頭の位置や長いク ラウン等の審美的問題はあるものの,患者はインプラントを撤去せずに治療を終えられ たことに満足した(図 58 〜 63). 対応策:外科的治療が第一選択.骨吸収のパターンに応じてインプラントプラス ティー,歯周組織再生療法または結合組織移植を決断する 予防策:インプラント周囲の歯槽骨吸収を予防し,清掃性に優れた補綴物の設計 と清掃性がしやすい環境を 図 58 上顎右側側切歯のインプラント周囲炎の口腔 内ならびに X 線像.10mm のプローブ深さ,出血, 骨吸収が確認できる 図 59 歯肉弁剥離後の口腔内.インプラント周囲の 骨吸収ならびに隣在歯のアタッチメントロスが確認で きる インプラント周囲炎の X 線像.完全な骨吸収 を起こしているため,撤去が望ましい 図 57 レーザーによるインプラント治療を受けた患 者の口腔内ならびに撤去されたインプラント.他院で レーザーによる治療を受け,激しい疼痛を主訴に来院. インプラント周囲の骨は露出し壊死していたため,壊 死した歯槽骨を含みインプラントを撤去した 図 63 術後 5 年の口腔内.インプ ラントの補綴物は再製され,隣在歯 はラミネートベニア修復でコンタク トポイントを長くとった 図 62 術前(左)と術後 5 年(右) の X 線像.X 線像では骨がインプラ ントプラットフォーム付近まである ことを確認できる 図 60 汚染インプラント表面の機械的,化学的清掃 後,歯周組織再生療法を行う 図 61 術前(左)と術後 1 年半(右)の歯肉弁剥離 後の口腔内.インプラントならびに隣在歯の骨増加が 認められる 188 189 軟組織手術におけるトラブルシューティング ① 遊離歯肉移植術 7インプラントトラブルの対応策と予防策 4.遊離歯肉移植のトラブルと対応法 遊離歯肉移植術で小臼歯部から口蓋組織を採取し,そこに口蓋ヒダが存在した場合, 口蓋ヒダがそのまま移植されてしまう.機能的に問題はないものの,審美的に問題が残 る(図 45). 遊離歯肉移植術における最大のトラブルは,遊離歯肉の壊死である(図 46,47).失 敗の最大の原因は,グラフト(移植片)の固定が十分でなかった,そして供給側に弾性 線維または小帯等の存在により十分な固定源とならなかった,また血餅がグラフトと供 給側との間に存在した,そして患者が間違って歯ブラシ等で傷つけたり,食べ物が当たっ てしまったりしたこと等が考えられる.術後 1 週目,壊死したグラフトが一部供給側 と融合している場合は無理に剥がさず,術後 2 週間待ち摘出する.術後 4 週目に再度 診査し,必要であれば術後 8 週目以降に 2 度目の遊離歯肉移植術を行う. 遊離歯肉移植術を行ったものの,グラフトが定着せず術式が失敗した場合でも角化歯 肉を獲得できる場合がある.これは切開線が角化歯肉に設定され,歯肉弁が根尖側に移 動され固定する術式は歯肉弁根尖側移動術と同じであるため,角化ならびに付着歯肉を .粘膜頬移行部から 0.5mm 以上角化歯肉側に斜め切開を入れ,歯肉弁 を根尖側に移動し固定することで,角化歯肉と付着歯肉とを獲得できる(図 48 〜 51). この術式は無歯顎部位にも応用できるものの,歯肉厚みを同時に獲得したい場合は遊離 歯肉移植術が選択される弾性線維の除去で付着歯肉の獲得を,強固な遊離歯肉の固定で角化歯肉 の獲得を,術後の圧迫で成功率上昇を図る グラフトが失敗しても多少の角化歯肉が得られるよう,切開線は角化歯 肉内に設定するのが望ましい 図 46 遊離歯肉移植術後 5 日における遊離歯肉壊死(別 症例).壊死歯肉には触れず,術後 2 週間まで待つ 図 47 遊離歯肉移植術後 10 日における遊離歯肉壊死(別 症例).壊死した歯肉はほぼ取り除く 図 48 インプラントオーバーデンチャー症例の術前口腔 内(別症例).角化歯肉が限られ,口腔前庭も深くない 図 49 同,歯槽頂切開, 部分層弁にて根尖側移動術を行 う.約 10mm の開放創 図 50 同,根尖側移動術後 1 週の口腔内.開放創は白い 膜で覆われている 図 51 同,根尖側移動術後 1 月の口腔内.角化歯肉幅は 広がり,口腔前庭は深くなった 口蓋ヒダを含んだ遊離歯肉移植術(別症例).ハイ スピード等で表層を削っても,テクスチャーはあまり変化 119 骨造成におけるトラブルシューティングⅠ 5Trouble Shooting for Implant Restoration インプラントトラブルの対応策と予防策 78 79 図 70 (症例1)下顎右側臼歯部のトリー トメントプラン.患者の経済的な問題で 1 本のインプラント埋入をプランしたもの の,骨造成が必要である 図 71 インプラント埋入後の X 線写真. 予定よりも深く埋入された 図 72 インプラント埋入後の口腔内.イ ンプラントが予定より舌側そして深く埋入 されたためインプラントの露出はみられ なかったものの,予定通り頬側に骨造成 を行う 図 81 垂直性骨造成後.骨補 填材は異種骨と自家骨を用い, 6〜7mm の垂直的骨造成を行 対応策:それぞれのケースの解剖を理解し,理想的なグラフト量,メンブレンの 形態と位置,ボーンタグの位置を決め,切開線を設定する 予防策:吸収の少ないゼノグラフト(異種他家骨)応用による組織の保持,強固 な骨補填材の固定法 図 75 インプラント撤去後のX線写真.頬側骨 を取り除きインプラントを吸引にて除去した 図 73 GBR 後の X 線写真.インプラントが顎骨 内に迷入している 図 74 インプラントが下顎骨内に迷入した口腔内. メンブレン,骨補填材をすべて取り除き生理食塩 水で洗浄してインプラントの位置を確認するもの の,みつけることができない 図 76 最終補綴装置装着後の X 線写真.骨の硬 さが低かったため,インプラントは 2 本埋入され, 補綴装置は連結された メンブレンの設置は骨補填材をすべて覆い,最低 2mm は骨と接し,歯根と接しない ことが望ましい.メンブレンが歯根と接してはいけない理由は,歯肉弁への歯根膜から の血流が遮断され,歯肉弁のコラーゲン線維が骨と付着できないためである.血流の遮 断された歯肉弁は壊死し,骨と接着のない歯肉弁は口腔内からの唾液や細菌の侵入を許 してしまう.吸収性メンブレンは唾液の酵素で分解されるため,メンブレンと歯根との 接触で問題は多少起こりにくいものの,非吸収性メンブレンと歯根との接触は細菌によ る感染,軟組織の裂開,骨補填材の軟組織包含の危険性がある(図 77 〜 85). 図 78 歯肉弁剥離後の口腔内写真.メンブレンに歯石の沈 着がみられる 図 80 d-PTFE メンブレン(Ti リインフォース)とテントポー ルテクニックを併用した垂直性骨造成.メンブレンの舌側と 遠心を最初に固定すると骨造成が容易となる 図 79 メンブレン除去後の口腔内写真.露出したメンブレ ンの下は軟組織で覆われている 図 77 (症例 2)d-PTFE メンブレン露出の口腔内写真.メ ンブレンが歯根に接していたためメンブレンが露出した インプラントトラブルシューティング 最新ガイドブック です!

Transcript of Precautionary and counter measures of clinical …Precautionary and counter measures of clinical...

Page 1: Precautionary and counter measures of clinical …Precautionary and counter measures of clinical complications of dental implants インプラントトラブルの イ ンプラント

■ A4 判変型 / 240 頁 / カラー■ 定価(本体 15,000 円+税)  ISBN978-4-263-46159-4

〒 113-8612 東京都文京区本駒込 1-7-10 TEL03-5395-7630 FAX03-5395-7633 https://www.ishiyaku.co.jp/

● 本書は , さまざまな場面で起こりうるトラブルに対する予防・ 解決法を,“エビデンス” と “臨床症例 ” でわかりやすく 解説した役立つ実践書です.

● インプラントにおけるトラブルは,「外科的」「生物学的」「補綴 学的」なものが,「即時」「早期」「晩期」に起こり, さらには 「複合」して起こります.

鈴木貴規 著

エビデンスと臨床症例から学ぶトラブルシューティング

Precautionary and counter measures of clinical complications of dental implants

インプラントトラブルの対応策と予防策

h t t p s : / / www . i s h i y a k u . c o . j p /

鈴木貴規 著

鈴木貴規

 著

エビデンスと臨床症例から学ぶトラブルシューティング

Precautionary and counter measures of clinical complications of dental implants

インプラントトラブルのインプラントトラブルの

対応策と予防策

対応策と予防策

背15mm

インプラント周囲組織におけるトラブルシューティング ① インプラント周囲炎への対応第10章インプラントトラブルの対応策と予防策

Trouble Shooting for Implant Restoration

インプラント周囲炎に対する歯周組織再生療法は統一見解がないもの,Froum が用

いる歯周組織再生療法 35) の症例を紹介したい.

患者は 50 歳代の白人女性.他院で上顎左側側切歯のインプラント修復がなされたも

のの,治療終了 2 年後にインプラント周囲炎に罹患したため来院した.X 線像での骨

吸収は顕著で,プローブ深さは 10mm 以上であった.全層弁で歯肉弁を剥離したとこ

ろ,隣在歯の犬歯近心ならびに頬側の歯槽骨は吸収し,インプラント周囲の歯槽骨は

80%近くの骨吸収であった.

一般的にインプラント周囲の歯槽骨吸収が 50%以上の場合,インプラント撤去の適

応 34) となるものの,患者の意向で歯周組織再生療法によるインプラント保存を行った.

インプラント表面の機械的清掃はエアーポリッシングパウダー(キャビトロン プロ

フィージェットクリーニングパウダー;デンツプライシロナ)を用い,化学的清掃はク

エン酸ならびにクロルヘキシジンを用いた後,エムドゲインをインプラント表面ならび

に隣在歯に応用し,ゼノグラフト,アログラフトと GEM-21 を混合した骨補填材と

Bio-Gide を用いて歯周組織再生療法を行った.1 年半後に再度再生療法を行った際,

歯肉弁を開けたところ,5mm 近くのインプラント周囲ならびに隣在歯の歯槽骨再生が

確認された.さらに 5 年後の X 線像では,骨レベルはインプラントプラットフォーム

近くまで確認された.他院にて新たな最終補綴物が装着され,歯間乳頭の位置や長いク

ラウン等の審美的問題はあるものの,患者はインプラントを撤去せずに治療を終えられ

たことに満足した(図58〜63).

対応策:外科的治療が第一選択.骨吸収のパターンに応じてインプラントプラスティー,歯周組織再生療法または結合組織移植を決断する

予防策:インプラント周囲の歯槽骨吸収を予防し,清掃性に優れた補綴物の設計と清掃性がしやすい環境を

図 58 上顎右側側切歯のインプラント周囲炎の口腔内ならびに X 線像.10mmのプローブ深さ,出血,骨吸収が確認できる

図 59 歯肉弁剥離後の口腔内.インプラント周囲の骨吸収ならびに隣在歯のアタッチメントロスが確認できる

図 56 インプラント周囲炎の X線像.完全な骨吸収を起こしているため,撤去が望ましい

図 57 レーザーによるインプラント治療を受けた患者の口腔内ならびに撤去されたインプラント.他院でレーザーによる治療を受け,激しい疼痛を主訴に来院.インプラント周囲の骨は露出し壊死していたため,壊死した歯槽骨を含みインプラントを撤去した

図 63 術後 5年の口腔内.インプラントの補綴物は再製され,隣在歯はラミネートベニア修復でコンタクトポイントを長くとった

図 62 術前(左)と術後 5年(右)の X線像.X線像では骨がインプラントプラットフォーム付近まであることを確認できる

図 60 汚染インプラント表面の機械的,化学的清掃後,歯周組織再生療法を行う

図 61 術前(左)と術後 1年半(右)の歯肉弁剥離後の口腔内.インプラントならびに隣在歯の骨増加が認められる

188 189

軟組織手術におけるトラブルシューティング ① 遊離歯肉移植術第7章インプラントトラブルの対応策と予防策

Trouble Shooting for Implant Restoration

 4.遊離歯肉移植のトラブルと対応法遊離歯肉移植術で小臼歯部から口蓋組織を採取し,そこに口蓋ヒダが存在した場合,

口蓋ヒダがそのまま移植されてしまう.機能的に問題はないものの,審美的に問題が残

る(図45).遊離歯肉移植術における最大のトラブルは,遊離歯肉の壊死である(図46,47).失敗の最大の原因は,グラフト(移植片)の固定が十分でなかった,そして供給側に弾性

線維または小帯等の存在により十分な固定源とならなかった,また血餅がグラフトと供

給側との間に存在した,そして患者が間違って歯ブラシ等で傷つけたり,食べ物が当たっ

てしまったりしたこと等が考えられる.術後 1週目,壊死したグラフトが一部供給側

と融合している場合は無理に剥がさず,術後 2週間待ち摘出する.術後 4週目に再度

診査し,必要であれば術後 8週目以降に 2度目の遊離歯肉移植術を行う.

遊離歯肉移植術を行ったものの,グラフトが定着せず術式が失敗した場合でも角化歯

肉を獲得できる場合がある.これは切開線が角化歯肉に設定され,歯肉弁が根尖側に移

動され固定する術式は歯肉弁根尖側移動術と同じであるため,角化ならびに付着歯肉を

獲得できる24, 25).粘膜頬移行部から 0.5mm以上角化歯肉側に斜め切開を入れ,歯肉弁

を根尖側に移動し固定することで,角化歯肉と付着歯肉とを獲得できる(図48〜51).この術式は無歯顎部位にも応用できるものの,歯肉厚みを同時に獲得したい場合は遊離

歯肉移植術が選択される 26).

対応策:弾性線維の除去で付着歯肉の獲得を,強固な遊離歯肉の固定で角化歯肉の獲得を,術後の圧迫で成功率上昇を図る

予防策:グラフトが失敗しても多少の角化歯肉が得られるよう,切開線は角化歯肉内に設定するのが望ましい

図 46 遊離歯肉移植術後 5日における遊離歯肉壊死(別症例).壊死歯肉には触れず,術後 2週間まで待つ

図 47 遊離歯肉移植術後 10 日における遊離歯肉壊死(別症例).壊死した歯肉はほぼ取り除く

図 48 インプラントオーバーデンチャー症例の術前口腔内(別症例).角化歯肉が限られ,口腔前庭も深くない

図 49 同,歯槽頂切開,部分層弁にて根尖側移動術を行う.約 10mmの開放創

図 50 同,根尖側移動術後 1週の口腔内.開放創は白い膜で覆われている

図 51 同,根尖側移動術後 1月の口腔内.角化歯肉幅は広がり,口腔前庭は深くなった

図 45 口蓋ヒダを含んだ遊離歯肉移植術(別症例).ハイスピード等で表層を削っても,テクスチャーはあまり変化しない

118 119

骨造成におけるトラブルシューティングⅠ第5章

Trouble Shooting for Implant Restoration

インプラントトラブルの対応策と予防策

78 79

図 70 (症例1)下顎右側臼歯部のトリートメントプラン.患者の経済的な問題で1本のインプラント埋入をプランしたものの,骨造成が必要である

図 71 インプラント埋入後のX 線写真.予定よりも深く埋入された

図 72 インプラント埋入後の口腔内.インプラントが予定より舌側そして深く埋入されたためインプラントの露出はみられなかったものの,予定通り頬側に骨造成を行う

図 81 垂直性骨造成後.骨補填材は異種骨と自家骨を用い,6〜7mmの垂直的骨造成を行う

対応策:それぞれのケースの解剖を理解し,理想的なグラフト量,メンブレンの形態と位置,ボーンタグの位置を決め,切開線を設定する

予防策:吸収の少ないゼノグラフト(異種他家骨)応用による組織の保持,強固な骨補填材の固定法

図 75 インプラント撤去後のX線写真.頬側骨を取り除きインプラントを吸引にて除去した

図 73 GBR 後のX 線写真.インプラントが顎骨内に迷入している

図 74 インプラントが下顎骨内に迷入した口腔内.メンブレン,骨補填材をすべて取り除き生理食塩水で洗浄してインプラントの位置を確認するものの,みつけることができない

図 76 最終補綴装置装着後のX 線写真.骨の硬さが低かったため,インプラントは 2本埋入され,補綴装置は連結された

メンブレンの設置は骨補填材をすべて覆い,最低 2mmは骨と接し,歯根と接しない

ことが望ましい.メンブレンが歯根と接してはいけない理由は,歯肉弁への歯根膜から

の血流が遮断され,歯肉弁のコラーゲン線維が骨と付着できないためである.血流の遮

断された歯肉弁は壊死し,骨と接着のない歯肉弁は口腔内からの唾液や細菌の侵入を許

してしまう.吸収性メンブレンは唾液の酵素で分解されるため,メンブレンと歯根との

接触で問題は多少起こりにくいものの,非吸収性メンブレンと歯根との接触は細菌によ

る感染,軟組織の裂開,骨補填材の軟組織包含の危険性がある(図77〜85).

図 78 歯肉弁剥離後の口腔内写真.メンブレンに歯石の沈着がみられる

図 80 d-PTFE メンブレン(Tiリインフォース)とテントポールテクニックを併用した垂直性骨造成.メンブレンの舌側と遠心を最初に固定すると骨造成が容易となる

図 79 メンブレン除去後の口腔内写真.露出したメンブレンの下は軟組織で覆われている

図 77 (症例 2)d-PTFE メンブレン露出の口腔内写真.メンブレンが歯根に接していたためメンブレンが露出した

インプラントトラブルシューティングの

最新ガイドブックです!

Page 2: Precautionary and counter measures of clinical …Precautionary and counter measures of clinical complications of dental implants インプラントトラブルの イ ンプラント

医歯薬出版 ご注文承り書

ご指定納入店名〔       〕冊( )冊( )冊( )

●お名前

※納入店のご指定の場合 手数料はかかりません.

●納入店ご指定希望2 つの方法からお選びください.

※②の後払いの請求書は (株)ネットプロテクションズ から別送となります.

① 代 引 450 円後払い 400 円②

●直送希望

● TEL

●ご住所(〒   -    )

★必要事項をご記入のうえ,FAX 03-5395-7633 にご送信ください.★弊社ホームページ https://www.ishiyaku.co.jp/ からもご注文いただけます.〒 113-8612 東京都文京区本駒込 1-7-10 TEL 03-5395-7630

鈴木貴規 著インプラントトラブルの対応策と予防策

C O N T E N T S

トラブルの対応策と予防策トリートメントプランニング

Introduction 〜トラブルに立ち向かうために〜第 1章

骨造成におけるトラブルシューティングⅠ第 5章トリートメントプラン:補綴主導の立案をScene 1

骨欠損形態の違い:水平的骨造成Scene 2

GBR(Guided B one R egeneration)についてScene 3

上顎洞底挙上術に関するトラブルシューティングⅠ第 3章トリートメントプラン:歯槽骨の高さ,皮質骨の厚みの目安は?Scene 1

インプラントの上顎洞迷入時の対応Scene 2

切開線の設定:後上歯槽動脈に注意Scene 3

骨補填材の填入:上顎洞粘膜の穿孔に注意Scene 4

上顎洞粘膜穿孔への対応Scene 5

上顎洞底挙上術に関するトラブルシューティングⅡ第 4章感染:抗生物質投与のみでは対応できないScene 1

ウィンドウに対するアプローチでのトラブルScene 2

出血:的確な対応のためにScene 3

質が不十分な上顎洞底挙上術のトラブル事例Scene 4

オステオトーム(クレスタルアプローチ)におけるトラブルScene 5

骨造成におけるトラブルシューティングⅡ第 6章リッジスプリット:術中,術後の注意点Scene 1

ブロックグラフト:固定時の注意点Scene 2

軟組織の質と量ならびにメンブレンの露出Scene 3

骨欠損形態の違い−垂直的骨造成の臨床判断例Scene 4

垂直的骨造性における歯肉弁の閉鎖Scene 5

切開線の設定とインプラント埋入におけるトラブルシューティング

第 2章

歯肉溝切開:歯冠乳頭退縮とのジレンマScene 1

歯槽頂切開:血液供給を理解した切開線をScene 2

パピラセービング切開:歯間乳頭保存切開Scene 3

垂直減張切開:血流と縫合を踏まえた設定Scene 4

インプラントを高トルクで埋入した場合のトラブル例Scene 6

インプラント埋入時にモーターが止まり,インプラントが埋入できない

Scene 5

インプラント埋入時に初期固定が得られず,スピニングを起こした場合の臨床的判断

Scene 7

インプラントと骨とにギャップがある場合の臨床的判断(後期埋入)

Scene 8

軟組織手術におけるトラブルシューティング①遊離歯肉移植術

第 7章

術前検査:患者のサプリメント服用に要注意Scene 1

インプラント修復における機械的問題へのトラブルシューティング

第 12章

スクリューの緩みScene 1

スクリューの破折Scene 2

アバットメントの破折Scene 3

インプラントを含む根面被覆術におけるトラブルシューティング

第 9章

歯肉退縮ならびに角化歯肉不足Scene 1

根面被覆術後の対応ならびに薬物投与と患者指導Scene 2

根面被覆術のトラブルならびに歯間乳頭のトラブルScene 3

インプラント周囲組織におけるトラブルシューティング①インプラント周囲炎への対応

第 10章

歯周炎,インプラント周囲粘膜炎,インプラント周囲炎の定義改定ならびにインプラントプロービング深さのメリット

Scene 1

インプラント周囲粘膜炎Scene 2

インプラント周囲炎Scene 3

咀嚼粘膜と出血Scene 2

インプラント治療における角化歯肉の重要性Scene 3

遊離歯肉移植術Scene 4

GBR 前の軟組織マネジメントScene 5

軟組織手術におけるトラブルシューティング②結合組織移植術

第 8章

結合組織移植術Scene 1

脱上皮化結合組織移植Scene 2

臼後結節の結合組織移植Scene 3

腫脹のコントロールScene 4

インプラント周囲組織におけるトラブルシューティング② 周囲組織のトラブルと撤去への対応

第 11章

一回法と二回法におけるトラブルならびにカバースクリューの露出Scene 1

ヒーリングアバットメント再利用の危険性Scene 2

インプラント撤去Scene 3

インプラント撤去後の対応,単独歯Scene 4

インプラント撤去後の対応,部分欠損〜全顎Scene 5

インプラント治療の長期的安定におけるトラブルシューティング

第 13章

単冠インプラント修復の長期安定性Scene 1

骨造成の長期安定性Scene 2

歯の移動とインプラント修復の長期安定性Scene 3

インプラント固定式義歯の長期安定性Scene 4

長期安定性を考慮したインプラントの理想的な本数Scene 5

長期安定性を考慮したインプラント支持全顎補綴Scene 6