Philosophy of Entrepreneurship

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-1- 起業の哲学 ~短編~ version 1.0 ちかふじ りゅう First Post Date: 03/29/2010 Last Modified Date: 03/29/2010 短編絵巻 ~其の壱~ http://www. FromBayArea .com

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Page 1: Philosophy of Entrepreneurship

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起業の哲学~短編~

version 1.0

ちかふじ りゅう

First Post Date: 03/29/2010

Last Modified Date: 03/29/2010

短編絵巻~其の壱~

http://www.FromBayArea.com

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本書は、自分自身へ向けて発信するメ

ッセージだ。起業活動のプリンシプル

を記載するのが目的だ。

本書の目的

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目次

Make Meaning

Do what’s best for the

innovation

Serial Entrepreneur

Page 4: Philosophy of Entrepreneurship

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Make Meaning

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“Make Meaning”とは、起業家論で

著名なGuy Kawasaki氏(*)が、かつて、

スタンフォードでの講義で使った言葉だ。

(*) 黎明期のアップル・コンピュータで、エバンジェリストと

いうポストを”発明”し、マッキントッシュの普及に貢献。

その後、独立、幾つものベンチャー企業設立を経験。

現在は、アーリー・ステージに特化したベンチャー・キャピ

タルを運営するベンチャー投資家。

アントレプレナー関連で、最も人気の高いスピーカー、著

者、ブロガーの一人。ホノルル出身。

“the core, the essence

of entrepreneurship is

about making meaning”

Page 6: Philosophy of Entrepreneurship

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“Make Meaning”は、意訳すると「社会

に新しい価値、意義を生み出す」という意

味だ。

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同氏のスタンフォードでの講演の一部を

抜き出し、日本語訳したものを、右ページ

以降に掲載する(*)。

起業について、時に苦労しながら、僕が見

出し、学んだことは、起業家精神のコア、

本質とは、つまるところ、社会へ新しい価

値、意義を生み出すということだ。

多くの人は、金を稼ぐために会社を立ち上

げ、すぐにひっくり返る、ドットコムの現象

はその典型だ。

僕は気付いた。僕が設立し、あるいは、創

業に関係した、いずれの企業—これらの

企業は、基本的に世界を変えるため、世

界をより良い場所にするため、新しい意義

を生み出すために設立された―も、社会

に変化を生み出す企業なんだ。彼らが成

功すべき企業なんだ。(*) 下記URLから、ビデオを聴講できる。http://ecorner.stanford.edu/authorMaterialInfo.html?mid=1171

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僕のナイーブでロマンティックな信条だが、

もし、君が新しい意義を社会へ生み出すな

ら、君は恐らくお金を稼げるだろう。しかし、

金儲けのために始めるなら、君は恐らく社

会に意義を生み出すことはなく、お金を稼

ぐこともないだろう。

そこで、僕の最初の考えは、君達は社会へ

意義を生み出す必要があるということだ。

そのことが、君がなぜ会社を起こすのかの

コアになるべきなんだ。

社会に意義を生み出す方法は3つある。

その第一は、クオリティ・オブ・ライフを向上

することだ。

僕のバックグラウンドは、アップルコンピュ

ータのマッキントッシュ部門だが、僕は絶

対の自信を持って言える、僕たちはお金

を稼ぐことに動機付けられていたんじゃな

い。僕たちは、人々をより創造的に、より

生産的にすることで世界を変えようとする

ことに動機付けられていたんだ。

僕たちは、マッキントッシュ・ユーザーのク

オリティ・オブ・ライフを向上することに取り

組んでいたんだ。それって、すごいモチベ

ーションだった。苦しい時期が何度も何度

もあった。でも、そのモチベーションが僕た

ちを前進させ続けたんだ。僕らは、どのよ

うに人々の生活を変えられるかを考えな

がら、毎朝、目を覚ましたんだ。

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社会に意義を生み出す2つ目の方法

は、間違えを正すことだ。この魚は金

魚鉢から飛び出した後は死んでしまう

だろう(*)。だけど、間違えを正すことの

意味は、君が世の中の何か間違って

いることを見つけ、あるいは何か間違

えに気付き、君がそれを解決したい、

そう強く望むことだ。

これは、特に公害問題や犯罪、虐待問

題などに対するNPOに応用できるかも

しれない、そして、NPOのコアは、その

ような間違えを終わらせることだ。

(*) スライドの写真を示しながら説明。

意義を生み出す3つ目の方法は、何

か良いことがなくなってしまうのを防ぐ

ことだ。何か美しいもの、素晴らしいも

のに出会う、そして、君はそれが腐食

していく、変っていく、制限されていく、

その事実に我慢できないんだ、単純

な気持ちだ、そうなることに我慢でき

ないんだ。

Page 10: Philosophy of Entrepreneurship

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君たちが企業やNPO、教会、学校、その

他、どんなことでも何かを始める場合、僕

は君たちに求めたい。これら3つのモチベ

ーションのいずれかを、これらの一つ以上

のモチベーションを持って欲しい。

もし、君がこれらのモチベーションのいず

れをも持てないのなら、僕は、君に何をや

るのか再考することを勧める。

僕は、これら3つのことが偉大な組織を立

ち上げる鍵だと思う。

Make Meaning

1. Increase the quality of life

2. Right a wrong

3. Prevent the end of something

good

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30代も後半を過ぎた頃からだろうか。

起業に対して、漠然とだが、私も同じよう

な考えを抱くようになった。

そして、この言葉に出会った。

“Make Meaning”、起業に関する私の

プリンシプル、其の壱だ。

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Do what’s best forthe “Innovation”

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右は、スタンフォードOTL(*1)の基本哲学だ。

特許のライセンス契約における意思決定の

土台になっている。スタンフォードで生まれ

た技術が世の中で広く使われ、価値が認め

られることを優先するという方針だ。

例えば、ライセンス料を払うお金もないベン

チャー企業でも、有望なビジョンと情熱、優

秀な人材が揃っているなら、費用回収云々

は一旦度外視、まずは使わせる(*2)、という

判断をする。技術は、世の中で使われてこ

そ、価値が認められるからだ。 (*1) The Office of Technology Licensing大学の技術移転機関。日本では、通常、TLO(Technology Licensing Office)と標記される。(*2) お金の代わりに株を取得する、出世払いにする、等、柔軟に対応。

Do what’s best for the “technology”

- Stanford OTL’s Philosophy

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“Technology”を”Innovation”に置き換え

れば、この哲学は、イノベータたる起業家

の哲学になるだろう。

Do what’s best for the “innovation”

- Entrepreneur’s Philosophy

Page 15: Philosophy of Entrepreneurship

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自らが生み出したイノベーションが、早く、

且つ、広く世の中で使われ、価値が最大限

に引き出されることを優先する考えだ。

Page 16: Philosophy of Entrepreneurship

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“Make Meaning”、社会に新しい価値、意義

をイノベーションという形で生み出すのが起

業家だ。

そして、イノベータたる起業家にとっての最優

先は、イノベーションが世の中に広く普及し、

価値を最大限に認められることだ。

(*) もちろん、イノベーションを磨き上げるため、協力者たる社員や株主等のステークホルダー

へは、インセンティブとなる大きな見返りも、生み

出さねばならない。

Page 17: Philosophy of Entrepreneurship

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イノベーションを最優先に据える考えは、

技術系企業が陥りやすい、技術屋の自己

中心的発想から企業を守るだろう。何故な

ら、イノベーションは顧客しか評価できない

からだ。マーケット指向の発想にならざる

を得ないからだ。

Page 18: Philosophy of Entrepreneurship

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また、イノベーションを最優先にするという考

えは、創業者が陥りやすい愚行からも、企業

を守るだろう。

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愚行、即ち、世の中に価値、意義を提供

するという当初の目的を忘れ、会社を所

有することが目的になってしまう愚行だ。

経営スキルもないのに会社を牛耳り、経

営者であり続けることに固執する愚行だ。

経営者としての地位を維持するためだけ

に会社の独立性を延命し、貢献してくれた

社員や投資家の犠牲を顧みない愚行だ。

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“Do what’s best for the innovation”

起業に関する私のプリンシプル、其の弐だ。

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Serial Entrepreneur

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日本史上、そして、恐らく世界史上、最高の

起業家と称される渋沢栄一氏(1840~1931)

は、その生涯に600を超える企業・非営利法

人を設立した。岩崎弥太郎氏と共に、日本

産業界の半分を作った人物とも称される。

「岩崎弥太郎と渋沢栄一の名は、日本の

外では、わずかの日本研究家が知るだ

けである。だが彼らの偉業は、ロスチャイ

ルド、モルガン、クルップ、ロックフェラー

を凌ぐ。

岩崎は日本最大、世界最大級の企業集

団三菱をつくった。渋沢はその90年の生

涯において600を超える会社をつくった。

この二人が当時の製造業の過半をつくっ

た。彼ら二人ほど大きな存在は他の国に

はなかった。」

ーピーター・F・ドラッカー『断絶の時代』

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シリコンバレーを支えているのは、ビル・

ゲイツ氏のような人物ではない。起業し

てある程度まで会社を育てた後は、他者

/他社にその会社を任せ(*)、自身は再び

新しい企業を立ち上げる人々だ。次々と

企業を立ち上げる、シリアル・アントレプ

レナーと呼ばれる人々だ。

(*)通常、その後は経営に関与しない。もちろん、退く時までに沢山の株(ストックオプション)を取得し、その企業が株式市場に上場、あるいは大手企

業に買収された暁には、多額の見返りを得る。

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0から1を立ち上げるのが、シリアル・アン

トレプレナーだ。ベンチャー企業が成功す

るためには、その後、1を100にしなけれ

ばならない。そのために必要な時間は、

往々にして予測できない。5年なのか、10

年なのか、あるいは30年かかるのか。 創業

Seedstage

Earlystage

Middlestage

Latestage

Exit(上場/買収)

0

1005~30年

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0から1を立ち上げるには、運と度胸と創造

力が必要だ。人材の絶対数は限られる。

シリコンバレーですら、その人数は限られ

ている。

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一方、1を100にできるプロフェッショナルは

実は潜在的に少なくない。商社やメーカー等

の事業開発経験者もその候補だ。

日本でも、潜在候補は多い。

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シリアル・アントレプレナーは、マクロ経済

での新産業育成に効率的な方法だ。

0を1にできる貴重な人材を長期間、一つ

の企業に縛り付けることがない。

2~5年くらいで、1を100にできる後任者

へバトンタッチし、自らは再び新しい企業

を創業する。後任者へ何をすべきか方向

を示し、後任者の得手を発揮してもらう。

0

100

0

100

0

100

バトンタッチ

バトンタッチ

バトンタッチ

創業

創業

創業

0

100

創業

Page 28: Philosophy of Entrepreneurship

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革新的なことは、立ち上げ期のシリアル

アントレプレナーが遂行する。その後、

後任者がその路線で改善を重ね、事業

を育てる。

渋沢・岩崎両氏の例を挙げなくとも、日

本の企業文化に適した方法であろうこ

とは想像できる(*)。(*) ただし、後任が見つかればの話。現状の人材の低流動社会では、後任者を見つけるのが大き

な課題。しかし、大手企業の不振が続けば、早晩嫌でも人材の流動性は上がるだろう。既に20~40歳代で、日本の大手企業に見切りを付け始める

流れは始まっている。

Page 29: Philosophy of Entrepreneurship

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アイデアと情熱があるなら、シリアルアン

トレプレナーになろう。

自分より、上手に経営できる人物が現れ

たら、その人に経営を任せてしまおう。

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3~4年に1社、起業するなら、20年で

6社、渋沢栄一氏の1%に達する。

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ビル・ゲイツではなく、渋沢栄一、岩崎弥太

郎の生き方、即ち、シリアル・アントレプレ

ナーが、これからの起業家の哲学だ。

未曾有の変化が待ち構え、沢山のアントレ

プレナー・シップが求められる時代、起業

家に求められる基本マインドはシリアル・ア

ントレプレナーだ。

「岩崎と渋沢は、豊かな日本ではなく創

造力のある強い日本をつくろうとした。

いずれも経済発展の本質は貧しい人た

ちを豊かにすることではなく、貧しい人た

ちの生産性を高めることであることを知っ

ていた。そのためには生産要素の生産

性を高めなければならなかった。資金と

人材の力を存分に発揮させなければなら

なかった。」

ーピーター・F・ドラッカー『断絶の時代』

Page 32: Philosophy of Entrepreneurship

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Serial entrepreneur、起業に関する私

のプリンシプル、其の参だ。

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以上