P-1183.3 解析結果 対象とした土石流イベントの解析結果は,図4に示...
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有村川 3 号砂防堰堤における土石流の流下断面形状計測について
八千代エンジニヤリング株式会社 ○長塚結花,横尾公博,児玉龍朋,後藤宏二 国立研究開発法人 土木研究所 藤村直樹※,山﨑祐介,手塚咲子
(※現所属:国土交通省)
1.はじめに 鹿児島県桜島の南岳の南東斜面に位置する有村川流
域は,源頭部に南岳及び昭和火口が位置する流域である.有村川流域は,桜島を流れる河川の中では,土石流の発生回数が比較的多い河川であり,国土交通省大隅河川国道事務所の資料によれば,平成 30 年の土石流発生回数は 17 回である.また,有村川の中流に位置する有村川 3 号砂防堰堤では土石流観測が実施されている. 本報告は有村川 3 号砂防堰堤において,平成 30 年 2
月 28 日及び 9 月 29 日に観測された土石流イベントの観測結果を報告するものである. 2.観測の概要
2.1 観測機器概要 有村川 3 号砂防堰堤は,流域面積が 1.38km2,堰堤
地点の平均河床勾配は約 3~4 度である.有村川 3 号砂防堰堤では,荷重計,測域センサ,超音波流速計,CCTV,インターバルカメラ等の機器により,土石流観測が実施されている 1) 2).このうち有村川 3 号砂防堰堤に設置されている測域センサは,空間的な物理形状を計測可能な光波距離計である.測域センサは,照射部から0.125 度ずつ 190 度の範囲にわたりレーザを照射し,80m の範囲にある物体からの反射波を受信し角度毎の距離として記録している. 測域センサによる土石流の形状計測は,堰堤水通し
部の縦断方向・横断方向及び,堆砂敷内の横断方向 2箇所の,合計 4 測線で行われている(図1).
図1 有村川流域図と測域センサ設置状況
2.2 土石流イベントの概要 対象とする土石流イベントは,表1に示すとおりで,
土石流発生時の時間雨量は 10mm/h 程度,測域センサと流速計の観測結果から推定される土石流ピーク流量は,約 9~10m3/s であった.
土石流形状の解析時間は,ワイヤセンサ切断時間(土石流検知時間)から前後およそ 1 時間の計 2 時間とした.また,解析対象としたデータは,2 月 28 日の土石流イベントでは全測域センサのデータとし,9 月 29 日の土石流イベントではエラー値を含まない測域センサ1~3 のデータとした.
表1 対象イベント概要とデータ取得状況
Event1 Event2 備考
H30年2月28日19:30~21:30
H30年9月29日20:00~22:00
20:14 20:51ワイヤセンサ
切断時間
時間雨量 9mm 11mm
累積雨量 10mm 13mm
土石流 ピーク流量 9m3/s 10m3/s測域センサ・流速
計から算出
センサ1 ○ ○ 堰堤部 縦断
センサ2 ○ ○ 堰堤部 横断
センサ3 ○ ○ 堆砂敷 横断
センサ4 ○ ×(エラー値) 堆砂敷 横断
日時
降雨
測域センサ
土石流検知時間
3.観測結果 3.1 解析内容 土石流観測結果の解析に用いたデータの諸元は,次
表に示すとおりである. 表2 解析対象データ
観測データ 単位 備考
降雨量 mm/10min テレメータ降雨量計
土石流流速 m/s 超音波流速計 計測値
底面鉛直応力 kN/m2 荷重計 計測値
土石流水深 m測域センサ1観測結果より水通し中央部の水深を算定
流下断面積 m2測域センサ2~4観測結果より土石流発生前との断面積の差分を流下断面積として算定
3.2 流下断面積の算定方法
測域センサによる計測データから,土石流発生前の基準断面データ(初期値)と土石流時の横断データの面積の差分をとることで,流下断面積を算定した.なお,堆積は正の面積とし,侵食は負の面積とした. 流下断面積は,測域センサの横断データを 30 秒一定
間隔で重ねて描画し,エラー値を示す範囲を除いた幅を対象として,測域センサ・イベントごとに算出することとした(図2で例示).
-8
-7
-6
-5
-4
-3
-2
-1
0
-10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3
測域
セン
サか
らの
距離
(m)
横断距離(m)
20180929 測域センサ3
図2 断面積の算出例
有村川流域
有村川 3号砂防堰堤 センサ 1
センサ 3
センサ 4
センサ 2
測定方向
-5.7~0.0
初期値
測域センサ
P-118
- 607 -
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3.3 解析結果 対象とした土石流イベントの解析結果は,図4に示
すとおりである. ① 平成 30 年 2 月 28 日 土石流水深のピークは,20:13 分頃に生起しており,
ピーク後の土石流継続時間は,17 分程度であった.ピーク時の流速は 3m/s 程度,測域センサ 2~4 で計測されたピーク時の流下断面積は,約 2~3m2の値を示した. 当該土石流イベントにおいては,土石流流下後の降
雨及び流速は観測値が零であるものの,堰堤水通し部に設置されている荷重計や土石流水深(測域センサ 1),流下断面積(測域センサ 2)は,初期値に比べて増加している.これは,土石流流下時に土砂が水通し部に堆積し,残存していることによるものであると考えられる. ② 平成 30 年 9 月 29 日
土石流水深のピークは,20:42 分頃に生起しており,ピーク後の土石流継続時間は,23 分程度であった.ピーク時の流速は 5m/s 程度,測域センサ 2 及び 3 で計測されたピーク時の流下断面積は約 3m2の値を示した. 土石流流下後の流下断面積は,水通し部の測域セン
サ 2 では,約 0.2m2 と初期値に近い値であったが,堆砂地上の測域センサ 3 では,初期値に比べ約 1.0m2 程度の侵食が認められる結果となった.当該土石流イベントでは,土石流ピーク後においても降雨があり,流速も検知されていることから,後続流によって侵食されたものと考えられる.
4.まとめ 解析結果に示したとおり,本報告で対象とした土石
流を解析した結果,測域センサによる計測データや,超音波流速計や荷重計の観測結果について,土石流の波形は,概ね整合する結果が得られた. 測域センサでは,水深の変化に加え,断面の変化も
捉えられるため,後続流による侵食状況を捉えることが出来た.このように,土石流の流下断面形状把握に有効であることが,今回のイベントでも確認できた. そのため,今後も継続的に観測を行い,データの蓄
積をはかりながら土石流の流下特性の把握を行っていくことが重要である.
図3 CCTV による画像データ
参考文献; 1) 大坂ら:桜島における土石流荷重計による単位体
積重量測定,砂防学会誌(新砂防),Vol.65,No.6,p46-50,2013
2) 吉永ら:レーザ測距儀を用いたナップ飛距離及び水深の計測方法の提案と流速推定への応用,砂防学会誌(新砂防),Vol.70,No.1,p46-53,2017
図4 土石流イベント 観測結果(左 2/28,右 9/29)
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
土石
流水
深(m
)
測域センサ1
-2.0
-1.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
19:3
0
19:4
5
20:0
0
20:1
5
20:3
0
20:4
5
21:0
0
21:1
5
21:3
0
2018/2/28
流下
断面
積(m
2 )
センサ2 センサ3 センサ4
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
19:30 19:40 19:50 20:00 20:10 20:20 20:30 20:40 20:50 21:00 21:10 21:20 21:30
2018/2/28
10分
雨量(
mm/10min)
降雨量
土石流発生(ワイヤセンサ切断)
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
土石
流流
速(m
/s)
流速計
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
底面
鉛直
応力
(kN
/m2) 荷重計
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
土石
流水
深(m
)
測域センサ1
-2.0
-1.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
20:0
0
20:1
5
20:3
0
20:4
5
21:0
0
21:1
5
21:3
0
21:4
5
22:0
0
2018/9/29
流下
断面
積(m
2 )
センサ2 センサ3
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
20:00 20:10 20:20 20:30 20:40 20:50 21:00 21:10 21:20 21:30 21:40 21:50 22:00
2018/9/29
10分
雨量
(mm/10min)
降雨量
土石流発生(ワイヤセンサ切断)
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
土石
流流
速(m
/s)
流速計
底面
鉛直
応力
(kN
/m2) 荷重計
欠測
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ポスター発表_要旨 P-118 有村川3 号砂防堰堤における土石流の流下断面形状計測について八