2017.2.10 尿路結石に対するα Blocker

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Introduction・症状がコントロールされている 10mm 以下の尿管結石に対する α-blocker の使用はガイドラインでも治療 option として提示されている。 ・ α-blocker の使用は多数の RCT を用いた systematic review やmeta-analysis を根拠としており、排石を促進するとされている。・ α-blocker の使用の根拠となっている試験は小規模、単施設、質が低いものが多かった。 ・ 2015 年の Lancet に掲載されたイギリスで行われた大規模他施設RCT では 4 週間の観察で α-blocker は placebo と排石率に有意差がなかった。この研究は質の高い研究ではあるが、 primary endpoint の設定や自然排石率が高いなどから重要なデータを見落としている可能性がある。

・≦ 5mm の上・中部尿管の結石では intervention 施行率は同等であったが、 >5mm の下部尿管の結石では有用かもしれない。

 本研究では尿管結石に対する α-blocker の効果についてsystematic review を行った。Subgroup 解析として大きさと位置について排石率を検証した。

Methods・対象は 2016.7.10 までに発表された RCT55 件( 5990 人)を解析。 Primary outcome・結石の排出率 Secondary outcome・排石に要した期間・疼痛の程度・手術率・入院率・有害事象の頻度 ・ subgroup 解析として、結石の位置とサイズについて解析。サイズは5-8 mm を閾値とし、位置は上中部と下部の 2 つに分類。

・ selection bias 、 performance bias 、 detection bias 、 attrition bias について bias risk を low 、 high 、 unclearに分類。・ evidence の質の評価として GRADE アプローチの手法を用いて、high 、 moderate 、 low 、 very low の 4 段階に分類。

Methods

Picard et al. Lancet 2015.

Furyk et al. Ann Emerg Med 2016.

Control 群の国ごとの自然排石率Results

Primary outcome 排石率   Baseline risk <40% Risk ratio 2.11(1.72 to 2.65)   Baseline risk 40-60% Risk ratio 1.52(1.40 to 1.63)   Baseline risk 60%< Risk ratio 1.49(1.39 to 1.61) GRADE アプローチによる Evidence の質は中等度

Baseline risk が 10% 上昇すると、 relative risk は 13% 減少する。

Pooled risk difference 0.27(0.22 to 0.31) →1 人の患者に対して効果を得るために 4 人への投与が必要( NNT=4 ) ・ follow up を CT で行った研究のみ →  RR 1.64(1.31 to 2.16) ・ follow up を CT 、レントゲン、エコー →  RR 1.54(1.41 to 1.70) ・タムスロシンが最も多かった(他の α-blocker でも有意差なし)

小結石では排石率に有意差なし

大結石では排石率は有意に上昇

Meta-regression では結石の大きさが 1mm 大きくなると α-blocker 使用のRR は 9.8% ( 2.5 – 17.7% p<0.01 )上昇する

結石の存在部位による検討 上中部尿管の結石では RR 1.48(1.05 to 2.10)下部尿管の結石では RR 1.49(1.38 to 1.63)

Secondary outcome ・排石に要した期間 -3.79days (-4.45 to -3.14, moderate quality) ・疼痛の episode -0.74 回 (-1.28 to -0.21, low) ・手術率 RR 0.44 (0.37 to 0.53, moderate) ・入院率 RR 0.37 (0.22 to 0.64, moderate) ・有害事象の頻度 RR 1.49 (0.24 to 9.35, low) 有意差なし

Funnel plots で非対称→小規模、 negative study は publish されていない可能性 ➡sample size≧100 の study のみで検討→排石 risk ratio 1.39(1.26 to 1.58)

Discussion・ α-blocker は結石の存在部位にかかわらず大きい結石の排石率を上昇させる。→ リスクも低く、治療域も広いので、禁忌がなければ使用を考慮してもよい。・ <5mm の結石ならば容易に排石されるので、 α-blocker の benefitは少ないかもしれない。Furyk et al. の報告( multicenter ,double-blind placebo controled )では≦ 10mm の結石全体で考えると α-blocker の有用性はないが、 5-10mm の結石であれば有意に排石率を上昇させる。

・ Sur et al. の報告( RCT, low risk bias )では下部尿管結石では有意に排石率を上昇させたが、上中部尿管結石では有意差はなかった。Α-blocker は α アドレナリン受容体に作用し、平滑筋を弛緩させることによって排石を促進すると考えられており、下部尿管には α アドレナリン受容体が多く存在している。→ しかし、今回の meta-analysis では上中部尿管でも排石率は上昇した。

Discussion

・ Pickard et al. ( Lancet 2015. )の報告では、○ コントロール群の自然排石率が高すぎること○ 排石の基準としては画像評価が standard であるが、ランダム化後、4 週間の時点で排石を促進するさらなる介入が必要ないとしている。→ 自然排石率が正確でないかもしれない 実際は排石されておらず、遅発性合併症が生じているかもしれない ・ヨーロッパ泌尿器科学会では画像 follow を推奨しており、他国の実臨床を反映しているものではない。 この研究結果を受けてガイドライン改訂が議論されているが、 over reaction かもしれない。

Discussion

・本研究の結果では、≧ 5mm を超える結石には α-blocker の使用は有効である。 現在のヨーロッパ泌尿器学会のガイドラインでは側腹部痛を訴える患者には画像評価を行うべきとしているが、腎結石の既往がある人に対しては行われないこともある。 エコーでは正確な結石サイズを測定することは難しい。 単純 CT が診断に有用だが撮像されないことも多い。

Discussion

・国ごとに自然排石率が異なっているため、患者ごとに薬物的排石促進療法の効果を考慮する必要がある。・さらなる研究では、患者の年齢や性別、人種などを考慮した国際的な試験が必要である。

尿路結石症診療ガイドライン  2013 年版