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20 29 エネルギー テクノス 第1 CO2 プロジェクト 6-2

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「二酸化炭素炭層固定化技術開発」

評 価 資 料

平成20年7月29日

経済産業省 資源エネルギー庁 資源・燃料部石炭課

株式会社 環境総合テクノス

第1回石炭利用CO2回収型水素製造技術及び二酸化炭素炭層固定化技術開発 プロジェクト評価(事後)検討会

資料6-2

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目 次 1. 事業の目的、政策的位置付け··········································· 1 1-1 事業の目的······················································· 1 1-2 国の関与の必要性················································· 1 1-3 政策的位置付け··················································· 1 2. 研究開発目標························································· 4 2-1 研究開発目標····················································· 4 2-1―1 全体の目標設定············································· 4 2-1-2 個別要素技術の目標設定····································· 4

3.成果、目標の達成度····················································· 5 3-1 成果 ···························································· 5 3-1-1 全体成果··················································· 5 3-1-2 個別要素技術成果··········································· 5 3-1-3 特許出願状況等············································· 7

3-2 目標の達成度····················································· 8 4. 事業化、波及効果····················································· 9 4-1 事業化の見通し··················································· 9 4-2 波及効果························································· 9

5. 研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等······················· 9 5-1 研究開発計画····················································· 9 5-2 研究開発実施者の実施体制・運営································· 10 5-3 資金配分······················································· 12 5-4 費用対効果····················································· 12 5-5 変化への対応··················································· 13

資料1 「論文、発表、特許リスト」····································· 資料1 資料2 「二酸化炭素炭層固定化技術開発」の総合評価について············· 資料2

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1. 事業の目的、政策的位置付け 1-1 事業の目的 我が国の地球温暖化対策の目指す方向は、京都議定書削減目標の6%削減達成と、加えて更なる長期的、継続的かつ大幅な排出削減を目指すことである。そのため策定されている「京都議定書目標達成計画」(平成20年3月全部改定)に、6%削減の達成に向けた必要な措置と、「低炭素社会」を目指した中長期の戦略が策定されている。6%削減については、省エネ・新エネの推進、および原子力発電所の推進等の排出抑制対策と、森林吸収源の確保、京都メカニズムの活用である。また、中長期的・継続的な排出削減としては、「革新的技術の開発」とそれを中核とする低炭素社会づくりである。この中長期的な技術開発のひとつに、二酸化炭素回収・貯留技術(以下CCSという)が支援されている。このCCSについては国際的に地球温暖化対策として期待が高まっており、我が国では平成 19年5月に総理が提案された「美しい星50」の革新的技術開発に、さらには経済産業省「Cool Earth―エネルギー革新技術計画」(平成20年3月策定)で重点的に取り組むべきエネルギー革新技術「21」の一つに位置付けられている。本事業はCCSの地中貯留技術のひとつとして、二酸化炭素(以下CO2という)を炭層に固定化し、地球温暖化対策に寄与すると共に、CO2と置換された天然ガスを有効利用するものであり、環境とエネルギーの両面から意義あるものと考える。 以上の背景から本事業は、CO2削減技術の一つとして、CO2を炭層に圧入・固定し、

メタン(以下CH4という)を回収する個々の技術開発を行い、経済的なトータルシステムを構築することを目的とする。 1-2 国の関与の必要性 地球温暖化対策に関する京都議定書の目標達成は国際公約であり、世界をリードする環境立国を目指す我が国にとって遵守に向けた対策の推進が重要である。前述のようにCO2炭層固定化技術は、中長期の視点から技術開発が必要とされている。 本事業は地層評価、効果的なCO2圧入、CH4回収さらにはモニタリング等開発課題を

抱えている。これらの技術は他分野への水平展開の余地が少ない上、多くの費用と期間を要するため、民間が実施するにはリスクが大きい。また、日本周辺には多くの炭田が存在しており、これらの炭田でCO2の固定が期待できると共に、炭層構造に適応した技術開発を進めることにより海外展開も望めるものである。 以上のように本事業は、地球温暖化対策の重要な技術として、社会的意義が大きく、国民や社会のニーズに適合しており、公共性の大きいテーマである。事業の推進に当たっては産官学を結集し、国が主体となって民間企業を活用しながら実施する必要があると考える。また、クリーンエネルギーであるCH4を回収できる技術であることから、天然資源に乏しい我が国の現状は海外からの輸入に依存した構造であることから、本事業は環境だけでなく、エネルギー源の確保等の観点から国が主体となって取り組むべきものと考える。

1-3 政策的位置付け

地球温暖化対策技術については長期的な対策を講じることが必要であることから、産業構造審議会産業技術分科会研究開発小委員会(平成16年)において、「二酸化炭素炭層固定化・有効利用技術」については、革新的温暖化対策技術として「平成22年(2010年)以降、平成42年(2030年)までに効果が期待できる技術テーマ」としてリストアップされている。図―1、2に「二酸化炭素炭層固定化・有効利用技術」の位置付けとその体系を示す。

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図-1「二酸化炭素炭層固定化・有効利用技術」の位置付け

図-2「二酸化炭素炭層固定化・有効利用技術」の体系

地球温暖化政策に関する現状は、世界全体で2050年(平成62年)にCO2排出量半減に向けた論議が白熱している。このような情勢において我が国は、CCSは地球温暖化対策に関する技術開発の政策として、また、エネルギー基本計画で重要な課題として位置付けられている。これらの中で「京都議定書目標達成計画」(平成20年3月全部改定)においては、「基盤的施策」の「地球温暖化対策技術開発の推進」事項として、「クールアース50」(平成19年5月総理発表)においては革新的技術開発の主要課題のひとつに、また、経済産業省においては「技術戦略マップ」(平成20年4月策定)のCO2固定・有効利用の技術ロードマップに将来的に導入可能な対策オプションとして、「Cool Earth―エネルギー革新技術計画」(平成20年3月策定)では重点的に取り組むべきエネルギー革新技術「21」の一つに位置付けられている。さらには「CCS研究会」が平成 18年に立ち上げられ、平成19年10月に中間とりまとめとして政策的課題が提示されている。図―3、4に経済産業省「技術戦略マップ 2008」の「CO2固定化・有効利用分野の導入シナリオ」と「CO2固定化・有効利用分野の技術ロードマップ」示す。

省エネルギー技術

新エネルギー技術(バイオマス、風力等)

2010年時点で効果が期待できる技術

二酸化炭素固定化・有効利用技術

2010年以降に効果が期待できる技術

二酸化炭素削減技術

CO2排出抑制技術

排出CO2削減技術

化学吸収法

ガス分離法

海 洋 隔 離

地 中 隔 離

・石油増進回収法(EOR)

・枯渇油ガス田への隔離

・石炭層固定とメタン回収(Coal Bed Methane)

・帯水層への貯留

生物的固定

化学的固定

分離回収技術

隔離・貯留技術

固定化・有効利用技術

二酸化炭素固定化・有効利用技術

・石炭層固定とメタン回収

物理吸着法

化学吸収法

ガス分離法

海 洋 隔 離

地 中 隔 離

・石油増進回収法(EOR)

・枯渇油ガス田への隔離

・石炭層固定とメタン回収(Coal Bed Methane)

・帯水層への貯留

生物的固定

化学的固定

分離回収技術

隔離・貯留技術

固定化・有効利用技術

二酸化炭素固定化・有効利用技術

・石炭層固定とメタン回収

物理吸着法

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図―4「技術戦略マップ2008」のCO2固定化・有効利用分野の技術ロードマップ

分離・回収

地中貯留・海洋隔離

2010 2020 2030 2040 2050CO2分離・回収本格適用

分離コスト※ 1 4,200円/tCO2 2,000円台/tCO2

1,000円台/tCO2

さらに分離膜の高圧ガス適用で1,500円台に

・分離膜の大型化・連続製造

更なるコストダウン更なる適用範囲の拡大

分離プロセスの実現

高選択性膜開発

コストダウン・低再生エネルギー吸収液開発・未利用排熱利用・システム開発

新方式基礎研究/適用検討

化学吸収

膜分離

物理吸収吸着

深冷分離

更なるコストダウン更なる適用範囲の拡大

更なるコストダウン更なる適用範囲の拡大

▼技術確立

コストダウン大規模化

CO2地中貯留本格適用

地中貯留実証試験 大規模実証試験 ・帯水層、廃油・ガス田、炭層貯留・輸送技術 ・溶解希釈、深海底貯留隔離など

実適用先の拡大コストダウン

海洋隔離技術の実適用

CO2地中挙動の理解と予測

地中貯留システムの効率化とコスト低減

貯留CO2の管理技術

影響評価・安全性評価手法の開発

貯留層賦存量調査と利用拡大

実証技術の適用・評価

分離~貯留プロセスの実証

地下深部塩水層貯留廃油・ガス田貯留炭層貯留

モデル海域での実証

CO2の海洋拡散・生物影響の科学的理解

拡散シミュレーション実験によるマッチング

生物影響モデルと実験によるマッチング

影響評価・安全性評価手法開発

▼技術確立

地中貯留

海洋隔離

分離・貯留トータルコスト※ 2

7300円/tCO2(新設石炭火力)

図―3「技術戦略マップ2008」のCO2固定化・有効利用分野の導入シナリオ

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2 研究開発目標 2-1 研究開発目標

炭層に安定かつ安全にCO2を固定すると共に、CH4を効率良く回収する個々の技術を確立する。

確立した個々の技術で構築したトータルシステムの実用化・事業化の見通しを得る。 2-1-1 全体の目標設定

表-1 全体の目標 目標・指標 設定理由・根拠等

1.炭層に安定かつ安全にCO2

を固定すると共に、CH4を効率よく回収する個々の技術を確立する。 2.確立した個々の技術で構築したトータルシステムの実用化・事業化の見通しを得る。

1.炭層固定化技術の実用化に向けてCO2の炭層への圧入技術と、CH4回収技術について現場実験による評価により安定かつ安全に固定する技術と、効率よくCH4を回収する技術の確立が必要である。 2.炭層固定化技術の実用化に向けては、CO2分離・回収から、輸送、圧入・CH4回収と売却に至るトータルシステムについて、経済性評価を行った事業化の検討が重要である。

2-1-2 個別要素技術の目標設定

表-2 個別要素技術の目標 要素技術 目標・指標 設定理由・根拠等 基礎研究 1.CO2およびCH4の吸着挙動の基

礎データを取得する。 ・CO2 とCH4 との置換メカニズムの 解明 ・炭層へのCO2固定化最適条件の検討 2.CO2圧入予備実験場所の炭層特性および吸着特性をパラメーターとした数値モデルを構築する。

3.我が国における石炭層のCO2貯留ポテンシャルを推定する。 4.CO2圧入予備実験において発生した事象を室内実験で解明する。

1.CO2圧入予備実験におけるCO2圧入量、CH4産出量を予測する数値モデルを構築するため必要である。 2.CO2圧入予備実験の設備設計、実験データの解析およびCO2の炭層内の浸透予測に必要である。 3.地球温暖化対策として、実用化時のポテンシャルの把握が必要である。 4.CO2圧入予備実験における課題への対策の検討に室内実験での検証が必要である。

CO2圧入予備実験

1.炭層へのCO2の注入性とCH4産出効果を確認し、基礎的なデータの取得と、関係する個々の基礎技術を確立する。 2.数値目標値 CO2圧入量:5t/日以上 CH4産出量:600Nm3/日以上

1.本技術開発の実用化を評価するための基礎データの取得と、使用した各実験装置の技術評価が必要である。 2.数値目標値は事業化モデルシミュレーションから想定し、事業として成立させるための必要量を設定した。

モニタリング技術の検討

1. CO2圧入予備実験において圧入したCO2が環境に影響がないことを立証する。 2.炭層に圧入したCO2の炭層内挙動を把握する技術を確立する。

1. 圧入したCO2が環境に影響がないことを立証することが、本技術の実用化に向けて重要な要件である。 2.CO2の削減効果の把握に必要な技術でありその探査方法を確立する必要がある。

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要素技術 目標・指標 設定理由・根拠等 C O 2 分離・回収技術の開発

CO2分離・回収技術に関するコスト低減方策を確立する。

本技術の事業化を図るにはコスト低減が必要である。

経済性検討

1.CO2の分離・回収、輸送、圧入、CH4回収、CH4売却に至るトータルシステムのコストを算出する。 2.実用化・事業化シナリオを想定し、経済性評価を行う

事業化の検討に際しては、トータルシステムのコスト評価が必要である。

3.成果、目標の達成度 3-1 成果 3-1-1 全体成果

我が国、最初の炭層へのCO2固定とCH4産出を実現し、CO2圧入によるCH4の増産効果(約5倍)を確認した。

CO2吸着により石炭が膨潤し、CO2の注入性が低下することが分かった。対策として、CO2よりも吸着能が低い窒素(以下N2という)が石炭の膨潤を緩和することに着目し、CO2が吸着した炭層にN2を圧入することによって、CO2を脱着させて、炭層の膨潤を緩和(収縮)する現象を確認した。また、N2圧入によるCO2の注入性向上およびCH4が増産(約9倍)することも確認した。

炭層へ圧入したCO2の漏洩の有無を確認するモニタリング技術として、土壌中の CO2とO2濃度を連続測定することで、微生物の活動によるCO2増加量を特定し、CO2漏洩の有無を判定する手法を確立した。

3-1-2 個別成果 個々の開発成果については以下のとおりで、その詳細については資料―2「二酸化炭素炭層固定化技術開発の総合評価について」に示す。 (1) 基礎研究

CO2およびCH4の吸着挙動等の基礎データを室内実験で取得し、CO2圧入予備実験場所の炭層特性および吸着挙動等をパラメーターとした数値モデル(石狩モデルという)を構築し、CO2圧入予備実験データに基づいてモデルの精度向上を行い、圧入圧力および産出孔底圧をパラメーターとした、CO2圧入量およびガス・水産出量の予測が可能なモデルとした。石狩モデルを用いたCO2圧入予備実験データの解析によりCO2の炭層内挙動、炭層内の浸透状況を推測し、実験計画に反映させた。また、石狩モデルを用いて経済性検討条件におけるCO2圧入量とCH4生産量を予測した。

CO2圧入予備実験における、CO2吸着で膨潤した炭層の注入性の低下現象や、N2圧入後の注入性の回復現象を石炭コア試料の室内実験で確認した。

我が国の炭層おけるCO2固定可能量を既存のデータ調査により、1,200m 以浅で約10億 tであると評価できた。また、深度1,200~3,000mでは約100億tと推算できた。

(2) CO2圧入予備実験 我が国、最初の炭層へのCO2固定およびCH4産出を実現し、CO2圧入によるCH4増産効果(約5倍)が確認でき、CO2炭層固定化技術の有効性が立証できた。しかし、CO2圧入量は、5t/日を数値目標としていたが、CO2圧入予備実験場所の

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地層一部の地温が低いため、圧入したCO2が液化したことや、CO2吸着によって石炭が膨潤して、浸透率を低下させたこと等が影響し、最大で4.3t/日に達したが数値目標を達成することができなかった。CH4産出量は、N2圧入により数値目標である600Nm3/日を達成した。N2圧入によるCO2圧入量の増加については、室内実験において浸透率の上昇を確認したが、CO2およびN2の最適な圧入方法の確立が必要である。

CO2圧入炭層の選定条件、地層と炭層特性の把握技術、圧入孔井の掘削と仕上げ方法、圧入・回収設備、圧入・回収に関する試験等について評価ができ、次のステップとなる実証試験等における課題とその対応策をまとめた。

CO2圧入予備実験から多くの基礎データを取得し、適正な圧入・回収方法と運転管理方法を把握することができた。また、数値目標が達成できなかったCO2の圧入量(t/日)については、各種対策を実施して、その効果を把握することができた。特に、実験終了時に実施したステップレート試験において、炭層のクリート開口圧力が実験開始前に比べて上昇しており、圧入圧力を上げることができる可能性が示唆されたこと、炭層の人工亀裂形成を目的とした水圧破砕については、長期の使用による炭層の崩壊のため、初期の目的を達成することができなかったが、CO2の注入性を向上させる対策としてその有効性が海外において検証されていることから、水圧破砕の実施時期を検討することにより、効率的な人工亀裂の形成が可能である。

(3) モニタリング技術の検討 CO2圧入予備実験において炭層へ圧入したCO2が環境に影響を及ぼさないことを立証する手法として、土壌中のガス濃度、地下水水質等の測定により環境影響を判定する環境モニタリングを実施し、環境への影響がないことが確認できた。また、炭層へ圧入したCO2の漏洩の有無を確認するモニタリング手法として、土壌中の CO2およびO2濃度を連続測定することで微生物活動によるCO2増加量を推定し、CO2漏洩の有無を判定する手法を確立した。その他CO2圧入による地盤への影響を把握する水準測量、傾斜計観測等によるモニタリングを実施し、その適用性と適用条件をまとめた。

炭層に圧入したCO2の炭層内挙動を把握する手法の確立については、探査手法を検討し、傾斜変化、微重力変化、極微小地震観測を実施したが、CO2の圧入量が少なかったため、その有効性を判定するデータを得ることができなかったため、シミュレーションにより高精度傾斜計観測が有効な手法であると評価できた。

(4) CO2分離・回収技術の開発(コスト低減技術の確立) 既存技術である化学吸収法のコスト低減策について、CO2分離・回収装置の吸収塔に使用されている充填材に安価な市販品を採用することで、建設費を3%削減することができた。なお、市販の充填材を分離・回収装置の試験プラントで試験した結果、分離・回収性能、運転経費に変化がないことを確認した。

(5) 経済性検討 事業化を想定した新設石炭焚火力発電所をCO2発生源施設とする年間100万t規模のCO2固定事業のコストについて、CH4売却単価を36.6円/m3(国内天然ガス単価)に設定した試算結果は、2,800円/t-CO2(アボイディッドコスト)で、同じ地中貯留技術の帯水層貯留技術における同規模コストと比較して、 CO2固定コストの面では優位であることが評価できた。なお本コストにおいては、CH4の売却収益のウェイトが大きく、CH4売却単価によりコストが大きく変動する。固定コストについては、約500本の孔井を必要とすることから、その掘削費の占めるウェイトが大きく、技術的課題であるCO2の圧入量増加がコスト削減の大きな因子となっている。

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3-1-3 特許出願状況等 特許・論文等件数は表―3に示すとおりで、論文数は18件、発表は52件で、その内

14件を海外で発表している。特許については7件の出願を行い、現在 1 件特許権を取得している。具体的な論文、発表、特許の件名については資料1に示す。

表-3 特許・論文等件数

要素技術 論文数 論 文 の被 引 用度数

特 許 等件数(出願 を 含む)

特 許 権の 実 施件数

ラ イ セン ス 供与数

取 得 ライ セ ンス料

国 際 標準 等 の寄与

基礎研究 9 15 1 0 0 0 0

CO2圧入 予備実験

7 10 1 0 0 0 0

モニタリング技術の検討

1 0 5 0 0 0 0

経済性検討 1 0 0 0 0 0 0

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3-2 目標の達成度

表―4 目標に対する成果・達成度の一覧表 要素技術 目標・指標 成果 達成度 基礎研究 1.CO2およびCH4の吸着挙動

の基礎データを取得する。 2.CO2圧入予備実験場所の炭層特性および吸着特性をパラメーターとした数値モデルを構築する。 3.我が国における石炭層のCO2

貯留ポテンシャルを推定する。 4.CO2圧入予備実験において発生した事象を解明する。

1、2.吸着挙動の基礎データが取得でき、炭層特性および吸着特性をパラメーターとした数値モデルを構築し、CO2圧入予備実験データを用いて、精度向上を図り、CO2の炭層内挙動、浸透状況を推測し、実験計画、データ解析に活用できた。 3.我が国の石炭層のCO2貯留ポテンシャルが1,200m以浅で約10億tであると評価できた。 4.CO2圧入予備実験において発生した、CO2の注入による石炭の膨潤が要因のCO2の注入性低下を室内実験で確認できた。

達成

C O 2 圧入予備実験

1.炭層へのCO2の注入性とCH4回収効果を確認し、基礎的なデータの取得と、関係する個々の基礎技術を確立する。 2.数値目標 CO2圧入量:5t/日以上 CH4産出量:600Nm3/日以上

1.炭層にCO2を圧入固定でき、 CH4が産出することを確認した。また、CO2圧入によるCH4の増産(約5倍)およびN2圧入によるCH4増産(約9倍)効果も確認できた。 2.CO2の圧入量は目標を達成できなかったが、CH4の産出量はほぼ目標を達成した。

一部 達成

モニタリング技術の検討

1. CO2圧入予備実験において圧入したCO2が環境に影響がないことを立証する。 2.炭層に圧入したCO2の炭層内挙動を把握する技術を確立する。

1.圧入したCO2が環境に影響がないことを立証できた。また、炭層へ圧入したCO2の漏洩を判定する手法を確立した。 2.炭層に圧入したCO2の炭層内挙動を把握するため各種測定を実施した結果、高精度傾斜計が有望な方法であることが判定できた。

一部 達成

C O 2 分離・回収技術の開発

CO2分離・回収技術に関するコスト低減方策を確立する。

既存の技術である化学吸収法において、吸収塔充填材の変更により建設費を3%削減できた。

達成

経済性検討

1.CO2の分離・回収、輸送、圧入、CH4回収、CH4売却に至るトータルシステムのコストを算出する。 2.実用化、事業化シナリオを構築し、経済性評価を行う。

年間100万t規模の事業化を想定し、CO2固定コストを試算した結果、同規模の帯水層貯留コストと比較して、CO2固定コストの面では優位であることが評価できた。

達成

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4.事業化、波及効果について 4-1 事業化の見通し 二酸化炭素炭層固定の事業化については、今回の予備実験の成果を基に、さらに規模を拡大した小規模、大規模実証試験による総合評価と、CO2分離・回収技術の低コスト化、実用化規模における経済性評価、さらに、環境影響評価と社会受容性の確保を行い、実用化試験を経て事業化となる。 本技術開発では事業化を想定したCO2圧入量の目標が未達成となったが、超臨界圧入、人工亀裂の形成、圧入圧力の見直しで目標が達成可能と想定されるが、試験規模を拡大した実証試験を実施し立証することが重要である。また、CO2固定を立証する技術として重要な圧入CO2の挙動を把握するモニタリング手法についても、CO2圧入量が少量であったため立証ができず、CO2圧入量の立証と同様に規模を拡大した実証試験の実施による立証が必要である。その他、個々の技術については、既存技術の適用、応用による事業化が可能であり、次のステップとなる実証試験で今回の成果を設計に反映させた試験により技術の確立が可能と考えられる。 また、事業化に必要な許認可・法的規制等の法令整備、CO2削減量の算出方法等と、社会受容に重要な安全性評価、環境影響評価における基準の制定等については、他の CCSの事業化も想定した総合的な政策、制度による環境整備が必要である。 4-2 波及効果 予備実験の成果である、確立した炭層へ圧入したCO2の漏洩の有無を確認するモニタ

リング技術については、他のCCS地中貯留技術への適応が可能である。この圧入したCO2の漏洩の判定については、CCSの事業化における社会受容においても必須事項として重要であり、既存技術を応用した比較的簡便な手法であることから、広く採用されることが期待される。 また、CO2圧入予備実験おいて炭層の膨潤緩和対策として効果を確認した、N2圧入

によるCO2の注入性向上およびCH4の増産効果については、世界初の現場実験による成果であり、今後各国で進められる実証試験等において広く活用されると予想され、国際的な地球温暖化対策の技術開発に寄与できると考える。 さらに、CO2圧入後にクリート開口圧力の上昇を確認したことについては、圧入圧力

の上げることによるCO2圧入量の大幅改善が期待できることであり、本件についても今後各国で進められる技術開発等における試験事項として寄与できると考える。 その他、国内外にCBM事業への活用や、CDM・JI対象案件としての採用も期待される等の波及効果が考えられる。 5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等 5-1 研究開発計画 本事業の研究期間は平成14年度から19年度までの6年間で、大学等の研究機関や企業による基礎研究、文献等による我が国の炭田におけるCO2固定可能量の調査、 CO2分離・回収コストの低減研究を行うと共に、平成16年度から4年間、我が国初のCO2圧入予備実験(モニタリング技術の検討含む)を実施した。また、経済性検討としてトータルシステムのコストについて検討を行った。なお、CO2圧入予備実験については、実験サイトの地質条件により実験孔井の掘削工程で、秋、冬季の季節条件からCO2の圧入工程を一部延長して行った結果、6年間を要した。なお実証試験については実施していない。図―5に研究開発のスケジュールを示す。

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10

図―5 研究開発計画

実 施 項 目 年度 H14 H15 H16 H17 H18 H19●基礎研究 ・CO2とCH4との置換メカニズムの解明

・CO2の炭層内挙動に関するシミュレーション開発他

・炭層へのCO2固定化最適条件の検討

・国内石炭層のCO2貯留ポテンシャルの推定

・CO2圧入予備実験における発生事象の解明

●予備実験 ・CO2圧入予備実験(CO2圧入CH4産出)

・モニタリング技術の検討

・CO2分離・回収技術のコスト低減に関する検討

●経済性に関する検討 ・コスト算出と事業化検討

●実証試験

5-2 研究開発実施者の実施体制・運営 本事業は、公募による選定審査手続きを経て、株式会社環境総合テクノスが経済産業省から補助事業者の通知を受けて実施した。実施に当たっては、本事業を統括するためのプロジェクトリーダー(CO2炭層固定化プロジェクト室室長 名子雅夫)を設置し、実施体制については、産官学連携体制を敷き実施した。具体的には基礎研究を大学と財団法人に、予備実験を財団法人、NPO、民間企業に委託し、共同実施体制を構築して実施した。また、技術開発の推進に当たっては、円滑な推進と最大限の成果を達成するため、有識者等の指導・助言と評価を受ける委員会を設置し、また、必要に応じてワーキング部会(以下WGという)を設置して推進した。その実施、推進体制を図-6に示す。また、成果の広報活動については、毎年成果報告会を実施すると共に、報道機関の取材に積極的に対応し予備実験の状況が新聞、TVで報道されCCSの社会受容に寄与している。

計 画 実 績

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11

図-6 研究開発実施・推進体制

取締役社長

今井 武

CO2炭層固定化プロジェクト室 室長

名子 雅夫

常務取締役

岩澤 隆

取締役企画総務部長

奥田 恒久

委 託 先

CO2炭層固定化プロジェクト室

環 境 部

土 木 部

技術開発担当

経理担当

取締役社長

今井 武

CO2炭層固定化プロジェクト室 室長

名子 雅夫

常務取締役

岩澤 隆

取締役企画総務部長

奥田 恒久

委 託 先

CO2炭層固定化プロジェクト室

環 境 部

土 木 部

技術開発担当

経理担当

経済産業省

(株)環境総合テクノスプロジェクトリーダー

CO2炭層固定化プロジェクト室長:名子 雅夫

*委員会・ワーキンググループ

(補助)

(委 託)

■基礎研究 ・北海道大学 ・秋田大学 ・早稲田大学 ・京都大学 ・(財)地球環境産業技術研究機構 ・(財)北海道科学技術総合振興センター

■予備実験 ・(財)石炭エネルギーセンター ・NPO シンクタンク京都自然史研究所 ・(独)産業技術総合研究所 ・関西電力(株) ・三菱重工業(株)

■経済性検討 ・(株)環境総合テクノス

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12

*委員会、ワーキンググループ体制

5-3 資金配分 本事業は6年間の補助金事業で約17億円を投入した。その事業費の推移を表―5に示す。本事業は基礎研究、予備実験、CO2分離・回収技術のコスト低減と経済性検討を行ったが、本技術開発の主テーマであるCO2の圧入とCH4の回収に関する基礎データの取得と技術の確立を目指した予備実験に事業費の多くを投入し、重点的な運用管理を行った。他テーマについても残された資金を重要度と進捗度に応じて適切に配分した。このように効率的に成果を得るため、研究テーマに応じた配分を行い適切な予算運用を行ってきた。

表―5 事業費推移 単位:百万円

年度 14 15 16 17 18 19 合計 基 礎 研 究 30 25 2 9 20 13 99 CO2圧入予備実験 162 156 303 222 357 170 1,370 モニタリング技術の検討 11 19 26 29 51 34 170 CO2分離・回収技術のコスト低減 12 14 26 経 済 性 検 討 6 9 11 7 8 4 45

合 計 221 223 342 267 436 221 1,710 5-4 費用対効果 平成14年度から6年間、事業費約17億円で技術開発を行ってきた。CO2を炭層に安定かつ安全に固定すると共に、CH4を回収する個々の技術の確立と、実用化、事業化

経済性検討WG (座長:前田京大准教授)

委員長会議

委員長は相互に出席

炭層水圧破砕 技術検討WG

(座長:佐藤東大教授)

現場実証試験 技術検討 WG

(座長:石島北大名誉教授)

CO2挙動探査 技術検討 WG

(座長:松岡京大教授)

基礎研究委員会 (委員長:田門京大教授)

モニタリング 技術検討 WG (座長:加賀阪大教授)

基礎研究 試験検討 WG (座長:薛京大講師)

現場実証委員会 (委員長:石島北大名誉教授)

推進委員会 (委員長:芦田京大名誉教授)

CO2圧入予備実験の

課題と進捗にあわせて

合同委員会を開催

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13

を目指した課題を把握し、検討した対策については効果が望めるものである。特に事業費の多くを投入した予備実験における成果とデータについては、今後の技術開発の計画、設計に反映できるものである。特に、CO2圧入予備実験おけるN2圧入による炭層の膨潤緩和と、CO2の注入性向上およびCH4の増産効果については、世界初の現場実験による成果であり、今後各国で進められる実証試験等において広く活用されると予想される。また、確立した炭層へ圧入したCO2の漏洩の有無を確認するモニタリング技術については、他の地中貯留技術に適用可能な技術である。この成果については、地球温暖化対策に関する国際的な技術開発に寄与できるものである。このように成果と技術を確立しており、本事業は費用対効果の点でも技術開発の意義があったと考える。 5-5 変化への対応 地球温暖化対策については、ポスト京都議定書に向けた論議が国際規模で本格化し、このような情勢のもと、我が国においては総理が平成19年5月に「クールアース50」を発表する等、中長期を見据えた対策を提案している。この中で重要課題とされているCCSについては温暖化対策技術として国際的に期待が高まり、積極的な技術開発、政策論議が進んでいる。また、エネルギー情勢においては昨年以来原油価格の高沸が続き史上最高値を更新しており、経済に与える影響が大きく、石油を巡る国際情勢は厳しい環境変化に直面している。 このように、現在本事業を取り巻く環境は事業開始当初から大きく変化し、本事業の重要性が高まっている。このような現状に対し本事業の開始当初は、研究開発に影響を及ぼすレベルの社会的・技術的情勢等、外的要因に大きな変化がなかったが、積極的に海外における技術開発の情報、動向を把握する取り組みを追加し、海外の関係技術者、従事者と意見交換等を行い予備実験への反映を図ってきた。また、実施体制についても平成17年7月に組織改正を行い、プロジェクトリーダーを部長職とする権限の拡大と、要員に地質技術者を補充し、実施体制の強化を図って取り組んだ。さらに、予備実験の進捗と課題に的確に対応するため、専門分野の経験者から成るワーキンググループの適宜設置と、専門職によるサポート体制を強化し推進を図った。その他、地球温暖化対策に関する社会的な意識向上に貢献するため、積極的な広報の実施と取材に対応しており予備実験の状況が新聞、TVで報道されCCSの社会受容に寄与している。

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資料 1-1

論文、発表、特許リスト

題目・メディア等 時期

論文 「未来材料」第2巻,第8号「CO2地中固定―地球温暖化防止とエネルギー問題の解決へ-」小出仁

H14.8

京都大学工学研究科が選ぶ先端技術のキーワード 114 選(日刊工業新聞)「二酸化炭素固定/吸収」 田門肇

H15.2

Greenhouse Gas Control Technologies「CARBON SEQUESTRATION IN COAL SEAMS IN JAPAN AND BIOGEOCHEMICAL CARBON CYCLE IN TERTIARY SEDIMENTARY BASINS」H.Koide, Z.Xue

H15.3

地圏長期評価研究協会会報(第 4号) 「二酸化炭素地中封鎖技術開発の世界的展開」小出仁 「地中メタン生成古細菌によるカーボン・リサイクルの提案」小出仁

H15.5

エネルギー・資源 第 25巻,第 3号「我が国炭田の二酸化炭素固定可能量調査について」山崎豊彦、小出仁

H16.3

日本エネルギー学会誌,第 83 巻,第 7号「コールベッドメタン(CBM)(Ⅳ)」山口伸次

H16.7

資源と素材 第 120 巻,第 8号「CO2炭層固定化に関連した石炭試料の浸透率およびガス吸着量」佐々木久郎、藤井孝志、山口伸次、大賀光太郎、服部剛冶、岸靖之

H16.8

クリーンエネルギー 第 13 巻,第 12 号「CBMシミュレーション」山口伸次

H16.12

資源と素材 第 121 号,第 9号「二酸化炭素炭層固定化技術開発における圧入予備実験について」名子雅夫、小牧博信、藤岡昌司

H17.7

ICMR2005「The CO2 Sequestration Project in Coal Seams in Japan」Shinji Yamaguchi, Masaji Fujioka, Masao Nako

H17.10

日本エネルギー学会誌 第 85 巻,第 2号「我が国の炭層ガス資源量とその温暖化対策への活用―新しいガス・ソース+CO2シンクとしての深部炭層」小出仁

H18.2

Int.J.Soc.Mater.Eng.Resour.Vol.13,No.2,「Field Test and History Matching of the CO2 Sequestration Project in Coal Seams in Japan」Shinji Yamaguchi, Kotaro Ohga, Masaji Fujioka, Masao Nako

H18.3

ペテロック第 29 巻,第 5号「二酸化炭素炭層固定化技術開発CO2圧入予備実験の実施状況」小牧博信

H18.5

地質ニュース第 621 号「二酸化炭素炭層固定化技術開発CO2圧入予備実験について」小牧博信

H18.5

配管技術 第 48 巻,第 14 号「二酸化炭素炭層固定化技術開発の現状CO2連続圧入試験の状況について」小牧博信、川端秀樹、名子雅夫

H18.12

日本エネルギー学会誌 第 86 巻,第 2号「石狩炭田におけるCO2炭層貯留とECBM実験のヒストリーマッチング」山口伸次、大賀光太郎、藤岡昌司、名子雅夫

H19.1

フィッション・トラック・ニュースレター 第 20 号「二酸化炭素炭層固定の再の 222Rn・220Rn娘元素の測定による二酸化炭素漏洩のモニタリング方法」西村進、桂郁雄、藤田眞仁、西田潤一、小牧博信、名子雅夫

H19. 1

資料1

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資料 1-2

題目・メディア等 時期

論文 クリーンエネルギー 第 17 巻, 第 1 号「CO2炭層固定化技術開発の現状と経済性評価について」小牧博信、松見哲幸、名子雅夫

H20.1

発表 第1回国際ワークショップ(CO2炭層固定化の現状と見通し) 「Development of MGF Software Series on Multiphase Flows in Porous Media-Establishment of MGF2 by 3D finite element method」

Masaru Sato,Shinji Yamaguchi 「二酸化炭素固定化技術開発の紹介」小牧博信 「Fundamental Tests on CO2 Sequestration in Coal Seams and CH4 Displacement」K.Ohga

H14.9

平成 14 年度資源・素材関係学協会合同秋季大会「二酸化炭素固定化技術開発

におけるモニタリングの概要」 小牧博信 H14.9

第 6 回温室効果ガス管理国際会議(GHG-6) 「Fundamental Tests on Carbon Dioxide Sequestration into Coal Seam」K.Ohga,K.Sasaki,G.Deguchi,M.Fujioka 「日本の炭層における炭層隔離など」小出仁

H14.10

平成 15 年度資源・素材関係協会春季研究・業績発表会 「CO2炭層固定に関する基礎的研究-CO2超臨界処理による固定量向上について」萩原研志、大賀光太郎、樋口澄志 「二酸化炭素ガスを用いた石炭のガス浸透率の測定」松本匠、大賀光太郎、樋口澄志 「CO2による石炭のメタン置換に関する研究」長井研、大賀光太郎、樋口澄志 「石炭および周辺地層サンプルのCO2ガス透過および吸着特性」佐々木久郎、藤井孝志、服部剛治、岸靖之

H15.3

International Coalbed Methane Symposium 「Characterizations of Gas Adsorption and Gas Replacement of Coal Treated by CO2 Under Super Critical Conditions」 K.Ohga and K.Higuchi

H15.5

The 22nd World Gas Conference「CO2 SEQUESTRATION IN COAL SEAMS WITH CO2-ENHANCED GAS RECOVERY AND IN SITU FIRE-FREE GASIFICATION OF COAL」 H.Koide

H15.6

平成 15 年度石油技術協会春季講演会「E-CBMとCO2の炭層隔離に関する基礎研究」山口伸次、加藤康生、小田桐聡子

H15.6

財団法人 日本鉱業協会「地球温暖化ガス固定化技術開発に関する調査研究委員会平成 15 年度講演会」 小出仁

H15.7

第 12 回日本エネルギー学会大会 「石狩炭田におけるCBM開発に関するシミュレーション」山口伸次、大賀光太郎 「CO2ガスによるECBMRに関する基礎試験」 長井研、大賀光太郎、樋口澄志 「CO2超臨界流体注入による炭層CO2固定とCH4回収に関する基礎的研究」 萩原研志、大賀光太郎、樋口澄志

H15.7

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資料 1-3

題目・メディア等 時期

発表 第 17 回日本吸着学会研究発表会「二酸化炭素の炭層固定に関する基礎研究」田門肇

H15.9

平成 15 年度資源・素材関係学協会合同秋季大会 「CO2炭層固定化に係わる数値シミュレーション技術」 山口伸次 「CO2炭層固定化に関連した石炭試料のガス吸着量および浸透率」大賀光太郎、佐々木久郎 「日本におけるCO2炭層固定化ポテンシャル評価」小出仁、山崎豊彦 「CO2炭層固定化技術開発予備実験フィールドの評価と掘削状況」平澤博昭

H15.9

第 2 回国際ワークショップ(CO2炭層固定化に関連する諸研究) 「Adsorption Characteristics of Carbon Dioxide and Methane on coal」田門肇 「Laboratory measurements on swelling in coals caused by adsorptuon of carbon dioxide and its impact on permeability」薛自求 「日本におけるCO2炭層固定化パイロット試験」藤岡昌司

H15.9

GEO-SEQ Project,3rd Workshop on “Numerical Modeling of Enhanced Coalbed Methane(ECBM)Recovery” 「ECBM Modelling in japan」山口伸次

H15.9

早稲田大学工総研 温室効果ガス地層内封鎖技術開発研究会「二酸化炭素炭層固定化技術開発の現状」小牧博信

H15.12

第 20 回エネルギーシステム・経済環境コンファレンス「炭層固定におけるCO2吸着に伴う石炭試料の体積膨張について」薛自求、大隅多加志

H16.1

第 4 回北海道エネルギー資源環境研究発表会 「CO2による石炭のメタン置換に関する基礎的研究」長井研、大賀光太郎、樋口澄志 「CO2超臨界下での石炭の吸着特性に関する基礎的研究」萩原研志、大賀光太郎、樋口澄志

H16.2

3rdInternational Forum on Geologic Sequestration of CO2 in Deep Unmineable Coalseams 「CO2-Coal Sequestration Project in JAPAN」 Hironobu Komaki

H16.3

物理探査学会(二酸化炭素の地層隔離に関するフォーラム) 「CO2炭層固定化技術開発について」武藤成生 「CO2炭層固定-基礎理論-」向井紳 「CO2炭層固定化に関する数値シミュレーション」山口伸次 「CO2による石炭のメタン置換に関する基礎的研究」大賀光太郎 「CO2炭層固定化現場(夕張)予備実験」藤岡昌司

H16.3

平成 16 年度資源・素材学会春季大会 「我国の深部非可採炭層へのCO2固定の大きな可能性」小出仁 「CO2炭層固定化に関連した石炭サンプルのガス浸透率と吸着特性」佐々木久郎 「CO2吸着に伴う石炭試料の体積膨張による浸透率低下について」薛自求 「二酸化炭素炭層固定化技術開発における二酸化炭素圧入予備実験の現状と課題」名子雅夫

H16.3

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資料 1-4

題目・メディア等 時期

発表 2004 International Coalbed Methane Symposium「Prospect of Coalbed Methane Gas Production from the Ishikari Coal Field in Japan」Yamaguchi,S., Ohga,k., Fujioka,M.,

H16.5

平成 16 年度石油技術協会春季講演会 「石狩炭田におけるCO2炭層固定プロジェクト」山口伸次、大賀光太郎、藤岡昌司、武藤成生 「石狩炭田からのコールベッドメタンガス生産に関する研究」清水崇、山口伸次、大賀光太郎、藤岡昌司

H16.6

第 13 回日本エネルギー学会「石狩炭田からのECBM生産」山口伸次、清水崇、大賀光太郎、藤岡昌司

H16.7

物理探査セミナー「二酸化炭素炭層固定化技術開発動向」小牧博信 H16.7

CCTワークショップ「CO2炭層固定化技術開発について」武藤成生 H16.8

7th International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies 「Prospect of CO2 Sequestration in Ishikari coal mine,Japan」Shiji Yamaguchi, Kotaro Ohga, Masaji Fujioka 「Coal matrix swelling caused by adsorption of carbon dioxide and its impact on permeability」(ポスター)Ziqiu Xue 「Characteristics of CO2 Gas Permeability and Adsorption of Coal Samples for CO2 Sequestration into Japanese Coal Seams」(ポスター)Kyuro Sasaki 「Characteristics of Adsorption and Replacement of Shuparo MineCoals」(ポスター)kotaro Ohga

H16.9

平成 16 年度資源素材学会秋季大会 「二酸化炭素炭層固定化技術開発の現状と課題について」名子雅夫 「石狩炭田におけるCO2圧入予備実験の現状報告」藤岡昌司、山口伸次

H16.9

第 3 回国際ワークショップ(CO2炭層固定化に期待される役割) 「二酸化炭素炭層固定化技術開発の概要とモニタリングについて」名子雅夫、小牧博信 「JCOP圧入予備実験の結果」藤岡昌司、山口伸次

H16.10

第 14 回石炭利用技術会議「CO2炭層固定化技術開発について」藤岡昌司 H16.12

RECOPOL International Workshop on CO2 Sequestration in Coal Seams「Pilot Test of CO2 Sequestration and ECBM in Japan」Ohga,K., Fujioka,m., Yamaguchi,S.,

H17.3

平成 17 年度石油技術協会春季講演会 「石狩炭田におけるCO2炭層固定化技術開発の現状」山口伸次、藤岡昌司、名子雅夫 「石狩炭田におけるCO2圧入生産テストのヒストリーマッチング」山口伸次、井上博文、清水崇、大谷琴枝、藤岡昌司、名子雅夫

H17.6

日本機械学会 2005 年度年次大会「石狩炭田におけるCO2炭層固定化技術開発」山口伸次、藤岡昌司、名子雅夫

H17.9

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資料 1-5

題目・メディア等 時期

発表 資源・素材(室蘭) 「二酸化炭素炭層固体化技術開発」名子雅夫、小牧博信、藤岡昌司 「石狩炭田におけるCO2圧入予備実験のヒストリーマッチング」山口伸次、小早川洋幸、井上博文、清水崇、藤岡昌司、名子雅夫

H17.10

第 35 回石油・石油化学討論会「石狩炭田におけるCO2炭層固定化プロジェクト」山口伸次、藤岡昌司、名子雅夫

H17.10

IEA CCC Workshop on the interactions of gases with coal 「JAPAN CO2 Geosequestration in Coal Seams Project(JCOP)」Hironobu Komaki

H17.10

International Conference on Coal Science and Technology 「Pilot Test of CO2 Sequestration and ECBM at Shuparo Mine in Japan」Ohga,K., Fujioka,m. Yamaguchi,S. Nako,M.

H17.10

エネルギー・資源学会「二酸化炭素炭層固定化技術開発の現状と課題」名子雅夫

H17.10

NPOシンクタンク京都自然史研究所講演会「二酸化炭素炭層固定化技術開発について-現状と課題-」小牧博信

H17.12

APEC Clean Fossil Energy Technical and Policy Seminar 「JAPAN CO2 Geosequestration in Coal Seams Project(JCOP)」Fumio Takahashi

H18.2

CBM研究会「日本における二酸化炭素炭層固定化技術開発の現状と課題(夕張での圧入予備実験の実施状況につて)」小牧博信

H18.2

資源・素材学会春季大会「夕張CO2炭層固定とECBM試験」大賀光太郎、本位田篤生、山口伸次、藤岡昌司、名子雅夫

H18.3

1st International Conference on Indonesia’s Coalbed Methane Gas Development「Japan CO2 Sequestration in Coal Seams Project(JCOP)」Fujioka,M., Yamaguchi,S. Nako,M.

H18.4

2006 International Coalbed Methane Symposium「FIELD TESTS OF CO2 SEQUESTRATION AND ECBM IN JAPAN」Kotaro Ohga, Masaji Fujioka, Shinji Yamaguchi, Masao Nako

H18.5

平成 18年度石油技術協会春季講演会 「石狩炭田におけるCO2炭層固定化技術開発の現状」山口伸次、大賀光太郎、藤岡昌司、名子雅夫 「石狩炭田におけるCO2圧入-CBM生産テストのヒストリーマッチング」山口伸次、小早川洋幸、清水崇、井上博文、矢野基

H18.5

8th International Conference on Greenhouse Gas Control Technologies 「Field Experiment of Japan CO2 Geosequestration in Coal Seams Project(JCOP)」Yamaguchi,s., Ohga,K. Fujioka,M. Nako,M. Muto,S. 「Pilot Test of CO2 Sequestration and ECBM in Japan」Ohga,K., Fujioka,M. Yamaguchi,S. Nako,M.

H18.6

分離技術会 第 34 回夏季研究検討会「日本における二酸化炭素炭層固定化技術開発の現状と課題(CO2圧入予備実験の実施状況について)」 小牧博信

H18.8

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資料 1-6

題目・メディア等 時期

発表 日本機械学会 2006 年度年次大会「石狩炭田におけるCO2炭層固定化技術開発の現状」山口伸次、大賀光太郎、藤岡昌司、名子雅夫

H18.9

大環協 第 23 回環境測定技術事例発表会 「二酸化炭素炭層固定化技術開発におけるモニタリング技術」口頭発表山本茂夫、藤田眞仁 「二酸化炭素炭層固定化技術開発」ポスター 藤田眞仁

H18.9

資源・素材学会春季大会「二酸化炭素炭層固定化技術開発CO2圧入予備実験について」名子雅夫、小牧博信、藤岡昌司

H19.2

資源・素材学会秋季大会 「二酸化炭素炭層固定化技術開発の現状と経済性評価について」小牧博信、藤田眞仁、松見哲幸、名子雅夫 「二酸化炭素の炭層固定化とメタンガス回収」藤岡昌司、平澤博昭、名子雅夫

H19.9

日本機械学会 2007 年度年次大会「二酸化炭素炭層固定化技術開発CO2圧入予備実験について」小牧博信

H19.9

天然ガス高度利用研究会第 13 回フォーラム「二酸化炭素炭層固定化技術開発について」名子雅夫

H20.3

資源・素材学会春季大会「二酸化炭素炭層固定化技術開発予備実験の成果と課題について」小牧博信、松見哲幸、藤田眞仁、川端秀樹、山本茂夫、名子雅夫、藤岡昌司

H20.3

特許 特願 No.2003-98717 号 炭層ガスの地中固定におけるガスモニタリング装置およびガスモニタリング方法

H18.9 登録

特願 No.2003-123666 号 非燃焼方式原位置炭層ガス化回収方法及び非燃焼方式地下有機物・化石有機物原位置ガス化回収方法

H15.4 出願

特願 No.2005-232136 号 二酸化炭素ガスの地中浸透モニタリング方法 H17.8 出願

特願 No.2006-278793 号 γ線スペクトロメトリー法を用いた二酸化炭素の地中浸透モニタリング方法

H18.10 出願

特願 No.2007-040415 号 二酸化炭素漏洩モニタリング装置及び二酸化炭素漏洩モニタリング方法並びに二酸化炭素の地中固定方法

H19.2 出願

特願 No.2007-72534 号 高浸透性ガスによるCO2圧入性向上技術 H19.3 出願

γ線サーベイメータを用いた二酸化炭素の地中浸透モニタリング方法 H120.3 出願

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「二酸化炭素炭層固定化技術開発」の

総合評価について

資料―2

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目 次

1.二酸化炭素炭層固定化技術開発の概要

(1)特 徴···································································································································· 1

(2)技術開発の目的および目標············································································································ 1

(3)技術開発の検討課題および具体的方策····························································································· 2 2.二酸化炭素炭層固定化技術開発の実績工程····························································································· 3 3.CO2圧入予備実験の実施状況··············································································································· 4 4.二酸化炭素炭層固定化技術開発の総合評価

(1)成 果···································································································································· 5

(2)評 価···································································································································· 5

(a)基礎研究 ·································································································································· 6

(b)CO2圧入予備実験 ······················································································································ 7 ~ 14

(c)モニタリング技術検討 ················································································································ 15

(d)経済性検討 ······························································································································· 16

5.資料集··········································································································································添付

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1.二酸化炭素炭層固定化技術開発の概要

(1)特 徴 ・ガスの吸着特性を利用して、二酸化炭素(以下 CO2)を石炭層(以下炭層)に固定させるとともに、炭層に包蔵されているメタン(以下 CH4)を CO2

と置換し、クリーンエネルギーとして回収する。 ・国内には豊富な未採掘の炭田が存在し、未利用炭層ガスが豊富に残されている。本技術は、CO2固定と、CH4回収を実現する一石二鳥の CO2削減技

術である。 (2)技術開発の目的および目標

二酸化炭素炭層固定化技術の概念図

( 目 的 ) ( 目 標 ) ( 個 々 の 技 術 開 発 )

経済的なトータル

システムの構築

( 経 済 性 の 評 価 )( 経 済 性 の 評 価 )

大規模CO2発生源の排ガスからCO2を分離回収し、 炭層に安定かつ安全にCO2を固定すると共に、 CH4を回収する個々の技術を確立する。

確立した個々の技術で構築した、経済的なトータルシステムの実用化・事業化の見通しを得る。

CO2分離回収・回収技術のコスト低減

CO2圧入技術

CH4回収技術

基礎研究・置換メカニズム解明・シミュレーション開発

CO2圧入実験

・圧入,産出技術の開発・CO2注入性,CH4産出試験

モニタリング技術・環境モニタリング・炭層内CO2挙動モニタリング

システム検討・経済的な

最適トータルシステム構築

事業化検討 CO2固定ポテンシャル・我が国のCO2固定可能量

( 目 的 ) ( 目 標 ) ( 個 々 の 技 術 開 発 )

経済的なトータル

システムの構築

( 経 済 性 の 評 価 )( 経 済 性 の 評 価 )

大規模CO2発生源の排ガスからCO2を分離回収し、 炭層に安定かつ安全にCO2を固定すると共に、 CH4を回収する個々の技術を確立する。

確立した個々の技術で構築した、経済的なトータルシステムの実用化・事業化の見通しを得る。

CO2分離回収・回収技術のコスト低減

CO2圧入技術

CH4回収技術

基礎研究・置換メカニズム解明・シミュレーション開発

CO2圧入実験

・圧入,産出技術の開発・CO2注入性,CH4産出試験

モニタリング技術・環境モニタリング・炭層内CO2挙動モニタリング

システム検討・経済的な

最適トータルシステム構築

事業化検討 CO2固定ポテンシャル・我が国のCO2固定可能量

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(3)技術開発の検討課題および具体的方策

※数値目標は、事業化モデルシミュレーションから想定した、事業として成り得る必要量

技術開発項目 検 討 課 題 目 標 設 定 具 体 的 方 策

CO2圧入量:5t/日以上

超臨界での圧入

CO2圧入、CH4産出技術

モニタリング技術

CH4産出量:600Nm3/日以上

探査方法の確立

測定方法の精度向上

CO2を効率良く炭層に圧入する

炭層に圧入した CO2

の挙動を把握する

実験工程において、環境に影響がないことを検証する

N2注入による注入性向上

人工亀裂形成による注入性向上

N2注入による産出性向上

スキンファクター (目詰り)改善による産出性向上

高精度傾斜計、トモグラフィー、微重力、極微小地震測定等の検証

土壌ガス、地下水、 水準測量、傾斜計により調査、測定評価手法の検討

CH4をより多く産出させる

基礎研究技術

CO2の吸着挙動を解明する

石炭試料の吸着試験等を行い数値モデルを構築する

フィールド実験の現象を解明する

窒素ガス(以下N2)注入による注入性向上を室内実験で検証

※(数値目標)

技術開発項目 検 討 課 題 目 標 設 定 具 体 的 方 策

CO2圧入量:5t/日以上

超臨界での圧入

CO2圧入、CH4産出技術

モニタリング技術

CH4産出量:600Nm3/日以上

探査方法の確立

測定方法の精度向上

CO2を効率良く炭層に圧入する

炭層に圧入した CO2

の挙動を把握する

実験工程において、環境に影響がないことを検証する

N2注入による注入性向上

人工亀裂形成による注入性向上

N2注入による産出性向上

スキンファクター (目詰り)改善による産出性向上

高精度傾斜計、トモグラフィー、微重力、極微小地震測定等の検証

土壌ガス、地下水、 水準測量、傾斜計により調査、測定評価手法の検討

CH4をより多く産出させる

基礎研究技術

CO2の吸着挙動を解明する

石炭試料の吸着試験等を行い数値モデルを構築する

フィールド実験の現象を解明する

窒素ガス(以下N2)注入による注入性向上を室内実験で検証

※(数値目標)

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2.二酸化炭素炭層固定化技術開発の実績工程 3

炭層へのCO2固定化最適条件の検討

CO2とCH4の置換メカニズムの解明

炭層における固定可能なCO2量の調査

CO2の炭層内挙動に関するシミュレーション開発および数値モデルの検証

CO2炭層内挙動モニタリングに関する検討

圧力応答試験

N2・CO2間欠圧入試験N2圧入試験

産 出 試  験

水圧破砕・注水試験

産 出 試 験産  出  試   験

温度検層 温度検層

環 境 モ ニ タ リ ン グ

地 盤 変 位 モ ニ タ リ ン グ( 傾 斜 計 測 定 )

環 境 モ ニ タ リ ン グ 環 境 モ ニ タ リ ン グ

ガンパー施工

微重力・極微小地震

微重力

微重力・極微小地震

CO2連続圧入試験

ハフパフ試験

揚 水 試 験注水/フォールオフ試験ステップレート試験

物理検層

試 錐

コアリング

サイト選定・許認可申請

産出試験

揚水試験

物理検層

試 錐

試錐準備

孔井位置選定・許認可申請

試錐準備

注入性改善試験

第1回中間評価(2/15)

環境モニタリング 環 境 モ ニ タ リ ン グ

炭層内におけるCO2吸着に伴う浸透率変化の解明

超 臨 界 CO2 の 吸 着 特 性 の 検 討

CO2連続圧入試験 CO2連続圧入試験 CO2連続圧入試験

(パーフォレーション施工後)

補助事業者決定(7/18)

孔井埋戻し、サイト復旧

フォローアップ評価(3/2)

注 入 性確認試験

サーマルチューブ一部追設

サーマルチューブ全区間追設

孔内洗浄フラッシング

孔内カメラ観測

孔内カメラ観測

孔内浚渫

極 微 小 地 震

N2・CO2混合圧入試験

N2圧入

ステップレート試験(CO2) (水)

チュービング回収

孔内浚渫

ポンプ撤去

◆★ ◆

成果報告会(10/3)●

成果報告会(8/31)●

成果報告会(12/7)●

成果報告会(12/6東京)

ガンパー追加施工

交付決定(8/7)▼ ●

成果報告会(11/21) 成果発表会(12/17札幌)●

CO2注入時の弾性波速度変化に関する検討

微 重 力

モニタリング方法検討

コスト低減技術の開発・現場試験および評価

項 目 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度

圧 入 井

観 測 井

モニタリング

CO2 分離回収

基 礎 研 究

備  考

孔井埋戻し、サイト復旧

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3.CO2圧入予備実験の実施状況 4

圧入が進むにつれN2の注入性が大幅に向上し(最大:6.7t/日)

、12日後にブレークスルーを確認した。 (浸透率が大幅に改善)

僅かではあるが、CO2の注入性が向上した。

N2圧入により、孔井近傍の注入性が向上し、一時的にCO2圧入

量が倍増(最大:6.6t/日)したが、CO2圧入による膨潤が極めて

早く発生し、その後は、3t/日前後の圧入となった。

N2圧入により、CH4産出量が増加(最大:700Nm3/日)し、短期

間であるが目標レベルを達成した。  その後は、除々に低下し

500Nm3/日前後の産出となった。

微粉炭噴出後の注入性は極めて低く、開始当初は、0.5t/日で 徐々に増加したが最終は1.9t/日の圧入であった。 (微粉炭による生産障害を招いた可能あり)

1.CO2の連続圧入試験

   5月29日~10月1日    (水圧破砕後)   *項目4,5の期間も含む

・水圧破砕後の初期圧入量は1.6t/日で、H17年度初期の状況に類似している。

・電気加熱ヒーター使用による孔底部での圧入CO2の状態は、 超臨界まで達していないが、孔底と孔口の差圧は、

 当初7.7MPaであったのが6.6MPaまで低下した。

・CO2の圧入量も徐々に増加し、ピークで3.8t/日に達した。

2.CH4 産 出 試 験産出量は、当初100Nm

3/日であったものが、CO2圧入により徐々に増加しピークでは、昨年と同様500Nm

3に達して

いる。(増産効果は見られている)

3.N2 - CO2 混合圧入試験

   9月24日~29日

混合圧入試験におけるCO2圧入量については、シミュレーション通り増加はわずかである。

(産出ガスの増産効果については、10日目頃から傾向がみられた)

4.ステップレート試験

  CO2 : 9月30日

  水 : 10月 9、10、11日

ステップレートにより孔底圧力を19MPaまで上昇させたが、クリート開口による明瞭な圧力変動は確認できなかった。また、極微小地震計による観測においても、顕著な変動は確認されなかった。 さらに、水圧によるステップレート試験を実施するも、19MPaまででクリート開口を示す圧力変化は確認できなかった。

5.N2 圧 入

    10月1日~4日

クリート開口圧力の変化がCO2吸着による膨潤が原因と考えた場合、CO2の吸着量を減少させ膨潤を解除すれば、

クリート開口圧力が初期値に近くなると想定し、膨潤を軽減させるためにN2を圧入した。

(N2総圧入量;3,912.3kg)

  CO2 圧 入 ・ ガ ス 産 出 試 験 状 況 [ H16年度~H19年度 ]

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

11/17 11/27 8/30 9/9 9/19 9/29 10/9 4/18 5/8 5/18 5/28 6/7 6/17 6/27 7/7 7/17 7/27 8/6 8/16 8/26 9/5 11/6 11/16 6/4 6/14 6/24 7/4 7/14 7/24 8/3 8/13 8/23 9/2 9/12 9/22 10/2

月/日

圧入量(kg)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

産出量(Nm3)

H16年度 H17年度

CO2圧入量 : 121.2t

ガス 産出量 : 24,285Nm3

CO2圧入量

: 35.7tガス 産出量

: 8 ,708Nm3

CO2圧入量 : 356.2 t

ガス 産出量 : 67,751Nm3

N2 圧入量 : 34.8 t

CO2圧入による

増産効果:約5倍

増しガンパー(7/22 ) チュービング低温域(0~180m)  サーマルチューブに変更(8/21~23)

孔井内温度検層(8/4~7)チュービング孔底部(690~890m)  サーマルチューブに変更(5/3~6)

N2圧入による効果

水圧破砕(5/16)

微粉炭・ドライアイス噴出(9/16) 全区間サーマルチューブに変更及び   電気ヒーター取付け(5/25~27)

N2・CO2間欠圧入試験

(8/18~26)孔井内温度検層(8/28)

電気ヒーター使用による圧入(7/19~)

試 験 結 果

1.CO2連続圧入試験

    8月26日~10月6日

CO2圧入量は、当初1.6 ~ 1.7 t/日以下であ

ったが、除々に増加しピークでは3.5t/日とな った。

2.CH4 産 出 試 験

ガス産出量は、CO2圧入前では73Nm3/日で

あったが、CO2圧入以降除々に増加しピーク

では370Nm3/日となった。

H17年度

1.N2圧入試験

    5月10日~19日

2.N2・CO2間欠圧入試験

    8月18日~26日

3.CO2連続圧入試験

    5月25日~8月18日    8月28日~9月11日

4.CH4 産 出 試 験

5.CO2 注 入 性 確 認

    11月1日~15日

H18年度 H19年度

H18年度 H19年度

CO2圧入量(kg)

N2注入量(kg)

CH4産出量(Nm3)

N2圧入試験(5/10~19)

N2・CO2混合圧入試験(9/24~29)ステップレート試験

CO2(9/30)、水(10/9~11)

CO2圧入量 : 371.0t

ガス 産出量 : 49 ,928Nm3

N2 圧入量 : 4 .86t

N2圧入(10/1~4)

日換算10t/日で圧入

[ 累 積 ]

ガス 産出量 : 32,993Nm3

CO2圧入量 : 156.9t

[ 累 積 ]

ガス 産出量 : 100,744Nm3CO2圧入量 : 513.1t

[ 累 積 ]

ガス 産出量 : 150,672Nm3

CO2圧入量 : 884 .1t

: シャットイン

IW-1炭層状態

: 水 没: 揚水ポンプ点検・調整

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4.二酸化炭素炭層固定化技術開発の成果および評価 (1)成 果

・我が国最初の炭層への CO2固定と CH4産出を実現し、CO2圧入による CH4の増産 (約 5 倍 )効果を確認した。 ・CO2吸着により石炭が膨潤し、CO2の注入性が低下することがわかった。また、N2が石炭の膨潤を緩和することに着目し、炭層

に N2を注入することによって、膨潤緩和(収縮現象)を確認した。さらに、N2圧入による CO2の注入性向上および CH4が増産

(約 9 倍 )することも確認した。 ・炭層へ圧入した CO2の漏洩の有無を確認するモニタリング技術として、土壌中の CO2と O2濃度を連続測定することで、微生物

の活動による CO2の増加量を特定し、CO2の漏洩を判定する手法を確立した。 (2)評 価

本技術開発の目標は、炭層に CO2を効率良く圧入し、炭層に吸着している CH4と置換させるとともに、脱着した CH4をより多く産出させること

である。なお、当初計画では圧入した CO2が観測井に到達(ブレークスルー)することを確認する予定であったが、CO2圧入量が少なかったため、

ブレークスルーの確認はできなかった。 以下に本技術開発全般の評価と課題を総括し、以降(a)基礎研究、(b)CO2圧入予備実験、(c)モニタリング技術検討および(d)経済性検討に区分し個々の評価を行う。

検 討 課 題 数 値 目 標 目 標 達 成 度 評 価 課 題

CO2を 効率良く炭層に圧入する。

CO2 圧 入 量 5t/日以上 △

・実験期間を通じ3t/日程度 ・ピークで4.3t/日に達したが 目標達成度は不十分

・実験サイトの地温が低かったため、圧

入した CO2が液化(超臨界にならな

かった)したことや、CO2吸着による

石炭の膨潤が浸透率を低下させたこ

と等が影響し、目標が達成できなかっ

た。

・CO2圧入サイト選定に際しては、地層に加え

て地温を考慮する必要がある。 ・N2注入により石炭の膨潤緩和が確認できたが、

この効果を継続させる方策が必要である。 ・注入性改善策の最終手段として、CO2圧入後に

水圧破砕を実施したが不首尾に終わった。

今後、実施する場合は、孔井の設計段階から仕

様に反映すべきであり、炭層の状況を十分把握

しておく必要がある。

CH4を より多く産出させる。

CH4 産 出 量 600Nm3/日以上 ○

・平成 18年度実績値 500Nm3/日以上を達成

・N2圧入により600Nm3/日以上 を達成

・概ね目標を達成し将来の CBM事業に期待することができる。 ※ 参 考

1孔井で標準家庭約500軒分のCH4産出が

達成できた。

・事業化の見通しを得るには、CH4産出性を更に

向上させることが望まれ、孔井近傍(炭層付近)

で発生した生産障害を防止する対策が必要であ

る。

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(a)基 礎 研 究 検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題

吸着試験 Langmuir体積、Langmuir圧力の算出

超臨界領域での CO2吸着平衡

・重量法高圧吸着装置を用いて Langmuir定数を算出した。 (ただし、温度条件は 30℃) CO2 Langmuir体積:44(ml/g), Langmuir圧力:972(kPa) CH4 Langmuir体積:28(ml/g), Langmuir圧力:1,785(kPa) N2 Langmuir体積:22(ml/g), Langmuir圧力:6,564(kPa)

・超臨界領域では石炭の表面過剰量はCO2密度が最も変化する圧力で極大を示し、CO2固定に最適な圧力があることが確認できた。

石炭層内のCO2流動および吸着挙動の解明

数値モデルの構築 室内実験で得られた種々の物性値を用いた数値モデル(石狩モデル)の構築および現場実験データに基づく数値モデルの改良

石狩モデルを用いた CO2の炭層内挙動の解明

・室内実験データおよび現場実験データを基に石狩モデルを構築した。 ・石狩モデルの改良を行い、ガス吸脱着による浸透率変化を考慮したモデルとし、圧入圧力および産出孔底圧をパラメータ入力することにより、CO2 圧入量およびガス・水産出量の推測が可能となった。 ・石狩モデルにより、経済性検討の条件における CO2圧入量、CH4産出量を予測した。 ・CO2およびN2圧入によるCH4の増産効果を確認した。 ・CO2吸着により浸透性が低下することが石狩モデルで推測された。 ・石狩モデルでは、石炭へ圧入した約 90%の CO2が吸着したと推測された。

・超臨界 CO2 圧入の場合の石狩モデルへの適応を検討する必要がある。

国内石炭層のCO2貯留ポテンシャルの推定

固定可能量調査 既存の炭田および未開発炭田の CO2固定可能量および CH4資源量を推定

・日本列島および周辺海域の既存の地質データおよび堆積盆地の調査結果を精査し、既存炭田および未開発炭田の合計石炭埋蔵量は 1,200m以浅で約 275億㌧、CBM資源量は約2,431億m3、CO2固定可能量は約 10億㌧と推算された。

・深度 1,200m~3,000m の炭層への CO2固定可能量は、約 100億㌧と推算されたが、1,200m 以深の炭田データについて、精度向上およびデータの検証を行う必要がある。

現場実験で発生した事象を室内実験で検証

ひずみ変化および弾性波速度変化

地下の応力条件下での CO2吸着・脱着に伴うひずみ、浸透率変化および弾性波速度変化を測定

・CO2吸着に伴う膨潤を室内実験で確認できた。 ・有効封圧の変化に伴うひずみ変化と比較して、CO2 吸着に伴う膨潤が十分大きいことを室内実験で確認できた。 ・現場で発生していた CO2吸着時の浸透率低下を室内実験で検証できた。 ・N2注入時に CO2注入時と同程度の収縮ひずみが発生し、膨潤が回復する現象を室内実験で確認できた。しかし、CO2 注入時に低下していた浸透率は、回復しなかった。また、弾性波速度もN2注入時に変化はなかった。 ・CO2 の再注入時、再度、膨潤ひずみが発生したが、浸透率および弾性波速度に変化はなかった。 ・CO2吸着による石炭の膨潤量を計測したところ、主に垂直方向に 0.8~1.0%膨潤することがわかった。

・同一地点の石炭の測定データを蓄積する必要がある。 ・ひずみ拘束条件(現場実験と同一条件)下での実験方法を検討する必要がある。

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(b)CO2圧入予備実験

検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 予備実験サイトの選定 既存データによる最適

な予備実験サイトの検討

平成9年度NEDO海外炭輸入基盤整備促進調査-国内 CBM 資源調査可能性調査報告書による各地域での石炭埋蔵量、CH4 湧出量、排水量と地元合意形成等から総合的に評価した。

・地域の選定 下記の評価に基づき、北海道を選定した。

・炭田の選定 下記の評価に基づき、石狩を選定した。 ・予備実験場所の選定 下記の評価に基づき、石狩炭田南部(夕張)を選定した。

・今回の実験の圧入井近傍には、温度の低い地下水が流れており、地温を低下させていた。そのため、圧入した CO2が冷却され液化し、CO2注入性が低下したと推測されたので今後の事業化におけるサイト選定に際しては、地温も重要な要因として評価する必要がある。

石炭埋蔵量(億t)

石炭1t当りのメタン湧出量

(m3/t)

石炭1t当りの排水量

(m3/t)地元合意形成の難易度 総 合 評 価

102国内主要炭田4ケ所分布

21~103(釧路・石狩)

0.3~2.4 ・炭田が比較的住居から離 れている。・最近まで、操業されてお り、地元の同意が得易い。

北海道

・メタン湧出量が多く、排 水量が少ない。・地元合意形成が得易い。

11主要炭田なし

データなし データなし ・炭鉱が閉山して30年以上 であり、地元合意形成に 時間を要す。

常磐

・石炭埋蔵量が少なく、地 質情報もない。・地元合意形成が難しい。

86国内主要炭田5ケ所分布

16~31(三池・池島)

4.1~13.5 ・採掘跡の一部陥没等によ り、鉱害問題として過去 に報道あり。

九州

・メタン湧出量が少なく、 排水量が多い。・地元合意形成が難しい。

×

評価項目

地域

炭 田

天北

留萌

石狩

釧路

評    価

・石炭化度が低く、灰分が多い。

・地質構造が複雑で、炭質はやや悪く灰分も多い。

・炭質は、ほぼ良質でメタンの多い炭田と評価されている。

・炭層は安定した状況を示し、石炭化度はやや低いが深い程メタン湧出量は増加す る傾向にある。

×

×

石 狩 炭 田 北 部(砂川) 石 狩 炭 田 南 部(夕張)評 価 項 目 と 着 眼 点 釧 路 炭 田

●地質構造・褶曲、断層、擾乱形態・亀裂、活断層、軟弱地盤の有無

・大きな背斜構造・断層によるブロック化

衝上断層を伴う褶曲構造が主体

・緩傾斜の単斜構造・良好な連続性

●シール性・キャップロックの有無

芦別層(泥岩と砂質泥岩の互層)が300~500m

厚い海生層の泥岩(幌内層600m、若鍋層30m)が発達

天寧礫岩層

●炭質・CO2固定に適した炭質の有無

・灰分11.19%~19.80%・燃料比(固定炭素/揮発分) :1.12~1.15

・灰分6.27%~9.43%・燃料比(固定炭素/揮発分) :1.12~1.15

炭化度がやや低く、主として亜瀝青炭

●炭層深度・適度な深度の炭層の有無

-300 ~ -1,200m -400 ~ -1,300m -200 ~ -300m △○

試験場所

●炭層傾斜・なだらかな傾斜の有無

急傾斜 緩傾斜 3~8度 ○△

●有効層厚・適度な層厚炭層の有無

15~29m 7~12m 5~9m △○

●ガス包蔵量(m3/t)・包蔵量が多い

登川層10.0、美唄層6.7 夕張層12.9 5~7 △○

●浸透率(md)・浸透率が大きい

1.0以下(炭鉱でのカ ズ抜効率低)

1.0前後(炭鉱でのカ ズ抜効率低)

0.1~0.01 ×○

●主要炭層・適度な層数炭層の有無

7 3 3 ○○

●環境・保安面・住居地域との離間距離とモニタリ ングの難易性

・離間距離十分有す(山間部)・モニタリング 可能

・離間距離十分有す(山間部)・モニタリング 可能

・都市部へ隣接・坑内作業への影響有り・十分なモニタリング 不可能

△○

●その他・既存ボーリング 等

地表部のボーリング 数少ない 地質調査ボーリング 数多い深部(-600m)に既存のガス湧出量調査孔(3本)存在

○○

●地下水水位(m3/t)・CO2固定化を阻害する地下水 の有無

赤平炭鉱排水量:0.5~1.5

南大夕張炭鉱排水量:0.3~0.6

太平洋炭鉱排水量:2.2~4.8

×○

総 合 評 価 ○ ×

●地温・吸着特性

一般的な深度に伴う地温上昇 同 左 同 左 --

×

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検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 予備実験孔井の配置と仕様の決定

試錐位置と実験サイトの状況 孔井仕上げ

既存の試錐データにより検討した。

孔井の仕様 ・IW-1の仕様

・PW-1の仕様

・圧入井(以下 IW-1)の位置 CO2を圧入する IW-1予定場所は、断層によって地質的に孤立しており、水平方向の流体移動に制限を与えている。また、泥岩を主体とした幌内層がキャップロックとして、約600mの厚さで夕張層の上に賦存しており、垂直方向の流体移動も制限できると推定された。 ・観測井(以下 PW-1)の位置 炭層から水,ガスを産出する PW-1 は、緩く傾斜した炭層の上位に位置し、IW-1から西南西に 194.7m(地表面)離れた箇所に設置することとし、炭層の貫通地点は、シミュレーションで試験期間内に CO2が IW-1から PW-1に到達可能な量から距離を算出した。

・予備実験の主旨を踏まえ、コストを抑える方法として深部(コアリング部)での孔径を縮小し、ケーシングに接続部を作る構造とした。

・孔井は、ケーシングと孔壁の隙間にセメントを注入し、炭層との導通はパーフォレーションを施工する標準的な仕上げとした。 深度 890.0~892.0m、パーフォレータ数 40発 深度 892.0~895.0m、パーフォレータ数 60発

・平成 18年 9月に実施した孔内カメラ検層結果、ライナーハンガートップ(継手部)からガスの流入が認められた。

・炭層部で IW-1との距離を狭めるために、MWD(掘削しながら位置を測定)システムを使って、深度 420mから傾斜掘削を行った結果、IW-1との炭層間距離は 66.6mとなった。 ・孔井仕上げは、地表から深度 856mまではケーシングと孔壁の隙間にセメントを注入し、それ以深は裸孔状態でストレーナーパイプを挿入した。これは、炭層部に空洞を形成し、導通性の高い状態で多くのガスを回収する方法とした。

(圧入井) ・圧入CO2の漏洩箇所として、孔井外周が最もリスクが高いと考えられ、特にケーシングのサイズが異なる接合部分では漏洩の懸念がある。 (観測井) ・揚水ポンプの運転により、炭層から水,ガスが孔井内に流れ込み岩石、石炭等により孔井導通部(ストレーナ)の目詰まりが発生し易いため、その防止策が必要である。・脆弱な石炭には、炭層部に広い空洞を形成するキャビテーション仕上げも一つの対策と考えるが、さらなる検討が必要である。

計 100発実施した。

観測井

圧入井 ケーシング径

(ケーシング挿入深度)掘削孔径

9-5/8”

7”(0.05~854.21m)

掘削深度420mキックオフ

掘削長30m毎に2度傾斜

・掘削深度777m傾斜指向掘削終了

・4-1/2”(864.90~927.50m)

・ストレーナ833.98~944.29m864.90~916.51m

・12-1/4”孔(311.2㎜)

・掘削深度106.50m

遮水セメント

・8-1/2”孔(215.9㎜)

・掘削深度106.50~856.00m

・掘削深度930.00m

・垂直深度907.02m

・KOP420.00m

・最終傾斜24.17°

ケーシング径(ケーシング挿入深度)掘削孔径

7”ケーシングハウジング上部GL 0.12

0.20mGL0.32m

GL0.86m

9-5/8”(0.86~58.2m)

7”(0.32 ~663.98m)

4-1/2”(610.00 ~932.60m)

・12-1/4”孔(311.2㎜)

・掘削深度60.00m

・8-1/2”孔(215.9㎜)

・掘削深度667.00m

・6-1/4”孔(158.8㎜)

・掘削深度932.60m

遮水セメント

ノンコアリング

オールコアリング

66.6m

194.7m

ライナーハンガートップ

ケーシング径(ケーシング挿入深度)掘削孔径

9-5/8”

7”(0.05~854.21m)

掘削深度420mキックオフ

掘削長30m毎に2度傾斜掘削長30m毎に2度傾斜

・掘削深度777m傾斜指向掘削終了

・4-1/2”(864.90~927.50m)

・ストレーナ833.98~944.29m864.90~916.51m

・12-1/4”孔(311.2㎜)

・掘削深度106.50m

遮水セメント

・8-1/2”孔(215.9㎜)

・掘削深度106.50~856.00m

・掘削深度930.00m

・垂直深度907.02m

・KOP420.00m

・最終傾斜24.17°

ケーシング径(ケーシング挿入深度)掘削孔径

7”ケーシングハウジング上部GL 0.12

0.20mGL0.32m

GL0.86m

9-5/8”(0.86~58.2m)

7”(0.32 ~663.98m)

4-1/2”(610.00 ~932.60m)

・12-1/4”孔(311.2㎜)

・掘削深度60.00m

・8-1/2”孔(215.9㎜)

・掘削深度667.00m

・6-1/4”孔(158.8㎜)

・掘削深度932.60m

遮水セメント

ノンコアリング

オールコアリング

66.6m

194.7m

ライナーハンガートップ

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検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 予備実験孔井の配置と仕様の決定

孔井仕上げ セメントボンド検層 ・ケーシングパイプと孔壁の隙間に注入したセメントの結合状況を調査した。

・ケーシングパイプと孔壁の隙間に注入したセメントの結合が良好であることを確認した。 (セメント材) ・種類:ポルトランドセメント(予備実験のため一般的なセメントを使用) ・セメントスラリー比重:1.8

・孔井を長期間使用する場合は、CO2 に対するセメントの耐食性等について、十分検討する必要がある。

物理検層(IW-1) ・裸孔検層 電気検層 密度検層 中性子検層 自然ガンマ検層 孔径検層 音波検層 温度検層

掘削直後の孔井を用い地質状況について調査した。・岩相(含む石炭)の密度、空隙率の測定 ・炭層の有効厚とパーフォレーション部の決定 ・初期貯留層温度の測定

・各種検層結果より 3枚の炭層は、上層:741.9~743.6m,本層:850.4~853.0m,下層:890.0~895.8mの深度に分布しており、良質の瀝青炭であることがわかった。 ・2回の温度検層結果から、下層の平均温度は、30.3℃であることがわかった。

物理検層(PW-1) ・裸孔検層 (検層内容は IW-1 と同じ)

掘削直後の孔井を用い地質状況について調査した。・岩相(含む石炭)の密度、空隙率の測定 ・炭層の有効厚 ・初期貯留層温度の測定

・各種検層結果より対象炭層(下層)深度は、875.8~884.0m(真厚:4.2m、炭層傾斜:34.9°)に分布しており、良質の瀝青炭であることがわかった。 ・2回の温度検層結果から、下層の平均温度は、31.8℃であることがわかった。

地層特性の把握

ガス包蔵量 原位置状態でのガス包蔵量と含有ガス成分を測定した。

・ガス吸着能力=ガス包蔵量(DAF):24.35m3/t→原位置石炭マトリックスがガス飽和 ・原位置石炭ガス包蔵量:22.23 m3/t [平均無機質含有割合(水分、灰分):8.37%] ・1km2の面積内でのガス含有量:1億 8,530万m3(厚さ 6.22m、比重 1.34)

・平均ガス成分(IW-1) CH4:96.6%、CO2:2.03%、(エタン+プロパン):0.75%、N2:0.57%、n/i-ブタン:0.04%

セメント注入

下層

本層

上層

ケーシング セメント注入

下層

本層

上層

ケーシング

下層

地層

地層

セメントにより遮断

ケーシング

セメント注入

下層

地層

地層

セメントにより遮断

ケーシング

セメント注入

パーフォレーション孔

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検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 地層特性の把握 工業分析 石炭コアの水分、灰分、固定炭素、揮発分等を測定

した。 ・水分、灰分、発熱量、ビトリニット反射率のデータに基づいてHigh Volatile Aの石炭ランクと判断される。

・一般的に石炭ランクとガス包蔵量とは相関性を持つと考えられている。しかしながら、 対象炭は瀝青炭の高揮発分Aにランクされているが、そのランクのガス包蔵量よりは、非常に高い数値である。

・国内の CBMポテンシャルを調査する上で、他の国内炭に関する炭質とガス包蔵量の相関を調べる必要がある。

注水/フォールオフ試験

平成 15 年度の孔井掘削直後に実施した試験の圧力データより絶対浸透率を推測した。

・水浸透率:0.93md、スキンファクター:0.24であった。 ・対象炭層以外にもフォールオフ試験を適用し、キャップロックの浸透率を推測することによって、不浸透性の程度を確認する必要がある。

貯留層特性の把握

ステップレート試験 平成 15年度孔井掘削直後と平成 19年度CO2圧入試験終了時に炭層のクリート開口圧力を推測した。

・平成 15年度(CO2圧入試験開始前) 貯留層圧力:10.2MPa、クリート開口圧力:15.8MPa 閉口圧力:10.9MPaであった。

・平成 19年度(CO2圧入試験終了時) 圧力が 19MPaまでの範囲ではクリート開口圧力を示す圧力変化が認められなかっ

た。このことから、IW-1 近傍でクリート開口圧力が初期値に比べ変化している可能性があると推測された。 [ 想定される理由 ]

①膨潤により IW-1近傍において高応力ゾーンが形成されている。 ②圧力が作用する炭層面がザクザクに破砕されている。

・平成 15年度と平成 19年度の注入性比較 定量圧入による孔底圧力変化から平成19年9月末におけるCO2の注入レート(ℓ /min)と孔底圧力の関係式は、圧力=1375x(注入レートℓ /min)+13938と求められた。同時に、クリート開口圧力が 19MPa以上になっている可能性があると推測された。これにより、19MPa までは圧力に比例した注入量の増加を見込めることが示唆された。平成 15年度と平成 19年度に実施したステップレート試験を比較すると、同じ注入レートに必要な圧力は、後者の方が前者よりも高いことから注入性が悪化したと推測される。

・圧入圧力上昇による注入性確認 平成 19年度のステップレート試験で確認した孔底圧力:19MPaで 16時間 CO2を圧入した結果、421kg/h圧入できることを確認した。これは、1日換算にすると 10t圧入できることになる。

・CO2 圧入試験前に、クリート方位や最大主応力の大きさや方位を推定する試験が必要である。 ・CO2 圧入を長期間実施する場合は、クリート開口圧力を定期的に測定する必要がある。

・試験は 16時間程度で終了したが、この結果から 1日 10tの圧入が期待できるものの、高圧による炭層およびキャップロックへの影響も考慮する必要がある。

10

Injectivity

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

1 11 21 31 41 51 61 71 81 91

Injection Rate (L/min)

BHP (kPa)

2003 Water Injection

2007-Sep CO2 Injection

0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0

Y=3368 X + 7662

Y=400 X + 14726

Y=1375X + 13938

孔底圧(

kPa)

圧入レート(ℓ/min)

注 入 性

: H15年度 水によるステップレート試験

: H19年度 CO2によるステップレート試験

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検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 ハフパフ試験 CO2を炭層に圧入して、CO2注入性を確認すると共

に、孔井をシャットインして、CO2 浸透期間を設けた後に、ガスを産出させ、ガス産出量の変化(増産効果)やガス成分の変化を測定した。

・CO2圧入後の産出ガス成分に基づく、初期のシミュレーションモデルとのヒストリーマッチング(脱吸着速度の推定)を実施することができた。 【 産 出 量 】 ( 初 期 ) ( CO2圧入後 ) ガス: 34m3/日 ⇒ 83m3/日 2.44倍 水 : 370ℓ/日 ⇒ 406ℓ/日 1.10倍

・地山状態での圧入試験では、最初に排水して孔井近傍での水飽和率を低下させて CO2

圧入がスムーズに遂行できる状態にする必要がある。このことにより炭層ガスの産出が促進され、吸着している CH4が脱着し、初期段階の注入性向上に寄与できる可能性がある。

貯留層特性の把握

揚水試験(PW-1)

PW-1において、水とガスの初期産出量とその成分を測定した。

・測定開始時は、水:700ℓ/日,ガス:300m3/日の産出があり、その後、変動しながら減少し試験終了時(30 日後)には、水:370ℓ/日,ガス:55m3/日まで低下し、産出量が減少することがわかった。また、産出ガスの成分については、石炭の包蔵ガス成分に近い値であることがわかった。

・産出試験に先立って水産出量を予測するのは困難である。そのため、ポンプの能力および稼働時間については、揚水試験を実施した後、決定する必要がある。

CO2圧入設備の設計 CO2圧入設備の仕様検討

貯留層特性等から得た諸元および実験サイトの立地条件から CO2圧入設備の仕様を決定した。

・CO2貯槽(15kℓ ) 耐震構造を有するコンクリート上に設置し、貯槽(内槽)の外周に殻を有する二重構造で、その間に断熱材を充填した真空層により温度を保持する構造とした。 ・気化装置(最大流量:1t/h) 装置は、立地条件を加味して、コンパクトな移動可能な構造とした。また、設計および取付けにあたっては、下記内容を考慮した。 ☆ 昇圧ポンプは、ダイアフラム式を採用し、圧力,流量変化に対応できるようストローク調整およびインバータ制御(自動制御機能)とした。

☆ 流量計を設置し、流量の把握、流量制御を可能とした。 ☆ 液化CO2の気化および加温が可能なよう蒸発器を取付けた。

☆ 配置場所(圧入設備)の変更に対応可能なように、圧入設備と IW-1との間はナイロン製高圧ホース(高圧ガス認定品)で接続した。

・CO2 圧入温度の変化および長期間の使用により、ナイロン製高圧ホース継手部より漏洩する可能性があるので、予備ホースを備え付けておく必要がある。

11

CO2貯槽

INB

P出口圧制 御

S

昇圧ポンプ

蒸発器

: 供給系統

: 戻り系統

圧 入 井

CO2炭層へ圧入

(15kℓ)

気化装置

炭層入口で、15.5MPa以下になるようにポンプ出口で制御

M P P

FQ

流量計

高圧ホース

項  目

 PW-1ガス成分(%)

 包蔵ガス成分(%)

 N2

 0.163

 0.57

 CO2

 2.48

 2.03

 CH4

 96.957

 96.6

 エタン

 0.177

 0.79

 プロパン

 0.233

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検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 炭層におけるCO2圧入と CH4 産出の実証と課題への対応

CO2圧入,CH4産出試験

平成 16年度から平成 19年度までの試験における課題の抽出とその対策を実施した。 ☆ 平成 16年度 ・初期の CO2注入性を確認 ・初期ガス産出量を確認 ☆ 平成 17年度 平成 16年度の結果を踏まえ、CO2の注入性向上対策に取組んだ。 ・増しガンパーを行い、深度 890~895m区間で計

100孔を穿孔した。 ・孔井等のCO2温度低下防止対策として、「孔口装置他に保温施工」、「サーマルチューブの採用(0~180m区間)」、「アニュラス側への窒素封入」等を実施した。・孔井の温度検層を実施し CO2の温度変化を確認した。

・CO2圧入試験を実施

・ガス産出試験を実施

☆ 平成 18年度 平成 17年度の結果を踏まえ、CO2の注入性向上対策に取組んだ。 ・石炭の膨潤を軽減して浸透率を改善させる方法としてN2を圧入した。

・CO2 圧入量は、1.9~2.8t/日の範囲で推移し、僅かながら増加する傾向が認められた。これは、初期シミュレーションで予測した 15.6~25.3t/日に比較して約 1/10 程度の実績であり、CO2の注入性が低いことがわかった。

( 要 因 ) IW-1近傍の目詰まり(孔井障害の発生)がCO2の注入性を低下させている可能性があると推測した。

・ガス産出量は、当初 62Nm3/日であったが CO2 圧入により徐々に増加し、ピークでは

240Nm3/日となり、CO2圧入による増産効果が確認できた。 ・増しガンパー施工後の注入性確認試験においては、1.6t/日の圧入で推移し改善効果は確認されなかった。

・孔井内温度検層、温度シミュレーション等により、サーマルチューブの効果は確認できたが、深度 320m 付近から地温に沿った温度となっており、液体 CO2が圧入されていると推察され超臨界 CO2での圧入は達成できなかった。 ・CO2が炭層入口で液体となっている主因は、圧入した CO2の温度が深度 50m付近の低温域(10℃未満)において急激に低下していることにあることがわかった。

・CO2の初期圧入量は、1.6~1.7t/日と平成 16年度より低い圧入レートであったが、徐々に増加し、最終的には 3.5t/日(最大)を圧入することができた。 (初期圧入量の低い要因)

冬季のシャットインの間に、炭層の傾斜により、クリート内の自由 CO2 は浮力により孔井近傍より離れ、孔井近傍の水飽和率が高い状態になったためと推測される。また、孔井内を水充填して CO2 を圧入したため、ガス相対浸透率が低かったことも推測される。

・ガス産出量は、73Nm3/日から CO2圧入により徐々に増加し、ピークでは 370Nm3/日まで増加することが確認できた。 ・平成 16年度と平成 17年度の CO2圧入試験前のガス産出状況から初期ガス産出量(ベースライン)は、70~80Nm3であることがわかった。

・N2の圧入が進むにつれN2の注入性が大幅に向上した(最大:6.7t/日)。このことからN2

により炭層の浸透率が大幅に改善したことが推測される。N2圧入後 12日目に PW-1においてブレークスルーを確認した。 ・N2 の圧入によって、吸着量に依存する浸透率の変化を現場で確認することができた(N2

を圧入する現場実験を世界で初めて実施)。しかし、N2圧入後の長期的なCO2の注入性は、N2圧入前に比べて低下した。

・液体 CO2と超臨界 CO2の注入性の違いを現場試験で確認する必要がある。

・長期連続運転での CO2圧入状況やガスと水の産出状況の変化を観察する必要がある。

・N2-CO2混合による注入性の確認は、室内試験が必要である。

・N2圧入よる吸着量の変化により、マトリックスの膨潤と収縮がクリートの状態にどう影響するか解明する必要がある。

12

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検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 炭層におけるCO2圧入と CH4 産出の実証と課題への対応

CO2圧入,CH4産出試験

・CO2圧入試験を実施 ・ガス産出試験を実施 ☆ 平成 19年度 平成 18年度の結果を踏まえ、CO2の注入性向上対策に取組んだ。 ・炭層に人工亀裂を形成する技術として、水圧破砕を実施した。

・CO2の初期圧入量は、3.0t/日前後と平成 17年度の最終圧入量と同程度であった。これは、冬季シャットイン期間が比較的短く、孔井状態が平成 17年度終了時と同じ条件で維持されたものと推測される。 ・N2圧入後に実施した連続 CO2圧入試験では、開始時に CO2圧入量が倍増(最大:6.6t/日)することがわかった。しかし、その後の CO2 圧入による膨潤が速やかに生じ、平成17年度の初期圧入量(3t/日前後)まで戻ることがわかった。 ・N2圧入によって CO2の注入性を改善する効果は極めて短期間しか発揮されないことがわかった。 ・膨潤作用によって CO2の注入性が大幅に低下することが明確になった。 ・ガス産出量は、最初、100Nm3/日であったが N2 圧入により急激に増加しピークでは

700Nm3/日となり、短期間であるが目標レベル(600Nm3/日)を達成することができた。その後、徐々に産出量が低下し 500Nm3/日前後に落ち着くことが確認できた。 ・吸着力の小さい N2の場合は、 CH4の増産効果がすぐに大きく現れるが吸着力の大きな

CO2の場合は、CH4の増産効果が遅れて現れることを確認した。このことから、圧入するガスの種類により、増産効果の時期や大きさが異なることがわかった。

・水圧破砕の工法は、ケーシングおよびセメンチング部の経年劣化が推測されたので、ジェット穿孔を用いたサージフラック工法を採用した。

・ジェット穿孔によるケーシングの貫通はできたものの、炭層内への亀裂伸展ができず孔井近傍の炭層が崩壊し、空洞が形成されたと推測される(水圧破砕において 3m3の石炭が回収された)。また、水圧破砕後のシャットイン期間中の圧力推移を解析した結果、スキンファクターが-1.89 と評価されたことから孔井近傍の炭層に空洞が発生している可能性が考えられる。 (炭層内へ亀裂伸展できなかった要因) ・ケーシング背後の炭層がすでに崩壊しており、ジェット流により炭層内で空洞が拡大し、破砕石炭がパーフォレーション孔を通じて孔井内に入り込み、ジェット流が炭層亀裂拡大に有効に作用しなかったものと推測される。また、亀裂開口圧力の上昇も示唆されたが、ミニフラックを実施しないため、確認できなかった。

・CO2 圧入後に実施する場合には、膨潤による高応力ゾーンが形成されている可能性も考えられるので、ミニフラックを事前に実施してクリート開口圧や亀裂圧力を確認する必要がある。 ・CO2 を長期間圧入したことによるケーシングおよびセメンチングの劣化が考えられる。また、ケーシング背後の状態(密着性)や炭層状態等に不確定要素が多く存在する。したがって、水圧破砕の実施に際しては、孔井および炭層の状態を十分把握する必要がある。

ジェット穿孔

水 圧

空 洞

計 画 結 果

炭 層

水 圧

亀 裂パーフォレーション孔

チュービングパイプ チュービングパイプ

13

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検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 炭層におけるCO2圧入と CH4 産出の実証と課題への対応

CO2圧入,CH4産出試験

・CO2の温度低下防止対策として、全区間にサーマルチューブを設置し、低温域(0~255m 区間)に電気加熱ヒーターの取付け CO2圧入試験を実施した。

・CO2圧入試験を実施 ・ガス産出試験を実施

・孔底温度および温度シミュレーション結果からみると現状の圧入量(3~4t/日)では、CO2

は液体で炭層に圧入されていると推測される。 ・CO2の初期圧入量は、1.9t/日前後と平成 18年度の CO2圧入試験終了時の圧入量と同程度であった。 (初期圧入量の低い要因) 平成 18年 10月に炭層へ注水した結果、水飽和率が上昇し CO2圧入量が低下したものと推測される。(H17年度初期 CO2圧入状態と同じ)

・水圧破砕後に実施したCO2圧入試験における圧入量は、最初は 1.6t/日と低かったが、徐々に増加し、最終的には 3.8t/日(最大)を達成することができた。 (初期圧入量の低い要因) ・水圧破砕により、炭層が水没状態となり水飽和率が高くなったと推測される。 ・ガス産出量は、最初、100Nm3/日であったが、CO2圧入により徐々に増加し、ピークでは

500Nm3/日まで増加したことを確認した。しかし、CO2の圧入により速やかに増加する挙動はみられなかった。

・水産出量は、試験期間(H16~H19)中 400~500ℓ /日で推移し、ガス産出量の変化幅に比べて変化は小さかった。

14

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(c)モニタリング技術検討

検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 水準測量 CO2圧入前、圧入後に水準点の高さを一等水準精度で

測量を実施し、水準点の高さの変化より地盤の変位を平面的に把握した。

・CO2圧入による地表部の予測変動量に比べ、測定結果の季節変動や外的要因による変動量が大きく、CO2圧入に伴う変動を判別することが困難であった。

地盤変位モニタリング

傾斜計観測 基準傾斜計により圧入井および対象地点において地盤の傾斜角の変化を連続的に観測した。

・CO2圧入による地表部の予測変動量に比べ、測定結果の季節変動や外的要因による変動量が大きく、CO2圧入に伴う変動を判別することが困難であった。

土壌ガス濃度測定 CO2圧入井近傍及び周辺の 10地点に設置した土壌ガスチャンバ内の土壌ガス濃度(CO2、CH4、O2)をポータブル測定器により、定期的に測定を実施した

・測定地点は漏洩の可能性が考えられる断層や旧試掘孔周辺に設置した。これらの測定地点では圧入した CO2 の漏洩は確認されなかった。また、測定地点毎の特徴および季節変化が把握され、広域にバックグラウンドを測定する方法として有効である。

土壌ガス濃度 連続測定

圧入井近傍において 3 地点の土壌ガスチャンバ内の土壌ガス濃度(CO2、O2)および大気の CO2、O2を連続的に測定した。また、気象状況等(気温、気圧、降水量、地温)についても測定を実施した。

・土壌ガス濃度を連続測定するシステムを用いて、現地でリアルタイムに漏洩の有無を評価する手法について開発を行った。土壌中の CO2濃度、O2濃度を連続測定することで、微生物の活動による CO2の増加量を特定し、CO2の漏洩判定する手法を確立した。この手法は漏洩監視に有効な手法と評価された。なお、測定地点においては圧入した CO2 の漏洩は確認されなかった。

・CO2圧入に関する影響評価のためには、CO2

圧入後のデータを取得し評価する必要がある。 また、実用化においては、広域の土壌ガス濃度測定においても連続測定システムによる測定と 1 局集中監視できる監視網を展開する必要がある。

土壌ガス 炭素同位体分析

土壌ガスチャンバ内の土壌ガスを定期的にサンプリングし、CO2 の炭素同位体比の分析を実施し、圧入CO2との比較を行った。

・圧入CO2と土壌ガス中のCO2の炭素同位体比の差が小さいことから、炭素同位体比による漏洩監視はできなかった。

・炭素同位体比が異なる CO2を圧入した場合には、CO2の起源の識別に有効である。

地下水水質 6地点の湧水をサンプリングし、Ca、Mg、Na、K、塩化物イオン、硫酸イオン、アルカリ度、硝酸性窒素、pH、電気伝導度について分析を実施した。

・期間を通して変化は見られず、湧水への影響は確認されなかった。 ・圧入サイト周辺に、湧水を必要とする施設や田畑が存在した場合には、地元対策として実施する必要がある。

環境モニタリング

γ線スペクトル 測定

5地点に設置した定点において、シンチレーションスペクトロメータを用いて、自然放射能を定期的に測定した。

・CO2漏洩の兆候を把握する目的で実施したが、CO2圧入による変動は確認されなかった。また、気象などの外的要因の影響が大きいことがわかった。

・気象等の外的要因を除去するために、長期間の連続測定が必要である。また、CO2 漏洩により自然放射能が変動するメカニズムを検証する必要がある。

高精度傾斜計観測 測定感度が10-9radianの高精度の傾斜計を深度12m(4地点)、深度 50m(3地点)に設置し、CO2圧入による傾斜変化の観測を実施した。

・取得データの外的要因によるノイズの除去方法を検討し、ノイズ除去を実施した。その結果、CO2圧入による変動は確認されなかったが、圧入イベントと同時期に生じた変動が確認された。シミュレーションの結果、大量の CO2 圧入が可能であれば、有望な方法であると考えられる。

・圧入サイトの地域の特性に応じた設置方法(深度、位置、台数)、解析方法を検討する必要がある。

微重力測定 圧入井、観測井を含む南北 1kmの範囲においてCO2

圧入前、圧入中、圧入後に微重力測定を実施した。・圧入 CO2量が少なく重力の変化を捉えることができなかった。 ・重力変化を抽出するための除去、補正すべき要因が多く、圧入量に限らず重力の変動を抽出が困難であること、また、日本では炭層厚が薄いことなどから、日本の炭層には不向きな技術と考えられる。

二酸化炭素炭層内挙動モニタリング技術

極微小地震観測 圧入井を中心に半径 300mの範囲の 4 地点に地震計を設置し、圧入中および CO2圧入試験に伴う各種試験時に極微小地震の観測を実施した。

・圧入により炭層からの振動が生じなければ、測定できない方法であり、今回実施した測定では、圧入による明確な信号を捉えることができなかった。 ・高精度傾斜計との併用による測定の有効性が示唆された。

・圧入サイトの地域の特性に応じた設置方法(深度、位置)および CO2圧入による炭層の膨潤・収縮、クリート開口時における振動発生について検討する必要がある。

15

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(d)経 済 性 検 討

検 討 課 題 試 験 お よ び 実 施 内 容 成 果 お よ び 評 価 課 題 CO2分離回収技術 低コスト技術の開発 CO2 分離回収装置の建設費の中で、充填材の費用は

大きな割合を占めている。そのため市販規則充填物(Mellapak)を採用し、CO2吸収に与える影響の解析を行うと共に従来充填物とのコスト比較を行った。

・市販規則充填物(Mellapak)の性能は、従来型充填物(KP-1 型充填材)と同程度であった。 ・安価なMellapakを採用することにより、建設費を 3%程度削減でき、かつ運転経費を増加させることもなかった。

・今後CCSの事業化を進める上では、高コストである CO2分離回収の更なるコスト低減が必要である。

システム検討 システム設計とコスト評価

CO2分離回収、CO2輸送、CO2圧入およびCH4回収(孔井掘削と圧入、回収)、CH4輸送売却に至る全体工程のコスト因子を抽出した。

事業化を想定した 3 ケースの小型分散電源(CO2固定量 6 千 t/年)、石炭焚火力発電所(CO2固定量 10万 t/年)、石油精製所(CO2固定量 10 万 t/年)について、適用可能な技術・方法を検討し、トータルシステムを設計し、コスト試算を行った。

CO2 圧入予備実験のデータを用いて石狩モデルにより CO2圧入・CH4産出量を求め、設計したトータルシステム(新設石炭焚火力発電所 CO2固定量 100万t/年)のコストを算出し評価を行った。

・事業化を想定した3ケースの小型分散電源、石炭焚火力発電所、石油精製所についてコスト試算の結果、いずれのケースも高コストであることがわかった。

・新設石炭焚火力発電所を対象とした 100万 t/年規模におけるコストは CH4売却単価 36.6円/Nm3で算出すると 2,800 円/t-CO2(アボイディッドコスト)となり、炭層固定のコストは、帯水層貯留に比べ経済的である。 費用の順位は孔井掘削、CH4輸送、CO2分離回収、CO2輸送で、特に孔井掘削については孔井数が多いことによるもので、技術的な課題である CO2の注入性向上がコスト面においても重要な課題である。また、輸送については距離に比例してコストが上昇するため、CO2排出源と CH4売却先は炭層固定サイトまたは近傍であることが経済的条件となる。なお、CH4の売却収入が、CO2の回収から圧入・CH4生産・輸送にかかる費用の 80%に相当しており、コストへの影響が極めて高いこともわかった。

工 程 コスト CH4売却収入 アボイディドコスト CO2分離回収 3,300CO2輸送 500CO2圧入・固定・CH4生産 7,000

CH4売却単価36.6円/Nm3

CH4売却(昇圧輸送含む) 2,400 10,800 合 計 13,200 10,800

トータルコスト (コスト-収入)2,400 2,800

・高コストの CO2 分離回収設備が不要な石油精製所ケースについてもコスト試算の結果、50万 t/年規模で 2,000円/t-CO2(アボイディッドコスト)程度であり有望なケースである。

・高コストの主な要因である孔井掘削費については、技術的な課題である CO2の注入性向上が、コスト削減においても課題となっている。 ・CCS技術として CDMを想定した、低コスト化と炭層内の CO2挙動モニタリング手法の確立が必要である。 ・炭層固定の特徴であるCH4の利用については、今後のCH4有効利用技術の開発動向に対応した検討が必要である。 ・将来、CO2 排出権取引が適用されればコストがさらに低くなると期待される。

社会受容性への対応 CO2 炭層固定化事業を想定して、社会受容に必要な事項を抽出した。

社会受容に必要な事項について、他プロジェクトの検討状況や類似事業における実績を調査した。

・社会受容に必要な事項として、事業の必要性、安全性、環境影響、法令遵守等を抽出し、事業実施時の時系列に対応してまとめた。 ・トータルシステムの安全性、対象法、環境影響評価の概要についてまとめた。 ・合意形成の手法、類似事業における実績を調査し参考資料を整備した。

・社会受容に関する具体事項について検討を行ったが、事業化に向けて CCSに対する政策、制度、対応する法整備等の環境整備が必要である。

事業化検討

CH4の有効利用方法の検討

CH4 の有効利用方法を検討し、実証試験における試験設備を立案した。

・CH4の有効利用方法をまとめ、実証試験における試験設備が立案できた。

16

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1.二酸化炭素炭層固定化技術開発の概要

2.予備実験の孔井配置および掘削軌跡

3.圧入井周辺の地質

4.圧入井温度検層結果

5.N2圧入による石炭の膨張緩和メカニズム

6.観測井におけるN2濃度連続測定結果(N2ブレークスルー)

7.炭層における固定可能な二酸化炭素量

8.経済性検討(コスト評価のための事業化モデル)

9.モニタリング位置

10.土壌ガス連続測定結果(CO2漏洩の有無の判定)

11.水圧破砕の結果概要

5.資     料     集

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2.予備実験の孔井配置および掘削軌跡

X

Y

-480m

-540m -600m

-660m

-420m

-13100

-13200

-13300

-13400

-13500

-110100

-110200

-110300

-110400

圧入井

観測井

孔井間距離(地表面):194.7m

観測井掘削軌跡

孔井間距離(着炭層):66.6mSL 349.585m

SL 334.456m

炭層下層 掘削深度:875.8~884.0m

炭層下層 掘削深度:890.08~896.30m

3.圧 入 井 周 辺 の 地 質

掘削孔径 0.20GL0.32

GL0.86m

・12-1/4”孔 (311.2㎜)・掘削深度 60.00m

・8-1/2”孔 (215.9㎜)・掘削深度 667.00m

・6-1/4”孔 (158.8㎜)・掘削深度 932.60m

ノンコアリング

オールコアリング

地層名 分 布 深 度 備  考

幌内層  0.00 ~ 678.00

(単位:m)

泥 岩 中粒砂岩~粗粒砂岩

夕張層  678.00~916.20 (238.20)

泥 岩、シルト岩 極細粒砂岩~極粗粒砂岩 石炭、炭質頁岩、黒色頁岩

(主要炭層)上 層

本 層

下 層

742.00~743.75 見掛厚(1.75)、真厚(1.52)

851.20~853.70 見掛厚(2.50)、真厚(2.35)

890.08~896.30 見掛厚(6.22)、真厚(5.64)

幌加別層 916.20~932.60 灰色泥岩

地 質

圧 入 井

(Cap rock)

1

4.圧 入 井 温 度 検 層 結 果

圧入井の状態

More-T

GL

チュービングパイプ

CO2

炭 層

932m

880m

8℃の地下水(深度50m付近)

200 400 600 800 1,000

20

0

40

60

80

温度(℃)

深度(m)0

温度検層(地温)

超臨界温度:31.1℃

温度検層(CO2圧入中)

【 平成17年8月4~7日に実施した温度検層結果 】

CO2CH4

CO2分離・回収(排煙脱炭技術)

炭層

CO2圧入CO2

輸送

CH4

CH4回収

CH4利用

発電所

ボーリング孔ボーリング孔

CH4置換

CO2固定

ボーリング孔ボーリング孔

CO2CH4

CO2分離・回収(排煙脱炭技術)

炭層

CO2圧入CO2

輸送

CH4

CH4回収

CH4利用

発電所

ボーリング孔ボーリング孔

CH4置換

CO2固定

ボーリング孔ボーリング孔

1.二酸化炭素炭層固定化技術開発の概要

予 備 実 験

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6.観測井におけるN2濃度連続測定結果(N2ブレークスルー)

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

4/23 4/30 5/7 5/14 5/21 5/28 6/4 6/11 6/18

月/日

CO 2・N 2圧入量(kg/日)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

CO2・N 2・O 2濃度(%)

: CO2圧入量(kg)

: N2圧入量(kg)

: CO2濃度(%)

: N2濃度(%)

: O2濃度(%)

N2ブレークス ル ー(圧入後12日目)

 圧入井から圧入したガスが炭層内を浸透拡散して観測井に到達すること。

※ ブレークスルーとは

2

7.炭層における固定可能な二酸化炭素量

● 日本の旧炭鉱地域におけるCO2固定ポテンシャル(深度1,200m以浅)

炭  層

浅部炭層 1,200m以浅

深部非可採炭層 1,200~3,000m

深部非可採炭層 3,000m以深

石炭埋蔵量

約270億㌧

3,000億㌧以上

3兆㌧以上

CO2炭層固定ポテンシャル

約10億㌧

100億㌧以上

1,000億㌧以上

炭層メタン資源量

約2,400億m3

3兆m3以上

24兆m3以上

● 深部石炭層も含めたCO2固定ポテンシャル

石炭埋蔵量3

炭  田 炭層メタン資源量 CO2炭層固定ポテンシャル

石狩 6,390 80,844 309石狩CBM 3,311 41,220 178天北・留萌 1,507 4,446 13釧路 1,968 8,198 30釧路沖 2,759 16,980 67

北 海 道  計 15,935 151,688 597常磐 1,064 929 11宇部 656 3,689 4

本 州  計 1,720 4,618 15筑豊・福岡 2,680 13,165 49三池・唐津 2,569 25,174 94有明 885 64松島・高島 1,665 22,535 91西彼杵沖 2,042 25,959 103

九 州  計 9,841 86,833 401全 国  計 27,496 243,139 1,013

本州

(百万t) (百万m3) (百万t)

5.N2圧入による石炭の膨張緩和メカニズム

石炭の構造

N2圧入

CO2を吸着すると石炭が膨張し、CO2が入りにくくなる。(クリートが狭まる)

N2を圧入するとCO2が脱着し、石炭が収縮する。(クリートが拡がる)

CO2

圧入膨張

CO2吸着 CO2脱着

収縮

クリート

主炭理

主炭理

従炭理

従炭理

N2ブレークスルー(圧入開始後12日目)

8.経 済 性 検 討(コスト評価のための事業化モデル)

コスト算出区分

CO2分離回収 CO2輸送 CO2圧入・固定、CH4回収 CH4売却

(輸送の昇圧含む) (売却の輸送含む)

CO2固定規模 100万㌧/年

● 想定モデル:大規模新設石炭火力発電所

CO2分離回収装置石炭火力発電所

P パイプライン

ガス会社

CH4

Pパイプライン

◎炭層条件CO2圧入予備実験条件を採用

◎発生源施設~固定サイト距離 : 20km

◎固定サイト~ガス会社距離 : 20km

◎CH4売却ガス会社へ売却

CO2分離回収装置石炭火力発電所

P パイプライン

ガス会社

CH4

Pパイプライン

◎炭層条件CO2圧入予備実験条件を採用

◎発生源施設~固定サイト距離 : 20km

◎固定サイト~ガス会社距離 : 20km

◎CH4売却ガス会社へ売却

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10.土壌ガス連続測定結果(CO2漏洩の有無の判定)

 平成19年度の測定結果を図1に示す。G-3-3では春季から夏季にかけて土壌ガス中のCO2濃度が上昇し、7月に入り3%を超え、漏洩の有無について以下の方法により検討を行った。

図1 土壌ガス中のCO2濃度変化と降水量の推移(平成19年)

 CO2の炭層固定においてCO2の漏洩を判断するためには、土壌ガス中には微生物活動により発生するCO2と圧入CO2との判別を行う必要がある。土壌中の微生物は、 O2を摂取しCO2を排出することにより土壌中のCO2濃度を高くすることから、O2濃度とCO2濃度のバランスに注目し、 O2とCO2の比率により自然CO2と圧入CO2を判別する方法について検討を行った。また、 この手法はポータブル測定器により測定することから、 分析の手間と時間がかからず、現地において判別できる手法として有効である。 図2に示すように大気中のO2濃度は約20%、CO2濃度は約0.04%である。 生物の呼吸は、 下式に示すとおり消費されるO2と発生するCO2の収支は、等モルである。(CH2O)x +xO2→xCO2+xH2O 図2に示すように微生物によるCO2の増加量は   で示される量である。 この量は大気中O2濃度より減少したO2量であり、 酸素欠乏濃度とした。よって、 理論上は酸素計により測定された大気中のO2濃度と土壌ガスのO2濃度の差が土壌中において微生物により排出されたCO2濃度とほぼ同程度の値を示すこととなる。 一方、圧入したCO2が地表付近に漏洩した場合は、図2に示すように、漏洩による増加量は   で示される量となる。

 土壌中のCO2濃度と酸素欠乏濃度の関係を図3に示す。酸素欠乏濃度(理論上の土壌中CO2濃度)に比べ、 測定されたCO2濃度が高ければ、圧入CO2の漏洩の可能性が考えられることとなる。

CO2:約 0.04%

N2:約 79%O2:約 20%

N2:約 79%

:微生物活動による CO2 :圧入 CO2漏洩による CO2(酸素欠乏量)

(1) 大気の組成

(2) 微生物活動による土壌ガス中の CO2の増加

(3) 微生物活動による土壌ガス中の CO2 の増加に加え CO2の漏洩がある場合

図2 大気、土壌ガスの組成

地中から漏洩した二酸化炭素を含む領域

生物寄与の二酸化炭素領域

二酸化炭素濃度

酸素欠乏濃度

図3 土壌中のCO2濃度と酸素欠乏量の

 酸素欠乏濃度と土壌ガス中のCO2濃度の相関を図4に示す。土壌中のCO2濃度と酸素欠乏濃度の関係は各地点ともに、漏洩判定の境界線上もしくは上側に分布しており、土壌中のCO2濃度が高かったG-3-3についても概ね境界線の上側にプロットされている。これは、 土壌中のCO2濃度が高い場合には土壌中のO2濃度が低下していることを示しており、CO2濃度の上昇は微生物活動に起因しているものと考えられる。よって、測定した範囲においては圧入CO2の漏洩は無いと判断される。

G-3

G-3-1

G-3-3

図4 酸素欠乏濃度と土壌CO2濃度との相関

図2 大気、土壌ガスノ組成

3

9.モ ニ タ リ ン グ 位 置

圧入井

観測井

: 地下水水質調査地点

: 土壌ガス濃度測定地点

: 高精度傾斜計設置地点

: 基準傾斜計設置地点

: 水準点設置地点

: γ線スペクトル測定地点

凡  例

断 層

圧入井近傍

鹿島3作業道

G-3

G-3-1

G-3-3

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【 水 圧 破 砕 工 程 ( 実 績 ) 】

1,000(6.89)

2,000(13.8)

3,000(20.7)

psi(M

Pa)

10:21 22 23 24 25 26 27 280

2(0.32)

4(0.64)

6(0.95)

bpm

(m3/m

in)

min

0

1,000(6.89)

2,000(13.8)

3,000(20.7)

2(0.32)

4(0.64)

6(0.95)

10:50

min

55 11:00 5 10 15 20 25

psi(M

Pa)

bpm

(m3/m

in)

0 0

: アニュラス入口圧力(B)[psi(MPa)]

: チュービング入口圧力(A)[psi(MPa)]

: チュービング圧入量(C)[bpm(m3/min)]

ガス噴出により試験中断

◆ 孔内循環において粉炭の混入は  確認されなかった。

  Step1(孔内循環)

 孔内循環(加圧)

③弁

①弁(A)PI

アニュラス

チュービング

炭層

FQ

(C)

  10:26にガス噴出のため試験中断  10:49に試験再開

リターンタンク

(B)②弁④弁

(D)PI

FQ

試験再開

Step

作       業   ( 試   験 )   時       間

10 11 12 13 14 15 16

10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40

ジェル(#15)による孔内循環1

ジェットノズル試験&注入試験(アニュラスより)2

ジェット(100メッシュ砂、#20スラリージェル)3

孔内循環後にフラック(アニュラス閉)4

再ジェット(20/40メッシュ砂)5

亀裂試験(アニュラス閉)&注入試験と循環6

最終ジェット(20/40メッシュ砂)&亀裂試験&循環7

備   考

ガス噴出により中断(10:26~49)

ジェット(13:42~48)

亀裂試験(13:54~59)

ジェット(14:05~10)

亀裂試験(14:10~14)

ジェット(16:25~33)亀裂試験(14:33~36)

作  業  内  容時

  Step3&4(ジェット&亀裂試験)

ジェット・亀裂(加圧)

③弁(A)PI

アニュラス

チュービング

炭層

ジェットにより粉砕炭,砂が堆積(推測)

FQ

①弁

(C)

13:35

min

40 45 50 5514:00

1,000(6.89)

2,000(13.8)

3,000(20.7)

4,000(27.6)

5,000(34.5)

0

psi(M

Pa)

2(0.32)

4(0.64)

6(0.95)

bpm

(m3/m

in)

8(1.27)

10(1.59)

12(1.91)

14(2.23)

: アニュラス入口圧力(B)[psi(MPa)]

: チュービング入口圧力(A)[psi(MPa)]

: チュービング圧入量(C)[bpm(m3/min)]

ジェット(100メッシュ砂)

(④弁閉)

状況確認

#15ジェルによる循環

#15ジェルによる循環

(粉砕炭等回収)

④弁開

ポンプ1台停止

同じ挙動

③弁開

◆ ジェットカッティングを実施した。◆ 亀裂試験において、チュービング側とアニュラス側の圧力降下率が小さくケーシング,セメンチングおよび炭層内への亀裂の進展はない  (想定した亀裂形成に至っていない)と推測した。〈ジェットカッティング後の孔内循環において粉砕炭等が回収された〉

亀裂試験

リターンタンク

(B)②弁

④弁

(D)

PI

FQ

リターンタンクへ

◆ 1,2回目の試験において注入性に改善が見られないと判断し、最終ジェットカッティングを実施した。◆ 亀裂試験において、チュービング側とアニュラス側の圧力が乖離 (導通なし) しており、アニュラス側圧力が昇圧後、ホールドした状態  となり注入性の改善が図られていない(想定した亀裂形成に至っていない)と推測した。また、アニュラス側の圧力変動から粉  砕した石炭がアニュラス内でさらに堆積し閉塞範囲を拡大している可能性があると推測した。

  Step7(最終ジェット&亀裂試験)

ジェット・亀裂(加圧)

③弁(A)PI

アニュラス

チュービング

炭層

ジェットにより粉砕炭,砂が徐々に堆積し閉塞   (範囲さらに拡大)

FQ

①弁

(C)

2(0.32)

4(0.64)

6(0.95)

bpm

(m3/m

in)

8(1.27)

10(1.59)

12(1.91)

14(2.23)

1,000(6.89)

2,000(13.8)

3,000(20.7)

4,000(27.6)

5,000(34.5)

0

psi(M

Pa)

16:22min

24 26 28 30 32 34 360

: アニュラス入口圧力(B)[psi(MPa)]

: チュービング入口圧力(A)[psi(MPa)]

: チュービング圧入量(C)[bpm(m3/min)]

最終ジェット(20/40メッシュ砂)亀裂試験

④弁閉

導通性なし

③弁開

注入性なし

④弁開リターンタンク

(B)

②弁

④弁

(D)

PI

FQ

リターンタンクへ

2(0.32)

4(0.64)

6(0.95)

bpm

(m3/m

in)

8(1.27)

10(1.59)

12(1.91)

14(2.23)

1,000(6.89)

2,000(13.8)

3,000(20.7)

4,000(27.6)

5,000(34.5)

0

psi(M

Pa)

14:04min

6 8 10 1812 14 160

: アニュラス入口圧力(B)[psi(MPa)]

: チュービング入口圧力(A)[psi(MPa)]

: チュービング圧入量(C)[bpm(m3/min)]

再ジェット(20/40メッシュ砂) 亀裂試験

状況確認

注入性試験(②弁より加圧)

導通性なし

注入性なし

④弁閉

③弁開

  Step5&6(再ジェット&亀裂試験)

ジェット・亀裂(加圧)

③弁(A)PI

アニュラス

チュービング

炭層

ジェットにより粉砕炭,砂が徐々堆積し閉塞  (範囲拡大)

FQ

①弁

(C)

◆ 1回目の試験において注入性に改善が見られないと判断し、再ジェットカッティングを実施した。◆ 亀裂試験において、チュービング側とアニュラス側の圧力が乖離 (導通なし) しており、アニュラス側圧力が圧力降下後、ホールドした状態と  なり注入性の改善が図れていない (想定した亀裂形成に至っていない)と推測した。 また、アニュラス側の圧力変動から粉砕した石  炭がアニュラス内で堆積し閉塞している可能性があると推測した。

④弁開

④弁開

粉砕炭がアニュラス側に堆積

リターンタンク

(B)②弁

④弁

(D)

PI

FQ注入性試験(加圧)

リターンタンクへ

11.水 圧 破 砕 の 結 果 概 要

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